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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098522
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】回転電機駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20250625BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214713
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】天野 覚
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE06
5E087GG12
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM08
5E087MM15
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR18
5E087RR49
(57)【要約】
【課題】沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することが可能な回転電機駆動装置を提供する。
【解決手段】この回転電機駆動装置100は、回転電機1と、インバータ2と、貫通孔34が形成されたハウジング3と、導体部材7とを備える。回転電機駆動装置100は、導体部材7が挿入される導体挿入孔92を有し、導体挿入孔92と導体部材7との間をシールするように貫通孔34に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材9を備える。筒状弾性部材9は、導体部材7の延びる方向の断面において、導体挿入孔92に挿入された導体部材7に接触するとともに導体部材7から露出する露出位置Pe1からハウジング3との接触位置Pc1までの筒状弾性部材9の表面に沿った経路Rce1に設けられ、沿面距離を延長させるための凹状の空間(96c、2731a)により設けられた沿面距離延長部(96a、96b)を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生させる回転電機と、
前記回転電機に電力を供給するインバータと、
内部に前記回転電機を収容するとともに、前記回転電機側から前記インバータ側に向かって貫通する貫通孔が形成されたハウジングと、
前記回転電機と前記インバータとを接続するための導体部材と、
前記導体部材が挿入される導体挿入孔を有し、前記導体挿入孔と前記導体部材との間をシールするように前記貫通孔に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材とを備え、
前記筒状弾性部材は、前記導体部材の延びる方向の断面において、前記導体挿入孔に挿入された前記導体部材に接触するとともに前記導体部材から露出する露出位置から前記ハウジングとの接触位置までの前記筒状弾性部材の表面に沿った経路に設けられ、沿面距離を延長させるための凹状の空間により設けられた沿面距離延長部を含む、回転電機駆動装置。
【請求項2】
前記筒状弾性部材の前記沿面距離延長部は、前記導体部材の延びる方向において、前記導体部材のうち、前記筒状弾性部材の前記導体挿入孔の内周面に対向する部分の端部分を他の部分よりも縮小させること、または、前記筒状弾性部材の端部分に溝を設けることにより設けられた前記凹状の空間によって設けられている、請求項1に記載の回転電機駆動装置。
【請求項3】
前記筒状弾性部材は、前記筒状弾性部材の外周面から前記ハウジングの前記貫通孔の内周面に向けて外側に突出する外側突出部をさらに含み、
前記筒状弾性部材の端部分の前記溝は、前記導体部材の延びる方向に直交する方向において、前記外側突出部とオーバーラップしない位置に、前記筒状弾性部材の端部分の表面から前記外側突出部に向かって窪んで形成されている、請求項2に記載の回転電機駆動装置。
【請求項4】
前記導体部材は、円柱形状に形成された円柱形状部を含み、
前記筒状弾性部材の端部分の前記溝は、前記円柱形状部の中心軸線回りの周方向に沿って、前記筒状弾性部材の端部分の表面のうちの外周面または端面の少なくともいずれかに円環状に形成されている、請求項2に記載の回転電機駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、車両の負荷(回転電機)を駆動させるための電力を供給する車両用電力供給構造が開示されている。この車両用電力供給構造は、電力分配回路と、電力分配回路を収容する箱本体と、接続用ブスバーと、グロメットとを備えている。電力分配回路は、車両の負荷に対して供給する電力を分配するための回路である。接続用ブスバーは、車両の負荷と電力分配回路とを接続するための導体部材である。
【0004】
