(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009797
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】バイオフィルム殺菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/48 20060101AFI20250109BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20250109BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20250109BHJP
C11D 1/65 20060101ALI20250109BHJP
C11D 3/28 20060101ALI20250109BHJP
C11D 1/12 20060101ALI20250109BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20250109BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20250109BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20250109BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C11D3/48
C11D1/62
C11D1/29
C11D1/65
C11D3/28
C11D1/12
A01N33/12 101
A01P3/00
A01N25/30
A01N25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049138
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023108095
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 詩歩
(72)【発明者】
【氏名】雉鳥 弘樹
【テーマコード(参考)】
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4H003AB17
4H003AB27
4H003AB31
4H003AE05
4H003BA12
4H003DA01
4H003DC02
4H003EB20
4H003ED02
4H003FA34
4H011AA02
4H011BA05
4H011BB04
4H011BC07
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルム内に存在する菌の殺菌性に優れる、バイオフィルム殺菌剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの殺菌方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、及び(b)成分を含有する、バイオフィルム殺菌剤組成物。
(a)成分:(a1)一般式(a1)で表される長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩、及び(a2)ビスピリジニウム化合物から選ばれる1種以上の化合物
(b)成分:(b1)一般式(b1)で表される特定のアニオン界面活性剤、及び(b2)炭素数14以上20以下の内部オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、及び(b)成分を含有する、バイオフィルム殺菌剤組成物。
(a)成分:(a1)下記一般式(a1)で表される化合物(以下、(a1)成分という)、及び(a2)ビスピリジニウム化合物(以下、(a2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物
【化1】
[一般式(a1)中、R
1a及びR
2aは、それぞれ独立に、炭素数8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R
3a及びR
4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、X
-は陰イオンである。]
(b)成分:(b1)下記一般式(b1)で表される化合物(以下、(b1)成分という)、及び(b2)炭素数14以上20以下の内部オレフィンスルホン酸塩(以下、(b2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤
R
1b-O-[(PO)
p/(EO)
q]-SO
3M (b1)
[一般式(b1)中、R
1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、“/”はPOとEOの結合順序を問わないことを示す記号であり、pはPOの平均付加モル数であり、0以上10以下の数であり、qはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【請求項2】
(b)成分が、一般式(b1)中のpが0.1以上10以下であり、qが0以上25以下の(b1)成分、及び炭素数16以上18以下の内部オレフィンスルホン酸塩の(b2)成分から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤である、請求項1に記載のバイオフィルム殺菌剤組成物。
【請求項3】
(b)成分中の(b1)成分及び(b2)成分の含有量が、70質量%以上100質量%以下である、請求項1又は2に記載のバイオフィルム殺菌剤組成物。
【請求項4】
(a2)成分が、オクテニジン二塩酸塩である、請求項1又は2に記載のバイオフィルム殺菌剤組成物。
【請求項5】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、0.005以上30以下である、請求項1又は2に記載のバイオフィルム殺菌剤組成物。
【請求項6】
更に水を含有し、(a)成分の含有量が0.001質量%以上15質量%以下であり、(b)成分の含有量が0.001質量%以上80質量%以下である、請求項1又は2に記載のバイオフィルム殺菌剤組成物。
【請求項7】
繊維製品用である、請求項1又は2に記載のバイオフィルム殺菌剤組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のバイオフィルム殺菌剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの殺菌方法。
【請求項9】
前記バイオフィルム殺菌剤組成物、又は前記処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させた後、10秒以上1時間以下放置する、請求項8に記載のバイオフィルムの殺菌方法。
【請求項10】
前記対象物品に接触した、前記バイオフィルム殺菌剤組成物、又は前記処理液を流動させる、請求項8に記載のバイオフィルムの殺菌方法。
【請求項11】
前記対象物品が繊維製品である、請求項8に記載のバイオフィルムの殺菌方法。
【請求項12】
下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの殺菌方法。
(a)成分:(a1)下記一般式(a1)で表される化合物(以下、(a1)成分という)、及び(a2)ビスピリジニウム化合物(以下、(a2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物
【化2】
[一般式(a1)中、R
1a及びR
2aは、それぞれ独立に、炭素数8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R
3a及びR
4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、X
-は陰イオンである。]
(b)成分:(b1)下記一般式(b1)で表される化合物(以下、(b1)成分という)、及び(b2)炭素数14以上20以下の内部オレフィンスルホン酸塩(以下、(b2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤
R
1b-O-[(PO)
p/(EO)
q]-SO
3M (b1)
[一般式(b1)中、R
