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特開2025-9792電気レオロジーシートの製造方法及び電気レオロジーシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009792
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電気レオロジーシートの製造方法及び電気レオロジーシート
(51)【国際特許分類】
   C10M 177/00 20060101AFI20250109BHJP
   B29C 43/28 20060101ALI20250109BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20250109BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C10M177/00
B29C43/28
B29C43/34
C10N70:00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045641
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023111743
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392014748
【氏名又は名称】宮坂ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 航司
(72)【発明者】
【氏名】井澤 智昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小松 沙織
【テーマコード(参考)】
4F204
4H104
【Fターム(参考)】
4F204AA33
4F204AB16D
4F204AD08
4F204AE03
4F204AE10
4F204AG01
4F204FA06
4F204FB02
4F204FB11
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4H104AA04A
4H104AA04C
4H104AA08A
4H104AA08C
4H104AA13A
4H104AA13C
4H104AA22A
4H104AA22C
4H104JA01
(57)【要約】
【課題】電気レオロジー粒子の分散割合の自由度を拡大でき、電気レオロジーシート表面の摩擦係数を低くすることを可能にする電気レオロジーシートの製造方法を提供する。
【解決手段】バインダーに電気レオロジー粒子5を分散させて所定ヤング率のペースト9とし、ペースト9を基材フィルム7に層状に展開して半製品シート11を形成し、半製品シート11のバインダーを硬化処理して電気絶縁体3とすることにより電気レオロジーシート1を得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーに電気レオロジー粒子を分散させて所定のヤング率のペーストとし、
前記ペーストを基材に層状に展開して半製品シートを形成し、
前記半製品シートの前記バインダーを硬化処理して電気絶縁体とすることで前記基材が剥離可能に付着した電気レオロジーシートを得る、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項2】
請求項1の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記半製品シートは、前記展開された前記ペーストの裏面が前記基材によって覆われ、前記展開された前記ペーストの表面が開放された、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項3】
請求項1の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記電気レオロジー粒子は、前記バインダーに対する割合が5vol%~90vol%である、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項4】
請求項1の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記ペーストのヤング率が100kPa~2500kPaである、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項5】
請求項1の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記半製品シートにおいて、前記展開された前記ペーストの表面に凹部を形成する、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項6】