上記特許文献1のグロメットは、接続用ブスバーを内部に挿入した状態で、箱本体の取付孔に取り付けられている。グロメットは、一対の挟持部を含んでいる。一対の挟持部は、箱本体の取付孔の縁付近を挟持することにより、グロメットを取付孔に取り付けるための部材である。一対の挟持部の各々は、他の部分よりも大きい拡大部である。挟持部は、グロメットの両端部の各々に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-257645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の車両用電力供給構造では、グロメットの内部に挿入された状態の接続用ブスバーと箱本体とを絶縁するための沿面距離を、グロメットの挟持部を他の部分よりも大きく形成することにより確保している。沿面距離は、接続用ブスバーおよび箱本体などの導体同士の距離のうち、導体同士の間に配置されたグロメットなどの絶縁体の表面に沿った最短距離を示している。ここで、沿面距離を確保するためにグロメットを大型化させた場合、グロメット以外の他の部品との干渉を回避するために、グロメットおよび他の部品を配置するより大きな配置スペースが必要となるので、装置が大型化する。このように、上記特許文献1の車両用電力供給構造では、沿面距離を確保するために、グロメット(筒状弾性部材)を大型化したことに起因して装置が大型化するという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することが可能な回転電機駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における回転電機駆動装置は、駆動力を発生させる回転電機と、回転電機に電力を供給するインバータと、内部に回転電機を収容するとともに、回転電機側からインバータ側に向かって貫通する貫通孔が形成されたハウジングと、回転電機とインバータとを接続するための導体部材と、導体部材が挿入される導体挿入孔を有し、導体挿入孔と導体部材との間をシールするように貫通孔に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材とを備え、筒状弾性部材は、導体部材の延びる方向の断面において、導体挿入孔に挿入された導体部材に接触するとともに導体部材から露出する露出位置からハウジングとの接触位置までの筒状弾性部材の表面に沿った経路に設けられ、沿面距離を延長させるための凹状の空間により設けられた沿面距離延長部を含む。
【0009】
この発明の一の局面における回転電機駆動装置では、上記のように、筒状弾性部材に、導体部材の延びる方向の断面において、導体挿入孔に挿入された導体部材に接触するとともに導体部材から露出する露出位置からハウジングとの接触位置までの筒状弾性部材の表面に沿った経路に設けられ、沿面距離を延長させるための凹状の空間により設けられた沿面距離延長部を設ける。これにより、沿面距離延長部により、筒状弾性部材の露出位置から接触位置までの部分を大きく形成することなく、沿面距離を延長させて沿面距離を確保することができる。その結果、沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による回転電機駆動装置において、好ましくは、筒状弾性部材の沿面距離延長部は、導体部材の延びる方向において、導体部材のうち、筒状弾性部材の導体挿入孔の内周面に対向する部分の端部分を他の部分よりも縮小させること、または、筒状弾性部材の端部分に溝により設けられた凹状の空間によって設けられている。
【0011】
このように構成すれば、導体部材のうち、筒状弾性部材の導体挿入孔の内周面に対向する部分の端部分を他の部分よりも縮小させることにより、筒状弾性部材の露出位置を筒状弾性部材の導体挿入孔の深い位置に配置することができる。このため、筒状弾性部材の導体挿入孔の内周面において、筒状弾性部材の導体挿入孔の縁から露出位置までの長さの分だけ沿面距離を延長することができる。また、筒状弾性部材の端部分に溝を設けることにより、溝の溝深さの分だけ沿面距離を延長することができる。これらにより、筒状弾性部材の端部分を大きく形成することなく、導体部材の端部分を他の部分よりも縮小させること、または、筒状弾性部材の端部分の溝により、沿面距離を延長することができるので、沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、筒状弾性部材は、筒状弾性部材の外周面からハウジングの貫通孔の内周面に向けて外側に突出する外側突出部をさらに含み、筒状弾性部材の端部分の溝は、導体部材の延びる方向に直交する方向において、外側突出部とオーバーラップしない位置に、筒状弾性部材の端部分の表面から外側突出部に向かって窪んで形成されている。
【0013】
このように構成すれば、外側突出部の位置までの溝深さを有する溝を形成することができるので、比較的溝深さの大きい溝を形成することができる。その結果、大きな沿面距離を必要とする製品に合わせて溝深さを設定することにより、小さな沿面距離を必要とする製品などの他の製品にも同じ筒状弾性部材を適用することができるので、筒状弾性部材を汎用的に適用することができる。ここで、導体部材の延びる方向に直交する方向において、外側突出部とがオーバーラップする位置までの溝深さを有する溝を形成した場合、溝の分だけ外側突出部を設けた部分の筒状弾性部材の厚みが小さくなるので、筒状弾性部材の厚みが小さくなった分だけ外側突出部の弾性力が低下する。しかしながら、導体部材の延びる方向に直交する方向において、筒状弾性部材の端部分の溝と外側突出部とをオーバーラップさせないことにより、外側突出部の弾性力を低下させないようにすることができるので、外側突出部をハウジングの貫通孔の内周面に密着させることによるシール性の低下を抑制することができる。
【0014】
上記筒状弾性部材の沿面距離延長部が、導体部材の延びる方向において、筒状弾性部材の端部分に設けた溝を含む回転電機駆動装置において、好ましくは、導体部材は、円柱形状に形成された円柱形状部を含み、筒状弾性部材の端部分の溝は、円柱形状部の中心軸線回りの周方向に沿って、筒状弾性部材の端部分の表面のうちの外周面または端面の少なくともいずれかに円環状に形成されている。
