IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニムの特許一覧

特開2025-97897巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法
<>
  • 特開-巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法 図1
  • 特開-巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法 図2
  • 特開-巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法 図3
  • 特開-巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法 図4
  • 特開-巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法 図5
  • 特開-巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法 図6
  • 特開-巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097897
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】巻かれたヒゲゼンマイを膨張サイクル後に分離する装置、及びかかる装置によって行われる分離ステップを含むヒゲゼンマイを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G04D 3/00 20060101AFI20250624BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
G04D3/00
G04B17/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024157127
(22)【出願日】2024-09-11
(31)【優先権主張番号】23218286.5
(32)【優先日】2023-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ミシェレト、 リオネル
(72)【発明者】
【氏名】シャンペモント、 ピエール
(72)【発明者】
【氏名】マレット、 ダニエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】巻かれたかつ膨張サイクルを経たヒゲゼンマイのアセンブリを分離する装置を提供する。
【解決手段】巻かれたかつ膨張サイクルを経たヒゲゼンマイ12のアセンブリ10を分離する装置100であって、この装置100は、アセンブリを構成する巻かれたヒゲゼンマイ12の内側ストランドを受容するように意図されたノッチ113を含む支持体110と、振動平面を画定する、同じ平面に延びる2つの異なる軸に沿って可動な振動テーブル120とを含み、振動テーブル120は、振動平面に平行な平面において支持体110を振動させるように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻かれたかつ膨張サイクルを経たヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)を分離する装置(100)であって、
・前記アセンブリ(10)を構成する前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)の内側ストランド(13)を受容するように意図されたノッチ(113)を含む支持体(110)と、
・振動平面P1を画定する、同じ平面に延びる2つの異なる軸に沿って可動な振動テーブル(120)であって、前記振動平面P1に平行な平面において前記支持体(110)を振動させるように構成されている振動テーブル(120)と
を含む、装置(100)。
【請求項2】
前記2つの振動軸が直交していることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記振動テーブル(120)が環状の並進運動で振動することを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記支持体(11)が、前記振動テーブル(120)と一体化された本体(111)と、前記本体(111)と一体化されたスピンドル(112)とを含み、前記スピンドル(112)が、前記本体(111)と前記振動テーブル(120)の振動平面(P1)とに対して垂直に延びることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記ノッチ(113)が前記スピンドル(112)の自由端に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記スピンドル(112)の前記自由端の形状が円錐形であることを特徴とする、請求項5に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記装置(100)が、前記振動テーブルが振動させられるときに(120)、前記分離されたヒゲゼンマイ(12)を排出する空気排出器(130)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