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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097713
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】集電構造及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20250624BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250624BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20250624BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20250624BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20250624BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20250624BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20250624BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0585
H01M4/64 A
H01M4/66 A
H01G11/68
H01G11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214061
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棟方 稔久
(72)【発明者】
【氏名】奥田 匠昭
(72)【発明者】
【氏名】瀬上 正晴
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078BA01
5E078BA05
5E078BA12
5E078BA32
5E078BA36
5E078BA54
5E078DA02
5E078DA07
5E078FA05
5E078FA12
5H017AA02
5H017AA03
5H017AS03
5H017CC05
5H017DD06
5H017EE05
5H017HH03
5H028AA05
5H028CC08
5H028CC19
5H028EE01
5H028HH01
5H028HH05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL03
5H029AL15
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ17
5H029DJ07
5H029HJ03
5H029HJ07
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高める。
【解決手段】本開示の集電構造は、正極合材層と負極合材層とそれらの間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型蓄電デバイスの集電構造であって、集電体は、格子状の絶縁部と、絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有し、集電体のうち単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり、一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極合材層と負極合材層と前記正極合材層と前記負極合材層との間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型蓄電デバイスの集電構造であって、
前記集電体は、格子状の絶縁部と、前記絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有し、前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり、一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように配置されている、
集電構造。
【請求項2】
前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の導電部と他方の導電部とが重なる部分の最大面積が、一方の多角形領域の面積の80%以下かつ他方の多角形領域の面積の80%以下となるように配置されている、
請求項1に記載の集電構造。
【請求項3】
前記多角形領域は、四角形又は六角形である、
請求項1又は2に記載の集電構造。
【請求項4】
前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、前記多角形領域の任意の一辺に平行な平行方向における格子間隔が同じで前記平行方向に格子がずれるか、前記平行方向に垂直な垂直方向における格子間隔が同じで前記垂直方向に格子がずれるか、の少なくとも一方を満たすように配置されている、
請求項1又は2に記載の集電構造。
【請求項5】
前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、前記平行方向における格子間隔が同じで前記平行方向における格子間隔の1/2だけ前記平行方向に格子がずれるか、前記垂直方向における格子間隔が同じで前記垂直方向における格子間隔の1/2だけ前記垂直方向に格子がずれるか、の少なくとも一方を満たすように配置されている、
請求項4に記載の集電構造。
【請求項6】
前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、前記多角形領域の形状が相似又は合同であり、向きが異なるように配置されている、
請求項1又は2に記載の集電構造。
【請求項7】
前記絶縁部の格子幅は2.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の集電構造。
【請求項8】
前記導電部は、アルミニウムを含む、
請求項1又は2に記載の集電構造。
【請求項9】
正極合材層と負極合材層と前記正極合材層と前記負極合材層との間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型蓄電デバイスであって、
