(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097772
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】光学材料、レンズ、メガネレンズの使用方法及び光学材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/10 20060101AFI20250624BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20250624BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
G02C7/10
G02B5/22
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214173
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 祥子
(72)【発明者】
【氏名】浅田 典明
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
4J002
【Fターム(参考)】
2H006BE05
2H148CA04
2H148CA09
2H148CA15
2H148CA20
2H148CA24
4J002AA001
4J002BG041
4J002BG051
4J002CG001
4J002CG011
4J002CK021
4J002CN021
4J002EE056
4J002ET006
4J002EU026
4J002EU036
4J002EU156
4J002FD050
4J002FD096
4J002FD160
4J002GJ01
4J002GN00
4J002GP00
4J002GP01
(57)【要約】
【課題】ディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易となる光学材料を提供する。
【解決手段】1種類以上の有機色素を含み、
厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30以下であり、
波長425nm~465nmの範囲内に極大吸収波長Aが存在し、前記極大吸収波長Aの分光透過率の極小値が0.65%以上97%以下であり、
波長545nm~595nmの範囲内に極大吸収波長Bが存在し、前記極大吸収波長Bの分光透過率の極小値が5%以上98%以下である、光学材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の有機色素を含み、
厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30以下であり、
波長425nm~465nmの範囲内に極大吸収波長Aが存在し、前記極大吸収波長Aの分光透過率の極小値が0.65%以上97%以下であり、
波長545nm~595nmの範囲内に極大吸収波長Bが存在し、前記極大吸収波長Bの分光透過率の極小値が5%以上98%以下である、光学材料。
【請求項2】
前記極大吸収波長Bを含む吸収波長の吸収幅が50nm~150nmである請求項1に記載の光学材料。
【請求項3】
厚さ2mmにおける視感透過率が13%以上98%以下である請求項1に記載の光学材料。
【請求項4】
前記極大吸収波長Bと前記極大吸収波長Aの差が100nm~180nmである請求項1に記載の光学材料。
【請求項5】
ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含む請求項1に記載の光学材料
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学材料を含むレンズ。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学材料を含むメガネレンズをディスプレイ照度300ルクス以上の環境下で1時間当たりのディスプレイ使用時間の75%以上かつ1日当たりのディスプレイ使用時間が1時間以上であるメガネレンズの使用方法。
【請求項8】
室内照度100ルクス、ディスプレイ照度300ルクス、及び屋外照度750ルクスの場面での視感透過率が3%~90%、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30の各条件を満たす光学材料を設計する工程を含む光学材料の製造方法。
【請求項9】
前記光学材料は、メガネレンズである請求項8に記載の光学材料の製造方法。
【請求項10】
前記光学材料を設計する工程では、視機能検査装置による被験者の視機能検査結果に基づいて前記各条件を満たす光学材料を設計する請求項8又は請求項9に記載の光学材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学材料、レンズ、メガネレンズの使用方法及び光学材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難いため、近年、メガネレンズ、カメラレンズ等の光学材料として急速に普及してきている。光学材料としては例えば、高分子と、有機色素とを含む光学材料が広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸収ピーク波長が595nmや760nmであるテトラアザポルフィリン系金属錯体化合物等の特定波長吸収色素と、紫外線吸収剤と、を含む有機ガラス材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスチックレンズでは、500nm以下の短波長光(例えば、紫外線及び青色光)を効果的にカットし、それ以外の光を出来るだけ多く透過させる遮光レンズも検討されている。従来では、まぶしさの要因とされていた光は短波長の青色光であることから、遮光レンズは黄色味のものが主流である。しかし、ディスプレイ等のまぶしさを軽減して文字等を見やすくする観点では、遮光レンズとなる光学材料に改善の余地がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、ディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易となる光学材料、この製造方法、これを含むレンズ、及びこれを用いたメガネレンズの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 1種類以上の有機色素を含み、
厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30以下であり、
波長425nm~465nmの範囲内に極大吸収波長Aが存在し、前記極大吸収波長Aの分光透過率の極小値が0.65%以上97%以下であり、
波長545nm~595nmの範囲内に極大吸収波長Bが存在し、前記極大吸収波長Bの分光透過率の極小値が5%以上98%以下である、光学材料。
<2> 前記極大吸収波長Bを含む吸収波長の吸収幅が50nm~150nmである<1>に記載の光学材料。
<3> 厚さ2mmにおける視感透過率が13%以上98%以下である<1>又は<2>に記載の光学材料。
<4> 前記極大吸収波長Bと前記極大吸収波長Aの差が100nm~180nmである<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学材料。
<5> ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学材料
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の光学材料を含むレンズ。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載の光学材料を含むメガネレンズをディスプレイ照度300ルクス以上の環境下で1時間当たりのディスプレイ使用時間の75%以上かつ1日当たりのディスプレイ使用時間が1時間以上であるメガネレンズの使用方法。
<8> 室内照度100ルクス、ディスプレイ照度300ルクス、及び屋外照度750ルクスの場面での視感透過率が3%~90%、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30の各条件を満たす光学材料を設計する工程を含む光学材料の製造方法。
<9> 前記光学材料は、メガネレンズである<8>に記載の光学材料の製造方法。
<10> 前記光学材料を設計する工程では、視機能検査装置による被験者の視機能検査結果に基づいて前記各条件を満たす光学材料を設計する<8>又は<9>に記載の光学材料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易となる光学材料、この製造方法、これを含むレンズ、及びこれを用いたメガネレンズの使用方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0010】
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本開示において、置換又は無置換を明記していない化合物については、本開示における効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい。
本開示において、組成物の各成分の量は、各成分に該当する物質が層中に複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、ppm(parts per million)は質量基準のppmを意味する。
【0012】
[光学材料]
本開示の光学材料は、1種類以上の有機色素を含み、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30以下であり、波長425nm~465nmの範囲内に極大吸収波長Aが存在し、前記極大吸収波長Aの分光透過率の極小値が0.65%以上97%以下であり、波長545nm~595nmの範囲内に極大吸収波長Bが存在し、前記極大吸収波長Bの分光透過率の極小値が5%以上98%以下である。
【0013】
本開示の光学材料を用いることで、ディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易となる。本開示の光学材料は、青味を帯びていてもよく、これにより、文字の視認が容易となると推測される。
【0014】
(有機色素)
本開示の光学材料は、1種以上の有機色素を含む。
有機色素としては特に限定されず、例えば、アンスラキノン系染料、メチン系染料、テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物、ポルフィリン系化合物、メロシアニン系化合物等が挙げられる。
本開示の光学材料は、2種以上の有機色素を含んでいてもよい。
【0015】
アンスラキノン系染料としては、市販品を用いてもよく、例えば、Plast Blue 8514、Plast Blue 8590等のPlast Blueシリーズ(有本化学工業株式会社製)、Plast Red 8320等のPlast Redシリーズ(有本化学工業株式会社製)などが挙げられる。
メチン系染料としては、市販品を用いてもよく、例えば、Plast Yellow 8070等のPlast Yellowシリーズ(有本化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0016】
テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物の具体例としては、以下の式(1a)で表されるテトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体が挙げられる。テトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体の市販品としては、PD-311S(山本化成株式会社製)が挙げられる。
【0017】
【0018】