1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、“/”はPOとEOの結合順序を問わないことを示す記号であり、pはPOの平均付加モル数であり、0以上10以下の数であり、qはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【請求項13】
前記処理液中の、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、0.005以上30以下である、請求項12に記載のバイオフィルムの殺菌方法。
【請求項14】
前記処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させた後、10秒以上1時間以下放置する、請求項12又は13に記載のバイオフィルムの殺菌方法。
【請求項15】
繊維製品又は硬質物品に付着したバイオフィルム殺菌のための、下記(a)成分、及び(b)成分を含有する組成物の使用。
(a)成分:(a1)下記一般式(a1)で表される化合物(以下、(a1)成分という)、及び(a2)ビスピリジニウム化合物(以下、(a2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物
【化3】
[一般式(a1)中、R
1a及びR
2aは、それぞれ独立に、炭素数8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R
3a及びR
4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、X
-は陰イオンである。]
(b)成分:(b1)下記一般式(b1)で表される化合物(以下、(b1)成分という)、及び(b2)炭素数14以上20以下の内部オレフィンスルホン酸塩(以下、(b2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤
R
1b-O-[(PO)
p/(EO)
q]-SO
3M (b1)
[一般式(b1)中、R
1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、“/”はPOとEOの結合順序を問わないことを示す記号であり、pはPOの平均付加モル数であり、0以上10以下の数であり、qはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム殺菌剤組成物、及びバイオフィルムの殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物品へ菌が一度付着すると、対象物品に付着した菌が増殖し、バイオフィルムを形成する。バイオフィルムは生物膜又はスライムとも言われ、一般に菌などの微生物が物質の表面に付着して増殖する際に、微生物が産生する多糖、タンパク質及び核酸などの高分子物質により微生物を包み込むように形成された3次元構造体を指す。
バイオフィルムは、個々の一般生活者にとっても様々な場面で問題となっている。例えば、台所、洗面台やお風呂場の排水口近辺など家庭内の水回り環境では、不快なぬめり汚れ、悪臭などの原因となっている。またこうした直接的な水環境部位だけでなく俎板の傷部や食器洗浄用スポンジの内部や洗濯槽、更には衣服、台拭き、雑巾、足拭きマット等のファブリック製品など、水や湿気と汚れが共存する場面においてはバイオフィルムが形成され、問題を生じ易い。
また、衣料等の繊維製品の洗浄には、各種界面活性剤を配合した洗浄剤が広く用いられている。近年、生活者の衛生意識の高まりに伴い、繊維製品の表面に付着した菌やウイルスに関心も高まってきている。そのため生活者は、菌が繁殖し易い靴下や汗のかいた衣類を洗浄液にしばらく浸け置いたり、消毒剤や漂白剤を繊維製品用洗浄剤と併用したりするなど、余分な手間やコストをかけて洗浄を行っている。
【0003】
特許文献1には、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、及びアルキルエーテルカルボン酸塩を含有する、ゲルまたは液体のいずれかの殺菌性軽量食器用洗剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルムは、バイオフィルムを構成する高分子が各種基剤から菌を守る保護バリアとして機能する為、その除去は非常に困難であり、またバイオフィルム内に存在する菌を殺菌することも非常に困難である。
本発明は、対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルム内に存在する菌の殺菌性に優れる、バイオフィルム殺菌剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの殺菌方法を提供する。
【0006】
本発明において、バイオフィルム殺菌剤組成物とは、バイオフィルム内に存在する菌の殺菌性に効果を有する組成物をいう。
また本発明において、バイオフィルムの殺菌方法とは、バイオフィルム内に存在する菌を殺菌する方法をいう。
また本発明において、バイオフィルム殺菌とは、バイオフィルム内に存在する菌を殺菌することをいう。
また本発明において、バイオフィルム殺菌の観点とは、バイオフィルムに存在する菌を殺菌する効果をより高める観点であることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、及び(b)成分を含有する、バイオフィルム殺菌剤組成物に関する。(a)成分:(a1)下記一般式(a1)で表される化合物(以下、(a1)成分という)、及び(a2)ビスピリジニウム化合物(以下、(a2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物
【0008】
【0009】
[一般式(a1)中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、炭素数8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、X-は陰イオンである。]
(b)成分:(b1)下記一般式(b1)で表される化合物(以下、(b1)成分という)、及び(b2)炭素数14以上20以下の内部オレフィンスルホン酸塩(以下、(b2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤
R1b-O-[(PO)p/(EO)q]-SO3M (b1)
[一般式(b1)中、R1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、“/”はPOとEOの結合順序を問わないことを示す記号であり、pはPOの平均付加モル数であり、0以上10以下の数であり、qはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【0010】
また本発明は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの殺菌方法に関する。
【0011】
また本発明は、前記(a)成分、及び(b)成分を含有する処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの殺菌方法に関する。
【0012】
また本発明は、繊維製品又は硬質物品に付着したバイオフィルム殺菌のための、前記(a)成分、及び(b)成分を含有する組成物の使用に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルム内に存在する菌の殺菌性に優れる、バイオフィルム殺菌剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの殺菌方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの殺菌方法が、対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルム内に存在する菌の殺菌性に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
本発明では、(a)成分である特定のカチオン界面活性剤と(b)成分である特定のアニオン界面活性剤を併用することで、バイオフィルム内部に基剤が浸透し、作用することでバイオフィルム殺菌を可能にしていると考えている。具体的には、(a)成分である特定のカチオン界面活性剤と(b)成分である特定のアニオン界面活性剤が緩いイオンコンプレックスを形成することで、殺菌性を有する(a)成分がバイオフィルム表面への非特異吸着するのを防ぎ、(a)成分と(b)成分のイオンコンプレックスがバイオフィルム内部への浸透を可能としている。加えて、浸透したイオンコンプレックスは、適度なカチオン性を有しているため菌に作用し、殺菌を可能にしていると考えられる。
