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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098526
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】被験者のたるみの評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20250625BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
A61B5/107 100
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214719
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 和紀
(72)【発明者】
【氏名】清松 淳ノ介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】横田 真理子
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB03
4C038VB22
4C038VC05
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE03
4C117XE43
4C117XK05
4C117XK09
4C117XP04
(57)【要約】
【課題】被験者のほうれい線を新規な分類基準によって分類し、被験者のたるみの程度を評価する技術を提供すること。
【解決手段】被験者のほうれい線を、予め用意された分類基準によって分類する分類工程と、前記分類工程の結果に基づいて、被験者のたるみの程度を評価する評価工程と、を含み、前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、及び/又は、ほうれい線を鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、を含む、被験者のたるみの評価方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者のほうれい線を、予め用意された分類基準によって分類する分類工程と、
前記分類工程の結果に基づいて、被験者のたるみの程度を評価する評価工程と、を含み、
前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、及び/又は、ほうれい線を鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、を含む、
被験者のたるみの評価方法。
【請求項2】
前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角まで及び/又は口角から下口唇赤唇部下端まで、を顔の垂直方向で複数等分した垂線と交わる点までの長さに応じて分けたグレードを含む分類基準である、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記評価工程は、
ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードを含む分類基準について具体化した顔画像又は模式図を、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードと対応付けて、ほうれい線の長さの短い順又は長い順に並べて表示した表示部を備える、評価用具を用いて、ほうれい線を分類する、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記表示部は、前記の画像又は模式図、前記グレード、並びに前記グレードについて説明する文字情報を表示する、請求項3に記載の評価方法。
【請求項5】
前記分類基準は、以下のグレードを含む、請求項1に記載の評価方法。
(分類基準)
グレード0.0:ほうれい線なし
グレード0.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部の1/2までの長さのほうれい線
グレード1.0:鼻翼上端部から、鼻翼下端部までの長さのほうれい線
グレード1.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の1/4までの長さのほうれい線
グレード2.0:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の2/4までの長さのほうれい線
グレード2.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の3/4までの長さのほうれい線
グレード3.0:鼻翼上端部から、口角までの長さのほうれい線
グレード3.5:鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端の1/2までの長さのほうれい線
グレード4.0:鼻翼上端部から、下口唇赤唇部下端までの長さのほうれい線
グレード4.5:鼻翼上端部から、下口唇赤唇部下端を超える長さのほうれい線
【請求項6】
被験者のたるみを評価するために被験者のほうれい線を分類する方法であって、
被験者のほうれい線を、予め用意された分類基準によって分類する分類工程を備え、
前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、及び/又は、ほうれい線を鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、を含む、ほうれい線の分類方法。
【請求項7】
ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードを含む分類基準について具体化した顔画像又は模式図を、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードと対応付けて、ほうれい線の長さの短い順又は長い順に並べて表示した表示部を備える、評価用具。
