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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097968
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20250624BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250624BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250624BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250624BHJP
   C08K 3/14 20060101ALI20250624BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20250624BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L63/00 C
C08K3/22
C08K3/14
C08K3/08
H04R17/00 330J
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024223602
(22)【出願日】2024-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2023214214
(32)【優先日】2023-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024006408
(32)【優先日】2024-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩片 政秀
(72)【発明者】
【氏名】池田 周平
(72)【発明者】
【氏名】津田 健人
【テーマコード(参考)】
4J002
5D019
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AA011
4J002CD001
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002DA066
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA106
4J002DA116
4J002DB016
4J002DE146
4J002DM006
4J002EV297
4J002FD016
4J002FD147
4J002GQ00
5D019AA26
5D019BB02
5D019BB19
5D019FF04
5D019GG01
(57)【要約】
【課題】低減衰かつ塗布が可能な樹脂組成物を生成すること。
【解決手段】実施形態に係る樹脂組成物は、圧電体と電極とを備えたアレイ振動子を有する超音波振動子ユニットにおける超音波振動子の音響整合層の前駆体である樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、樹脂と無機材料の粒子とを含み、前記音響整合層の音響インピーダンスをZ、前記無機材料の粒子の密度をρとすると、2.3≦Z/√ρ≦3.4を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と電極とを備えたアレイ振動子を有する超音波振動子ユニットにおける超音波振動子の音響整合層の前駆体である樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、樹脂と無機材料の粒子とを含み、
前記音響整合層の音響インピーダンスをZ、前記無機材料の粒子の密度をρとすると、
2.3≦Z/√ρ≦3.4を満たす、樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機材料の粒子は、セラミックス粒子である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記Zは3.0以上15MRayl以下の範囲である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記セラミックス粒子の平均粒子径の粒径分布は単峰性分布である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物における前記セラミックス粒子の含有量が20体積%以上かつ40体積%以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記セラミックス粒子の平均粒子径は、0.3μm以上2μm以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記セラミックス粒子が、Mg、Ca、Ba、B、Al、Y、Hf、Ce、Ti、W、Siの少なくとも1種と、O、C、N及びSの少なくとも1種とで構成される物質を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記セラミックス粒子は、2.0μm以下または0.005μm以上の粒径の粒子を5体積%以下含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂はエポキシ樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
熱硬化樹脂が前記エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記セラミックス粒子は、酸化アルミニウムである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記セラミックス粒子は、炭化タングステンである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記無機材料の粒子は、金属粒子であり、
前記音響整合層の音響インピーダンスをZ、前記金属粒子の密度をρとすると、
2.3≦Z/√ρ≦2.9を満たす、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記金属粒子の平均粒子径の粒径分布は単峰性分布である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂組成物における前記金属粒子の含有量が20体積%以上かつ40体積%以下である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記金属粒子の平均粒子径は、1.0μm以上4μm以下である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記金属粒子は、Au、Ag、Pt、Cu、Cr、Zr、Zn、Ta、Ti、Mg、Ni、Ca、Ba、Al、Y、Hf、Ce、Ti、Mo、W、Si、Pd、Ir、Sn、Fe、Pb、Pd、Ndの少なくとも1種とで構成される物質を含む、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記金属粒子は、2.0μm以下または0.005μm以上の粒径の粒子を5体積%以下含む、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記金属粒子は、銅またはタングステンである、請求項13に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置において、圧電素子や音響整合層は、薄膜化することが求められる。また、アレイ振動子の素子サイズも、送受信超音波の高周波化に応じて微細化することが求められる。
【0003】
ここで、従来、音響整合層は、ガラス板やカーボン板等を接着剤により積層することにより作成されてきたが、音響整合層の音響整合基材の薄膜化が進む事により、基材のハンドリングや接着剤での積層が困難となってきた。加えて、音響整合層の基材の加工の技術的難度も大きくなっている。
【0004】
従って、例えば特許文献1に示されるように、樹脂にナノメートルサイズの粒子とマイクロメートルサイズの粒子とを混合した高密度セラミックスや金属のフィラーを混合する事により音響インピーダンスを調整し、混合物を音響整合層に塗布することにより音響整合層を積層する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、この方法は、セラミックス粒子の密度が高密度な場合に限定されている方法であり、また、異なるサイズの粒子を混合する方法であるので、薄膜音響整合層のインビーダンスの面内均一性を維持するという面では課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5415086号公報
【特許文献2】特開2003-169397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、低減衰かつ塗布が可能な樹脂組成物を生成することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る樹脂組成物は、圧電体と電極とを備えたアレイ振動子を有する超音波振動子ユニットにおける超音波振動子の音響整合層の前駆体である樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、樹脂と無機材料の粒子とを含み、前記音響整合層の音響インピーダンスをZ、前記無機材料の粒子の密度をρとすると、2.3≦Z/√ρ≦3.4を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る超音波診断装置100の構成の一例を示した図である。
図2図2は、実施形態に係る超音波振動子の構成の一例を示した図である。
図3図3は、実施形態に係る背景について説明した図である。
図4図4は、実施形態に係る背景について説明した図である。
図5図5は、実施形態に係る音響整合層組成物にかかる実験結果について説明した図である。
図6図6は、実施形態に係る樹脂組成物の製造方法について説明した図である。
図7図7は、第1及び第2の実施形態に係る超音波振動子の構成の一例を示した図である。
図8図8は、実施形態に係る背景について説明した図である。
図9図9は、実施形態に係る樹脂組成物の製造方法について説明した図である。
図10図10は、実施形態に係る音響整合層組成物にかかる実験結果について説明した図である。
図11図11は、実施形態に係る音響整合層組成物にかかる実験結果について説明した図である。
図12図12は、第3の実施形態に係る超音波振動子の構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、樹脂組成物の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
はじめに、図1を用いて、実施形態に係る樹脂組成物を用いて生成された超音波振動子が組み込まれた超音波診断装置の構成の例について説明する。
【0012】
図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0013】
超音波プローブ1は、超音波を送信するとともに反射波を受信する超音波振動子ユニットを有する
【0014】
図2に、超音波振動子ユニットの一部の構成が示されている。
【0015】
超音波振動子ユニットは、超音波プローブ1に内蔵され、プローブが接触する生体に対して超音波の送受信を行う。超音波振動子ユニットは、例えば2次元上に配列された複数の超音波振動子23と、複数の超音波振動子23が配置されるフレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)22と、音響レンズとで構成される。複数の超音波振動子23のぞれぞれは、圧電素子21と、音響整合層20と、図示しない背面整合層とで構成される。超音波振動子23の素子サイズ24は、例えば40μmである。
【0016】
圧電素子21は、圧電性を有する素子である。例えば、圧電素子21は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛/Pb(Zr,Ti)O)、PMN-PT(マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛/Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO)等の圧電素子である。実施形態では、複数の超音波振動子23は、フレキシブル配線板22の所定の面に、配列されて設けられる。圧電素子21の超音波が放射される側の面(超音波の放射面)には、信号電極が設けられる。また、圧電素子21の超音波の放射面側とは反対側の面(背面)には、グランド電極が設けられる。
【0017】
