(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098528
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20250625BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20250625BHJP
【FI】
G01M7/02 H
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214722
(22)【出願日】2023-12-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔1〕開催日(公開日) 令和5年9月18日 集会名、開催場所 防災KOKUDAI(国立大学法人横浜国立大学 主催)(会期:令和5年9月17日~18日) 先端科学高等研究院 YNU Dialogue&サイエンスカフェ 「デジタル社会における防災」 国立大学法人横浜国立大学 経営講義棟1号棟1F 108室 <資 料> 防災KOKUDAI 開催概要 <資 料> 研究発表 スライド資料
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、消防庁「ICT・IoT技術を活用した石油コンビナート災害対応システムの開発と社会実装」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聖一
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD38
2G024BA12
2G024CA04
2G024DA12
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】異なる複数のタンクの損傷に関する指標をより簡易な準備で容易に算出することができる情報処理システムを提供する。
【解決手段】側板と底板とを溶接して形成されたタンクの振動による前記溶接部近傍の隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記溶接部近傍における隅角部ひずみを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する隅角部ひずみ算出部を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記隅角部ひずみ算出部は、隅角部ひずみをε、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をt
a、前記底板の降伏応力をσ
yとして、式(1)により表される前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
【数1】
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記隅角部ひずみ算出部は、前記振動を示す波形に基づいて前記タンクに生じた1回目の前記浮き上がり変位のピーク値に対応する第一の前記隅角部ひずみと、前記波形に基づいて前記タンクに生じた2回目以降の前記浮き上がり変位のピーク値それぞれに対応する第二の前記隅角部ひずみと、を算出し、
前記第一の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(2)で示す第一ひずみ振幅算出式を用いて算出し、
【数2】
前記第二の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(3)で示す第二ひずみ振幅算出式を用いて算出する、
【数3】
ひずみ振幅算出部とを備える請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記波形に基づいて前記タンクに生じた前記浮き上がり変位のピークの繰り返し発生に応じた当該繰り返しの回数における前記隅角部の累積損傷度を、累積損傷度算出式を用いて算出する累積損傷度算出部と、
を備える請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記隅角部ひずみ算出部は、対象のタンクに応じた前記係数であって、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をta、前記底板の降伏応力をσyと、前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項6】
発生した前記振動の波形と、前記タンクに生じた前記浮き上がり変位を1質点系非線形水平ばねモデルと、当該モデルから得られた水平方向の振動ピーク値と浮き上がり変位算出式とを用いて、前記浮き上がり変位のピーク値を算出する浮き上がり変位算出部と、
を備える請求項1から請求項5の何れか一項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記振動の波形として地震動の加速度波形を前記地震動が発生している際に取得する取得部と、
