(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098369
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】開閉機構
(51)【国際特許分類】
B62J 1/12 20060101AFI20250625BHJP
B62J 9/14 20200101ALN20250625BHJP
【FI】
B62J1/12 B
B62J1/12 Z
B62J1/12 C
B62J9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214459
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡島 弘起
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で操作し易い開閉機構を提供する。
【解決手段】開閉機構(40)には、車体に取り付けられたベースブラケット(41)と、シート(16)に取り付けられたシートブラケット(51)と、ベースブラケットに揺動可能に連結された第1のリンク(61)と、シートブラケットに揺動可能に連結された第2のリンク(65)と、が設けられている。ベースブラケットにシートブラケットが揺動可能に連結され、第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結されている。シートブラケットが開方向に揺動して第1、第2のリンクが思案点に至ると、第1、第2のリンクが下方に揺動して凹状に屈曲する。第1のリンクには、シートブラケットの閉方向への揺動を規制するストッパー(62)が形成されている。第1、第2のリンクが凹状に屈曲した状態でストッパーにシートブラケットが突き当る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両の車体に開閉可能に連結されるシートの開閉機構であって、
前記車体に取り付けられたベースブラケットと、
前記シートに取り付けられたシートブラケットと、
前記ベースブラケットに揺動可能に連結された第1のリンクと、
前記シートブラケットに揺動可能に連結された第2のリンクと、を備え、
前記ベースブラケットに前記シートブラケットが揺動可能に連結され、
前記第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結され、
前記シートブラケットが開方向に揺動して前記第1、第2のリンクが思案点に至ると、前記第1、第2のリンクが下方に揺動して凹状に屈曲し、
前記第1のリンクには前記シートブラケットの閉方向への揺動を規制するストッパーが形成され、前記第1、第2のリンクが凹状に屈曲した状態で前記ストッパーに前記シートブラケットが突き当ることを特徴とする開閉機構。
【請求項2】
前記シートブラケットには、前記シートブラケットが前記ストッパーから開方向に離れた場合に、前記第1のリンクを突き上げる操作部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の開閉機構。
【請求項3】
前記第1、第2のリンクの少なくとも一方には、前記シートブラケットの閉方向の揺動中に、前記第1、第2のリンクの少なくとも他方に摩擦接触する制動部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記制動部は、前記シートブラケットの開方向の揺動中に前記第1、第2のリンクの少なくとも他方から外れることを特徴とする請求項3に記載の開閉機構。
【請求項5】
第1の部材と第2の部材を開閉可能に連結される開閉機構であって、
前記第1の部材に取り付けられた固定ブラケットと、
前記第2の部材に取り付けられた可動ブラケットと、
前記固定ブラケットに揺動可能に連結された第1のリンクと、
前記可動ブラケットに揺動可能に連結された第2のリンクと、を備え、
前記固定ブラケットに前記可動ブラケットが揺動可能に連結され、
前記第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結され、
前記可動ブラケットが開方向に揺動して前記第1、第2のリンクが思案点に至ると、前記第1、第2のリンクが下方に揺動して凹状に屈曲し、
