(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009783
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】光学ガラスおよび光学素子
(51)【国際特許分類】
C03C 3/068 20060101AFI20250109BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036601
(22)【出願日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2023105819
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522503632
【氏名又は名称】豪雅光電科技(威海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 創
(72)【発明者】
【氏名】茅野 康平
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
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4G062NN29
(57)【要約】
【課題】高屈折率および低分散性を有し、かつガラス転移温度が低い光学ガラスを提供すること。
【解決手段】質量%表示のガラス組成において、B2O3含有量が15.00質量%以上33.00質量%以下、ZnO含有量が6.00質量%以上18.00質量%以下、Li2O含有量が0.00質量%超、Y2O3含有量が3.00質量%以上23.00質量%以下、Ta2O5、Nb2O5、Bi2O3、TiO2およびWO3の合計含有量(Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3)が0.00質量%以上0.30質量%以下、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量REが43.00質量%以上58.00質量%以下、 ZrO2、Ta2O5、Nb2O5およびWO3の合計含有量に対する上記合計含有量REの質量比(RE/(ZrO2+Ta2O5+Nb2O5+WO3))が2.00以上13.00以下、ZnO含有量に対する上記合計含有量REの質量比(RE/ZnO)が3.80以上であり、屈折率ndが1.750以上1.790であり、かつアッベ数νdが47.5以上50.5以下である光学ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%表示のガラス組成において、
B2O3含有量が15.00質量%以上33.00質量%以下、
ZnO含有量が6.00質量%以上18.00質量%以下、
Li2O含有量が0.00質量%超、
Y2O3含有量が3.00質量%以上23.00質量%以下、
Ta2O5、Nb2O5、Bi2O3、TiO2およびWO3の合計含有量(Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3)が0.00質量%以上0.30質量%以下、
La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量REが43.00質量%以上58.00質量%以下、
ZrO2、Ta2O5、Nb2O5およびWO3の合計含有量に対する前記合計含有量REの質量比(RE/(ZrO2+Ta2O5+Nb2O5+WO3))が2.00以上13.00以下、
ZnO含有量に対する前記合計含有量REの質量比(RE/ZnO)が3.80以上
であり、
屈折率ndが1.7500以上1.7900であり、かつアッベ数νdが47.50以上50.50以下である光学ガラス。
【請求項2】
SiO2含有量に対するLi2O含有量の質量比(Li2O/SiO2)が0超1.00以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
LiO2とZnOとの合計含有量(LiO2+ZnO)が7.00質量%以上19.00質量%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項4】
ガラス転移温度Tgが640℃未満である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項5】
着色度λ80が510nm以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項6】
SiO2含有量に対するLi2O含有量の質量比(Li2O/SiO2)が0超1.00以下であり、
LiO2とZnOとの合計含有量(LiO2+ZnO)が7.00質量%以上19.00質量%以下であり、
ガラス転移温度Tgが640℃未満であり、かつ
着色度λ80が510nm以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスおよび光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学素子用材料として、各種光学ガラスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学ガラスの中で、高屈折率および低分散性を有する光学ガラスは、光学素子用材料として有用である。
【0005】
