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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098329
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】制御システム、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20250625BHJP
   H01M 10/627 20140101ALI20250625BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20250625BHJP
【FI】
B60K11/02 ZHV
H01M10/627
H01M10/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214386
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】六浦 圭太
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】小芦 英史
(72)【発明者】
【氏名】角田 健太郎
【テーマコード(参考)】
3D038
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AC22
5H031CC09
(57)【要約】
【課題】バッテリを暖機することが可能な制御システムを提供する。
【解決手段】走行用モータMに供給する電力が蓄電されている高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュール20と、ポンプにより高圧バッテリ4と電源モジュール20とに亘って冷却流体を循環させる循環路とが、高圧バッテリ4と共に単一のハウジングに収容された車両において、高圧バッテリ4の温度調節制御を行う制御システム1は、車両に対する走行指令に応じて、少なくとも電源モジュール20の作動を制御する制御部51と、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かを判定する判定部52と、を備え、制御部51は、走行用モータMが通電されていない状態であるときに電源モジュール20を駆動させて、高圧バッテリ4の温度調節を行う温調制御を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータに供給する電力が蓄電されているバッテリの出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュールと、ポンプにより前記バッテリと前記電源モジュールとに亘って冷却流体を循環させる循環路とが、前記バッテリと共に単一のハウジングに収容された車両において、前記バッテリの温度調節制御を行う制御システムであって、
前記車両に対する走行指令に応じて、少なくとも前記電源モジュールの作動を制御する制御部と、
前記走行用モータが通電されていない状態であるか否かを判定する判定部と、を備え、
前記制御部は、前記走行用モータが通電されていない状態であるときに前記電源モジュールを駆動させて、前記バッテリの温度調節を行う温調制御を実行する制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両のスタータスイッチがオン状態にされた場合に前記温調制御を実行する請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記電源モジュールは、更に、交流電力を、前記バッテリを充電可能な直流電力に変換可能であって、
前記制御部は、前記交流電力に基づく前記バッテリの充電時に前記温調制御を実行する請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記ポンプが更に収容されており、
前記制御部は、前記走行用モータが通電されていない状態であるときに前記ポンプを駆動させて、前記冷却流体を介した前記温調制御を実行する請求項1から3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
走行用モータに供給する電力が蓄電されているバッテリの出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュールと、ポンプにより前記バッテリと前記電源モジュールとに亘って冷却流体を循環させる循環路とが、前記バッテリと共に単一のハウジングに収容された車両において、前記バッテリの温度調節制御をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、
前記走行用モータが通電されていない状態であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理にて前記走行用モータが通電されていない状態であると判定されたときに前記電源モジュールを駆動させて、前記バッテリの温度調節制御を実行する制御処理と、
をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの温度調節制御を行う制御システム、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータ(「走行用モータ」に相当)を備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)はモータを駆動させるためのバッテリを搭載している。
【0003】
