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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097861
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/32 20060101AFI20250624BHJP
   F16H 21/06 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
F16H61/32
F16H21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214322
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】若松 泰平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優
(72)【発明者】
【氏名】水野 嘉博
(72)【発明者】
【氏名】桑原 真也
【テーマコード(参考)】
3J062
3J067
【Fターム(参考)】
3J062AA18
3J062AB02
3J062AB26
3J062BA16
3J062CB02
3J062CB24
3J062CB32
3J067AA21
3J067AB23
3J067BA51
3J067DA01
3J067DA43
3J067DB32
3J067FA04
3J067FA72
3J067FB85
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】回転規制手段の変形による故障や回転規制手段の弾性変形による基準位置の検出精度の低下を抑制できるシフト装置を提供する。
【解決手段】(a)アクチュエータ120は、モータ22と、モータ22から入力された回転を減速してアクチュエータ出力軸36から出力する減速機構28と、モータ22とアクチュエータ出力軸36との間の動力伝達経路PTに設けられた回転規制手段26と、を有し、(b)回転規制手段126は、動力伝達経路PTにおける回転を規制する。このように、回転規制手段26は、アクチュエータ出力軸36よりもモータ22側の動力伝達経路PTに設けられている。アクチュエータ出力軸36以降に回転規制手段26が設けられている場合に比較して、回転規制手段26の変形による故障や回転規制手段26の弾性変形によるシフトレンジの基準位置の検出精度の低下が抑制される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによりシフトレンジが切り替えられるシフト装置であって、
前記アクチュエータは、モータと、前記モータから入力された回転を減速して出力軸から出力する第1減速機構と、前記モータと前記出力軸との間の動力伝達経路に設けられた回転部材の回転を規制する回転規制手段と、を有する
ことを特徴とするシフト装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記動力伝達経路における前記モータと前記回転規制手段との間に、前記第1減速機構とは別の第2減速機構をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記回転規制手段及び前記第1減速機構は、揺動スライダクランク機構で構成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記第2減速機構は、前記モータに連結されたウォームと、前記ウォームに噛み合うとともに前記第1減速機構に連結された扇状のウォームホイールと、を備え、
前記回転規制手段は、前記ウォームホイールの回転軌道上に設けられた壁部である
ことを特徴とする請求項2に記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アクチュエータがモータとそのモータから入力された回転を減速して出力軸から出力する減速機構とを有し、そのアクチュエータによりシフトレンジが切り替えられるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータがモータとそのモータから入力された回転を減速して出力軸から出力する減速機構とを有し、そのアクチュエータによりシフトレンジが切り替えられるシフト装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。特許文献1に記載のシフト装置では、減速機構により最終的に減速され且つトルクが大きくされた回転によりシフトレンジが切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-308752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシフト装置では、シフトレンジの基準位置(=回転位置)を学習する際(=特定する際)には、最終的に減速され且つトルクが大きくされた回転を規制する回転規制手段に対して大きな負荷荷重が加えられる。