圧電素子21は、送受信回路11からの駆動信号によって駆動されて、信号電極側の面から超音波を放射する。また、圧電素子21は、反射波を受信すると、受信した反射波を反射波信号に変換し、変換した反射波信号を信号電極から出力する。圧電素子21の厚さは、例えば40μmである。
【0018】
音響整合層20は、圧電素子21から生体へ音響インピーダンスを段階的に減少させ、圧電素子21と生体を音響的に整合させるための層である。音響整合層20は、1層のみにより構成されてもよいし、音響インピーダンスを生体に向けてできるだけ滑らかに減少させるために複数の層を有してもよい。音響整合層20としては、例えば、導電性を持たせるために、導電性フィラーが混入された樹脂を用いることができる。この樹脂は、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。音響整合層20の厚さは例えば30μmである。
【0019】
また、背面整合層は、圧電素子と比較して高い音響インビーダンスを有する材質で構成され、共振層として、圧電素子と一体となって超音波の送受信を行う。
【0020】
また、フレキシブル配線板22は、FPC(Flexible Printed Circuit)であり、超音波振動子の各層に設けられた配線を介して、信号電極及びグランド電極を送受信回路11と電気的に接続する。
【0021】
また、圧電素子21と音響整合層20との間には、例えば接着剤が充填されてもよいし、接着剤を用いずに積層塗工により生成されてもよい。
【0022】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波として超音波プローブ1が有する複数の超音波振動子23にて受信される。反射波は、当該反射波を受信した超音波振動子23の圧電素子21で電気信号である反射波信号に変換される。反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0023】
モニタ2は、超音波診断装置100の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像等を表示したりする。
【0024】
入力装置3は、トラックボール、スイッチ、ダイヤル、タッチコマンドスクリーン等を有する。入力装置3は、超音波診断装置100の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して、受け付けた各種設定要求を転送する。
【0025】
装置本体10は、超音波プローブ1による超音波の送受信を制御して、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、図1に示すように、送受信回路11と、Bモード処理回路12と、ドプラ処理回路13と、処理回路14と、メモリ15とを有する。
【0026】
送受信回路11は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。
【0027】
Bモード処理回路12は、送受信回路11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0028】
ドプラ処理回路13は、送受信回路11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0029】
処理回路14は、例えば、情報処理装置(計算機)としての機能を実現する制御プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)で構成される。
【0030】
処理回路14は、画像生成機能により、Bモード処理回路12及びドプラ処理回路13が生成したデータから超音波画像を生成する。また、処理回路14は、制御機能により、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、メモリ15から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13等の処理を制御する。
【0031】
メモリ15は、処理回路14が画像生成機能14aにより生成した超音波画像を記憶するメモリである。また、メモリ15は、Bモード処理回路12やドプラ処理回路13が生成したデータを記憶することも可能である。
【0032】
続いて、実施形態に係る背景について説明する。超音波診断装置100において、取得画像の解像度を改善する目的で、または三次元空間の情報を得るなどの目的で、アレイ振動子は、より多数の超音波振動子23から構成することが要請される傾向にある。一方で、超音波プローブ1は、より高周波(短波長)で超音波を送受信することが求められる。このため、圧電素子21、音響整合層20等は、薄膜化することが求められる傾向にある。
【0033】
また、超音波振動子23の素子サイズ24も、送受信超音波の高周波化に応じて微細化することが望まれる。
【0034】
ここで、従来、音響整合層20はガラス板や、カーボン板等を接着剤により積層することにより生成されてきたが、音響整合層20の音響整合基材の薄膜化が進む事により、基材のハンドリングや接着剤での積層が困難となってきた。加えて、音響整合層20の基材の加工の技術的難度も大きくなっている。
【0035】
従って、特許文献1に示されるように、樹脂にナノメートルサイズの粒子とマイクロメートルサイズの粒子とを混合した高密度セラミックスや金属のフィラーを混合する事により音響インピーダンスZを調整し、混合物を音響整合層20に塗布することにより音響整合層20を積層するプロセスが提案されている。
【0036】
しかしながら、特許文献1の方法は、セラミックス粒子の密度ρが高密度の場合に限定されている方法であり、また、異なるサイズの粒子を混合する方法であるので、薄膜音響整合層のインビーダンスの面内均一性という面では課題があった。
【0037】
実施形態に係る樹脂組成物は、かかる背景に基づくものである。実施形態に係る樹脂組成物は、圧電素子21からなる圧電体と電極とを備えたアレイ振動子を有する超音波振動子ユニットにおける超音波振動子24の音響整合層20の前駆体である樹脂組成物である。樹脂組成物は、樹脂と無機材料の粒子とを含み、音響整合層20の音響インピーダンスをZ、セラミックス粒子の密度をρとすると、2.3≦Z/√ρ≦3.4を満たす。ここで、第1の実施形態では、無機材料の粒子はセラミックス粒子である。すなわち、第1の実施形態では、樹脂組成物は、樹脂とセラミックス粒子とを含み、、音響整合層20の音響インピーダンスをZ、セラミックス粒子の密度をρとすると、2.3≦Z/√ρ≦3.4を満たす。
【0038】
ここで、Z/√ρという量について説明すると、一般に、音響インピーダンスをZ、物質の密度をρとすると、Z/√ρは、体積弾性率に関連した量となる。すなわち、Z/√ρは、概ね、物質の変形のしにくさを表す量となる。ただし、実施形態では、樹脂とセラミックス粒子とからなる樹脂組成物について、樹脂組成物そのものの密度ではなく、添加されるセラミックス粒子の密度ρに対して、Z/√ρの値を評価している。
【0039】
ここで、Z/√ρの値と樹脂組成物の性質の関係について、図3を用いて説明する。図3は、音響インピーダンスZの設計値を横軸に取り、樹脂に添加されるセラミックス粒子の密度ρを縦軸に取り、樹脂組成物の性質について説明したグラフである。
【0040】
ここで、図3において、曲線50、51及び52は、それぞれZ/√ρ=2.3、2.85,3.4となる曲線であり、曲線50と曲線52との間の領域、例えば領域Bとして表示されている領域41が、樹脂組成物として至適な組成となる。一方、領域Aとして表示されている曲線50の左側の低粘度領域42及び領域Cとして表示されている曲線52の右側の高粘度領域43は、樹脂組成物として適当でない領域となる。
【0041】
より詳しく説明すると、低粘度領域42では、添加されるセラミックス粒子の密度が高く、高密度となるセラミックス粒子の沈降が生じてしまう領域となる。また、低粘度領域42では、セラミックス粒子の密度が高く、反射散乱が多く、減衰が強く発生する領域となる。すなわち、低粘度領域42は、セラミックス粒子の沈降や反射散乱における減衰のため、樹脂組成物としては適当でない領域となる。
【0042】
一方、高粘度領域43では、高粘度および高チクソ性のペーストが形成されることから、混合、脱ガス、および展着/塗布が技術的に難しくなる。一例として、高粘度領域43では、スリットコートやアプリケータ等による、塗工での均一薄膜(<100μm)形成プロセスにおいて、十分な塗工精度が得られず、製造上の問題が生じる。すなわち、高粘度領域43は、製造上の問題から、樹脂組成物としては適当でない領域となる。
【0043】
従って、実施形態に係る樹脂組成物の第1の利点について説明すると、2.3≦Z/√ρ≦3.4を満たすことにより、低減衰かつ塗布が可能なものとなり、適切な樹脂組成物となる。
【0044】
すなわち、実施形態に係る樹脂組成物は、妥当な音響インピーダンスZの設計範囲である3.0~15 MRaylにおいて、 低減衰なものとなる。また、実施形態に係る樹脂組成物は、例えばスリットコートもしくはアプリケータによる塗工せん断速度におけるせん断粘度が1<Cp<500[Pas]の範囲で塗工可能な粘度となる。
【0045】
また、実施形態に係る樹脂組成物の第2の利点について説明すると、実施形態に係る樹脂組成物は、異なるサイズの粒子を混合するのではなく、単峰粒径のセラミックス粒子を用いて、樹脂組成物を生成する。
【0046】
この点について簡単に説明すると、樹脂に添加するセラミックス粒子の粒径について、薄膜音響整合層のインピーダンスの面内均一性を担保するため、小粒径であることが求められる、ここで、例えば特許文献1や特許文献2のように、大小2峰粒径の粒子を混合させる場合、粘度調整は容易になるが、大粒径フィラーの混合を避ける事は難しくなる。その結果、大粒径フィラーが多く存在する箇所では、音響インピーダンスZが厚み方向にばらつくことになる。加えて、図4に示されるように超音波振動子23を構成する際のダイシング工程で音響整合層20内に分散した大粒径フィラーが滑落32もしくは残留31すると、超音波振動子23間の音響インピーダンスZのバラツキ発生の原因となる。特に、送信超音波が高周波化されている超音波振動子23では素子サイズ24が小型化している為、超音波振動子23の素子間のバラツキは顕著になる。従って、実施形態に係るセラミックス粒子の平均粒子径の粒径分布は単峰性分布であることが望ましい。単峰粒径のセラミックス粒子を添加して、樹脂組成物を生成する場合、音響整合層20のインピーダンスZの面内均一性が向上し、各アレイ振動子間の音響インビーダンスZのばらつきが小さくなる。
【0047】
実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂などの樹脂と、セラミックス粒子とを含有し、セラミックス粒子が均一分散した、減衰の要因となる微細な気泡などを含まない形態の材料となる。均一散状態は、後述する撹拌方法により実現することができる。
【0048】
[セラミックス粒子について]
実施形態に係る樹脂組成物において添加されるセラミックス粒子としては、小粒径フィラーとして一般的に用いられるセラミックス粒子を広く用いることができる。一例として、セラミックス粒子は、Mg、Ca、Ba、B、Al、Y、Hf、Ce、Ti、W、Siの少なくとも1種と、O、C、N及びSの少なくとも1種とで構成される物質を含む。セラミックス粒子の平均粒子径(平均一次粒子径 は、典型的には、先述したように音響整合層組成物の粘度との関係や、各アレイ振動子間の音響インピーダンスのバラツキを抑える観点から、0.3μm以上~2.0μm以下の小粒径となる。一例として、セラミックス粒子は、2.0μm以下または0.005μm以上の粒径の粒子を5体積%以下含んでもよい。セラミックス粒子材料と各含有量は、設計音響インピーダンスZに対して2.3≦Z/√ρ≦3.4の範囲で適宜に調整される。
【0049】
[樹脂について]
実施形態に係る樹脂組成物を構成する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。より具体的には、通常のエポキシ樹脂、例えば、脂肪族環状(脂環式)エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。実施形態においてはフィラー分散組成物を塗工するため、低粘度エポキシ樹脂を使用する事が好まれる。エポキシ樹脂の粘度は24℃において500mPas以下である事が望ましい。
【0050】
実施形態に用いられるエポキシ樹脂は特に限定されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるエポキシ樹脂を広く用いることができる。具体例としては、例えば脂肪族環状(脂環式)エポキシ樹脂であるセロキサイド2021P(登録商標)が挙げられる。汎用のエピ・ビス型エポキシ樹脂に比べ、低粘度の液状であり塩素含有量が極めて少ないことが特徴であり、塗工工程での運用がしやすいという利点を有する。