記装置(100)が、前記排出されたヒゲゼンマイ(12)を受容する回収トレイ(140)を含むことを特徴とする、請求項7に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記装置(100)が、前記スピンドル(112)の前記自由端を少なくとも部分的に覆うように構成された取り外し可能カバー(150)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記取り外し可能カバー(150)が、前記ヒゲゼンマイ(12)が前記支持体(110)から取り外されるのを防止する閉位置と、前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)の前記アセンブリ(10)が前記支持体(110)へと挿入されるのを許容する開位置であって、前記支持体(110)から分離された前記ヒゲゼンマイ(12)が取り外されるのを許容する開位置との間で可動であることを特徴とする、請求項9に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記取り外し可能カバー(150)が、前記振動テーブル(120)の前記振動平面(P1)に垂直な軸に沿って並進移動し得ることを特徴とする、請求項10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記取り外し可能カバー(150)が、前記スピンドル(112)が前記閉位置にあるときに前記スピンドル(112)の前記自由端を受容するように構成された凹部(151)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記振動テーブル(120)を1,000Hzから12,000Hzの間、好ましくは4,000Hzから8,000Hzの間の周波数で振動させるように構成されたモーターを含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記モーターが空気モーター又は圧電モーターであることを特徴とする、請求項13に記載の装置(100)。
【請求項15】
時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法(200)であって、前記製造する方法(200)が、膨張サイクルを経た巻かれたヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)を分離するステップ(260)を含み、前記ステップが、請求項1に記載の分離する装置(100)を実装することによって行われることを特徴とする、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法(200)。
【請求項16】
前記方法(200)が、前記分離するステップ(260)の前に、前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)を形成するように、巻き取りスターによってバレル(2)の中に複数のローラー圧延ワイヤを巻き取ることからなる巻き取りステップ(240)を含むことを特徴とする、請求項15に記載の、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法(200)。
【請求項17】
前記巻き取りステップ(240)の後に、前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)における応力を緩和する膨張ステップ(250)を含むことを特徴とする、請求項16に記載の、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法(200)。
【請求項18】
前記ヒゲゼンマイ(12)が補償バネであることを特徴とする、請求項15に記載の、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法(200)。
【請求項19】
前記ヒゲゼンマイ(12)がニオブ及びチタンの合金から作られていることを特徴とする、請求項18に記載の、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントのテンプ又はバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法、及びかかるヒゲゼンマイを製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、ヒゲゼンマイを製造する方法において、熱処理後にヒゲゼンマイを分離するステップを容易にするためのヒゲゼンマイを分離する装置に関する。
【0003】
本発明はさらに、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
時計用ヒゲゼンマイの製造は、一見すると両立しないように見える以下の制約を受ける。
・高い降伏強度を得る必要性、
・製造の容易性、詳しくはワイヤの延伸及びローラー圧延の作業の容易性、
・優れた疲労強度、
・長期にわたって安定した性能レベル、
・小さな断面
である。
【0005】
さらに、ヒゲゼンマイの製造は、安定したクロノメーター性能を保証するため、さらに熱補償への配慮に重点を置いている。そのためには、ゼロに近い熱弾性係数を得る必要がある。また、磁場に対する感度が限定的なヒゲゼンマイも求められている。