【0015】
このように構成すれば、円柱形状に形成された円柱形状部に合わせて溝を円環状に形成することにより、筒状弾性部材における円柱形状部からの露出位置から接触位置までの沿面距離が等しくなるので、沿面距離が等しくなる構造を容易に実現することができる。また、円柱形状に形成された円柱形状部、および、円環状の溝を形成した筒状弾性部材により、円柱形状部に対する筒状弾性部材の周方向の相対的な位置合せを行う必要がないので、導体部材の筒状弾性部材への組み付けを容易に行うことができる。
【0016】
なお、上記一の局面における回転電機駆動装置において、以下のような構成も考えられる。
【0017】
(付記項1)
上記円環状に形成された溝を有する回転電機駆動装置において、筒状弾性部材は、筒状弾性部材の端部分の端面に溝が設けられたゴム部材である。
【0018】
ここで、筒状弾性部材は、材料となるゴムに圧力を付与して溶融させた液体状のゴムを成形型に流し込むことにより成形される。このため、溝に対応する凸部分を形成した成形型に対して、上記圧力よりも大きな圧力を付与してより流動性を有する液体状のゴムを流し込むことにより、溝に対応する部分を切削などの加工を行わずに成形型により一体的に成形することができる。その結果、溝を形成した筒状弾性部材を容易に形成することができる。また、筒状弾性部材の端部分の端面に溝を設けることにより、成形型から筒状弾性部材を取り出す際に成形型を分割する分割面の設定の複雑化を抑制することができる。
【0019】
(付記項2)
上記一の局面による回転電機駆動装置において、回転電機は、車両に用いられる三相交流モータであり、導体部材は、三相の交流電力を三相交流モータに供給するため3つ配置されており、筒状弾性部材は、3つの導体部材の各々に設けられている。
【0020】
このように構成すれば、3つの導体部材の各々において、大型化を抑制した筒状弾性部材が取り付けられているので、装置の大型化をより抑制することができる。
【0021】
(付記項3)
上記筒状弾性部材の沿面距離延長部が、導体部材の延びる方向において、筒状弾性部材の端部分に設けた溝を含む回転電機駆動装置において、好ましくは、筒状弾性部材は、導体部材の延びる方向において筒状弾性部材の一方側の端部分に設けられ、貫通孔の縁に係合する抜け止め部をさらに含み、溝は、筒状弾性部材の他方側の端部分に設けられている。
【0022】
このように構成すれば、筒状弾性部材の一方側の端部分の沿面距離は、貫通孔よりも大きな抜け止め部により確保することができるので、筒状弾性部材の一方側および他方側の各々の端部分に溝を設ける場合と比較して、筒状弾性部材の構造の変更箇所の増大を抑制することができる。その結果、筒状弾性部材を成形型により成形する場合、成形型の変更箇所の増大を抑制することができるので、沿面距離を確保するための溝を形成した筒状弾性部材を比較的容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記のように、沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態のモータ駆動装置を示した模式図である。
図2】本実施形態のモータ駆動装置の貫通孔に取り付けられた柱状導体部材および筒状弾性部材を示した断面図である。
図3】本実施形態のモータ駆動装置の筒状弾性部材の斜視図である。
図4】本実施形態のモータ駆動装置の貫通孔に取り付けられた筒状弾性部材の溝部の第1沿面距離を示した断面図である。
図5】本実施形態のモータ駆動装置の筒状弾性部材の底面図である。
図6】本実施形態のモータ駆動装置の貫通孔に取り付けられた筒状弾性部材の抜け止め部の第2沿面距離を示した断面図である。
図7】本実施形態の第1変形例のモータ駆動装置の貫通孔に取り付けられた柱状導体部材および筒状弾性部材を示した断面図である。
図8】本実施形態の第2変形例のモータ駆動装置の貫通孔に取り付けられた筒状弾性部材の溝部の沿面距離を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1図6を参照して、実施形態によるモータ駆動装置100の構成について説明する。なお、モータ駆動装置100は、特許請求の範囲の「回転電機駆動装置」の一例である。
【0027】
図1に示すように、モータ駆動装置100は、電気自動車などの車両に搭載される駆動用のモータユニットとして用いられることが想定されている。モータ駆動装置100は、モータ1と、インバータ2と、ハウジング3と、モータ用配線4と、インバータ用導体部材5と、締結部材6と、柱状導体部材7と、被覆部材8と、筒状弾性部材9とを備えている。なお、モータ1は、特許請求の範囲の「回転電機」の一例である。また、柱状導体部材7は、特許請求の範囲の「導体部材」の一例である。
【0028】
モータ1は、車両に用いられる三相交流モータである。モータ1は、駆動輪を動かすための駆動力を発生させるように構成されている。インバータ2は、モータ1に電力を供給するように構成されている。すなわち、インバータ2は、図示しないリチウムイオンバッテリから供給された直流電力を交流電力に変換するように構成されている。これにより、モータ1にU相、V相およびW相の交流電力が供給される。
【0029】
ハウジング3は、モータ1およびインバータ2などを収容する金属製の筐体である。ハウジング3は、モータ室31と、インバータ室32と、隔壁33と、貫通孔34とを含んでいる。
【0030】
ここで、モータ室31とインバータ室32とが並ぶ方向をZ方向とし、Z方向のうちインバータ室32側をZ1方向とし、Z方向のうちモータ室31側をZ2方向とする。なお、一例として、Z方向は上下方向であり、Z1方向は上方向であり、Z2方向は下方向である。また、Z方向は、特許請求の範囲の「導体部材の延びる方向」の一例である。