一般的に、電動車に搭載されるバッテリは、複数のセルが並設されたバッテリモジュールをハウジングに収容して構成されている。そのため、バッテリを使用すると、発熱によりハウジングの内部に熱がこもって高温になる。バッテリは高温になると劣化が進みやすくなる。そこで、バッテリを冷却する技術が検討されてきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1には、車両の電池冷却構造について記載されている。この電池冷却構造は、電池モジュールと、電池モジュールに冷却流体を供給する冷却通路と、電池モジュールに電気的に接続された電装機器と、冷却流体を冷却する冷却器と、電池モジュール、電装機器、冷却器、及び冷却通路を収容するバッテリケースとを備えている。また、この電池冷却構造では、電池モジュールの電池セルを冷却した後の冷却流体を電装機器に供給し、電装機器を冷却するように構成されている。
【0005】
特許文献2には、車両用冷却構造について記載されている。この車両用冷却構造は、車両用電気駆動システムに適用される。車両用電気駆動システムは、電動機、バッテリ、及びインバータを収容するハウジングを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-59215号公報
【特許文献2】特開2008-105645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、バッテリは高温になると劣化が進みやすくなることから、特許文献1及び2に記載される技術のようにバッテリを冷却することが望まれる。しかしながら、例えば冬場等のような冷間時には、バッテリ寿命の観点において、バッテリの充電時やバッテリに蓄えられた電力の使用時(放電時)にバッテリを暖機して作動効率を高めることが好ましい。特許文献1及び2には、このようなバッテリの暖機について考慮されておらず、改良の余地がある。
【0008】
そこで、バッテリを暖機することが可能な制御システム及び制御プログラムが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御システムの特徴構成は、走行用モータに供給する電力が蓄電されているバッテリの出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュールと、ポンプにより前記バッテリと前記電源モジュールとに亘って冷却流体を循環させる循環路とが、前記バッテリと共に単一のハウジングに収容された車両において、前記バッテリの温度調節制御を行う制御システムであって、前記車両に対する走行指令に応じて、少なくとも前記電源モジュールの作動を制御する制御部と、前記走行用モータが通電されていない状態であるか否かを判定する判定部と、を備え、前記制御部は、前記走行用モータが通電されていない状態であるときに前記電源モジュールを駆動させて、前記バッテリの温度調節を行う温調制御を実行する点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、制御システムが搭載される車両の走行用モータが通電されていない状態であっても、電源モジュールを駆動して生じた熱(ジュール熱)によりハウジング内の温度(雰囲気温度)を高めることができる。したがって、例えば冷間時において、走行用モータが通電されていない状況で、バッテリに蓄えられている電力を利用する場合であっても、バッテリを暖機することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る制御プログラムの特徴構成は、走行用モータに供給する電力が蓄電されているバッテリの出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュールと、ポンプにより前記バッテリと前記電源モジュールとに亘って冷却流体を循環させる循環路とが、前記バッテリと共に単一のハウジングに収容された車両において、前記バッテリの温度調節制御をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、前記走行用モータが通電されていない状態であるか否かを判定する判定処理と、前記判定処理にて前記走行用モータが通電されていない状態であると判定されたときに前記電源モジュールを駆動させて、前記バッテリの温度調節制御を実行する制御処理と、をコンピュータに実行させる点にある。
【0012】
このような特徴構成とすれば、上述した制御システムと同様に、車両の走行用モータが通電されていない状態であっても、電源モジュールを駆動して生じた熱(ジュール熱)によりハウジング内の温度(雰囲気温度)を高めることができる。したがって、例えば冷間時において、走行用モータが通電されていない状況で、バッテリに蓄えられている電力を利用する場合であっても、バッテリを暖機することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】制御システムを搭載した車両を示す図である。
図2】バッテリと電源モジュールとポンプとの配置を示す図である。
図3】電源モジュールの構成を示す図である。
図4】第1モード、第2モード、及び第3モードを示す図である。
図5】制御システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る制御システムは、車両に搭載されるバッテリの温度調節制御を行うように構成されている。以下、本実施形態の制御システム1について説明する。ただし、制御システム1は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0015】
図1には、制御システム1が搭載される車両2が示される。図1では、車両2の進行方向前側を「F」で示し、車両2の進行方向後側を「B」で示している。
【0016】
車両2の底部2Aには、車両2の走行に利用される電力を蓄電する高圧バッテリ4(「バッテリ」の一例)が設けられている。高圧バッテリ4は、車両2の走行中に跳ね上がる小石等による損傷を防止するために路面200に対向するようにハウジング10に収容されている。ハウジング10は、例えば樹脂を用いて有底の箱状を呈し、収容空間10Aが形成される。この収容空間10Aに高圧バッテリ4が収容されている。ハウジング10は、車両2が走行中において路面200と対向する底部2Aにおける、一対の前輪FWと、一対の後輪RWとの間に設けられる。
【0017】