【請求項8】
前記表示部は、前記の画像又は模式図、前記グレード、並びに前記グレードについて説明する文字情報を表示する、請求項7に記載の評価用具。
【請求項9】
請求項1に記載の評価方法に用いるためのシートであって、
前記シートは、上辺と下辺とを備えるほうれい線測定領域を備え、
前記ほうれい線測定領域は、前記ほうれい線測定領域を水平方向に2等分以上に分割する印を備える、シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者のたるみの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の美容分野において、被験者の顔の各パーツをグレード分けして、被験者のたるみを評価する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、被験者の顎部から頚部の形状を、予め用意した評価基準の中で最も合致する形状のグレードに分類し、顎部のたるみの評価を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5981113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術があるところ、従来のグレードの分類方法は、化粧品の評価や美容医療に活用できるものではなかった。そこで、本発明は、被験者のほうれい線を新規な分類基準によって分類し、被験者のたるみの程度を評価する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記課題を解決する本発明は、被験者のほうれい線を、予め用意された分類基準によって分類する分類工程と、前記分類工程の結果に基づいて、被験者のたるみの程度を評価する評価工程と、を含み、前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、及び/又は、ほうれい線を鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、を含む、被験者のたるみの評価方法である。
【0007】
[2]本発明の好ましい実施の形態は、前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角まで及び/又は口角から下口唇赤唇部下端まで、を顔の垂直方向で複数等分した垂線と交わる点までの長さに応じて分けたグレードを含む分類基準である、[1]に記載の評価方法である。
【0008】
[3]本発明の好ましい実施の形態は、前記評価工程は、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードを含む分類基準について具体化した顔画像又は模式図を、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードと対応付けて、ほうれい線の長さの短い順又は長い順に並べて表示した表示部を備える、評価用具を用いて、ほうれい線を分類する、[1]又は[2]に記載の評価方法である。
【0009】
[4]本発明の好ましい実施の形態は、前記表示部は、前記の画像又は模式図、前記グレード、並びに前記グレードについて説明する文字情報を表示する、[3]に記載の評価方法である。
【0010】
[5]本発明の好ましい実施の形態は、前記分類基準は、以下のグレードを含む、[1]に記載の評価方法である。
(分類基準)
グレード0.0:ほうれい線なし
グレード0.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部の1/2までの長さのほうれい線
グレード1.0:鼻翼上端部から、鼻翼下端部までの長さのほうれい線
グレード1.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の1/4までの長さのほうれい線
グレード2.0:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の2/4までの長さのほうれい線
グレード2.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の3/4までの長さのほうれい線
グレード3.0:鼻翼上端部から、口角までの長さのほうれい線
グレード3.5:鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端の1/2までの長さのほうれい線
グレード4.0:鼻翼上端部から、下口唇赤唇部下端までの長さのほうれい線
グレード4.5:鼻翼上端部から、下口唇赤唇部下端を超える長さのほうれい線
【0011】
[6]また、上記課題を解決する本発明は、被験者のたるみを評価するために被験者のほうれい線を分類する方法であって、被験者のほうれい線を、予め用意された分類基準によって分類する分類工程を備え、前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、及び/又は、ほうれい線を鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けたグレード、を含む、ほうれい線の分類方法にも関する。
【0012】
[7]また、上記課題を解決する本発明は、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードを含む分類基準について具体化した顔画像又は模式図を、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードと対応付けて、ほうれい線の長さの短い順又は長い順に並べて表示した表示部を備える、評価用具にも関する。
【0013】
[8]本発明の好ましい実施の形態は、前記表示部は、前記の画像又は模式図、前記グレード、並びに前記グレードについて説明する文字情報を表示する、[7]に記載の評価用具である。
【0014】