前記集電体は、格子状の絶縁部と、前記絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有し、前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり、一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように配置されている、
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、集電構造および蓄電デバイスを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極合材層と負極合材層とそれらの間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型の蓄電デバイスが知られている。こうした蓄電デバイスにおいて、粗面化された表面を有するステンレス箔を集電体に用いたり(例えば、特許文献1参照)、樹脂含有シートの表裏に導電層を形成した積層シートを集電体に用いたり(例えば、特許文献2参照)して、電池特性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-33769号公報
【特許文献2】特開2013-254727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2では、電池特性を向上できるものの、内部短絡発生時の安全性については検討されていなかった。このように、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡に対処することができる集電構造が求められていた。
【0005】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高めることができる集電構造および蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究した結果、格子状の絶縁部と絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有する集電体を用い、さらに、隣り合う2つの集電体を積層方向に透視したときに一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるようにすると、内部短絡発生時の安全性をより高めることができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する集電構造は、
正極合材層と負極合材層と前記正極合材層と前記負極合材層との間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型蓄電デバイスの集電構造であって、
前記集電体は、格子状の絶縁部と、前記絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有し、前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり、一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように配置されているものである。
【0008】
本明細書で開示する蓄電デバイスは、
正極合材層と負極合材層と前記正極合材層と前記負極合材層との間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型蓄電デバイスであって、
前記集電体は、格子状の絶縁部と、前記絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有し、前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり、一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように配置されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、バイポーラ型の蓄電デバイスでは、内部短絡が発生すると、短絡した電極全体から短絡箇所に向かって集電体内を面方向に電流が集中して流れるために、短絡箇所に電流が集中し発熱することがある。一方、本開示では、格子状の絶縁部によって導電部が複数の多角形領域に区切られた集電体を用いている。そのため、短絡箇所に供給されるエネルギーは、格子状の絶縁部で区切られた導電部上の合材電極相当分にまで低減され、発熱が抑制される。さらに本開示では、隣り合う2つの集電体を積層方向に透視したときに一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように集電体が配置された集電構造を有している。そのため、短絡部位に供給されるエネルギーは、一方の集電体において格子状の絶縁部で区切られた導電部上の合材電極と、他方の集電体において格子状の絶縁部で区切られた導電部上の合材電極とが対向する部分相当分にまで低減され、発熱がさらに抑制される。その結果、内部短絡発生時の安全性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】蓄電デバイス10の分解斜視図。
図2】蓄電デバイス10の断面図。
図3】集電構造12を示す模式図。
図4】別例の集電構造12を示す模式図。
図5】別例の集電構造12を示す模式図。
図6】実験例1の集電構造112を示す模式図。
図7】実験例2の集電構造212を示す模式図。
図8】計算モデル1の検討結果。
図9】計算モデル2の検討結果。
図10】計算モデル3の検討結果。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態で説明する本開示の集電構造及び蓄電デバイスは、バイポーラ型の蓄電デバイスに関するものである。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、アルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスのキャリアイオンは、リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどの第1族(アルカリ金属)イオン、マグネシウムイオンやストロンチウムイオン、カルシウムイオンなどの第2族イオンなどが挙げられる。ここでは、説明の便宜のため、蓄電デバイスが、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池である場合を、その主たる一例として以下説明する。