前記第1のリンクには前記可動ブラケットの閉方向への揺動を規制するストッパーが形成され、前記第1、第2のリンクが凹状に屈曲した状態で前記ストッパーに前記可動ブラケットが突き当ることを特徴とする開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両のシートの開閉機構として、ガススプリングによってシートの持ち上げ操作が補助されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のシートの開閉機構では、シートに設けられた可動ブラケットと車体フレームに設けられた固定ブラケットがヒンジを介して開閉可能に連結されている。可動ブラケットにはガススプリングが連結されており、シートが閉じた状態で可動ブラケットに開方向にガススプリングの反発力が付与されている。運転者が上向きに軽い力を加えるだけでシートが開かれ、ガススプリングの反発力によってシートが開状態で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の鞍乗型車両では、ロック機構によってシートが閉状態で保持されるが、ガススプリングの反発力がロック機構にも作用して解除操作が重くなるという不具合があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で操作し易い開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の開閉機構は、鞍乗型車両の車体に開閉可能に連結されるシートの開閉機構であって、前記車体に取り付けられたベースブラケットと、前記シートに取り付けられたシートブラケットと、前記ベースブラケットに揺動可能に連結された第1のリンクと、前記シートブラケットに揺動可能に連結された第2のリンクと、を備え、前記ベースブラケットに前記シートブラケットが揺動可能に連結され、前記第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結され、前記シートブラケットが開方向に揺動して前記第1、第2のリンクが思案点に至ると、前記第1、第2のリンクが下方に揺動して凹状に屈曲し、前記第1のリンクには、前記シートブラケットの閉方向への揺動を規制するストッパーが形成され、前記第1、第2のリンクが凹状に屈曲した状態で前記ストッパーに前記シートブラケットが突き当ることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の開閉機構によれば、シートが開かれると、ベースブラケットに対してシートブラケットが開方向に揺動される。第1、第2のリンクが伸展されて思案点に至ると、第1、第2のリンクが互いに下方に揺動して凹状に屈曲する。第1、第2のリンクの凹状の屈曲によって第1のリンクのストッパーにシートブラケットが突き当たることで、シートブラケットの閉方向への揺動が規制されてシートが自立姿勢で保持される。よって、シートを自立姿勢で保持するために、ガススプリング等の付加部材が不要になり、付加部材等によってロック機構の解除操作が重くなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】本実施例のシートの開閉機構の側面図である。
【
図5】
図4のシートの開閉機構をA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図6】本実施例のシートの開き動作の遷移図である。
【
図7】本実施例のシートの開き動作の遷移図である。
【
図8】本実施例のシートの揺動規制解除及び閉じ動作の遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の開閉機構は、鞍乗型車両の車体にシートを開閉可能に連結している。このシートの開閉機構では、車体にはベースブラケットが取り付けられ、シートにはシートブラケットが取り付けられており、シートが開かれるのに伴ってベースブラケットにシートブラケットが揺動可能に連結されている。ベースブラケットには第1のリンクが揺動可能に連結され、シートブラケットには第2のリンクが揺動可能に連結されており、第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結されている。シートブラケットが開方向に揺動して第1、第2のリンクが伸展して思案点に至ると、第1、第2のリンクが互いに下方に揺動して凹状に屈曲する。