[9]また、上記課題を解決する本発明は、[1]に記載の評価方法に用いるためのシートであって、前記シートは、上辺と下辺とを備えるほうれい線測定領域を備え、前記ほうれい線測定領域は、前記ほうれい線測定領域を水平方向に2等分以上に分割する印を備える、シート。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被験者のたるみについて評価者によらず均一な評価をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】各グレードに該当するほうれい線の形状を具体化した画像を表した図である。
図2】本発明の評価用具1の第1の実施形態を示す平面説明図である。
図3】本発明の評価用具1の第2の実施形態を示す平面説明図である。
図4】本発明の評価用具1の第3の実施形態を示す平面説明図である。
図5】本発明の評価方法に用いるためのシート7の説明図である。
図6】本発明の評価方法における機器測定値との相関性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1>評価方法
(1)分類工程
本発明のたるみの評価方法は、被験者のほうれい線を、予め用意された分類基準によって分類する分類工程を含む。
【0018】
本発明におけるほうれい線は、皮膚や皮下、さらには骨膜にまで及ぶ組織およびその構造帯などの下垂によって生じるたるみによるほうれい線を含む。
【0019】
前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けられたグレード、及び/又は、ほうれい線を鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さに応じて分けられたグレード、を含む。
前記グレードを、鼻翼上端部からの絶対的な長さにより設定(例えば、鼻翼上端部から5mmのグレードを設定)するのではなく、鼻翼上端部からの相対的な長さにより設定することで、被験者の骨格形状によらず、ほうれい線を分類することができる。
【0020】
また、ほうれい線に影響する脂肪コンパートメントとして、Nasolabial compartment、Superior jowl compartment、Inferior jowl compartmentが挙げられる。これらの脂肪コンパートメントは、ほうれい線に沿って存在する。
上記の分類基準は、これらの解剖学的特徴から、鼻翼下端部から口角の中間付近におけるNasolabial compartmentとSuperior jowl compartmentの境界、口角から下口唇赤唇部下端の中間付近におけるSuperior jowl compartmentとInferior jowl compartmentの境界に基づいて設定されている。
【0021】
さらに、ほうれい線に影響する表情筋として、上唇鼻翼挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋が挙げられる。
上記の分類基準は、これらの解剖学的特徴から、鼻翼下端部から口角の1/4付近における上唇鼻翼挙筋と小頬骨筋の境界、鼻翼下端部から口角の3/4付近における小頬骨筋と大頬骨筋の境界に基づいて設定されている。
【0022】
本願発明の分類基準は、上記の解剖学的特徴から設定されていることから、本発明の方法によれば、被験者の骨格形状によらず、ほうれい線を分類することができる。
【0023】
前記分類基準は、好ましくは、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを4等分に分割した各点までの長さに応じて分けられたグレードを含む。
【0024】
前記分類基準は、好ましくは、ほうれい線を鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分に分割した各点までの長さに応じて分けられたグレードを含む。
【0025】
本発明における「鼻翼上端部」は、鼻翼と頬との境界における上端部のことをいう。
前記鼻翼上端部は、「鼻の付け根」と呼ばれることもある。
【0026】
前記鼻翼上端部は、ほうれい線の始点となる部位である。
【0027】
本発明における「鼻翼下端部」は、鼻翼と頬との境界における下端部のことをいう。
前記鼻翼下端部は、単に「鼻翼」と呼ばれることもある。
【0028】
本発明における「下口唇赤唇部下端」は、下唇と顎との境界における下端部のことをいう。
前記下口唇赤唇部下端は、「下唇の下輪郭の中間」や「下唇下端部」と呼ばれることもある。
【0029】
前記グレードとしては、ほうれい線の長さについての数値、又はその数値を間接的に示す数値が挙げられる。これらの数値を、さらに等級を示す数値、文字列、及び記号に変換したものであってもよい。
前記グレードは、好ましくは、ほうれい線の長さを間接的に示す数値である。
【0030】
前記グレードがほうれい線の長さを間接的に示す数値である場合、前記グレードは、ほうれい線の長さが短いほど小さい数値であり、ほうれい線の長さが長いほど大きい数値である。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態では、前記分類基準は、ほうれい線を鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角まで及び/又は口角から下口唇赤唇部下端まで、を顔の垂直方向に複数等分した垂線と交わる点までの長さに応じて分けられたグレードを含む。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態では、前記分類基準は、以下のグレードを含む。
【0033】
(分類基準)
グレード0.0:ほうれい線なし
グレード0.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部の1/2までの長さのほうれい線
グレード1.0:鼻翼上端部から、鼻翼下端部までの長さのほうれい線
グレード1.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の1/4までの長さのほうれい線