【0051】
なお、エポキシ樹脂は、上記のエポキシ樹脂からなるものでもよいし、上記エポキシ樹脂以外に、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、他のエポキシ樹脂を含有していいてもよい。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として知られているものを特に制限なく用いることが
できる。一例として、熱硬化樹脂を、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることができる。典型的な硬化剤の例として、例えば、3級アミン、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド塩基、酸無水物、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、フェノール樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂の粘度への影響を避け、主剤の低粘度を維持する事が出来る硬化剤としては触媒型の3級アミン、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド塩基が運用しやすく。具体例としてはボレート系のカチオン重合剤、サンエイド(登録商標)社製SIシリーズ等が有用である。
【0053】
[樹脂及びセラミックス粒子の混合割合について]
実施形態の層材中のエポキシ含有量は60~80質量% であることが好ましい。また、実施形態の層材中のセラミック含有量は、20~40質量% が好ましい。すなわち、典型的には、樹脂組成物におけるセラミックス粒子の含有量は20体積%以上かつ40体積%以下となる。
【0054】
[樹脂とセラミックス粒子の混合工程について]
樹脂とセラミックス粒子との混合工程について留意すべき点としては、以下の3点が挙げられる。すなわち、第1に、各成分が均一に混合できること、第2に、混入した空気をきちんと脱泡出来ること、第3に、加熱硬化反応の開始を抑制可能な低温条件で混合することが、留意点として挙げられる。混合方法としては、例えば、真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混練することが好ましいが、この際フィラー同士の摩擦で発熱する。混合工程のフローの一例については、以降の実施例にて詳細な内容を説明する。
【0055】
[塗工工程及び硬化について]
実施形態に係る音響整合層組成物の塗工工程について説明する。上述の手法にて精製した音響整合層組成物は塗工可能であり、具体的な塗工方法の例としては、スリットコートやアプリケータによる塗工が挙げられる。アプリケータによる塗工を一例とすると、整合層膜厚はアプリケータのギャップや塗工速度で制御可能となる。
【0056】
なお、整合層の構成は単層に限らず、例えば1層目の塗工を終了した後、アプリケータのギャップを変更する事により、1層目の塗工整合層上へ2層目の整合層を塗工し、2層目の塗工整合層上へ3層目の整合層を塗工するなどしてもよい。このような構成により、複数音響インピーダンスを有する音響整合層組成物を、接着剤を用いずに積層塗工する事が可能となる。また塗工後の整合層はクリーンオーブンにて加熱硬化する事により、シート状の単層もしくは多層音響整合シートを得る事ができる。
【0057】
[硬化について]
樹脂整合層が硬化する際に発生する硬化収縮や、加熱工程で発生する線膨張が樹脂整合層の反りの発生要因となる。この為、硬化樹脂としては、室温硬化樹脂やUV硬化樹脂の使用が推奨される。しかしながら、特許文献1のように室温硬化樹脂を使用した場合、樹脂とフィラーの混合工程でフィラー同士の接触し摩擦熱により昇温し、重合反応が開始し硬化してしまう場合がある。また特許文献2のように光硬化樹脂を使用する場合、光をフィラーが吸収・散乱するため深度方向に硬化ムラが発生する場合がある。
【0058】
これに対して、上述の塗工プロセスは、加熱硬化樹脂(150℃硬化)を用いても、樹脂音響整合層の反りを誘発しない高精度塗工プロセスとなる。
【0059】
以上、実施形態に係る樹脂組成物の概略について説明した。以下、実施形態に係る樹脂組成物について、具体例を挙げて説明する。第1の実施形態の第1の実施例では、中心周波数20-30MHzの超音波プローブ1を作成する場合を念頭について、酸化アルミニウム(Al2O3)を添加する場合について、第2の実施形態では、中心周波数30MHz程度の超音波プローブ1を作成する場合を念頭について、炭化タングステン(WC)を添加する場合について説明する。
【0060】
(第1の実施形態の第1の実施例)
第1の実施形態の第1の実施例では、中心周波数20-30MHzの超音波プローブ1を作成する場合を想定して、樹脂に添加するセラミックス粒子として、酸化アルミニウム(Al2O3)を用いる場合について説明する。
【0061】
[セラミックス粒子の選択について]
はじめに、中心周波数20-30MHzの超音波プローブ1を作成する場合において、樹脂に添加するセラミックス粒子として、酸化アルミニウム(Al2O3)を選択した理由について説明する。
【0062】
音響整合層に関わる因子として、音響インピーダンスの設計値をZ=5.6 [MRayl]、音響整合層20の膜厚の設計値を30μm、素子サイズ24の設計値を40μmとした。
【0063】
また、制約条件として、フィラーの反射散乱により発生する音響整合層組成物の減衰係数を、中心周波数20-30MHzの下で、0.6 dB/MHz/mm未満とした。上記設計値と制約条件の下で、実現可能なセラミックス粒子の組成について検討した。
【0064】
ここで、音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4を基に、それらの関係式の中間値となるZ/√ρ=2.85にて組成計算を行った。音響インピーダンスの設計値であるZ=5.6 [MRayl]を代入すると、ρ=[3.99g・cm^3]となる。第1の実施形態の第1の実施例では、この値に近い密度となるような小粒系フィラーとして、一般的に用いられるセラミックス材料群であることなど種々の条件を考慮し、酸化アルミニウム(Al2O3:ρ=[3.8g・cm^3])を選択した。
【0065】
[セラミックス粒子の粒径について]
次に、添加するフィラーであるセラミックス粒子の粒径について検討すると、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズに対して5%以上の大きさの欠陥が存在すると各アレイ素子の音響特性バラツキに直接影響することから、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズの5%を超えないことが望ましい。このことから、整合層膜厚の設計値が30μm、素子サイズの設計値が40μmである事を考慮すると、添加するフィラーであるセラミックス粒子の粒径は、1.5μm以下が望ましい。
【0066】
以上の検討により、第1の実施形態の第1の実施例では、平均粒径0.7μmのAl2O3(ρ=[3.8g・cm^3]の市販材料を、第1の実施形態において添加されるセラミックス粒子として選択した。
【0067】
[音響インビーダンスZの設計値を変化させた場合について]
音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4に、フィラーの密度ρ=[3.8g・cm^3]を代入すると、4.48<Z<6.63[MRayl]となる。従って、音響インピーダンスZは、この範囲で変更可能となる。図5に、Z=4.1~8の範囲で音響インピーダンスZの値を変更して、生成された音響整合層組成物の性質を調べた実験結果が示されている。
【0068】
ここで、例えば図3に領域Aとして表示されている低粘度領域42に相当するZ=4.1[MRayl]ではフィラーの沈降が発生し、最表層にフィラーが均一分散せずにエポキシのみの薄膜層が形成されてしまい、音響整合層組成物としての運用はできなかった。また、図3に領域Cとして表示されている高粘度領域43に相当するZ=7.2~8.0[MRayl]では、粘度が高く設計膜厚t=30μmの精密塗工(塗工誤差<+/-1μm)は、スリットコートやアプリケータコート手法では不可能であった。なお、音響インピーダンス計測用サンプルは厚さ1mm、2mm、3mmの基板を用いる為、ある程度高粘度材料でも形成、計測は可能である。Z=4.6~6.3の領域では、このような問題は生じなかった。
【0069】
[樹脂について]
次に、セラミックス粒子と混合する樹脂について説明する。セラミックス粒子と混合する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が考えられる。第1の実施形態の第1の実施例では、セラミックス粒子と混合するエポキシ樹脂として、例えば株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を選択した。本材料は低粘度(250mPas@24℃)の液状エポキシ樹脂であり、塗工目的の音響整合層組成物に適している。
【0070】
[樹脂とセラミックス粒子の混合比について]
続いて、樹脂とセラミックス粒子の混合量について説明する。樹脂とセラミックス粒子の混合比を適宜調整することで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4に、Al2O3の密度ρ=[3.8g・cm^3]を代入すると、4.48<Z<6.63[MRayl]が得られる。従って、樹脂とセラミックス粒子の混合量を変化させることで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。実施例では、エポキシ+硬化剤+フィラーにおいてフィラーであるセラミックス粒子の添加を体積割合30vol%としたところ、得られた樹脂組成物の音響インピーダンスZは、Z=5.6 [MRayl]であった。
【0071】
[硬化剤について]
次に、硬化剤について説明する。硬化剤としては、ボレート系のカチオン重合剤を使用することが考えられる。実施例では、サンエイド(登録商標)社製のSI-B3A(登録商標)を、0.15vol%添加した。なお、固体での硬化剤の添加は樹脂中の均一分散が困難なため。例えば硬化剤をMEK(メチルエチルケトン)で希釈し、硬化剤の添加量が0.15vol%になるよう添加し、真空脱泡でMEKを除去することが考えられる。
【0072】
[樹脂とセラミックス粒子の混合工程について]
続いて、樹脂、フィラーであるセラミックス粒子及び硬化剤の混合工程について説明する。図6に、かかる混合フローの一例が示されている。樹脂、セラミックス粒子及び硬化剤の混合としては、例えば真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混合を行う場合が考えられる。
【0073】
具体的には、はじめに、エポキシ樹脂として、株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を18.6g秤量した(第1工程)。続いて、Al2O3フィラーを25.5g秤量した(第2工程)。続いて、第2工程で秤量されたセラミックス粒子であるAl2O3フィラーと、第1工程で秤量されたセロキサイド2021P(登録商標)を2000rpmで2分間、均一分散した(第3工程)。続いて、均一分散を確認したのち、0.2Paの真空化で再度2000rpm、4分攪拌し混入した微細気泡を脱した(第4工程)。続いて、高回転処理により昇温したAl2O3フィラーとセロキサイド2021Pの混合液を25℃(室温)まで冷却した(第5工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を25℃(室温)まで冷却した(第6工程)。
【0074】
続いて、0.15vol%の硬化剤:SI-B3AをMEKで溶解し、第6工程で得られた組成物に添加した(第7工程)。続いて、セロキサイド2021P(登録商標)に対し0.005vol%のStabilizerをエタノールで溶解し添加した(第8工程)なお、第8工程については、省略可能である。続いて、回転時の混合液の昇温を抑えるため低回転(500rpm)で1分間、真空中攪拌し残留溶媒や微細気泡を脱泡した(第9工程)。続いて、200rpmで8分間真空中核攪拌した(第10工程)。続いて、目視にて混合液表面からの脱泡が無きことを確認した(第11工程)のち、混合組成物をディスペンス用のシリンジに詰め替えた(第12工程)。続いて、高回転処理により昇温したAl2O3フィラーとセロキサイド2021P(登録商標)の混合液を25℃まで冷却した(第13工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を冷却治具にて25℃(室温)まで冷却した(第14工程)。続いて、シリンジ内に残留した気泡を200rpm、4分で真空中核攪拌した(第15工程)。
