(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009781
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】マーカリング、マーキング用治具、及びパイプカッタ
(51)【国際特許分類】
B25H 7/04 20060101AFI20250109BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20250109BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20250109BHJP
B26D 7/01 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B25H7/04 A
B26D3/00 601D
F16L21/08 B
B26D7/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035233
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023110006
(32)【優先日】2023-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】恩田 由紀
(72)【発明者】
【氏名】川崎 正秋
【テーマコード(参考)】
3C021
3H015
【Fターム(参考)】
3C021CC02
3H015FA06
(57)【要約】
【課題】マーキングの視認性を高めることができる。
【解決手段】マーカリング20は、樹脂製のパイプ91を備えるとともに管継手100に挿入される長尺体90に適用されるものであり、パイプ91の外周面に装着可能に構成されている。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のパイプを備えるとともに管継手に挿入される長尺体に適用されるものであり、前記パイプの外周面に装着可能に構成されている、
マーカリング。
【請求項2】
前記長尺体が挿通される環状のリング本体と、
前記リング本体の内周縁から前記リング本体の径方向の内側に向かって延出され、前記内周縁に沿って配置された複数のロック片と、を備えており、
前記ロック片は、前記リング本体の軸線方向の一側への前記長尺体の移動を許容する一方、前記パイプの外周面に係合することで前記軸線方向の他側への前記長尺体の移動を阻止する、
請求項1に記載のマーカリング。
【請求項3】
複数の前記ロック片は、前記リング本体の径方向の内側ほど前記軸線方向の一側に位置するように傾斜している、
請求項2に記載のマーカリング。
【請求項4】
前記リング本体は、
前記ロック片と一体にプレス成形された金属製の環状体と、
前記環状体を外周側から保持する樹脂製の保持部材と、を備えており、
前記保持部材の外周面には、段差部が形成されている、
請求項2に記載のマーカリング。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のマーカリングを前記パイプの外周面のうち前記長尺体の先端面から所定距離の位置に装着するために用いられるマーキング用治具であって、
前記長尺体が挿入される挿入空間及び前記挿入空間に設けられて前記長尺体の挿入を当接規制する基準面を有する治具本体と、
前記基準面よりも前記長尺体の挿入方向の後側において前記マーカリングを保持するとともに、前記長尺体が前記マーカリングへ挿通されることを許容するホルダと、
前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを阻止するロック状態と、前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを許容するアンロック状態とに、前記ホルダの状態を切り換え可能であり、前記マーカリングへ前記長尺体が挿通される途中では前記ホルダの状態を前記ロック状態とする一方、前記長尺体の挿入が前記基準面によって当接規制されたことを契機として、前記ロック状態から前記アンロック状態への前記ホルダの状態の切り換えを許容する切換手段と、を備えている、
マーキング用治具。
【請求項6】
前記ホルダは、前記治具本体によって、前記長尺体の軸線方向に沿うスライド移動が可能に支持されており、
前記切換手段は、
前記ホルダに形成され、前記マーカリングを弾性係合により着脱可能に保持するリング用爪と、
前記治具本体に形成され、前記ホルダのスライド移動に伴って前記リング用爪と対向するロック面と、を備えており、
前記ロック状態においては、前記ロック面が前記リング用爪に対向して前記リング用爪の弾性変形を当接規制することで前記リング用爪からの前記マーカリングの取り外しを阻止する一方、
前記アンロック状態においては、前記ロック面が前記リング用爪に対してずれて前記リング用爪の弾性変形を許容することで前記リング用爪からの前記マーカリングの取り外しを許容するように構成されている、
請求項5に記載のマーキング用治具。
【請求項7】
前記切換手段は、
前記治具本体に形成されたホルダ用爪と、
前記ホルダに形成され、前記ホルダ用爪が係合して前記治具本体に対する前記ホルダのスライド移動を阻止することで前記ロック状態を維持する係合段差と、
前記治具本体に対して前記軸線方向に沿うスライド移動が可能に設けられ、前記治具本体の前記挿入空間に挿入された前記長尺体に押されることで前記ホルダ用爪に接近するとともに、前記長尺体の挿入が前記基準面によって当接規制された状態では、前記ホルダ用爪を押して弾性変形させることで前記ホルダ用爪と前記係合段差との係合を解除するアンロッカと、
前記軸線方向において前記ホルダ用爪から離間する側へ前記アンロッカを付勢する付勢部材と、を備えている、
請求項6に記載のマーキング用治具。
【請求項8】
前記切換手段は、前記治具本体に対して前記軸線方向へのスライド移動が可能なプッシャを備えており、
前記プッシャは、
前記軸線方向において前記基準面に対向するとともに、前記基準面に対して当接することで前記長尺体の挿入を当接規制する基準面用当接面と、
前記軸線方向において前記基準面用当接面とは反対の側に形成され、前記挿入空間へ挿入された前記長尺体の先端面が当接する長尺体用当接面と、
前記アンロッカに対して駆動連結された連結部と、を備えている、
請求項7に記載のマーキング用治具。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記軸線方向において前記治具本体と前記プッシャとの間に介在されており、
前記ロック状態における前記プッシャの前記連結部と前記アンロッカとの間には、前記軸線方向において前記基準面とは反対の側に、前記プッシャと前記アンロッカとの相対移動を許容する隙間が形成されており、
前記切換手段は、
前記治具本体に形成され、前記ホルダ用爪に当接した状態にある前記アンロッカに対して弾性係合することで、前記軸線方向において前記基準面から離間する側へスライド移動する前記アンロッカに対して摩擦抵抗を付与するアンロッカ用爪を備えている、
請求項8に記載のマーキング用治具。
【請求項10】
前記長尺体は、
前記パイプと、
前記パイプに挿入されるインコア本体部及び前記パイプの先端面に当接されるフランジ部を有するインコアと、を備えており、
前記プッシャの前記長尺体用当接面は、
前記インコアの端面が当接されるインコア対応領域と、
前記インコアを装着していない状態にある前記パイプの先端面が当接されるパイプ対応領域と、を備えており、
前記パイプ対応領域は、前記軸線方向において、前記インコア対応領域よりも前記基準面側に位置している、
請求項8に記載のマーキング用治具。
【請求項11】
長尺体の外周面に対して前記長尺体の先端面から所定距離の位置にマーカリングを装着するために用いられるマーキング用治具であって、
前記長尺体が挿入される挿入空間及び前記挿入空間に設けられて前記長尺体の挿入を当接規制する基準面を有する治具本体と、
前記基準面よりも前記長尺体の挿入方向の後側において前記マーカリングを保持するとともに、前記長尺体が前記マーカリングへ挿通されることを許容するホルダと、
前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを阻止するロック状態と、前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを許容するアンロック状態とに、前記ホルダの状態を切り換え可能であり、前記マーカリングへ前記長尺体が挿通される途中では前記ホルダの状態を前記ロック状態とする一方、前記長尺体の挿入が前記基準面によって当接規制されたことを契機として、前記ロック状態から前記アンロック状態への前記ホルダの状態の切り換えを許容する切換手段と、を備えている、
マーキング用治具。
【請求項12】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のマーカリングを前記パイプの外周面のうち前記パイプの先端面から所定距離の位置に装着された状態にするために用いられるパイプカッタであって、
前記マーカリングを保持する保持部と、
前記マーカリングに挿通された状態の前記パイプを、前記パイプの軸線方向に直交する方向に沿って切断する刃体を有する切断部と、を備え、
前記保持部に保持された状態の前記マーカリングと前記刃体との前記軸線方向における距離が、前記所定距離に設定されている、
パイプカッタ。
【請求項13】
前記保持部は、前記マーカリングを収容する収容凹部を有しており、
前記切断部は、
前記パイプの外周面を支持する支持部と、
前記刃体に固定されるとともに前記軸線方向に平行な軸線を中心に前記支持部に対して回動可能に設けられ、前記刃体を回動操作する刃体ハンドル部と、を有している、
請求項12に記載のパイプカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカリング、マーキング用治具、及びパイプカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管継手に対するパイプの挿入作業において、管継手に挿入されるべきパイプの長さを把握することができるように、パイプの外周面のうちパイプの先端から所定長さ離間した位置をマーキングすることが行われている。
【0003】
特許文献1には、パイプの外周面にマーキングするために用いられるマーキング用治具が開示されている。この治具は、パイプ挿入孔と、パイプ挿入孔の底部に設けられ、パイプの先端が当接される当接部とを備えている。当接部は、パイプ挿入孔の開口端から所定長さ離間した位置に設けられている。
【0004】