を備える請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する
情報処理方法。
【請求項9】
情報処理システムのコンピュータを、
振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する隅角部ひずみ算出手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、情報処理システム、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油などの対象を保管するタンクは地震動などの振動の影響により変形する場合がある。例えば短周期地震動(高周波振動)によるタンク側板主体の振動であるバルジングや、長周期地震動(低周波数振動)による液面の揺動であるスロッシングが発生する。また短周期地震動(高周波振動)により水平方向の慣性力でタンクが横方向に振動するロッキング振動が起き、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部が地面から浮き上がり、これが地震発生などの振動発生時におけるタンクの主要な損傷原因の一つであることが知られている。
【0003】
このようなタンクの損傷を推定するものとして、石油タンクの健全性評価システム(SUSTAINER)が開発されている。また関連する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上述のようなタンクは、その大きさや内部に保管する対象がそれぞれ異なる場合がある。これら異なる複数のタンクの損傷に関する指標をより簡易な準備で容易に算出することのできる技術が求められている。
【0006】
この開示は、上記の課題を解決する情報処理システム、情報処理方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示の第1の態様によれば、情報処理システムは、振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する隅角部ひずみ算出部を備える。
【0008】
この開示の第2の態様によれば、情報処理方法は、振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する隅角部ひずみ算出部を備える。
【0009】
この開示の第3の態様によれば、プログラムは、情報処理システムのコンピュータを、振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する隅角部ひずみ算出手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
異なる複数のタンクの損傷に関する指標をより簡易な準備で容易に算出することができる情報処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この開示の一実施形態による情報処理システムの概略構成図である。
【
図2】この開示の一実施形態による情報処理装置のハードウェア構成図である。
【
図3】この開示の一実施形態による情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図4】この開示の一実施形態による浮き上がり変位の算出処理の概要を示す図である。
【
図5】この開示の一実施形態による復元力特性Q
Rを示すグラフである。
【
図6】この開示の一実施形態による情報処理装置の処理フローを示す図である。
【
図7】この開示の一実施形態による地震動の地震動変位に応じた隅角部の浮き上がり変位δの波形を示す。
【
図8】この開示の一実施形態による隅角部ひずみと浮き上がり変位との関係の比較例を示す第一の図である。
【
図9】この開示の一実施形態による隅角部ひずみと浮き上がり変位との関係の比較例を示す第二の図である。
【
図10】この開示の一実施形態による情報処理装置の他の構成を示す図である。
【
図11】この開示の一実施形態による他の構成による情報処理装置の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はこの開示の一実施形態による情報処理システムの概略構成図である。
図1に示すようにこの開示の情報処理システム100は情報処理装置10を備える。情報処理システム100は、情報処理装置10以外の情報処理装置も備えており、他の情報処理装置では、地震計やその他のセンサから得られた情報を入力したデータを用いて、地震動観測記録処理、タンク毎の地震動算出処理、タンクの側板や底板の損傷評価、スロッシング影響評価、波高、タンク内包対象の溢流、浮き屋根損傷度算出などの処理を行っている。これらの処理結果は、タンク算出結果DB30が記憶する。タンク毎地震動DB20には、他の情報処理装置が算出したタンク毎の地震動算出結果が記録されている。
【0013】