そのため、負荷荷重が繰り返し加えられることによる回転規制手段の変形による故障が発生したり回転規制手段の弾性変形による基準位置の検出精度の低下が発生したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、回転規制手段の変形による故障や回転規制手段の弾性変形による基準位置の検出精度の低下を抑制できるシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、アクチュエータによりシフトレンジが切り替えられるシフト装置であって、前記アクチュエータは、モータと、前記モータから入力された回転を減速して出力軸から出力する第1減速機構と、前記モータと前記出力軸との間の動力伝達経路に設けられた回転部材の回転を規制する回転規制手段と、を有することにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシフト装置によれば、前記アクチュエータは、モータと、前記モータから入力された回転を減速して出力軸から出力する第1減速機構と、前記モータと前記出力軸との間の動力伝達経路に設けられた回転部材の回転を規制する回転規制手段と、を有する。このように、回転規制手段は、第1減速機構の出力軸よりもモータ側の動力伝達経路に設けられている。そのため、第1減速機構の出力軸以降に回転規制手段が設けられている場合に比較して、シフトレンジの基準位置を学習する際には、回転規制手段に加えられる負荷荷重が緩和される。したがって、回転規制手段の変形による故障や回転規制手段の弾性変形による基準位置の検出精度の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1に係るシフト装置の概略構成図である。
図2図1に示すパーキングロック装置についての説明図である。
図3図1に示すアクチュエータの一部を構成する揺動スライダクランク機構についての説明図である。
図4】シフト装置におけるシフトレンジのPレンジ及び非Pレンジのそれぞれの基準位置の例についての説明図である。
図5】本発明の実施例2に係るシフト装置の概略構成図である。
図6図5に示すアクチュエータの一部を構成するウォームギヤについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0010】
図1は、本発明の実施例1に係るシフト装置10の概略構成図である。
【0011】
シフト装置10は、車両に搭載され、車両のシフトレンジを切り替える装置である。シフト装置10は、アクチュエータ20によりシフトレンジが切り替えられる。シフトレンジとは、車両における走行用の動力源(例えばエンジンや走行用モータ)から一対の駆動輪への動力伝達状態を表すものである。例えば、シフト装置10は、シフトレンジをPレンジ及び非Pレンジの一方から他方へ切り替える。Pレンジは、車両がニュートラル状態とされ且つ一対の駆動輪が回転不能に機械的に固定されるシフトレンジすなわちパーキングレンジである。非Pレンジは、Pレンジ以外の他のシフトレンジ、例えば車両の後進走行を可能とするRレンジ(=後進走行レンジ)、走行用の動力源から一対の駆動輪への動力伝達が遮断されたニュートラル状態とするNレンジ(ニュートラルレンジ)、車両の前進走行を可能とするDレンジ(=前進走行レンジ)などである。
【0012】
シフト装置10は、シフトバイワイヤシステムである。アクチュエータ20は、モータ22と、モータ22から入力された回転を減速して出力する減速機構28と、モータ22と減速機構28との間の動力伝達経路PTに設けられた回転規制手段26と、を有する。モータ22は、例えば周知のステップモータである。モータ22の回転は、モータ22側から順に、モータ22の出力軸であるモータ出力軸30及び減速機構28を経て、アクチュエータ出力軸36から出力される。アクチュエータ出力軸36は、アクチュエータ20の出力軸である。アクチュエータ出力軸36が回転することにより、パーキングロック装置40の作動状態が切り替えられる。パーキングロック装置40の作動状態が切り替えられることでシフトレンジが切り替えられる。減速機構28は、本発明における「第1減速機構」に相当する。
【0013】
電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。電子制御装置90がモータ22を回転制御することで、シフトレンジを切り替える。
【0014】
電子制御装置90には、例えば回転角センサ80による検出値に基づく、モータ出力軸30の回転位置を表すモータ回転角度θmt[deg]が入力される。電子制御装置90からは、モータ22を回転制御するモータ制御信号Smtがモータ22に出力される。
【0015】
図2は、図1に示すパーキングロック装置40についての説明図である。
【0016】
パーキングロック装置40は、マニュアルシャフト42、プレート44、パーキングギヤ46、パーキングロックポール48、パーキングロッド52、スプリング54、及びテーパ部材56を備える。アクチュエータ出力軸36は、マニュアルシャフト42に相対回転不能に連結されている。マニュアルシャフト42の回転中心線は、軸線C1である。アクチュエータ出力軸36の回転は、マニュアルシャフト42、プレート44、パーキングロッド52を順次経由してテーパ部材56に伝達される。