また、光学ガラスに望まれる性質の1つとして、ガラス転移温度Tgが低いことが挙げられる。低Tgガラスは、例えば精密プレス適性に優れるため好ましい。
【0006】
本発明の一態様は、高屈折率および低分散性を有し、かつガラス転移温度が低い光学ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
質量%表示のガラス組成において、
B2O3含有量が15.00質量%以上33.00質量%以下、
ZnO含有量が6.00質量%以上18.00質量%以下、
Li2O含有量が0.00質量%超、
Y2O3含有量が3.00質量%以上23.00質量%以下、
Ta2O5、Nb2O5、Bi2O3、TiO2およびWO3の合計含有量(Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3)が0.00質量%以上0.30質量%以下、
La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量REが43.00質量%以上58.00質量%以下、
ZrO2、Ta2O5、Nb2O5およびWO3の合計含有量に対する上記合計含有量REの質量比(RE/(ZrO2+Ta2O5+Nb2O5+WO3))が2.00以上13.00以下、
ZnO含有量に対する上記合計含有量REの質量比(RE/ZnO)が3.80以上
であり、
屈折率ndが1.750以上1.790であり、かつアッベ数νdが47.5以上50.5以下である光学ガラス、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、高屈折率および低分散性を有し、かつガラス転移温度が低い光学ガラスを提供することができる。また、本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなる光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光学ガラス]
本発明および本明細書では、ガラス組成を、酸化物基準のガラス組成で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいうものとする。また、特記しない限り、ガラス組成は質量基準(質量%、質量比)で表示するものとする。
本発明および本明細書におけるガラス組成は、例えばICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)等の方法により求めることができる。例えば、定量分析は、ICP-AESを用い、各元素別に行われる。その後、分析値は酸化物表記に換算される。ICP-AESによる分析値は、例えば、分析値の±5%程度の測定誤差を含んでいることがある。したがって、分析値から換算された酸化物表記の値についても、同様に±5%程度の誤差を含んでいることがある。
また、本発明および本明細書において、構成成分の含有量が0.00%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。不純物レベル程度以下とは、例えば、0.01%未満であることを意味する。
【0011】
本発明および本明細書において、屈折率は、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
【0012】
本発明および本明細書において アッベ数νdは、分散に関する性質を表す値として用いられるものであり、以下の式で表される。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
上記式中、nFは青色水素のF線(波長486.13nm)における屈折率であり、nCは赤色水素のC線(656.27nm)における屈折率である。
【0013】
以下、上記光学ガラス(単に「ガラス」と記載する場合がある。)について、更に詳細に説明する。
【0014】
<ガラス組成>
Li2O含有量は、0.00%超である。Li2Oは、屈折率の低下を抑えつつ、ガラス転移温度を低下させることが可能な成分であるため、上記光学ガラスにおける必須成分である。Li2O含有量は、0.025%以上であることが好ましく、0.050%以上、0.075%以上、0.10%以上、0.15%以上、0.20%以上の順により好ましい。
Li2O含有量の上限は、特に限定されるものではなく、例えば、2.30%以下であることができ、2.20%以下であることが好ましく、2.10%以下、2.08%以下、2.06%以下、2.04%以下、2.02%以下、2.00%以下、1.98%以下、1.96%以下、1.94%以下の順により好ましい。
【0015】
アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの中で、Li2O含有量については上記の通りである。
Na2O、K2OおよびCs2Oのそれぞれの含有量は、例えば、0.00%、0.00%以上もしくは0.00%超であることができ、また、例えば、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下、0.40%以下、0.30%以下、0.20%以下もしくは0.10%以下であることができる。
【0016】
B2O3は、ガラスのネットワークフォーマーであり、ガラスの熱的安定性および熔融性を維持することに寄与する成分である。そのため、B2O3含有量は、15.00%以上であり、16.00%以上であることが好ましく、17.00%以上、18.00%以上、18.50%以上、19.00%以上、19.25%以上、19.50%以上、19.75%以上、20.00%以上、20.25%以上、20.50%以上、20.75%以上、21.00%以上、20.25%以上、21.30%以上の順により好ましい。