第1のリンクにはストッパーが形成されており、第1、第2のリンクの凹状の屈曲によって第1のリンクのストッパーにシートブラケットが突き当たることで、シートブラケットの閉方向への揺動が規制されてシートが自立姿勢で保持される。よって、シートを自立姿勢で保持するために、ガススプリング等の付加部材が不要になり、付加部材等によってロック機構の解除操作が重くなることがない。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印Frは車両前方、矢印Reは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレーム10(
図2参照)に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントカバー11が設けられており、フロントカバー11の後側にはライダーの足回りを保護するフロントレッグシールド12が設けられている。フロントレッグシールド12の下端から後方にフロアボード13が延在しており、フロアボード13の後方にはボディカバー14及び一対のサイドカバー15が設けられている。サイドカバー15の上部には運転者用及び同乗者用の座面を連ねたシート16が設置されている。
【0012】
フロントカバー11の上側にはハンドル21が設けられ、フロントカバー11の下側には一対のフロントフォーク22を介して前輪23が回転可能に支持されている。サイドカバー15の下側にはモータ付きのスイングアーム25が設けられている。スイングアーム25は車体フレーム10に揺動可能に連結されており、スイングアーム25の後部には後輪26が回転可能に支持されている。スイングアーム25の左側面がスイングアームカバー27に覆われており、スイングアームカバー27内のベルト式の無段変速機(不図示)を介してモータ(不図示)から後輪26に動力が伝達される。
【0013】
ところで、この種の鞍乗型車両では、車体に対してシートが開閉可能に連結されている。スクータタイプの鞍乗型車両ではシートが直立以上に開くことで、シートが自重で閉まらない構造が一般的だが、シート開度が小さく、ダンパーやバネ等によってシートが自重で閉まらない構造にしたタイプも存在する。このタイプの鞍乗型車両では、シートを閉じた状態でもシートに対してダンパー等の反発力が作用している。このため、ロック機構によってシートが閉状態で保持されていても、ダンパー等の反発力がロック機構にも作用して解除操作が重くなるという不具合がある。
【0014】
シートに対して開方向に反発力が作用しているため、シートとカバー類の合わせ部位に隙間が生じやすい。また、ダンパー等が左右一方にのみ設置されて、シートの片側だけがダンパー等に支えられている場合にはシートが傾くおそれがある。合わせ部位の隙間やシートの傾きを防止するためにはシート自体の剛性を高める必要がありシートが重くなってしまう。そこで、本実施例のシートの開閉機構では、シートの開閉に追従して揺動するリンク機構を設けて、シートが開いた状態ではシートが自重で閉まらないようにリンク機構の動きが規制される構造に形成されている。
【0015】
以下、
図2から
図5を参照して、鞍乗型車両の後部構造について説明する。
図2は本実施例の車体後部の左側面図である。
図3は本実施例の車体後部の上面図である。
図4は本実施例のシートの開閉機構の側面図である。
図5は
図4のシートの開閉機構をA-A線に沿って切断した断面図である。なお、
図2及び
図3では、シート、カバー、フロアボード等を2点鎖線で示している。
【0016】
図2及び
図3に示すように、鞍乗型車両1の車体後部では、前方から後方に向かって一対のサイドフレーム35が斜め上方に延びている。一対のサイドフレーム35の内側には、バッテリ31及び収容ボックス33が前後に並んで設置されている。バッテリ31のバッテリケースは側面視略矩形状に形成されており、バッテリケースの内側には複数のセル(単電池)が収容されている。側面視にてバッテリ31の前側の下角部が最も低く、バッテリ31の後側の上角部が最も高く、バッテリ31の前側の上角部が最も前方、バッテリ31の後側の下角部が最も後方となるようにバッテリ31が前傾している。
【0017】