車両2には、上述した高圧バッテリ4と共に、車両2に搭載される電装品(USB接続部や照明等)といった負荷90(図3参照)に供給される電力が蓄電される低圧バッテリ5が設けられる。高圧バッテリ4は、車両2を走行可能な走行用モータMに電力を供給する。本実施形態では、一対の前輪FWに対して走行用モータMの回転力が伝達される。高圧バッテリ4は、低圧バッテリ5の出力電圧の電圧値よりも大きい電圧値の電圧を出力する。なお、本実施形態では、上記のように一対の前輪FWに対して走行用モータMの回転力が伝達されるが、一対の後輪RWに対して走行用モータMの回転力が伝達されるように構成してもよいし、一対の前輪FW及び一対の後輪RWに対して走行用モータMの回転力が伝達されるように構成してもよい。
【0018】
車室3は、区画壁6により走行用モータMが収容されるモータルーム7と仕切られている。車室3には走行用モータMを始動可能なスタータスイッチ11が設けられている。
【0019】
図2はバッテリユニット100の斜視図である。図2に示されるように、バッテリユニット100は、ハウジング10に高圧バッテリ4を収容して構成される。また、ハウジング10には、高圧バッテリ4と共に、電源モジュール20と、冷却プレート30と、ポンプ40とが収容される。したがって、高圧バッテリ4と、電源モジュール20と、冷却プレート30と、ポンプ40とが単一のハウジング10に収容される。
【0020】
本実施形態では、ハウジング10における車両進行方向後側Bに高圧バッテリ4が収容され、高圧バッテリ4よりも車両進行方向前側Fに電源モジュール20とポンプ40とが収容される。また、ハウジング10における車両進行方向左側Lに電源モジュール20が収容され、電源モジュール20よりも車両進行方向右側Rにポンプ40が収容される。
【0021】
冷却プレート30は、ポンプ40により高圧バッテリ4と電源モジュール20とに亘って冷却流体を循環させる循環路35を内部に有する。冷却プレート30は、内部に中空の流路が設けられており、この流路が循環路35に相当する。したがって、循環路35も、単一のハウジング10に収容される。冷却流体として、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒を用いることが可能である。
【0022】
図2に示されるように、電源モジュール20及び高圧バッテリ4は、共に、この冷却プレート30が伝熱シート(不図示)を介して接する状態で、ハウジング10に収容されている。これにより、電源モジュール20を構成する電子部品及び高圧バッテリ4を、冷却プレート30を流通する冷却流体を介して温度調節することが可能となる。
【0023】
図3には、制御システム1及び電源モジュール20のブロック図が示される。電源モジュール20は、切替部21、周波数変換部22、第1変換部23、トランス24、第2変換部25、及び第3変換部26を含んで構成される。
【0024】
電源モジュール20は、高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換することが可能である。具体的には、高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、低圧バッテリ5を充電可能な電圧値の直流電圧に変換することが可能である。また、高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、商用電源として利用可能な電圧値の交流電圧(例えば、実効値が100Vの交流電圧)に変換することも可能である。
【0025】
更に、電源モジュール20は、外部からの交流電力を、高圧バッテリ4を充電可能な直流電力に変換することも可能である。外部とは、車両2の外部であって、車両2に搭載される高圧バッテリ4及び低圧バッテリ5とは異なる電力源である。また、交流電力とは、電圧値が所定の周期で振幅する交流電圧から構成される電力をいう。具体的には、外部からの交流電圧は、商用周波数(例えば50Hzや60Hz)で振幅し、単相三線式で供給される商用電源から取り出した200V(実効値)の交流電圧が相当する。直流電力とは、基準電圧に対して一定の電圧値(リップル電圧は除く)となる直流電圧で構成される電力をいう。
【0026】
以下では、図4に示されるように、電源モジュール20が高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、低圧バッテリ5を充電可能な電圧値の直流電圧に変換するように動作する形態を、第1モードと称する。また、電源モジュール20が高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、商用電源としてコンセント99を介して利用可能な電圧値の交流電圧に変換するように動作する形態を、第2モードと称する。さらに、電源モジュール20が例えばコンセントプラグのような供給部98を介して供給された外部からの交流電力を、高圧バッテリ4を充電可能な直流電力に変換するように動作する形態を、第3モードと称して説明する。図4では、電流の流れを白抜き矢印で示している。
【0027】
図3に戻り、周波数変換部22は、交流電力及び直流電力の一方を他方に変換する。すなわち、第3モードにおいて、高圧バッテリ4を充電する場合には、周波数変換部22は、上述した外部からの交流電力を、直流電力に変換する。一方、第2モードにおいて、外部に交流電力を出力する場合には、周波数変換部22は、直流電力を、交流電力に変換する。なお、第1モードにおいて、高圧バッテリ4の電力で、低圧バッテリ5を充電する場合には、周波数変換部22は、第3モードと同様に、直流電力を、交流電力に変換した上で、直流電力に変換するように構成するとよい。
【0028】
周波数変換部22は、互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子とを含んで構成されるレグを、1組備えて構成される。これらのスイッチング素子は、例えばn型MOS-FET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)が用いられる。