【0031】
モータ室31は、ハウジング3内に設けられた空間である。モータ室31の内部には、モータ1が収容されている。モータ室31の内部には、収容したモータ1の発熱部位を冷却するオイルFrが貯留されている。オイルFrは、オートマチックフルードなどの低粘度のオイルである。
【0032】
インバータ室32は、ハウジング3内に設けられた空間である。インバータ室32は、モータ室31とZ方向において隣り合っている。インバータ室32の内部には、インバータ2が収容されている。インバータ室32の内部には、オイルFrが貯留されていない。隔壁33は、モータ室31とインバータ室32とを隔てる壁である。隔壁33は、Z方向に直交する方向に沿って延びている。
【0033】
貫通孔34は、モータ1側からモータ室31外のインバータ2側に向かって貫通している。すなわち、貫通孔34は、Z方向に沿って隔壁33を貫通して形成されている。貫通孔34には、内部に柱状導体部材7を密着して保持した筒状弾性部材9が取り付けられている。貫通孔34は、複数の筒状弾性部材9のそれぞれに対応して、隔壁33(ハウジング3)に複数(3つ)形成されている。
【0034】
モータ用配線4は、モータ1とインバータ2とを接続するための、多数の金属線(銅線など)を絶縁体で被膜した絶縁電線である。モータ用配線4は、モータ室31の内部でモータ1と柱状導体部材7とを接続している。モータ用配線4は、U相、V相およびW相の三相の交流電力をモータ1に供給するため、U相、V相およびW相の三相の交流電力に合わせて複数(3本)設けられている。
【0035】
(インバータ用導体部材)
図1に示すように、インバータ用導体部材5は、インバータ室32の内部で柱状導体部材7とインバータ用導体部材5とを接続している。インバータ用導体部材5は、U相、V相およびW相の三相の交流電力をモータ1に供給するため、U相、V相およびW相の三相の交流電力に合わせて複数(3本)設けられている。複数のインバータ用導体部材5の各々は、同様の形状を有しているので、複数のインバータ用導体部材5のうちの1つについて説明する。
【0036】
具体的には、図2に示すように、インバータ用導体部材5は、導体本体部51と、リング状部材52とを含んでいる。導体本体部51は、インバータ2から柱状導体部材7に向かって延びるバスバーである。リング状部材52は、導体本体部51の柱状導体部材7側の端部におけるZ2方向側(モータ室31側)の面に取り付けられている。リング状部材52は、銅などの金属により形成されている。リング状部材52のZ方向に直交する方向の中心側には、柱状導体部材7のインバータ2側の先端部分72a(後述するインバータ接続部72の先端側の部分)が挿入される先端部分挿入孔52aが形成されている。
【0037】
(締結部材)
締結部材6は、柱状導体部材7とインバータ2(図1を参照)とを接続するための部材である。締結部材6は、柱状導体部材7に形成されためねじ部74に螺合するボルトなどである。これにより、締結部材6の頭部と柱状導体部材7の先端部分72aとにより導体本体部51が挟持されるので、インバータ用導体部材5と柱状導体部材7とが互いに電気的に接続される。
【0038】
(柱状導体部材)
図2に示すように、柱状導体部材7は、モータ1とインバータ2とを接続する中実柱状の導体である。柱状導体部材7は、導体として銅などの金属により形成されている。柱状導体部材7は、U相、V相およびW相の三相の交流電力をモータ1に供給するため、U相、V相およびW相の三相の交流電力に合わせて複数(3本)設けられている。複数の柱状導体部材7の各々は、同様の形状を有しているので、複数の柱状導体部材7のうちの1つについて説明する。
【0039】
具体的には、柱状導体部材7は、円柱形状部71と、インバータ接続部72と、配線接続部73と、めねじ部74とを含んでいる。柱状導体部材7は、円柱形状部71、インバータ接続部72および配線接続部73を一体的に構成した部材である。
【0040】
円柱形状部71は、柱状導体部材7を筒状弾性部材9内に配置した状態で、筒状弾性部材9の導体挿入孔92の内周面と密着する部分である。円柱形状部71は、Z1方向側から視て、導体挿入孔92の形状に合うように、円柱形状に形成されている。
【0041】
インバータ接続部72は、柱状導体部材7を筒状弾性部材9内に配置した状態で、インバータ用導体部材5に電気的に接続される部分である。インバータ接続部72は、円柱形状部71のZ1方向側の部分である。先端部分72aは、インバータ接続部72のZ1方向側の先端部分である。先端部分72aは、柱状導体部材7を筒状弾性部材9内に配置した状態で、リング状部材52にZ2方向側から当接している。これにより、インバータ接続部72とインバータ用導体部材5とが電気的に接続される。
【0042】
配線接続部73は、モータ用配線4の柱状導体部材7側の他端部を接続している。配線接続部73は、薄い平板形状を有している。配線接続部73は、モータ用配線4の柱状導体部材7側の他端部と溶融凝固されることにより接合される溶融凝固部73aを有している。これにより、配線接続部73とモータ用配線4とが接合されるので、配線接続部73とモータ用配線4とが電気的に接続される。
【0043】
めねじ部74は、導体本体部51の雄ねじ挿入孔51aから挿入された締結部材6の雄ねじ部分が締結される部分である。
【0044】
(被覆部材)
被覆部材8は、溶融凝固部73aを被覆する樹脂製の熱収縮チューブにより構成されている。具体的には、被覆部材8は、Z方向に直交する方向において、配線接続部73およびモータ用配線4の柱状導体部材7側の他端部とを外側から覆っている。