一対のサイドフレーム35の前側の立ち上り付近から上方に固定ブラケット36が張り出しており、一対のサイドフレーム35の中間位置から下方に固定ブラケット37が張り出している。前側の固定ブラケット36にはバッテリ31の下面前端が固定され、後側の固定ブラケット37にはバッテリ31の下面後端が固定されている。バッテリ31の下面前端よりも下面後端が高い位置で一対のサイドフレーム35に固定されて、一対のサイドフレーム35によってバッテリ31が前傾姿勢で下側から支持されている。バッテリ31の上面前端にはシート16を開閉可能に連結する開閉機構40が取り付けられている。
【0018】
収容ボックス33の上面には開口の周囲にフランジ34が設けられ、収容ボックス33の下面は後輪26との干渉を避けるように傾斜している。フランジ34の前側はバッテリ31の上面後側に被さっており、フランジ34の後側は一対のサイドフレーム35の後端に被さっている。一対のサイドフレーム35の後端には固定ブラケット38が設けられており、固定ブラケット38の支持面がバッテリ31の後側の上角部と略同じ高さに位置している。フランジ34の前側はバッテリ31の後側の上角部に固定され、フランジ34の後側は一対のサイドフレーム35の固定ブラケット38に固定されている。
【0019】
一対のサイドフレーム35の前側の立ち上り付近から下方に固定ブラケット39が張り出しており、固定ブラケット39にはピボット28を介してスイングアーム25が揺動可能に支持されている。スイングアーム25の基端部はモータケース29になっており、モータケース29の内側にはモータ(不図示)が設置されている。スイングアーム25の後端には後輪26が支持されると共にリアサスペンション(不図示)が接続されている。スイングアーム25のピボット28寄りにモータが位置付けられることで、スイングアーム25の揺動時にモータに伝わる振動が抑えられている。
【0020】
図4及び
図5に示すように、シート16の開閉機構40は、第1、第2のベースブラケット41、45、シートブラケット51、第1、第2のリンク61、65を有する4節リンク機構によって構成されている。第1のベースブラケット41の基端部及び第2のベースブラケット45にシートブラケット51の基端部が揺動可能に連結されている。第1のベースブラケット41の先端部には第1のリンク61の一端部が揺動可能に連結され、シートブラケット51の先端部には第2のリンク65の一端部が揺動可能に連結されている。第1、第2のリンク61、65の他端部が揺動可能かつスライド可能に連結されている。
【0021】
バッテリ31の上面前側から上方に支持部32が突き出しており、バッテリ31の支持部32には第1のベースブラケット41が取り付けられている。第1のベースブラケット41は、金属板を所定形状に打ち抜いて折り曲げて形成され、4節リンク機構の固定リンクとして機能している。第1のベースブラケット41の下板42は支持部32の上面に沿って車幅方向に延びており、下板42が支持部32の上面に対してネジ止めされている。第1のベースブラケット41の下板42の前縁には支持部32の前面に沿う前板43が連なっており、前板43が支持部32の前面に対してネジ止めされている。
【0022】
第1のベースブラケット41の下板42の一側縁(左側縁)から側板44が立ち上がっており、側板44は下板42の固定部位から後方に向かって延びている。また、第1のベースブラケット41の下板42の他側縁側(右側)には第2のベースブラケット45が取り付けられている。第2のベースブラケット45は、第1のベースブラケット41の側板44に対向するように車幅方向に離間している。第1のベースブラケット41の側板44及び第2のベースブラケット45にシートブラケット51がシート回転軸71を介して揺動可能に連結されている。なお、第1、第2のベースブラケット41、45が一体に形成されていてもよい。
【0023】
シート16のシートプレート17の下面前側から下方に取付部18が突き出しており、シート16の取付部18にはシートブラケット51が取り付けられている。シートブラケット51は、金属板を所定形状に打ち抜いて折り曲げて形成され、4節リンク機構の駆動リンクとして機能している。シートブラケット51の上板52は取付部18の下面に沿って車幅方向に延びており、上板52が取付部18の下面に対してネジ止めされている。シートブラケット51の上板52の両側縁には一対の側板53が連なっており、一方の側板53が第1のベースブラケット41の側板44に車幅方向外側から重なっている。
【0024】