【0012】
本実施形態で開示する集電構造および蓄電デバイスについて図面を用いて説明する。図1は、本開示の蓄電デバイスの一例である蓄電デバイス10の分解斜視図である。図2は、蓄電デバイス10を積層方向に切断した断面図である。図3は、本開示の集電構造の一例である集電構造12を示す模式図であり、図3Aは上面図、図3Bは集電構造12を積層方向に切断した断面図である。ただし、図1では、一対の外部集電体50のうち正極側の外部集電体50や、イオン伝導媒体36、外装ケース60を省略した。また、図2では、図1よりも集電体20及び単セル30の積層数を減らした。
【0013】
蓄電デバイス10は、図1,2に示すように、単セル30と集電体20とが交互に積層された電極構造体40と、一対の外部集電体50と、を備えている。単セル30は、正極合材層32と、負極合材層34と、正極合材層32と負極合材層34との間に介在するイオン伝導媒体36と、を備えている。ここでは、イオン伝導媒体36は、正極合材層32と負極合材層34との間に介在するセパレータ38に含浸されている。電極構造体40は、内部集電体としての集電体20を介して単セル30が直列になるように、つまり正極合材層32と負極合材層34とが交互になるように、多段に積層されている。この電極構造体40は、集電体20の一方の面に正極合材層32を備え他方の面に負極合材層34を備えたバイポーラ電極15が積層された構造を有している。電極構造体40及び外部集電体50は、外装ケース60に収容されている。
【0014】
集電体20は、格子状の絶縁部22と、絶縁部22によって複数の多角形領域(本実施形態では矩形領域)に区切られた導電部21と、を有するシート状の集電体である。集電体20は、イオン伝導媒体36が透過しないように構成されている。
【0015】
導電部21の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウムなどの金属が好適である。また、導電部21の材質は、カーボン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金などとしてもよい。導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン系、ポリアセチレン系、ポリアニリン系、ポリピロール系などの高分子材料が挙げられる。また、導電部21は、導電材としての金属粒子や炭素粒子を分散したインクを固形化したものとしてもよい。導電材の金属は、例えば、銀などの貴金属などが挙げられる。導電部21は、多層構造であってもよく、例えば、アルミニウムと銅との2層構造を有していてもよい。その場合、アルミニウム側に正極合材層32を形成し、銅側に負極合材層34を形成することが好ましい。導電部21は、アルミニウムを含むものであることが好ましい。
【0016】
絶縁部22の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、アルマイトなどの金属酸化物が好適である。また、絶縁部の材質は、金属窒化物や、金属ホウ化物としてもよい。また、絶縁部の材質は、エポキシ樹脂(EP)や、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂としてもよい。
【0017】
集電体20は、導電部21が金属製で、絶縁部22は導電部21の金属を不導体化したものとしてもよい。こうした集電体20は、例えば、導電体である金属の一部を、不導体化処理によって絶縁体にするという、比較的容易な処理によって作製できる。例えば、導電部21はアルミニウム製で、絶縁部22はアルマイト製であるものとしてもよい。こうした集電体は、導電体であるアルミニウムの一部を、陽極酸化処理によって絶縁体であるアルマイトにするという、比較的容易な処理によって作製できる。アルマイト製の絶縁部22は、アルミニウムの陽極酸化処理によって生じる、細孔部と、多孔部と、バリア層とを有していてもよい。細孔部は、陽極酸化処理によって形成された通電孔であり、集電体の表面に開口している。多孔部は、多孔質アルミナの層であり、細孔部の周囲に形成されている。バリア層は、多孔部の底に形成された緻密な層である。バリア層の底には、素地アルミニウムが残存していてもよいが、集電体の面内方向の絶縁性を確保できる程度に十分に薄いことが望ましい。
【0018】
集電体20において、導電部21の隣接する多角形領域同士の間の抵抗は、0.5Ω以上であることが好ましく、1Ω以上であるものとしてもよいし、5Ω以上であるものとしてもよい。なお、この抵抗は、絶縁部22の格子による抵抗としてもよい。
【0019】
集電体20の厚さは、特に限定されるものではないが、蓄電デバイス10のエネルギー密度向上の観点からは、薄い方が好ましく、例えば、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。集電体20の厚さは、イオン伝導媒体36の不透過性を確保する観点から、例えば、5μm以上としてもよく、10μm以上としてもよく、20μm以上としてもよい。
【0020】
集電体20において、絶縁部22の格子幅Lは、内部短絡発生時以外の充放電における充放電容量を高める観点からは小さい方が好ましく、例えば5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。この格子幅Lは、絶縁性や作製の容易性の観点から、例えば0.1mm以上としてもよく、0.2mm以上としてもよく、0.5mm以上としてもよい。絶縁部22の格子幅Lは、導電部21の隣接する多角形領域同士の間の長さに対応する。集電体20において、絶縁部22により区切られた導電部21の多角形領域の長さXは、内部短絡発生時の安全性をより高める観点からは短い方が好ましく、例えば、200mm以下が好ましく、150mm以下としてもよく、100mm以下としてもよい。この長さXは、内部短絡発生時以外の充放電において充放電容量を高める観点からは大きい方が好ましく、10mm以上が好ましく、20mm以上としてもよく、40mm以上としてもよい。長さXは、絶縁部22で区切られた多角形領域の一辺の長さに対応する。長さLと長さXとの比L/Xは、例えば、0.01以上としてもよく、0.02以上としてもよく、0.05以上としてもよい。この比L/Xは、例えば、0.3以下としてもよく、0.2以下としてもよく、0.1以下としてもよい。なお、導電部21の多角形領域の任意の一辺に平行な平行方向(図の横方向)の長さXpと、平行方向に垂直な垂直方向(図の縦方向)の長さXvとは、同じであってもよいし、異なってもよい。