B2O3は、ガラスにより多く含有させるとガラスの低屈折率化をもたらす成分でもある。そのため、B2O3含有量は、33.00%以下であり、32.00%以下であることが好ましく、31.50%以下、31.00%以下、30.75%以下、30.50%以下、30.25%以下、30.00%以下、29.75%以下、29.50%以下、29.25%以下、29.00%以下の順により好ましい。
【0017】
SiO2も、ガラスのネットワークフォーマーであり、ガラスの熱的安定性および熔融性を維持することに寄与する成分である。この点から、SiO2含有量は、0.00%超であることが好ましく、0.20%以上であることがより好ましく、0.40%以上、0.60%以上、0.65%以上、0.70%以上、0.75%以上、0.80%以上、0.85%以上、0.90%以上、0.95%以上、1.00以上、1.05%以上、1.10%以上、1.15%以上、1.20%以上、1.23%以上の順に更に好ましい。
SiO2も、ガラスにより多く含有させるとガラスの低屈折率化をもたらす成分でもある。そのため、SiO2含有量は、13.00%以下であることが好ましく、12.00%以下、11.00%以下、10.75%以下、10.50%以下、10.25%以下、10.00%以下、9.80%以下、9.60%以下、9.40%以下、9.20%以下、9.00%以下、8.80%以下、8.60%以下、8.40%以下、8.30%以下の順により好ましい。
【0018】
P2O5も、ガラスのネットワークフォーマーであり、ガラスの熱的安定性および熔融性を維持することに寄与する成分である。P2O5含有量の下限は特に限定されるものではなく、例えば、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。
P2O5も、ガラスにより多く含有させるとガラスの低屈折率化をもたらす成分でもある。そのため、P2O5含有量は、3.00%以下であることが好ましく、2.50%以下であることがより好ましく、2.00%以下であることが更に好ましく、1.75%以下、1.50%以下、1.40%以下、1.30%以下、1.20%以下、1.20%以下、1.15%以下の順に一層好ましい。
【0019】
SiO2含有量に対するLi2O含有量の質量比(Li2O/SiO2)は、1.00以下であることが好ましく、0.90以下であることがより好ましく、0.80以下、0.70以下、0.68以下、0.66以下、0.64以下、0.62以下、0.60以下、0.58以下、0.56以下、0.54以下の順に更に好ましい。下限については、0.00超であることができ、0.01以上であることが好ましく、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上の順により好ましい。
質量比(Li2O/SiO2)については、ガラス転移温度を低下させる観点から上記の下限が好ましく、ガラス転移温度の上昇を抑制し、熱的安定性を維持する観点から上記の上限が好ましい。
【0020】
La2O3含有量は、20.00%以上であることが好ましく、21.00%以上、22.00%以上、23.00%以上、24.00%以上、25.00%以上、26.00%以上、27.00%以上、28.00%以上、28.50%以上、29.00%以上、29.50%以上、30.00%以上、30.50%以上、31.00%以上、31.50%以上、32.00%以上、32.50%以上、33.00%以上の順により好ましい。
La2O3含有量は、50.00%以下であることが好ましく、49.00%以下、48.00%以下、47.00%以下、46.00%以下、45.00%以下、44.50%以下、44.00%以下、43.50%以下、43.00%以下、42.50%以下、42.00%以下、41.75%以下、41.60%以下の順により好ましい。
【0021】
Gd2O3含有量は、例えば、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。上限については、7.50%以下であることが好ましく、6.50%以下、5.50%以下、5.00%以下、4.50%以下、4.00%以下、3.50%以下、3.00%以下、2.80%以下、2.60%、1.25%以下の順により好ましい。
【0022】
Y2O3は、ガラスに所定量含有させることで熱的安定性を向上させることができる成分である。
Y2O3含有量は、ガラスの熱的安定性向上の観点から、3.00%以上であり、4.00%以上であることが好ましく、5.00%以上、6.00%以上、6.50%以上、7.00%以上、7.50%以上、8.00%以上、8.50%以上、8.75%以上、9.00%以上、9.25%以上、9.50%以上の順により好ましい。
また、Y2O3含有量は、ガラスの熱的安定性向上の観点から、23.00%以下であり、22.50%以下であることが好ましく、22.00%以下、21.50%以下、21.00%以下、20.50%以下、20.00%以下、19.50%以下、19.00%以下、18.50%以下、18.25%以下、18.00%以下、17.75%以下の順により好ましい。
【0023】