【0075】
以上の工程により、硬化剤添加後のAl2O3フィラーとセロキサイド2021P(登録商標)を35℃以下で混合する事が可能になる。上記混合条件においてZ=5.6 [MRayl]の音響整合層組成物のポットライフ(硬化剤添加2時間後の粘度変化率)を5%未満に制御する事が可能となった。
【0076】
スリットコートやアプリケータコートプロセスにおいて、組成物の粘度変化は、塗工膜厚に直接影響するため、膜厚制御性の観点から望ましくない。塗工により設計整合層膜厚30μmの整合層を形成したところ、現行プロセスの粘度上昇率5%未満では、塗工膜厚変動量は+0.1μm未満で制御可能であることを確認することができた。
【0077】
(第1の実施形態の第2の実施例)
第1の実施形態の第2の実施例では、中心周波数30MHzの超音波プローブ1を作成する場合を想定して、樹脂に添加するセラミックス粒子として、炭化タングステン(WC)を用いる場合について説明する。
【0078】
[セラミックス粒子の選択について]
はじめに、中心周波数30MHzの超音波プローブ1を作成する場合において、樹脂に添加するセラミックス粒子として、炭化タングステン(WC)を選択した理由について説明する。
【0079】
音響整合層に関わる因子として、音響インピーダンスの設計値を、ガラス整合層に近いZ=11 [MRayl]、整合層膜厚21の設計値を、40μm、素子サイズ24の設計値を、40μmとした。
【0080】
また、制約条件として、フィラーの反射散乱により発生する音響整合層組成物の減衰係数を、中心周波数20~30MHzの下で、0.6 dB/MHz/mm未満とし、上記設計値と制約条件の下で、実現可能なセラミックス粒子の組成について検討した。
【0081】
ここで、音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4を基に、それらの関係式の中間値となるZ/√ρ=2.85にて組成計算を行った。音響インピーダンスの設計値であるZ=11[MRayl]を代入すると、ρ=[14.9g・cm^3]となる。第1の実施形態の第2の実施例では、この値に近い密度となるような小粒系フィラーとして、一般的に用いられるセラミックス材料群であることなど種々の条件を考慮し、WC(ρ=[15.63g・cm^3]を選択した。
【0082】
[セラミックス粒子の粒径について]
次に、添加するフィラーであるセラミックス粒子の粒径について検討すると、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズに対して5%以上の大きさの欠陥が存在すると各アレイ素子の音響特性バラツキに直接影響することから、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズの5%を超えないことが望ましい。このことから、整合層膜厚の設計値が30μm、素子サイズの設計値が40μmである事を考慮すると、添加するフィラーであるセラミックス粒子の粒径は、1.5μm以下が望ましい。
【0083】
以上の検討により、第1の実施形態の第2の実施例では、平均粒径1.5μmのWC(ρ=[15.63g・cm^3]の市販材料を、第1の実施形態の第2の実施例において添加されるセラミックス粒子として選択した。
【0084】
[樹脂について]
次に、セラミックス粒子と混合する樹脂について説明する。セラミックス粒子と混合する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が考えられる。第1の実施形態の第2の実施例では、第1の実施形態の第1の実施例と同様、セラミックス粒子と混合するエポキシ樹脂として、例えば株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を選択した。本材料は低粘度(250mPas@24℃)の液状エポキシ樹脂であり、塗工目的の音響整合層組成物に適している。
【0085】
[樹脂とセラミックス粒子の混合比について]
続いて、樹脂とセラミックス粒子の混合量について説明する。樹脂とセラミックス粒子の混合比を適宜調整することで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4に、WCの密度ρ=[15.63g・cm^3]を代入すると、9.1<Z<13.8[MRayl]が得られる。従って、樹脂とセラミックス粒子の混合量を変化させることで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。実施例では、エポキシ+硬化剤+フィラーにおいてフィラーであるセラミックス粒子の添加を体積割合30vol%としたところ、得られた樹脂組成物の音響インピーダンスZは、Z=11.0[MRayl]であった。
【0086】
[硬化剤について]
次に、硬化剤について説明する。硬化剤としては、ボレート系のカチオン重合剤を使用することが考えられる。実施例では、サンエイド(登録商標)社製のSI-B3A(登録商標)を、0.15vol%添加した。なお、固体での硬化剤の添加は樹脂中の均一分散が困難なため。例えば硬化剤をMEK(メチルエチルケトン)で希釈し、硬化剤の添加量が0.15vol%になるよう添加し、真空脱泡でMEKを除去することが考えられる。
【0087】
[樹脂とセラミックス粒子の混合工程について]
続いて、樹脂、フィラーであるセラミックス粒子及び硬化剤の混合工程について説明する。図6で示された、第1の実施形態の第1の実施例と同様の混合工程を経ることにより、樹脂、フィラーであるセラミックス粒子及び硬化剤の混合することができる。すなわち、例えば真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混合を行うことにより、樹脂、フィラーであるセラミックス粒子及び硬化剤を混合することができる。なお、混合するセラミックス粒子の体積割合は、第1の実施形態の第1の実施例と同様に30%程度であるが、第2の実施形態では、混合するセラミックス粒子であるWCに密度が大きいため、混合する重量は図6と比較して増加する。
【0088】
以上の工程により、WCフィラーとセロキサイド2021P(登録商標)を35℃以下で混合する事が可能になる。上記混合条件においてZ=11.0 [MRayl]の音響整合層組成物のポットライフ(硬化剤添加2時間後の粘度変化率)を5%未満に制御する事が可能となった。
【0089】
スリットコートやアプリケータコートプロセスにおいて、組成物の粘度変化は、塗工膜厚に直接影響するため、膜厚制御性の観点から望ましくない。塗工により設計整合層膜厚30μmの整合層を形成したところ、現行プロセスの粘度上昇率5%未満では、塗工膜厚変動量は+0.1μm未満で制御可能であることを確認することができた。
【0090】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、低減衰かつ塗布が可能な樹脂組成物を生成することができる。
【0091】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、無機材料の粒子がセラミックス粒子である場合について説明した。第2の実施形態では、無機材料の粒子が金属粒子である場合について説明する。
【0092】
図7に、第2の実施形態に係る超音波振動子ユニット1070の一部の構成の一例が示されている。
【0093】
超音波振動子ユニット1070は、超音波プローブ1に内蔵され、プローブが接触する生体に対して超音波の送受信を行う。超音波振動子ユニット1070は、例えば2次元上に配列された複数の超音波振動子と、複数の超音波振動子が配置されるフレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)1022と、音響レンズとで構成される。複数の超音波振動子のぞれぞれは、圧電素子1021と、音響整合層1020と、図示しない背面整合層とで構成される。超音波振動子の素子サイズ1027は、例えば40μmである。
【0094】
圧電素子1021は、圧電性を有する素子である。例えば、圧電素子1021は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛/Pb(Zr,Ti)O)、PMN-PT(マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛/Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO)等の圧電素子である。実施形態では、複数の超音波振動子は、フレキシブル配線板1022の所定の面に、配列されて設けられる。圧電素子1021の超音波が放射される側の面(超音波の放射面)には、信号電極が設けられる。また、圧電素子1021の超音波の放射面側とは反対側の面(背面)には、グランド電極が設けられる。
【0095】
圧電素子1021は、送受信回路1011からの駆動信号によって駆動されて、信号電極側の面から超音波を放射する。また、圧電素子1021は、反射波を受信すると、受信した反射波を反射波信号に変換し、変換した反射波信号を信号電極から出力する。圧電素子1021の厚さは、例えば40μmである。
【0096】
音響整合層1020は、圧電素子1021から生体へ音響インピーダンスを段階的に減少させ、圧電素子1021と生体を音響的に整合させるための層である。音響整合層1020は、1層のみにより構成されてもよいし、音響インピーダンスを生体に向けてできるだけ滑らかに減少させるために複数の層を有してもよい。音響整合層1020としては、例えば、導電性を持たせるために、導電性フィラーが混入された樹脂を用いることができる。この樹脂は、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。音響整合層1020の厚さは例えば30μmである。
【0097】
また、背面整合層は、圧電素子と比較して高い音響インビーダンスを有する材質で構成され、共振層として、圧電素子と一体となって超音波の送受信を行う。
【0098】
また、フレキシブル配線板1022は、FPC(Flexible Printed Circuit)であり、超音波振動子の各層に設けられた配線を介して、信号電極及びグランド電極を送受信回路11と電気的に接続する。
【0099】
また、圧電素子1021と音響整合層1020との間には、例えば接着剤が充填されてもよいし、接着剤を用いずに積層塗工により生成されてもよい。
【0100】
続いて、第2の実施形態に係る背景について説明する。超音波診断装置100において、取得画像の解像度を改善する目的で、または三次元空間の情報を得るなどの目的で、アレイ振動子は、より多数の超音波振動子から構成することが要請される傾向にある。一方で、超音波プローブ1は、より高周波(短波長)で超音波を送受信することが求められる。このため、圧電素子1021、音響整合層1020等は、薄膜化することが求められる傾向にある。
【0101】
また、超音波振動子の素子サイズも、送受信超音波の高周波化に応じて微細化することが望まれる。
【0102】
ここで、従来、音響整合層1020はガラス板や、カーボン板等を接着剤により積層することにより生成されてきたが、音響整合層1020の音響整合基材の薄膜化が進む事により、基材のハンドリングや接着剤での積層が困難となってきた。加えて、音響整合層1020の基材の加工の技術的難度も大きくなっている。
【0103】
従って、特許文献1に示されるように、樹脂にナノメートルサイズの粒子とマイクロメートルサイズの粒子とを混合した高密度セラミックス等を混合する事により音響インピーダンスZを調整し、混合物を音響整合層1020に塗布することにより音響整合層1020を積層するプロセスが提案されている。
【0104】
しかしながら、特許文献1の方法は、セラミックス粒子の密度ρが高密度の場合に限定されている方法であり、また、異なるサイズの粒子を混合する方法であるので、薄膜音響整合層のインビーダンスの面内均一性という面では課題があった。
【0105】
第2の実施形態に係る樹脂組成物は、かかる背景に基づくものであり、金属粒子を添加する方法に基づく。実施形態に係る樹脂組成物は、圧電素子1021からなる圧電体と電極とを備えたアレイ振動子を有する超音波振動子ユニットにおける超音波振動子1024の音響整合層1020の前駆体である樹脂組成物である。樹脂組成物は、樹脂と金属粒子とを含み、音響整合層1020の音響インピーダンスをZ、金属粒子の密度をρとすると、2.3≦Z/√ρ≦2.9を満たす。
【0106】
ここで、Z/√ρという量について説明すると、一般に、音響インピーダンスをZ、物質の密度をρとすると、Z/√ρは、体積弾性率に関連した量となる。すなわち、Z/√ρは、概ね、物質の変形のしにくさを表す量となる。ただし、実施形態では、樹脂と金属粒子とからなる樹脂組成物について、樹脂組成物そのものの密度ではなく、添加される金属粒子の密度ρに対して、Z/√ρの値を評価している。
【0107】
