(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009853
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び化合物
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20250109BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078857
(22)【出願日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2023106001
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】西村 達哉
(72)【発明者】
【氏名】安池 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】仲里 巧
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA15
2H290AA18
2H290AA33
2H290AA35
2H290AA73
2H290BD01
2H290BF13
2H290BF24
2H290BF25
2H290BF54
2H290BF55
2H290DA03
4J043PA05
4J043PA06
4J043PA19
4J043PC015
4J043PC016
4J043PC065
4J043PC066
4J043PC075
4J043PC076
4J043PC165
4J043PC166
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043QC02
4J043RA05
4J043SA06
4J043SA47
4J043SA63
4J043SA71
4J043SB04
4J043SB05
4J043TA22
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA022
4J043UA031
4J043UA041
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA331
4J043UA381
4J043UA391
4J043UA461
4J043UB011
4J043UB021
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB221
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA062
4J043XA16
4J043XA19
4J043ZA60
4J043ZB60
(57)【要約】
【課題】不純物耐性、チルト付与性及びシール材密着性に優れた液晶配向膜を得ることができ、しかもPSA型液晶素子の製造時において液晶セルに対する光照射時間を短縮することができる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基である。W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。)を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する第1の重合体と、ポリアミック酸等であって、第1の重合体とは異なる第2の重合体とを含有し、第1の重合体及び第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、含窒素構造を有するジアミンに由来する構造単位を含む液晶配向剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基である。W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。「*」は結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する第1の重合体と、
ポリアミック酸、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であって、ベンゾフェノン構造を有する構造単位を実質的に含まない第2の重合体と、
を含有し、
前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、2級アミノ基、3級アミノ基、*1-NR1-*2及び含窒素複素環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である含窒素構造(ただし、R1は1価の脱離性基である。「*1」及び「*2」は、(チオ)カルボニル基中の炭素を除く炭素原子との結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含む、液晶配向剤。
【請求項2】
前記第1の重合体は、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、前記含窒素複素環構造を有するジアミンに由来する構造単位を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記第1の重合体がポリアミック酸である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記第2の重合体は、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であり、テトラカルボン酸無水物に由来する構造単位を含み、
前記テトラカルボン酸無水物に由来する構造単位のうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が50モル%以下である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、垂直配向性基を有する構造単位を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造(ただし、R2は水素原子又は1価の有機基である。「*」は芳香環との結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
架橋剤を更に含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
「*-X
1-W
1」で表される基を有するジアミンが、下記式(CA-1)で表される、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化1】
(式(CA-1)中、X
1は2価の連結基である。X
2は単結合又は「*-X
1-W
1」で表される部分構造を有する2価の基である。R