【0029】
第3モードにおいて、周波数変換部22が、交流電力を、直流電力に変換する場合には、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間と、他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間とに亘って交流電力が供給される。
【0030】
この場合、周波数変換部22は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを閉状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを開状態にする第1状態と、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを開状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを閉状態にする第2状態と、を順次切り替えながら駆動される。
【0031】
周波数変換部22は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とが互いに接続されるハイサイドの電源ラインと、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とが互いに接続されるローサイドの電源ラインとの間において、交流電力から変換した直流電力を出力する。
【0032】
一方、第2モードにおいて、周波数変換部22が、直流電力を、交流電力に変換する場合には、ハイサイドの電源ラインとローサイドの電源ラインとの間において、直流電力が供給される。
【0033】
この場合、周波数変換部22は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを閉状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを開状態にする第3状態と、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを開状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを閉状態にする第4状態と、を順次切り替えながら駆動される。これにより、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間と、他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間とに亘って、交流電力が出力される。
【0034】
このような周波数変換部22による直流電力の出力と、交流電力の出力とは、切替部21により選択的に切り替え可能に構成されている。切替部21は、例えばリレーを用いて構成することが可能である。切替部21は、共に図示しない0番端子と1番端子とが接続するよう操作されると、周波数変換部22が供給部98と電気的に接続され、供給部98から供給された交流電力を、直流電力に変換することが可能となる。また、切替部21が、共に図示しない0番端子と3番端子とが接続するよう操作されると、周波数変換部22がコンセント99と電気的に接続され、高圧バッテリ4からの直流電力に基づき生成した交流電力を、コンセント99から取り出すことが可能となる。
【0035】
第3モードでは、第1変換部23は、周波数変換部22からの直流電力をトランス24の一次巻線に入力する。第1変換部23は、上述したハイサイドの電源ラインとローサイドの電源ラインとに対して互いに並列に接続された2つのレグを有する。これら2つのレグは、夫々、直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子とを有する。第1変換部23のスイッチング素子も、n型MOS-FETが用いられる。
【0036】
第1変換部23は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを閉状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを開状態にする第5状態と、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを開状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを閉状態にする第6状態と、を順次切り替えながら駆動される。
【0037】
第1変換部23は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間と、他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間とに亘って、交流電力を出力する。この交流電力は、トランス24の一次巻線に供給される。
【0038】
一方、第2モードにおいて、第1変換部23は、トランス24からの交流電力を、直流電力に変換して、ハイサイドの電源ラインとローサイドの電源ラインとの間に亘って当該直流電力を出力する。
【0039】
この場合、第1変換部23は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを閉状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを開状態にする第7状態と、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを開状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを閉状態にする第8状態と、を順次切り替えながら駆動される。これにより、ハイサイドの電源ラインとローサイドの電源ラインとに亘って、直流電力が出力される。
【0040】