ここで、Z/√ρの値と樹脂組成物の性質の関係について、図8を用いて説明する。図8は、音響インピーダンスZの設計値を横軸に取り、樹脂に添加される金属粒子の密度ρを縦軸に取り、樹脂組成物の性質について説明したグラフである。
【0108】
ここで、図8において、直線1050及び1052は、それぞれ先に述べた不等式2.3≦Z/√ρ≦2.9の下限及び上限となるような値Z/√ρ=2.3及び2.9となる直線であり、直線1051は、ρの値が直線1050と1052の値の中間となるような直線である。直線1050と直線1052との間の領域、例えば領域1060a、1060b、1060c、1060d等の領域が、樹脂組成物として至適な組成となる。一方、直線1050の左側の低粘度領域1042及び直線1052の右側の高粘度領域1043は、樹脂組成物として適当でない領域となる。
【0109】
より詳しく説明すると、低粘度領域1042では、添加される金属粒子の密度が高く、高密度となる金属粒子の沈降が生じてしまう領域となる。また、低粘度領域1042では、平均粒子間距離の影響により、反射散乱による強い減衰の問題が発生する。すなわち、低粘度領域1042は、金属粒子の沈降や反射散乱における減衰のため、樹脂組成物としては適当でない領域となる。
【0110】
一方、高粘度領域1043では、高粘度および高チクソ性のペーストが形成されることから、混合、脱ガス、および展着/塗布が技術的に難しくなる。一例として、高粘度領域1043では、スリットコートやアプリケータ等による、塗工での均一薄膜(<100μm)形成プロセスにおいて、十分な塗工精度が得られず、製造上の問題が生じる。すなわち、高粘度領域1043は、製造上の問題から、樹脂組成物としては適当でない領域となる。
【0111】
従って、実施形態に係る樹脂組成物の第1の利点について説明すると、実施形態に係る金属粒子材料は、設計音響インピーダンスZに対する金属粒子材料の密度ρとの関係が2.3≦Z/√ρ≦2.9を満たすことにより、低減衰かつ塗布が可能なものとなり、適切な樹脂組成物となる。
【0112】
すなわち、実施形態に係る樹脂組成物は、妥当な音響インピーダンスZの設計範囲である3.0~15 MRaylにおいて、 低減衰なものとなる。また、実施形態に係る樹脂組成物は、例えばスリットコートもしくはアプリケータによる塗工せん断速度におけるせん断粘度が1<Cp<500[Pas]の範囲で塗工可能な粘度となる。
【0113】
また、実施形態に係る樹脂組成物の第2の利点について説明すると、実施形態に係る樹脂組成物は、異なるサイズの粒子を混合するのではなく、主として小粒径の単峰粒径の金属粒子を用いて、樹脂組成物を生成する。
【0114】
この点について簡単に説明すると、樹脂に添加する金属粒子の粒径について、薄膜音響整合層のインピーダンスの面内均一性を担保するため、小粒径であることが求められる、ここで、例えば特許文献1や特許文献2のように、大小2峰粒径の粒子を混合させる場合、粘度調整は容易になるが、大粒径フィラーの混合を避ける事は難しくなる。その結果、大粒径フィラーが多く存在する箇所では、音響インピーダンスZが厚み方向にばらつくことになる。加えて、超音波振動子を構成する際のダイシング工程で音響整合層1020内に分散した大粒径フィラーが滑落もしくは残留すると、超音波振動子間の音響インピーダンスZのバラツキ発生の原因となる。特に、送信超音波が高周波化されている超音波振動子では素子サイズが小型化している為、超音波振動子の素子間のバラツキは顕著になる。従って、実施形態に係る金属粒子の平均粒子径の粒径分布は、小粒径の単峰性分布であることが望ましい。単峰粒径の金属粒子を添加して、樹脂組成物を生成する場合、音響整合層1020のインピーダンスZの面内均一性が向上し、各アレイ振動子間の音響インビーダンスZのばらつきが小さくなる。すなわち、各アレイ振動子間の音響インビーダンスのばらつきを低減することができ、また低減衰かつ塗布が可能な樹脂組成物を提供することができる。
【0115】
また、実施形態においては、単一の材料を使用し、適した粉末粒度で利用可能な適切な密度の材料を探し出すことが可能となる。すなわち、樹脂と金属粒子とが適切な体積割合で混合されることで、粘度により、およびチクソ性のペーストが組成物を形成する事により塗布が非常に容易となり、製造上の問題が解決される。またフィラー添加によって発生する反射散乱減衰を低減衰に制御する事が可能となる。
【0116】
また、実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂などの樹脂と、金属粒子とを含有し、金属粒子が均一分散した、減衰の要因となる微細な気泡などを含まない形態の材料となる。均一散状態は、後述する撹拌方法により実現することができる。
【0117】
[樹脂について]
ここで、実施形態に係る樹脂組成物を構成する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。より具体的には、通常のエポキシ樹脂、例えば、脂肪族環状(脂環式)エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。実施形態においてはフィラー分散組成物を塗工するため、低粘度エポキシ樹脂を使用する事が好まれる。エポキシ樹脂の粘度は24℃において500mPas以下である事が望ましい。
【0118】
実施形態に用いられるエポキシ樹脂は特に限定されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるエポキシ樹脂を広く用いることができる。具体例としては、例えば脂肪族環状(脂環式)エポキシ樹脂であるセロキサイド2021P(登録商標)が挙げられる。汎用のエピ・ビス型エポキシ樹脂に比べ、低粘度の液状であり塩素含有量が極めて少ないことが特徴であり、塗工工程での運用がしやすいという利点を有する。
【0119】
なお、エポキシ樹脂は、上記のエポキシ樹脂からなるものでもよいし、上記エポキシ樹脂以外に、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、他のエポキシ樹脂を含有していいてもよい。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
[硬化剤について]
硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として知られているものを特に制限なく用いることが
できる。一例として、熱硬化樹脂を、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることができる。典型的な硬化剤の例として、例えば、3級アミン、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド塩基、酸無水物、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、フェノール樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂の粘度への影響を避け、主剤の低粘度を維持する事が出来る硬化剤としては、触媒型の3級アミン、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド塩基が運用しやすく。具体例としてはボレート系のカチオン重合剤、サンエイド(登録商標)社製SIシリーズ等が有用である。
【0121】
[金属粒子について]
実施形態に係る樹脂組成物において添加される金属粒子としては、小粒径フィラーとして一般的に用いられる金属粒子を広く用いることができる。一例として、金属粒子は、Au、Ag、Pt、Cu、Cr、Zr、Zn、Ta、Ti、Mg、Ni、Ca、Ba、Al、Y、Hf、Ce、Ti、Mo、W、Si、Pd、Ir、Sn、Fe、Pb、Pd、Ndの少なくとも1種とで構成される物質を含む。金属粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、典型的には、先述したように音響整合層組成物の粘度との関係や、各アレイ振動子間の音響インピーダンスのバラツキを抑える観点から、1.0μm以上4μm以下の小粒径となる。金属粒子材料と各含有量は、設計音響インピーダンスZに対して2.3≦Z/√ρ≦2.9の範囲で適宜に調整される。金属粒子は、2.0μm以下または0.005μm以上の粒径の粒子を5体積%以下含んでもよい。
【0122】
[樹脂及び金属粒子の混合割合について]
実施形態の層材中のエポキシ含有量は60~80質量% であることが好ましい。また、実施形態の層材中の金属粒子含有量は、20~40質量% が好ましい。すなわち、典型的には、樹脂組成物における金属粒子の含有量は20体積%以上かつ40体積%以下となる。
【0123】
[樹脂と金属粒子の混合工程について]
樹脂と金属粒子との混合工程について留意すべき点としては、以下の3点が挙げられる。すなわち、第1に、各成分が均一に混合できること、第2に、混入した空気をきちんと脱泡出来ること、第3に、加熱硬化反応の開始を抑制可能な低温条件で混合することが、留意点として挙げられる。混合方法としては、例えば、真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混練することができる。
【0124】
[塗工工程について]
上述の手法にて精製した音響整合層組成物は塗工可能であり、具体的な塗工方法の例としては、スリットコートやアプリケータによる塗工が挙げられる。アプリケータによる塗工を一例とすると、整合層膜厚はアプリケータのギャップや塗工速度で制御可能となる。
【0125】
なお、整合層の構成は単層に限らず、例えば1層目の塗工を終了した後、アプリケータのギャップを変更する事により、1層目の塗工整合層上へ2層目の整合層を塗工し、2層目の塗工整合層上へ3層目の整合層を塗工するなどしてもよい。このような構成により、複数音響インピーダンスを有する音響整合層組成物を、接着剤を用いずに積層塗工する事が可能となる。また塗工後の整合層はクリーンオーブンにて加熱硬化する事により、シート状の単層もしくは多層音響整合シートを得る事ができる。
【0126】
[硬化方法について]
続いて、樹脂整合層塗布後の硬化手法について言及する。樹脂整合層が硬化する際に発生する硬化収縮や、加熱工程で発生する線膨張は、樹脂整合層の反りの発生要因となる。この為、室温硬化樹脂やUV硬化樹脂の使用が推奨されている。しかしながら例えば室温硬化樹脂を使用した場合、樹脂とフィラーの混合工程でフィラー同士の接触し摩擦熱により昇温し、重合反応が開始し硬化してしまう。また光硬化樹脂を使用する場合、光をフィラーが吸収・散乱するため深度方向に硬化ムラが発生する。
【0127】
従って、我々は、樹脂整合層塗布後の硬化手法について検討した。この結果、加熱硬化樹脂(150℃硬化)を用いても、樹脂音響整合層の反りを誘発しない高精度塗工プロセスを確立した。
【0128】
以下、第2の実施形態の第1の実施例から第2の実施形態の第3の実施例で、具体的な実施形態について説明する。第2の実施形態の第1の実施例では、金属粒子として、銅を選択した場合について説明する。第2の実施形態の第2の実施例では、金属粒子として、タングステンを選択した場合について説明する。第2の実施形態の第3の実施例では、音響整合層を2層にした場合の例を説明する。
【0129】
(第2の実施形態の第1の実施例)
第2の実施形態の第1の実施例では、中心周波数20-30MHzの超音波プローブ1を作成する場合を想定して、樹脂に添加する金属粒子として、銅(Cu)を用いる場合について説明する。
【0130】
[金属粒子の選択について]
はじめに、中心周波数20-30MHzの超音波プローブ1を作成する場合において、樹脂に添加する金属粒子として、銅(Cu)を選択した理由について説明する。
【0131】
音響整合層に関わる因子として、音響インピーダンスの設計値をZ=7.6[MRayl]、音響整合層20の膜厚の設計値を30μm、素子サイズ27の設計値を40μmとした。
【0132】
また、制約条件として、フィラーの反射散乱により発生する音響整合層組成物の減衰係数を、中心周波数20-30MHzの下で、0.6dB/MHz/mm未満とした。上記設計値と制約条件の下で、実現可能な金属粒子の組成について検討した。
【0133】
ここで、音響インピーダンスZと添加するフィラーである金属粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9を基に、それらの関係式の中間値となるZ/√ρ=2.55にて組成計算を行った。音響インピーダンスの設計値であるZ=7.6 [MRayl]を代入すると、ρ=[8.883g・cm^3]となる。第1の実施形態では、この値に近い密度となるような小粒径フィラーとして、一般的に用いられる材料群であることなど種々の条件を考慮し、銅(Cu:ρ=[8.96g・cm^3])を選択した。
【0134】
[金属粒子の粒径について]