式(1a)中、Cuは2価の銅を表し、t-C4H9はターシャリーブチル基を表す。
【0019】
ポルフィリン系化合物又はメロシアニン系化合物は市販品を用いてもよく、例えば、UVY-0026(山本化成株式会社製)、UVY-1023(山本化成株式会社製)、FDB-001(山田化学工業株式会社製)、ABS 430(Luxottica社製)等が挙げられる。
【0020】
本開示の光学材料は、アンスラキノン系染料及びメチン系染料を含むことが好ましい。
アンスラキノン系染料としては、極大吸収波長が500nm~540nmの範囲内に位置する第1の染料、極大吸収波長が545nm~630nm(好ましくは545nm~595nm)の範囲内に位置する第2の染料等が挙げられる。
メチン系染料としては、極大吸収波長が400nm~490nm(好ましくは425nm~465nm)の範囲内に位置する第3の染料が挙げられる。
本開示の光学材料は、第1の染料、第2の染料及び第3の染料を含んでいてもよい。
【0021】
本開示の光学材料に含まれる有機色素の含有量は、5ppm~300ppmであることが好ましく、30ppm~200ppmであることがより好ましい。
【0022】
本開示の光学材料がアンスラキノン系染料及びメチン系染料を含む場合、アンスラキノン系染料の含有量(好ましくは、第1の染料及び第2の染料の合計含有量)は、有機色素全量に対し、5質量%~95質量%であることが好ましく、30質量%~95質量%であることがより好ましい。
【0023】
本開示の光学材料がアンスラキノン系染料及びメチン系染料を含む場合、メチン系染料の含有量(好ましくは、第3の染料の含有量)は、有機色素全量に対し、5質量%~95質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0024】
本開示の光学材料では、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30以下である。
【0025】
CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*は-20以上-5以下であってもよく、-15以上-5以下であってもよい。
CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、b*は-30以上20以下であってもよく、0以上20以下であってもよい。
【0026】
本開示の光学材料では、波長425nm~465nmの範囲内に極大吸収波長Aが存在し、極大吸収波長Aの分光透過率の極小値が0.65%以上97%以下である。これを満たすことにより、青色光吸収率に優れるとともに、ディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易となる傾向にある。
【0027】
極大吸収波長Aの分光透過率の極小値は、1%以上50%以下であってもよく、2%以上30%以下であってもよく、5%以上20%以下であってもよい。
【0028】
本開示の光学材料では、波長545nm~595nmの範囲内に極大吸収波長Bが存在し、極大吸収波長Bの分光透過率の極小値が5%以上98%以下である。これを満たすことで、対象物の視認に必要な赤色光又は緑色光の間の光が光学材料に吸収されることが抑制される傾向にある。
【0029】
極大吸収波長Bの分光透過率の極小値は、2%以上50%以下であってもよく、5%以上30%以下であってもよく、10%以上30%以下であってもよい。
【0030】
波長425nm~465nmの範囲内に極大吸収波長Aが1つ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。また、波長545nm~595nmの範囲内に極大吸収波長Bが1つ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。
【0031】
極大吸収波長Bと極大吸収波長Aの差(極大吸収波長B-極大吸収波長A)は、100nm~180nmであってもよく、120nm~160nmであってもよい。
【0032】
極大吸収波長Bを含む吸収波長の吸収幅は、赤色光と緑色光との間に位置する光が広波長域にて吸収される観点から、50nm~150nmであってもよく、100nm~150nmであってもよい。
【0033】
本開示において、極大吸収波長Bを含む吸収波長の吸収幅は、半値幅を意味する。半値幅とは半値全幅のことであり、吸収スペクトルにおいて極大吸収波長における吸光係数値(εg)の1/2の値にて引いた横軸に並行な直線と吸収ピークとにより形成される2つの交点の間の距離(nm)で表される。
【0034】
本開示において、極大吸収波長Aの分光透過率の極小値、極大吸収波長Bの分光透過率の極小値及び極大吸収波長Bを含む吸収波長の吸収幅は、厚さが2mmの光学材料を用いて実施例に記載の方法にて分光透過率を測定したときの値である。光学材料の厚さが2mm以外の場合、厚さが2mm以外の光学材料を用いて分光透過率を測定し、測定した値を厚さ2mmの場合の光学材料の分光透過率に換算してもよい。
【0035】
(視感透過率)
本開示の光学材料では、視認性の観点から、厚さ2mmにおける視感透過率が13%以上98%以下であることが好ましく、15%以上60%以下であることがより好ましく、18%以上40%以下であることがさらに好ましい。
視感透過率は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ製CM-5)を用いて測定することができる。
光学材料の厚さが2mm以外の場合、厚さが2mm以外の光学材料を用いて視感透過率を測定し、測定した値を厚さ2mmの場合の光学材料の視感透過率に換算してもよい。
【0036】
本開示の光学材料では、例えば、光学材料に含まれる有機色素の種類、量、組み合わせ等、光学材料に必要に応じて含まれる紫外線吸収剤等の添加剤の種類、量、組み合わせ等、光学材料に必要に応じて含まれる高分子の種類、量、組み合わせ等を適宜調整することで前述の極大吸収波長A、極大吸収波長B、極大吸収波長Aの分光透過率の極小値、極大吸収波長Bの分光透過率の極小値、極大吸収波長Bを含む吸収波長の吸収幅、視感透過率等を調整しうる。