なお本発明は上記の作用機構に限定されるものではない。
【0015】
[バイオフィルム殺菌剤組成物]
<(a)成分>
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、(a)成分として、(a1)下記一般式(a1)で表される化合物(以下、(a1)成分という)、及び(a2)ビスピリジニウム化合物(以下、(a2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物を含有する。
【0016】
【0017】
[一般式(a1)中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、炭素数8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、X-は陰イオンである。]
【0018】
(a1)成分である一般式(a1)の化合物において、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、炭素数8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは炭素数8の直鎖のアルキル基である。バイオフィルム殺菌の観点から、R1a及びR2aは互いに同一であることが好ましい。
R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基から選ばれる基が挙げられる。
X-は陰イオンである。陰イオンとしては、バイオフィルム殺菌の観点から、ハロゲンイオン又は炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオンが好ましい。ハロゲンイオンとしては、例えばクロ-ルイオン、ブロモイオン、又はヨウ素イオンが挙げられる。X-はバイオフィルム殺菌の観点から、クロ-ルイオンが好ましい。また、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオンとしては、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、又はプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0019】
(a1)成分は1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0020】
(a2)成分は、ビスピリジニウム化合物である。
ビスピリジニウム化合物としては、例えば、英国特許第1533952号明細書、特開昭52-105228号公報、国際公開第2014/100807号に記載されているものなどが挙げられる。ビスピリジニウム化合物としては、具体的には、バイオフィルム殺菌の観点から、下記一般式(a21)で表される化合物、及び下記一般式(a22)で表される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0021】
【0022】
〔式中、Yは、4~18個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルケニレン基であり、R5aは、それぞれ、6~18個の炭素原子を有するアルキル基または5~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、またはハロゲン置換の有無にかかわらずフェニル基を表し、Aは、陰イオンである。qは1又は2、rは1又は2であり、q×r=2である。〕
【0023】
Aは、一価又は二価の陰イオンであり、例えば、塩化物、臭化物、リン酸塩、オルトケイ酸塩、有機酸、例えば式R6a-COO-を有する有機酸やアルキル(炭素数1以上40以下)スルホン酸、などの化合物からの陰イオンであり得る。ここで、R6aは、水素、ヒドロキシル、または炭素数1以上40以下のアルキル基である。
【0024】
Aの陰イオンに相当する有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、リン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、グリシルリジン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ホスホン酸、トリフルオロ酢酸、シアノ酢酸、4-シアノ安息香酸、2-クロロ安息香酸、2-ニトロ安息香酸、フェノキシ酢酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0025】
好ましいビスピリジニウム化合物は、バイオフィルム殺菌の観点から、一般式(a22)の化合物、更にオクテニジン二塩酸塩(一般式(a22)中、R5aがそれぞれn-オクチル基、Yがn-デセニル基、AがCl、qが1、rが2の化合物、CAS番号70775-75-6)である。
(a2)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0026】
(a)成分は、バイオフィルム殺菌の観点から、(a1)成分が好ましく、ジオクチルメチルエチルアンモニウム塩及びジオクチルジメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物がより好ましく、ジオクチルジメチルアンモニウム塩が更に好ましい。
【0027】
<(b)成分>
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、(b)成分として、(b1)下記一般式(b1)で表される化合物(以下、(b1)成分という)、及び(b2)炭素数14以上20以下の内部オレフィンスルホン酸塩(以下、(b2)成分という)から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤を含有する。
R1b-O-[(PO)p/(EO)q]-SO3M (b1)
[一般式(b1)中、R1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、“/”はPOとEOの結合順序を問わないことを示す記号であり、pはPOの平均付加モル数であり、0以上10以下の数であり、qはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【0028】
(b1)成分の一般式(b1)の化合物において、R1bは、バイオフィルム殺菌の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下の炭化水素基、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、更に好ましくは直鎖のアルキル基である。
pはPOの平均付加モル数であり、バイオフィルム殺菌の観点から、0以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは、0.2以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは2以上、そして、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2.5以下の数である。
qはEOの平均付加モル数であり、バイオフィルム殺菌の観点から、0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、より更に好ましくは2以上、そして、25以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下の数である。
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが挙げられ、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)としては、カルシウムイオン、又はマグネシウムイオンが挙げられ、有機アンモニウムイオンとしては、炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0029】