トランス24は、一次巻線と、二次巻線と、三次巻線とを有する。第3モードでは、一次巻線に、上述したように第1変換部23からの交流電力が供給される。二次巻線及び三次巻線には、一次巻線と二次巻線及び三次巻線の夫々との巻数比に応じた電流(交番電流)が流れ、また、一次巻線と二次巻線及び三次巻線の夫々との巻数比に応じた電圧(交番電圧)が生じる。
【0041】
一方、第2モードでは、二次巻線に、後述する第2変換部25からの交流電力が供給される。一次巻線には、一次巻線と二次巻線との巻数比に応じた電流(交番電流)が流れ、また、一次巻線と二次巻線との巻数比に応じた電圧(交番電圧)が生じる。更に、三次巻線には、一次巻線と三次巻線との巻数比に応じた電流(交番電流)が流れ、また、一次巻線と三次巻線との巻数比に応じた電圧(交番電圧)が生じる。
【0042】
第3モードでは、第2変換部25は、トランス24の二次巻線からの交流電力を整流し、高圧バッテリ4を充電可能な直流電力に変換する。第2変換部25は、互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子とを含んで構成されるレグを、1組備えて構成される。これらのスイッチング素子は、例えばn型MOS-FETが用いられる。
【0043】
第2変換部25には、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間と、他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子との間とに亘って、二次巻線からの交流電力が供給される。
【0044】
第2変換部25は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを閉状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを開状態にする第9状態と、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを開状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを閉状態にする第10状態と、を順次切り替えながら駆動される。
【0045】
第2変換部25は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とが互いに接続されるハイサイドの電源ラインと、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とが互いに接続されるローサイドの電源ラインとの間において、交流電力から変換した直流電力を出力する。この直流電力は高圧バッテリ4に供給され、高圧バッテリ4が充電される。
【0046】
トランス24の一次巻線と二次巻線との巻数比を、一次巻線に印加される交流電圧の電圧値と高圧バッテリ4の充電に利用する直流電圧の電圧値との比に応じたものとすることで、第2変換部25から高圧バッテリ4の充電に適した直流電力を生じさせ、高圧バッテリ4を充電することが可能となる。
【0047】
一方、第2モードでは、第2変換部25は、高圧バッテリ4からの直流電力を、交流電力に変換して、トランス24の二次巻線に出力する。
【0048】
この場合、第2変換部25は、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを閉状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを開状態にする第11状態と、一方のレグのハイサイドのスイッチング素子と他方のレグのローサイドのスイッチング素子とを開状態にすると共に、一方のレグのローサイドのスイッチング素子と他方のレグのハイサイドのスイッチング素子とを閉状態にする第12状態と、を順次切り替えながら駆動される。これにより、トランス24の二次巻線に交流電力が出力される。
【0049】
第3変換部26は、三次巻線に生じる電圧(交番電圧)を整流し、第2変換部25から出力される直流電圧の電圧値よりも低い電圧値の直流電圧で構成される直流電力に変換する。
【0050】
第3変換部26は、例えばハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子と、リアクトルコイルとを含んで構成される同期整流型のコンバータで構成することが可能である。第3変換部26は、例えば、低圧バッテリ5を充電可能な電圧値の直流電力を出力するようにすることで、低圧バッテリ5を充電することが可能となる。
【0051】
主機インバータ41は、高圧バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換し、走行用モータMを駆動する。走行用モータMは、3相モータが用いられる。このため、主機インバータ41は、互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子を含んで構成されるレグを3つ備えて構成される。主機インバータ41は、この3つのレグのうちの所定の1つのレグのハイサイドのスイッチング素子と、残りの2つのレグのうちの一方のローサイドスイッチング素子とを閉状態にすると共に、他のスイッチング素子を開状態にする状態を、順次切り替えることで、高圧バッテリ4からの直流電力を3相の交流電力に変換する。このような3相の交流電力を、走行用モータMに供給することで、走行用モータMが駆動する。
【0052】
補機インバータ42は、例えばエアコンディショナーなどの補機43に、高圧バッテリ4からの直流電力を構成する直流電圧の電圧値を降圧して供給する。降圧された直流電力は、補機43が有するインバータ等により交流電力に変換され、利用される。
【0053】
制御システム1は、制御部51と、判定部52とを備えて構成され、各機能部は、電源モジュール20の制御に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0054】