同様に、絶縁部22の平行方向の格子幅Lpと垂直方向の格子幅Lvとは、同じであってもよいし、異なってもよい。集電体20において、導電部21は、絶縁部22との全体に対して面積比で80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上としてもよい。この面積比は、99%以下が好ましく、97%以下としてもよく、95%以下としてもよい。この面積比は、より低い方がより安全性を高めることができる一方、より高い方が内部短絡時以外の充放電において、高抵抗な領域がより少なく、好ましい。集電体20において、絶縁部22により区切られた導電部21の多角形領域の面積Sは、内部短絡発生時の安全性をより高める観点からは小さい方が好ましく、例えば、40000mm2以下が好ましく、25000mm2以下としてもよく、10000mm2以下としてもよい。この面積Sは、内部短絡発生時以外の充放電において充放電容量を高める観点からは大きい方が好ましく、100mm2以上が好ましく、400mm2以上としてもよく、1600mm2以上としてもよい。なお、本明細書で説明する好適な形状や寸法は、集電体20の中央部に配置された代表的な導電部21や絶縁部22に関するものであり、集電体20の周縁部に配置された導電部21や絶縁部22にはあてはまらないものとしてもよい。
【0021】
集電体20のうち単セル30を介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部22の一部と他方の導電部21の一部とが重なり、一方の導電部21の一部と他方の絶縁部22の一部とが重なるように配置されている。以下では、こうした集電構造12について、集電体20のうち単セルを介して隣り合う2つのうちの一方を第1集電体20a、他方を第2集電体20bとして説明する。第1集電体20a及び第2集電体20bは、単セル30を介して交互に積層されているものとしてもよい。
【0022】
第1集電体20aは、格子状の第1集電体絶縁部22aと、第1集電体絶縁部22aによって複数の多角形領域に区切られた第1集電体導電部21aと、を有している。第1集電体導電部21aの多角形領域は、上述の平行方向に3列、上述の垂直方向に3列の合計9個であり、全てが同一寸法の正方形である。第2集電体20bは、格子状の第2集電体絶縁部22bと、第2集電体絶縁部22bによって複数の多角形領域に区切られた第2集電体導電部21bと、を有している。第2集電体導電部21bの多角形領域は、上述の平行方向に4列、上述の垂直方向に4列で配置された合計16個であり、中央部に配置された4個は、第1集電体導電部21aの多角形領域と同一寸法の正方形であり、四隅に配置された4個は中央部に配置された4個よりも小さい正方形であり、それ以外は、一辺が中央部に配置された正方形の一辺と同じ長さで、他辺が四隅に配置された正方形の一辺と同じ長さの長方形である。図3に示すように、第1集電体20aと第2集電体20bとは、平行方向における第1集電体20aの格子間隔Papと第2集電体20bの格子間隔Pbpとが同じであり、格子間隔Pap(=Pbp)の1/2だけ平行方向に格子がずれるように配置されている。また、垂直方向における第1集電体20aの格子間隔Pavと第2集電体20bの格子間隔Pbvとが同じであり、格子間隔Pav(=Pbv)の1/2だけ垂直方向に格子がずれるように配置されている。それにより、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aの多角形領域が第2集電体絶縁部22bによって4等分され、第2集電体導電部21bの多角形領域が第1集電体絶縁部22aによって4等分されている。また、第1集電体導電部21aと第2集電体導電部21bとが重なる部分の面積Tが、第1集電体導電部21aの多角形領域の面積Sの1/4以下かつ第2集電体導電部21bの多角形領域の面積Sの1/4以下になっている。また、第1集電体導電部21aと第2集電体導電部21bとが重なる部分が36箇所となり、合材電極が実質的に36分割されている。この分割数(第1集電体導電部21aと第2集電体導電部21bとが重なる部分の数)は、特に限定されないが、例えば、30以上としてもよく、50以上としてもよく、100以上としてもよい。この分割数は、例えば200以下としてもよく、150以下としてもよい。なお、格子間隔は、各方向において、多角形領域の長さが最大になる部分の両脇の格子の中点同士を結ぶ線分の長さとする。
【0023】
正極合材層32は、正極活物質を含むものである。正極合材層32は、例えば、正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体20の一方の面の合材層形成領域23に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。前者としては、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、後者としては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムバナジウム複合酸化物、リチウム鉄リン酸化合物などを用いることができる。導電材としては、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。溶剤としては、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。
【0024】
負極合材層34は、負極活物質を含むものである。負極合材層34は、例えば、負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体20の他方の面の合材層形成領域23に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。また、負極合材層34は、負極活物質を、集電体20の他方の面に密着させて形成したものとしてもよい。負極活物質としては、アルミニウムを集電体として利用可能であるものが好ましく、例えば、充放電電位がリチウム基準電位で0.75V以上であることが好ましく、0.8V以上、1.0V以上、1.2V以上であることが好ましい。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な、複数の元素を含む複合酸化物、複合材料、導電性ポリマーなどが挙げられる。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。複合材料としては、例えば、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体などが挙げられる。層状構造体としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸ジリチウムやビフェニルジカルボン酸ジリチウムなどが挙げられる。導電材や結着材、溶剤については、正極合材層32と同様のものを用いることができる。