(b2)成分は内部オレフィンスルホン酸塩である。(b2)成分における、内部オレフィンスルホン酸塩の炭素数は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、そして、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。(b2)成分における、内部オレフィンスルホン酸塩の炭素数は、スルホン酸塩が共有結合した内部オレフィンの炭素数を表す。
【0030】
(b2)成分の内部オレフィンスルホン酸塩は、原料として、炭素数が好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である内部オレフィン(二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィン)をスルホン化、中和及び加水分解することにより得られるスルホン酸塩である。かかる内部オレフィンには、二重結合の位置が炭素鎖の1位に存在する、いわゆるアルファオレフィン(以下、α-オレフィンともいう。)を微量に含有するものも含まれる。また、内部オレフィンをスルホン化すると、定量的にβ-サルトンが生成し、β-サルトンの一部は、γ-サルトン、オレフィンスルホン酸へと変化し、更にこれらは中和・加水分解工程においてヒドロキシアルカンスルホン酸塩と、オレフィンスルホン酸塩へと転換する(例えば、J. Am.Oil Chem. Soc. 69, 39(1992))。ここで、得られるヒドロキシアルカンスルホン酸塩のヒドロキシ基は、アルカン鎖の内部にあり、オレフィンスルホン酸塩の二重結合はオレフィン鎖の内部にある。また、得られる生成物は、主にこれらの混合物であり、またその一部には、炭素鎖の末端にヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカンスルホン酸塩、又は炭素鎖の末端に二重結合を有するオレフィンスルホン酸塩が微量に含まれる場合もある。
本明細書では、これらの各生成物及びそれらの混合物を総称して内部オレフィンスルホン酸塩((b2)成分)という。また、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体(以下、HAS体ともいう。)、オレフィンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体(以下、IOS体ともいう。)という。
なお、(b2)成分中の化合物のHAS体とIOS体の質量比は、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(以下、HPLC-MSと省略)により測定できる。具体的には、(b2)成分のHPLC-MSピーク面積から質量比を求めることができる。
【0031】
内部オレフィンスルホン酸塩の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属(1/2原子)塩、アンモニウム塩又は有機アンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩としてはアルカノールアミンを含む炭素数2以上6以下のアルカノールアンモニウム塩が挙げられる。
【0032】
(b2)成分の内部オレフィンスルホン酸塩のスルホン酸基は、上記の製法から明らかなように、内部オレフィンスルホン酸塩の炭素鎖、すなわちオレフィン鎖又はアルカン鎖の内部に存在し、その一部に炭素鎖の末端にスルホン酸基が存在するものも微量に含まれる場合もある。
【0033】
(b2)成分中における、スルホン酸基が5位以上、好ましくは5位以上9位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
【0034】
(b2)成分中における、スルホン酸基が2位以上4位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩[以下(IO-1S)という場合がある]の含有量と、スルホン酸基が5位以上、好ましくは5位以上9位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩[以下(IO-2S)という場合がある]の含有量との質量比である、(IO-1S)/(IO-2S)は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは2以上、より更に好ましくは2.5以上、より更に好ましくは3以上、より更に好ましくは4以上、より更に好ましくは4.5以上、そして、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
尚、(b2)成分中における、スルホン酸基の位置の異なる各化合物の含有量は、HPLC-MSにより測定できる。本明細書におけるスルホン酸基の位置の異なる各化合物の含有量は、(b2)成分の全HAS体における、スルホン酸基が各位置にある化合物のHPLC-MSピーク面積に基づく質量比として求めるものとする。
【0035】
(b2)成分中における、スルホン酸基が1位に存在するオレフィンスルホン酸塩の含有量は、バイオフィルム殺菌の観点から、(b2)成分中に、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、そして、生産コストの低減、及び生産性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上である。
これらの化合物のスルホン酸基の位置は、オレフィン鎖又はアルカン鎖における位置である。
【0036】
前記の内部オレフィンスルホン酸塩は、ヒドロキシ体とオレフィン体の混合物であることが出来る。(b2)成分中の内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体の含有量と内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体の含有量との質量比(オレフィン体/ヒドロキシ体)は、0/100以上、更に5/95以上、そして、50/50以下、更に40/60以下、更に30/70以下、更に25/75以下であることが出来る。
【0037】
(b1)成分、及び(b2)成分以外のアニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、αオレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸、α-スルホ脂肪酸、N-アシルアミノ酸、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらアニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基は、例えば、炭素数8以上22以下である。
これらアニオン界面活性剤の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属(1/2原子)塩、アンモニウム塩又は有機アンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩としてはアルカノールアミンを含む炭素数2以上6以下のアルカノールアンモニウム塩が挙げられる。
【0038】
(b)成分は、バイオフィルム殺菌の観点から、一般式(b1)中のpが0.1以上10以下であり、qが0以上25以下の(b1)成分、及び炭素数16以上18以下の内部オレフィンスルホン酸塩の(b2)成分から選ばれる1種以上の化合物を含むアニオン界面活性剤が好ましい。
【0039】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物において、(b)成分中の(b1)成分及び(b2)成分の含有量は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは100質量%である。前記の(b)成分中の(b1)成分及び(b2)成分の含有量は、(b1)成分と(b2)成分がいずれも必須成分であることを限定するものではなく、少なくともいずれかの成分を含有すればよい。
(b)成分は、バイオフィルム殺菌の観点から、(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上が好ましく、一般式(b1)中のpが0.1以上の(b1)成分であることがより好ましい。
【0040】
(b)成分は1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0041】
<組成等>