請求項5の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記凹部は、前記展開された前記ペーストの表面に型を押し付けて形成する、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記基材に対する前記ペーストの層状の展開を対の圧延ローラーに通して行う、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記電気絶縁体は、エラストマーである、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項9】
請求項1~6の何れか一項の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記電気レオロジーシートのゴム硬度が30~100IRHDである、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項10】
請求項1~6の何れか一項の電気レオロジーシートの製造方法であって、
前記電気レオロジーシートの体積抵抗率が1×10~1×1011Ω・cmである、
電気レオロジーシートの製造方法。
【請求項11】
基材が裏面に剥離可能に付着し、電気絶縁体に電気レオロジー粒子が分散して表面上で露出する電気レオロジーシートであって、
前記電気レオロジー粒子は、前記電気絶縁体に対する割合が5vol%~90vol%である、
電気レオロジーシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に摩擦力や吸着力を調整可能な電気レオロジーシートの製造方法及び電気レオロジーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気レオロジーシートの製造方法としては、例えば特許文献1に記載のように、電気レオロジー粒子をバインダーに分散させたペーストを金型で熱硬化させるものがある。
【0003】
かかる製造方法では、電気レオロジーシートの表面で電気レオロジー粒子がバインダー樹脂で覆われた状態となり、その表面の摩擦係数が高くなってしまう。
【0004】
これに対し、電気レオロジー粒子の分散割合を大きくすることで、電気レオロジー粒子が電気レオロジーシート表面に出て摩擦係数を低くすることが可能となる。しかし、電気レオロジー粒子の分散割合を大きくすると、ペーストの流動性が低下して成形時に空気をまきこんでしまい、シート内に空隙(ボイド)が多く発生することから、電気レオロジー粒子の分散割合を高くするには限界が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-153837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、電気レオロジー粒子がバインダー樹脂で覆われて、作製した電気レオロジーシート表面の摩擦係数が高くなっていた点と、電気レオロジー粒子の分散割合に限界を生じていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バインダーに電気レオロジー粒子を分散させて所定のヤング率のペーストとし、前記ペーストを基材に層状に展開して半製品シートを形成し、前記半製品シートの前記バインダーを硬化処理して電気絶縁体とすることで前記基材が剥離可能に付着した電気レオロジーシートを得る電気レオロジーシートの製造方法を提供する。
【0008】
本発明は、裏面に基材が剥離可能に付着し、電気絶縁体に電気レオロジー粒子が分散して表面上で露出する電気レオロジーシートであって、前記電気レオロジー粒子は、前記電気絶縁体に対する割合が5vol%~90vol%である、電気レオロジーシートを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、電気レオロジー粒子の分散割合の自由度を拡大でき、また電気レオロジーシートの表面の摩擦係数を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1に係る電気レオロジーシートを示す断面図である。
図2図2(A)は、基材フィルムにペーストを展開した状態を示す概略断面図、図2(B)は、図1の電気レオロジーシートに用いる半製品シートの成形を示す概略断面図である。
図3図3は、実施例2に係る電気レオロジーシートを示す概略断面図である。
図4図4は、図3の電気レオロジーシートに用いる半製品シートの成形を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
電気レオロジー粒子の分散割合の自由度を拡大し、また電気レオロジーシートの表面の摩擦係数を低くするという目的を、バインダーに電気レオロジー粒子を分散させたペーストを基材上に展開して硬化処理することによって実現した。
【0012】
すなわち、図のように、バインダー8に電気レオロジー粒子5を分散させて所定のヤング率のペースト9とする。ペースト9を基材7に層状に展開して半製品シート11を形成する。そして、半製品シート11のバインダー8を硬化処理して電気絶縁体3とすることにより基材7が剥離可能に付着した電気レオロジーシート1を得る。
【0013】
一実施形態において、半製品シート11は、展開されたペースト9の裏面9aが基材7によって覆われ、同表面9bが開放されてもよい。