作業者は、一方の手で治具を把持するとともに他方の手でパイプを把持して、パイプの先端部をパイプ挿入孔に挿入する。そして、パイプの先端が当接部に当接された状態を保持しつつ、マーカペンのペン先をパイプ挿入孔の開口端に沿って動かすことによって、パイプの外周面にマーキング線を線引きする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術のようにパイプの外周面に線引きされたマーキング線の場合、視認性において改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのマーカリング、マーキング用治具、及びパイプカッタの各態様を記載する。
[態様1]
樹脂製のパイプを備えるとともに管継手に挿入される長尺体に適用されるものであり、前記パイプの外周面に装着可能に構成されている、
マーカリング。
【0008】
同構成によれば、パイプの外周面に装着されたマーカリングは、同外周面よりも径方向の外側に突出する。したがって、マーキングの視認性を高めることができる。
[態様2]
前記長尺体が挿通される環状のリング本体と、
前記リング本体の内周縁から前記リング本体の径方向の内側に向かって延出され、前記内周縁に沿って配置された複数のロック片と、を備えており、
前記ロック片は、前記リング本体の軸線方向の一側への前記長尺体の移動を許容する一方、前記パイプの外周面に係合することで前記軸線方向の他側への前記長尺体の移動を阻止する、
態様1に記載のマーカリング。
【0009】
同構成によれば、マーカリングに対して、リング本体の軸線方向の一側へ向けて長尺体を挿通することで、パイプの外周面にマーカリングを装着することができる。
一方、ロック片がパイプの外周面に係合することで、リング本体の軸線方向の他側への長尺体の移動が阻止される。このため、長尺体の先端面から所定距離の位置に装着されたマーカリングに対して外力が作用した場合であっても、マーカリングが長尺体の先端面側へ移動することが阻止される。これにより、管継手に対する長尺体の挿入長さが上記所定距離よりも短くなる誤組付けを防止できる。
【0010】
また、マーカリングが装着された長尺体が管継手に挿入された状態において、管継手に対する長尺体の挿入長さが不足している場合がある。この場合、作業者が、マーカリングを管継手側に移動させることで、適正な挿入作業が行われたように誤魔化すおそれがある。この点、上記構成によれば、マーカリングを管継手側に移動させることができないため、上述した誤魔化し作業が阻止される。
【0011】
[態様3]
複数の前記ロック片は、前記リング本体の径方向の内側ほど前記軸線方向の一側に位置するように傾斜している、
態様2に記載のマーカリング。
【0012】
同構成によれば、マーカリングへ長尺体を挿通する際、リング本体の軸線方向の一側へ長尺体を移動させる場合には、ロック片の先端に対してパイプの外周面が摺動することで長尺体の移動が許容される。一方、リング本体の軸線方向の他側へ長尺体を移動させる場合には、ロック片の先端がパイプの外周面に食い込むように係合することで長尺体の移動が阻止される。したがって、ロック片を容易に実現できる。
【0013】
[態様4]
前記リング本体は、
前記ロック片と一体にプレス成形された金属製の環状体と、
前記環状体を外周側から保持する樹脂製の保持部材と、を備えており、
前記保持部材の外周面には、段差部が形成されている、
態様2または態様3に記載のマーカリング。
【0014】
同構成によれば、パイプの外周面に係合する複数のロック片及びこれらロック片と一体にプレス成形された環状体については金属製とすることで剛性を容易に確保できる。また、マーカリングをパイプの外周面に装着する際に用いられる治具の係合部によって、保持部材の外周面に形成された段差部が係合保持される。上記構成によれば、保持部材を樹脂製とすることで、段差部を有する保持部材の加工精度を容易に高めることができる。
【0015】
[態様5]
態様1から態様4のいずれか1つに記載のマーカリングを前記パイプの外周面のうち前記長尺体の先端面から所定距離の位置に装着するために用いられるマーキング用治具であって、
前記長尺体が挿入される挿入空間及び前記挿入空間に設けられて前記長尺体の挿入を当接規制する基準面を有する治具本体と、
前記基準面よりも前記長尺体の挿入方向の後側において前記マーカリングを保持するとともに、前記長尺体が前記マーカリングへ挿通されることを許容するホルダと、
前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを阻止するロック状態と、前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを許容するアンロック状態とに、前記ホルダの状態を切り換え可能であり、前記マーカリングへ前記長尺体が挿通される途中では前記ホルダの状態を前記ロック状態とする一方、前記長尺体の挿入が前記基準面によって当接規制されたことを契機として、前記ロック状態から前記アンロック状態への前記ホルダの状態の切り換えを許容する切換手段と、を備えている、
マーキング用治具。
【0016】
同構成によれば、ホルダに保持されているマーカリングへ長尺体を挿通する際、挿入空間への長尺体の挿入が治具本体の基準面に当接規制されるまでは、ホルダの状態がロック状態とされる。このため、基準面に当接規制される前に、長尺体を引き抜こうとすると、ホルダからのマーカリングの取り外しが阻止される。これにより、長尺体の先端面から所定距離未満の位置にマーカリングが装着されることがない。
【0017】
一方、長尺体の挿入が治具本体の基準面に当接規制されると、ホルダの状態がロック状態からアンロック状態へ切り換えられる。これにより、ホルダからのマーカリングの取り外しが許容されるので、長尺体の先端面から所定距離の位置にマーカリングが装着される。
【0018】
また、パイプの外周面に装着されたマーカリングは、同外周面よりも径方向の外側に突出する。このため、作業者は、マーカリングを目視することによって管継手に対する長尺体の挿入長さを容易に把握することができる。したがって、視認性を高めることができる。
【0019】
[態様6]
前記ホルダは、前記治具本体によって、前記長尺体の軸線方向に沿うスライド移動が可能に支持されており、
前記切換手段は、
前記ホルダに形成され、前記マーカリングを弾性係合により着脱可能に保持するリング用爪と、
前記治具本体に形成され、前記ホルダのスライド移動に伴って前記リング用爪と対向するロック面と、を備えており、
前記ロック状態においては、前記ロック面が前記リング用爪に対向して前記リング用爪の弾性変形を当接規制することで前記リング用爪からの前記マーカリングの取り外しを阻止する一方、
前記アンロック状態においては、前記ロック面が前記リング用爪に対してずれて前記リング用爪の弾性変形を許容することで前記リング用爪からの前記マーカリングの取り外しを許容するように構成されている、
態様5に記載のマーキング用治具。
【0020】
同構成によれば、ホルダのリング用爪に保持されているマーカリングへ長尺体を挿通する際、マーカリングのロック片とパイプとの間に作用する摩擦抵抗によって、長尺体の挿通に伴ってホルダが長尺体の軸線方向に沿ってスライド移動する。そして、ホルダのスライド移動に伴ってホルダのリング用爪と治具本体のロック面との位置関係が変更されることにより、ホルダの状態が、ロック状態とアンロック状態との間で切り換えられる。したがって、切換手段を容易に実現できる。
【0021】
[態様7]
前記切換手段は、
前記治具本体に形成されたホルダ用爪と、
前記ホルダに形成され、前記ホルダ用爪が係合して前記治具本体に対する前記ホルダのスライド移動を阻止することで前記ロック状態を維持する係合段差と、
前記治具本体に対して前記軸線方向に沿うスライド移動が可能に設けられ、前記治具本体の前記挿入空間に挿入された前記長尺体に押されることで前記ホルダ用爪に接近するとともに、前記長尺体の挿入が前記基準面によって当接規制された状態では、前記ホルダ用爪を押して弾性変形させることで前記ホルダ用爪と前記係合段差との係合を解除するアンロッカと、
前記軸線方向において前記ホルダ用爪から離間する側へ前記アンロッカを付勢する付勢部材と、を備えている、
態様6に記載のマーキング用治具。
【0022】
同構成によれば、治具本体に形成されたホルダ用爪と、ホルダに形成された係合段差とが係合して治具本体に対するホルダのスライド移動が阻止されることでロック状態が維持される。このため、ホルダに保持されているマーカリングへ長尺体を挿通する際、挿入空間への長尺体の挿入が治具本体の基準面に当接規制されるまでは、ホルダをスライド移動させることができない。これにより、治具本体から長尺体を引き抜くことができなくなる。
【0023】
一方、長尺体の挿入が基準面によって当接規制された状態では、長尺体によって押されることでアンロッカがホルダ用爪を押して弾性変形させることでホルダ用爪と係合段差との係合が解除される。またこのとき、長尺体を治具から抜け出す側に引っ張るなどして治具への長尺体の押し込みを解除すると、付勢部材の付勢力や、マーカリングを介して作用する作業者による長尺体を引っ張る力によって、軸線方向においてホルダが基準面から離間する側へスライド移動する。これにより、ロック面がリング用爪に当接しなくなってリング用爪の弾性変形が許容される、すなわちホルダの状態がロック状態からアンロック状態へ切り換えられる。
【0024】
このように上記構成によれば、基準面によって当接規制されるまで長尺体の挿入を行わなければ治具本体から長尺体を引き抜くことができない。これにより、パイプの外周面のうち長尺体の先端面から所定距離の位置にマーカリングを装着することが、より確実にできる。
【0025】
[態様8]
前記切換手段は、前記治具本体に対して前記軸線方向へのスライド移動が可能なプッシャを備えており、
前記プッシャは、
前記軸線方向において前記基準面に対向するとともに、前記基準面に対して当接することで前記長尺体の挿入を当接規制する基準面用当接面と、
前記軸線方向において前記基準面用当接面とは反対の側に形成され、前記挿入空間へ挿入された前記長尺体の先端面が当接する長尺体用当接面と、
前記アンロッカに対して駆動連結された連結部と、を備えている、
態様7に記載のマーキング用治具。
【0026】
同構成によれば、長尺体の先端面によって長尺体用当接面が押されることでプッシャが基準面に向けてスライド移動する。そして、プッシャの基準面用当接面が基準面に当接されることで、長尺体の挿入が当接規制される。また、プッシャの連結部がアンロッカに駆動連結されているので、プッシャのスライド移動に伴ってアンロッカもスライド移動する。このように、プッシャを設けることによって、治具本体の挿入空間に挿入された長尺体に押されることでホルダ用爪に接近するようにスライド移動するアンロッカを容易に実現できる。
【0027】
[態様9]
前記付勢部材は、前記軸線方向において前記治具本体と前記プッシャとの間に介在されており、
前記ロック状態における前記プッシャの前記連結部と前記アンロッカとの間には、前記軸線方向において前記基準面とは反対の側に、前記プッシャと前記アンロッカとの相対移動を許容する隙間が形成されており、