グレード2.0:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の2/4までの長さのほうれい線
グレード2.5:鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の3/4までの長さのほうれい線
グレード3.0:鼻翼上端部から、口角までの長さのほうれい線
グレード3.5:鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端の1/2までの長さのほうれい線
グレード4.0:鼻翼上端部から、下口唇赤唇部下端までの長さのほうれい線
グレード4.5:鼻翼上端部から、下口唇赤唇部下端を超える長さのほうれい線
【0034】
図1は、前記各グレードに該当するほうれい線の形状を具体化した画像を表した図である。
【0035】
また、ほうれい線に影響する脂肪コンパートメントとして、Nasolabial compartment、Superior jowl compartment、Inferior jowl compartmentが挙げられる。これらの脂肪コンパートメントは、ほうれい線に沿って存在する。
上記の分類基準(グレード0.0~4.5)は、これらの解剖学的特徴から、鼻翼下端部から口角の中間付近におけるNasolabial compartmentとSuperior jowl compartmentの境界、口角から下口唇赤唇部下端の中間付近におけるSuperior jowl compartmentとInferior jowl compartmentの境界に基づいて設定されている。
【0036】
さらに、ほうれい線に影響する表情筋として、上唇鼻翼挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋が挙げられる。
上記の分類基準(グレード0.0~4.5)は、これらの解剖学的特徴から、鼻翼下端部から口角の1/4付近における上唇鼻翼挙筋と小頬骨筋の境界、鼻翼下端部から口角の3/4付近における小頬骨筋と大頬骨筋の境界に基づいて設定されている。
【0037】
本願発明の分類基準は、上記の解剖学的特徴から設定されていることから、本発明の方法によれば、被験者の骨格形状によらず、ほうれい線を分類することができる。
【0038】
本発明において、被験者のほうれい線を分類する時の被験者の表情は、口を閉じ脱力した状態、すなわち無表情の状態であることが好ましい。
【0039】
本発明において、被験者のほうれい線を分類する時の被験者の顔は、被験者のほうれい線に影響が少ないような方法で固定されていることが好ましい。例えば、後頭部のみを壁につける等、皮膚に張力を加えない状態で被験者の顔を固定し、被験者のほうれい線を分類することが好ましい。
【0040】
また、本発明において、被験者のほうれい線を分類する時の被験者の顔は、被験者のほうれい線に影響が少ない角度で固定されていることが好ましい。例えば、顔の良好な左右バランスために、鼻筋を通る正中線が地面と垂直となるように固定し、被験者のほうれい線を分類することが好ましい。また、顔の良好な上下バランスのために、フランクフルト平面(眼窩最下点と外耳孔上端を結んだ線)が地面と平行となるように固定し、被験者のほうれい線を分類することが好ましい。
【0041】
(2)評価工程
本発明のたるみの評価方法は、前記分類工程の結果に基づいて、被験者のたるみの程度を評価する評価工程を含む。
【0042】
前記評価工程は、前記グレードがほうれい線の長さを間接的に示す数値である場合、前記グレード数が増加するほど、たるみの程度が大きいと評価することを含む。
【0043】
具体的には、前記分類工程においてグレード0.0に分類されたほうれい線を有する被験者をたるみがないと評価し、グレード数が増加するにつれてたるみの程度が大きいと評価し、グレード4.5に分類されたほうれい線を有する被験者を、たるみの程度が最も大きいと評価する。
【0044】
前記分類工程の結果に基づいて、被験者のたるみの程度を評価することで、被験者のたるみを、評価者によらず均一に評価することができる。また、美容医療、化粧品成分等による変化の緩和なたるみの評価をすることができる。
【0045】
<2>評価用具
本発明の評価用具は、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードを含む分類基準について具体化した顔画像又は模式図を、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレードと対応付けて、ほうれい線の長さの短い順又は長い順に並べて表示した表示部を備える。
【0046】
前記分類基準についての説明は、上記「<1>評価方法」の説明を援用することができる。
【0047】
前記表示部としては、前記の顔画像又は模式図を表示し得るものであれば特に限定されず、紙面やプラスチック面、及びディスプレイ装置が挙げられる。
【0048】
前記表示部は、前記の顔画像又は模式図を、好ましくは5つ以上、より好ましくは、7つ以上、さらに好ましくは9つ以上、表示する。
【0049】
前記表示部は、好ましくは、鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さのほうれい線、及び/又は、鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さのほうれい線、を備える顔画像又は模式図を表示する。
【0050】
前記表示部は、好ましくは、鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さのほうれい線、及び/又は、鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さのほうれい線、を備える顔画像又は模式図を、鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角までを3等分以上に分割した各点までの長さ、及び/又は、鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端までの間を2等分以上に分割した各点までの長さ、に応じて分けたグレードと対応付けて、表示する。