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、(a)成分を、バイオフィルム殺菌の観点から、前記組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは6質量%以上、より更に好ましくは9質量%以上、より更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下含有する。
本発明において、(a)成分として(a1)成分を含む場合、(a1)成分の質量は、クロ-ル塩に換算した値を用いるものとし、(a)成分として(a2)成分を含む場合、(a2)成分の質量は、塩酸塩に換算した値を用いるものとする。
【0042】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、(b)成分を、バイオフィルム殺菌の観点から、前記組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは6質量%以上、より更に好ましくは9質量%以上、より更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下含有する。
本発明において、(b)成分の質量は、ナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0043】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.12以上、より更に好ましくは0.15以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1以下である。
【0044】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、その他の成分として、例えば、水溶性溶剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤、香料、ハイドロトロープ剤、ポリマー等の再汚染防止剤及び分散剤、酵素、抗菌剤、酸化防止剤、消泡剤等(但し、(a)成分、(b)成分に該当するものは除かれる。)を含有するとバイオフィルム殺菌を促進することができる。
【0045】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、水を含有する。水は、イオン交換水、水道水、精製水などを用いることができる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、水を、前記組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは質量95%以下含有する。
【0046】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物の25℃におけるpHは、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。該pHは、ガラス電極を用いて25℃で測定した値である。具体的には、以下の方法で測定されたものである。
<pHの測定方法>
Consort製multi-parameter analyser C3010にpH電極(SI Analytics製BlueLine 17 pH)をあらかじめReagecon pH4.000 High Resolution Colour Coded Buffer Solution、ReageconpH 7.000 High Resolution Colour Coded Buffer Solutionで校正し、イオン交換水で十分すすいでおく。温度を25℃に調整したバイオフィルム殺菌剤組成物に、上記の通り校正、洗浄したpH電極を入れ、pHメーターのAUTO HOLDモードを用いて、測定値が一定になるまで測定する。
【0047】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、(a)成分、及び(b)成分を配合してなるバイオフィルム殺菌剤組成物であってよく、更に水、やその他成分を配合してよい。このバイオフィルム殺菌剤組成物には、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物で記載した事項を適宜適用することができ、前記の各成分の含有量、及び各質量比を、各成分の配合量に置き換えて適用することができる。
【0048】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、繊維製品用、又は硬質物品用として好適に用いることができ、より好ましくは繊維製品用として用いることができる。
【0049】
繊維製品の繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
本発明において繊維製品とは、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、寝具、寝具用の繊維製品(シーツ、枕カバーなど)、ニット、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品を意味する。好ましい繊維製品は織物、編み物等の織布及び織った繊維製品であり、また、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましい繊維製品は疎水性繊維を含む繊維製品である。
【0050】
硬質物品としては、洗濯機、洗濯槽、洗濯機の投入口、洗濯機の糸くずフィルター、洗濯機の排水管、食器、台所周りの硬質物品、及び/又は、浴室、トイレ周り、フロアなどの住環境の硬質物品、排水溝、配水管、食品製造または飲料製造プラント、産業用の冷却タワー等の冷却水系、内視鏡、カテーテル、人口透析等の医療機器等の硬質物品が挙げられる。
硬質物品の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック(シリコーン樹脂などを含む)、金属、陶器、木、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、バイオフィルム内に存在する菌の殺菌性に優れることから、一般家庭のみならず医療や介護などに用いる繊維製品又は硬質物品の殺菌に利用できる。
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物が対象とする菌としては、例えばモラクセラ(Moraxella)属細菌、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、シェードモナス(Pseudomonas)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属細菌、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、キュープリアビダス(Cupriavidus)属細菌、サイクロバクター(Psychorobacter)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、エシェリキア(Escherichia)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、ブルクホルデリア(Burkholderia)属細菌、リステリア(Listeria)属細菌、シゲラ(Shigella)属細菌、ビブリオ(Vibrio)属細菌、クレブシエラ(Klebsiella)属細菌、サルモネラ(Salmonella)属細菌、及びエンテロバクター(Enterobacter)属細菌等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0052】
[バイオフィルムの殺菌方法]
本発明は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液(以下、本発明の処理液ともいう)を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの殺菌方法に関する。
本発明の処理液は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物を水で希釈して調製されるものであるから、前記(a)成分と(b)成分を含有するものである。