【0014】
電気レオロジー粒子5のバインダー8に対する分散割合は、任意であるが、5vol%~90vol%であってもよい。
【0015】
ペースト9のヤング率は、任意であるが、100kPa~2500kPaであってもよい。
【0016】
電気レオロジーシート1の体積抵抗率は1×10~1×1011Ω・cmの範囲となるのが好適である。(得られる電気レオロジーシート1の体積抵抗率がこの範囲内であれば、電気レオロジー粒子5の他にも、導電性フィラーや非導電性フィラーを適宜添加してもよい。)
【0017】
一実施形態として、半製品シート1において、展開したペースト9の表面に凹部13を形成してもよい。
【0018】
凹部13は、展開したペースト9の裏面9aに型を押付けて形成することが可能である。型の押付けは、半製品シート11に行えばよい。
【0019】
半製品シート11は、基材7に対するペースト9の層状の展開を対の圧延ローラー10a及び10bに通して行ってもよい。凸部を有する圧延ローラーで凹部を形成する形態も可能である。複数対の圧延ローラー10a及び10bを有する形態では、ペースト9の表面を平坦に成形する圧延ローラーの対と凹部を形成する圧延ローラーの対とで分けることもできる。
【0020】
電気絶縁体3は、特に限定されないが、シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、NBR等の合成ゴム類等のエラストマーであってもよい。
【0021】
上記製造方法による電気レオロジーシート1は、電気絶縁体3に電気レオロジー粒子5が分散し、裏面1aに基材7が剥離可能に付着しており、表面1b上に電気レオロジー粒子5が露出し、電気レオロジー粒子5の電気絶縁体3に対する割合が5vol%~90vol%であることが好適であり、電気レオロジー粒子が電気レオロジーシート表面に出て摩擦係数を低くすることが可能である。
【実施例0022】
[電気レオロジーシート]
図1は、実施例1に係る電気レオロジーシートを示す概略断面図である。
【0023】
図1の電気レオロジーシート(以下、「ERシート」と称する。)1は、電気絶縁体3に電気レオロジー粒子(以下、「ER粒子」と称する。)5が分散したシート状部材である。
【0024】
ERシート1は、電気レオロジー効果(以下、「ER効果」と称する。)により、電気的に摩擦力や吸着力を調整可能となっている。このERシート1は、裏面1aに本実施例の基材フィルム7を備えている。従って、ERシート1は、離型フィルム7が剥離可能に付着した構成となっている。ERシート1のゴム硬度は、30~100IRHD(JIS K 6253)が好ましく、厚みは、0.1mm~3.0mmが好ましい。
【0025】
電気絶縁体3は、電気絶縁性を有するものであればよく、エラストマー、例えばシリコーン樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂等で形成できる。電気絶縁体3は、本実施例では弾性を有するシリコーン樹脂からなる。電気絶縁体3は、一定の厚みに形成されており、例えば0.1mm~3.0mm程度となっている。電気絶縁体3の比重は、0.9~2.2程度である。電気絶縁体3の体積抵抗率は、ER効果発現の観点から、1×1010Ω・cm以上であるのが好ましい。
【0026】
ER粒子5は、電気絶縁体3中に分散してER効果を示す導電性フィラーである。ER粒子5は、例えば、金属粒子、金属酸化物粒子、シリカゲル等の固体粒子、カーボン粒子、有機高分子化合物の芯材と電気半導体性無機物粒子の表層とからなる複合型粒子等を用いることができる。
【0027】
ER粒子5の粒径は、0.1μm~100μm程度である。ER粒子5の比重は、例えば0.8~11.0程度であり、本実施例において1.16程度である。ER粒子5の体積抵抗率は、ER効果発現の観点から、1×10~1×10Ω・cmの範囲となるのが好ましい。ER粒子5の電気絶縁体3に対する分散割合は、好ましくは5vol%~90vol%、さらに好ましくは40vol%~90vol%である。
【0028】
十分なER効果を発現するためには、ERシート1の体積抵抗率が1×10~1×1011Ω・cmの範囲となるのが好適である。得られるERシート1の体積抵抗率がこの範囲内であれば、ER粒子5の他にも、導電性フィラーや非導電性フィラーを適宜添加してもよい。
【0029】
導電性フィラーとしては、例えば、金属粒子、金属酸化物粒子、シリカゲル等の固体粒子、カーボン粒子などが挙げられ、非導電性フィラーとしては、例えば、シリカ粉、ガラス粉、アルミナ粉、タルク粉、窒化ホウ素粉、有機高分子化合物粒子、などが挙げられる。
【0030】
ERシート1の表面1bでは、複数のER粒子5がランダムに露出している。ここでの露出は、ERシート1の電気絶縁体3の表面からER粒子5が突出していることを意味する。
【0031】
従って、ERシート1の表面1bは、露出するER粒子5に依存した摩擦係数を有し、ER粒子5の露出がないERシート1の裏面1aは、電気絶縁体3に依存した摩擦係数を有する。本実施例において、ER粒子5は電気絶縁体3よりも摩擦係数が低いため、ERシート1の表面1bは、裏面1aに比較して摩擦係数が低くなっている。