制御部51は、車両2に対する走行指令に応じて、少なくとも電源モジュール20の作動を制御する。車両2に対する走行指令とは、車両2を走行させるために走行用モータMに要求された出力トルクである。車両2を走行させる場合、主機インバータ41は、図示しない主機インバータ制御ユニットにより制御され、高圧バッテリ4に蓄えられている電力に基づいて走行用モータMを駆動する。また、車両2の走行中、高圧バッテリ4に蓄えられている電力に基づいて、低圧バッテリ5の充電も可能である。この場合、制御部51が、電源モジュール20の作動を制御する。また、車両2の走行中、コンセント99から交流電力の出力を要求された場合、制御部51は電源モジュール20の作動を制御する。このような場合、制御部51は、切替部21、周波数変換部22、第1変換部23、第2変換部25、及び第3変換部26の夫々が有する各部品(リレーやスイッチング素子など)の駆動を制御する。
【0055】
ここで、高圧バッテリ4を充電する場合、及び、高圧バッテリ4に蓄えられている電力を利用する場合(放電する場合)には、高圧バッテリ4の温度が高過ぎても低過ぎても好ましくない。制御システム1は、高圧バッテリ4の温度が低過ぎる場合に、高圧バッテリ4を暖機することができるように構成されている。
【0056】
車両2には、車外の気温を測定できる温度センサ(図示せず)が設けられている。制御部51は、温度センサの検出結果を取得し、車外の気温が予め設定された温度(例えば10℃)よりも低い場合、判定部52に対して、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かを判定するように指示を行う。この指示を受けて、判定部52は、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かを判定する。判定部52は、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かは、走行用モータMの回転速度に基づいて判定することが可能であるし、主機インバータ41の動作状態に基づいて判定することが可能である。走行用モータMの回転速度に基づいて判定する場合には、走行用モータMの回転速度が予め設定された回転速度以下であるときに走行用モータMが通電されていないと判定することが可能である。また、主機インバータ41の動作状態に基づいて判定する場合には、主機インバータ41を駆動する主機インバータ制御ユニットから動作状態及び非動作状態であることを示す情報を取得して判定してもよい。もちろん、主機インバータ41の出力電流を検出し、この出力電流の大きさに応じて判定することも可能である。判定部52の判定結果は、制御部51に伝達される。
【0057】
制御部51は、車外の気温が予め設定された温度よりも低い場合において、高圧バッテリ4に蓄えられている電力から、交流電力を取り出す際は、走行用モータMが通電されていない状態であるときに電源モジュール20を駆動させて、高圧バッテリ4の温度調節を行う温調制御を実行する。具体的には、図4の第2モードに示されるように、高圧バッテリ4に蓄えられている電力を利用してコンセント99から交流電力を取り出す場合には、制御部51は、周波数変換部22、第1変換部23、及び第2変換部25を駆動する。これにより、電源モジュール20からの熱に基づいて、ハウジング10内の雰囲気温度が高くなり、高圧バッテリ4を暖機することが可能となる。また、このとき、コンセント99から交流電力を取り出すことができるようにするだけでなく、第1モードと同様に、第3変換部26を駆動して高圧バッテリ4の電力で低圧バッテリ5を充電するようにすると好適である。これにより、周波数変換部22、第1変換部23、及び第2変換部25だけでなく、第3変換部26の夫々が有する部品(スイッチング素子)からの熱に基づいて、更にハウジング10内の雰囲気温度が高くなり、高圧バッテリ4の暖機を早めることが可能となる。このような電源モジュール20のスイッチング素子やトランス24を発熱させて高圧バッテリ4を暖機する制御が、上述した高圧バッテリ4の温度調節を行う温調制御に相当する。
【0058】
また、制御部51は、車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされた場合に、温調制御を実行すると好適である。スタータスイッチ11とは、例えばスマートキー等が車室3にある状態において、所定の条件(パーキングブレーキの作動、ブレーキペダルの踏み込み等)のもとで押下すると、車両2を走行可能な状態にすることができるプッシュボタンである。このようなスタータスイッチ11は、例えばブレーキペダルを踏まずに押下することで、車両2の状態を、一部の電装品(例えばオーディオ等)が使用可能な状態(所謂、ACCのオン状態)にすることが可能である。車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされた場合とは、このような車両2の状態を、一部の電装品(例えばオーディオ等)が使用可能な状態になったことを意味する。このような車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされた場合には、スタータスイッチ11がオン状態にされるまでは車両2が走行しておらず、高圧バッテリ4が冷えていることが想定される。そこで、このような状態においては、図4の第1モードに示されるように、電源モジュール20の第3変換部26を駆動して高圧バッテリ4の電力で低圧バッテリ5を充電するようにすると好適である。これにより、第3変換部26の夫々が有する部品(スイッチング素子)からの熱に基づいて、ハウジング10内の雰囲気温度が高くなり、高圧バッテリ4の暖機を行うことが可能となる。
【0059】
一方、高圧バッテリ4を充電する場合にも、高圧バッテリ4の温度が低過ぎると好ましくない。そこで、制御部51は、交流電力に基づく高圧バッテリ4の充電時に温調制御を実行するように構成すると好適である。具体的には、図4の第3モードに示されるように、高圧バッテリ4を交流電力に基づいて充電する場合には、制御部51は、周波数変換部22、第1変換部23、及び第2変換部25を駆動する。これにより、電源モジュール20からの熱に基づいて、ハウジング10内の雰囲気温度が高くなり、高圧バッテリ4を暖機することが可能となる。なお、この場合にも、第1モードと同様に、制御部51は、第3変換部26を駆動して高圧バッテリ4の電力で低圧バッテリ5を充電するようにすることが可能である。これにより、周波数変換部22、第1変換部23、及び第2変換部25だけでなく、第3変換部26の夫々が有する部品(スイッチング素子)からの熱に基づいて、更にハウジング10内の雰囲気温度が高くなり、高圧バッテリ4の暖機を早めることが可能となる。