前記切換手段は、
前記治具本体に形成され、前記ホルダ用爪に当接した状態にある前記アンロッカに対して弾性係合することで、前記軸線方向において前記基準面から離間する側へスライド移動する前記アンロッカに対して摩擦抵抗を付与するアンロッカ用爪を備えている、
態様8に記載のマーキング用治具。
【0028】
アンロッカによってホルダ用爪を押して弾性変形させることでホルダ用爪と係合段差との係合が解除された後、アンロッカがホルダ用爪から離間することで、ホルダ用爪が係合段差に再び係合してロック状態に復帰するおそれがある。この場合、治具本体から長尺体を引き抜くことができなくなる。
【0029】
この点、上記構成によれば、ロック状態におけるプッシャの連結部とアンロッカとの間には、基準面とは反対の側に、隙間が形成されている。また、治具本体のアンロッカ用爪が、ホルダ用爪に当接した状態にあるアンロッカに対して弾性係合することで、軸線方向において基準面から離間する側へスライド移動するアンロッカに対して摩擦抵抗が付与される。このため、ホルダ用爪と係合段差との係合が解除された後、付勢部材の付勢力によってプッシャが基準面から離間する側へスライド移動し始めても、上記隙間がなくなるまではアンロッカがスライド移動しなくなる。これにより、プッシャが基準面から離間する側へスライド移動し始めてから、アンロッカがスライド移動するまでに時間遅れを生じさせることができる。したがって、ホルダ用爪が係合段差に再び係合してロック状態に復帰することを阻止できる。
【0030】
なお、プッシャのスライド移動に伴って上記隙間がなくなると、プッシャの連結部によってアンロッカが押されることでアンロッカ用爪とアンロッカとの弾性係合が解除される。
【0031】
[態様10]
前記長尺体は、
前記パイプと、
前記パイプに挿入されるインコア本体部及び前記パイプの先端面に当接されるフランジ部を有するインコアと、を備えており、
前記プッシャの前記長尺体用当接面は、
前記インコアの端面が当接されるインコア対応領域と、
前記インコアを装着していない状態にある前記パイプの先端面が当接されるパイプ対応領域と、を備えており、
前記パイプ対応領域は、前記軸線方向において、前記インコア対応領域よりも前記基準面側に位置している、
態様8または態様9に記載のマーキング用治具。
【0032】
インコアが挿入されていないパイプが管継手に挿入される誤組付けが生じる場合がある。インコアがパイプに挿入されていない場合には、長尺体の先端面、すなわちパイプの先端面からマーカリングまでの距離が、インコアのフランジ部の厚みの分だけ上記所定距離よりも長くなる。しかしながら、フランジ部の厚みは比較的小さいため、マーカリングを目視することによってインコアがパイプに挿入されているか否かを見分けることは難しい。
【0033】
この点、上記構成によれば、インコアがパイプに挿入されている場合、インコアのフランジ部がプッシャのインコア対応領域に当接する。一方、インコアがパイプに挿入されていない場合には、パイプの先端面がプッシャのパイプ対応領域に当接する。ここで、パイプ対応領域が、軸線方向において、インコア対応領域よりも基準面側に位置している。このため、長尺体の先端面からマーカリングまでの距離を、インコアのフランジ部の厚み分よりも大きい長さだけ長くすることができる。これにより、作業者は、インコアが挿入されていないことを容易に把握できるようになる。
【0034】
[態様11]
長尺体の外周面に対して前記長尺体の先端面から所定距離の位置にマーカリングを装着するために用いられるマーキング用治具であって、
前記長尺体が挿入される挿入空間及び前記挿入空間に設けられて前記長尺体の挿入を当接規制する基準面を有する治具本体と、
前記基準面よりも前記長尺体の挿入方向の後側において前記マーカリングを保持するとともに、前記長尺体が前記マーカリングへ挿通されることを許容するホルダと、
前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを阻止するロック状態と、前記ホルダからの前記マーカリングの取り外しを許容するアンロック状態とに、前記ホルダの状態を切り換え可能であり、前記マーカリングへ前記長尺体が挿通される途中では前記ホルダの状態を前記ロック状態とする一方、前記長尺体の挿入が前記基準面によって当接規制されたことを契機として、前記ロック状態から前記アンロック状態への前記ホルダの状態の切り換えを許容する切換手段と、を備えている、
マーキング用治具。
【0035】
同構成によれば、態様5に記載のマーキング用治具と同様な作用効果を、パイプを備える長尺体においてのみならずパイプを備えない長尺体においても奏することができる。
[態様12]
態様1から態様4のいずれか1つに記載のマーカリングを前記パイプの外周面のうち前記パイプの先端面から所定距離の位置に装着された状態にするために用いられるパイプカッタであって、
前記マーカリングを保持する保持部と、
前記マーカリングに挿通されている状態の前記パイプを、前記パイプの軸線方向に直交する方向に沿って切断する刃体を有する切断部と、を備え、
前記保持部に保持された状態の前記マーカリングと前記刃体との前記軸線方向における距離が、前記所定距離に設定されている、
パイプカッタ。
【0036】
同構成によれば、保持部にマーカリングが保持されており、且つマーカリングにパイプが挿通されている状態において、切断部の刃体によりパイプが切断されると、マーカリングが、パイプの切断面、すなわち先端面から所定距離の位置に装着された状態になる。
【0037】
また、パイプの外周面に装着されたマーカリングは、同外周面よりも径方向の外側に突出する。このため、作業者は、マーカリングを目視することによって管継手に対する長尺体の挿入長さを容易に把握することができる。したがって、視認性を高めることができる。
【0038】
[態様13]
前記保持部は、前記マーカリングを収容する収容凹部を有しており、
前記切断部は、
前記パイプの外周面を支持する支持部と、
前記刃体に固定されるとともに前記軸線方向に平行な軸線を中心に前記支持部に対して回動可能に設けられ、前記刃体を回動操作する刃体ハンドル部と、を有している、
態様12に記載のパイプカッタ。
【0039】
同構成によれば、作業者は、収容凹部にマーカリングを収容することで保持部によりマーカリングを容易に保持させることができる。また、作業者は、刃体ハンドル部と共に刃体を回動させることで、支持部により支持された状態のパイプを切断することができる。したがって、支持部、刃体、及び刃体ハンドル部といった既存の切断部の構成を流用しつつパイプカッタを容易に具現化することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、マーキングの視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るマーキング用治具の斜視図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係るマーカリングの斜視図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図19】
図19は、第1実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図20】
図20は、第1実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図21】
図21は、第1実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図22】
図22は、第1実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図23】
図23は、第1実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図24】
図24は、管継手、長尺体、マーカリング、及び被覆材を模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、第2実施形態に係るマーキング用治具の斜視図である。
【
図35】
図35は、第2実施形態の開状態におけるマーキング用治具の斜視図である。
【
図37】
図37は、第2実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図38】
図38は、第2実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図39】
図39は、第2実施形態に係るマーキング用治具を用いたマーカリングの装着手順を説明する断面図である。
【
図40】
図40は、第3実施形態に係るパイプカッタの斜視図である。
【
図50】
図50は、パイプカッタを用いたマーカリングの装着手順を説明する平面図である。
【
図51】
図51は、パイプカッタを用いたマーカリングの装着手順を説明する平面図である。
【
図52】
図52は、パイプカッタを用いたマーカリングの装着手順を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図24を参照して、マーカリング及びマーキング用治具の第1実施形態について説明する。
【0043】
<長尺体90>
まず、マーカリング20が装着される長尺体90について説明する。
図23及び
図24に示すように、長尺体90は、管継手100に挿入されるものであり、架橋ポリエチレンやポリブテン等の樹脂製のパイプ91と、パイプ91に挿入されるインコア92とを備えている。インコア92は、パイプ91に挿入されるインコア本体部93及びパイプ91の先端面に当接されるフランジ部94を有している。インコア92は、金属製又は樹脂製である。
【0044】
<マーカリング20>
次に、マーカリング20について説明する。
図10~
図16に示すように、マーカリング20は、パイプ91の外周面に装着可能に構成されている。
【0045】
マーカリング20は、長尺体90が挿通される円環状のリング本体21と、リング本体21の内周縁からリング本体21の径方向の内側に向かって延出されるとともに、内周縁に沿って配置された複数のロック片28とを備えている。
【0046】
複数のロック片28は、リング本体21の径方向の内側ほど軸線方向の一側(
図12の左側)に位置するように傾斜している。ロック片28は、リング本体21の軸線方向の一側への長尺体90の移動を許容する一方、パイプ91の外周面に係合することで軸線方向の他側への長尺体90の移動を阻止する。
【0047】
リング本体21は、ロック片28と一体にプレス成形された金属製の環状体27と、環状体27を外周側から保持する樹脂製の保持部材22とを備えている。
保持部材22は、いずれも円環状の第1保持部材23及び第2保持部材26を備えている。
【0048】