情報処理装置10は、タンク毎地震動DB20より、対象のタンクの地震動算出結果である地震動波形を取得する。また情報処理装置10は、対象のタンクに関する係数を所定の記憶部から取得する。情報処理装置10は、振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、隅角部における隅角部ひずみを算出する。
【0014】
隅角部ひずみを算出する場合、有限要素法の手法を用いてタンク毎に隅角ひずみを算出する必要があった。しかしながら本開示の情報処理装置10の手法により、どのような大きさや保管対象のタンクの隅角部ひずみも、有限要素法を行う場合の事前準備や、膨大な有限要素法の処理を行うことなく、簡易に算出することができる。
【0015】
図2は情報処理装置のハードウェア構成図である。
図2に示すように情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、通信モジュール105等の各ハードウェアを備えたコンピュータである。情報処理システム100は、複数の情報処理装置10を用いて構成されたものであってよい。つまり他の情報処理装置も、情報処理装置10と同様のコンピュータである。
【0016】
図3は情報処理装置の機能ブロック図である。
情報処理装置10のCPU101がタンク管理プログラムを実行する。これにより、情報処理装置10は、取得部11、浮き上がり変位算出部12、隅角部ひずみ算出部13、ひずみ振幅算出部14、累積損傷度算出部15、出力部16の各機能を発揮する。
【0017】
取得部11は、情報処理装置10が算出処理に利用する各種情報を外部のデータベース(DB)や他の情報処理装置から取得する。
浮き上がり変位算出部12は、発生した地震動の加速度波形に基づいてタンクに生じた浮き上がり変位を、1質点系非線形水平ばねモデルによる地震応答解析で当該モデルから得られた水平方向の振動値と浮き上がり変位算出式とを用いて算出する。
【0018】
隅角部ひずみ算出部13は、振動によるタンクの隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、隅角部ひずみを算出する。
【0019】
ひずみ振幅算出部14は、振動に応じて底板と側板との隅角部(底板と側板との接合部近傍)の浮き上がり変位から求まる隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を算出する。隅角部ひずみの最大と最小との差は浮き上がり変位が零からピークまでのひずみの変動の値である。
【0020】
累積損傷度算出部15は、タンクに生じた浮き上がり変位のピークの繰り返し発生に応じた隅角部ひずみ振幅の当該繰り返しの回数における隅角部の累積損傷度を算出する。
【0021】
出力部16は、情報処理装置10が算出した浮き上がり変位量や、隅角部ひずみ、ひずみ振幅、累積損傷度などの情報を記憶部に記憶する、または表示部に表示する処理を行う。
【0022】
図4は浮き上がり変位の算出処理の概要を示す図である。
図4(4a)は、地震動によるタンクの隅角部の浮き上がりの状態を示している。隅角部の浮き上がりは、短周期地震動(高周波振動)により水平方向の慣性力でタンクやタンク内部の保管対象(石油など)が横方向に振動するロッキング振動が主要な原因となる。したがって本開示において情報処理装置10は、このロッキング振動を、1質点系非線形水平ばねモデルによりモデル化し、保管対象を含むタンク全体の質点の応答変位Δを求める。応答変位Δは保管対象を含むタンク全体の質点の横方向の移動量である。
【0023】
【0024】
式(1)が示す1質点系非線形水平ばねモデルにおいて、M1はタンクとその保管対象全体における有効質量(応答加速度に影響を与えるマスの質量)、Ceは質点の1回の応答速度(1回の質点の横方向の移動)に対応する減衰、QRはタンクの横方向に加わった力と隅角部の浮き上がり変位に応じた質点の復元力特性、Δは質点の応答変位、ugは地震動変位(地震動波形)を示す。また式(1)においてΔやuの上に付された[・・]は二階時間微分を示し、またΔの上に付された[・]は一階時間微分を示す。タンクとその保管対象全体における有効質量M1、質点の1回の応答速度に対応する減衰Ce、タンクの横方向に加わった力と隅角部の浮き上がり変位に応じた質点の復元力特性QRは、タンクに特有の係数であり、タンク毎に異なってよい。
【0025】
図5は復元力特性Q
Rを示すグラフである。
図5で示すように、復元力特性Q
Rが示す復元力は質点の応答変位Δが大きくなるにつれて弱まる(傾きが減少する)傾向を示している。
【0026】
情報処理装置10は式(1)が示す1質点系非線形水平ばねモデルに基づいて地震動の地震波形(地震動変位ugの二階時間微分である地震動加速度(ugのuの上に[・・]付与))に応じた、質点の応答変位Δの波形を算出する。その質点の応答変位Δの波形に対応する、タンク隅角部の浮き上がり変位δを浮き上がり変位算出式(2)を用いて算出する。なお、以下の文章において数式中の地震動加速度(ugのuの上に[・・]付与)は「ug’」と別文字で表して説明する。