【0051】
前記の顔画像又は模式図と、前記グレードと、を対応付けて表示する方法は特に限定されないが、前記の顔画像又は模式図の真上に前記グレードを表示することが好ましい。
【0052】
前記表示部は、前記の顔画像又は模式図を、横一列又は縦一列に並べて表示することができる。前記の顔画像又は模式図の数が多い場合、複数列に分けて表示してもよい。
前記表示部は、好ましくは、前記の顔画像又は模式図を、2列又は3列に並べて表示する。
【0053】
前記表示部は、好ましくは、前記の顔画像又は模式図を、ほうれい線の長さの短い順又は長い順に並べて表示する。
【0054】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施の形態に限定するものではない。
【0055】
図2は、本発明の評価用具1の第1の実施形態を示す平面説明図である。
【0056】
図2に示すように、評価用具1は、タブレット端末である。
【0057】
評価用具1は、表示部2を備える。表示部2は、タブレット端末のディスプレイ装置である。
【0058】
表示部2は、ほうれい線を含む顔画像3を複数表示する。顔画像3は、ほうれい線の長さが短い順に左から2列に並べられている。
【0059】
顔画像3には、鼻翼上端部、鼻翼下端部、口角、及び、下口唇赤唇部下端、並びに、鼻翼上端部と鼻翼下端部の中間、鼻翼下端部と口角の1/4、鼻翼下端部と口角の1/2、鼻翼下端部と口角の3/4、及び、口角と下口唇赤唇部下端の中間の位置が分かるように、線が引かれている。
【0060】
さらに、表示部2は、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレード(数値)を、顔画像3と対応付けて、グレード表示部4に表示する。
【0061】
図3は、本発明の評価用具の第2の実施形態を示す平面説明図である。
【0062】
図3に示すように、表示部2は、ほうれい線を鼻翼上端部からの長さに応じて分けたグレード(数値)に応じた文字列を文字列表示部5に表示する。
例えば、グレード(数値)の小さい順に、たるみの程度が、ない、やや小さい、やや大きい、大きい、と割り振り、グレード(数値)や顔画像3に対応する位置の近傍に表示する。
【0063】
図4は、本発明の評価用具の第3の実施形態を示す平面説明図である。
【0064】
図4に示すように、表示部2は、顔画像3、前記グレード、並びに前記グレードについて説明する文字情報6を表示する。
【0065】
文字情報6は、グレード(数値)がどの長さのほうれい線と対応付けられているのかについての文字情報である。
表示部2に、顔画像3、前記グレード、及び文字情報6を併せて表示することで、評価者が容易に被験者のたるみを評価することができる。
【0066】
<3>シート
本発明のシートは、前記評価方法に用いるためのシートである。
【0067】
前記シートの材料は、前記評価方法に用いることができれば特に制限されないが、透明又は半透明のフィルムであることが好ましい。
【0068】
前記シートは、上辺と下辺を備えるほうれい線測定領域を備え、前記ほうれい線測定領域を水平方向に2等分以上に分割する印を備える。
【0069】
本発明の一実施形態として、被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の間まで、の長さであるときに、前記シートを用いて被験者のほうれい線の長さを分類する方法について、図5を用いながら詳細に説明する。
【0070】
図5(a)に示すように、シート7は、上辺と下辺とを備えるほうれい線測定領域71を備え、ほうれい線測定領域71を水平方向に4等分に分割する線を備える。図5(a)において、前記上辺及び前記下辺には線が設けられている。
ここで、図5(b)に示すように、シート7の上辺をほうれい線測定領域の上辺、シート7の下辺をほうれい線測定領域の下辺、とすることもできる。
【0071】
シート7の使用方法としては、まず、シート7におけるほうれい線測定領域71の上辺を被験者の鼻翼下端部に、ほうれい線測定領域71の下辺を被験者の口角に、合わせるように、シート7と被験者の顔との距離を調整する。
【0072】
次に、被験者のほうれい線の長さを確認する。
例えば、被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線まで、の長さであることを確認する。
【0073】
そして、上記<1>に記載の分類基準に従い、被験者のほうれい線をグレード分けする。被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線まで、の長さである場合、被験者のほうれい線をグレード2.0に分類する。
【0074】
上記の通り、本発明のシートは、上記<1>に記載の評価方法に用いることができる。
また、本発明のシートにより、評価者は、被験者のほうれい線を容易にグレード分けすることができる。そして、被験者のたるみの程度を容易に評価することができる。
【0075】
本発明の別の実施形態として、被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端の間まで、の長さであるときに、前記シートを用いて被験者のほうれい線の長さを分類する方法について、図5の符号を用いて説明する。
【0076】
シート7は、上辺と下辺とを備えるほうれい線測定領域71を備え、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線を備える。
【0077】
シート7の使用方法としては、まず、シート7におけるほうれい線測定領域71の上辺を被験者の口角に、ほうれい線測定領域71の下辺を被験者の下口唇赤唇部下端に、合わせるように、シート7と被験者の顔との距離を調整する。
【0078】
次に、被験者のほうれい線の長さを確認する。
例えば、被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線まで、の長さであることを確認する。