すなわち、本発明は、(a)成分、(b)成分、及び水を含有する処理液(以下、本発明の処理液ともいう)を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの殺菌方法に関する。以下、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物を水で希釈した処理液、及び(a)成分、(b)成分、及び水を含有する処理液をともに本発明の処理液として説明する。
本発明のバイオフィルムの殺菌方法の好ましい方法として、本発明のバイオフィルム殺菌殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させた後、所定時間放置する。
前記の所定時間放置するとは、バイオフィルムが存在する対象物品に対して、本発明のバイオフィルム殺菌殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を接触させてから、所定時間、接触状態にすることを言う。前記所定時間は、殺菌効果が高くなる観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは1分以上、より更に好ましくは3分以上、より更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは1時間以下、より好ましくは50分以下、更に好ましくは40分以下、より更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは20分以下である。
本発明のバイオフィルムの殺菌方法は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を用いて行い、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
【0053】
本発明のバイオフィルムの殺菌方法の対象物品は、繊維製品、又は硬質物品、好ましくは繊維製品である。
対象物品である繊維製品、及び硬質物品の態様は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物で記載した態様と同じである。
【0054】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液をバイオフィルムが存在する対象物品に接触させる方法としては、バイオフィルムが存在する、又は存在すると考えられる対象物品に、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を、噴霧、又は塗布する方法や、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液に対象物品、例えば繊維製品を浸漬させる方法が挙げられる。また本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を不織布に含侵させて、対象物品に接触させてもよい。
【0055】
対象物品に、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を、噴霧、又は塗布する場合、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を、スプレイヤーを具備する容器に充填して、液滴状又は泡状にして噴霧したり、容器から本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を対象物品に流して、はけ等により塗布したりすればよい。
スプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。
前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧することができるトリガー式スプレーが好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0056】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液に対象物品、例えば繊維製品を浸漬させる場合、浸漬中の対象物品と本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液は静置してもよく、撹拌してもよい。撹拌する場合には、手で撹拌してもよく、回転型攪拌機を用いてもよい。回転型攪拌機とは、対象物品と本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又本発明の処理液を、ある回転軸の回りに回転させて撹拌を行う機器である。回転型攪拌機は一定方向のみの撹拌を行ってもよく反対方向の撹拌を行っても良い。また、攪拌は、連続又は間欠で行うことができる。
使用者が入手できる回転型攪拌機として、例えば、パルセーター型洗濯機、アジテータ型洗濯、又はドラム型洗濯機が挙げられる。
本発明のバイオフィルムの殺菌方法は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液にバイオフィルムが存在する繊維製品を浸漬させて、回転型攪拌機を用いて撹拌する方法が好ましい。
【0057】
本発明のバイオフィルムの殺菌方法において、対象物品が、硬質物品である場合、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を接触後、静置させてもよく、流動させてもよく、バイオフィルム殺菌をより高める観点から、流動させることが好ましい。硬質物品に対して、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を流動させる方法の好ましい態様として、例えば、静置した硬質物品の表面に対してバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を連続的又は間欠的に噴射する方法、硬質物品を浸漬したバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を流動させる方法があげられる。硬質物品を浸漬したバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を流動させる態様として、例えば、硬質物品が浸漬しているバイオフィルム殺菌組成物、又は本発明の処理液を撹拌等の外力を与えて流動させる方法、又はバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液に浸漬した硬質物品を、回転又は振とうする方法が挙げられる。
【0058】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物を水で希釈して本発明の処理液を調製する場合、希釈倍率は、例えば、バイオフィルム殺菌の観点から、100000倍以下、更に50000倍以下、更に10000倍以下、更に3000倍以下、そして、10倍以上、更に50倍以上、更に100倍以上である。
【0059】
本発明の処理液中の(a)成分の含有量は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、更に1ppm以上、そして、好ましくは150000ppm以下、より好ましくは100000ppm以下、更に好ましくは50000ppm以下、更に10000ppm以下、更に5000ppm以下、更に1000ppm以下、更に500ppm以下、更に100ppm以下、更に50ppm以下である。
【0060】
本発明の処理液中の(b)成分の含有量は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、更に1ppm以上、そして、好ましくは5000000ppm以下、より好ましくは1000000ppm以下、更に好ましくは500000ppm以下、更に100000ppm以下、更に50000ppm以下、更に10000ppm以下、更に5000ppm以下、更に1000ppm以下、更に500ppm以下、更に100ppm以下、更に50ppm以下である。
【0061】
本発明の処理液において、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物において記載した各成分の質量比の範囲は、本発明の処理液中の各成分の質量比の範囲にそのまま適用できる。
【0062】
本発明の処理液のpHは、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。このpHは、本発明の処理液の温度が25℃のpHであってよい。pHの測定方法は前記した方法と同じである。
【0063】