【0027】
【0028】
浮き上がり変位算出式(2)において、H1はタンク全体の質点の高さ、Dは円筒形のタンクの直径、Kbは1質点系非線形水平ばねモデルにおける初期浮き上がり段階のばね定数である。タンク全体の質点の高さH1、タンクの直径D、ばね定数Kbは、タンクに特有の係数であり、タンク毎に異なってよい。そして、情報処理装置10は、隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値δと、タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式(3)に入力し、タンクの隅角部における隅角部ひずみεを算出する。
【0029】
【0030】
浮き上がり変位算出式において、εは隅角部ひずみ、Cは底板(アニュラ板)を構成する鋼板の種別に応じた係数、pはタンクにおける底部の液体圧力(N(ニュートン)/mm2)、δは浮き上がり変位のピーク値(mm(ミリメートル))、taは底板(アニュラ板)の板厚(mm)、σyは底板(アニュラ板)の降伏応力(N/mm2)である。これら底板を構成する鋼板の種別に応じた係数C、タンクにおける底部の液体圧力p、浮き上がり変位のピーク値δ、底板(アニュラ板)の板厚ta、底板(アニュラ板)の降伏応力σyはタンクに特有の係数であり、タンク毎に異なってよい。
【0031】
図6は情報処理装置の処理フローを示す図である。
図7は地震動の地震動加速度に応じた隅角部の浮き上がり変位δの波形を示す。
次に情報処理装置の処理フローについて順を追って説明する。
まず情報処理装置10の取得部11は情報取得タイミングを検知する(ステップS101)。情報取得タイミングは例えば地震発生時などであってよい。または情報取得タイミングは地震発生時以外のタイミングであってもよい。取得部11は算出対象のタンクの識別情報をHDD104等の記憶部から取得する。算出対象のタンクは、たとえば地震発生エリアの全てのタンクであってもよい。取得部11は、算出対象を決定するために地震発生の震源地の情報などを外部の情報提供サーバから取得してもよい。算出対象のタンクの決定はどのような手法であってもよい。算出対象のタンクは予め決められていてもよい。取得部11は算出対象の1つまたは複数のタンクの識別情報(IDなど)に紐づいて記録されるタンク毎の地震波形を示す地震動加速度u
g’(u
gのuの上に[・・]を付した数式中文字に相当)をタンク毎地震動DB20から取得する(ステップS102)。取得部11が取得する地震波形(地震動加速度u
g’)は、地震計が記録した地震動あるいは模擬地震動から算出対象として決定したタンクの位置における地盤条件に応じて算出した地震波形でもよい。取得部11は、タンクの識別情報とそのタンクの位置における地震波形(地震動加速度u
g’)との関係を示す地震波形データをタンク毎地震DB20から取得する。
【0032】
また取得部11は、算出対象として決定したタンクごとの隅角部の浮き上がり変位の算出に用いる係数を所定の記憶部から取得する(ステップS103)。所定の記憶部は外部のデータベースでもよいし、自装置のHDD104であってもよい。隅角部の浮き上がり変位の算出に用いる係数は、上述したように、タンクとその保管対象全体における有効質量M1、質点の応答速度に対応する減衰Ce、タンクの横方向に加わった力と隅角部の浮き上がり変位に応じた質点の復元力特性QR、タンク全体の質点の高さH1、タンクの直径D、ばね定数Kb、底板を構成する鋼板の種別に応じた係数C、タンクにおける底部の液体圧力p、底板(アニュラ板)の板厚ta、底板(アニュラ板)の降伏応力σyである。
【0033】
そして浮き上がり変位算出部12は、1つまたは複数のタンクのうち、算出対象のタンクとその保管対象全体における有効質量M1、質点の応答速度に対応する減衰Ce、タンクの横方向に加わった力と隅角部の浮き上がり変位に応じた質点の復元力特性QRと、ステップS102で取得した当該タンクに関する地震動加速度ug’を1質点系非線形水平ばねモデル(1)入力する。これにより浮き上がり変位算出部12は、地震動加速度ug’に応じた質点の応答変位Δを算出する。浮き上がり変位算出部12は、地震動加速度ug’が示す波形の所定間隔の地震動加速度ug’の値毎に、応答変位Δの算出を繰り返す。これにより浮き上がり変位算出部12は、地震動加速度ug’に応じた質点の応答変位Δの波形を算出する(ステップS104)。1質点系非線形水平ばねモデル(1)を用いた地震動加速度ug’に応じた質点の応答変位Δの波形は他の情報処理装置が算出し、これを情報処理装置10が取得してもよい。
【0034】
また浮き上がり変位算出部12は、地震動加速度u
g’に応じた質点の応答変位Δの値と、タンク全体の質点の高さH
1、タンクの直径D、ばね定数K
bを浮き上がり変位算出式(2)に入力して浮き上がり変位δを算出する。浮き上がり変位算出部12は、地震動加速度u
g’に応じた質点の応答変位Δが示す波形の所定間隔の応答変位Δの値毎に、浮き上がり変位δの算出を繰り返し、浮き上がり変位δの時刻歴応答波形(