【0032】
基材フィルム7は、ERシート1の裏面1aに密着しており、裏面1aを覆う。基材フィルム7は、材質が特に限定されるものではないが、ERシート1から容易に剥離できればよく、本実施例では例えばPETフィルムによって構成することが可能である。
【0033】
ERシート1は、使用に際して、裏面1aの基材フィルム7を剥離し、電極を配置する。このERシート1の表面1bにおいて対象物に対して吸着力や摩擦力等を調整するとき、裏面1aに配置した電極を介して電圧を印加する。
【0034】
本実施例では、電圧の印可に応じてERシート1の表面に露出したER粒子5が電気絶縁体3内へ没入し、電気絶縁体3に依存した吸着力や摩擦力を上昇させる。なお、ERシート1は、マクスウェル応力に基づいて、電気力により吸引力を生じさせるようにしてもよい。この場合、ER粒子5を没入させなくてもよく、電気絶縁体3が弾性を有しない構成にすることもできる。
【0035】
対象物に対する吸着力や摩擦力を低減させるには、電圧の印加を解除すればよい。
【0036】
[電気レオロジーシートの製造方法]
本実施例の電気レオロジーシートの製造方法は、1.混練工程、2.分出し・圧延工程、3.硬化工程、及び4.裁断工程を備えている。また、必要に応じて、5.不純物除去工程を加えてもよい。
【0037】
1.混練工程
混練機等によりバインダー8及びER粒子5を混練し、バインダー8にER粒子5を分散させて混練物であるペースト9を形成する。この時、導電性フィラーや非導電性フィラーを適宜添加してもよい。混練に際しては、ER粒子5や他のフィラーをバインダー8に予備分散させておくのが好ましく、ER粒子5や他のフィラーが飛散しないような閉鎖系で行うのがより好ましい。また、混練は、ほぼ無溶剤の材料で行うのが好ましい。
【0038】
バインダー8は、ER粒子5を適切に分散させることができる程度の流動性を備え、その後の硬化処理により電気絶縁体3に変化するものである。本実施例において、バインダー8としては、例えば液型RTVシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製)を用いている。ER粒子5としては、本実施例において、複合型粒子を用いる。
【0039】
ER粒子5のバインダーに対する分散割合は、5vol%~90vol%が好適であり、かかる分散割合でバインダー8にER粒子5を分散させることにより、ペースト9のヤング率は、100kPa~2500kPa程度となっている。なお、ペースト9は、少なくとも平面上で層形状等を維持できる程度のヤング率であればよい。
【0040】
2.分出し・圧延工程
図2(A)は、基材フィルム7にペースト9を展開した状態を示す概略断面図、図2(B)は、図1のERシート1に用いる半製品シート11の成形を示す概略断面図である。
【0041】
図2(A)のように、分出し・圧延工程では、ペースト9を基材フィルム7上に展開させる。展開の際は、予め板状或いはシート状に成形したペースト9を基材フィルム7上に載置する。このときのペースト9の板厚は、ERシート1の板厚よりも大きく設定される。
【0042】
続いて、図2(B)のように、ペースト9を備えた基材フィルム7を一対の圧延ローラー10a及び10b間に通して圧延する。圧延ローラー10a及び10bは、表面を鏡面にするのが好ましい。
【0043】
この圧延によりペースト9の表面9bが基材フィルム7に対し均一に圧延される。このとき、ペースト9の表面9bが平坦に成形される。なお、一対の鏡面体間で挟持することによってペースト9を平坦にしてもよい。この場合、一方の鏡面体をペースト9から剥離し、他方の鏡面体を基材として用い、基材フィルム7を省略することができる。
【0044】
このようにして、基材フィルム7に対するペースト9が層状に展開され且つ表面9bが平坦に成形された半製品シート11が得られる。半製品シート11の厚みは、例えばペースト9の部分が0.1mm~3.0mmである。基材フィルム7を透明な材質にすると、異物や空気の混入を視認することが可能となる。
【0045】
3.硬化工程
半製品シート11のペースト9のバインダー8を硬化処理し、図1の電気絶縁体3とする。硬化処理の手法は、バインダー8の特性に応じて適宜設定され、湿気硬化、熱硬化、UV硬化等を用いることが可能である。
【0046】
本実施例の硬化処理は、湿気硬化であり、例えば温度40℃、湿度50%の条件であれば、16時間程度で硬化できる。
【0047】
硬化処理により、ペースト9の表面9bは、基材フィルム7に覆われずに開放されているため、収縮して電気絶縁体3の表面を構成する。この結果、ERシート1の表面1bでは、ER粒子5が分散状態に応じてランダムに露出する。また、ペースト9の裏面9aは、基材フィルム7に覆われていることでER粒子5が露出する程にまで収縮せず、その状態で基材フィルム7が付着した電気絶縁体3を構成する。
【0048】
4.裁断工程
硬化処理されたERシート1は、型枠を用いた打ち抜き、或いはカットにより目的の平面形状、例えば矩形、円形等に形成され、図1の電気レオロジーシート1を得ることができる。こうして、ERシート1は、基材フィルム7上に保持されながら裁断工程まで行われるため、裏面1aに対する異物の混入を抑制できる。