【0006】
すなわち、これらの点の少なくとも一つについて、詳しくは磁場に対する限定的な感度、熱補償、及び製造の容易性、特に引き抜き、ワイヤの延伸及びローラー圧延の作業についての改善は、有意な進歩を意味する。
【0007】
ヒゲゼンマイの製造サイクルにおいて、巻き取り作業は、同じ平面において巻かれた複数のヒゲゼンマイからなるアセンブリ又はプレートを形成するように、巻き取りスター又はスピンドルによってバレルにおいて複数のローラー圧延されたワイヤを巻き取ることから構成される。
【0008】
アセンブリは典型的に、3本から6本のらせん状に巻かれたワイヤを含む。
【0009】
その後、ヒゲゼンマイにおける様々な巻線がその後、最終的なアルキメデスらせん形状にするため、また、所望の熱弾性係数(thermoelastic coefficient(TEC))を得るため、及び硬度を増加させるため、膨張サイクル、典型的には熱処理、によって固定される。次のステップは、ヒゲゼンマイにおける様々な連動巻線を分離することに関与する。
【0010】
このステップは、補償ヒゲゼンマイの場合に特に難しくなり得る。さらに難しくなるのは、チタン合金製ヒゲゼンマイの場合である。合金にチタンが存在することにより、様々なヒゲゼンマイ間の摩擦力が増加するからである。
【0011】
その結果、このようなヒゲゼンマイ、特に補償ヒゲゼンマイ、を製造しているときの不合格率を最小限にするべく、巻き取り及び熱処理の後にヒゲゼンマイを分離するこのステップを改善する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0012】
この文脈において、本発明は、巻かれたかつ膨張サイクルを経たヒゲゼンマイのアセンブリを分離する装置を提案する。このデバイスは、
・アセンブリを構成する巻かれたヒゲゼンマイの内側ストランドを受容するように意図されたノッチを含む支持体と、
・振動平面P1を画定する、同じ平面に延びる2つの異なる軸に沿って可動な振動テーブルであって、前記振動平面P1に平行な平面において前記支持体を振動させるように構成されている振動テーブルと
を含む。
【0013】
かかる装置は、熱処理後の複数の巻かれたバネの複数のアセンブリの分離を容易にする。かかる装置は特に、補償ヒゲゼンマイ、詳しくはチタン合金から作られたヒゲゼンマイ、に対して有効である。
【0014】
好ましくは、2つの振動軸は互いに直交している。
【0015】
同じ平面において2つの方向に振動することにより、特にヒゲゼンマイのコイルの接線方向に振動性の動きが発生し得る。
【0016】
複数のコイルの形状を一致させることによって、かかる振動が、アセンブリの中心から始まり、複数のヒゲゼンマイの最も外側のコイルに向かって伝播し、複数のヒゲゼンマイの個別のコイルを弾性的に変形させる。
【0017】
前段で述べた特徴に加え、本発明に係る装置は、個別の基準で考慮され又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って考慮される、以下の中からの一以上の補完的な特徴、すなわち、
・振動テーブルが環状の並進運動で振動すること、
・支持体が、振動テーブルと一体化された本体と、前記本体と一体化されたスピンドルとを含み、前記スピンドルは、前記本体と前記振動テーブルの振動平面P1とに対して垂直に延びること、
・ノッチがスピンドルの自由端に形成されていること、
・スピンドルの自由端の形状が円錐形であること、
・装置が、振動テーブルが振動させられるときに、分離されたヒゲゼンマイを排出する空気排出器を含むこと、
・装置が、排出されたヒゲゼンマイを受容する回収トレイを含むこと、
・装置が、スピンドルの自由端を少なくとも部分的に覆うように構成された取り外し可能カバーを含むこと、
・取り外し可能カバーが、ヒゲゼンマイが支持体から取り外されるのを防止する閉位置と、巻かれたヒゲゼンマイのアセンブリが支持体に挿入されるのを許容する開位置であって、支持体から分離されたヒゲゼンマイが取り外されるのを許容する開位置との間で可動であること、
・取り外し可能カバーが、振動テーブルの振動平面P1に垂直な軸に沿って並進移動ができること、
・取り外し可能カバーが、閉位置にあるときにスピンドルの自由端を受容するように構成された凹部を含むこと、
・装置が、振動テーブルを1,000Hzから12,000Hzの間、好ましくは4,000Hzから8,000Hzの間の周波数で振動させるように構成されたモーターを含むこと、
・モーターが空気モーター又は圧電モーターであること、
を有してよい。
【0018】
本発明の他の態様は、時計ムーブメントのテンプ又はバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法に関する。
【0019】
本発明によれば、この製造する方法は、特に、巻かれたかつ膨張サイクルを経たヒゲゼンマイのアセンブリを分離するステップを含み、このステップは、本発明に係る分離装置を実装することによって行われる。
【0020】
好ましくは、製造する方法は、分離するステップの前に、巻かれたヒゲゼンマイのアセンブリを形成するように、巻き取りスターによってバレルの中に複数のローラー圧延ワイヤを巻き取ることからなる巻き取るステップを含む。
【0021】
好ましくは、製造する方法は、巻き取るステップの後に、アセンブリの巻かれたヒゲゼンマイの、アセンブリ内応力を緩和する膨張ステップを含む。
【0022】
好ましくは、ヒゲゼンマイは補償バネである。
【0023】