図12に示すように、第1保持部材23の外周面は、外周面拡径部23a及び外周面縮径部23bを有している。外周面縮径部23bの外径は、外周面拡径部23aの外径よりも小さい。外周面拡径部23aは、リング本体21の軸線方向において外周面縮径部23bの一側(
図12の左側)に隣り合っている。第1保持部材23の外周面には、外周面拡径部23aと外周面縮径部23bとによって段差部25が形成されている。
【0049】
第1保持部材23の内周面は、内周面拡径部23c及び内周面縮径部23dを有している。内周面縮径部23dの内径は、内周面拡径部23cの内径よりも小さい。内周面拡径部23cは、リング本体21の軸線方向において内周面縮径部23dの一側(
図12の左側)に隣り合っている。環状体27の外径は、内周面縮径部23dの内径よりも大きく、且つ内周面拡径部23cの内径よりも小さい。
【0050】
内周面拡径部23cの縁部には、リング本体21の径方向の内側に向かって突出する複数(本実施形態では3つ)の爪部24が設けられている。
第2保持部材26の外周面は、外周面拡径部26a及び外周面縮径部26bを有している。外周面縮径部26bの外径は、外周面拡径部26aの外径よりも小さい。外周面拡径部26aは、リング本体21の軸線方向において外周面縮径部26bの他側(
図12の右側)に隣り合っている。
【0051】
第2保持部材26は、リング本体21の軸線方向の一側(
図12の左側)から第1保持部材23の内部に挿入されている。第2保持部材26の外周面拡径部26aは、第1保持部材23の内周面拡径部23cと対向している。
【0052】
環状体27は、リング本体21の軸線方向において第1保持部材23と第2保持部材26とによって挟持されている。爪部24によって第1保持部材23からの第2保持部材26の抜け出しが規制されている。
【0053】
次に、マーキング用治具(以下、治具30)について説明する。
<治具30>
図1~
図9に示すように、治具30は、マーカリング20をパイプ91の外周面のうち長尺体90の先端面、すなわちインコア92のフランジ部94の端面から所定距離の位置に装着するために用いられる。
【0054】
図3及び
図4に示すように、治具30は、ケース40、ボトム50、ホルダ60、プッシャ70、アンロッカ80、及び付勢部材39を備えている。また、治具30は、切換手段35を備えている。
【0055】
(ケース40)
ケース40は、円筒状である。ケース40の先端部41は、基端側に位置する本体部43に比べて外径及び内径が縮径されている。先端部41の内周面が、後述するロック面42を構成している。
【0056】
なお、以降において、ケース40の軸線方向、径方向、及び周方向を、それぞれ単に軸線方向、径方向、及び周方向として説明する。また、
図3においては左右方向が軸線方向と一致する。
図3の左側及び右側を、それぞれ軸線方向の一側及び他側として説明する。
【0057】
(ボトム50)
図3及び
図4に示すように、ボトム50は、有底円筒状であり、本体部43の基端側の開口を塞ぐ円板状の底壁51と、底壁51の周縁から延びるとともに本体部43の外周面を覆う円筒状の周壁52とを有している。ボトム50は、本体部43に固定されている。
【0058】
底壁51の内面の中心部には、円筒状の筒部53が突設されている。筒部53の中心軸線は、ケース40の中心軸線と一致している。筒部53の先端面が、後述する基準面54を構成している。
【0059】
底壁51の内面には、ホルダ用爪56及びアンロッカ用爪58が突設されている。
ホルダ用爪56は、筒部53の径方向の外側において周方向に等間隔にて複数(本実施形態では、3つ)設けられている。ホルダ用爪56は、軸線方向に沿って延びる脚部56aと、脚部56aの先端に設けられ、径方向の内側に突出する爪部56bとを有している。
【0060】
アンロッカ用爪58は、筒部53の径方向の外側において周方向に等間隔にて複数(本実施形態では、3つ)設けられている。アンロッカ用爪58は、軸線方向に沿って延びる脚部58aと、脚部58aの先端に設けられ、径方向の内側に突出する爪部58bとを有している。
【0061】
アンロッカ用爪58は、ホルダ用爪56よりも径方向の外側に位置している。アンロッカ用爪58の底壁51からの突出長さは、ホルダ用爪56の底壁51からの突出長さよりも大きい。
【0062】
ケース40及びボトム50によって治具本体31が構成されている。
(ホルダ60)
図3及び
図4に示すように、ホルダ60は、ベース筒部61、被ガイド部62、延出部63、リング用爪64、切欠65、規制突部66、係合段差67、及び切欠部68を有している。
【0063】
ベース筒部61は、治具本体31の内部に位置しており、軸線方向に沿って延びている。ベース筒部61の軸線方向の両端は、開口している。ベース筒部61の軸線方向における一側の開口部に、ボトム50の筒部53が挿入されている。ベース筒部61の軸線方向における他側の開口部を通じて長尺体90が挿入される。本実施形態では、ベース筒部61の内部が、治具本体31の挿入空間Sを構成している。
【0064】
被ガイド部62は、ベース筒部61の軸線方向における他側の端部から径方向の外側に突出するとともに周方向に沿って延びる外周面を有している。被ガイド部62は、周方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では、3つ)設けられている。被ガイド部62は、ケース40の先端部41に挿通されている。
【0065】
ホルダ60は、被ガイド部62の外周面がケース40のロック面42に当接されるとともに、ベース筒部61の内周面がボトム50の筒部53の外周面に当接されることによって、軸線方向に沿うスライド移動が可能に支持されている。
【0066】
延出部63は、被ガイド部62から軸線方向の他側に円弧状に延出されている。延出部63の外周面は、被ガイド部62の外周面と段差なく連なっている。
リング用爪64は、基準面54よりも軸線方向の他側において、すなわち長尺体90の挿入方向の後側においてマーカリング20を保持する。リング用爪64は、マーカリング20を弾性係合により着脱可能に保持するものである。
【0067】
リング用爪64は、ベース筒部61の他側の端部であり、周方向において隣り合う延出部63同士の間に位置する部分から延出されている。リング用爪64は、ベース筒部61の上記部分から径方向の外側に延びる第1部分64a、第1部分64aの先端から軸線方向の他側に円弧状に延びる第2部分64b、及び第2部分64bの先端の内面に突設された爪部64cを有している。第2部分64bの外周面は、延出部63の外周面と同一の仮想円上に位置している。
【0068】
切欠65は、リング用爪64の弾性変形を許容するものであり、リング用爪64と被ガイド部62との間に設けられている。
規制突部66は、被ガイド部62の軸線方向の一側の端に位置するとともに、被ガイド部62の外周面よりも径方向の外側に突出している。規制突部66は、ケース40の本体部43の内周面と先端部41の内周面との段差部に当接されることで、治具本体31からのホルダ60の抜け出しを規制する。
【0069】
係合段差67は、治具本体31に対してホルダ60が軸線方向の一側にスライド移動することでホルダ用爪56に係合して治具本体31に対するホルダ60のスライド移動を阻止する。係合段差67は、ベース筒部61の軸線方向の一側に位置している。本実施形態の係合段差67は、周方向に延びる溝である。
【0070】
切欠部68は、ベース筒部61の軸線方向の一側の端から他側に延びている。切欠部68は、周方向において等間隔にて複数(本実施形態では、3つ)設けられている。切欠部68は、係合段差67よりも軸線方向の他側の位置まで延びている。
【0071】
ホルダ60は、リング用爪64にマーカリング20が弾性係合により装着されている状態において、長尺体90がマーカリング20に挿通されることを許容するように構成されている。
【0072】
(プッシャ70)
図3及び
図4に示すように、プッシャ70は、ベース部71、長尺体用突部72、付勢部材用突部73、及び連結部74を有している。
【0073】
ベース部71は、ベース筒部61の内径よりも小さい外径を有する円板状であり、ホルダ60のベース筒部61内に収容されている。
長尺体用突部72は、ベース部71の軸線方向の他側の端面から軸線方向に沿って突出している。本実施形態の長尺体用突部72は、円柱状である。長尺体用突部72の中心軸線は、ベース部71の中心軸線と一致している。
【0074】
付勢部材用突部73は、ベース部71の軸線方向の一側の端面から軸線方向に沿って突出している。
連結部74は、ベース部71の外周面から径方向の外側に突出している。連結部74は、周方向に等間隔にて複数(本実施形態では、3つ)設けられている。連結部74は、ホルダ60のベース筒部61の切欠部68を径方向に貫通している。プッシャ70は、ベース筒部61に対して軸線方向の一側から組み付けられている。
【0075】
プッシャ70は、連結部74が切欠部68内をスライド移動することにより、ベース筒部61に対して軸線方向に沿うスライド移動が可能に設けられている。すなわち、プッシャ70は、治具本体31に対して軸線方向に沿うスライド移動が可能に設けられている。
【0076】
プッシャ70は、軸線方向において基準面54に対向するとともに、基準面54に対して当接することで長尺体90の挿入を当接規制する基準面用当接面70aを有している。本実施形態では、ベース部71の軸線方向の一側の端面が、基準面用当接面70aとして機能する。
【0077】
プッシャ70は、軸線方向において基準面用当接面70aとは反対側に形成され、挿入空間Sへ挿入された長尺体90の先端面が当接する長尺体用当接面70bを有している。長尺体用当接面70bは、インコア92の端面が当接されるインコア対応領域72aと、インコア92を装着していない状態にあるパイプ91の先端面が当接されるパイプ対応領域71aとを備えている。パイプ対応領域71aは、軸線方向において、インコア対応領域72aよりも軸線方向の一側、すなわち基準面54側に位置している。
【0078】
本実施形態では、長尺体用突部72の端面が、インコア対応領域72aとして機能するとともに、ベース部71の軸線方向の他側の端面が、パイプ対応領域71aとして機能する。
【0079】
(アンロッカ80)
図3及び
図4に示すように、アンロッカ80は、挿入空間Sに挿入された長尺体90に押されることでホルダ用爪56に接近するものである。アンロッカ80は、長尺体90の挿入が基準面54によって当接規制された状態では、ホルダ用爪56を押して弾性変形させることで係合段差67との係合を解除するものである。
【0080】
アンロッカ80は、略円筒状であり、ホルダ60のベース筒部61の外周面を覆う内周面を有している。アンロッカ80は、ベース筒部61に対して軸線方向の一側から組み付けられている。
【0081】
アンロッカ80は、切欠部81、規制突起82、及び環状爪83を有している。