5及びR
6は、互いに独立して1価の置換基である。r1は0~4の整数である。r2は0~5の整数である。
【請求項10】
「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基である。W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。「*」は結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する重合体と、
架橋剤と、
を含有する、液晶配向剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【請求項13】
下記式(CA-1-1)で表される化合物。
【化2】
(式(CA-1-1)中、R
8は炭素数1~10のアルカンジイル基である。Z
1は酸素原子又は-NR
9-である。R
9は水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基である。R
5及びR
6は、互いに独立して1価の置換基である。r1は0~4の整数である。r2は0~5の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子としては、電極構造や液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されており、例えば、TN型やSTN型、VA型、MVA型、面内スイッチング型(IPS型)、FFS型、光学補償ベンド型(OCB型)等の各種液晶素子が知られている。これら液晶素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜は一般に、重合体成分が有機溶媒に溶解又は分散されてなる液晶配向剤を基板表面に塗布し、好ましくは加熱することによって基板上に形成される。
【0003】
液晶分子にプレチルト角を付与する技術として、従来、液晶配向剤により形成された塗膜の表面を布等により一定の方向に擦るラビング法や、感光性の塗膜に放射線を照射する光配向法が知られている。また従来、液晶中に光重合性化合物を予め添加しておき、液晶セルに電圧を印加しながら放射線を照射することにより、液晶配向膜近傍の液晶分子にプレチルト角を付与する方法(PSA(Polymer Sustained Alignment))も提案されている。PSA技術によれば、液晶分子の応答速度を改善でき、また透過率を向上できるとされている。
【0004】
近年における液晶素子の高精細化や多用途化の要求に伴い、液晶素子には電気特性や表示品位の更なる改善が求められており、これを実現するべく種々の液晶配向剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、液晶配向膜を構成する重合体成分に、光吸収によりラジカルを発生するラジカル発生構造を導入し、これによりPSA方式の液晶表示素子において液晶の応答速度を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶素子の高精細化に伴い、品質に対する要求は更に厳しくなっている。例えば、4Kや8Kといった高精細な液晶パネルには絶縁膜が設けられることが多い。その一方で、絶縁膜が設けられた液晶パネルでは、絶縁膜からのイオン性不純物が液晶配向膜を介して液晶中に溶出することがある。イオン性不純物が液晶中に溶出した場合、電圧保持率が低下したり蓄積電荷が多くなったりするなど、液晶素子の品質が低下することが懸念される。そのため、液晶配向膜には、素子内に生じた不純物が液晶中に侵入することを抑制し、不純物に起因する液晶素子の品質低下を招きにくい特性(以下、「不純物耐性」ともいう)が求められる。また、PSA型液晶素子の製造に適用することを考慮すると、液晶セルに対する光照射の際にはできるだけ少ない照射量によって所望のプレチルト角を付与できること(以下、「チルト付与性」ともいう)が望ましい。
【0007】
高精細な液晶素子には、不純物耐性やチルト付与性の更なる改善だけでなく、力学特性や基板への密着性に優れた液晶配向膜が求められる。例えば、スマートフォンやタブレットPC等に代表されるモバイル用途に加え、大型テレビやPC用モニターにおいても、デザイン性の観点や表示装置の小型化の観点から狭額縁化を図ることが行われている。狭額縁化を図る方法の1つとしては、基板面全体に液晶配向膜を形成した後、シール材を液晶配向膜上に塗布して基板同士を貼り合わせる方法が知られている。その一方で、液晶配向膜上にシール材を配置すると、シール材を配置した液晶配向膜部分に力がかかりやすいため、液晶配向膜の力学的強度や基板への密着性が十分でない場合には基板間の密着性(以下、「シール材密着性」ともいう)の低下を招き、外力の作用等により基板同士の剥がれが生じやすくなることが懸念される。
【0008】
PSA型液晶素子において、液晶層中に光重合性化合物が残存したままであると、残存する光重合性化合物の重合反応が起きることによって液晶のプレチルト角が経時的に変化することが懸念される。そこで、PSA型液晶素子の製造工程では、液晶にプレチルト角を付与するための光照射(これを以下、「第1照射」とも称する)を行った後に、液晶中の光重合性化合物を消費させることを目的として、液晶セルに電圧を印加しない状態で、第1照射と同等か又はそれよりも弱い強度の光を長時間(例えば、100分間程度)液晶セルに照射(これを以下、「第2照射」とも称する)することがある。この第2照射による光照射時間を長くすることによって液晶層中の光重合性化合物の消費を促すことが可能と考えられる一方、第2照射の長時間化によって液晶セルに与えるダメージが大きくなることが懸念される。第2照射による液晶セルのダメージを極力少なくする観点からすると、第2照射による光照射時間をできるだけ短くしつつ、液晶中の光重合性化合物を第2照射によって消費させ、これによりプレチルト角の経時変化を抑制することが望ましい。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、不純物耐性、チルト付与性及びシール材密着性に優れた液晶配向膜を得ることができ、しかもPSA型液晶素子の製造時において液晶セルに対する光照射時間を短縮することができる液晶配向剤を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下の液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び化合物が提供される。
【0011】