本発明の処理液の調製に用いる水の硬度は、バイオフィルム殺菌の観点から、ドイツ硬度で、好ましくは0°dH以上、より好ましくは1°dH以上、更に好ましくは3°dH以上、そして、好ましくは30°dH以下、より好ましくは25°dH以下、更に好ましくは20°dH以下、より更に好ましくは10°dH以下、更に5°dH以下である。
また、本発明の処理液の硬度が前記範囲であってよい。
【0064】
ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO3換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。
このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-2Na、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0065】
本発明の処理液にバイオフィルムが存在する繊維製品を浸漬させる場合、繊維製品を浸漬(接触)させる時間は、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは1日以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
浸漬後は、繊維製品を水ですすぎ、乾燥させる。すすぎは、繊維製品の洗濯など、公知の方法に準じて水を用いて行えばよい。本発明のすすぎに用いられる水としては、特に限定されるものではないが、水道水、井戸水、イオン交換水、滅菌水、蒸留水等が挙げられる。
【0066】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を、対象物品に噴霧、又は塗布する場合、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、対象物品の単位面積1cm2あたり、(a)成分の量として、バイオフィルム殺菌の観点から、好ましくは0.0001g以上、より好ましくは0.001g以上、そして、好ましくは100g以下、より好ましくは10g以下とすることができる。
【0067】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を、対象物品に噴霧、又は塗布する場合、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる時間(放置させる時間)は、バイオフィルム殺菌性の観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは1日以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
接触させた後は、そのまま乾燥させてもよいし、綺麗な布などで拭き取ってもよいし、水ですすいでもよい。すすぐ際は、スポンジなどで外力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流ですすいでもよい。
【0068】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を不織布に含侵させて、対象物品に接触させる場合、不織布は、シート状に加工したものを用いることができ、不織布を構成する繊維は、前記した親水性繊維、及び疎水性繊維から選ばれる1種以上の繊維から構成されるものが好ましい。
対象物品に接触させる方法は、対象物品に本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又は本発明の処理液を含侵させた不織布を押し当てて、対象物に損傷を与えない範囲で外力を加えて、不織布に含侵した本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を対象物品に移して接触させればよく、擦る、揉む、叩く、のいずれであってもよい。
【0069】
本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物は、繊維製品又は硬質物品に付着したバイオフィルム殺菌のための使用に好適である。
すなわち、本発明は、繊維製品又は硬質物品に付着したバイオフィルム殺菌のための、前記(a)成分、及び(b)成分を含有する組成物の使用を提供する。
前記(a)成分、及び(b)成分を含有する組成物は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物と同じであり、(a)成分、及び(b)成分の具体的態様も同じである。前記組成物の具体的態様は、本発明のバイオフィルム殺菌剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。また前記組成物の使用態様は、本発明のバイオフィルムの殺菌方法で記載した態様を適宜適用することができる。
【実施例0070】
[配合成分]
実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
<(a)成分>
・Q-D08:ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、一般式(a1)中、R1a及びR2aが炭素数8のアルキル基であり、R3a及びR4aは、メチル基であり、X-はクロールイオンである化合物、(a1)成分
・オクテニジン:オクテニジン二塩酸塩、一般式(a22)中、R5aがそれぞれn-オクチル基、Yがn-デセニル基、AがCl、qが1、rが2の化合物(a2)成分、商品名「Octenidine Dihydrochloride」、東京化成工業(株)製
<(a’)成分((a)成分の比較成分>
・C10DMAB:ジデシルジメチルアンモニウムブロミド、一般式(a1)中、R1a及びR2aが炭素数10のアルキル基であり、R3a及びR4aがメチル基であり、X-がブロモイオンである化合物、商品名「Didecyldimethylammonium Bromide」、東京化成工業(株)製
・Q-D10:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、一般式(a1)中、R1a及びR2aが炭素数10のアルキル基であり、R3a及びR4aが、メチル基であり、X-がクロールイオンである化合物
【0071】
<(b)成分>
・AS:アルキル硫酸エステル塩、一般式(b1)中、R1bが炭素数12のアルキル基であり、pが0、qが0であり、Mがナトリウムイオンである化合物、(b1)成分、商品名「ドデシル硫酸ナトリウム」、東京化成工業(株)製
・ApS:部分PO付加型アルキルエーテル硫酸塩、一般式(b1)中、R1bが炭素数8~12のアルキル基であり、pが0.6、qが0であり、Mがナトリウムイオンである化合物、(b1)成分
・ES:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、一般式(b1)中、R1bが炭素数10~16のアルキル基であり、pが0、qが2であり、Mがナトリウムイオンである化合物、(b1)成分、商品名「エマール227」、花王(株)製
・C12APES:アルキル基の炭素数が12のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、一般式(b1)中、R1bが炭素数12のアルキル基であり、pが2、qが2であり、Mがモノエタノールアンモニウムである化合物、(b1)成分
・C16IOS:炭素数16の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩、(b2)成分
<(b’)成分((b)成分の比較成分>
・LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)、商品名「ネオぺレックス G-25」、花王(株)製
・RLM45NV:ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム(カッコ内の数値はオキシエチレン基の平均付加モル数)
・ステアリン酸ナトリウム
【0072】
[バイオフィルム殺菌剤組成物の調製]