【0037】
本開示の光学材料の厚さは、特に限定されず、例えば0.5mm~10mmであってもよく、1mm~5mmであってもよく、1.5mm~3mmであってもよい。一例として、本開示の光学材料の厚さは、2mmであってもよい。
光学材料の厚さは、最大厚さを意味する。
【0038】
(高分子)
本開示の光学材料は、高分子を含んでいることが好ましい。
高分子は、市販品等の高分子を用いてもよく、モノマー、当該モノマー等から得られる高分子を用いてもよい。
高分子は、特に限定されず使用することができ、透明性高分子であることが好ましい。
以下に、高分子、及び高分子を得るためのモノマーについて説明する。
【0039】
高分子としては、特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアリル、ポリウレタンウレア、ポリエン-ポリチオール重合体、開環メタセシス重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
高分子を1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0040】
光学材料は、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含むことが好ましく、ポリチオウレタンを含むことがより好ましい。これらの高分子は、透明性が高い材料であり、光学材料用途に好適に用いることができる。
【0041】
ポリウレタンは、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位及びポリオール化合物由来の構成単位を含む。ポリチオウレタンは、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位及びポリチオール化合物由来の構成単位を含む。
【0042】
ポリイソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;2,5-ジイソシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物等を挙げることができ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0043】
ポリオール化合物は、1種以上の脂肪族又は脂環族アルコールであり、具体的には、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコール、脂環族アルコール、これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させたアルコール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0044】
直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオ-ル、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)等が挙げられる。
【0045】
脂環族アルコールとしては、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、4,4’-ビシクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0046】
これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させた化合物でもよい。例えば、グリセロールのエチレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加体、グリセロールのプロピレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加体、カプロラクトン変性グリセロール、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性ペンタエリスリトール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0047】
ポリチオール化合物としては、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等を挙げることができ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0048】
ポリスルフィドは、モノマーである、ポリエピチオ化合物、ポリチエタン化合物等の開環重合による方法により得ることができる。光学材料用組成物には、これらの高分子を構成するモノマーを含むことができる。
【0049】
ポリエピチオ化合物としては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
ポリチエタン化合物としては、金属含有チエタン化合物又は非金属チエタン化合物を用いることができる。具体的には、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0050】
ポリカーボネートは、アルコールとホスゲンの反応、又はアルコールとクロロホーメートを反応させる方法、又は炭酸ジエステル化合物のエステル交換反応をすることにより得ることができるが、一般的に入手可能な市販品ポリカーボネート樹脂を用いることも可能である。市販品としては帝人化成株式会社製のパンライトシリーズなどを用いることができる。第1実施形態の光学材料用組成物には、ポリカーボネートを樹脂材料として含むことができる。
【0051】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0052】
ポリオレフィンとしては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載の具体例、環状ポリオレフィン、オレフィンの重合反応及びポリオレフィンの製造方法を用いることができる。