〔1〕 「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基である。W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。「*」は結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する第1の重合体と、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であって、ベンゾフェノン構造を有する構造単位を実質的に含まない第2の重合体と、を含有し、前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、2級アミノ基、3級アミノ基、*1-NR1-*2及び含窒素複素環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である含窒素構造(ただし、R1は1価の脱離性基である。「*1」及び「*2」は、(チオ)カルボニル基中の炭素を除く炭素原子との結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含む、液晶配向剤。
【0012】
〔2〕 「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基である。W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。「*」は結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する重合体と、架橋剤と、を含有する、液晶配向剤。
【0013】
〔3〕 上記〔1〕又は〔2〕の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
〔4〕 上記〔3〕の液晶配向膜を備える液晶素子。
〔5〕 下記式(CA-1-1)で表される化合物。
【化1】
(式(CA-1-1)中、R
8は炭素数1~10のアルカンジイル基である。Z
1は酸素原子又は-NR
9-である。R
9は水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基である。R
5及びR
6は、互いに独立して1価の置換基である。r1は0~4の整数である。r2は0~5の整数である。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の液晶配向剤によれば、不純物耐性、チルト付与性及びシール材密着性に優れた液晶配向膜を得ることができる。また、本発明の液晶配向剤によれば、PSA型液晶素子の製造時において液晶セルに対する光照射の時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】化合物(DA-3)の
1H-NMRスペクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の液晶配向剤は、ベンゾフェノン構造を有する特定のジアミンに由来する構造単位を含み、かつベンゾフェノン構造を側鎖に有する重合体を含有する。本開示の液晶配向剤の具体的態様としては、以下の第1の液晶配向剤及び第2の液晶配向剤が挙げられる。
【0017】
第1の液晶配向剤:「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する第1の重合体と、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であって、ベンゾフェノン構造を有する構造単位を実質的に含まない第2の重合体と、を含有する。第1の重合体及び第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種は、2級アミノ基、3級アミノ基、*1-NR1-*2及び含窒素複素環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である含窒素構造(以下、「含窒素構造FN」ともいう)を有するジアミンに由来する構造単位を含む。「*-X1-W1」で表される基において、X1は2価の連結基であり、W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基であり、「*」は結合手を表す(以下同じ)。*1-NR1-*2で表される基において、R1は1価の脱離性基であり、「*1」及び「*2」は(チオ)カルボニル基中の炭素を除く炭素原子との結合手を表す。
【0018】
第2の液晶配向剤:「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する重合体と、架橋剤と、を含有する。
以下、本開示の液晶配向剤の第1の実施態様である第1の液晶配向剤と、第2の実施態様である第2の液晶配向剤についてそれぞれ説明する。
【0019】
ここで、本明細書において、「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。「芳香環」は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む意味である。「有機基」とは、炭素を含む化合物(すなわち有機化合物)から任意の水素原子を取り除いてなる原子団をいう。
【0020】
重合体の「主鎖」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分をいう。この「幹」の部分が環構造を含むことは許容される。例えば、「特定構造を主鎖に有する」とは、その特定構造が主鎖の一部分を構成することをいう。「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。「(チオ)カルボニル」は、カルボニル及びチオカルボニルを含む意味である。
【0021】
≪第1の液晶配向剤≫
第1の液晶配向剤は、上述した第1の重合体と第2の重合体とを含有する。なお、液晶配向剤に含まれる各成分については特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
第1の重合体は、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位を含む重合体を得ることができる限り、その主骨格の種類は特に限定されない。第1の重合体は、ジアミン化合物を含む単量体を用いて得られる縮重合体が好ましく、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。液晶配向性及び電気特性に優れた液晶素子を得る観点、及び「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位の導入しやすさの観点から、第1の重合体は、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリアミック酸であることがより好ましい。
【0023】