希土類成分に関して、La2O3、Gd2O3およびY2O3は、低分散性を維持しながら屈折率を高めることができる成分であり、ガラスの熱的安定性の維持または向上の観点から、各希土類酸化物の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0024】
La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量を「RE」とも表記する。
REは、高屈折率かつ低分散性を維持する観点から、43.00%以上であり、43.50%以上であることが好ましく、44.00%以上、44.50%以上、45.00%以上、45.50%以上、46.00%以上、46.50%以上、47.00%以上、47.50%以上、48.00%以上、48.50%以上、49.00%以上、49.25%以上、49.50%以上、49.75%以上の順により好ましい。
また、REは、ガラスの熱的安定性の維持または向上の観点から、58.00%以下であり、57.50%以下であることが好ましく、57.00%以下、56.50%以下、56.00%以下、55.50%以下、55.18%以下、55.00%以下、54.75%以下、54.50%以下、54.25%以下、54.00%以下、53.75%以下の順により好ましい。
【0025】
ZnO含有量は、6.00%以上であり、6.50%以上であることが好ましく、7.00%以上、7.25%以上、7.50%以上、7.75%以上、8.00%以上、8.20%以上、8.40%以上、8.60%以上、8.75%以上の順により好ましい。上限については、18.00%以下であり、17.50%以下であることが好ましく、17.00%以下、16.50%以下、16.00%以下、15.50%以下、15.00%以下、14.50%以下、14.00%以下、13.75%以下、13.50%以下、13.25%以下の順により好ましい。
ZnOは、屈折率の低下を抑えつつ、ガラス転移温度を低下させ、熔融性を改善する成分である。他方、ガラスに多量に含有させると液相温度が高くなってしまいガラスの熱的安定性が低下してしまう。これらの観点から、ZnO含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0026】
ガラス転移温度をより一層低下させる観点から、Li2OとZnOとの合計含有量(Li2O+ZnO)は、7.00%以上であることが好ましく、8.00%以上、8.50%以上、9.00%以上、9.25%以上、9.50%以上の順により好ましい。上限については、ガラスの熱的安定性の維持または向上の観点から、19.00%以下であることが好ましく、18.50%以下、18.00%以下、17.50%以下、17.00%以下、16.50%以下、16.25%以下、16.00%以下、15.75%以下、15.50%以下、15.20%以下の順により好ましい
【0027】
ZrO2含有量は、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができ、3.00%以上であることが好ましく、3.50%以上、4.00%以上、4.25%以上、4.50%以上、4.64%以上、4.75%以上、5.00%以上、5.10%以上の順により好ましい。上限については、10.00%以下であることが好ましく、9.50%以下、9.00%以下、8.75%以下、8.50%以下、8.25%以下、8.00%以下、7.90%以下。7.80%以下、7.70%以下、7.60%以下、7.50%以下、7.40%以下、7.30%以下の順により好ましい。
ガラスにZrO2を導入することにより、ガラスの屈折率を低下させずにガラスの熱的安定性を改善する効果が得られるため、上記光学ガラスはZrO2を含有することが好ましい。他方、ZrO2の含有量が増加すると熔解温度の上昇を引き起こしてしまう。これらの観点から、ZrO2含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0028】
Ta2O5、Nb2O5、Bi2O3、TiO2およびWO3の合計含有量(Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3)は、0.00%以上であり、0.00%であることもできる。上限については、0.30%以下であり、0.25%以下であることが好ましく、0.20%以下、0.15%以下、0.10%以下、0.08%以下、0.06%以下、0.04%以下、0.02%以下、0.00%の順により好ましい。
合計含有量(Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3)について、ガラスの熱的安定性を維持する観点から上記の上限が好ましい。また、Ta2O5、Nb2O5、Bi2O3、TiO2およびWO3は、プレス成形時に成形型の成形面と反応してガラスの表面品質を悪化させる傾向があり、またガラスの着色を強める場合がある。したがって、上記光学ガラスがTa2O5、Nb2O5、Bi2O3、TiO2およびWO3を含まないこと、即ち、合計含有量(Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3)が0.00%であることが最も好ましい。
Ta2O5、Nb2O5、Bi2O3、TiO2およびWO3のそれぞれの含有量は、0.30%以下であることが好ましく、0.25%以下であることがより好ましく、0.20%以下、0.15%以下、0.10%以下、0.08%以下、0.06%以下、0.04%以下、0.02%以下の順に更に好ましく、0.00%であることが最も好ましい。