【0053】
ポリアリルは、公知のラジカル発生性の重合触媒の存在下に、アリル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種のアリル基含有モノマーを重合させることにより製造される。
アリル基含有モノマーとしては、アリルジグリコールカーボネートやジアリルフタレートが一般的に市販されており、これらは好適に使用することができる。
【0054】
ポリウレタンウレアは、ポリウレタンプレポリマー及びジアミン硬化剤による反応生成物であり、商標TRIVEXとしてPPGIndustries,Inc.から販売されているものが代表例である。ポリウレタンウレアは透明性の高い材料であり、好適に使用することができる。
【0055】
ポリエン-ポリチオール重合体は、1分子中に2個以上のエチレン性官能基を有するポリエン化合物と、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物からなる付加重合並びにエチレン鎖状重合による高分子生成物である。
【0056】
ポリエン-ポリチオール重合体における、ポリエン化合物としては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0057】
開環メタセシス重合体は、触媒を用いて環状オレフィン類を開環重合させてなる高分子である。開環重合させることのできる環状オレフィン類としては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0058】
ポリエステルは、アンチモンやゲルマニウム化合物に代表されるルイス酸触媒、有機酸、無機酸などの公知のポリエステル製造触媒の存在下に縮合重合される。具体的には、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる1種又は2種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上とからなるもの、又はヒドロキシカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、又は環状エステルからなるものをいう。
【0059】
ジカルボン酸及びグリコールとしては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0060】
ポリエステルとしては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0061】
エポキシ樹脂はエポキシ化合物を開環重合してなる高分子であり、エポキシ化合物としては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0062】
(添加剤)
本開示の光学材料は、上記以外の他の成分として添加剤を含有してもよい。
上記添加剤として、重合触媒、内部離型剤、染料、紫外線吸収剤などを挙げることができる。ポリウレタン及びポリチオウレタンを得る際には、重合触媒を用いてもよく、用いなくてもよい。
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独又は2種類以上混合して使用することできる。
【0063】
紫外線吸収剤としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-5-tert-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-2’,4’-ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2,4-tert-ブチルフェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられるが、好ましくは2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノールや2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノールのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
【0064】
紫外線吸収剤は、市販品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、Tinuvin326(BASFジャパン株式会社製)、Viosorb583(共同薬品株式会社製)等が挙げられる。
【0065】
本開示の光学材料は、色調調整剤を含んでいてもよい。光学材料が色調調整剤を含む場合、色調調整剤の含有量は、3ppm~50ppmであってもよく、5ppm~40ppmであってもよい。
【0066】
色調調整剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、高分子を含む光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。色調調整剤としては、ブルーイング剤が挙げられる。ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂材料からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、青色から紫色を示す物質を含んでいてもよい。
【0067】
<光学材料用組成物>
本開示の光学材料は、例えば、以下に説明する光学材料用組成物を用いて製造することができる。
光学材料用組成物は、1種類以上の有機色素を含み、必要に応じて前述の高分子又は前述のモノマーを含んでいてもよく、紫外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。
光学材料用組成物は、有機色素としてアンスラキノン系染料及びメチン系染料を含んでいてもよい。
【0068】
有機色素の含有量は、前述の高分子及び前述のモノマーの合計100質量部に対して0.0001質量部~0.008質量部が好ましく、0.0001質量部~0.006質量部がより好ましく、0.0002質量部~0.004質量部がさらに好ましい。