シートブラケット51の上板52の前縁から前方に規制片54が延出しており、規制片54が第1のベースブラケット41の前板43に対向することでシート16の過剰な開きが防止される。シート16の開方向への揺動に伴って規制片54が第1のベースブラケット41の前板43に接近し、シート16の閉方向への揺動に伴って規制片54が第1のベースブラケット41の前板43から離反する。シートブラケット51の一方の側板53の基端部から後方(
図4では後斜め下方)に操作片(操作部)55が突き出している。詳細は後述するが、シート16が直立姿勢よりも開かれたときに、操作片55によって第1のリンク61が突き上げられる。
【0025】
第1のリンク61は、金属板を所定の長尺形状に打ち抜いて形成され、4節リンク機構の従動リンクとして機能している。第1のリンク61の一端部(
図4の下端部)が第1のベースブラケット41の側板44の先端部に車幅方向外側から重なっており、第1のリンク61の下部と側板44の後部の重なった箇所が第1のジョイント72を介して連結されている。第1のリンク61の他端部側の略半部から前方に山形のシートストッパー62が延出し、シートストッパー62によってシート16が自立姿勢で保持される。第1のリンク61の他端部から後側に第1の摺動片63が延出しており、第1の摺動片63の上側の角部が丸く切り欠かれている。
【0026】
第2のリンク65は、金属板をL字形状に打ち抜いて形成され、4節リンク機構の中間リンクとして機能している。第2のリンク65の一端部(
図4の前端部)がシートブラケット51の一方の側板53の先端部に内側から重なっており、第2のリンク65の他端部と側板53の先端部の重なった箇所が第2のジョイント73を介して連結されている。第2のリンク65の他端部(
図4の後端部)が第1のリンク61の他端部(
図4の上端部)に内側から重なっており、第1、第2のリンク61、65の他端部(
図4の上端部)の重なった箇所が第3のジョイント74を介して連結されている。
【0027】
この場合、第2のリンク65の他端部には、第2のリンク65の延在方向に沿って長穴66が形成されている。第2のリンク65の長穴66に対して第1のリンク61に固定された第3のジョイント74がスライド可能に設置されている。このような構成により、第1、第2のリンク61、65が揺動可能かつスライド可能に連結され、第1、第2のリンク61、65がスライドによって連結位置が移動可能になっている。また、第2のリンク65の他端部から上側に第2の摺動片67が延出している。第2の摺動片67の外面から車幅方向外側に制動突起(制動部)68が僅かに突き出している。
【0028】
図6から
図8を参照して、シートの開閉動作について説明する。
図6及び
図7は本実施例のシートの開き動作の遷移図である。
図8は本実施例のシートの揺動規制解除及び閉じ動作の遷移図である。
【0029】
図6(A)に示すように、シート16が閉じられた倒伏姿勢の場合、第1のベースブラケット41に対して第1のリンク61が略直立しており、シートブラケット51と第2のリンク65が後斜め上方に一直線に並んでいる。すなわち、第1のベースブラケット41、シートブラケット51、第1、第2のリンク61、65によって略直角三角形が形成されている。また、第1、第3のジョイント72、74を結ぶ直線L1と第2、第3のジョイント73、74を結ぶ直線L2が鋭角に交差している。第3のジョイント74が第2のリンク65の長穴66の中間に位置している。
【0030】
図6(B)に示すように、倒伏姿勢のシート16が開かれると、第1のベースブラケット41に対してシート回転軸71を支点にしてシートブラケット51が開方向に揺動する。また、第2のリンク65が第2のジョイント73を支点にして後斜め下方に揺動し、第1のリンク61が第1のジョイント72を支点にして前斜め下方に揺動する。第1、第2のリンク61、65が伸展して第1、第2のリンク65の凸状の屈曲角が徐々に大きくなる。第1のベースブラケット41に対してシートブラケット51が直立すると、第2のリンク65が第1のベースブラケット41と平行になると共に第1のリンク61が前傾する。
【0031】