第2の重合体は、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である。第2の重合体を上記の重合体とすることで、膜中における第1の重合体の偏在化を促進させ、これによりチルト付与性を高めることができる。第1の重合体がポリイミドである場合、第2の重合体は、液晶配向膜のチルト付与性及びシール密着性を改善する効果を高くできる点で、ポリアミック酸、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、残留DCの低減効果をより高くできる点で、ポリアミック酸であることが更に好ましい。第2の重合体は、ベンゾフェノン構造を有する構造単位を実質的に含まず、この点において第1の重合体とは異なる。
【0024】
なお、本発明の効果を損なわない範囲において、第2の重合体がベンゾフェノン構造を有する構造単位を僅かに含むことは許容される。具体的には、第2の重合体において、ベンゾフェノン構造を有する構造単位の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、0.5モル%未満が好ましく、0.1モル%未満がより好ましく、0モル%であることが更に好ましい。
【0025】
液晶配向剤に含有される第1の重合体と第2の重合体との組み合わせの好ましい態様としては、以下の態様〔1A〕~〔4A〕が挙げられる。
〔態様1A〕 第1の重合体及び第2の重合体がポリアミック酸である態様。
〔態様2A〕 第1の重合体がポリアミック酸であり、第2の重合体がポリアミック酸と、ポリオルガノシロキサン又は付加重合体とである態様。
〔態様3A〕 第1の重合体がポリアミック酸であり、第2の重合体がポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である態様。
〔態様4A〕 第1の重合体がポリイミドであり、第2の重合体がポリアミック酸、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である態様。
【0026】
膜中における第1の重合体の偏在化を促進させてチルト付与性をより高める観点から、上記のうち、態様1A、態様2A又は態様3Aが好ましく、チルト付与性及びシール材密着性に優れた液晶配向膜を得ることができる点で、態様1Aがより好ましい。
【0027】
第1の液晶配向剤において、第1の重合体は、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位を含む。また、第1の重合体及び第2の重合体のうち一方又は両方は、含窒素構造FNを有するジアミンに由来する構造単位を含む。
【0028】
第1の重合体が含窒素構造FNを有するジアミンに由来する構造単位を含む場合、第1の重合体は、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位と共に、含窒素構造FNを有し、かつ「*-X1-W1」で表される基を有しないジアミンに由来する構造単位を含んでいてもよい。また、「*-X1-W1」で表される基と含窒素構造FNとを有するジアミンに由来する構造単位を第1の重合体が含んでいてもよい。単量体の合成容易性の観点からすると、第1の重合体が含窒素構造FNを有するジアミンに由来する構造単位を含む場合、第1の重合体は、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位と共に、含窒素構造FNを有し、かつ「*-X1-W1」で表される基を有しないジアミンに由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0029】
なお、第2の重合体がポリオルガノシロキサン又は付加重合体である場合には、第1の重合体が含窒素構造FNを有するジアミンに由来する構造単位を含む。
【0030】
第1の重合体及び第2の重合体のうち一方又は両方は、「*-X1-W1」で表される基及び含窒素構造FNとは異なる機能性基を更に有していてもよい。液晶配向膜のチルト付与性を更に高めることができる点で、第1の重合体及び第2の重合体のうち一方又は両方は、垂直配向性基を有する構造単位を含むことが好ましい。
【0031】
垂直配向性基を有する構造単位は、第1の重合体が含んでいてもよく、第2の重合体が含んでいてもよく、第1の重合体及び第2の重合体の両方が含んでいてもよい。また、垂直配向性基を有する構造単位がジアミンに由来する構造単位である場合、垂直配向性基を有する構造単位を与えるジアミンは、「*-X1-W1」で表される基及び含窒素構造FNをいずれも有しないジアミンであってもよく、「*-X1-W1」で表される基及び含窒素構造FNのうち少なくとも一方を有するジアミンであってもよい。
【0032】
例えば、第1の重合体が垂直配向性基を有するジアミンに由来する構造単位を含む場合、第1の重合体は、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位と共に、垂直配向性基を有し、かつ「*-X1-W1」で表される基を有しないジアミンに由来する構造単位を含んでいてもよい。また、「*-X1-W1」で表される基と垂直配向性基とを有するジアミンに由来する構造単位を第1の重合体が含んでいてもよく、「*-X1-W1」で表される基と含窒素構造FNと垂直配向性基とを有するジアミンに由来する構造単位を第1の重合体が含んでいてもよい。単量体の合成容易性の観点及び重合体における各機能性基の含有量の調整しやすさの観点からすると、第1の重合体が垂直配向性基を有するジアミンに由来する構造単位を含む場合、第1の重合体は、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位と共に、垂直配向性基を有し、かつ「*-X1-W1」で表される基を有しないジアミンに由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0033】
液晶配向膜のチルト付与性を高くする観点から、少なくとも第1の重合体が垂直配向性基を有する構造単位を含むことが好ましく、合成容易性の観点から、第1の重合体中の垂直配向性基を有する構造単位は、垂直配向性基を有するジアミンに由来する構造単位であることがより好ましい。
【0034】
第1の重合体及び第2の重合体のうち一方又は両方は更に、「*-X1-W1」で表される基及び含窒素構造FNとは異なる機能性基として、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造(ただし、R2は水素原子又は1価の有機基であり、「*」は芳香環との結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含んでいてもよい。芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を重合体成分中に導入することにより、液晶素子の電荷の蓄積を抑制する効果を更に高めることができる。