有機色素の含有量は、光学材料用組成物に含まれるすべての有機色素の合計含有量を意味する。
【0069】
光学材料用組成物は、上記の成分を所定の方法で混合することにより得ることができる。
組成物中の各成分の混合順序、混合方法等は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加物を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを溶媒に分散し、溶解させる方法などがある。例えばポリウレタン樹脂の場合、ポリイソシアネート化合物に添加物を分散し、溶解させてマスターバッチを作製する方法などがある。
【0070】
<光学材料の態様>
本開示の光学材料の態様としては、基材からなる光学材料、基材とコーティング層とからなる光学材料等が挙げられる。
上記基材としては、例えばレンズ基材が挙げられる。
【0071】
コーティング層としては、例えば、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0072】
例えば、有機色素を含まない光学材料用組成物を用いて成形体(例えば、レンズ基材)を調製し、次いで、有機色素を水又は溶媒中に分散させて得られた分散液に成形体を浸漬して有機色素を成形体中に含浸させ、有機色素を含浸させた成形体を乾燥してもよい。このようにして得られた、成形体を用いて光学材料を調製することができる。
【0073】
このような構成を有する光学材料は、レンズ、好ましくはメガネレンズとして好適に用いることができる。
【0074】
<光学材料の用途>
本開示の光学材料の用途としては、
メガネレンズ、ゴーグル、視力矯正用メガネレンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズ、ウェアラブルデバイス用レンズなどのレンズ;
発光ダイオード(LED)用封止材;光導波路;光学レンズ;光導波路等の接合に用いる光学用接着剤;光学レンズなどに用いる反射防止膜;液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティング;車のフロントガラス、バイクのヘルメット等に用いる風防;透明性基板;照明器具のカバー、照明器具の照射面等に貼り付けるフィルム;
等を挙げることができる。
本開示の光学材料は、ディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易となるため、上記の中でも、レンズが好ましく、メガネレンズがより好ましい。
【0075】
[レンズ]
本開示のレンズは、前述の本開示の光学材料を含む。本開示のレンズは、光学材料からなるレンズ基材を備えるレンズであってもよく、当該レンズ基材の片面又は両面にコーティング層を備えていてもよい。本開示のレンズは、前述の光学材料の用途にて例示した各種レンズのいずれかであってもよい。
【0076】
コーティング層としては、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0077】
これらのコーティング層は、有機色素、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等、染料、顔料等、フォトクロミック染料、フォトクロミック顔料等、帯電防止剤、その他のレンズの性能を高めるための公知の添加剤等を含んでいてもよい。
塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0078】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズ基材との間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズ基材との密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層は、得られたレンズ基材に対する密着性の高いものであればよく、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物がプライマー層の形成に用いられる。プライマー組成物の調製では、組成物の粘度を調整する目的でレンズ基材に影響を及ぼさない溶媒を用いてもよく、溶媒を用いなくてもよい。
【0079】
塗布法、乾式法のいずれの方法によってもプライマー層を形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズ基材に塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法、真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズ基材の表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理が行われていてもよい。
【0080】
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能等を付与することを目的としたコーティング層である。
ハードコート層の形成には、硬化性を有する有機ケイ素化合物と、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素を含む酸化物微粒子の1種以上と、を含むハードコート組成物が使用されてもよく、
硬化性を有する有機ケイ素化合物と、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる2種以上の元素を含む複合酸化物の微粒子の1種以上と、を含むハードコート組成物が使用されてもよい。
【0081】
ハードコート組成物は、上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物及び多官能性エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