【0029】
ZrO2、Ta2O5、Nb2O5およびWO3の合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量REの質量比(RE/(ZrO2+Ta2O5+Nb2O5+WO3))は、2.00以上であり、3.00以上であることが好ましく、4.00以上、4.20以上、4.40以上、4.60以上、4.80以上、5.00以上、5.20以上、5.40以上、5.60以上、5.80以上、6.00以上、6.20以上、6.40以上、6.60以上、6.80以上の順により好ましい。上限については、13.00以下であり、12.00以下であることが好ましく、11.80以下、11.60以下、11.40以下、11.20以下、10.00以下、10.90以下、10.80以下、10.70以下、10.60以下、10.50以下の順により好ましい。
質量比(RE/(ZrO2+Ta2O5+Nb2O5+WO3))について、ガラスの低分散性を維持する観点から上記の下限が好ましく、熱的安定性を維持する観点から上記の上限が好ましい。
【0030】
ZnO含有量に対するLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量REの質量比(RE/ZnO)は、3.80以上であり、3.81以上であることが好ましく、3.82以上であることがより好ましい。上限については特に限定されず、例えば、9.00以下であることが好ましく、8.50以下、8.00以下、7.50以下、7.00以下、6.80以下、6.60以下、6.40以下、6.20以下、6.00以下、5.95以下の順により好ましい。
質量比(RE/ZnO)について、ガラスの低分散性を維持する観点から上記の下限が好ましく、低いガラス転移温度を維持する観点から上記の上限が好ましい。
【0031】
上記光学ガラスは、アルカリ土類金属酸化物の1種以上を含んでもよく、含まなくてもよい。上記光学ガラスにおいて、MgO、CaO、SrOおよびBaOのそれぞれの含有量は、例えば、0.00%、0.00%以上、0.00%超、0.01%以上、0.10%以上もしくは0.50%以上であることができ、また、例えば3.00%以下、2.00%以下もしくは1.00%以下であることができる。
【0032】
Sb2O3は、清澄剤として添加可能な成分である。その添加量が少ないほど、精密プレス成形時のプレス成形型の成形面の損傷を抑制する観点およびガラスの着色抑制の観点から好ましい。Sb2O3含有量は、質量%表示のガラス組成において、外割表示のSb2O3含有量(Sb2O3以外のガラス成分の合計質量を100質量%としたときのSb2O3含有量)として、0.00%以上、0.01%以上、0.02%以上の順に好ましく、また、1.00%以下、0.90%以下、0.80%以下、0.70%以下、0.60%以下、0.50%以下、0.40%以下、0.30%以下、0.20%以下、0.10%以下の順に好ましい。
【0033】
SnO2も清澄剤として添加可能であるが、外割で1.00%を超えて添加するとガラスが着色したり、ガラスを加熱、軟化してプレス成形等の再成形をする際に、Snが結晶核生成の起点となって失透傾向が生じる。したがって、SnO2の添加量を外割で0.00%以上1.00%以下とすることが好ましく、0.00%以上0.50%以下とすることがより好ましく、添加しないことが特に好ましい。外割によるSnO2含有量とは、SnO2以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたときの質量%表示によるSnO2の含有量を意味する。
【0034】
上記光学ガラスは、Lu、Hfといった成分を含有させることなく作製することができる。LuおよびHfは高価な成分であるため、Lu2O3、HfO2の含有量をそれぞれ0.00%以上2.00%以下に抑えることが好ましく、それぞれ0.00%以上1.00%以下に抑えることがより好ましく、それぞれ0.00%以上0.80%以下に抑えることが更に好ましく、それぞれ0.00%以上0.10%以下に抑えることが一層好ましく、Lu2O3を導入しないこと、HfO2を導入しないことがそれぞれ特に好ましい。
また、環境影響に配慮し、Pbを導入しないことが好ましく、As、U、Th、Te、Cdも導入しないことが好ましい。
更に、ガラスの優れた光線透過性を活かす観点から、Cu、Cr、V、Fe、Ni、Co等の着色の要因となる物質を導入しないことが好ましい。
【0035】
<ガラス物性>
(ガラス転移温度Tg)
上記光学ガラスは、上記ガラス組成を有することにより低いガラス転移温度Tgを有することができる。低Tgガラスは、例えば、精密プレス成形によって、表面に傷、クモリおよび破損のない光学素子を作製するうえで好ましい。また、低Tgガラスは、精密プレス成形において、離型膜の劣化を抑制する観点、プレス成形型の消耗を抑制する観点等から好ましい。上記光学ガラスのTgは、640℃未満であることが好ましく、638℃以下、636℃以下、634℃以下、632℃以下、630℃以下、628℃以下、626℃以下、624℃以下、622℃以下、620℃以下の順により好ましい。Tgの下限は、特に限定されるものではなく、例えば、530℃以上であることができ、540℃以上、550℃以上、555℃以上、560℃以上、565℃以上または570℃以上であることもできる。ガラス転移温度Tgは、後述の方法によって求められる。
【0036】
(屈折率nd)