【0035】
芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造は、第1の重合体及び第2の重合体のうち一方又は両方の主鎖に導入されてもよく、側鎖に導入されてもよい。また、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造の一部が主鎖に導入され、残りの部分が側鎖に導入されていてもよい。芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有する構造単位を与えるジアミンは、「*-X1-W1」で表される基、含窒素構造FN及び垂直配向性基をいずれも有しないジアミンであってもよく、「*-X1-W1」で表される基、含窒素構造FN及び垂直配向性基のうち少なくともいずれかを有するジアミンであってもよい。
【0036】
例えば、第1の重合体が、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有するジアミンに由来する構造単位を含む場合、第1の重合体は、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位と共に、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有し、かつ「*-X1-W1」で表される基を有しないジアミンに由来する構造単位を含んでいてもよい。また、「*-X1-W1」で表される基と、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造とを有するジアミンに由来する構造単位を第1の重合体が含んでいてもよい。
【0037】
なお、第2の重合体がポリオルガノシロキサン又は付加重合体である場合、第1の重合体が、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有するジアミンに由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0038】
次に、第1の液晶配向剤の重合体成分に含まれる、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位、含窒素構造FNを有するジアミンに由来する構造単位、垂直配向性基を有する構造単位、及び芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有するジアミンに由来する構造単位の詳細についてそれぞれ説明する。なお、以下では便宜上、「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンに由来する構造単位を「構造単位(UA)」、含窒素構造FNを有するジアミンに由来する構造単位を「構造単位(UB)」、垂直配向性基を有する構造単位を「構造単位(UC)」、及び芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有するジアミンに由来する構造単位を「構造単位(UD)」とも称する。ただし、各構造単位は、複数種の機能性基を有していてもよい。例えば、構造単位(UA)は、「*-X1-W1」で表される基と共に含窒素構造FNを有していてもよい。「*-X1-W1」で表される基と含窒素構造FNとを有する構造単位は、構造単位(UA)でもあり、構造単位(UB)でもある。また同様に、「*-X1-W1」で表される基と垂直配向性基とを有する構造単位は、構造単位(UA)でもあり、構造単位(UC)でもある。
【0039】
・構造単位(UA)について
第1の重合体が有する構造単位(UA)は、「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基であり、W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。「*」は結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位である。X1で表される2価の連結基としては、-O-、-CO-O-*1、-O-CO-*1、-NR3-CO-*1、-CO-NR3-*1、-Y1-R7-Y2-*1、-R8-Z1-*1等が挙げられる。
【0040】
ここで、X1で表される2価の連結基において、R3は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。R7は、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基である。R7は、これらのうち、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1~10のアルカンジイル基がより好ましい。Y1及びY2は、互いに独立して、-O-、-CO-O-*2、-O-CO-*2、-NR4-CO-*2又は-CO-NR4-*2である。R4は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。R8は、炭素数1~10のアルカンジイル基である。R8は、これらのうち、炭素数1~3のアルカンジイル基が好ましい。Z1は、酸素原子又は-NR9-である。R9は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基である。「*1」は、W1との結合手を表す。「*2」は、アルカンジイル基との結合手を表す。なお、構造単位(UA)中の「*-X1-W1」で表される基は、第1の重合体の側鎖に配置される。
【0041】
R9で表される1価の熱脱離性基は、熱により脱離する有機基である。熱脱離性基としては、例えば、カルバメート系脱離性基、アミド系脱離性基、イミド系脱離性基、スルホンアミド系脱離性基等が挙げられる。これらのうち、熱による脱離性が高い点で、カルバメート系脱離性基が好ましい。カルバメート系脱離性基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(F-moc基)等が挙げられる。熱による脱離性に優れ、かつ脱保護した部分の膜中の残存量を少なくできる点で、これらの中でも特に、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)が好ましい。
【0042】
構造単位(UA)を与えるジアミン(以下、「第1のジアミン」ともいう)は芳香族ジアミンであることが好ましい。第1のジアミン中の2個の1級アミノ基は、同一の芳香環に結合していることが好ましく、同一のベンゼン環に結合している(すなわち、ジアミノフェニル基を有している)ことがより好ましい。第1のジアミンがジアミノフェニル基を有する場合、ベンゼン環に結合する1個のアミノ基の結合位置は特に限定されず、他の基(「*-X1-W1」で表される基)に対して、2,4-位、2,5-位又は3,5-位が挙げられる。これらのうち、2,4-位又は3,5-位が好ましい。