切欠部81は、アンロッカ80の軸線方向の他側の端から一側に延びている。切欠部81は、プッシャ70の3つの連結部74に対応して3つ設けられている。切欠部81には、軸線方向の他側からプッシャ70の連結部74が挿入されている。
【0082】
規制突起82は、切欠部81の周方向において対向する一対の縁部にそれぞれ設けられている。
環状爪83は、アンロッカ80の軸線方向の一側の端部に設けられている。環状爪83は、アンロッカ80の全周にわたって設けられている。
【0083】
アンロッカ80は、ベース筒部61に対して軸線方向に沿うスライド移動が可能に設けられている。すなわち、アンロッカ80は、治具本体31に対して軸線方向に沿うスライド移動が可能に設けられている。
【0084】
切欠部81のうち環状爪83から規制突起82までの軸線方向の長さは、連結部74の厚みよりも大きく設定されている。
連結部74は、軸線方向の一側において環状爪83に当接規制されるとともに、他側において規制突起82に当接規制される。これにより、連結部74とアンロッカ80との間で軸線方向の駆動力が伝達されるように構成されている。すなわち、連結部74は、アンロッカ80に対して駆動連結されている。
【0085】
(付勢部材39)
図3及び
図4に示すように、付勢部材39は、軸線方向においてホルダ用爪56から離間する側へアンロッカ80を付勢するものである。詳しくは、付勢部材39は、軸線方向において治具本体31とプッシャ70との間に介在されており、プッシャ70を介してアンロッカ80を付勢する。
【0086】
本実施形態の付勢部材39は、例えばコイルバネであり、ボトム50の筒部53の内部に収容されている。付勢部材39は、ボトム50の底壁51の内面と、プッシャ70のベース部71の一側の端面とによって挟まれている。プッシャ70の付勢部材用突部73は、付勢部材39の内部に挿入されている。
【0087】
<切換手段35>
図3及び
図4に示すように、切換手段35は、ホルダ60からのマーカリング20の取り外しを阻止するロック状態と、ホルダ60からのマーカリング20の取り外しを許容するアンロック状態とに、ホルダ60の状態を切り換え可能である。切換手段35は、マーカリング20へ長尺体90が挿通される途中ではホルダ60の状態をロック状態とする。切換手段35は、長尺体90の挿入が基準面54によって当接規制されたことを契機として、ロック状態からアンロック状態へのホルダ60の状態の切り換えを許容するものである。
【0088】
本実施形態では、リング用爪64、ロック面42、ホルダ用爪56、係合段差67、アンロッカ80、付勢部材39、プッシャ70、及びアンロッカ用爪58により切換手段35が構成されている。
【0089】
<マーカリング20の装着手順>
次に、
図17~
図23を参照して、治具30を用いて長尺体90にマーカリング20を装着する手順について説明する。
【0090】
まず、
図17に示すように、作業者は、一方の手で治具30を把持するとともに他方の手でマーカリング20を把持する。そして、マーカリング20の外周面拡径部23aが治具30のリング用爪64側を向くようにしてリング用爪64の内周側にマーカリング20を押し込む。
【0091】
これにより、
図18に示すように、リング用爪64が弾性変形してマーカリング20の段差部25に爪部64cが係合することで、リング用爪64にマーカリング20が保持される。このとき、リング用爪64は、ケース40の先端部41よりも軸線方向の他側に位置しており、外部に露出している。
【0092】
続いて、
図19に示すように、作業者は、一方の手で治具30を把持するとともに他方の手で、インコア92がパイプ91に挿入されている長尺体90を把持する。そして、インコア92を前にして長尺体90をマーカリング20へ挿通する。この際、ロック片28の先端に対してパイプ91の外周面が摺動することで長尺体90の移動が許容される。このとき、マーカリング20のロック片28とパイプ91との間に作用する摩擦抵抗によって、長尺体90の挿通に伴ってホルダ60が軸線方向に沿ってスライド移動する。ホルダ60のスライド移動に伴ってホルダ60のリング用爪64と治具本体31のロック面42とが対向する。これにより、ロック面42がリング用爪64の弾性変形を当接規制することでリング用爪64からのマーカリング20の取り外しを阻止するロック状態となる。またこのとき、ホルダ60のベース筒部61の先端がボトム50の底壁51の内面に当接する。また、ホルダ用爪56と、ホルダ60の係合段差67とが係合して治具本体31に対するホルダ60のスライド移動が阻止されることでロック状態が維持される。
【0093】
図20に示すように、長尺体90を治具30に対して更に押し込むことで長尺体90の先端面によってプッシャ70が押し込まれる。プッシャ70の連結部74がアンロッカ80に駆動連結されているので、プッシャ70のスライド移動に伴ってアンロッカ80もスライド移動する。そして、プッシャ70の基準面用当接面70aが基準面54に当接されることで、長尺体90の挿入が当接規制される。この状態では、長尺体90によって押されることでアンロッカ80の環状爪83がホルダ用爪56を押して径方向の外側に弾性変形させることでホルダ用爪56と係合段差67との係合が解除される。またこのとき、アンロッカ用爪58は、環状爪83に弾性係合している。
【0094】
図21に示すように、作業者が、長尺体90を治具30から抜け出す側に引っ張るなどして治具30への長尺体90の押し込みを解除すると、付勢部材39の付勢力や、マーカリング20を介して作用する作業者が長尺体90を引っ張る力により、軸線方向においてホルダ60が基準面54から離間する側へ押されてスライド移動する。また、付勢部材39の付勢力により、プッシャ70及びプッシャ70に連結されたアンロッカ80が、基準面54から離間する側へスライド移動する。
【0095】
図22に示すように、軸線方向においてホルダ60が基準面54から更に離間すると、ロック面42がリング用爪64に当接しなくなってリング用爪64の弾性変形が許容される。すなわち、ホルダ60の状態がロック状態から、リング用爪64からのマーカリング20の取り外しを許容するアンロック状態へ切り換えられる。
【0096】
これにより、
図23に示すように、パイプ91の外周面のうち長尺体90の先端面から所定距離の位置にマーカリング20が装着された長尺体90を治具30から引き抜くことができる。
【0097】
ところで、
図20に示すように、ホルダ用爪56と係合段差67との係合が解除された後、アンロッカ80がホルダ用爪56から離間することで、ホルダ用爪56が係合段差67に再び係合してロック状態に復帰するおそれがある。この場合、治具本体31から長尺体90を引き抜くことができなくなる。
【0098】
ここで、ロック状態におけるプッシャ70の連結部74とアンロッカ80との間には、軸線方向において基準面54とは反対の側に、プッシャ70とアンロッカ80との相対移動を許容する隙間Vが形成されている。また、治具本体31のアンロッカ用爪58が、ホルダ用爪56に当接した状態にあるアンロッカ80に対して弾性係合することで、軸線方向において基準面54から離間する側へスライド移動するアンロッカ80に対して摩擦抵抗が付与される。
【0099】
このため、
図21に示すように、ホルダ用爪56と係合段差67との係合が解除された後、付勢部材39の付勢力によってプッシャ70が基準面54から離間する側へスライド移動し始めても、上記隙間Vがなくなるまではアンロッカ80はスライド移動を始めない。これにより、プッシャ70が基準面54から離間する側へスライド移動し始めてから、アンロッカ80がスライド移動を始めるまでに時間遅れを生じさせることができる。したがって、ホルダ用爪56が係合段差67に再び係合してロック状態に復帰することを阻止できる。
【0100】
なお、プッシャ70のスライド移動に伴って隙間Vがなくなると、プッシャ70の連結部74によってアンロッカ80が押されることでアンロッカ用爪58とアンロッカ80との弾性係合が解除される(以上、作用1)。
【0101】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1-1)マーカリング20は、樹脂製のパイプ91を備えるとともに管継手100に挿入される長尺体90に適用されるものであり、パイプ91の外周面に装着可能に構成されている。
【0102】
こうした構成によれば、パイプ91の外周面に装着されたマーカリング20は、同外周面よりも径方向の外側に突出する。したがって、マーキングの視認性を高めることができる。
【0103】
また、
図24に示すように、マーカリング20は、パイプ91を被覆するコルゲートなどの被覆材110によって覆われにくい。このため、施工後の確認作業において、被覆材110を捲らなくてもマーカリング20を視認できる。
【0104】
(1-2)マーカリング20は、リング本体21と、複数のロック片28とを備えている。ロック片28は、リング本体21の軸線方向の一側への長尺体90の移動を許容する一方、パイプ91の外周面に係合することで軸線方向の他側への長尺体90の移動を阻止する。
【0105】
こうした構成によれば、マーカリング20に対して、リング本体21の軸線方向の一側へ向けて長尺体90を挿通することで、パイプ91の外周面にマーカリング20を装着することができる。
【0106】
一方、ロック片28がパイプ91の外周面に係合することで、リング本体21の軸線方向の他側への長尺体90の移動が阻止される。このため、長尺体90の先端面から所定距離の位置に装着されたマーカリング20に対して外力が作用した場合であっても、マーカリング20が長尺体90の先端側へ移動することが阻止される。これにより、管継手100に対する長尺体90の挿入長さが上記所定距離よりも短くなる誤組付けを防止できる。
【0107】
また、マーカリング20が装着された長尺体90が管継手100に挿入された状態において、管継手100に対する長尺体90の挿入長さが不足している場合がある。この場合、作業者が、マーカリング20を管継手100側に移動させることで、適正な挿入作業が行われたように誤魔化すおそれがある。この点、上記構成によれば、マーカリング20を管継手100側に移動させることができないため、上述した誤魔化し作業が阻止される。
【0108】
(1-3)複数のロック片28は、リング本体21の径方向の内側ほど軸線方向の一側に位置するように傾斜している。
こうした構成によれば、マーカリング20へ長尺体90を挿通する際、リング本体21の軸線方向の一側へ長尺体90を移動させる場合には、ロック片28の先端に対してパイプ91の外周面が摺動することで長尺体90の移動が許容される。一方、リング本体21の軸線方向の他側へ長尺体90を移動させる場合には、ロック片28の先端がパイプ91の外周面に食い込むように係合することで長尺体90の移動が阻止される。したがって、ロック片28を容易に実現できる。
【0109】