高屈折率ガラスは光学素子用材料として有用である。上記光学ガラスの屈折率ndは、1.7500以上であり、1.7530以上であることが好ましく、1.7550以上、1.7570以上、1.7590以上、1.7610以上、1.7630以上、1.7632以上の順により好ましい。上限については、1.7900以下であり、1.7910以下であることが好ましく、1.7890以下、1.7870以下、1.7850以下、1.7830以下、1.7810以下、1.7790以下、1.7770以下、1.7760以下の順により好ましい。
【0037】
(アッベ数νd)
低分散性を示すガラスは光学素子用材料として有用である。上記光学ガラスのアッベ数νdは、47.50以上であり、48.20以上であることが好ましく、48.30以上、48.35以上、48.40以上、48.45以上、48.50以上、48.55以上、48.60以上、48.65以上、48.70以上の順により好ましい。上限については、50.50以下であり、50.20以下であることが好ましく、50.15以下、50.10以下、50.05以下、50.00以下、49.95以下、以下、49.90以下、49.86以下の順により好ましい。
ガラスを光学素子用材料として考えた場合、ガラスの屈折率を高めることは、ガラスのもつ自由度を広げることに相当する。屈折率を高めることは、上記自由度を広げるという観点から好ましい。他方、分散を維持しつつ屈折率を高めると、ガラス安定性が低下するという傾向が発生し得る。これらの観点から、アッベ数νdは、上記の範囲が好ましい。
【0038】
(着色度λ5、λ80)
ガラスの光線透過性、詳しくは、短波長側の光吸収端の長波長化が抑制されていることは、着色度λ5およびλ80の1つ以上によって評価することができる。着色度λ5とは、紫外域から可視域にかけて、厚さ10mmのガラスの分光透過率(表面反射損失を含む)が5%となる波長を表す。λ80は、λ5について記載した方法で測定される分光透過率が80%となる波長を表す。後掲の表に示すλ5およびλ80は、250~700nmの波長域において測定された値である。本発明および本明細書におけるガラスの分光透過率T(%)は、光学研磨された2つの互いに平行な平面を有するガラス試料に対し、かかる平面のうちの一面に垂直に入射する光の強度をIinとし、ガラス試料を透過してもう一方の面から射出した光の強度をIoutとしたとき、
T(%)=Iout/Iin×100
で表される。
着色度λ5およびλ80によれば、分光透過率の短波長側の吸収端を定量的に評価することができる。接合レンズ作製のためにレンズ同士を紫外線硬化型接着剤により接合する際等には、光学素子を通して接着剤に紫外線を照射し接着剤を硬化させることが行われる。効率よく紫外線硬化型接着剤の硬化を行う観点からは、分光透過率の短波長側の吸収端が短い波長域にあることが好ましい。この短波長側の吸収端を定量的に評価する指標として、着色度λ5およびλ80の1つ以上を用いることができる。
上記光学ガラスは、好ましくは320nm以下のλ5を示すことができる。λ5は、310nm以下、300nm以下、290nm以下の順により好ましい。λ5は、短い波長ほどより好ましく、下限は特に限定されるものではない。
上記光学ガラスは、好ましくは510nm以下のλ80を示すことができる。λ80は、400nm以下、390nm以下、380nm以下、377nm以下の順により好ましい。λ80は、短い波長ほどより好ましく、下限は特に限定されるものではない。
【0039】
<ガラスの製造方法>
上記光学ガラスは、目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物等を秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、白金容器等の熔融容器内で、加熱、熔融し、脱泡および撹拌を行い、均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得ることができる。具体的には公知の熔融法を用いて作ることができる。
先に記載したように、ZrO2の含有量が増加すると熔解温度の上昇を引き起こしてしまう。一方、熔融容器として白金容器を使用する場合、熔融温度が高温になると、白金容器からPtイオンが溶出してしまい透過率が悪化するため、上記着色度λ5およびλ80の値を大きくしてしまう。したがって、熔融温度が低いこと(例えば1000℃以上1300℃以下であること)は、上記着色度λ5およびλ80をより短波長化する観点から好ましい。また、この点から、ZrO2の含有量が先に記載した範囲であることは好ましい。
【0040】
[プレス成形用ガラス素材とその製造方法、およびガラス成形体の製造方法]
本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材、上記光学ガラスからなるガラス成形体、およびそれらの製造方法を提供することができる。
プレス成形用ガラス素材とは、加熱して、プレス成形に供されるガラス塊を意味する。
プレス成形用ガラス素材の例としては、精密プレス成形用プリフォーム、光学素子ブランクをプレス成形するためのガラス素材(プレス成形用ガラスゴブ)等のプレス成形品の質量に相当する質量を有するガラス塊を挙げることができる。
プレス成形用ガラス素材は、例えば、ガラス成形体を加工する工程を経て作製することができる。ガラス成形体は、上記のようにガラス原料を加熱、熔融し、得られた熔融ガラスを成形して作製することができる。ガラス成形体の加工法としては、切断、研削、研磨等を例示することができる。また、精密プレス成形用プリフォームの作製例については後述する。