【0017】
パーキングギヤ46は、一対の駆動輪に連結されたギヤである。パーキングロックポール48は、一軸線周りに回動させられることでパーキングギヤ46に接近及び離間可能とされる。パーキングロックポール48は、パーキングギヤ46に接近させられた場合にパーキングギヤ46に噛み合う爪部50を有する。爪部50がパーキングギヤ46に噛み合わされることにより一対の駆動輪を回転不能に固定する。パーキングロッド52の一端部は、パーキングロックポール48に係合するテーパ部材56が挿し通されてテーパ部材56を支持する。パーキングロッド52の他端部は、プレート44の下端部に連結されている。テーパ部材56は、プレート44の回動によりパーキングロッド52が移動させられてテーパ部材56の小径側又は大径側へ移動させられる。スプリング54は、テーパ部材56をその小径側へ付勢する。
【0018】
図2は、パーキングロック装置40が作動状態すなわちシフトレンジがPレンジである状態を示している。この状態では、パーキングロックポール48の爪部50がパーキングギヤ46に噛み合うことでパーキングギヤ46に連結された一対の駆動輪の回転が阻止されている。この状態でマニュアルシャフト42が矢印Aの方向に回動させられ、パーキングロッド52の一端部が矢印Bの方向へ移動させられると、パーキングロッド52の一端部の先端部に設けられたテーパ部材56の移動によりパーキングロックポール48が矢印Cの方向へ移動させられる。パーキングロックポール48が矢印Cの方向へ移動させられることで爪部50がパーキングギヤ46に噛み合わない位置へ移動させられて、パーキングギヤ46に連結された一対の駆動輪のロックが解除された状態となる。パーキングギヤ46に連結された一対の駆動輪のロックが解除された状態は、パーキングロック装置40が非作動状態すなわちシフトレンジが非Pレンジである状態である。
【0019】
パーキングロック装置40が非作動状態すなわちシフトレンジが非Pレンジである状態では、パーキングロックポール48の爪部50がパーキングギヤ46に噛み合わない位置となっている。この状態でマニュアルシャフト42が矢印Aとは反対の方向に回動させられ、パーキングロッド52の一端部が矢印Bとは反対の方向へ移動させられてテーパ部材56の移動によりパーキングロックポール48が矢印Cとは反対の方向へ移動させられる。パーキングロックポール48が矢印Cとは反対の方向へ移動させられることで爪部50がパーキングギヤ46に噛み合う位置へ移動させられて、パーキングギヤ46に連結された一対の駆動輪がロックされた状態すなわちシフトレンジがPレンジである状態となる。
【0020】
このように、パーキングロック装置40が作動状態へ切り替えられることで、シフトレンジがPレンジへ切り替えられ、パーキングロック装置40が非作動状態へ切り替えられることで、シフトレンジが非Pレンジへ切り替えられる。パーキングロック装置40は、シフトレンジが切り替えられるレンジ切替装置である。
【0021】
図3は、図1に示すアクチュエータ20の一部を構成する揺動スライダクランク機構60についての説明図である。
【0022】
揺動スライダクランク機構60は、短レバー62及び長レバー66を備える、周知の構成である。図3(a)は、短レバー62の長手方向と長レバー66の長手方向とが同一となった状態である。図3(b)には、短レバー62が反時計回りに最大限回転した状態(一点鎖線)と、短レバー62が時計回りに最大限回転した状態(二点鎖線)と、が示されている。
【0023】
短レバー62の一端部は、モータ出力軸30に固設されて連結されている。モータ出力軸30及び短レバー62の回転中心線は、軸線C2である。短レバー62の他端部には、ピン64が設けられている。ピン64は、軸線C2を中心とする円C2fに沿って回転する。長レバー66の一端部は、アクチュエータ出力軸36に固設されて連結されている。アクチュエータ出力軸36及び長レバー66の回転中心線は、軸線C1である。長レバー66の他端部には、長レバー66の長手方向に延びる長穴68が設けられている。短レバー62に設けられたピン64は、長穴68内をスライド可能となっている。長穴68は、例えば短レバー62が180[deg]の範囲である回転範囲Rc2内でのみピン64がスライド可能に構成されている。これにより、短レバー62は、軸線C2を中心とする円C2fのうち回転範囲Rc2内でのみ回転可能とされ、長レバー66は、軸線C1を中心とする円C1fのうち回転範囲Rc1(<Rc2)内でのみ回転可能とされる。短レバー62及び長レバー66は、本発明における「回転部材」に相当する。ピン64及び長穴68は、回転規制手段26であって、本発明における「回転規制手段」に相当する。短レバー62及び長レバー66において伝達されるトルクは、アクチュエータ出力軸36の出力トルクよりも低くなっている。
【0024】
揺動スライダクランク機構60では、モータ出力軸30の回転が減速されてアクチュエータ出力軸36に出力される。また、モータ出力軸30とアクチュエータ出力軸36との間の動力伝達経路PTに設けられた長レバー66の回転は、短レバー62に設けられたピン64が長穴壁部68wに接触することで規制される。長穴壁部68wは、長穴68における長レバー66の長手方向のアクチュエータ出力軸36側の壁部である。本発明における「回転規制手段」及び「第1減速機構」は、揺動スライダクランク機構60により構成されている。