(1-4)リング本体21は、ロック片28と一体にプレス成形された金属製の環状体27と、環状体27を外周側から保持する樹脂製の保持部材22とを備えている。保持部材22の外周面には、段差部25が形成されている、
こうした構成によれば、パイプ91の外周面に係合する複数のロック片28及びこれらロック片28と一体にプレス成形された環状体27については金属製とすることで剛性を容易に確保できる。また、マーカリング20をパイプ91の外周面に装着する際に用いられる治具30のリング用爪64によって、保持部材22の外周面に形成された段差部25が係合保持される。上記構成によれば、保持部材22を樹脂製とすることで、段差部25を有する保持部材22の加工精度を容易に高めることができる。
【0110】
(1-5)治具30は、マーカリング20をパイプ91の外周面のうち長尺体90の先端面から所定距離の位置に装着するために用いられる。治具30は、治具本体31と、ホルダ60と、切換手段35とを備えている。
【0111】
こうした構成によれば、ホルダ60に保持されているマーカリング20へ長尺体90を挿通する際、挿入空間Sへの長尺体90の挿入が治具本体31の基準面54に当接規制されるまでは、ホルダ60の状態がロック状態とされる。このため、基準面54に当接規制される前に、長尺体90を引き抜こうとすると、ホルダ60からのマーカリング20の取り外しが阻止される。これにより、長尺体90の先端面から所定距離未満の位置にマーカリング20が装着されることがない。
【0112】
一方、長尺体90の挿入が治具本体31の基準面54に当接規制されると、ホルダ60の状態がロック状態からアンロック状態へ切り換えられる。これにより、ホルダ60からのマーカリング20の取り外しが許容されるので、長尺体90の先端面から所定距離の位置にマーカリング20が装着される。
【0113】
また、パイプ91の外周面に装着されたマーカリング20は、同外周面よりも径方向の外側に突出する。したがって、マーキングの視認性を高めることができる。
(1-6)ホルダ60は、治具本体31によって、長尺体90の軸線方向に沿うスライド移動が可能に支持されている。切換手段35は、リング用爪64と、ロック面42とを備えている。切換手段35は、ロック状態においては、ロック面42がリング用爪64に対向してリング用爪64の弾性変形を当接規制することでリング用爪64からのマーカリング20の取り外しを阻止するように構成されている。切換手段35は、アンロック状態においては、ロック面42がリング用爪64に対して軸線方向にずれてリング用爪64の弾性変形を許容することでリング用爪64からのマーカリング20の取り外しを許容するように構成されている。
【0114】
こうした構成によれば、リング用爪64に保持されているマーカリング20へ長尺体90を挿通する際、ロック片28とパイプ91との間に作用する摩擦抵抗によって、長尺体90の挿通に伴ってホルダ60が長尺体90の軸線方向に沿ってスライド移動する。そして、ホルダ60のスライド移動に伴ってホルダ60のリング用爪64と治具本体31のロック面42との位置関係が変更されることにより、ホルダ60の状態が、ロック状態とアンロック状態との間で切り換えられる。したがって、切換手段35を容易に実現できる。
【0115】
(1-7)切換手段35は、ホルダ用爪56と、係合段差67と、アンロッカ80と、付勢部材39とを備えている。
こうした構成によれば、治具本体31に形成されたホルダ用爪56と、ホルダ60に形成された係合段差67とが係合して治具本体31に対するホルダ60のスライド移動が阻止されることでロック状態が維持される。このため、ホルダ60に保持されているマーカリング20へ長尺体90を挿通する際、挿入空間Sへの長尺体90の挿入が治具本体31の基準面54に当接規制されるまでは、ホルダ60をスライド移動させることができない。これにより、治具本体31から長尺体90を引き抜くことができなくなる。
【0116】
一方、長尺体90の挿入が基準面54によって当接規制された状態では、長尺体90によって押されることでアンロッカ80がホルダ用爪56を押して弾性変形させることで係合段差67との係合が解除される。またこのとき、長尺体90を治具30から抜け出す側に引っ張るなどして治具30への長尺体90の押し込みを解除すると、付勢部材39の付勢力や、マーカリング20を介して作用する作業者による長尺体90を引っ張る力によって、軸線方向においてホルダ60が基準面54から離間する側へスライド移動する。これにより、ロック面42がリング用爪64に当接しなくなってリング用爪64の弾性変形が許容される、すなわちホルダ60の状態がロック状態からアンロック状態へ切り換えられる。
【0117】
このように上記構成によれば、基準面54によって当接規制されるまで長尺体90の挿入を行わなければ治具本体31から長尺体90を引き抜くことができない。これにより、パイプ91の外周面のうち長尺体90の先端面から所定距離の位置にマーカリング20を装着することが、より確実にできる。
【0118】
(1-8)切換手段35は、治具本体31に対して軸線方向へのスライド移動が可能なプッシャ70を備えている。プッシャ70は、基準面用当接面70aと、長尺体用当接面70bと、連結部74とを備えている。
【0119】
こうした構成によれば、長尺体90の先端面によって長尺体用当接面70bが押されることでプッシャ70が基準面54に向けてスライド移動する。そして、プッシャ70の基準面用当接面70aが基準面54に当接されることで、長尺体90の挿入が当接規制される。また、プッシャ70の連結部74がアンロッカ80に駆動連結されているので、プッシャ70のスライド移動に伴ってアンロッカ80もスライド移動する。このように、プッシャ70を設けることによって、治具本体31の挿入空間Sに挿入された長尺体90に押されることでホルダ用爪56に接近するようにスライド移動するアンロッカ80を容易に実現できる。
【0120】
(1-9)付勢部材39は、軸線方向において治具本体31とプッシャ70との間に介在されている。ロック状態におけるプッシャ70の連結部74とアンロッカ80との間には、軸線方向において基準面54とは反対の側に、プッシャ70とアンロッカ80との相対移動を許容する隙間Vが形成されている。切換手段35は、アンロッカ用爪58を備えている。
【0121】
こうした構成によれば、上記作用1を奏することができるので、ホルダ用爪56が係合段差67に再び係合してロック状態に復帰することを阻止できる。
(1-10)長尺体90は、パイプ91と、インコア92とを備えている。プッシャ70の長尺体用当接面70bは、インコア対応領域72aと、パイプ対応領域71aとを備えている。パイプ対応領域71aは、軸線方向において、インコア対応領域72aよりも基準面54側に位置している。
【0122】
インコア92が挿入されていないパイプ91が管継手100に挿入される誤組付けが生じる場合がある。インコア92がパイプ91に挿入されていない場合には、長尺体90の先端面、すなわちパイプ91の先端面からマーカリング20までの距離が、インコア92のフランジ部94の厚みの分だけ上記所定距離よりも長くなる。しかしながら、フランジ部94の厚みは比較的小さいため、マーカリング20を目視することによってインコア92がパイプ91に挿入されているか否かを見分けることは難しい。
【0123】
この点、上記構成によれば、インコア92がパイプ91に挿入されている場合、インコア92のフランジ部94がプッシャ70のインコア対応領域72aに当接する。一方、インコア92がパイプ91に挿入されていない場合には、パイプ91の先端面がプッシャ70のパイプ対応領域71aに当接する。ここで、パイプ対応領域71aが、軸線方向において、インコア対応領域72aよりも基準面54側に位置している。このため、長尺体90の先端面からマーカリング20までの距離を、インコア92のフランジ部94の厚み分よりも大きい長さだけ長くすることができる。これにより、作業者は、インコア92が挿入されていないことを容易に把握できるようになる。
【0124】
<第2実施形態>
以下、
図26~
図39を参照して、第2実施形態のマーキング用治具(以下、治具230)について説明する。
【0125】
図33~
図35に示すように、治具230は、ケース240、プッシャ260、カバー270、第1付勢部材281、及び第2付勢部材282を備えている。
(ケース240)
図26~
図36に示すように、ケース240は、略直方体箱状である。
【0126】
図33及び
図34に示すように、ケース240は、略長方形板状の底壁241と、底壁241の幅方向の両端にそれぞれ立設された一対の側壁244と、底壁241の長手方向の一端及び他端にそれぞれ立設された前壁246及び後壁248とを有している。
【0127】
なお、以降において、底壁241の長手方向を前後方向とするとともに、前後方向において前壁246及び後壁248が位置する側をそれぞれ前側及び後側として説明する。また、底壁241の厚み方向を上下方向とするとともに、上下方向において底壁241が位置する側及びその反対側を下側及び上側として説明する。また、前後方向及び上下方向の双方に直交する方向を幅方向として説明する。
【0128】
図35及び
図36に示すように、ケース240は、一対の側壁244、前壁246、及び後壁248の上端縁によって形成された開口部を有している。
図33に示すように、ケース240には、ケース240の内部を、前側収容部252と、前側収容部252の後側に位置する後側収容部254とに区画する区画壁250が設けられている。
【0129】
図35に示すように、前側収容部252及び後側収容部254は、上方に開口する前側開口部253及び後側開口部255をそれぞれ有する。区画壁250は、底壁241及び一対の側壁244の内面に連なっている。
【0130】
図35及び
図36に示すように、後壁248及び区画壁250には、ケース240内への長尺体90の挿入を許容する挿通凹部249,251がそれぞれ設けられている。挿通凹部249,251は、上方に開口する正面視U字状をなしている(
図28参照)。挿通凹部249,251は、同一の形状及び大きさを有している。
【0131】
図33に示すように、底壁241の内面には、前後方向に沿って延在する複数(本実施形態では3つ)の案内リブ243が突設されている。複数の案内リブ243は、幅方向に互いに間隔をあけて設けられている。案内リブ243の上端は、挿通凹部249,251の上端縁のうち前後方向において当該案内リブ243と重なる部分と上下方向における位置が同一である。すなわち、幅方向において外側に位置する案内リブ243の上端は、内側に位置する案内リブ243の上端よりも上方に位置している。
【0132】
図34に示すように、底壁241の内面のうち幅方向の両側に位置する2つの案内リブ243よりも幅方向の外側には、対をなす2つの規制リブ242が突設されている。規制リブ242は、後述するプッシャ260の上方への移動を規制する規制凸部242aを有している。本実施形態では、三対(都合6つ)の規制リブ242が前後方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0133】