第1、第3のジョイント72、74を結ぶ直線L1と第2、第3のジョイント73、74を結ぶ直線L2が鈍角に交差している。第3のジョイント74が第2のリンク65の長穴66の前縁に移動して中間リンクが短くなる。このような位置関係で、第2の摺動片67の制動突起68を避けるように、第1の摺動片63の角部が丸く切り欠かれている。シートブラケット51の開方向の揺動中に、第1の摺動片63の切欠きの上方を第2の摺動片67の制動突起68がすり抜けて、第2の摺動片67の制動突起68が第1の摺動片63から外れている。第1の摺動片63に制動力が付与されることがなくシート16をスムーズに開くことができる。
【0032】
図6(C)に示すように、さらにシート16が開かれると、シートブラケット51が開方向に揺動するのに伴って、第2のリンク65が後斜め下方に揺動すると共に第1のリンク61が前斜め下方に揺動する。第1、第2のリンク61、65の揺動によって、第1、第2のリンク61、65が最大限に伸展して、第1、第2のリンク61、65が一直線に並んで思案点に至る。このとき、第1、第3のジョイント72、74を結ぶ直線L1と第2、第3のジョイント73、74を結ぶ直線L2の成す角度が180度になり、第1、第2、第3のジョイント72、73、74が一列に並んでいる。
【0033】
図7(A)に示すように、第1、第2のリンク61、65が思案点に至ると、第2のリンク65が後斜め下方に揺動すると共に第1のリンク61が前斜め下方に揺動して第1、第2のリンク65が僅かに凹状に屈曲する。この場合、第1、第2のリンク61、65がスライド可能、すなわち第3のジョイント74が長穴66内で移動可能であるため、シートブラケット51を揺動させずに、第1、第2のリンク61、65が相対的な連結位置を僅かに変えながら自重によって揺動している。第1のリンク61の落ち込みによって山形のシートストッパー62がシートブラケット51に近づけられる。
【0034】
図7(B)に示すように、シート16から手を離すと、シート16が自重によって閉方向に揺動し始める。シート16と一体にシートブラケット51も閉方向に揺動し始め、シートブラケット51の揺動に伴って第1、第2のリンク61、65が下方に揺動して凹状の屈曲が大きくなる。第1、第2のリンク61、65が凹状に屈曲した状態でシートストッパー62にシートブラケット51が突き当たり、シートストッパー62によってシートブラケット51の閉方向への揺動が規制されてシート16が自立姿勢で保持される。このとき、制動突起68が第1のリンク61の上縁に接して第1のリンク61の上方への揺動が規制される。
【0035】
図8(A)に示すように、シート16が自立姿勢から閉じられる操作に移る場合には、一旦、第1のベースブラケット41に対してシート回転軸71を支点にしてシートブラケット51が僅かに開方向に動かされる。シートブラケット51がシートストッパー62から開方向に離れると、シートブラケット51の操作片55によって第1のリンク61が突き上げられる。第1のリンク61が第1のジョイント72を支点にして前斜め上方に揺動し、第2のリンク65が第2のジョイント73を支点にして後斜め上方に揺動する。第1、第2のリンク61、65が凸状に屈曲して、シートブラケット51の閉方向への揺動規制が解除される。
【0036】
このとき、シートブラケット51の開方向への揺動に伴って、第2のリンク65が第1のリンク61に対して前方にスライドして、第3のジョイント74が長穴66の後縁に向かって移動する。第1のリンク61に対する第2のリンク65のスライドによって、第2の摺動片67の制動突起68に第1の摺動片63の角部が当たって作業者に手応えが伝えられる。第1、第2の摺動片63、67は第1、第2のリンク61、65から片持ちで延びているため、第1、第2の摺動片63、67はそれぞれ第1、第2のリンク61、65に対して僅かに車幅方向に撓むように形成されている。
【0037】
図8(B)に示すように、さらに力をかけてシート16が開かれると、第2のリンク65が第1のリンク61に対してさらに前方にスライドして、第3のジョイント74が長穴66の後縁に位置付けられる。第3のジョイント74が長穴66の後縁に当たると、シートブラケット51が第1、第2のリンク61、65に引っ張られて開方向への揺動が止められる。第1の摺動片63が第2の摺動片67の制動突起68に乗り上げて、制動突起68が第1の摺動片63に摩擦接触する。操作片55によって第1のリンク61が下方から支持されると共に、制動突起68の制動力によって第1、第2のリンク61、65の下方への揺動が抑えられている。
【0038】