【0045】
(筒状弾性部材)
図2に示すように、筒状弾性部材9は、柱状導体部材7と貫通孔34の内周面との間の油密性および絶縁性を確保するように設けられている。筒状弾性部材9は、複数(3本)の柱状導体部材7の各々に設けられている。複数の筒状弾性部材9の各々は、同様の形状を有しているので、複数の筒状弾性部材9のうちの1つについて説明する。
【0046】
すなわち、筒状弾性部材9は、貫通孔34と柱状導体部材7との間、および、後述する導体挿入孔92と柱状導体部材7との間の各々をシールするように、貫通孔34に取り付けられた弾性変形可能な部材である。筒状弾性部材9は、グロメットである。筒状弾性部材9は、比較的高温になる箇所に用いられるため耐熱性を有している。筒状弾性部材9は、モータ室31内のオイルFrに対して油密性を確保するため耐油性を有している。筒状弾性部材9は、アクリルゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、または、シリコンゴムなどのゴム材料により形成されている。
【0047】
筒状弾性部材9は、本体部91と、導体挿入孔92と、内側突出部93と、外側突出部94と、抜け止め部95と、溝96とを含んでいる。
【0048】
本体部91は、Z方向に沿って延びる筒状の部分である。本体部91は、Z方向に直交する方向において柱状導体部材7に向かって突出する突出部91aを有している。突出部91aは、柱状導体部材7のZ方向において位置決めする部分である。導体挿入孔92は、柱状導体部材7が挿入される孔である。導体挿入孔92は、本体部91をZ方向に貫通している。導体挿入孔92は、Z方向に直交する方向において、柱状導体部材7の直径よりも若干小さい直径を有している。導体挿入孔92は、Z1方向側から視て、後述する円柱形状部71に合わせた円形状を有している(図3参照)。導体挿入孔92は、Z2方向側から視て、本体部91の中央部分に配置されている。
【0049】
内側突出部93および外側突出部94は、柱状導体部材7とハウジング3の隔壁33とに挟持されて圧縮されることで生じる弾性力を用いて、それぞれ、柱状導体部材7および導体挿入孔92の内周面に密着するように構成されている。
【0050】
内側突出部93は、導体挿入孔92の内周面に一体的に設けられている。内側突出部93は、Z方向に直交する方向において、導体挿入孔92の内周面から柱状導体部材7に向かって内側に突出した円周状の部分である。内側突出部93は、Z方向において、複数(3つ)並んで配置されている。なお、内側突出部93は、1つ、2つ、または、4つ以上配置されてもよい。
【0051】
外側突出部94は、本体部91の外周面における貫通孔34の内周面に対向する部分に設けられている。外側突出部94は、Z方向に直交する方向において、本体部91の外周面から貫通孔34の内周面に向かって外側に突出した円周状の部分である(図3参照)。外側突出部94は、Z方向において、複数(3つ)並んで配置されている。なお、外側突出部94は、1つ、2つ、または、4つ以上配置されてもよい。
【0052】
抜け止め部95は、貫通孔34からの筒状弾性部材9の抜け防止のために、Z方向のインバータ室32側の部分に設けられている。抜け止め部95は、貫通孔34のインバータ室32側の縁に係合している。抜け止め部95は、本体部91と一体的に設けられている。抜け止め部95は、Z方向に直交する方向において、本体部91よりも大きい拡大部である。抜け止め部95は、Z方向に直交する方向において、本体部91の外周面から向かって突出した円周状の部分である(図3参照)。
【0053】
(溝)
図4に示すように、溝96は、筒状弾性部材9のZ2方向側の端部分91bに設けられている。端部分91bとは、筒状弾性部材9の端と、筒状弾性部材9の端の近傍の部分とを含んでいる。筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、円柱形状部71の中心軸線C回りのR方向(周方向)に沿って、筒状弾性部材9の端部分91bの表面のうちの端面911bに円環状に形成されている(図5参照)。筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、中心軸線Cに直交するDo方向(径方向のうちの外側方向)において、円柱形状部71を囲むように設けられている(図5参照)。なお、図5では、説明の便宜上、円柱形状部71を導体挿入孔92よりも若干小さく二点鎖線で記載している。
【0054】
図4に示すように、筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、Do方向において、外側突出部94とオーバーラップしない位置に、筒状弾性部材9の端部分91bの端面911bからZ1方向に向かって(外側突出部94に向かって)窪んで形成されている。具体的には、溝96は、外側突出部94よりもZ2方向側の、隔壁33のZ2方向側の面33aと端面911bとの間の位置までZ1方向に向かって窪んでいる。筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、Do方向において、隔壁33とオーバーラップしない位置にも設けられている。
【0055】
このように、筒状弾性部材9は、筒状弾性部材9の端部分91bの端面911bに溝96が設けられたゴム部材である。
【0056】
〈第1沿面距離〉