図35及び
図36に示すように、一対の側壁244の前端の上端縁近傍には、後述するカバー270を回転可能に支持する一対の支持孔245が設けられている。
(プッシャ260)
図33~
図35に示すように、プッシャ260は、前側収容部252に収容されるとともに前後方向に移動可能に構成されている。
【0134】
プッシャ260は、前壁246と平行に配置される正面視長方形板状の押圧壁261と、押圧壁261の幅方向の両端からそれぞれ後側に延在する一対の側壁262と、一対の側壁262にそれぞれ設けられる一対のロック爪263とを有する。
【0135】
押圧壁261は、前側の規制リブ242と中央の規制リブ242との間に配置されている(
図34参照)。
ロック爪263は、側壁262の後端の上端部分から後側に突出している。
【0136】
図35に示すように、一方の側壁262には、後述する第2付勢部材282の一端を支持する支持凹部264が設けられている。
図34~
図36に示すように、側壁262の下端には、前後方向に沿って延在する脚部265が設けられている。脚部265は、押圧壁261の後方及び前方の双方にそれぞれ延在している。
【0137】
脚部265のうち側壁262よりも幅方向の内側に突出している部分の上面が規制リブ242の規制凸部242aの下面に当接することにより、プッシャ260の上方への移動が規制されている。
【0138】
図33に示すように、押圧壁261の前面には、前方に突出するばね支持部266が設けられている。ばね支持部266は、前後方向に沿って延在している。ばね支持部266は、例えば断面十字状である。
【0139】
プッシャ260は、脚部265の後端が区画壁250の前面に当接する後側位置と、脚部265の前端が前壁246の内面である基準面247に当接する前側位置との間で前後方向に移動可能に構成されている。
【0140】
(第1付勢部材281)
第1付勢部材281は、プッシャ260を後側に向けて付勢するものであり、押圧壁261の前面と前壁246の内面とに挟まれた状態で設けられている。
【0141】
本実施形態の第1付勢部材281は、コイルばねである。プッシャ260のばね支持部266が第1付勢部材281に挿入されている。
(カバー270)
図33~
図36に示すように、カバー270は、ケース240の前側開口部253を開閉可能に構成されたカバー本体271と、一対の支持孔245にそれぞれ挿入される2つの回動軸部272とを有している。
【0142】
以降において、ケース240の前側開口部253を閉鎖している姿勢のカバー270の構成について説明する。
カバー本体271は、前後方向に長い略長方形板状である。
【0143】
カバー本体271の内面には、前後方向に沿って延在する複数(本実施形態では3つ)の案内リブ274が突設されている。複数の案内リブ274は、ケース240の複数の案内リブ243と上下方向においてそれぞれ対向している。
【0144】
幅方向における外側に位置する案内リブ274の下端は、内側に位置する案内リブ274の下端よりも下方に位置している(
図28参照)。
挿通凹部249,251の上縁部、複数の案内リブ243の上端、複数の案内リブ274の下端上を長尺体90の外周面が摺動することにより、ケース240内への前後方向に沿った長尺体90の挿入が案内されるように構成されている。
【0145】
図34~
図36に示すように、カバー270は、プッシャ260の一対のロック爪263にそれぞれ係止可能に構成された一対のロック爪273を有している。
図34に示すように、ロック爪273は、カバー本体271の後端から下側に突出するとともに屈曲して前側に突出している。
【0146】
図36に示すように、カバー本体271の前端部のうち幅方向の一端部には、後述する第2付勢部材282を収容する収容凹部275が設けられている。
(第2付勢部材282)
図35に示すように、第2付勢部材282は、カバー270を開き方向に回転付勢するものである。本実施形態の第2付勢部材282は、ねじりコイルばねである。
【0147】
前述したように、第2付勢部材282の一端は、プッシャ260の支持凹部264に支持されている。また、第2付勢部材282の他端は、カバー本体271の内面に支持されている。
【0148】
こうした構成を備える治具230においては、
図34に示すように、第2付勢部材282の付勢力に抗してカバー270を閉じる際、カバー270のロック爪273によりロック爪263が前側に押圧されることで、プッシャ260が前側に移動する。そして、カバー270がケース240の前側開口部253を閉じると、ロック爪273によりロック爪263に作用していた押圧力が解除されることで、プッシャ260が後側に移動する。これにより、ロック爪263がロック爪273に係合される。これにより、カバー270の開き方向への回転移動が阻止された状態が維持される。
【0149】
<マーカリング20の装着手順>
次に、
図37~
図39を参照して、治具230を用いて長尺体90にマーカリング20を装着する手順について説明する。
【0150】
まず、
図37に示すように、作業者は、一方の手で治具230を把持するとともに他方の手でマーカリング20を把持する。そして、後側収容部254に対して上方からマーカリング20を押し込む。図示は省略するが、マーカリング20は、ロック片28の先端縁が前側を向くようにして後側収容部254に収容される。
【0151】
続いて、作業者は、一方の手で治具30を把持するとともに他方の手で、長尺体90を把持する。そして、長尺体90を、挿通凹部249を通じてマーカリング20へ挿通するとともに、挿通凹部251を通じてプッシャ260の押圧壁261に押し当てる。この状態においては、ロック爪263,273同士が係合しており、カバー270を開くことができない。このため、長尺体90がカバー270に干渉することで、長尺体90が挿通された状態のマーカリング20を後側収容部254から取り外すことができない(ロック状態)。
【0152】
さらに、
図38に示すように、長尺体90によって押圧壁261を押し込むと、プッシャ260の脚部265の前端が基準面に当接することで長尺体90の挿入が規制される。このとき、長尺体90の先端面からマーカリング20までの距離が所定距離となる。またこのとき、プッシャ260の前側への移動に伴ってロック爪263とカバー270のロック爪273との係合状態が解除される。
【0153】
これにより、
図39に示すように、第2付勢部材282の付勢力によってカバー270が開く。このため、長尺体90が挿通された状態のマーカリング20を上方に移動させることにより、前側開口部253及び後側開口部255を通じて治具230から取り外すことができる(アンロック状態)。
【0154】
なお、本実施形態において、前側収容部252が挿入空間に相当するとともに、ケース240が治具本体に相当する。また、後側収容部254がホルダに相当する。また、プッシャ260、カバー270、第1付勢部材281、及び第2付勢部材282が切換手段に相当する。
【0155】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(2-1)プッシャ260の脚部265が基準面247に当接するまで長尺体90を挿入すると、カバー270が回動して開くことでマーカリング20が装着された状態の長尺体90を軸線方向と交差する方向、すなわち上方に移動させて治具230から取り出すことができる。これにより、長尺体90に対するマーカリング20の位置ずれを抑制することができる。
【0156】
<第3実施形態>
以下、
図40~
図52を参照して、パイプカッタを具体化した第3実施形態について説明する。
【0157】
パイプカッタ330は、マーカリング20をパイプ91の外周面のうちパイプ91の先端面から所定距離の位置に装着された状態にするために用いられるものである。
図40~
図49に示すように、パイプカッタ330は、切断部340と保持部370とを備えている。
【0158】
<切断部340>
図40、
図41、及び
図46に示すように、切断部340は、支持部341、刃体350、及び刃体ハンドル部352を有している。
【0159】
支持部341は、パイプ91の外周面を支持する支持面342を有している。支持面342は、断面V字状をなしている。
なお、以降において、支持部341に支持されている状態のパイプ91の軸線方向を単に軸線方向として説明する。また、軸線方向に直交する方向であり、支持部341の高さ方向を単に高さ方向として説明するとともに、高さ方向において支持面342が設けられている側を上側とし、反対側を下側として説明する。また、軸線方向及び高さ方向の双方に直交する方向を長手方向として説明する。
【0160】
支持面342には、後述する刃体350を逃がす逃がし溝343が設けられている。逃がし溝343は、長手方向に沿って延在している。
支持部341には、長手方向に沿って延在する本体ハンドル部344が一体に設けられている。
【0161】
図42、
図43、及び
図47に示すように、支持部341及び本体ハンドル部344の下面には、後述する刃体ハンドル部352の一部を収容可能に構成された凹部345が設けられている。
【0162】
図42及び
図47に示すように、支持部341の軸線方向の一側の側面には、支持部341に対して保持部370を着脱可能に取り付ける第1係合部346及び第2係合部347が設けられている。
【0163】
本実施形態では、上記側面に、一対の第1係合部346が長手方向において互いに間隔をあけて突設されている。第1係合部346は、高さ方向に沿って延在するリブであり、上記側面から軸線方向に突出するとともに屈曲して長手方向の外側に突出している。また、上記側面に、一対の第2係合部347が、一対の第1係合部346の間において長手方向に互いに間隔をあけて凹設されている。第2係合部347は、支持部341の下面に開口している。
【0164】
図42及び
図47に示すように、刃体350は、支持面342上に支持されたパイプ91を、パイプ91の軸線方向に直交する方向に沿って切断するものであり、直刃である刃先351を有している。
【0165】
図40~
図47に示すように、刃体ハンドル部352は、刃体350を回動操作するものであり、刃体350に固定されるとともに軸線方向に平行な軸線を中心に支持部341に対して回動可能に設けられている。
【0166】
刃体ハンドル部352は、刃体350の基端部を軸線方向の両側から挟むとともに刃先351の延在方向において刃体350の先端とは反対側に延在している。
本実施形態では、軸線方向に沿って延在する連結軸部360により、本体ハンドル部344に対して、刃体ハンドル部352及び刃体350が回動可能に連結されている。連結軸部360は、スリーブねじ及びスリーブねじに螺入される雄ねじを有している。
【0167】
<保持部370>
図40、
図41、及び