図8(C)に示すように、第1、第2のリンク61、65が凸状に屈曲した状態で、シート16が閉じられると、シートブラケット51が閉方向に揺動するのに伴って、第2のリンク65が後斜め上方に揺動すると共に第1のリンク61が前斜め上方に揺動する。第1、第2のリンク61、65の屈曲角を小さくしながら、第1のベースブラケット41に対してシートブラケット51が閉方向に揺動される。制動突起68と第1の摺動片63の摩擦接触によって第1、第2のリンク61、65が自重で下方に揺動することがなく、第1、第2のリンク61、65が凸状に屈曲した状態で維持されてスムーズにシート16が閉じられる。
【0039】
そして、
図6(A)に示すように、シート16が倒伏姿勢まで閉じられる。シート16の倒伏姿勢では、第1、第2のリンク61、65が鋭角に屈曲しており、第2の摺動片67の制動突起68が第1の摺動片63から大きく外れている。このため、次にシート16を開く場合には、制動突起68の制動力が第1のリンク61に付与されることがなく、シート16をスムーズに開くことができる。
【0040】
以上、本実施例のシート16の開閉機構40によれば、シート16が開かれると、第1のベースブラケット41に対してシートブラケット51が開方向に揺動される。第1、第2のリンク61、65が伸展されて思案点に至ると、第1、第2のリンク61、65が互いに下方に揺動して凹状に屈曲する。第1、第2のリンク61、65の凹状の屈曲によって第1のリンク61のシートストッパー62にシートブラケット51が突き当たることで、シートブラケット51の閉方向への揺動が規制されてシート16が自立姿勢で保持される。よって、シート16を自立姿勢で保持するために、ガススプリング等の付加部材が不要になり、付加部材等によってロック機構の解除操作が重くなることがない。
【0041】
なお、本実施例においては、第2のリンクの第2の摺動片に制動突起が設けられているが、第1のリンクに制動突起が設けられていてもよいし、第1、第2のリンクの両方に制動突起が設けられていればよい。すなわち、第1、第2のリンクの少なくとも一方に制動突起が設けられていればよい。また、本実施例では、制動部として制動突起を例示したが、制動部は摩擦接触して制動力を付与可能であればどのように形成されていてもよい。
【0042】
また、本実施例においては、ベースブラケットがバッテリに取り付けられているが、ベースブラケットは車体に取り付けられていればよい。例えば、ベースブラケットが車体フレームに取り付けられていてもよい。
【0043】
また、本実施例においては、第2のリンクに長穴が形成されているが、第2のリンクの代わりに第1のリンクに長穴が形成されていてもよい。
【0044】
また、本実施例においては、第1のリンクを前斜め下方に押し下げる揺動力を付与するトーションバネが設けられていてもよいし、第2のリンクを後斜め下方に押し下げる揺動力を付与するトーションバネが設けられていてもよい。
【0045】
また、本実施例においては、鞍乗型車両の車体に開閉可能に連結されるシートの開閉機構について説明したが、本実施例の開閉機構はシート以外にも転用可能である。例えば、第1の部材と第2の部材を開閉可能に連結される開閉機構でもよい。この場合、開閉機構が、第1の部材に取り付けられた固定ブラケットと、第2の部材に取り付けられた可動ブラケットと、固定ブラケットに揺動可能に連結された第1のリンクと、可動ブラケットに揺動可能に連結された第2のリンクと、を備えている。固定ブラケットに可動ブラケットが揺動可能に連結され、第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結されている。可動ブラケットが開方向に揺動して第1、第2のリンクが思案点に至ると、第1、第2のリンクが下方に揺動して凹状に屈曲する。第1のリンクには可動ブラケットの閉方向への揺動を規制するストッパーが形成され、第1、第2のリンクが凹状に屈曲した状態でストッパーに可動ブラケットが突き当る。
【0046】
また、本実施例のシートの開閉装置は上記の鞍乗型車両に限らず、ATV(A11 Terrain Vehicle)や水上バイク等の他の乗り物にも適用可能である。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0047】