【0060】
上記のように、制御システム1は、電源モジュール20を駆動してハウジング10内の雰囲気温度を高くし、高圧バッテリ4を暖機するが、制御部51は走行用モータMが通電されていない状態であるときにポンプ40を駆動させて、冷却流体を介した温調制御を実行するように構成することも可能である。上述したように、ハウジング10には、電源モジュール20と共に、ポンプ40と、当該ポンプ40により高圧バッテリ4と電源モジュール20とに亘って冷却流体を循環させる循環路35とが設けられている。そこで、電源モジュール20と熱交換をして暖められた冷却流体を、高圧バッテリ4に流通させることで、雰囲気温度だけでなく、冷却流体を介して電源モジュール20の熱により高圧バッテリ4を暖機することが可能となる。
【0061】
また、ポンプ40と共に、ポンプ40を駆動するポンプドライバをハウジング10内に収容して構成することも可能である。ポンプドライバは、複数のスイッチング素子を備えて構成され、これらのスイッチング素子はポンプ40を駆動するときに熱を発する。この熱を利用してハウジング10内の雰囲気温度を高めることで、高圧バッテリ4を暖機することが可能である。また、冷却流体を、このポンプドライバと熱交換させ、冷却流体を介して電源モジュール20の熱により高圧バッテリ4を暖機することも可能である。
【0062】
次に、制御システム1における処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。制御システム1は、スタータスイッチ11がオン状態にされると(ステップ#1:Yes)、低圧バッテリ5を起動する(ステップ#2)。続いて、高圧バッテリ4を起動する(ステップ#3)。
【0063】
車両2が走行中であれば(ステップ#4:Yes)、走行用モータM、及び主機インバータ41で高圧バッテリ4を暖機する(ステップ#5)。一方、車両2が走行中でなく(ステップ#4:No)、車両2が停車中である場合も(ステップ#6:Yes)、走行用モータM、及び主機インバータ41で高圧バッテリ4を暖機する(ステップ#5)。
【0064】
ステップ#6において、車両2が停車中でない場合には(ステップ#6:No)、電源モジュール20で高圧バッテリ4を暖機する(ステップ#7)。このような処理に基づいて、制御システム1は高圧バッテリ4を暖機する。
【0065】
上述した制御システム1の構成は、高圧バッテリ4の温度調節制御を行うコンピュータに実行させるためのプログラムとして構成することも可能である。この場合、プログラムは、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かを判定する判定処理と、当該判定処理にて走行用モータMが通電されていない状態であると判定されたときに電源モジュール20を駆動させて、高圧バッテリ4の温度調節制御を実行する制御処理とをコンピュータに実行させるように構成するとよい。このようなプログラムをコンピュータが実行することで、上述した制御システム1と同様に、電源モジュール20の熱を利用して高圧バッテリ4を暖機することが可能である。
【0066】
〔その他の実施形態〕
次に、制御システム1のその他の実施形態について説明する。
【0067】
上記実施形態では、制御部51は、車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされた場合に温調制御を実行するとして説明した。しかしながら、制御部51は、車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされた場合でなくても、車両2が走行可能な状態となっていない場合において、高圧バッテリ4を充電、又は、高圧バッテリ4の放電を検出した場合に温調制御を実行するように構成することも可能である。
【0068】
上記実施形態では、電源モジュール20は、更に、交流電力を、高圧バッテリ4を充電可能な直流電力に変換可能であって、制御部51は、交流電力に基づく高圧バッテリ4の充電時に温調制御を実行するとして説明した。しかしながら、電源モジュール20は、交流電力を、高圧バッテリ4を充電可能な直流電力に変換しないように構成されていてもよい。この場合、制御部51は、交流電力に基づく高圧バッテリ4の充電時に温調制御を実行しないように構成するとよい。
【0069】
上記実施形態では、ハウジング10には、ポンプ40が更に収容されており、制御部51は、走行用モータMが通電されていない状態であるときにポンプ40を駆動させて、冷却流体を介した温調制御を実行するとして説明した。しかしながら、ハウジング10には、ポンプ40が収容されないように構成することも可能である。この場合でも、制御部51は、走行用モータMが通電されていない状態であるときにポンプ40を駆動させて、冷却流体を介した温調制御を実行するように構成することが可能である。
【0070】
上記実施形態では、高圧バッテリ4の温度調節制御をコンピュータに実行させるための制御プログラムについて説明した。このような制御プログラムは、記憶媒体に記憶することも可能である。このような記憶媒体は、走行用モータMに供給する電力が蓄電されている高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュール20と、ポンプ40により高圧バッテリ4と電源モジュール20とに亘って冷却流体を循環させる循環路35とが、高圧バッテリ4と共に単一のハウジング10に収容された車両2において、高圧バッテリ4の温度調節制御をコンピュータに実行させるための制御プログラムを記憶した記憶媒体として構成し、記憶媒体は、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かを判定する判定処理と、当該判定処理にて走行用モータMが通電されていない状態であると判定されたときに電源モジュール20を駆動させて、高圧バッテリ4の温度調節制御を実行する制御処理と、をコンピュータに実行させる制御プログラムを記憶するとよい。