【0025】
図4は、シフト装置10におけるシフトレンジのPレンジの基準位置P1及び非Pレンジの基準位置P2の例についての説明図である。図4では、軸線C1を中心にした長レバー66の長手方向が模式的に示されている。このとき、アクチュエータ出力軸36は、軸線C1を中心にして所定の回転範囲Rc1内で回転可能となっている。所定の回転範囲Rc1の一方側が、短レバー62が反時計回りに最大限回転してピン64及び長穴68により回転が規制された回転位置、すなわちPレンジ側において回転が規制された回転位置Pedg1である。所定の回転範囲Rc1の他方側が、短レバー62が時計回りに最大限回転してピン64及び長穴68により回転が規制された回転位置、すなわち非Pレンジ側において回転が規制された回転位置Pedg2である。
【0026】
例えば、Pレンジの基準位置P1は、回転位置Pedg1から所定の回転範囲Rc1の中央側へ所定の角度φだけ回転した位置に設定される。例えば、非Pレンジの基準位置P2は、回転位置Pedg2から所定の回転範囲Rc1の中央側へ所定の角度φだけ回転した位置に設定される。所定の角度φは、実験的に或いは設計的に予め定められた角度である。図4に示すように、Pレンジの角度範囲及び非Pレンジの角度範囲は、Pレンジの基準位置P1及び非Pレンジの基準位置P2を含む、それぞれ所定の角度範囲とされる。
【0027】
例えば、電子制御装置90は、モータ出力軸30及びアクチュエータ出力軸36の回転が回転規制手段26により規制されるまで回転させることで、回転位置Pedg1及び回転位置Pedg2を予め学習している。電子制御装置90は、回転位置Pedg1及び回転位置Pedg2に基づいて、Pレンジの基準位置P1及び非Pレンジの基準位置P2を予め学習している。学習の際には、回転規制手段26には、負荷荷重が加えられる。電子制御装置90は、学習されたPレンジの基準位置P1及び非Pレンジの基準位置P2に基づいて、モータ回転角度θmtを制御する。具体的には、シフトレンジをPレンジに切り替える場合には、長レバー66の長手方向がPレンジの角度範囲内となるように、モータ回転角度θmtが制御される。シフトレンジを非Pレンジに切り替える場合には、長レバー66の長手方向が非Pレンジの角度範囲内となるように、モータ回転角度θmtが制御される。なお、アクチュエータ20における減速比を減速比γ(=θmt/θout)とすると、モータ回転角度θmtは、減速比γとアクチュエータ出力軸36の回転角度θoutとの積で表される。
【0028】
本実施例によれば、アクチュエータ20は、モータ22と、モータ22から入力された回転を減速してアクチュエータ出力軸36から出力する減速機構28と、モータ22とアクチュエータ出力軸36との間の動力伝達経路PTに設けられた短レバー62及び長レバー66の回転を規制する回転規制手段26(=ピン64及び長穴68)と、を有する。このように、回転規制手段26は、減速機構28の出力軸でもあるアクチュエータ出力軸36よりもモータ22側の動力伝達経路PTに設けられている。そのため、アクチュエータ出力軸36以降に回転規制手段が設けられている場合に比較して、シフトレンジの基準位置であるPレンジの基準位置P1や非Pレンジの基準位置P2を学習する際には、回転規制手段26に加えられる負荷荷重が緩和される。したがって、回転規制手段26の変形による故障や回転規制手段26の弾性変形による基準位置の検出精度の低下が抑制される。
【0029】
本実施例によれば、回転規制手段26及び減速機構28は、揺動スライダクランク機構60で構成される。このように、揺動スライダクランク機構60により、回転規制手段26及び減速機構28が構成されることで、シフトレンジの基準位置を学習する際における回転規制手段26に加えられる負荷荷重が緩和される。これにより、回転規制手段26である揺動スライダクランク機構60の変形による故障や弾性変形による基準位置の検出精度の低下が抑制される。
【実施例0030】
図5は、本発明の実施例2に係るシフト装置110の概略構成図である。
【0031】
シフト装置110は、前述の実施例1におけるシフト装置10と略同じであるが、アクチュエータ20の替わりにアクチュエータ120となっている点が異なる。そのため、実施例1と異なる部分を中心に説明することとし、実質的に共通する部分には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0032】
アクチュエータ120は、モータ22と、モータ22から入力された回転を減速して出力する減速機構124と、減速機構124から入力された回転を減速してアクチュエータ出力軸36から出力する減速機構128と、モータ22とアクチュエータ出力軸36との間の動力伝達経路PTにおける減速機構124と減速機構128との間に設けられた回転規制手段126と、を有する。モータ22の回転は、モータ22側から順に、モータ出力軸30、減速機構124、及び減速機構128を経て、アクチュエータ出力軸36から出力される。減速機構128及び減速機構124は、本発明における「第1減速機構」及び「第2減速機構」にそれぞれ相当する。