【0043】
ベンゾフェノン構造は、2個のベンゼン環がカルボニル基で連結されてなる構造を有する。第1のジアミン中のベンゾフェノン構造において、ベンゼン環には置換基が結合していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、垂直配向性基、含窒素構造FNを有する基等が挙げられる。
【0044】
第1のジアミンの好ましい具体例としては、下記式(CA-1)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
(式(CA-1)中、X
1は2価の連結基である。X
2は単結合又は「*-X
1-W
1」で表される部分構造を有する2価の基である。R
5及びR
6は、互いに独立して1価の置換基である。r1は0~4の整数である。r2は0~5の整数である。)
【0045】
上記式(CA-1)において、R5で表される1価の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基及び水酸基等が挙げられる。R6で表される1価の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、垂直配向性基及び含窒素構造FNを有する基等が挙げられる。
X2は、単量体の合成容易性の観点から、単結合が好ましい。
X1で表される2価の連結基及び2個の1級アミノ基の結合位置の具体例は上述したとおりである。
【0046】
第1のジアミンのより具体的な例としては、下記式(C1-1)~式(C1-24)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、式中の「Boc」はtert-ブトキシカルボニル基を表す(以下同じ)。
【化3】
【化4】
【0047】
第1の重合体における構造単位(UA)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(UA)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。第1の重合体における構造単位(UA)の含有割合が上記範囲内にあると、より良好なチルト付与性を確保でき、またPSA型液晶素子の製造時における第2照射の照射時間を短縮しながら、プレチルト角の経時変化が抑制された液晶素子を得ることができる。
【0048】
なお、上記式(C1-14)又は式(C1-15)で表される化合物、及び上記式(C1-20)~式(C1-22)のそれぞれで表される化合物は、「*-X1-W1」で表される基と含窒素構造FNとを有するジアミンである。「*-X1-W1」で表される基と含窒素構造FNとを有するジアミンに由来する構造単位の含有割合については、構造単位(UA)の説明が適用される。また、上記式(C1-16)で表される化合物は、「*-X1-W1」で表される基と垂直配向性基とを有するジアミンである。「*-X1-W1」で表される基と垂直配向性基とを有するジアミンに由来する構造単位の含有割合については、構造単位(UA)の説明が適用される。また同様に、上記式(C1-2)、式(C1-5)、式(C1-7)、式(C1-8)、式(C1-9)及び式(C1-12)のそれぞれで表される化合物は、「*-X1-W1」で表される基と、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造とを有するジアミンである。「*-X1-W1」で表される基と、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造とを有するジアミンに由来する構造単位の含有割合については、構造単位(UA)の説明が適用される。
【0049】
・式(CA-1-1)で表される化合物
本発明によれば、下記式(CA-1-1)で表される化合物が提供される。下記式(CA-1-1)で表される化合物は、不純物耐性、チルト付与性及びシール材密着性に優れた液晶配向膜を得るとともに、PSA型液晶素子の製造時において液晶セルに対する光照射時間を短縮できる液晶配向剤に含有させる重合体成分の単量体として好適である。
【化5】
(式(CA-1-1)中、R
8は炭素数1~10のアルカンジイル基である。Z
1は酸素原子又は-NR
9-である。R
9は水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基である。R
5及びR
6は、互いに独立して1価の置換基である。r1は0~4の整数である。r2は0~5の整数である。)
【0050】
上記式(CA-1-1)において、R8、R5、R6及びR9の具体例は上述したとおりである。
上記式(CA-1-1)で表される化合物の具体例としては、上記式(C1-3)、式(C1-4)、式(C1-14)及び式(C1-16)~式(C1-24)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【0051】
上記式(CA-1-1)で表される化合物は、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより合成することができる。合成方法の一例としては、上記式(CA-1-1)中の1級アミノ基に変えてニトロ基を有するジニトロ中間体を合成し、次いで、得られたジニトロ中間体のニトロ基を適当な還元系を用いてアミノ化する方法が挙げられる。
【0052】
ジニトロ体を合成する方法は、目的とする化合物に応じて適宜選択することができる。例えば、ベンゾフェノン構造を有する水酸基含有化合物と、ハロゲン化したジニトロ化合物とを好ましくは有機溶媒中、塩基及び必要に応じて触媒の存在下で反応させる方法;ベンゾフェノン構造を有する水酸基含有化合物と、トシル基を含有するジニトロ化合物とを好ましくは有機溶媒中、塩基及び必要に応じて触媒の存在下で反応させる方法;ベンゾフェノン構造を有する酸ハロゲン化物と、アミノ基を含有するジニトロ化合物とを好ましくは有機溶媒中、塩基及び必要に応じて触媒の存在下で縮合させる方法;ベンゾフェノン構造を有するカルボン酸と、アミノ基を含有するジニトロ化合物とを好ましくは有機溶媒中、塩基及び必要に応じて触媒の存在下で縮合させる方法、等が挙げられる。
【0053】
ジニトロ中間体の還元反応は、好ましくは有機溶媒中、例えばパラジウム炭素、酸化白金、亜鉛、鉄、スズ、ニッケル、白金炭素、オスミウム炭素等の触媒を用いて実施することができる。ここで使用する有機溶媒としては、例えば酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、アルコール類等が挙げられる。また、これらの有機溶媒を2種以上混合して使用してもよい。ただし、上記式(CA-1-1)で表される化合物の合成方法は上記方法に限定されるものではない。