【0025】
イオン伝導媒体36は、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などとしてもよいし、水溶液系電解液としてもよい。非水系電解液の溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。また、イオン伝導媒体36は、固体電解質としてもよい。
【0026】
セパレータ38は、キャリアイオンのイオン伝導を阻害せず正極合材層32と負極合材層34とを絶縁するものである。言い換えると、セパレータ38は、キャリアイオンを通し電子を通さないように構成されたものである。セパレータ38としては、蓄電デバイス10の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。このセパレータ38の厚さは、例えば、5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であるものとしてもよい。この厚さが5μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。また、セパレータ38の厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この厚さが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。
【0027】
外部集電体50は、電極構造体40の両端に位置する2つの単セル30の各々の外側の電極合材層と接するように、一対設けられている。外部集電体50は、内部短絡が発生したときの安全性をより高める観点から、集電体20と同様の構造を有するものとしてもよい。また、外部集電体50は、通常の充放電を円滑に行う観点から、例えば連続体である導体で構成されているなど、集電体20と異なる構造を有するものとしてもよい。その場合、外部集電体50には、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。外部集電体50は集電体20と同じ材質としてもよいし異なる材質としてもよい。外部集電体50の形状は、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。外部集電体50の厚さは、集電体20の厚さTと同じかそれよりも厚いことが好ましい。外部集電体50の厚さは、例えば500μm以下としてもよい。外部集電体50の一方と他方とは、材質及び形状が同じものとしてもよいし、材質及び形状の少なくとも一方が異なるものとしてもよい。
【0028】
外装ケース60は、電極構造体40及び外部集電体50を収容するものであり、各外部集電体50の一部を露出させる開口を有している。外装ケース60は、例えば円筒形状に形成されている。外装ケース60の材質は、例えば、ラミネートフィルムとしてもよく、例えば、熱融着性樹脂フィルムと金属箔と剛性を有する樹脂フィルムとが内側から外側へこの順に積層された高分子金属複合フィルムとしてもよい。熱融着性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、アイオノマー、エチレンビニルアセテートなどを用いることができる。金属箔としては、例えば、アルミ箔、ニッケル箔などを用いることができる。剛性を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどを用いることができる。この外装ケース60には、集電体20や外部集電体50が、熱融着性樹脂フィルムの熱融着などによって固定されていてもよい。
【0029】
ここで、バイポーラ型の蓄電デバイスでは、内部短絡が発生すると、短絡した電極全体から短絡局所に向かって集電箔内を面方向に電流が集中して流れるために、短絡箇所に電流が集中し発熱する。例えば、一般的なアルミニウム集電箔の体積抵抗率は2.5μΩcm程度で、一般的な正極合材電極の体積抵抗率が1Ωcm程度であるため、短絡時の電流は正極合材電極を面方向には流れず、集電箔を面方向に流れて短絡箇所に集中し、発熱する。発熱の程度は短絡抵抗によって異なるが、時として温度が上昇し、発火する場合もある。しかし、本開示の蓄電デバイス10では、上述した第1集電体20a及び第2集電体20bを用いており、積層方向に透視したときに第1集電体絶縁部22aの一部と第2集電体導電部21bの一部とが重なり、第1集電体導電部21aの一部と第2集電体絶縁部22bの一部とが重なるように配置された集電構造12を有している。そのため、短絡箇所に供給されるエネルギーは、図3に示すように、格子状の第1集電体絶縁部22aで区切られた第1集電体導電部21a上の合材電極と、格子状の第2集電体絶縁部22bで区切られた第2集電体導電部21b上の合材電極とが対向する部分相当分にまで低減され、発熱が大きく抑制される。なお、バイポーラ型の蓄電デバイスでは、通常の充放電時の充放電電流は、積層された電極を積層方向に流れるため、集電体内の電流の流れは厚さ方向である。したがって、集電体に格子状の絶縁部を設けてその部分の抵抗が高くなっても、電流は集電体を面内に流れず厚さ方向のみに流れるため、充放電はほとんど阻害されない。例えば、絶縁部の格子上の合材電極は反応性が低く、若干充放電しにくくなるが、集電体の絶縁部の格子の幅が5mmの場合、格子の両端から2.5mmはほぼ充放電するため、絶縁部のない集電体とほぼ同等の充放電性能が得られる。そのため、本開示の蓄電デバイス10では、絶縁部のない集電体を用いた場合とほぼ同等の充放電性能が得られる。例えば、本開示の蓄電デバイスの充放電容量は、絶縁部のない集電体を用いた蓄電デバイスの充放電容量の90%以上や95%以上を実現できる。また、比較的少ない絶縁部で安全性を向上できるため、絶縁部の形成コストなどを含む集電体の製造コストを低減できる。
【0030】