【0033】
減速機構128は、例えば小径歯車と大径歯車とが噛み合っている周知の減速歯車装置である。
【0034】
図6は、図5に示すアクチュエータ120の一部を構成するウォームギヤ160についての説明図である。
【0035】
ウォームギヤ160は、ウォーム162と、ウォーム162に噛み合うウォームホイール164と、を備える、周知の構成である。ウォーム162は、例えばモータ出力軸30上に形成されている。モータ出力軸30及びウォーム162の回転中心線は、軸線C2である。ウォームホイール164の回転中心線は、軸線C3である。軸線C3方向視において、ウォームホイール164は軸線C3を中心とする扇状である。軸線C3方向視において円弧状となっているウォームホイール164の周面には、ウォーム162に噛み合う噛合歯が設けられている。ウォームホイール164は、減速機構128の入力軸に固設されて連結されている。ウォームギヤ160は、モータ出力軸30の回転を減速して減速機構128に出力し、減速機構124として機能する。
【0036】
ウォームホイール164の回転軌道上には、一対の壁部166が設けられている。一対の壁部166により、ウォームホイール164の回転は規制されている。図6(a)は、ウォームホイール164が一対の壁部166の一方に接触するまで反時計回りに最大限回転しその回転が規制された状態であり、図6(b)は、ウォームホイール164が一対の壁部166の他方に接触するまで時計回りに最大限回転しその回転が規制された状態である。ウォームホイール164は、本発明における「回転部材」に相当する。壁部166は、回転規制手段126であって、本発明における「回転規制手段」に相当する。ウォームホイール164において伝達されるトルクは、アクチュエータ出力軸36の出力トルクよりも低くなっている。
【0037】
本実施例によれば、(a)アクチュエータ120は、モータ22と、モータ22から入力された回転を減速してアクチュエータ出力軸36から出力する減速機構128と、モータ22とアクチュエータ出力軸36との間の動力伝達経路PTに設けられたウォームホイール164の回転を規制する回転規制手段126(=壁部166)と、を有し、(b)アクチュエータ120は、動力伝達経路PTにおけるモータ22と減速機構128との間に、減速機構128とは別の減速機構124をさらに有する。上記(a)の構成に付随して発揮される前述の実施例1と同様の効果を奏する。また、上記(b)に記載された減速機構124を有することにより、減速機構124により回転が減速されてから回転規制手段126によって回転が規制されるため、シフトレンジの基準位置が精度良く設定され得る。
【0038】
本実施例によれば、(a)減速機構124は、モータ22に連結されたウォーム162と、ウォーム162に噛み合うとともに減速機構124に連結された扇状のウォームホイール164と、を備え、(b)、ウォームホイール164の回転軌道上に設けられた壁部166が回転を規制する回転規制手段126である。このように、ウォーム162と減速機構128に連結された扇状のウォームホイール164とが備えられ、ウォームホイール164の回転軌道上に壁部166が設けられる。これにより、ウォーム162の回転が減速されてウォームホイール164に伝達され、そのウォームホイール164の回転が壁部166により規制されるため、シフトレンジの基準位置が精度良く設定され得る。
【0039】
なお、上述したのは本発明の各実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0040】
前述の実施例1では、回転範囲Rc2が180[deg]である態様であったが、本発明はこの態様に限られない。
【0041】
前述の実施例1では、本発明における「回転規制手段」及び「第1減速機構」が揺動スライダクランク機構60により構成されている態様であった。前述の実施例2では、(a)「第2減速機構」は、モータ22に連結されたウォーム162と、ウォーム162に噛み合うとともに減速機構128に連結された扇状のウォームホイール164と、により構成され、(b)「回転規制手段」は、ウォームホイール164の回転軌道上に設けられた壁部166により構成されている態様であった。しかし、本発明における「第1減速機構」、「第2減速機構」、及び「回転規制手段」は、このような態様に限定されない。
【符号の説明】
【0042】
10,110:シフト装置、20,120:アクチュエータ、22:モータ、26,126:回転規制手段、28:減速機構(第1減速機構)、36:アクチュエータ出力軸(出力軸)、60:揺動スライダクランク機構、62:短レバー(回転部材)、64:ピン(回転規制手段)、66:長レバー(回転部材)、68:長穴(回転規制手段)、124:減速機構(第2減速機構)、162:ウォーム、164:ウォームホイール(回転部材)、166:壁部(回転規制手段)、PT:動力伝達経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6