次に、添加するフィラーである金属粒子の粒径について検討すると、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズに対して10%以上の大きさの欠陥が存在すると各アレイ素子の音響特性バラツキに直接影響することから、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズの10%を超えないことが望ましい。このことから、整合層膜厚の設計値が30μm、素子サイズの設計値が40μmである事を考慮すると、添加するフィラーである金属粒子の粒径は、3μm以下が望ましい。
【0135】
以上の検討により、第2の実施形態の第1の実施例では、平均粒径2.1μmのCu(ρ=[8.96g・cm^3]の市販材料を、第2の実施形態の第1の実施例において添加される金属粒子として選択した。
【0136】
[樹脂について]
次に、金属粒子と混合する樹脂について説明する。金属粒子と混合する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が考えられる。第2の実施形態の第1の実施例では、金属粒子と混合するエポキシ樹脂として、脂肪族環状(脂環式)エポキシ樹脂、例えば株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を選択した。本材料は低粘度(250mPas@24℃)の液状エポキシ樹脂であり、塗工目的の音響整合層組成物に適している。
【0137】
[樹脂と金属粒子の混合比について]
続いて、樹脂と金属粒子の混合量について説明する。樹脂と金属粒子の混合比を適宜調整することで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。音響インピーダンスZと添加するフィラーである金属粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9に、銅の密度ρ=[8.96g・cm^3]を代入すると、6.88<Z<8.68[MRayl]が得られる。従って、樹脂と金属粒子の混合量を変化させることで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。実施例では、エポキシ+硬化剤+フィラーにおいてフィラーである金属粒子の添加を体積割合33vol%としたところ、得られた樹脂組成物の音響インピーダンスZは、Z=7.6 [MRayl]であった。
【0138】
[硬化剤について]
次に、硬化剤について説明する。硬化剤としては、ボレート系のカチオン重合剤を使用することが考えられる。実施例では、サンエイド(登録商標)社製のSI-B3A(登録商標)を、0.15vol%添加した。なお、固体での硬化剤の添加は樹脂中の均一分散が困難なため。例えば硬化剤をアセトンで希釈し、硬化剤の添加量が0.15vol%になるよう添加し、真空脱泡でアセトンを除去した。
【0139】
[樹脂と金属粒子の混合工程について]
続いて、樹脂、フィラーである金属粒子及び硬化剤の混合工程について説明する。図9に、かかる混合フローの一例が示されている。樹脂、金属粒子及び硬化剤の混合としては、例えば真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混合を行う場合が考えられる。
【0140】
具体的には、はじめに、エポキシ樹脂として、株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を18g秤量した(第1工程)。続いて、銅フィラーを73.5g秤量した(第2工程)。続いて、第2工程で秤量された金属粒子である銅フィラーと、第1工程で秤量されたセロキサイド2021P(登録商標)を2000rpmで2分間、均一分散した(第3工程)。続いて、均一分散を確認したのち、0.2Paの真空化で再度1000rpm、6分攪拌し混入した微細気泡を脱した(第4工程)。続いて、高回転処理により昇温した銅フィラーとセロキサイド2021Pの混合液を25℃(室温)まで冷却した(第5工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を25℃(室温)まで冷却した(第6工程)。
【0141】
続いて、0.15vol%の開始剤:SI-B3Aをアセトン溶液で溶解し、第6工程で得られた組成物に添加した(第7工程)。なお、状況に応じて、StabilierやRetarderを調整してもよい。続いて、回転時の混合液の昇温を抑えるため低回転(500rpm)で1分間、真空中攪拌し残留溶媒や微細気泡を脱泡した(第8工程)。続いて、200rpmで15分間真空中核攪拌した(第9工程)。続いて、目視にて混合液表面からの脱泡が無きことを確認した(第10工程)のち、混合組成物をディスペンス用のシリンジに詰め替えた(第11工程)。続いて、高回転処理により昇温した銅フィラーとセロキサイド2021P(登録商標)の混合液を25℃まで冷却した(第12工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を冷却治具にて25℃(室温)まで冷却した(第13工程)。続いて、シリンジ内に残留した気泡を200rpm、4分で真空中核攪拌した(第14工程)。
【0142】
以上の工程により、開始材であるSI-B3A添加後の銅フィラーとセロキサイド2021P(登録商標)を35℃以下で混合する事が可能になる。低温下での混合を可能とすることにより、重合反応の開始を抑制し音響整合層組成物の粘度変化(ポットライフ)を抑制する事が可能となった。
【0143】
スリットコートやアプリケータコートプロセスにおいて、組成物の粘度変化は、塗工膜厚に直接影響するため、膜厚制御性の観点から望ましくない。塗工により設計整合層膜厚40μmの整合層を形成したところ、現行の混合プロセスの粘度上昇率は開始剤添加後1時間で10%未満となり、塗工膜厚変動量は+0.2μm未満で制御可能であることを確認した。
【0144】
また先述のように、音響整合層組成物は、設計インピーダンスに合わせて、上述した設計音響インピーダンスとフィラー密度の関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9の範囲で調整が可能である。すなわち、ρ=[8.96g・cm^3]の銅フィラーが選択された際、音響インピーダンスZに関して、6.88<Z<8.68[MRayl]の範囲の音響整合層組成物が形成可能となる。銅フィラーを用いた音響整合層組成物の設計音響インピーダンスを変更した実験結果を、図10に示す。
【0145】
設計インピーダンスに対する組成と評価結果一覧をしめす。図8に示す低粘度領域42の組成領域(Z=6.9[MRayl])ではフィラーの沈降が発生し最表層にフィラーが均一分散せずに、エポキシのみの薄膜層が形成されてしまい、音響整合層組成物としての運用は不可能である事がわかった。一方、図8に示す高粘度領域43の組成領域(Z=10.0[MRayl])では、粘度が高く設計膜厚t=40μmの精密塗工(塗工誤差<+/-1μm)は、前記スリットコートやアプリケータコート手法では不可能であった。尚、音響インピーダンス計測用サンプルは厚さ1mm、2mm、3mmの基板を用いる為、ある程度高粘度材料でも形成、計測は可能である。
【0146】
(第2の実施形態の第2の実施例)
第2の実施形態の第2の実施例では、中心周波数30MHz程度の超音波プローブ1を作成する場合を想定して、樹脂に添加する金属粒子として、タングステン(W)を用いる場合について説明する。
【0147】
[金属粒子の選択について]
はじめに、中心周波数30MHz程度の超音波プローブ1を作成する場合において、樹脂に添加する金属粒子として、タングステン(W)を選択した理由について説明する。
【0148】
音響整合層に関わる因子として、音響インピーダンスの設計値を、ガラス整合層に近いZ=11.2[MRayl]、音響整合層20の膜厚の設計値を40μm、素子サイズ24の設計値を40μmとした。
【0149】
また、制約条件として、フィラーの反射散乱により発生する音響整合層組成物の減衰係数を、中心周波数20-30MHzの下で、0.6dB/MHz/mm未満とした。上記設計値と制約条件の下で、実現可能な金属粒子の組成について検討した。
【0150】
ここで、音響インピーダンスZと添加するフィラーである金属粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9を基に、それらの関係式の中間値となるZ/√ρ=2.55にて組成計算を行った。音響インピーダンスの設計値であるZ=11.2[MRayl]を代入すると、ρ=[19.291g・cm^3]となる。第2の実施形態の第2の実施例では、この値に近い密度となるような小粒径フィラーとして、一般的に用いられる材料群であることなど種々の条件を考慮し、タングステン(W:ρ=[19.3g・cm^3])を選択した。
【0151】
[金属粒子の粒径について]
次に、添加するフィラーである金属粒子の粒径について検討すると、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズに対して10%以上の大きさの欠陥が存在すると各アレイ素子の音響特性バラツキに直接影響することから、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズの10%を超えないことが望ましい。このことから、整合層膜厚の設計値が40μm、素子サイズの設計値が40μmである事を考慮すると、添加するフィラーである金属粒子の粒径は、4μm以下が望ましい。
【0152】
以上の検討により、第2の実施形態の第2の実施例では、平均粒径2.2μmのW(ρ=[19.3g・cm^3]の市販材料を、第2の実施形態の第2の実施例において添加される金属粒子として選択した。
【0153】
[樹脂について]
次に、金属粒子と混合する樹脂について説明する。金属粒子と混合する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が考えられる。第2の実施形態の第2の実施例では、金属粒子と混合するエポキシ樹脂として、脂肪族環状(脂環式)エポキシ樹脂、例えば株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を選択した。本材料は低粘度(250mPas@24℃)の液状エポキシ樹脂であり、塗工目的の音響整合層組成物に適している。
【0154】
[樹脂と金属粒子の混合比について]
続いて、樹脂と金属粒子の混合量について説明する。樹脂と金属粒子の混合比を適宜調整することで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。音響インピーダンスZと添加するフィラーである金属粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9に、タングステンの密度ρ=[19.3・cm^3]を代入すると、10.1<Z<12.7[MRayl]が得られる。従って、樹脂と金属粒子の混合量を変化させることで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。実施例では、エポキシ+硬化剤+フィラーにおいてフィラーである金属粒子の添加を体積割合33.2vol%としたところ、得られた樹脂生成物の音響インピーダンスZは、Z=11.2 [MRayl]であった。
【0155】
[硬化剤について]
次に、硬化剤について説明する。硬化剤としては、ボレート系のカチオン重合剤を使用することが考えられる。実施例では、サンエイド(登録商標)社製のSI-B3A(登録商標)を、0.15vol%添加した。なお、固体での硬化剤の添加は樹脂中の均一分散が困難なためである。例えば硬化剤をアセトンで希釈し、硬化剤の添加量が0.15vol%になるよう添加し、真空脱泡でアセトンを除去した。
【0156】
[樹脂と金属粒子の混合工程について]
続いて、樹脂、フィラーである金属粒子及び硬化剤の混合工程について説明する。第2の実施形態の第1の実施例と共通するが、図9に、第2の実施形態の第2の実施例における混合フローの一例が示されている。樹脂、金属粒子及び硬化剤の混合としては、例えば真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混合を行う場合が考えられる。
【0157】
具体的には、はじめに、エポキシ樹脂として、株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を18g秤量した(第1工程)。続いて、タングステンフィラーを145g秤量した(第2工程)。続いて、第2工程で秤量された金属粒子であるタングステンフィラーと、第1工程で秤量されたセロキサイド2021P(登録商標)を2000rpmで2分間、均一分散した(第3工程)。続いて、均一分散を確認したのち、0.2Paの真空化で再度1000rpm、6分攪拌し混入した微細気泡を脱した(第4工程)。続いて、高回転処理により昇温したタングステンフィラーとセロキサイド2021Pの混合液を25℃(室温)まで冷却した(第5工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を25℃(室温)まで冷却した(第6工程)。