以上詳述した集電体20及び蓄電デバイス10では、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、バイポーラ型の蓄電デバイスでは、内部短絡が発生すると、短絡した電極全体から短絡局所に向かって集電体内を面方向に電流が集中して流れるために、短絡箇所に電流が集中し発熱することがある。一方、本開示の集電体20では、上述した集電構造12を有するため、短絡箇所に供給されるエネルギー量が低減され、その結果、発熱を抑制し、より安全性を高めることができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、第1集電体20a及び第2集電体20bの多角形領域は、矩形としたが、矩形以外の四角形としてもよいし、四角形以外の多角形としてもよい。四角形は、例えば、正方形や長方形などの矩形や、平行四辺形、菱形が好ましい。多角形は、例えば、正六角形などの六角形としてもよいし、正三角形や二等辺直角三角形などの三角形としてもよい。図4に、別例の集電構造12として、六角形の多角形領域を有する第1集電体20a及び第2集電体20bを有する集電構造12を示す。図4Aは別例の集電構造12の上面図、図4Bは別例の第1集電体20aの上面図、図4Cは別例の第2集電体20bの上面図である。図4では、第1集電体導電部21a及び第2集電体導電部21bの多角形領域は、同一寸法の正六角形であり、ハニカム状に配置されている。なお、第1集電体導電部21a及び第2集電体導電部21bの多角形領域のうち、中央部に配置された代表的なものは、正六角形であり、周縁部に配置されたものは正六角形の一部が欠けた形状である。図4に示すように、第1集電体20aと第2集電体20bとは、平行方向における第1集電体20aの格子間隔Papと第2集電体20bの格子間隔Pbpとが同じであり、格子間隔Pap(=Pbp)の1/2だけ平行方向に格子がずれるように配置されている。それにより、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aの多角形領域は第2集電体絶縁部22bによって3等分され、第2集電体導電部21bの多角形領域は第1集電体絶縁部22aによって3等分されている。また、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aと第2集電体導電部21bとが重なる部分の面積が、第1集電体導電部21aの多角形領域面積の1/3以下かつ第2集電体導電部21bの多角形領域の面積の1/3以下になっている。
【0033】
上述した実施形態では、第1集電体20aと第2集電体20bとは、形状や寸法が同じ多角形領域を有するものとしたが、多角形領域の形状や寸法が異なるものとしてもよい。また、形状が相似又は合同であり、向きが異なるものとしてもよい。多角形領域の向きは、例えば、多角形領域の形状に応じ、一方に対して他方を30°回転したものとしてもよいし、45°回転したものとしてもよいし、60°回転したものとしてもよい。図5に、別例の集電構造12として、相似形状の多角形領域を有し多角形領域の向きが異なる第1集電体20a及び第2集電体20bを有する集電構造12を示す。図5Aは別例の集電構造12の上面図、図5Bは別例の第1集電体20aの上面図、図5Cは別例の第2集電体20bの上面図である。図5では、第1集電体導電部21aの多角形領域は、図3と同様、同じ大きさの正方形が平行方向に3列、垂直方向に3列で配置されている。また、第2集電体導電部21bの多角形領域は、一辺の長さが第1集電体導電部21aの正方形の一辺の約√2倍の正方形を、45°傾けて配置されている。それにより、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aの多角形領域は第2集電体絶縁部22bによって2等分され、第2集電体導電部21bの多角形領域は第1集電体絶縁部22aによって4等分されている。また、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aと第2集電体導電部21bとが重なる部分の面積が第1集電体導電部21aの多角形領域の面積の1/2以下かつ第2集電体導電部21bの多角形領域の面積の1/4以下になっている。これにより、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aと第2集電体導電部21bとが重なる部分が18箇所となり、合材電極が実質的に18分割されている。
【0034】
上述した実施形態では、第1集電体20aと第2集電体20bとは、格子幅が同じであるものとしたが、格子幅が異なるものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aの多角形領域が第2集電体絶縁部22bによって4等分され、第2集電体導電部21bの多角形領域が第1集電体絶縁部22aによって4等分されているものとしたが、3等分や2等分などに等分されているものとしてもよい。また、等分されていなくてもよい。なお、等分されていない場合でも、積層方向に透視したときに、第1集電体導電部21aと第2集電体導電部21bとが重なる部分の最大面積が第1集電体導電部21aの面積の80%以下(好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下)かつ第2集電体導電部21aの面積の80%以下(好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下)となるようにすることが好ましい。
【0036】
上述した実施形態では、第1集電体20aと第2集電体20bとは、平行方向における格子間隔の1/2だけ平行方向に格子がずれ、垂直方向における格子間隔の1/2だけ垂直方向に格子がずれているものとしたが、格子のずれは、例えば1/3や1/4などとしてもよい。また、平行方向にだけ格子がずれていてもよいし、垂直方向にだけ格子がずれていてもよいし、平行方向の格子のずれと垂直方向の格子のずれが異なっていてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、正極活物質をリチウムイオン二次電池の正極活物質としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
【0038】
本開示は、以下の[1]~[10]のいずれかに示すものとしてもよい。
[1] 正極合材層と負極合材層と前記正極合材層と前記負極合材層との間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型蓄電デバイスの集電構造であって、前記集電体は、格子状の絶縁部と、前記絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有し、前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり、一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように配置されている、集電構造。