好ましくは、ヒゲゼンマイはニオブ及びチタンの合金から作られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図面を参照して以下に与えられる詳細な説明を読むことで、本発明の目的、利点及び特徴が良好に理解される。
【0025】
図1】本発明に係る、膨張サイクルを経た巻かれたヒゲゼンマイのアセンブリを分離する装置の、例示の実施形態を図式的に示す。
図2】閉じるステップであって、巻かれたヒゲゼンマイのアセンブリを振動させるステップにおける、図1に示された本発明に係る装置を図式的に示す。
図3】振動後に分離されたヒゲゼンマイを排出するステップにおける、図1に示された本発明に係る装置を図式的に示す。
図4図1に示した装置の振動テーブル及び支持体の上面図である。
図5】本発明に係る時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法の複数の主要ステップを例示するブロック図を示す。
図6】膨張サイクルによって固定された複数の巻かれたヒゲゼンマイのアセンブリを包含するバレルを図式的に示す。
図7】最終状態のヒゲゼンマイを示す。このヒゲゼンマイは、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ヒゲゼンマイの製造サイクルにおいて、巻き取り作業は、複数のローラー圧延されたワイヤを、スター片又は巻き取りスピンドルによってバレル2(図6に図示)の中へと巻き取ることから構成される。同じ平面において位置決めされ及び巻かれた複数の巻かれたワイヤからなるアセンブリ又はプレートが形成される。このステップ以降、巻かれたワイヤは、ヒゲゼンマイに巻かれているとみなされる。その形状は決定的であり、バレル2によって強制されるからである。
【0027】
その後、アセンブリ10を構成する様々な巻かれたバネは、膨張サイクル、典型的には熱処理、によって固定され、規則的なピッチを有するアルキメデスらせんの最終形状が得られる。
【0028】
図6は、膨張サイクルによって固定された複数の巻かれたヒゲゼンマイ12の一アセンブリ10を図式的に示す。
【0029】
図7は、最終状態のヒゲゼンマイ12を示す。このヒゲゼンマイ12は、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図される。
【0030】
典型的に、アセンブリ10は3から6個のヒゲゼンマイ12から構成される。図示の例において、アセンブリ10は4個のヒゲゼンマイ12から構成される。
【0031】
次のステップが、アセンブリ10の様々な巻かれたかつ熱的に固定されたヒゲゼンマイ12を分離することに関与する。
【0032】
図1は、巻かれたかつ熱的に固定された複数のゼンマイ12からなるアセンブリ10を分離するための装置100の一つの例示の実施形態を図式的に示す。
【0033】
装置100は、ヒゲゼンマイ12を分離する作業中の装置100の異なる状態を図式的に示す図1から図4を参照して記載される。
【0034】
装置100は、分離作業中にアセンブリ10を受容及び保持するように構成された支持体110を含む。
【0035】
詳しくは、支持体110は、ベース又は本体111と、本体111によって形成される一般平面に対して垂直に延びるスピンドル112とを含む。
【0036】
スピンドル112は、その自由端に複数のノッチ113を有する。好ましくは、ノッチの数はアセンブリ10を構成するコイルバネの巻き数以上である。すなわち、図示された例示の実施形態において、スピンドル112は、スピンドル112の円周まわりに均等に分布した4つのノッチ113を含む。
【0037】
好ましくは、ノッチ113を少なくとも部分的に担う自由端が、アセンブリ10の位置決めを、又は個別の分離されたヒゲゼンマイ12の取り外しを、容易にするように円錐の外形を有する。
【0038】
ノッチ113は、巻かれたヒゲゼンマイ12の内側ストランド13を受容するように構成され、アセンブリ10を本体111から所定距離に保持するように構成されている。すなわち、アセンブリ10の様々な巻かれたヒゲゼンマイ12は、巻かれたヒゲゼンマイ12の内側端を形成する内側ストランドのみによって装置100に保持される。巻かれたヒゲゼンマイ12の様々なコイルは、支持体110の本体111の上に懸架されている。
【0039】
装置100は、同じ平面内に延びる2つの異なる軸であって、図4に示す振動平面P1を画定する2つの異なる軸、に沿って振動する振動テーブル120を含む。
【0040】
好ましくは、2つの振動軸は互いに直交している。
【0041】
振動テーブル120は、図4に示すように、振動平面P1において環状に並進運動する。
【0042】
環状の並進運動とは、振動テーブル120上のすべての点が同じ半径の円であるが中心が異なる軌跡を有する平面運動として定義される。
【0043】
振動テーブル120は、モーター(図示せず)によって機械的に駆動されることにより振動する。例えば、モーターは空気モーター又は圧電モーターである。
【0044】
モーターは振動テーブル120を、1,000Hzから12,000Hzの間の周波数、好ましくは4,000Hzから8,000Hzの間の周波数、例えば6,000Hzの周波数、で振動させる。
【0045】
振動テーブル120の振幅、周波数、及び振動パワーは、マンマシンインターフェース(図示せず)を介して修正され得る。
【0046】