【0054】
・構造単位(UB)について
構造単位(UB)は、2級アミノ基、3級アミノ基、*1-NR1-*2及び含窒素複素環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である含窒素構造FNを有するジアミンに由来する構造単位である。ただし、R1は1価の脱離性基である。「*1」及び「*2」は、(チオ)カルボニル基中の炭素を除く炭素原子との結合手を表す。本開示の液晶配向剤が、構造単位(UB)を有する重合体を含むことにより、第1の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を有する液晶素子では、絶縁膜等に由来する不純物を液晶配向膜で吸着し膜中に留めることによって不純物の液晶層への侵入を抑制する効果が高まり、これにより不純物の発生に起因する電圧保持率の低下を抑制することができると考えられる。
【0055】
構造単位(UB)を与えるジアミン(以下、「第2のジアミン」ともいう)が*1-NR1-*2を有する場合、R1で表される脱離性基は、熱により脱離する熱脱離性基が好ましい。熱脱離性基としては、上記R9で表される熱脱離性基の説明が適用される。
【0056】
*1-NR1-*2で表される基の2個の結合手は、アルカンジイル基、置換若しくは無置換の2価の脂環基又は置換若しくは無置換の2価の芳香環基に結合していることが好ましい。これらの中でも、シール材密着性の改善効果を高めることができる点で、アルカンジイル基が好ましく、直鎖状のアルカンジイル基がより好ましい。
【0057】
(含窒素複素環構造)
含窒素複素環構造中の含窒素複素環は、芳香族複素環であってもよく、脂肪族複素環であってもよい。また、当該含窒素複素環は、単環であってもよく縮合環であってもよい。これらの具体例としては、含窒素芳香族複素環として、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、ベンゾイミダゾール環、カルバゾール環及びピラジン環等が挙げられる。含窒素脂肪族複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環及びヘキサメチレンイミン環等が挙げられる。
【0058】
第2のジアミンが有する含窒素複素環は、これらのうち、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、キノリン環、イミダゾール環及びベンゾイミダゾール環よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。含窒素複素環は、強い塩基性を示す観点から、これらのうちピリジン環、ピペラジン環又はイミダゾール環が好ましく、更に重合体の溶解性の観点から、ピリジン環が特に好ましい。第2のジアミンが有する含窒素複素環には置換基が結合されていてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1~3のアルキル基等が挙げられる。
【0059】
構造単位(UB)が含窒素複素環を有する場合、構造単位(UB)を含む重合体は、含窒素複素環構造を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。また、構造単位(UB)を含む重合体は、含窒素複素環を主鎖及び側鎖の両方に有していてもよい。不純物耐性の改善効果をより高くできる点で、構造単位(UB)を含む重合体は、含窒素複素環を側鎖に有していることが特に好ましい。
【0060】
含窒素複素環構造の具体例としては、下記式(2a-1)~式(2a-12)のそれぞれで表される部分構造が挙げられる。
【化6】
(式(2a-1)~式(2a-12)中、「*」は結合手を表す。)
【0061】
液晶素子の不純物耐性をより向上させることができる点で、構造単位(UB)を与えるジアミン(第2のジアミン)は、上記のうち、含窒素複素環構造を有することが好ましく、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、キノリン環、イミダゾール環及びベンゾイミダゾール環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有することがより好ましい。中でも、第2のジアミンは、含窒素複素環構造を重合体の側鎖に導入可能なジアミンであることが特に好ましい。
【0062】
第2のジアミンの具体例としては、下記式(C2-1)~式(C-29)のそれぞれで表される化合物、上記式(C1-14)又は式(C1-15)で表される化合物、及び式(C1-20)~(C1-22)で表される化合物等が挙げられる。
【化7】
【化8】
【0063】
構造単位(UB)は、第1の重合体が有していてもよく、第2の重合体が有していてもよい。また、第1の重合体及び第2の重合体の両方が構造単位(UB)を有していてもよい。液晶素子中の不純物に起因して液晶素子の駆動時に電荷が蓄積することを抑制し、DC残像が生じにくい液晶素子を得る観点から、第1の重合体は、構造単位(UA)と構造単位(UB)を含むことが好ましい。この場合、第2の重合体は、構造単位(UB)を含んでいてもよく、含まなくてもよい。第1の重合体が構造単位(UA)と構造単位(UB)とを含む場合、第1の重合体は、含窒素構造FNを有し、かつ「*-X1-W1」で表される基を有しないジアミンに由来する構造単位を含むことにより、構造単位(UA)とは別に構造単位(UB)を含むことが好ましい。
【0064】
第1の重合体が構造単位(UB)を含む場合、構造単位(UB)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(UB)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、70モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。第1の重合体における構造単位(UB)の含有割合を上記範囲内にすることで、より優れた不純物耐性を示す液晶配向膜を形成することができる点で好適である。
【0065】
また、第2の重合体における構造単位(UB)の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、40モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
【0066】
・構造単位(UC)について
構造単位(UC)は、液晶配向剤を用いて形成される有機膜にプレチルト角を付与することを目的として重合体成分中に導入される。垂直配向性基を側鎖に有する重合体を本開示の液晶配向剤に含有させることにより、液晶配向膜のチルト付与性を更に高めることができる。