図46に示すように、保持部370は、マーカリング20を保持するものである。保持部370は、マーカリング20を収容する収容凹部371を有している。保持部370は、支持部341に対して軸線方向に隣り合って取り付けられている。
【0168】
図42及び
図47に示すように、保持部370のうち支持部341に対向する壁部には、支持部341の一対の第1係合部346がそれぞれ嵌入される一対の第1係合部376が設けられている。第1係合部376は、高さ方向に延在するスリットである。
【0169】
上記壁部には、支持部341の一対の第2係合部347がそれぞれ係合される一対の第2係合部377が設けられている。第2係合部377は、爪部を有している。
図40、
図41、及び
図46に示すように、保持部370は、断面V字状をなすとともに支持面342と面一をなす支持面373を有している。
【0170】
収容凹部371は、支持面373に対して支持部341とは反対側に位置するとともに、上方に開口している。
収容凹部371の軸線方向の幅は、マーカリング20の幅よりも僅かに大きく設定されている。これにより、収容凹部371内におけるマーカリング20の軸線方向における移動が規制されている。
【0171】
図42、
図43、
図46、及び
図47に示すように、収容凹部371の底壁には、規制孔372が設けられている。規制孔372の縁部にマーカリング20の外周面が当接することで、収容凹部371内におけるマーカリング20の長手方向における移動が規制される。
【0172】
図40~
図44、及び
図45に示すように、収容凹部371の側壁374には、上方に開口するとともにパイプ91の貫通を許容する許容凹部375が設けられている。許容凹部375は、収容凹部371に収容されたマーカリング20へのパイプ91の挿通、及びパイプ91が挿通された状態のマーカリング20の収容凹部371への収容を許容するように構成されている。
【0173】
パイプカッタ330においては、保持部370に保持された状態のマーカリング20と刃体350の刃先351との軸線方向における距離が、所定距離に設定されている。
<マーカリング20の装着手順>
次に、
図50~
図52を参照して、パイプカッタ330を用いて、マーカリング20をパイプ91の外周面のうちパイプ91の先端面から所定距離の位置に装着された状態にする手順について説明する。
【0174】
まず、
図50に示すように、作業者は、収容凹部371にマーカリング20を収容する。このとき、マーカリング20の外周面を規制孔372の縁部に当接させることでマーカリング20の位置決めを行う。なお、図示は省略するが、マーカリング20は、ロック片28の先端縁が支持部341側を向くようにして収容凹部371に収容される。
【0175】
続いて、作業者は、刃体ハンドル部352を回動操作することで刃体350を支持面342から離間させる。
続いて、作業者は、パイプ91を、許容凹部375を通じてマーカリング20に挿通するとともに、軸線方向においてパイプ91の先端が刃体350の位置を越えるまで、より好ましくは支持部341を突き抜けるまでパイプ91を押し込む。
【0176】
続いて、
図51に示すように、作業者は、一方の手でパイプ91を保持しつつ、他方の手で本体ハンドル部344と刃体ハンドル部352とを握るようにして刃体350を回動操作することで、パイプ91に対して刃先351を押しつける。これにより、
図52に示すように、支持面342と刃先351との協働によりパイプ91が切断される。
【0177】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(3-1)保持部370にマーカリング20が保持されており、且つマーカリング20にパイプ91が挿通されている状態において、切断部340の刃体350によりパイプ91が切断される。これにより、マーカリング20が、パイプ91の切断面、すなわち先端面から所定距離の位置に装着された状態になる。
【0178】
また、パイプ91の外周面に装着されたマーカリング20は、同外周面よりも径方向の外側に突出する。このため、作業者は、マーカリング20を目視することによって管継手に対する長尺体90の挿入長さを容易に把握することができる。したがって、視認性を高めることができる。
【0179】
(3-2)作業者は、収容凹部371にマーカリング20を収容することで保持部370によりマーカリング20を容易に保持させることができる。また、作業者は、刃体ハンドル部352と共に刃体350を回動させることで、支持部341により支持された状態のパイプ91を切断することができる。したがって、支持部341、刃体350、及び刃体ハンドル部352といった既存の切断部340の構成を流用しつつパイプカッタ330を容易に具現化することができる。
【0180】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0181】
・上記実施形態では、リング用爪64が外部に露出している状態において、マーカリング20へ長尺体90を挿通するようにしたが、治具30の使用方法はこれに限られない。マーカリング20を係合保持したリング用爪64を、手指を使ってケース40の内部に押し込んだ後に、マーカリング20へ長尺体90を挿通するようにしてもよい。
【0182】
・長尺体用突部72を省略することもできる。すなわち、パイプ対応領域71aとインコア対応領域72aとが軸線方向において同一位置に設けることもできる。
・アンロッカ用爪58を省略することもできる。
【0183】
・治具30を用いずに長尺体90に対してマーカリング20を装着するようにしてもよい。
・マーカリング20全体を金属製にすることもできる。また、マーカリング20全体を樹脂製にすることもできる。
【0184】
・マーカリング20は、リング本体21とロック片28とを備えるものに限定されない。例えば
図25に示すように、リング本体121と、リング本体121によって保持されるとともにパイプ91の外周面に嵌合可能な円環状の嵌合部材128とによってマーカリング120を構成してもよい。
【0185】
・治具本体31を透明又は半透明の材料により構成したり、治具本体31(ケース40)において基準面54の付近に確認窓を形成したりすることで、長尺体90の挿入が基準面54によって当接規制された状態となったことを外部より視認可能とすることもできる。
【0186】
・長尺体90の挿入が基準面54によって当接規制された状態となったことを報知する手段を備えること。例えば、プッシャ70の基準面用当接面70aが基準面54に当接されたことを契機として、表示や、光、音、振動等を生起させて、その旨を作業者へ知らせるようにすることもできる。
【0187】
・上記実施形態においては、切換手段35を機械的な構成によって具現化しているが、これに限られない。要するに、切換手段は、ホルダからのマーカリングの取り外しを阻止するロック状態と、ホルダからのマーカリングの取り外しを許容するアンロック状態とに、ホルダの状態を切り換え可能であり、マーカリングへ長尺体90が挿通される途中ではホルダの状態をロック状態とする一方、長尺体90の挿入が基準面によって当接規制されたことを契機として、ロック状態からアンロック状態へのホルダの状態の切り換えを許容するものであればよく、電気的な構成によって具現化することもできる。
【0188】
・治具30は、管継手100に挿入される長尺体90のパイプ91の外周面にマーカリングを装着するために用いられるものに限定されず、電線などの他の長尺体の外周面にマーカリングを装着するために用いることもできる。
【0189】
・マーカリング20の装着手順は、第3実施形態において説明したものに限定されず、マーカリング20にパイプ91を挿通した後に、マーカリング20を収容凹部371に収容するようにしてもよい。
【0190】
・第3実施形態において、支持面342及び支持面373の形状は、断面V字状に限られない。支持面342及び支持面373の形状は、パイプ91を支持可能な形状であればよく、例えば断面U字状としてもよい。
【0191】
・本体ハンドル部344と刃体ハンドル部352の形状は適宜変更可能である。
・第3実施形態において、保持部370が、支持部341の軸線方向の一側だけでなく、他側にも着脱可能に取り付けられるようにしてもよい。これにより、作業者の利き手(右利き、左利き)に応じて保持部370の取付位置を変更することができる。
【0192】
・第3実施形態において、保持部370を支持部341に対して着脱不能に設けることもできる。
【符号の説明】
【0193】
20,120…マーカリング
21,121…リング本体
22…保持部材
23…第1保持部材
23a…外周面拡径部
23b…外周面縮径部
23c…内周面拡径部
23d…内周面縮径部
24…爪部
25…段差部
26…第2保持部材
26a…外周面拡径部
26b…外周面縮径部
27…環状体
28…ロック片
30…治具
31…治具本体
35…切換手段
39…付勢部材
40…ケース
41…先端部
42…ロック面
43…本体部
50…ボトム
51…底壁
52…周壁
53…筒部
54…基準面
55…脚部
56…ホルダ用爪
56a…脚部
56b…爪部
57…爪部
58…アンロッカ用爪
58a…脚部
58b…爪部
59…爪部
60…ホルダ
61…ベース筒部
62…拡径部
63…延出部
64…リング用爪
64a…第1部分
64b…第2部分
64c…爪部
65…切欠
66…規制突部
67…係合段差
68…切欠部
70…プッシャ
70a…基準面用当接面
70b…長尺体用当接面
71…ベース部
71a…パイプ対応領域
72…長尺体用突部
72a…インコア対応領域
73…バネ用突部
74…連結部
80…アンロッカ
81…切欠部
82…規制突起
83…環状爪
90…長尺体
91…パイプ
92…インコア
93…インコア本体部
94…フランジ部
100…管継手
110…被覆材
128…嵌合部材
230…治具
240…ケース
241…底壁
242…規制リブ
242a…規制凸部
243…案内リブ
244…側壁
245…支持孔
246…前壁
247…基準面
248…後壁
249…挿通凹部
250…区画壁
251…挿通凹部
252…前側収容部
253…前側開口部
254…後側収容部
255…後側開口部
260…プッシャ
261…押圧壁
262…側壁
263…ロック爪
264…支持凹部
265…脚部
266…ばね支持部
270…カバー
271…カバー本体
272…回動軸部
273…ロック爪
274…案内リブ
275…収容凹部
281…第1付勢部材
282…第2付勢部材
330…パイプカッタ
340…切断部
341…支持部
342…支持面
343…逃がし溝
344…本体ハンドル部
345…凹部
346…第1係合部
347…第2係合部
350…刃体
351…刃先
352…刃体ハンドル部
360…連結軸部
370…保持部
371…収容凹部
372…規制孔
373…支持面
374…側壁
375…許容凹部
376…第1係合部
377…第2係合部