図4に示すように、筒状弾性部材9は、柱状導体部材7とハウジング3との間の第1沿面距離を確保するように設けられている。すなわち、本実施形態の筒状弾性部材9では、Z方向に沿った断面において、露出位置Pe1から接触位置Pc1までの筒状弾性部材9の表面に沿った経路Rce1に設けられた溝96により、第1沿面距離が確保されている。なお、図4では、説明の便宜上、露出位置Pe1および接触位置Pc1の各々を筒状弾性部材9の端部分91bの表面から離れた位置に記載している。
【0057】
第1沿面距離は、柱状導体部材7とハウジング3とを絶縁するための距離である。すなわち、第1沿面距離は、柱状導体部材7とハウジング3との導体同士の距離のうち、導体同士の間に配置された筒状弾性部材9の端部分91bという絶縁体の表面に沿った最短距離を示している。ここで、第1沿面距離は、経路Rce1の長さである。露出位置Pe1は、導体挿入孔92に挿入された柱状導体部材7に接触するとともに柱状導体部材7から露出した筒状弾性部材9の位置である。接触位置Pc1は、筒状弾性部材9とハウジング3(隔壁33のZ2方向側の面33a)とが接触する位置である。
【0058】
経路Rce1には、溝96により筒状弾性部材9の端部分91bに頂部96aおよび谷底部96bが設けられている。これにより、筒状弾性部材9の第1沿面距離は、頂部96aから谷底部96bまでの溝深さDeの分だけ、溝を設けない場合の筒状弾性部材の沿面距離である経路Rc1の距離よりも大きくなる。このように、頂部96aおよび谷底部96bにより、経路Rce1が経路Rc1に対して延長されているので、沿面距離が延長されている。この頂部96aおよび谷底部96bにより、筒状弾性部材9では、他の部分よりも大きく形成された拡大部を設けることなく、沿面距離が延長されている。なお、頂部96aおよび谷底部96bは、特許請求の範囲の「沿面距離延長部」の一例である。
【0059】
このような頂部96aおよび谷底部96bは、露出位置Pe1から接触位置Pc1までの筒状弾性部材9の表面に沿った経路Rce1に設けられている。頂部96aおよび谷底部96bは、筒状弾性部材9のZ2方向側の端部分91bに溝96を設けることにより設けられている。頂部96aおよび谷底部96bは、溝96の内側の凹状の空間96cにより設けられている。凹状の空間96cは、沿面距離を延長させるために設けられている。
【0060】
このような経路Rce1は、露出位置Pe1からDo方向に沿って延びる経路を有している。経路Rce1は、溝96の内側の頂部96aから谷底部96bに延びる延長経路Re1を有している。経路Rce1は、谷底部96bの内側の端部から谷底部96bの外側の端部に延びる延長経路Re2を有している。経路Rce1は、谷底部96bの外側の端部から溝96の外側の頂部96aに延びる延長経路Re3を有している。経路Rce1は、溝96の外側の頂部96aから接触位置Pc1に延びる経路を有している。経路Rce1の距離は、延長経路Re1の距離(溝深さDe)および延長経路Re3の距離(溝深さDe)の分だけ、経路Rc1の距離よりも大きくなる。
【0061】
〈第2沿面距離〉
図6に示すように、筒状弾性部材9は、柱状導体部材7とハウジング3との間の第2沿面距離を確保するように設けられている。すなわち、筒状弾性部材9では、Z方向に沿った断面において、露出位置Pe2から接触位置Pc2までの筒状弾性部材9の抜け止め部95の表面に沿った経路Rce2により、第2沿面距離が確保されている。なお、図6では、説明の便宜上、露出位置Pe2および接触位置Pc2の各々を筒状弾性部材9の端部分91bの表面から離れた位置に記載している。
【0062】
第2沿面距離は、柱状導体部材7とハウジング3とを絶縁するための距離である。すなわち、第2沿面距離は、柱状導体部材7とハウジング3との導体同士の距離のうち、導体同士の間に配置された筒状弾性部材9の抜け止め部95という絶縁体の表面に沿った最短距離を示している。ここで、第2沿面距離は、経路Rce2の長さである。露出位置Pe2は、導体挿入孔92に挿入された柱状導体部材7に接触するとともに柱状導体部材7から露出した筒状弾性部材9の位置である。接触位置Pc2は、筒状弾性部材9とハウジング3(隔壁33のZ2方向側の面33b)との接触する位置である。
【0063】
筒状弾性部材9の第2沿面距離は、抜け止め部95の高さHと、抜け止め部95の厚みThとを合わせた距離である。このような第2沿面距離である経路Rce2は、露出位置Pe1からDo方向に沿って延びる経路を有している。経路Rce2は、抜け止め部95のDo方向側の外縁から接触位置Pc2に延びる経路を有している。
【0064】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材9は、Z方向の断面において、導体挿入孔92に挿入された柱状導体部材7に接触するとともに柱状導体部材7から露出する露出位置Pe1からハウジング3との接触位置Pc1までの筒状弾性部材9の表面に沿った経路Rce1に設けられ、沿面距離を延長させるための凹状の空間96cにより頂部96aおよび谷底部96b(沿面距離延長部)を設ける。これにより、頂部96aおよび谷底部96b(沿面距離延長部)により、筒状弾性部材9の露出位置Pe1から接触位置Pc1までの部分を大きく形成することなく、沿面距離を延長させて沿面距離を確保することができる。この結果、沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材9の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材9の頂部96aおよび谷底部96b(沿面距離延長部)は、Z方向において、筒状弾性部材9の端部分91bに溝96により設けられた凹状の空間96cによって設けられている。