[2] 前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の導電部と他方の導電部とが重なる部分の最大面積が、一方の多角形領域の面積の80%以下かつ他方の多角形領域の面積の80%以下となるように配置されている、[1]に記載の集電構造。
[3] 前記多角形領域は、四角形又は六角形である、[1]又は[2]に記載の集電構造。
[4] 前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、前記多角形領域の任意の一辺に平行な平行方向における格子間隔が同じで前記平行方向に格子がずれるか、前記平行方向に垂直な垂直方向における格子間隔が同じで前記垂直方向に格子がずれるか、の少なくとも一方を満たすように配置されている、[1]~[3]のいずれか1つに記載の集電構造。
[5] 前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、前記平行方向における格子間隔が同じで前記平行方向における格子間隔の1/2だけ前記平行方向に格子がずれるか、前記垂直方向における格子間隔が同じで前記垂直方向における格子間隔の1/2だけ前記垂直方向に格子がずれるか、の少なくとも一方を満たすように配置されている、[4]に記載の集電構造。
[6] 前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、前記多角形領域の形状が相似又は合同であり、向きが異なるように配置されている、[1]~[5]のいずれか1つに記載の集電構造。
[7] 前記絶縁部の格子幅は2.5mm以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の集電構造。
[8] 前記導電部は、アルミニウムを含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の集電構造。
[9] 正極合材層と負極合材層と前記正極合材層と前記負極合材層との間に介在するイオン伝導媒体とを備えた単セルと、集電体と、が交互に積層されたバイポーラ型蓄電デバイスであって、前記集電体は、格子状の絶縁部と、前記絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有し、前記集電体のうち前記単セルを介して隣り合う2つは、積層方向に透視したときに、一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり、一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるように配置されている、蓄電デバイス。
【実施例0039】
以下には、上述した蓄電デバイスについて検討した例を実験例として説明する。なお、実験例3が本開示の実施例に相当し、実験例1が比較例に相当する。実験例2は参考例に相当する。
【0040】
実験例では、合材電極(合材層形成領域)の面積が500mm×500mmで容量が5Ah、単セルの積層数は3層(集電体の積層数は内部集電体2層と外部集電体2層の計4層)で電池電圧が12V(4V×3直列)のバイポーラ電池について検討した。
【0041】
(実験例1)
図6の集電構造112を有するバイポーラ電池について検討した。図6Aは集電構造112の上面図、図6Bは集電構造112を積層方向に切断した断面図である。第1集電体120aは、金属集電箔である第1集電体導電部121aで構成されているものとした。第2集電体120bは金属集電箔である第2集電体導電部121bで構成されているものとした。実験例1では、内部短絡が発生した場合、500mm×500mmの合材電極全体から容量5Ahで電圧4V分のエネルギー20Whが短絡箇所に集中することになる。したがって、低抵抗で短絡した場合には短時間で20Whが短絡局所に供給され、比較的発熱が大きくなりやすいと推察された。
【0042】
(実験例2)
図7の集電構造212を有するバイポーラ電池について検討した。図7Aは集電構造2212の上面図、図7Bは集電構造212を積層方向に切断した断面図である。第1集電体220aは、格子状の第1集電体絶縁部222aと、第1集電体絶縁部222aによって複数の多角形領域(ここでは6×6=36個の正方形領域)に区切られた金属集電体である第1集電体導電部221aとを有するものとした。第2集電体220bは、格子状の第2集電体絶縁部222bと第2集電体絶縁部222bによって複数の多角形領域(ここでは6×6=36個の正方形領域)に区切られた金属集電体である第2集電体導電部221bとを有するものとした。第1集電体220aと第2集電体220bとは、積層方向に透視したときに第1集電体導電部221aと第2集電体導電部221bとが重なり、第1集電体絶縁部222aと第2集電体絶縁部222bとが重なるものとした。実験例2では、格子(絶縁部222a,222b)の存在によって合材電極が実質的に36分割されるので、内部短絡が発生した場合、0.139Ah(5Ah/36)の容量分の0.556Whのエネルギーしか短絡箇所に供給されない。したがって、内部短絡が発生した場合の発熱量を抑えることができると推察された。なお、実験例2では、合材電極を36分割するために必要な格子の長さが正負極合わせて約14m(500mm×14本×2)にも及び格子状集電箔のコストが高くなるといった問題があると推察された。
【0043】
ところで、絶縁格子上に配置される正極合材層や負極合材層は絶縁格子の幅が広くなると反応しにくくなるため、絶縁格子の幅が広くなるほど充放電容量が低下することが懸念される。そこで、実験例2のバイポーラ電池に関し、シミュレーションモデルを用いて絶縁部の格子幅及び導電部の多角形領域の面積を変化させて、金属箔を用いた全面集電に対する容量維持率を求めた。なお、このシミュレーションモデルでは、金属箔はAlとCuとのクラッド材であり、Al側に正極合材層が形成され、Cu側に負極合材層が形成されているものとした。
【0044】