振動テーブル120は、支持体110もまた振動平面P1に平行な平面内で振動するように、本体111と一体になっている。
【0047】
装置100はさらに取り外し可能カバー150又は蓋を含む。取り外し可能カバー150又は蓋は、支持体110が振動させられるとき、スピンドル112の長手軸zに沿ったアセンブリ10及び分離されたヒゲゼンマイ12の軸方向移動を制限するようにスピンドル112の自由端を少なくとも部分的に覆うように構成される。
【0048】
取り外し可能カバー150は、その下面、すなわち振動テーブル120に面する面、から後退した開口又は凹部エリアを含む。この開口又は凹部エリアは、取り外し可能カバー150が閉位置にあるときにスピンドル112の自由端を受容するように構成された凹部151を形成する。
【0049】
取り外し可能カバー150は、閉位置と開位置との間で可動である。閉位置は、スピンドル112のz軸に沿ったヒゲゼンマイの移動を制限し、ヒゲゼンマイ12が支持体110のスピンドル112から取り外されるのを防止する。開位置は、巻かれたヒゲゼンマイのアセンブリ10を支持体110へと挿入し、ヒゲゼンマイ12がひとたび分離されると取り外されることを許容する。
【0050】
好ましくは、取り外し可能カバー150は、振動テーブル120の振動平面P1に垂直な軸に沿って並進移動し得る。好ましくは、取り外し可能カバー150の並進軸は、スピンドル112の長手軸zと一致する。
【0051】
装置100はさらに、アセンブリ10を分離する新たなサイクルに備えるべく、分離されたヒゲゼンマイ12を支持体110から取り外す排出器を含む。好ましくは、排出器130は空気排出器、例えば圧縮空気排出器である。
【0052】
装置100はさらに、排出された様々なヒゲゼンマイ12を回収及び収集するための収集トレイ140を含む。
【0053】
本発明はさらに、時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法200に関する。この方法は、巻かれて熱的に固定されたヒゲゼンマイを分離する少なくとも一つのステップ260を含む。このステップは、本発明に係る装置100によって実装される。
【0054】
製造する方法200の主要なステップが、図5を参照して与えられる。
【0055】
製造する方法200は、以下の連続するステップ、すなわち、
・合金から、好ましくは補償合金から、詳しくはチタン合金から、好ましくはニオブ及びチタンを含む合金からなるブランクを製造するステップ210と、
・析出結合変形-熱処理シーケンスを前記合金に適用するステップ220であって、このシーケンスは、所望の微細構造が得られるまで、変形を熱処理と交互に適用することを含む、ステップ220と、
・断面が丸いワイヤが得られるまで行われるワイヤ延伸ステップ230と、引き抜きスピンドル又はスター片の入口断面に適合する矩形の外形を製造するローラー圧延ステップ230と、
・様々なヒゲゼンマイ12が同じ平面において巻き取られる巻かれたヒゲゼンマイ12のアセンブリ10を形成するべく、巻き取りスピンドル又はスター片によってバレルにおいて複数のローラー圧延されたワイヤを巻き取ることからなる巻き取りステップ240と、
・膨張サイクルによってヒゲゼンマイ12の最終的なアルキメデスらせん形状を固定するべく、巻かれたヒゲゼンマイ12のアセンブリ10における応力を緩和する膨張ステップ250と
を含む。
【0056】
製造する方法200はさらに、ステップ250のときに熱固定されたヒゲゼンマイを分離するステップ260を含む。この分離するステップ260は、装置100によって、以下の態様で、すなわち、
図1に詳しく示された第1のサブステップ261において、複数の巻かれたかつ熱固定されたヒゲゼンマイ12によって形成されたアセンブリ10が支持体110のスピンドル112に位置決めされることにより、内側ストランド13がスピンドル112のノッチ113に位置決めされ、その後、アセンブリ10は、複数の巻かれたヒゲゼンマイ12の内側ストランド13のみによって保持された状態で、装置100の中で懸架され、
図2に詳しく示された第2のサブステップ262において、取り外し可能カバー150が閉位置に位置決めされるように下降されることにより、スピンドル112にマウントされたアセンブリ10の紛失が防止され、支持体100が振動テーブル120によって振動させられることにより、複数のヒゲゼンマイ12の一平面に平行な一平面において環状の並進運動が発生し、その後、複数のヒゲゼンマイ12が、もはや同じ平面内に置かれることがないように互いに分離され、
図3に詳しく示された第3のサブステップ263において、取り外し可能カバー150が開位置に位置決めされるように上昇され、複数の分離されたヒゲゼンマイ12を排出するべく空気排出器130が空気流を発生させる、
という態様で実装される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻かれたかつ膨張サイクルを経たヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)を分離する装置(100)であって、
・前記アセンブリ(10)を構成する前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)の内側ストランド(13)を受容するように意図されたノッチ(113)を含む支持体(110)と、
・振動平面P1を画定する、同じ平面に延びる2つの異なる軸に沿って可動な振動テーブル(120)であって、前記振動平面P1に平行な平面において前記支持体(110)を振動させるように構成されている振動テーブル(120)と