図7)を算出する(ステップS105)。
【0035】
図7が示す地震動の地震動加速度u
g’に応じた隅角部の浮き上がり変位δの波形から、浮き上がり変位δのピークがδ1,δ2,・・・,δ10と10回発生していることが分かる。浮き上がり変位算出部12は、算出した浮き上がり変位δの波形のデータから、ピーク値を特定し、それら浮き上がり変位δのピーク値(
図7の場合は、δ1,δ2,・・・,δ10の10回発生の各ピーク値)を隅角部ひずみ算出部13へ出力する。
【0036】
なお、浮き上がり変位δの時刻歴応答波形の算出や、浮き上がり変位δのピーク値の特定も、他の情報処理装置が算出し、これらの結果を情報処理装置10が取得してもよい。つまりこの場合、情報処理装置10は、以降の説明の隅角部ひずみの算出からの処理を行うようにしてもよい。
【0037】
隅角部ひずみ算出部13は地震動が発生している間の隅角部の浮き上がり変位δのピーク値(
図7の場合は、δ1,δ2,・・・,δ10の10回発生の各ピーク値)を取得する。隅角部ひずみ算出部13は1回目の発生の浮き上がり変位のピーク値δ1と、算出対象のタンク特有の係数である、底板を構成する鋼板の種別に応じた係数C、タンクにおける底部の液体圧力p、浮き上がり変位のピーク値δ、底板(アニュラ板)の板厚t
a、底板(アニュラ板)の降伏応力σ
yを、隅角部ひずみ算出式(3)に入力する。これにより隅角部ひずみ算出部13は、1回目の発生の浮き上がり変位のピーク値δ1に対応する、タンクの隅角部における隅角部ひずみε
1を算出する。
【0038】
同様に、隅角部ひずみ算出部13は、2回目発生の浮き上がり変位のピーク値δ2と、算出対象のタンク特有の係数である、底板を構成する鋼板の種別に応じた係数C、タンクにおける底部の液体圧力p、浮き上がり変位のピーク値δ、底板(アニュラ板)の板厚ta、底板(アニュラ板)の降伏応力σyを、隅角部ひずみ算出式(3)に入力する。これにより隅角部ひずみ算出部13は、2回目の発生の浮き上がり変位のピーク値δ2に対応する、タンクの隅角部における隅角部ひずみε2を算出する。これにより、隅角部ひずみ算出部13は、各ピークが発生した隅角部の浮き上がり変位δ(δ1,δ2,・・・,δ10)毎の隅角部ひずみε(ε1,ε2,・・・,ε10)を算出する(ステップS106)。隅角部ひずみ算出部13は、各ピークが発生した隅角部の浮き上がり変位δ毎の隅角部ひずみεを、ひずみ振幅算出部14へ出力する。
【0039】
なお情報処理装置10は少なくとも、隅角部ひずみεを算出するものであってもよい。関連する技術においては隅角部ひずみεを算出する場合には、有限要素法を用いて算出する必要があった。有限要素法を用いて隅角部ひずみεを算出する場合、事前準備に多くの時間とコスト、労力がかかり、地震発生直後などの所望のタイミングで、異なる大きさや、異なる対象を保管するタンクそれぞれの隅角部ひずみεを直ちに算出することができなかった。本開示によれば、有限要素法を用いずに隅角部ひずみ算出式(3)の簡易な式で、事前準備のための多くの時間やコスト、労力をかけずに直ちに異なる大きさや、異なる対象を保管するタンクそれぞれの隅角部ひずみεを直ちに算出することができる。これにより、異なる大きさや、異なる対象を保管するタンクそれぞれに関する振動発生による隅角部ひずみεに基づいて、損傷の程度を迅速に把握できる。
【0040】
ひずみ振幅算出部14は各ピークが発生した隅角部の浮き上がり変位δ毎の隅角部ひずみεを取得する。ひずみ振幅算出部14は、1回目発生の浮き上がり変位のピーク値δ1に対応するタンクの隅角部における隅角部ひずみε1を、第一のひずみ振幅算出式(4)に入力し、1回目発生の浮き上がり変位のピーク値δ1に対応するひずみ振幅Δεを算出する(ステップS107)。
【0041】
【0042】
ひずみ振幅算出部14は、2回目以降発生の浮き上がり変位のピーク値δ2~δ10に対応するタンクの隅角部における隅角部ひずみε2~ε10を、第二のひずみ振幅算出式(5)に入力し、2回目以降発生の浮き上がり変位のピーク値δそれぞれに対応するひずみ振幅Δεを算出する(ステップS108)。
【0043】
【0044】
なお第二のひずみ振幅算出式(5)における係数0.3の値はタンクの大きさなどの種別によって異なってよい。
【0045】
以上の処理により、隅角部ひずみ算出部13は、振動を示す波形に基づいてタンクに生じた1回目の浮き上がり変位のピーク値に対応する第一の前記隅角部ひずみと、波形に基づいてタンクに生じた2回目以降の前記浮き上がり変位のピーク値それぞれに対応する第二の前記隅角部ひずみと、を算出している。また 以上の処理によりひずみ振幅算出部14は、波形が示す振動に応じて底板の隅角部の浮き上がり変位から求まる隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅であって、第一の隅角部ひずみが発生した際のひずみ振幅を式(4)で示す第一ひずみ振幅算出式を用いて算出し、第二の隅角部ひずみが発生した際のひずみ振幅を式(5)で示す第二ひずみ振幅算出式を用いて算出している。