【0158】
続いて、0.15vol%の開始剤:SI-B3Aをアセトン溶液で溶解し、第6工程で得られた組成物に添加した(第7工程)。なお、状況に応じて、StabilierやRetarderを調整してもよい。続いて、回転時の混合液の昇温を抑えるため低回転(500rpm)で1分間、真空中攪拌し残留溶媒や微細気泡を脱泡した(第8工程)。続いて、200rpmで15分間真空中核攪拌した(第9工程)。続いて、目視にて混合液表面からの脱泡が無きことを確認した(第10工程)のち、混合組成物をディスペンス用のシリンジに詰め替えた(第11工程)。続いて、高回転処理により昇温したタングステンフィラーとセロキサイド2021P(登録商標)の混合液を25℃まで冷却した(第12工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を冷却治具にて25℃(室温)まで冷却した(第13工程)。続いて、シリンジ内に残留した気泡を200rpm、4分で真空中核攪拌した(第14工程)。
【0159】
以上の工程により、開始材であるSI-B3A添加後のタングステンフィラーとセロキサイド2021P(登録商標)を35℃以下で混合する事が可能になる。低温下での混合を可能とすることにより、重合反応の開始を抑制し音響整合層組成物の粘度変化(ポットライフ)を抑制する事が可能となった。
【0160】
スリットコートやアプリケータコートプロセスにおいて、組成物の粘度変化は、塗工膜厚に直接影響するため、膜厚制御性の観点から望ましくない。塗工により設計整合層膜厚40μmの整合層を形成したところ、現行の混合プロセスの粘度上昇率は開始剤添加後1時間で10%未満となり、塗工膜厚変動量は+0.2μm未満で制御可能であることを確認した。
【0161】
また先述のように、音響整合層組成物は設計インピーダンスに合わせて、上述した設計音響インピーダンスとフィラー密度の関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9の範囲で調整が可能である。つまりρ=[19.3g・cm^3]のタングステンフィラーが選択された際の音響インピーダンスZは10.1<Z<12.7[MRayl]の範囲の音響整合層組成物が形成可能となる。タングステンフィラーを用いた音響整合層組成物の設計音響インピーダンスを変更した実験結果を、図11に示す。
【0162】
設計インピーダンスに対する組成と評価結果一覧をしめす。図8に示す低粘度領域1042の組成領域(Z=9.0[MRayl])ではフィラーの沈降が発生し最表層にフィラーが均一分散せずに、エポキシのみの薄膜層が形成されてしまい、音響整合層組成物としての運用は不可能である事がわかった。一方、図8に示す高粘度領域1043の組成領域(Z=13.4[MRayl])では、粘度が高く設計膜厚t=40μmの精密塗工(塗工誤差<+/-1μm)は、前記スリットコートやアプリケータコート手法では不可能であった。尚、音響インピーダンス計測用サンプルは厚さ1mm、2mm、3mmの基板を用いる為、ある程度高粘度材料でも形成、計測は可能である。
【0163】
(第2の実施形態の第3の実施例)
第2の実施形態の第1の実施例と、第2の実施形態の第2の実施例では、単層整合層を製造する場合について説明したが、実施形態は、これに限られず、複数の層からなる音響整合層を製造する場合であってもよい。第2の実施形態の第3の実施例では、音響整合層が複数の層からなる場合、例えば2層整合層である場合について説明する。音響整合層が複数の層からなる場合、例えば1層目の塗工を終了した後、アプリケータのギャップを変更する事により、1層目の塗工整合層上へ2層目の整合層を塗工し、続いて2層目の塗工整合層上へ3層目の整合層を塗工するなどの処理を行うことにより、複数音響インピーダンスを有する音響整合層組成物を、接着剤を用いずに積層塗工することが可能となる。
【0164】
図12に、音響整合層が2層整合層である場合における、超音波振動子ユニットの一部の構成が示されている。
【0165】
第2の実施形態の第3の実施例では、音響整合層1020は、第1の音響整合層1020a及び第2の音響整合層1020bとからなる。すなわち、超音波振動子ユニット1070は、フレキシブル配線板1022と、圧電素子1021と、第1の音響整合層1020aと、第2の音響整合層1020bとからなる。超音波振動子ユニット1070のうち各超音波振動子1071の素子サイズ1027は、例えば40μmである。圧電素子1021の厚さは、例えば、40μmである。第1の音響整合層1020aの厚さは、例えば40μmである。また、第2の音響整合層1020bの厚さは、例えば30μmである。
【0166】
ここで、第1の音響整合層1020aは、樹脂に金属粒子、例えばタングステンが添加されることにより作成された音響整合層である。また、第2の音響整合層1020bは、樹脂にセラミック粒子、例えば酸化アルミニウムが添加されることにより作成された音響整合層である。
【0167】
なお、実施形態はこれに限られず、例えば第1の音響整合層1020aと第2の音響整合層1020bの順番は逆でもよく、また第1の音響整合層1020a及び第2の近経整合層1020bの材質は上述のもの以外であってもよい。
【0168】
[第1の音響整合層1020aにおける金属粒子の選択について]
第1の音響整合層1020aについては、以下の検討を基に、樹脂に添加する金属粒子として、タングステン(W)を用いた。
【0169】
音響整合層に関わる因子として、音響インピーダンスの設計値をZ=11.2 [MRayl]、第1の音響整合層1020aの膜厚の設計値を40μm、素子サイズ24の設計値を40μmとした。
【0170】
また、制約条件として、フィラーの反射散乱により発生する音響整合層組成物の減衰係数を、中心周波数20-30MHzの下で、0.6dB/MHz/mm未満とした。上記設計値と制約条件の下で、実現可能な金属粒子の組成について検討した。
【0171】
ここで、音響インピーダンスZと添加するフィラーである金属粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9を基に、それらの関係式の中間値となるZ/√ρ=2.55にて組成計算を行った。音響インピーダンスの設計値であるZ=11.2[MRayl]を代入すると、ρ=[19.291g・cm^3]となる。この値に近い密度となるような小粒径フィラーとして、一般的に用いられる材料群であることなど種々の条件を考慮し、タングステン(W:ρ=[19.3g・cm^3])を選択した。
【0172】
[第1の音響整合層1020a:金属粒子の粒径について]
次に、添加するフィラーである金属粒子の粒径について検討すると、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズに対して10%以上の大きさの欠陥が存在すると各アレイ素子の音響特性バラツキに直接影響することから、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズの10%を超えないことが望ましい。このことから、整合層膜厚の設計値が40μm、素子サイズの設計値が40μmである事を考慮すると、添加するフィラーである金属粒子の粒径は、4μm以下が望ましい。
【0173】
以上の検討により、第2の実施形態の第3の実施例では、平均粒径2.2μmのW(ρ=[19.3g・cm^3]の市販材料を、第2の実施形態の第3の実施例において添加される金属粒子として選択した。
【0174】
[第1の音響整合層1020a:樹脂について]
次に、金属粒子と混合する樹脂について説明する。金属粒子と混合する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が考えられる。具体的には、金属粒子と混合するエポキシ樹脂として、脂肪族環状(脂環式)エポキシ樹脂、例えば株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を選択した。本材料は低粘度(250mPas@24℃)の液状エポキシ樹脂であり、塗工目的の音響整合層組成物に適している。
【0175】
[第1の音響整合層1020a:樹脂と金属粒子の混合比について]
続いて、樹脂と金属粒子の混合量について説明する。樹脂と金属粒子の混合比を適宜調整することで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。音響インピーダンスZと添加するフィラーである金属粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦2.9に、タングステンの密度ρ=[19.3・cm^3]を代入すると、10.1<Z<12.7[MRayl]が得られる。従って、樹脂と金属粒子の混合量を変化させることで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。実施例では、エポキシ+硬化剤+フィラーにおいてフィラーである金属粒子の添加を体積割合33.2vol%としたところ、得られた樹脂組成物の音響インピーダンスZは、Z=11.2 [MRayl]であった。
【0176】
[第1の音響整合層1020a:硬化剤について]
次に、硬化剤について説明する。硬化剤としては、ボレート系のカチオン重合剤を使用することが考えられる。実施例では、サンエイド(登録商標)社製のSI-B3A(登録商標)を、0.15vol%添加した。なお、固体での硬化剤の添加は樹脂中の均一分散が困難なため。例えば硬化剤をアセトンで希釈し、硬化剤の添加量が0.15vol%になるよう添加し、真空脱泡でアセトンを除去した。
【0177】
[第1の音響整合層1020a:樹脂と金属粒子の混合工程について]
続いて、樹脂、フィラーである金属粒子及び硬化剤の混合工程について説明する。先に述べたように、図9に、かかる混合フローの一例が示されている。樹脂、金属粒子及び硬化剤の混合としては、例えば真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混合を行う場合が考えられる。
【0178】
具体的には、はじめに、エポキシ樹脂として、株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を18g秤量した(第1工程)。続いて、タングステンフィラーを145g秤量した(第2工程)。続いて、第2工程で秤量された金属粒子であるタングステンフィラーと、第1工程で秤量されたセロキサイド2021P(登録商標)を2000rpmで2分間、均一分散した(第3工程)。続いて、均一分散を確認したのち、0.2Paの真空化で再度1000rpm、6分攪拌し混入した微細気泡を脱した(第4工程)。続いて、高回転処理により昇温したタングステンフィラーとセロキサイド2021Pの混合液を25℃(室温)まで冷却した(第5工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を25℃(室温)まで冷却した(第6工程)。
【0179】
続いて、0.15vol%の開始剤:SI-B3Aをアセトン溶液で溶解し、第6工程で得られた組成物に添加した(第7工程)。なお、状況に応じて、StabilierやRetarderを調整してもよい。続いて、回転時の混合液の昇温を抑えるため低回転(500rpm)で1分間、真空中攪拌し残留溶媒や微細気泡を脱泡した(第8工程)。続いて、200rpmで15分間真空中核攪拌した(第9工程)。続いて、目視にて混合液表面からの脱泡が無きことを確認した(第10工程)のち、混合組成物をディスペンス用のシリンジに詰め替えた(第11工程)。続いて、高回転処理により昇温したタングステンフィラーとセロキサイド2021P(登録商標)の混合液を25℃まで冷却した(第12工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を冷却治具にて25℃(室温)まで冷却した(第13工程)。続いて、シリンジ内に残留した気泡を200rpm、4分で真空中核攪拌した(第14工程)。
【0180】
以上の工程により、開始材であるSI-B3A添加後のタングステンフィラーとセロキサイド2021P(登録商標)を35℃以下で混合する事が可能になる。低温下での混合を可能とすることにより、重合反応の開始を抑制し音響整合層組成物の粘度変化(ポットライフ)を抑制する事が可能となった。
【0181】
スリットコートやアプリケータコートプロセスにおいて、組成物の粘度変化は、塗工膜厚に直接影響するため、膜厚制御性の観点から望ましくない。塗工により設計整合層膜厚40μmの整合層を形成したところ、現行の混合プロセスの粘度上昇率は開始剤添加後1時間で10%未満となり、塗工膜厚変動量は+0.2μm未満で制御可能であることを確認した。