を含む、装置(100)。
【請求項2】
前記2つの異なる軸が直交していることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記振動テーブル(120)が環状の並進運動で振動することを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記支持体(11)が、前記振動テーブル(120)と一体化された本体(111)と、前記本体(111)と一体化されたスピンドル(112)とを含み、前記スピンドル(112)が、前記本体(111)と前記振動テーブル(120)の振動平面(P1)とに対して垂直に延びることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記ノッチ(113)が前記スピンドル(112)の自由端に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記スピンドル(112)の前記自由端の形状が円錐形であることを特徴とする、請求項5に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記装置(100)が、前記振動テーブルが振動させられるときに(120)、前記分離されたヒゲゼンマイ(12)を排出する空気排出器(130)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記装置(100)が、前記排出されたヒゲゼンマイ(12)を受容する回収トレイ(140)を含むことを特徴とする、請求項7に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記装置(100)が、前記スピンドル(112)の前記自由端を少なくとも部分的に覆うように構成された取り外し可能カバー(150)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記取り外し可能カバー(150)が、前記ヒゲゼンマイ(12)が前記支持体(110)から取り外されるのを防止する閉位置と、前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)の前記アセンブリ(10)が前記支持体(110)へと挿入されるのを許容する開位置であって、前記支持体(110)から分離された前記ヒゲゼンマイ(12)が取り外されるのを許容する開位置との間で可動であることを特徴とする、請求項9に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記取り外し可能カバー(150)が、前記振動テーブル(120)の前記振動平面(P1)に垂直な軸に沿って並進移動し得ることを特徴とする、請求項10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記取り外し可能カバー(150)が、前記スピンドル(112)が前記閉位置にあるときに前記スピンドル(112)の前記自由端を受容するように構成された凹部(151)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記振動テーブル(120)を1,000Hzから12,000Hzの間の周波数で振動させるように構成されたモーターを含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記モーターが空気モーター又は圧電モーターであることを特徴とする、請求項13に記載の装置(100)。
【請求項15】
時計ムーブメントのバランスに装備されるように意図されたヒゲゼンマイを製造する方法(200)であって、前記方法(200)が、膨張サイクルを経た巻かれたヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)を分離するステップ(260)を含み、前記ステップ(260)が、請求項1に記載の装置(100)を実装することによって行われることを特徴とする、方法(200)。
【請求項16】
前記方法(200)が、前記分離するステップ(260)の前に、前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)を形成するように、巻き取りスターによってバレル(2)の中に複数のローラー圧延ワイヤを巻き取ることからなる巻き取りステップ(240)を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法(200)。
【請求項17】
前記巻き取りステップ(240)の後に、前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)のアセンブリ(10)における応力を緩和する膨張ステップ(250)を含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法(200)。
【請求項18】
前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)が補償バネであることを特徴とする、請求項15に記載の方法(200)。
【請求項19】
前記巻かれたヒゲゼンマイ(12)がニオブ及びチタンの合金から作られていることを特徴とする、請求項18に記載の方法(200)。
【外国語明細書】