これにより、筒状弾性部材9の端部分91bに溝96を設けることにより、溝96の溝深さDeの分だけ沿面距離を延長することができる。この結果、筒状弾性部材9の端部分91bを大きく形成することなく、筒状弾性部材9の端部分91bの溝96により、沿面距離を延長することができるので、沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材9の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材9は、筒状弾性部材9の外周面からハウジング3の貫通孔34の内周面に向けてDo方向側(径方向の外側)に突出する外側突出部94を含んでいる。筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、Z方向に直交する方向において、外側突出部94とオーバーラップしない位置に、筒状弾性部材9の端部分91bの表面から外側突出部94に向かって窪んで形成されている。これにより、外側突出部94の位置までの溝深さDeを有する溝96を形成することができるので、比較的溝深さDeの大きい溝96を形成することができる。この結果、大きな沿面距離を必要とする製品に合わせて溝深さDeを設定することにより、小さな沿面距離を必要とする製品などの他の製品にも同じ筒状弾性部材9を適用することができるので、筒状弾性部材9を汎用的に適用することができる。ここで、Z方向に直交する方向において、外側突出部とがオーバーラップする位置までの溝深さを有する溝を形成した場合、溝の分だけ外側突出部を設けた部分の筒状弾性部材の厚みが小さくなるので、筒状弾性部材の厚みが小さくなった分だけ外側突出部の弾性力が低下する。しかしながら、Z方向に直交する方向において、筒状弾性部材9の端部分91bの溝96と外側突出部94とをオーバーラップさせないことにより、外側突出部94の弾性力を低下させないようにすることができるので、外側突出部94をハウジング3の貫通孔34の内周面に密着させることによるシール性の低下を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、柱状導体部材7は、円柱形状に形成された円柱形状部71を含んでいる。筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、円柱形状部71の中心軸線C回りのR方向(周方向)に沿って、筒状弾性部材9の端部分91bの表面のうちの端面911bに円環状に形成されている。これにより、円柱形状に形成された円柱形状部71に合わせて溝96を円環状に形成することにより、筒状弾性部材9における円柱形状部71からの露出位置Pe1から接触位置Pc1までの沿面距離が等しくなるので、沿面距離が等しくなる構造を容易に実現することができる。また、円柱形状に形成された円柱形状部71、および、円環状の溝96を形成した筒状弾性部材9により、円柱形状部71に対する筒状弾性部材9のR方向(周方向)の相対的な位置合せを行う必要がないので、柱状導体部材7の筒状弾性部材9への組み付けを容易に行うことができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材9は、筒状弾性部材9の端部分91bの端面911bに溝96が設けられたゴム部材である。ここで、筒状弾性部材9は、材料となるゴムに圧力を付与して溶融させた液体状のゴムを成形型に流し込むことにより成形される。このため、溝96に対応する凸部分を形成した成形型に対して、上記圧力よりも大きな圧力を付与してより流動性を有する液体状のゴムを流し込むことにより、溝96に対応する部分を切削などの加工を行わずに成形型により成形することができる。この結果、溝96を形成した筒状弾性部材9を容易に成型することができる。また、筒状弾性部材9の端部分91bの端面911bに溝96を設けることにより、成形型から筒状弾性部材9を取り出す際に成形型を分割する分割面の設定の複雑化を抑制することができるので、成形型から筒状弾性部材9を容易に取り出すことができる。
【0070】
[変形例]
今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、モータ駆動装置100(回転電機駆動装置)は、電気自動車などの車両に搭載される駆動用のモータユニットである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転電機駆動装置は、電気自動車などの車両に搭載されるトランスファ用のモータユニットであってもよい。また、回転電機駆動装置は、ジェネレータなどに用いられてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、頂部96aおよび谷底部96b(沿面距離延長部)により、経路Rce1が、経路Rc1に対して延長されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図7に示す第1変形例のように、筒状弾性部材9の端部分291bにおける頂部2911bおよび谷底部2912b(沿面距離延長部)により、経路Rce201が、経路Rc201に対して延長されてもよい。筒状弾性部材9の沿面距離は、頂部2911bから谷底部2912bまでの溝深さの分だけ、溝を設けない場合の筒状弾性部材の沿面距離である経路Rc201の距離よりも大きくなる。すなわち、経路Rce201は、筒状弾性部材9の端部分291bの谷底部2912bの深さ位置である露出位置Pe1から頂部2911bに延びる延長経路Re201を有している。経路Rce201の距離は、延長経路Re201の分だけ、経路Rc201の距離よりも大きくなる。なお、図7では、説明の便宜上、露出位置Pe1および接触位置Pc1の各々を筒状弾性部材9の端部分91bの表面から離れた位置に記載している。