まず、計算モデル1として、正極集電用のAl、負極集電用のCuともに格子状の絶縁部を設置した場合の容量維持率を検討した。具体的には、多角形領域の面積及び格子幅を変化させたときの容量Q[Ah]を導出し、集電体全体が金属集電箔である場合の容量Qall[Ah]に対する容量Qの割合である容量維持率Qratio[-](Qratio=Q/Qall)を導出した。図8に計算モデル1の検討結果を示した。なお、図8Aは計算モデル1の説明図であり、図8Bは格子の幅と4C放電時の容量維持率との関係を示すグラフであり、図8Cは格子の幅と4C充電時の容量維持率との関係を示すグラフである。図8より、多角形領域の面積が大きいほど、格子幅を広げても容量を維持できることがわかった。また、充電の方が容量維持率が低くなるため、格子幅は目標とする充電容量で決定することが好ましいことがわかった。目標とする容量維持率を0.95に設定すると、多角形領域の面積が1600mm2(40mm×40mm)では格子幅2mm以下、多角形領域の面積が6400mm2(80mm×80mm)では格子幅2.5mm以下で達成することができることがわかった。ただし、多角形領域の面積を大きくすることで、絶縁されている格子幅での電気化学反応低下の影響を相対的に小さくすることはできるが、影響自体は無くならないため、格子幅を無制限に広げることができないことが図8より読み取れた。また、多角形領域の面積が大きくなるほど、内部短絡発生時に集中するエネルギー量が多くなり、発熱量が多くなるため、発熱量抑制の観点から、格子幅は3mm以下が好ましいと推察された。
【0045】
次に、計算モデル2として、正極集電用のAlのみに格子状の絶縁部を設置した場合の容量維持率を検討した。図9に計算モデル2の検討結果を示した。なお、図9Aは計算モデル2の説明図であり、図9Bは格子の幅(正極集電Alの隙間)と4C放電時の容量維持率との関係を示すグラフであり、図9Cは格子の幅(正極集電Alの隙間)と4C充電時の容量維持率との関係を示すグラフである。図9B図8Bと比べると、格子幅と放電容量維持率との関係はほぼ同等の傾向を示した。また、図9C図8Cと比べると、格子幅と充電容量維持率との関係はほぼ同等の傾向を示した。これらのことから、絶縁格子の大部分の影響がAl側の格子に由来していると推察された。また、AlとCuの両側に絶縁部を設置する場合を想定して格子幅を設定すれば、Al側のみに格子が配置されても目標容量は達成できると推察された。
【0046】
さらに、計算モデル3として、負極集電用のCuのみに格子状の絶縁部を設置した場合の容量維持率を検討した。図10に計算モデル3の検討結果を示した。なお、図10Aは計算モデル3の説明図であり、図10Bは格子の幅(負極集電Cuの隙間)と4C放電時の容量維持率との関係を示すグラフであり、図10Cは格子の幅(負極集電Cuの隙間)と4C充電時の容量維持率との関係を示すグラフである。図10Bより、Cu側の格子幅は放電容量維持率に対して、ほとんど影響がないことがわかった。図10Cより、Cu側の格子幅が大きくなるほど充電容量維持率を若干低下させたが、図8Cに比べて容量維持率の低下は少なかった。よって、AlとCuの両側に絶縁部を設置する場合を想定して格子幅を設定すれば、Cu側のみに格子が配置されても目標容量は達成できると推察された。
【0047】
(実験例3)
図3の集電構造12を有するバイポーラ電池について検討した。第1集電体20aは、格子状の第1集電体絶縁部22aと、第1集電体絶縁部22aによって複数の多角形領域(ここでは9個の正方形領域)に区切られた金属集電体である第1集電体導電部21aとを有するものとした。第2集電体20bは、格子状の第2集電体絶縁部222bと第2集電体絶縁部222bによって複数の多角形領域(ここでは4個の正方形領域と代表とする、16個の矩形領域)に区切られた金属集電体である第2集電体導電部221bとを有するものとした。この第2集電体20bは、第1集電体20aの格子を縦と横に格子周期の1/2ずつずらした構造を有している。それにより、第1集電体20aと第2集電体20bとは、積層方向に透視したときに、第1集電体絶縁部22aの一部と第2集電体導電部21bの一部とが重なり、第1集電体導電部21aの一部と第2集電体絶縁部22bの一部とが重なる。実験例3では、格子(絶縁部22a,22b)の存在によって合材電極が実質的に36分割されるので、実験例2の場合と同様に、内部短絡が発生した場合の発熱量を抑えることができると推察された。また、実験例3では、第1集電体20aの絶縁部22aは導電部21aを9個の正方形領域に分割し、第2集電体20bの絶縁部22bは導電部21aを16個の矩形領域に分割するだけであるため、合材電極を36分割するために必要な格子の長さが正負極合わせて約9m(500mm×(8本+10本))程度まで低減できるため、コスト低減の観点でも好ましいと推察された。なお、実験例2の計算モデル1~3の検討結果より、集電金属の両側に格子を設置した場合を想定して目標とする容量維持率を達成できるように格子幅を設定すれば、実験例3のように片側のみに格子が設置される領域があっても目標とする容量維持率を達成できると推察された。
【0048】
なお、集電体20として第1集電体20aのみを用いることも考えられ、その場合でも、格子(絶縁部22a)の存在によって合材電極が実質的に9分割され、内部短絡が発生した場合の発熱量をある程度抑制することはできる。しかし、第1集電体20a及び第2集電体20bを用いることで、合材電極の実質的な分割数を大幅に増加させ、内部短絡が発生した場合の発熱量をより抑制できるため、実験例3の構造がより好ましい。
【0049】
以上より、格子状の絶縁部と絶縁部によって複数の多角形領域に区切られた導電部とを有する集電体を用いることで、内部短絡発生時の安全性を高めることができることがわかった。さらに、隣り合う2つの集電体を積層方向に透視したときに一方の絶縁部の一部と他方の導電部の一部とが重なり一方の導電部の一部と他方の絶縁部の一部とが重なるようにすることで、内部短絡発生時の安全性をより高めることができることがわかった。
【0050】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、蓄電デバイスの技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 蓄電デバイス、12 集電構造、15 バイポーラ電極、20 集電体、20a 第1集電体、20b 第2集電体、21a 第1集電体導電部、21b 第2集電体導電部、22a 第1集電体絶縁部、22b 第2集電体絶縁部、23 合材層形成領域、30 単セル、32 正極合材層、34 負極合材層、36 イオン伝導媒体、38 セパレータ、40 電極構造体、50 外部集電体、60 外装ケース、112 集電構造、120a 第1集電体、120b 第2集電体、121a 第1集電体導電部、121b 第2集電体導電部、212 集電構造、220a 第1集電体、220b 第2集電体、221a 第1集電体導電部、221b 第2集電体導電部、222a 第1集電体絶縁部、222b 第2集電体絶縁部。
図1
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図10