【0046】
ひずみ振幅算出部14は、1回目発生の浮き上がり変位のピーク値δ1に対応するひずみ振幅Δεや、2回目以降発生の浮き上がり変位のピーク値δそれぞれに対応するひずみ振幅Δεを、累積損傷度算出部15へ出力する。
【0047】
累積損傷度算出部15は、1回目発生の浮き上がり変位のピーク値δ1に対応するひずみ振幅Δεや、2回目以降発生の浮き上がり変位のピーク値δそれぞれに対応するひずみ振幅Δεを取得する。今、浮き上がり変位δに対応する隅角部ひずみεが式(6)で表され、
【0048】
【0049】
浮き上がり変位のピーク値が発生する回数(サイクル)ごとの係数をcとすると、ひずみ振幅Δεは、式(7)で表すことができる。なおひずみ振幅とは、浮き上がり変位が零からピークまでのひずみの変動の値である。
【0050】
【0051】
ここで地震発生時の浮き上がりに対する隅角部の強度評価項目は、低サイクル疲労であるとする。隅角部が繰り返し浮き上がる現象は低サイクル疲労である。低サイクル疲労による損傷度は、飯田の最適疲労曲線に当てはめることで得られる。累積損傷度算出部15は、飯田の最適疲労曲線をS-N曲線として、疲労寿命Ncを式(8)で求める。
【0052】
【0053】
なお、式(8)においてfεは、ひずみ振幅に対する安全率でその値を1.1とする。なお安全率とは、基準疲労寿命に対する許容疲労寿命の比率であり、基準疲労寿命÷許容疲労寿命である。
【0054】
累積損傷度算出部15は、マイナー則を適用し、j回目の地震に対する損傷度Djを、当該地震の地震波形(地震動加速度ug’)において発生する浮き上がり変位のピークの回数をiとして、下記の累積損傷度算出式(9)により算出する(ステップS109)。
【0055】
【0056】
ここで、Δεiは、浮き上がり変位のピークの回数に対応する浮き上がりのひずみ振幅を示す。またNc(Δεi)は、浮き上がり変位のピークの回数に対応する浮き上がりのひずみ振幅Δεiの疲労寿命を示す。fcは繰り返し回数に対する安全率を示す。
【0057】
ここで、j回目の地震に対する損傷度Djの複数の地震の合計である累積損傷度Dが1を超えた時が寿命になる。したがって、累積損傷度算出部15は、j回の地震に対する累積損傷度を、各1回の地震に対する損傷度Djを合計して算出する(ステップS110)。また累積損傷度算出部15は、式(10)が示す判定式を満たさない場合、つまり、累積損傷度Dが1を超えた場合、タンクの寿命であると判定し、警告情報などを所定の出力先に出力するようにしてよい。
【0058】
【0059】
情報処理装置1は全ての算出対象のタンクについて処理を終了したかを判定する(ステップS111)。情報処理装置1は全ての算出対象のタンクについて処理を終了していない場合には、ステップS103からの処理を繰り返す。
【0060】
以上の処理によれば、情報処理装置10は、事前準備のための多くの時間やコスト、労力をかけずに算出した所定の1つまたは複数のタンクにおいて、隅角部の浮き上がり変位δのピーク毎の隅角部ひずみεを用いて、1回の地震における当該タンクの損傷度Djや、複数の地震発生による累積損傷度を算出することができる。これにより異なる大きさや、異なる対象を保管するタンクそれぞれの1回の地震における当該タンクの損傷度Djや、複数の地震発生による累積損傷度を、多くの時間やコスト、労力をかけずに算出することができる。
【0061】
情報処理装置10の出力部16は、上述した隅角部ひずみや、損傷度Djや、累積損傷度Dの数値を取得する。そして出力部16は、そのタンク毎の隅角部ひずみや、損傷度Djや、累積損傷度Dの数値や、その数値に応じた表示態様の警告情報をタンク毎に示す表示情報を生成して、所定の出力装置に出力してよい。これにより、異なる大きさや、異なる対象を保管するタンクのうちの、どのタンクで、どの程度の隅角部ひずみが発生しているか、1度の地震でどの程度の損傷度Djが発生したか、過去の複数回の地震でどの程度の累積損傷度Dが発生しているかを確認することが可能となる。そしてこのような表示情報を、地震が終了した数分後に確認することで、タンクが受けた被害に対して迅速に復旧作業などの対処を行うことができる。
【0062】
図8は隅角部ひずみと浮き上がり変位との関係の比較例を示す第一の図である。
図9は隅角部ひずみと浮き上がり変位との関係の比較例を示す第二の図である。
図8と
図9とを用いて異なるタンクについて、本開示による手法(隅角部ひずみ算出式(3):簡易式)と、有限要素法(FEM:Finite Element Method)のそれぞれで算出した隅角部ひずみと隅角部の浮き上がり変位との関係を比較する。
図8で示す例はタンクA(TankA)について本開示による手法と、有限要素法のそれぞれで算出した隅角部ひずみと、隅角部の浮き上がり変位との関係を示す。
図8で示すように本開示による手法と、有限要素法で算出した、隅角部ひずみと隅角部の浮き上がり変位との関係は、いずれもほぼ同じような結果となっている。
【0063】
図9で示す例はタンクB(TankB)について本開示による手法と、有限要素法のそれぞれで算出した隅角部ひずみと隅角部の浮き上がり変位との関係を示す。