ハードコート組成物は、レンズ基材に影響を及ぼさない溶媒を含んでいてもよく、溶媒を含んでいなくてもよい。
【0082】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、紫外線、可視光線等のエネルギー線照射、熱硬化などが挙げられる。干渉縞の発生を抑制する観点から、ハードコート層の屈折率は、レンズ基材との屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0083】
反射防止層には無機系及び有機系がある。
無機系の反射防止層は、SiO2、TiO2等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ-ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。
有機系の反射防止層は、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
反射防止層は、必要に応じてハードコート層の上に形成されてもよい。
【0084】
反射防止層は多層であっても単層であってもよい。
効果的に反射防止機能を発現する観点から、反射防止層は多層であることが好ましく、その場合、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層することが好ましい。また、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。
高屈折率層としては、ZnO、TiO2、CeO2、Sb2O5、SnO2、ZrO2、Ta2O5等の層があり、低屈折率層としては、SiO2等の層が挙げられる。
単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。
【0085】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇コート層、防汚染層、撥水層等が形成されていてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層等を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適用することができる。
【0086】
[光学材料の製造方法]
本開示の光学材料の製造方法は、室内照度100ルクス、ディスプレイ照度300ルクス、及び屋外照度750ルクスの場面での視感透過率が3%~90%、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*が-30~0未満、b*が‐50~30の各条件を満たす光学材料を設計する工程を含む。前述の視感透過率、a*及びb*を満たすことでディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易な光学材料が得られる。
【0087】
前述の場面での視感透過率は、13%以上98%以下であってもよく、15%以上60%以下であってもよく、18%以上40%以下であってもよい。
前述の場面での視感透過率は、光学材料の厚さが2mmでの視感透過率である。光学材料の厚さが2mm以外の場合、厚さが2mm以外の光学材料を用いて視感透過率を測定し、測定した値を厚さ2mmの場合の光学材料の視感透過率に換算してもよい。
【0088】
本開示の製造方法では、CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、a*は-20以上-5以下であってもよく、-15以上-5以下であってもよい。
CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、b*は-30以上20以下であってもよく、0以上20以下であってもよい。
【0089】
本開示の製造方法では、例えば、光学材料に含まれる有機色素の種類、量、組み合わせ等、光学材料に必要に応じて含まれる紫外線吸収剤等の添加剤の種類、量、組み合わせ等、光学材料に必要に応じて含まれる高分子の種類、量、組み合わせ等を適宜調整することで前述の各条件を満たす光学材料を設計してもよい。
【0090】
例えば、本開示の製造方法では、1種類以上の有機色素を含み、必要に応じて前述の高分子若しくは前述のモノマー又は紫外線吸収剤等の添加剤を含む光学材料用組成物を用いて光学材料を製造してもよい。中でも、有機色素としてアンスラキノン系染料及びメチン系染料を用いることが好ましく、第1の染料、第2の染料及び第3の染料を用いることがより好ましい。
【0091】
光学材料を設計する工程では、視機能検査装置による被験者の視機能検査結果に基づいて前記各条件を満たす光学材料を設計してもよい。
【0092】
視機能検査としては、例えば、不快グレアを想定した視認性検査、減能グレアを想定した視認性検査等が挙げられる。不快グレアとは、隣接する部分の輝度差が著しい状態、眼に入射する光量が急激に増した時に不快を感じる状態などを示す。また、減能グレアとは、眼組織において生じる散乱光により、網膜像のコントラストが低下し、視力低下をきたす状態を示す。
【0093】
例えば、一定背景に提示された視標の円状の注目部分の明るさを変え、被験者が眩しさを感じる明るさを調べることにより、不快グレアを想定した視認性検査を行ってもよい。一定背景に提示された視標の注目部分であるランドルト環と、その外側に配置されるリング状のグレア部分との少なくとも一方の明るさを変え、被験者がランドルト環の欠けた方向を視認できる明るさの閾値を調べることにより、減能グレアを想定した視認性検査を行ってもよい。
【0094】
被験者の視機能検査結果を考慮した上で、前記各条件を満たす範囲で視感透過率、a*及びb*を限定し、光学材料を設計してもよい。
【0095】
本開示の光学材料の製造方法にて製造される光学材料の用途は前述したものと同様であり、中でもレンズが好ましく、メガネレンズがより好ましい。
【0096】
[メガネレンズの使用方法]