【0041】
[光学素子ブランクとその製造方法]
本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなる光学素子ブランクを提供することができる。光学素子ブランクは、製造しようとする光学素子の形状に近似する形状を有するガラス成形体である。光学素子ブランクは、製造しようとする光学素子の形状に加工によって除去する加工代を加えた形状にガラスを成形する方法等により作製することができる。例えば、プレス成形用ガラス素材を加熱、軟化してプレス成形する方法(リヒートプレス法)、公知の方法で熔融ガラス塊をプレス成形型に供給しプレス成形する方法(ダイレクトプレス法)等により光学素子ブランクを作製することができる。
【0042】
[光学素子とその製造方法]
本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなる光学素子を提供することができる。光学素子の種類としては、球面レンズ、非球面レンズ等のレンズ、プリズム、回折格子等を例示することができる。レンズの形状としては、両凸レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ等の諸形状を例示することができる。
【0043】
光学素子の製造方法の一形態としては、精密プレス成形用プリフォームを加熱し、精密プレス成形する光学素子の製造方法を挙げることができる。精密プレス成形には公知のプレス成形型を使用し、公知の成形方法を適用することができる。精密プレス成形による光学素子の製造方法は、非球面レンズ、マイクロレンズ、回折格子等の製造に好適である。
【0044】
精密プレス成形用プリフォームの表面には、精密プレス成形時にガラスとプレス成形型成形面との融着を防止しつつ、成形面に沿ってガラスの延びが良好になるようにするために、離型膜を被覆することができる。そのような離型膜は公知である。低Tgガラスからなる精密プレス成形用プリフォームは、離型膜の劣化を抑制する観点から好ましい。離型膜の一例としては、炭素含有膜が挙げられる。炭素含有膜は、例えば、炭素を主成分とする膜(膜中の元素含有量を原子%で表したとき、炭素の含有量が他の元素の含有量よりも多いもの)であることができる。炭素含有膜の成膜法としては、炭素原料を使用した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法、炭化水素等の材料ガスを使用した熱分解等の公知の方法を用いればよい。
【0045】
図1に、精密プレス成形装置の概略断面図を示す。精密プレス成形は、例えば以下のように行うことができる。
精密プレス成形用プリフォーム(以下、単に「プリフォーム」と記載する。)4を、プレス成形型を構成する下型2および上型1の間に設置した後、石英管11内を窒素雰囲気としてヒーター(図示せず)に通電して石英管11内を加熱する。プレス成形型内部の温度を成形されるガラスが例えば10
6~10
10dPa・sの粘度を示す温度に設定し、同温度を維持しつつ、押し棒13を降下させて上型1を押して成形型内にセットされたプリフォームをプレスする。プレスの後、プレスの圧力を解除し、プレス成形されたガラス成形品を下型2および上型1と接触させたままの状態で、上記ガラスの粘度が例えば10
12dPa・s以上になる温度まで徐冷し、次いで室温まで急冷してガラス成形品を成形型から取り出す。こうして、光学素子を得ることができる。なお、
図1において、保持部材10が下型2と胴型3を保持し、支持棒9が上型1、下型2、胴型3、保持部材10を支持するとともに、押し棒13によるプレスの圧力を受け止める。下型2の内部には熱電対14が挿入されプレス成形型内部の温度をモニターしている。
【0046】
光学素子の製造方法の他の一形態としては、光学素子ブランクを機械加工して光学素子を作製する、光学素子の製造方法を挙げることができる。機械加工としては、切断、切削、粗研削、精研削、研磨等を例示できる。かかる製造方法は、球面レンズ、プリズム等の製造に好適である。
【実施例0047】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0048】
[実施例No.1~No.154]
以下の表に示すガラス組成になるように、各成分を導入するための原料としてそれぞれ相当するリン酸塩、フッ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸等を用い、原料を秤量し、十分に混合して調合原料とした。以下の表中、Sb2O3含有量は、外割表示である。
この調合原料を白金製坩堝に入れ、1000~1300℃に設定された炉内で加熱し120分間熔融した。熔融ガラスを撹拌して均質化した後、熔融ガラスを予熱した鋳型に流し込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラス転移温度程度の温度で約30分間保持した後、徐冷速度-30℃/時間で4時間徐冷し、その後炉内で室温まで放冷することにより、以下の表に示すNo.1~No.154の各光学ガラスを得た。
【0049】
<物性測定>
以下の表に示す各光学ガラスの諸物性は、下記方法により測定した。
【0050】
(1)屈折率nd、アッベ数νd
各光学ガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率ndおよびアッベ数νdを測定した。