図9で示すように本開示による手法と、有限要素法で算出した、隅角部ひずみと隅角部の浮き上がり変位との関係は、いずれもほぼ同じような結果となっている。つまり、本開示の隅角部ひずみを算出するにあたり、隅角部ひずみ算出式(3)の簡易な式で有限要素法と同様の精度の高い隅角部ひずみを算出することが可能となる。
【0064】
図10は情報処理装置の他の構成を示す図である。
図11は他の構成による情報処理装置の処理フローを示す図である。
本開示の情報処理装置10は少なくとも隅角部ひずみ算出部13を備えればよい。
隅角部ひずみ算出部13は、振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、隅角部における隅角部ひずみを算出する(ステップS111)。
【0065】
なお上述の情報処理装置10の例では、タンクに与える振動の例が地震動である場合を例に説明した。しかしながら他の例では、タンクに与える振動の例が地震動以外であってもよい。例えば、風によって振動するタンクの隅角ひずみや、ひずみ振幅、損傷度、累積損傷度を算出するようにしてもよい。
【0066】
なお、上記の情報処理装置は、行う処理の全部または一部を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行う。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0067】
なお、上記の実施形態は下記のように定義されてもよい。
【0068】
(付記1)
振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する隅角部ひずみ算出部を備える情報処理システム。
【0069】
(付記2)
前記隅角部ひずみ算出部は、隅角部ひずみをε、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をt
a、前記底板の降伏応力をσ
yとして、式(1)により表される前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
【数11】
付記1に記載の情報処理システム。
【0070】
(付記3)
前記隅角部ひずみ算出部は、前記振動を示す波形に基づいて前記タンクに生じた1回目の前記浮き上がり変位のピーク値に対応する第一の前記隅角部ひずみと、前記波形に基づいて前記タンクに生じた2回目以降の前記浮き上がり変位のピーク値それぞれに対応する第二の前記隅角部ひずみと、を算出し、
前記第一の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(2)で示す第一ひずみ振幅算出式を用いて算出し、
【数12】
前記第二の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(3)で示す第二ひずみ振幅算出式を用いて算出する、
【数13】
ひずみ振幅算出部とを備える付記2に記載の情報処理システム。
【0071】
(付記4)
前記波形に基づいて前記タンクに生じた前記浮き上がり変位のピークの繰り返し発生に応じた当該繰り返しの回数における前記隅角部の累積損傷度を、累積損傷度算出式を用いて算出する累積損傷度算出部と、
を備える付記3に記載の情報処理システム。
【0072】
(付記5)
前記隅角部ひずみ算出部は、対象のタンクに応じた前記係数であって、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をta、前記底板の降伏応力をσyと、前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
付記2に記載の情報処理システム。
【0073】
(付記6)
発生した前記振動の波形と、前記タンクに生じた前記浮き上がり変位を1質点系非線形水平ばねモデルと、当該モデルから得られた水平方向の振動ピーク値と浮き上がり変位算出式とを用いて、前記浮き上がり変位のピーク値を算出する浮き上がり変位算出部と、
を備える付記1から付記5の何れか一つに記載の情報処理システム。
【0074】
(付記7)
前記振動の波形として地震動の加速度波形を前記地震動が発生している際に取得する取得部と、
を備える付記6に記載の情報処理システム。
【0075】
(付記8)
振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する
情報処理方法。
【0076】
(付記9)
前記隅角部ひずみをε、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をt
a、前記底板の降伏応力をσ
yとして、式(1)により表される前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
【数14】
付記8に記載の情報処理方法。
【0077】
(付記10)