【0079】
そして、上記<1>に記載の分類基準に従い、被験者のほうれい線をグレード分けする。被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線まで、の長さである場合、被験者のほうれい線をグレード3.5に分類する。
【0080】
本発明の実施形態において、被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、鼻翼下端部から口角の間まで、の長さであるときと、被験者のほうれい線が、鼻翼上端部から、口角から下口唇赤唇部下端の間まで、の長さであるときとで、同じシート7を用いることができる。
【0081】
具体的には、例えば、上辺と下辺とを備えるほうれい線測定領域71を備え、ほうれい線測定領域71を水平方向に4等分に分割する線を備えるシート7において、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線を、ほうれい線測定領域71の下辺とすることにより、上辺と下辺とを備えるほうれい線測定領域71を備え、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線を備えるシート7とすることができる。
【0082】
上記形態にできることの視認性を向上するために、ほうれい線測定領域71を水平方向に4等分に分割する線を備えるシート7において、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線と、他の線とが区別できることが好ましい。例えば、ほうれい線測定領域71を水平方向に4等分に分割する線を備えるシート7において、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線を、他の線よりも太い線にすることや、印をつけることが好ましい。
【0083】
また、ほうれい線測定領域71を水平方向に4等分に分割する線を備えるシート7において、ほうれい線測定領域71を水平方向に上から1/4及び3/4に分割する線を、ほうれい線測定領域71の上辺及び下辺とすることにより、上辺と下辺とを備えるほうれい線測定領域71を備え、ほうれい線測定領域71を水平方向に2等分に分割する線を備えるシート7とすることもできる。
【0084】
上記形態にできることの視認性を向上するために、ほうれい線測定領域71を水平方向に4等分に分割する線を備えるシート7において、ほうれい線測定領域71を水平方向に上から1/4及び3/4に分割する線に、お互いが対応する印が設けられていることが好ましい。
【実施例0085】
以下、本発明の分類基準の有効性について試験を行った結果を示す。
【0086】
<実施例1> 本発明の評価方法による被験者のたるみの評価
・方法
ほうれい線を有する被験者16名の左半顔のほうれい線について、本発明の評価方法(以下、本評価方法という。)及び既存評価方法(参考文献)におけるグレード標準に従い、ほうれい線の評価に習熟した評価者(以下、習熟評価者という。)及びほうれい線の評価を初めて行う評価者(以下、未熟評価者という。)により、ほうれい線の程度を評価した。
そして、全被験者に対する習熟評価者及び未熟評価者による評価評点の一致数及び非一致数を集計し、評価一致率を算出した。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
・結果
本評価方法は既存評価方法と比較して、習熟評価者及び未習熟評価者での評価一致率が顕著に高いことが確認された。よって本評価方法は、ほうれい線評価の習熟度によらず、より均一な評価が可能であることが明らかとなった。
【0089】
<実施例2> 本発明の評価方法における機器測定値との相関性
・方法
ほうれい線を有する被験者24名の左半顔のほうれい線について、本評価方法及び既存評価方法(参考文献)におけるグレード標準に従い、ほうれい線の程度を評価した。また、各被験者の左半顔のほうれい線について、ANTERA 3D(miravex)にてほうれい線部位の立体形状を測定し、ほうれい線部位のくぼみ体積(mm)を算出した。そして、各評価方法における評価評点およびANTERA 3Dにおけるくぼみ体積値についてSpearmanの相関解析を行い、相関係数を算出した。結果を図6に示す。
【0090】
・結果
本評価方法は既存評価方法と比較して、より強い相関係数が確認された。よって本評価方法は、定量的な機器評価値との一致性が高く、精度の高い評価が可能であることが明らかとなった。
【0091】
<実施例3>本発明の評価方法によるほうれい線の軽微改善変化の評価
・方法
ほうれい線を有する被験者15名の半顔にほうれい線改善効果のある評価用製剤を塗布し、評価用製剤を塗布していない半顔には改善成分を含まないプラセボ製剤を塗布した。塗布開始前及び塗布6週間後のほうれい線について、本評価方法及び既存評価方法(参考文献)におけるグレード標準に従い、ほうれい線の程度を評価した。塗布開始前の評価評点に対する塗布6週間後の評価評点の差分を改善スコアとして算出した。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
・結果
本評価方法は既存評価方法と比較して、評価用製剤の塗布によるほうれい線の評価評点の変動が確認された。よって本評価方法は、ほうれい線の軽微な評価についても、より精緻な評価が可能であることが明らかとなった。
【0094】
参考文献;T. Ezure et al., Skin Research and Technology, 2009; 15: 299-305
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、被験者のたるみの程度を評価する新規な技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 評価用具
2 表示部
3 顔画像
4 グレード表示部
5 文字列表示部
6 文字情報
7 シート
71 ほうれい線測定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6