【0051】
(2)ガラス転移温度Tg
ガラスを乳鉢で十分粉砕したものを試料とし、試料容器として白金製のセルを使用し、NETZSCH JAPAN社製の示差走査熱量分析装置(DSC3300SA)によって、昇温速度を10℃/分にしてガラス転移温度Tgを測定した。
【0052】
(3)着色度λ5、λ80
互いに対向する2つの光学研磨された平面を有する厚さ10±0.1mmのガラス試料を用い、分光光度計により、分光透過率T(%)を測定した。Tが5%になる波長(nm)をλ5とし、Tが80%になる波長(nm)をλ80とした。
【0053】
以上の結果を、以下の表に示す。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
<精密プレス成形による光学素子の作製>
上記実施例のそれぞれについて、上記の表に示すガラス組成になるように、各成分を導入するための原料としてそれぞれ相当する硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸等を用い、原料を秤量し、十分に混合して調合原料とした。
プリフォームの作製例(作製例1)を一つ説明する。調合原料を白金製坩堝に入れ、加熱、熔融した。清澄、均質化した熔融ガラスを、ガラスが失透することなく、安定した流出が可能な温度域に温度調整された白金合金製のパイプから一定流量で流出し、滴下または降下切断法にて目的とするプリフォームの質量の熔融ガラス塊に分離する。分離した熔融ガラス塊を、ガス噴出口を底部に有する型で受け、ガス噴出口からガスを噴出してガラス塊を浮上させながら精密プレス成形用プリフォームを成形する。熔融ガラス塊の分離間隔を調整、設定することによって、扁平球状プリフォームを得る。
プリフォーム作製例(作製例2)のもう一つとしては、調合原料を熔融して得た均質な熔融ガラスを鋳型に鋳込んで成形した後、得られた成形体の歪をアニールによって除去し、切断または割断して、所定の寸法、形状に分割し、複数個のガラス片を作製し、ガラス片を研磨して表面を滑らかにするとともに、所定の質量のガラスからなるプリフォームとする方法がある。
上記実施例のそれぞれについて、作製例2によって精密プレス成形用プリフォームを作製した。調合原料を熔融する際の熔融温度は1000℃以上1300℃以下とした。
【0079】
上記実施例のそれぞれについて、作製したプリフォーム表面に炭素含有膜をコートし、成形面に炭素含有離型膜を設けたSiC製の上下型および胴型を含むプレス成形型内に導入し、窒素雰囲気中で成形型とプリフォームを一緒に加熱してプリフォームを軟化し、精密プレス成形して、上記各種ガラスからなる各種レンズ(非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズ)を作製した。このようにして作製した各種レンズを観察したところ、レンズ表面に傷、クモリおよび破損は全く認められなかった。
【0080】
最後に、前述の各態様を総括する。
【0081】
[1]質量%表示のガラス組成において、
B2O3含有量が15.00質量%以上33.00質量%以下、
ZnO含有量が6.00質量%以上18.00質量%以下、
Li2O含有量が0.00質量%超、
Y2O3含有量が3.00質量%以上23.00質量%以下、
Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3の合計含有量(Ta2O5+Nb2O5+Bi2O3+TiO2+WO3)が0.00質量%以上0.30質量%以下、
La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量REが43.00質量%以上58.00質量%以下、
ZrO2、Ta2O5、Nb2O5およびWO3の合計含有量に対する上記合計含有量REの質量比(RE/(ZrO2+Ta2O5+Nb2O5+WO3))が2.00以上13.00以下、
ZnO含有量に対する上記合計含有量REの質量比(RE/ZnO)が3.80以上
であり、
屈折率ndが1.750以上1.790であり、かつアッベ数νdが47.5以上50.5以下である光学ガラス。
[2]SiO2含有量に対するLi2Oの質量比(Li2O/SiO2)が0超1.00以下である、[1]に記載の光学ガラス。
[3]LiO2とZnOとの合計含有量(LiO2+ZnO)が7.00質量%以上19.00質量%以下である、[1]または[2]に記載の光学ガラス。
[4]ガラス転移温度Tgが640℃未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の光学ガラス。
[5]着色度λ80が510nm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の光学ガラス。
[6]SiO2含有量に対するLi2Oの質量比(Li2O/SiO2)が0超1.00以下であり、
LiO2とZnOとの合計含有量(LiO2+ZnO)が7.00質量%以上19.00質量%以下であり、
ガラス転移温度Tgが640℃未満であり、かつ
着色度λ80が510nm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学ガラス。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
【0082】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。