以上の通り、第1態様は、鞍乗型車両(1)の車体(バッテリ31)に開閉可能に連結されるシート(16)の開閉機構(40)であって、車体に取り付けられたベースブラケット(第1のベースブラケット41)と、シートに取り付けられたシートブラケット(51)と、ベースブラケットに揺動可能に連結された第1のリンク(61)と、シートブラケットに揺動可能に連結された第2のリンク(65)と、を備え、ベースブラケットにシートブラケットが揺動可能に連結され、第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結され、シートブラケットが開方向に揺動して第1、第2のリンクが思案点に至ると、第1、第2のリンクが下方に揺動して凹状に屈曲し、第1のリンクにはシートブラケットの閉方向への揺動を規制するストッパー(シートストッパー62)が形成され、第1、第2のリンクが凹状に屈曲した状態でストッパーにシートブラケットが突き当っている。この構成によれば、シートが開かれると、ベースブラケットに対してシートブラケットが開方向に揺動される。第1、第2のリンクが伸展されて思案点に至ると、第1、第2のリンクが互いに下方に揺動して凹状に屈曲する。第1、第2のリンクの凹状の屈曲によって第1のリンクのストッパーにシートブラケットが突き当たることで、シートブラケットの閉方向への揺動が規制されてシートが自立姿勢で保持される。よって、シートを自立姿勢で保持するために、ガススプリング等の付加部材が不要になり、付加部材等によってロック機構の解除操作が重くなることがない。
【0048】
第2態様は、第1態様において、シートブラケットには、シートブラケットがストッパーから開方向に離れた場合に、第1のリンクを突き上げる操作部(操作片55)が形成されている。この構成によれば、シートが自立姿勢からさらに開かれると、シートブラケットの操作部によって第1のリンクが突き上げられて第1、第2のリンクが凸状に屈曲する。第1、第2のリンクの凸状の屈曲によってシートブラケットとストッパーが離され、シートブラケットの閉方向への揺動規制が解除される。
【0049】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、第1、第2のリンクの少なくとも一方には、シートブラケットの閉方向の揺動中に、第1、第2のリンクの少なくとも他方に摩擦接触する制動部(制動突起68)が設けられている。この構成によれば、シートを閉じる場合に第1、第2のリンクが凸状に屈曲するが、第1、第2のリンクが摩擦接触しているため下方に揺動して凹状に屈曲することがない。第1、第2のリンクの凸状の屈曲が維持されてスムーズにシートを閉じることができる。
【0050】
第4態様は、第3態様において、制動部は、シートブラケットの開方向の揺動中に第1、第2のリンクの少なくとも他方から外れている。この構成によれば、シートを開く場合には第1、第2のリンクの少なくとも他方に制動力が付与されることがなくシートをスムーズに開くことができる。
【0051】
第5態様は、第1の部材と第2の部材を開閉可能に連結される開閉機構であって、第1の部材に取り付けられた固定ブラケットと、第2の部材に取り付けられた可動ブラケットと、固定ブラケットに揺動可能に連結された第1のリンクと、可動ブラケットに揺動可能に連結された第2のリンクと、を備え、固定ブラケットに可動ブラケットが揺動可能に連結され、第1、第2のリンクが揺動可能かつスライド可能に連結され、可動ブラケットが開方向に揺動して第1、第2のリンクが思案点に至ると、第1、第2のリンクが下方に揺動して凹状に屈曲し、第1のリンクには可動ブラケットの閉方向への揺動を規制するストッパーが形成され、第1、第2のリンクが凹状に屈曲した状態でストッパーに可動ブラケットが突き当っている。この構成によれば、第2の部材が開かれると、固定ブラケットに対して可動ブラケットが開方向に揺動される。第1、第2のリンクが伸展されて思案点に至ると、第1、第2のリンクが互いに下方に揺動して凹状に屈曲する。第1、第2のリンクの凹状の屈曲によって第1のリンクのストッパーに可動ブラケットが突き当たることで、可動ブラケットの閉方向への揺動が規制されて第2の部材が自立姿勢で保持される。よって、第2の部材を自立姿勢で保持するために、ガススプリング等の付加部材が不要になり、付加部材等によってロック機構の解除操作が重くなることがない。
【0052】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0053】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。