【0073】
このような頂部2911bおよび谷底部2912bは、柱状導体部材207のうち、筒状弾性部材9の導体挿入孔92の内周面に対向する部分の端部分291bを他の部分よりも縮小させることにより設けられた凹状の空間2731aによって設けられている。具体的には、柱状導体部材207のZ2方向側の端部には、他の部分よりも縮小させた縮小部273aが設けられている。すなわち、上記実施形態では、円柱形状部71のZ2方向側の端面と、筒状弾性部材9のZ2方向側の端面とが同一平面上に配置されているが、図7に示す第1変形例では、円柱形状部71のZ2方向側の端面は、筒状弾性部材9のZ2方向側の端面よりもZ1方向側に配置されている。これにより、縮小部273aとしての配線接続部73が、柱状導体部材207に形成される。この頂部2911bおよび谷底部2912bにより、筒状弾性部材9では、他の部分よりも大きく形成された拡大部を設けることなく、沿面距離が延長されている。頂部2911bおよび谷底部2912bは、縮小部273aと筒状弾性部材9の端部分291bとの間の凹状の空間2731aにより設けられている。凹状の空間2731aは、円柱形状部71のZ2方向側の端面と、縮小部273aの側面と筒状弾性部材9の導体挿入孔92の内周面とにより形成されている。凹状の空間2731aは、沿面距離を延長させるために設けられている。
【0074】
また、柱状導体部材7のうち、筒状弾性部材9の導体挿入孔92の内周面に対向する部分の端部分91bを他の部分よりも縮小させることにより、筒状弾性部材9の露出位置Pe1を筒状弾性部材9の導体挿入孔92の深い位置に配置することができる。このため、筒状弾性部材9の導体挿入孔92において筒状弾性部材9の導体挿入孔92の縁から露出位置Pe1までの長さの分だけ沿面距離を延長することができる。この結果、筒状弾性部材9の端部分91bを大きく形成することなく、柱状導体部材7の端部分91bを他の部分よりも縮小させることにより、沿面距離を延長することができるので、沿面距離を確保することに起因する筒状弾性部材9の大型化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、円柱形状部71の中心軸線C回りのR方向(周方向)に沿って、筒状弾性部材9の端部分91bの表面のうちの端面911bに円環状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図8に示す第2変形例のように、筒状弾性部材309の端部分391bの溝396は、円柱形状部71の中心軸線C回りのR方向(周方向)に沿って、筒状弾性部材9の端部分91bの表面のうちの外周面391cに円環状に形成されていてもよい。また、溝396は、外周面391cに1つ、または、3つ以上形成されてもよい。また、溝は、筒状弾性部材の端部分の表面の端面および側面の両方に形成されてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材9の端部分91bの溝96は、筒状弾性部材9の端部分91bの表面のうちの端面911bに1つ形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材の端部分の溝は、筒状弾性部材の端部分の表面のうちの端面に複数形成されてもよい。また、溝は、筒状弾性部材の端部分だけでなく、抜け止め部に1つ、または、複数形成されてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、柱状導体部材7は、円柱形状部71と、インバータ接続部72と、配線接続部73と、めねじ部74とを含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、柱状導体部材は、円柱形状部と、めねじ部でなく雄ねじ部と、回転止め部と、配線接続部とを含む形状を有していてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、モータ室31の内部には、収容したモータ1の発熱部位を冷却するオイルFrが貯留されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータ室の内部には、水が貯留されてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、柱状導体部材7は、銅製である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、柱状導体部材は、銅以外の鉄などの金属、または、他の材質の導体により形成された中実の柱状の部材であればよい。
【符号の説明】
【0080】
1 モータ(回転電機)、 2 インバータ、 3 ハウジング、 7、207 柱状導体部材(導体部材)、 9、309 筒状弾性部材、 34 貫通孔、 71 円柱形状部、 91b、291b、391b 端部分、 92 導体挿入孔、 94 外側突出部、 96、396 溝、 96a、2911b 頂部(沿面延長部)、 96b、2912b 谷底部(沿面延長部)、 96c 凹状の空間、 100、200 モータ駆動装置(回転電機装置)、 391c 外周面、 911b 端面、 2731a 凹状の空間、 C 中心軸線、 Pc1 接触位置、 Pe1 露出位置、 Rce1、Rce201 経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8