本開示のメガネレンズの使用方法は、本開示の光学材料を含むメガネレンズをディスプレイ照度300ルクス以上の環境下で1時間当たりのディスプレイ使用時間の75%以上かつ1日当たりのディスプレイ使用時間が1時間以上である方法である。本開示の光学材料を含むメガネレンズを使用することで、ディスプレイのまぶしさを軽減して文字の視認が容易となり、目の疲れを軽減することができる。
【0097】
ディスプレイ照度については、目の疲れを軽減する観点から、1000ルクス以下であることが好ましく、500ルクス以下であることがより好ましい。
【0098】
1時間当たりのディスプレイ使用時間は、特に限定されず、75%~100%であってもよく、75%~90%であってもよい。
1日当たりのディスプレイ使用時間は、特に限定されず、2時間~12時間であってもよく、3時間~10時間であってもよい。
【実施例0099】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0100】
[実施例1]
(レンズの作製)
十分に乾燥させたフラスコにジメチル錫(II)ジクロリド0.020g、MR用内部離型剤(三井化学株式会社製)0.10g、Viosorb 583(共同薬品株式会社製、紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)1.50g、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物46.8gを仕込んで混合液(1)を作製した。
【0101】
次いで、Plast Yellow 8070(メチン系染料 有本化学工業株式会社製、極大吸収波長455nm)0.028gと、Plast Red 8320(アンスラキノン系染料 有本化学工業株式会社製、極大吸収波長520nm)0.068gと、Plast Blue 8590(アンスラキノン系染料 有本化学工業株式会社製、極大吸収波長595nm)0.092gとを、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gにそれぞれ溶解させ、Plast Yellow 8070を溶解させたマスターバッチ(1)、Plast Red 8320を溶解させたマスターバッチ(2)及びPlast Blue 8590を溶解させたマスターバッチ(3)を作製した。
【0102】
各マスターバッチ(1)、(2)、(3)を1.00質量%で上記混合液(1)に添加して混合液(2)とした。混合液(2)を25℃で1時間攪拌して各成分を完全に溶解させ調合液とした。その後、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含む組成物23.9g、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含む組成物25.5gをこの調合液に仕込み、得られた液体を25℃で30分攪拌し、均一溶液を作製した。
【0103】
この溶液に対し400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタにて濾過を行った後、中心厚さ2mm、直径77mmである4Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。
【0104】
このガラスモールドを25℃から120℃まで、21時間かけて昇温した。その後、室温まで冷却させて、プラノーレンズをガラスモールドから外した。得られたプラノーレンズに対し、さらに120℃で2時間アニールを行った。これにより、実施例1のレンズを作製した。
【0105】
[比較例1]
マスターバッチ(1)、マスターバッチ(2)及びマスターバッチ(3)の作製において、Plast Yellow 8070の使用量を0.100g、Plast Red 8320の使用量を0.285g及びPlast Blue 8590の使用量を0.30gに変更した以外は実施例1と同様にして比較例1のレンズを作製した。
【0106】
(a*,b*の測定方法)
分光測色計(コニカミノルタ製CM-5)を用いて、厚さ2mmである実施例1及び比較例1のレンズにおいて、CIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるa*,b*を測定した。
結果を表1に示す。
【0107】
(極大吸収波長、極大吸収波長での透過率、視感透過率及び極大吸収波長Bの吸収ピークの半値幅)
紫外可視分光光度計 UV-1800(株式会社島津製作所製)及び厚さ2mmである実施例1及び比較例1のレンズを用いて、透過率曲線を測定し、極大吸収波長、極大吸収波長での透過率、ISO 8980-3:2013に準拠した視感透過率、及び極大吸収波長Bの吸収ピークの半値幅をそれぞれ求めた。
結果を表1に示す。
【0108】
(コントラスト感度評価)
厚さ2mmである実施例1及び比較例1のレンズを備えるメガネレンズを装着した3人の参加者に対して以下に示す条件でコントラスト感度評価を行った。結果を表1に示す。C値の値が小さいほど文字が見えやすいことを意味する。
-試験法-
視覚刺激:10:8の輝度コントラストが視認可能な最小サイズのランドルト環(直径1.9mm)
試験条件:暗室内、視力矯正・両眼解放下で各検査輝度で順応後、視距離1mのLEDモニター上に白色を背景に、輝度コントラストが異なる視覚刺激を提示し、個々の患者において「平均輝度」と「輝度コントラスト」の2軸で判別可能な輝度コントラストの範囲を調査し、評価項目との相関を調べた。
【0109】
(まぶしさ評価)
厚さ2mmである実施例1及び比較例1のレンズを備えるメガネレンズを装着した4人の参加者に対してまぶしさ評価を行った。具体的には、室内に設置した750ルクスのディスプレイを参加者が見て、まぶしさについて以下の基準に基づいて官能評価を行った。
-評価基準-
A まぶしさを感じた人は0人であった。
B 少しまぶしいと感じた人は1人以上であった。
C まぶしくて見えづらいと感じた人は1人以上であった。
【0110】
【0111】
表1に示すように、実施例1のレンズは、比較例1のレンズよりもコントラスト感度評価及びまぶしさ評価が良好であった。