【0049】
5.不純物除去工程
硬化処理されたERシート1は、減圧、加湿(加水)処理等により、低分子量成分の除去処理をしてもよい。
【0050】
かかるERシート1の製造方法では、バインダー8にER粒子5を分散させて所定のヤング率のペースト9とし、ペースト9を基材フィルム7に層状に展開して半製品シート11を形成する。この半製品シート11のバインダー8を硬化処理して電気絶縁体3とし、基材フィルム7が剥離可能に付着したERシート1を得ることができる。
【0051】
このため、本実施例では、ペースト9を金型に入れる必要が無く、ペースト9の流動性が低いことによる空気を巻き込みがなくなるため、ER粒子5のバインダー8への分散可能な割合の自由度を拡大できる。
【0052】
半製品シート11は、展開されたペースト9の裏面9aが離型フィルム7によって覆われ、展開されたペースト9の表面9bが開放されている。このため、ペースト9の硬化処理によって、ERシート1の表面1bでは、ER粒子5を露出させ、ペースト9の裏面9aでは、ER粒子5の露出を抑制できる。
【0053】
従って、本実施例の製造方法によるERシート1は、表面1bにおける摩擦係数が小さいために、電圧の印可による吸着力や摩擦力の調整を確実に行うことができ、裏面1aにおいて、電極等の他部材への結合を確実に行うことができる。
【0054】
ERシート1の製造方法では、電気絶縁体3に対するER粒子5の割合が5vol%~90vol%が好適であり、表面1bにおける摩擦係数が小さい、性能の優れた電気レオロジーシート1を得ることが可能となる。
【0055】
ERシート1の製造方法に用いるシートは、ERシート1から容易に剥離できる基材フィルム7であるから、ペースト9を基材フィルム7に容易に層状に展開させることができる。半製品シート11としての取り扱いも容易となり、ペースト9の硬化処理等も容易となる。
【0056】
半製品シート11は、基材フィルム7に対するペースト9の層状の展開を対の圧延ローラー10a及び10bに通して行うから、ペースト9の層状の展開を容易に行わせることができる。
【実施例0057】
図3は、実施例2に係る電気レオロジーシートを示す概略断面図である。図4は、図3の電気レオロジーシートに用いる半製品シートの成形を示す概略断面図である。なお、基本的な構成は実施例1と同様であり、同一又は対応する構成には同符号を付し、重複した説明は省略する。
【0058】
本実施例2のERシート1は、表面1bに複数の凹部13を備えている。凹部13は、電圧の印加を解除した際にERシート1に離脱性を確保させるものである。
【0059】
すなわち、ERシート1に実施例1のように電圧を印加して対象物に対する摩擦力や吸着力が上昇したとき、ERシート1の表面1bで粘弾性を有する電気絶縁体3の表面が対象物に粘着等することもある。この場合、ERシート1の表面1bに複数の凹部13が無い場合には電圧印加を解除しても電気絶縁体3が対象物に対する粘着保持力を維持する傾向となる。
【0060】
一方、本実施例のように表面1bに複数の凹部13を備えた場合には、表面1bの対象物に対する粘着力が低下し、対象物をERシート1から容易に離脱させることが可能となる。
【0061】
[凹部の形成]
図4のように、半製品シート11の展開したペースト9の表面に凹部13を形成する。
【0062】
この場合、凹部13は、展開したペースト9の表面に型15を押し付けて形成する。型15は、凹部13を形成するための凸部15aを備えている。
【0063】
図4の基材フィルム7上のペースト9は、型15を押し付けた後の状態を示す。型15の押し付けは、図2(A)のような、ペースト9の表面が成形される前に行っても、図2(B)のような、ペースト9bの表面が成形された後に行ってもよい。
【0064】
凹部13の形成に際しては、基材フィルム7上に展開したペースト9の成形する前、または成形した後の表面に型15を押し付け、圧延ローラー10a及び10b間に通す。これにより型15がペースト9に対して押し付けられ、図4のようにペースト9の表面9bが平坦に成形されると共に凹部13が形成される。
【0065】
従って、凹部13を備えた半製品シート11を形成することができる。
【0066】
この半製品シート11のペースト9を硬化処理して電気絶縁体3とすることにより、表面1bに凹部13を備えたERシート1を得ることができる。凹部13の平面形状としては、単純な溝形状、ハニカム形状、円形、矩形等、種々選択して形成することができる。凹部13の断面形状も、種々選択可能である。
【0067】
本実施例2においては、対象物をERシート1から容易に離脱させることが可能となる他、実施例1同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 電気レオロジーシート(ERシート)
1a 裏面
1b 表面
3 電気絶縁体
5 電気レオロジー粒子(ER粒子)
7 基材(基材、離型フィルム)
9 ペースト
9a 裏面
9b 表面
10a、10b 圧延ローラー
11 半製品シート
13 凹部
15 型

図1
図2
図3
図4