【0071】
このような制御プログラムを記憶した記憶媒体であっても、上述した制御システム1と同様に、電源モジュール20の熱を利用して高圧バッテリ4を暖機することが可能である。
【0072】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した制御システム1及び制御プログラムの概要について説明する。
【0073】
(1)制御システム1は、走行用モータMに供給する電力が蓄電されている高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュール20と、ポンプ40により高圧バッテリ4と電源モジュール20とに亘って冷却流体を循環させる循環路35とが、高圧バッテリ4と共に単一のハウジング10に収容された車両2において、高圧バッテリ4の温度調節制御を行う制御システム1であって、車両2に対する走行指令に応じて、少なくとも電源モジュール20の作動を制御する制御部51と、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かを判定する判定部52と、を備え、制御部51は、走行用モータMが通電されていない状態であるときに電源モジュール20を駆動させて、高圧バッテリ4の温度調節を行う温調制御を実行するように構成されている。
【0074】
本構成によれば、制御システム1が搭載される車両2の走行用モータMが通電されていない状態であっても、電源モジュール20を駆動して生じた熱(ジュール熱)によりハウジング10内の温度(雰囲気温度)を高めることができる。したがって、例えば冷間時において、走行用モータMが通電されていない状況で、高圧バッテリ4に蓄えられている電力を利用する場合であっても、高圧バッテリ4を暖機することが可能となる。
【0075】
(2)(1)に記載の制御システム1において、制御部51は、車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされた場合に温調制御を実行すると好適である。
【0076】
車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされた直後には、高圧バッテリ4の温度が低く、暖機を要することがある。本構成によれば、車両2のスタータスイッチ11がオン状態にされたことをトリガとして、自動的に電源モジュール20を駆動させてハウジング10内の温度を高め、高圧バッテリ4を暖機することができる。したがって、高圧バッテリ4を暖機するためにユーザが指示する操作を不要にできる。
【0077】
(3)(1)または(2)に記載の制御システム1において、電源モジュール20は、更に、交流電力を、高圧バッテリ4を充電可能な直流電力に変換可能であって、制御部51は、交流電力に基づく高圧バッテリ4の充電時に温調制御を実行すると好適である。
【0078】
本構成によれば、高圧バッテリ4に蓄えられている電力を利用する場合だけでなく、例えば冷間時において、走行用モータMが通電されていない状況で、高圧バッテリ4を充電する場合であっても、高圧バッテリ4を暖機することが可能となる。
【0079】
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の制御システム1において、ハウジング10には、ポンプ40が更に収容されており、制御部51は、走行用モータMが通電されていない状態であるときにポンプ40を駆動させて、冷却流体を介した温調制御を実行すると好適である。
【0080】
本構成によれば、ハウジング10内の温度を高めて高圧バッテリ4を暖機するだけでなく、例えば電源モジュール20で熱交換した後の冷却流体を高圧バッテリ4の暖機に利用することができる。したがって、高圧バッテリ4の暖機をより効率よく行うことが可能となる。
【0081】
(5)制御プログラムは、走行用モータMに供給する電力が蓄電されている高圧バッテリ4の出力電圧の電圧値を、所定の電圧値の電圧に変換可能な電源モジュール20と、ポンプ40により高圧バッテリ4と電源モジュール20とに亘って冷却流体を循環させる循環路35とが、高圧バッテリ4と共に単一のハウジング10に収容された車両2において、高圧バッテリ4の温度調節制御をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、走行用モータMが通電されていない状態であるか否かを判定する判定処理と、判定処理にて走行用モータMが通電されていない状態であると判定されたときに電源モジュール20を駆動させて、高圧バッテリ4の温度調節制御を実行する制御処理と、をコンピュータに実行させる。
【0082】
本構成によれば、上述した制御システム1と同様に、車両2の走行用モータMが通電されていない状態であっても、電源モジュール20を駆動して生じた熱(ジュール熱)によりハウジング10内の温度(雰囲気温度)を高めることができる。したがって、例えば冷間時において、走行用モータMが通電されていない状況で、高圧バッテリ4に蓄えられている電力を利用する場合であっても、高圧バッテリ4を暖機することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示に係る技術は、バッテリの温度調節制御を行う制御システム、及び制御プログラムに利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1:制御システム、2:車両、4:高圧バッテリ(バッテリ)、10:ハウジング、11:スタータスイッチ、20:電源モジュール、35:循環路、40:ポンプ、51:制御部、52:判定部、M:走行用モータ
図1
図2
図3
図4
図5