前記隅角部ひずみ算出部は、前記振動を示す波形に基づいて前記タンクに生じた1回目の前記浮き上がり変位のピーク値に対応する第一の前記隅角部ひずみと、前記波形に基づいて前記タンクに生じた2回目以降の前記浮き上がり変位のピーク値それぞれに対応する第二の前記隅角部ひずみと、を算出し、
前記第一の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(2)で示す第一ひずみ振幅算出式を用いて算出し、
【数15】
前記第二の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(3)で示す第二ひずみ振幅算出式を用いて算出する、
【数16】
付記9に記載の情報処理方法。
【0078】
(付記11)
前記波形に基づいて前記タンクに生じた前記浮き上がり変位のピークの繰り返し発生に応じた当該繰り返しの回数における前記隅角部の累積損傷度を、累積損傷度算出式を用いて算出する
を備える付記10に記載の情報処理方法。
【0079】
(付記12)
対象のタンクに応じた前記係数であって、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をta、前記底板の降伏応力をσyと、前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
付記9に記載の情報処理方法。
【0080】
(付記13)
発生した前記振動の波形と、前記タンクに生じた前記浮き上がり変位を1質点系非線形水平ばねモデルと、当該モデルから得られた水平方向の振動ピーク値と浮き上がり変位算出式とを用いて、前記浮き上がり変位のピーク値を算出する
付記8から付記12の何れか一つに記載の情報処理方法。
【0081】
(付記14)
前記振動の波形として地震動の加速度波形を前記地震動が発生している際に取得する
付記13に記載の情報処理方法。
【0082】
(付記15)
情報処理システムのコンピュータを、
振動による、タンクを構成する側板と底板との接合部近傍を示す隅角部の浮き上がり変位波形のピークが示す値と、前記タンクに応じた係数とを隅角部ひずみ算出式に入力し、前記隅角部における隅角部ひずみを算出する隅角部ひずみ算出手段、
として機能させるプログラム。
【0083】
(付記16)
前記隅角部ひずみ算出手段は、隅角部ひずみをε、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をta、前記底板の降伏応力をσyとして、式(1)により表される前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
【数17】
付記15に記載のプログラム。
【0084】
(付記17)
前記隅角部ひずみ算出手段は、前記振動を示す波形に基づいて前記タンクに生じた1回目の前記浮き上がり変位のピーク値に対応する第一の前記隅角部ひずみと、前記波形に基づいて前記タンクに生じた2回目以降の前記浮き上がり変位のピーク値それぞれに対応する第二の前記隅角部ひずみと、を算出し、
前記第一の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(2)で示す第一ひずみ振幅算出式を用いて算出し、
【数18】
前記第二の前記隅角部ひずみの最大と最小との差を示すひずみ振幅を式(3)で示す第二ひずみ振幅算出式を用いて算出する、
【数19】
ひずみ振幅算出手段、
として機能させる付記16に記載のプログラム。
【0085】
(付記18)
前記波形に基づいて前記タンクに生じた前記浮き上がり変位のピークの繰り返し発生に応じた当該繰り返しの回数における前記隅角部の累積損傷度を、累積損傷度算出式を用いて算出する累積損傷度算出手段、
として機能させる付記17に記載のプログラム。
【0086】
(付記19)
前記隅角部ひずみ算出手段は、対象のタンクに応じた前記係数であって、前記底板を構成する鋼板の種別に応じた係数をC、前記タンクにおける底部の液体圧力をp、前記浮き上がり変位のピーク値をδ、前記底板の板厚をta、前記底板の降伏応力をσyと、前記隅角部ひずみ算出式を用いて、前記隅角部ひずみを算出する
付記16に記載のプログラム。
【0087】
(付記20)
発生した前記振動の波形と、前記タンクに生じた前記浮き上がり変位を1質点系非線形水平ばねモデルと、当該モデルから得られた水平方向の振動ピーク値と浮き上がり変位算出式とを用いて、前記浮き上がり変位のピーク値を算出する浮き上がり変位算出手段、
として機能させる付記15から付記19の何れか一つに記載のプログラム。
【0088】
(付記21)
前記振動の波形として地震動の加速度波形を前記地震動が発生している際に取得する取得手段、
として機能させる付記20に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0089】
10・・・情報処理装置
20・・・タンク毎地震動DB
30・・・タンク算出結果DB
11・・・取得部
12・・・浮き上がり変位算出部
13・・・隅角ひずみ算出部
14・・・ひずみ振幅算出部
15・・・累積損傷度算出部
16・・・出力部