表1~7に示すバイオフィルム殺菌剤組成物の調製方法は下記の通りである。200mL容量のガラス製ビーカーに長さ3cmのテフロン製スターラーピースを投入し、次にイオン交換水10g、表1~7に示す配合で(a)成分又は(a’)成分、(b)成分又は(b’)成分を投入し、100r/minで10分攪拌し、全量が100gになるのに必要な追加で投入する量の95質量%相当のイオン交換水を追加し、100r/minで5分間撹拌した後、モノエタノールアミンもしくは塩酸でpH(25℃)を8に調整し(表7の実施例35、36については表に記載のpHに調整した。)、全量が100gになるようにイオン交換水を追加し、100r/minで15分間撹拌した後、表1~7に示す配合の各バイオフィルム殺菌剤組成物とした。調製後、再度pHを確認したところ、表1~7の各バイオフィルム殺菌剤組成物のpHは調整した時のpHと変わらなかった。なお表1~7に各バイオフィルム殺菌剤組成物中、各成分の配合量はすべて有効分である。また表4の実施例29については、後述のとおり希釈後の試験処理液中の各成分の配合量を示した。
【0073】
[バイオフィルム殺菌性評価]
(1-1)バイオフィルム形成布の作製
Rhodotorula mucilaginosa(衣類分離株)とMethylobacterium variable(衣類分離株)のグリセロールストック液をポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories社製)に塗抹し、30℃で2日間静置培養した。Moraxella osloensis(衣類分離株)のグリセロールストック液をSCD寒天培地(塩谷エムエス(株)製 SCD寒天培地「ダイゴ」、一般細菌検査用)に塗抹し、37℃で1日間静置培養した。それぞれ培養後の菌体をディスポループ(アズワン(株)製 ディスポループ10型)でかきとり、R2A培地(塩谷エムエス(株)製 R2A培地「ダイゴ」)へ懸濁させた。分光光度計((株)アペレ製 型番:PD-303S)を用いて各菌懸濁液の濁度(OD600)を測定し、R.mucilaginosaはOD600=0.2、M.variableとM.osloensisはOD600=0.01となるように菌液を希釈した。
3×3cmに裁断したヒラオリ木綿布(谷頭商店製 木綿2003)をオートクレーブ(PHC(株)製 高圧蒸気滅菌器 ラボ・オートクレーブ 型番:MLS-3781)で加圧滅菌した。滅菌後のヒラオリ木綿布をNo.6スクリュー管(株式会社マルエム製 スクリュー管瓶 No.6)へ入れ、上記3菌種の菌液をそれぞれ1mL、R2A培地を7mL添加した。蓋をして密栓し、小型恒温振とう培養器バイオシェーカー(TAITEC(株)製 型番:BR-23FP)にて30℃、200rpmの条件で2日間振盪培養した。培養後のヒラオリ木綿布を新しいNo.6スクリュー管に移し、オートクレーブ滅菌済みイオン交換水10mLを添加した。小型恒温振とう培養器バイオシェーカーにて25℃、150prmで3分間振盪洗浄を行った。洗浄後のヒラオリ木綿布を安全キャビネット内で1時間風乾し、バイオフィルム形成布とした。
布上でのバイオフィルム形成は、布をピンセットで糸状にほぐし、その糸を染色し共焦点レーザスキャン顕微鏡(カールツァイス(株)製 LSM880 ZEN)で観察することで確認した。観察を行う糸は、生細胞染色用色素(株式会社同仁化学研究所製 C375-Cellstain(TM)-CFSE)、死細胞染色用色素(株式会社同仁化学研究所製 P378-Cellstain(TM)-PI solution)、セルロース染色用色素(シグマアルドリッチ社製 Calcofluor White染色液)、糖染色用色素(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Lectin PNA From Arachis hypogaea(peanut),Alexa Fluor(TM)647 Conjugate)、糖染色用色素(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Concanavalin Alexa Fluor(TM)647 Conjugate)で30分間染色した。
【0074】
(1-2)バイオフィルム形成硬質表面の作製
表5の実施例31については、ポリスチレン製の6ウェルプレート(コーニング(株)製 Falcon セルカルチャー 6ウェル マルチウェルプレート 平底 フタ付き)1ウェルあたり、上記3菌種の菌液をそれぞれ0.3mL、R2A培地を2.1mL添加し、蓋をして密栓後、30℃で2日間静置培養した。培養後の6ウェルプレートの上層の水分を吸い取り、安全キャビネット内で1時間風乾し、バイオフィルム形成硬質表面とした。
硬質表面でのバイオフィルムの形成は、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製 VHX-7000)で観察することで、確認した。
【0075】
(2)バイオフィルム殺菌試験
(バイオフィルム殺菌評価)
作製したバイオフィルム形成布を1.5×1.5cmに、滅菌済みヒラオリ木綿布を1.5×3cmにそれぞれ裁断した。裁断したバイオフィルム形成布1枚+滅菌済みヒラオリ布2枚の計3枚を重ね合わせ、5mLチューブ(エッペンドルフ(株)製 エッペンドルフチューブ5.0mL 型番:0030 119.401)に入れた。そこに、表1~7の各バイオフィルム殺菌剤組成物をモデル水道水(4°dH)で3000倍に希釈した試験処理液(表4中、実施例29は表に記載の濃度に希釈後の試験処理液を用い、実施例30については、希釈せずに表に記載の濃度でそのまま用いた。また表6の実施例32、33、34については、3000倍に希釈するためのモデル水道水の硬度を表に記載のものに変更して試験処理液を調製した。)3mLを加え、小型恒温振とう培養器バイオシェーカーにて25℃、150prmで10分間振盪洗浄を行い、これを洗い工程とした。洗い後の布を、モデル水道水3mLを入れた5mLチューブに移し、同様の条件で3分間振盪洗浄を行い、すすぎ工程とした。この洗いとすすぎの工程を交互に4回繰り返した後、バイオフィルム形成布のみを取り出し、安全キャビネット内で30分間風乾した。
バイオフィルム形成硬質表面については、表5の実施例31のバイオフィルム殺菌組成物をモデル水道水(4°dH)で30000倍に希釈した試験処理液を1ウェルあたり3mL加え、小型恒温振とう培養器バイオシェーカーにて25℃、150prmで10分間振盪洗浄を行い、これを洗い工程とした。洗い後のバイオシェーカー内の試験処理液をマイクロピペット(エッペンドルフ(株)製 Eppendorf Research(R) plus)で吸い取り、モデル水道水3mLを添加して、同様の条件で3分間振盪洗浄を行い、すすぎ工程とした。この洗いとすすぎの工程を交互に4回繰り返した後、すすぎ後のバイオシェーカー内のモデル水道水をマイクロピペットで吸い取り、すすぎ後のバイオフィルム形成硬質表面を、安全キャビネット内で30分間風乾した。
【0076】
(残存生菌数測定)
風乾後のバイオフィルム形成布と試験処理液接触前のバイオフィルム形成布を、それぞれLP希釈液(塩谷エムエス(株)製 LP希釈液「ダイゴ」)1mLを入れた1.5mLチューブ(エッペンドルフ(株)製 エッペンドルフチューブ1.5mL 型番:0030 125.150)に入れた。蓋をした状態で、15分間超音波洗浄機(日本エマソン(株)製 卓上超音波洗浄機 型番:2510JDTH)に入れ、布上に残存した菌体をLP希釈液中に分散させた。ボルテックス(アズワン株式会社製 ボルテックスミキサー 型番:VTX-3000L)で3秒間液を撹拌した後、この菌液をLP希釈液で10
倍ずつ段階希釈し、100μLずつシャーレ(アズワン(株)製 アズノールシャーレ 径90mm、高さ15mm)に分注した。そこへSCD寒天培地を15mL程度加え、蓋をして軽く混釈後、寒天が固まるまで常温で静置した。37℃で1日間静置培養後、コロニーカウンターペン(アズワン(株)製 コロニーカウンターペンタイプ 型番:2-5764-01)を用いてM.variableの残存生菌数をカウントした。
バイオフィルム形成硬質表面については、風乾後のバイオフィルム形成硬質表面と試験処理液接触前のバイオフィルム形成硬質表面に、それぞれ1ウェルあたり3mLのLP希釈液を入れた。マイクロピペットで20回ピペッティングを行い、ウェルからバイオフィルムを剥がし、LP希釈液中に分散させた。この菌液をLP希釈液で10倍ずつ段階希釈し、上記と同様の方法でM.variableの残存生菌数をカウントした。
(バイオフィルム殺菌活性値の算出方法)
以下の式によりバイオフィルム殺菌活性値を求めた。結果を1~7に示す。殺菌活性値が高いほどバイオフィルム殺菌性に優れる。
バイオフィルム殺菌活性値=LogA-LogB
A:試験処理液接触前の残存生菌数の平均値
B:試験処理液接触後の残存生菌数の平均値
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】