【0182】
[第2の音響整合層1020b:セラミックス粒子の選択について]
第2の音響整合層1020bにおいては、樹脂に添加する物質として、セラミックス粒子を用い、具体的には、酸化アルミニウム(Al2O3)を選択した。
【0183】
音響整合層に関わる因子として、音響インピーダンスの設計値をZ=5.6 [MRayl]、音響整合層1020bの膜厚の設計値を30μm、素子サイズ1024の設計値を40μmとした。
【0184】
また、制約条件として、フィラーの反射散乱により発生する音響整合層組成物の減衰係数を、中心周波数20-30MHzの下で、0.6 dB/MHz/mm未満とした。上記設計値と制約条件の下で、実現可能なセラミックス粒子の組成について検討した。
【0185】
ここで、音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4を基に、それらの関係式の中間値となるZ/√ρ=2.85にて組成計算を行った。音響インピーダンスの設計値であるZ=5.6[MRayl]を代入すると、ρ=[3.99g・cm^3]となる。第1の実施形態では、この値に近い密度となるような小粒系フィラーとして、一般的に用いられるセラミックス材料群であることなど種々の条件を考慮し、酸化アルミニウム(Al2O3:ρ=[3.8g・cm^3])を選択した。
【0186】
[第2の音響整合層1020b:セラミックス粒子の粒径について]
次に、添加するフィラーであるセラミックス粒子の粒径について検討すると、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズに対して5%以上の大きさの欠陥が存在すると各アレイ素子の音響特性バラツキに直接影響することから、粒子の粒径の上限値は、整合層膜厚や素子サイズの5%を超えないことが望ましい。このことから、整合層膜厚の設計値が30μm、素子サイズの設計値が40μmである事を考慮すると、添加するフィラーであるセラミックス粒子の粒径は、1.5μm以下が望ましい。
【0187】
以上の検討により、平均粒径0.7μmのAl2O3(ρ=[3.8g・cm^3]の市販材料を、第2の音響整合層1020bにおいて添加されるセラミックス粒子として選択した。なお、音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4に、フィラーの密度ρ=[3.8g・cm^3]を代入すると、4.48<Z<6.63[MRayl]となる。従って、音響インピーダンスZは、この範囲で変更可能となる。
【0188】
[第2の音響整合層1020b:樹脂について]
次に、セラミックス粒子と混合する樹脂について説明する。セラミックス粒子と混合する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が考えられる。セラミックス粒子と混合するエポキシ樹脂として、例えば株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を選択した。本材料は低粘度(250mPas@24℃)の液状エポキシ樹脂であり、塗工目的の音響整合層組成物に適している。
【0189】
[第2の音響整合層1020b:樹脂とセラミックス粒子の混合比について]
続いて、樹脂とセラミックス粒子の混合量について説明する。樹脂とセラミックス粒子の混合比を適宜調整することで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。音響インピーダンスZと添加するフィラーであるセラミックス粒子の密度ρの関係式2.3≦Z/√ρ≦3.4に、Al2O3の密度ρ=[3.8g・cm^3]を代入すると、4.48<Z<6.63[MRayl]が得られる。従って、樹脂とセラミックス粒子の混合量を変化させることで、音響インピーダンスZの値を調整することができる。実施例では、エポキシ+硬化剤+フィラーにおいてフィラーであるセラミックス粒子の添加を体積割合30vol%としたところ、得られた樹脂組成物の音響インピーダンスZは、Z=5.6 [MRayl]であった。
【0190】
[第2の音響整合層1020b:硬化剤について]
次に、硬化剤について説明する。硬化剤としては、ボレート系のカチオン重合剤を使用することが考えられる。実施例では、サンエイド(登録商標)社製のSI-B3A(登録商標)を、0.15vol%添加した。なお、固体での硬化剤の添加は樹脂中の均一分散が困難なため、例えば硬化剤をアセトンで希釈し、硬化剤の添加量が0.15vol%になるよう添加し、真空脱泡でアセトンを除去することが考えられる。
【0191】
[第2の音響整合層1020b:樹脂とセラミックス粒子の混合工程について]
続いて、樹脂、フィラーであるセラミックス粒子及び硬化剤の混合工程について説明する。すでに述べたように、図9に、かかる混合フローの一例が示されている。樹脂、セラミックス粒子及び硬化剤の混合としては、例えば真空脱泡機構付きの自転公転撹拌機を用いて混合を行う場合が考えられる。
【0192】
具体的には、はじめに、エポキシ樹脂として、株式会社ダイセル(登録商標)社のセロキサイド2021P(登録商標)を18.6g秤量した(第1工程)。続いて、Al2O3フィラーを25.5g秤量した(第2工程)。続いて、第2工程で秤量されたセラミックス粒子であるAl2O3フィラーと、第1工程で秤量されたセロキサイド2021P(登録商標)を2000rpmで2分間、均一分散した(第3工程)。続いて、均一分散を確認したのち、0.2Paの真空化で再度2000rpm、6分攪拌し混入した微細気泡を脱した(第4工程)。続いて、高回転処理により昇温したAl2O3フィラーとセロキサイド2021Pの混合液を25℃(室温)まで冷却した(第5工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を冷却治具にて25℃(室温)まで冷却した(第6工程)。
【0193】
続いて、0.15vol%の硬化剤:SI-B3Aをアセトンで溶解し、第6工程で得られた組成物に添加した(第7工程)。続いて、回転時の混合液の昇温を抑えるため低回転(500rpm)で1分間、真空中攪拌し残留溶媒や微細気泡を脱泡した(第8工程)。続いて、200rpmで15分間真空中核攪拌した(第9工程)。続いて、目視にて混合液表面からの脱泡が無きことを確認した(第10工程)のち、混合組成物をディスペンス用のシリンジに詰め替えた(第11工程)。続いて、高回転処理により昇温したAl2O3フィラーとセロキサイド2021P(登録商標)の混合液を25℃まで冷却した(第12工程)。続いて、高回転処理により昇温した自転公転撹拌機を冷却治具にて25℃(室温)まで冷却した(第13工程)。続いて、シリンジ内に残留した気泡を200rpm、4分で真空中核攪拌した(第14工程)。
【0194】
以上の工程により、硬化剤添加後のAl2O3フィラーとセロキサイド2021P(登録商標)を35℃以下で混合する事が可能になる。上記混合条件においてZ=5.6[MRayl]の音響整合層組成物のポットライフ(硬化剤添加2時間後の粘度変化率)を5%未満に制御する事が可能となった。
【0195】
スリットコートやアプリケータコートプロセスにおいて、組成物の粘度変化は、塗工膜厚に直接影響するため、膜厚制御性の観点から望ましくない。塗工により設計整合層膜厚30μmの整合層を形成したところ、現行プロセスの粘度上昇率5%未満では、塗工膜厚変動量は+0.1μm未満で制御可能であることを確認することができた。
【0196】
[2層整合層の製造]
以上のように、第1の整合層1020a及び第2の整合層1020bそれぞれの製造方法について説明した。続いて、整合層組成物全体の製造方法等について述べる。
【0197】
整合層組成物の製造方法の一例として、アプリケータを用いた整合層組成物の作成が考えられる。一例として、第一整合層1020a及び第二整合層組成物1020bを、アプリケータを用いて平滑基板上に塗布し2層整合層のシートを作製する方法が考えられる。なお、各々組成物は粘度やチクソ性が異なるため、塗工膜厚は塗工速度とアプリケータのギャップで変動する。整合層組成物の塗工条件を検討した結果、平滑基板上に第一整合層組成物をギャップ70μm、塗工速度10mm/secで塗工し、第一整合層上に第二整合層組成物をギャップ110μm、塗工速度5mm/secで連続塗工し、130℃で加熱硬化、平滑基板から剥離する事により、図12に示される、第一整合層/第二整合層=40μm/30μmの2層整合層のシートを獲得する事が可能となった。獲得した2層整合層のシートを圧電素子に接着したのちにブレードダイサーを用いて素子サイズ40μmにアレイ化する事により、図12に示す2層整合を含む超音波アレイ素子を得る事が可能となる。
【0198】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する
【0199】
(付記1)
本発明の一つの側面において提供される樹脂組成物は、
圧電体と電極とを備えたアレイ振動子を有する超音波振動子ユニットにおける超音波振動子の音響整合層の前駆体である樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、樹脂とセラミックス粒子とを含み、
前記音響整合層の音響インピーダンスをZ、前記セラミックス粒子の密度をρとすると、2.3≦Z/√ρ≦3.4を満たす。
【0200】
(付記2)
前記Zは3.0以上15MRayl以下の範囲であってもよい。
【0201】
(付記3)
前記セラミックス粒子の平均粒子径の粒径分布は単峰性分布であってもよい。
【0202】
(付記4)
前記樹脂組成物における前記セラミックス粒子の含有量が20体積%以上かつ40体積%以下であってもよい。
【0203】
(付記5)
前記セラミックス粒子の平均粒子径は、0.3μm以上2μm以下であってもよい。
【0204】
(付記6)
前記セラミックス粒子が、Mg、Ca、Ba、B、Al、Y、Hf、Ce、Ti、W、Siの少なくとも1種と、O、C、N及びSの少なくとも1種とで構成される物質を含んでもよい。
【0205】
(付記7)
前記セラミックス粒子は、2.0μm以下または0.005μm以上の粒径の粒子を5体積%以下含んでもよい。
【0206】
(付記8)
前記樹脂はエポキシ樹脂であってもよい。
【0207】
(付記9)
熱硬化樹脂が前記エポキシ樹脂の硬化剤として用いられてもよい。
【0208】
(付記10)
前記セラミックス粒子は、酸化アルミニウムであってもよい。
【0209】
(付記11)
前記セラミックス粒子は、炭化タングステンであってもよい。
【0210】
(付記12)
本発明の一つの側面において提供される樹脂組成物は、
圧電体と電極とを備えたアレイ振動子を有する超音波振動子ユニットにおける超音波振動子の音響整合層の前駆体である樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、樹脂と金属粒子とを含み、
前記音響整合層の音響インピーダンスをZ、前記金属粒子の密度をρとすると、
2.3≦Z/√ρ≦2.9を満たす。
【0211】
(付記13)
前記Zは3.0以上15MRayl以下の範囲であってもよい。
【0212】
(付記14)
前記金属粒子の平均粒子径の粒径分布は単峰性分布であってもよい。
【0213】
(付記15)
前記樹脂組成物における前記金属粒子の含有量が20体積%以上かつ40体積%以下であってもよい。
【0214】
(付記16)
前記金属粒子の平均粒子径は、1.0μm以上4μm以下であってもよい。
【0215】
(付記17)
前記金属粒子は、Au、Ag、Pt、Cu、Cr、Zr、Zn、Ta、Ti、Mg、Ni、Ca、Ba、Al、Y、Hf、Ce、Ti、Mo、W、Si、Pd、Ir、Sn、Fe、Pb、Pd、Ndの少なくとも1種とで構成される物質を含んでもよい。
【0216】
(付記18)
前記金属粒子は、2.0μm以下または0.005μm以上の粒径の粒子を5体積%以下含んでもよい。
【0217】
(付記19)
前記樹脂はエポキシ樹脂であってもよい。
【0218】
(付記20)
熱硬化樹脂が前記エポキシ樹脂の硬化剤として用いられてもよい。
【0219】
(付記21)
前記金属粒子は、銅またはタングステンであってもよい。
【0220】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、低減衰かつ塗布が可能な樹脂組成物を生成することができる。
【0221】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0222】
20 音響整合層
21 圧電素子
22 フレキシブル配線板
23 超音波振動子
1020 音響整合層
1020a 第1の音響整合層
1020b 第2の音響整合層
1021 圧電素子
1022 フレキシブル配線板
1070 超音波振動子ユニット
1071 超音波振動子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12