【0067】
垂直配向性基は、液晶配向膜にプレチルト角を付与する機能を有する基である。垂直配向性基としては、炭素数4~30のアルキル基、炭素数4~30のアルコキシ基、炭素数4~30のフルオロアルキル基、炭素数4~30のフルオロアルコキシ基、脂環又は芳香環に炭素数1~20の鎖状構造が結合した構造を有する基、2個以上の環が直接又は2価の連結基を介して結合した構造を有する基、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の基等が挙げられる。
【0068】
垂直配向性基の好ましい具体例としては、下記式(3)で表される基が挙げられる。
*-R31-R32-R33-R34 …(3)
(式(3)中、R31及びR33は、互いに独立して、単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、又は置換若しくは無置換のシクロアルキレン基であり、R32は、単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、又は-R37-B31-R38-(ただし、R37及びR38は、互いに独立して、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロアルキレン基であり、B31は単結合、-O-、-COO-*4、-OCO-*4、-OCH2-*4、-CH2O-*4、又は炭素数1~3のアルカンジイル基である。「*4」は、R38との結合手を表す。)である。R34は、水素原子、フッ素原子、CH3COO-*5(「*5」は、R33との結合手を表す。)、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のフルオロアルコキシ基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の基である。ただし、R31、R32及びR33の全部が単結合であるか、又はR31、R32及びR33が有する置換若しくは無置換のフェニレン基及び置換若しくは無置換のシクロアルキレン基の合計が1個である場合、R34は、炭素数4~20のアルキル基、炭素数4~20のフルオロアルキル基、炭素数4~20のアルコキシ基、炭素数4~20のフルオロアルコキシ基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の基である。「*」は結合手を表す。)
【0069】
上記式(3)において、R34で表される炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のフルオロアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基又は炭素数1~30のフルオロアルコキシ基は、直鎖状であることが好ましい。これらの基は、好ましくは炭素数2~30であり、より好ましくは炭素数3~30であり、更に好ましくは炭素数4~30である。
R31、R32及びR33の全部が単結合である場合、R34の炭素数は、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、12以上が更に好ましい。
R34のステロイド骨格を有する炭素数17~51の基としては、例えばコレスタニル基、コレステリル基、ラノスタニル基等が挙げられる。
【0070】
良好な液晶配向性を示すとともに信頼性の高い液晶素子を得る観点から、上記式(3)で表される基においてR31、R32及びR33は、置換又は無置換のフェニレン基及びシクロアルキレン基の一方又は両方を合計2個以上有していることが好ましく、フェニレン基及びシクロアルキレン基の一方又は両方を合計2~4個有していることがより好ましい。
【0071】
上記式(3)で表される基の具体例としては、下記式(3-1)~式(3-15)のそれぞれで表される基、炭素数8~30の直鎖状アルキル基、炭素数8~30の直鎖状アルコキシ基、及び炭素数8~30の直鎖状フルオロアルキル基が挙げられる。
【化9】
(式(3-1)~式(3-13)中、Rは、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数1~20のフルオロアルコキシ基である。X
31は、-O-、-COO-、-OCO-又は炭素数1~3のアルカンジイル基である。「*」は結合手を表す。)
【0072】
垂直配向性基を有する構造単位を与える単量体がジアミンである場合、垂直配向性基を有するジアミン(以下、「第3のジアミン」ともいう)は芳香族ジアミンであることが好ましい。第3のジアミン中の2個の1級アミノ基は同一の芳香環に結合していることが好ましく、同一のベンゼン環に結合していることがより好ましい。第3のジアミンがジアミノフェニル基を有する場合、ベンゼン環に結合する1個のアミノ基の結合位置は特に限定されない。具体的には、他の基(垂直配向性基を有する基)に対して、2,4-位、2,5-位又は3,5-位が挙げられる。これらのうち、2,4-位又は3,5-位が好ましい。
【0073】
垂直配向性基は、芳香環に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して芳香環に結合していてもよい。当該2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-*3、-OCO-*3、-NR35-、-NR35-CO-*3、-CO-NR35-*3、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルカンジイル基が有する水素原子が水酸基で置換された2価の基、-O-R36-*3、又は-R36-O-*3(ただし、R35は水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、R36は炭素数1~3のアルカンジイル基である。「*3」は、R31との結合手を表す。)が挙げられる。
【0074】
構造単位(UC)は、第1の重合体が有していてもよく、第2の重合体が有していてもよい。また、第1の重合体及び第2の重合体の両方が構造単位(UC)を有していてもよい。液晶配向剤を用いて形成される有機膜に対し、できるだけ少ない光照射量により所望のプレチルト角を付与する観点からすると、第1の重合体は、構造単位(UA)と構造単位(UC)とを含むことが好ましい。この場合、第2の重合体は、構造単位(UC)を含んでいてもよく、含まなくてもよい。第1の重合体が構造単位(UA)と構造単位(UC)とを含む場合、第1の重合体は、垂直配向性基を有し、かつ「*-X1-W1」で表される基を有しないジアミンに由来する構造単位を含むことにより、構造単位(UA)とは別に構造単位(UC)を含むことが好ましい。
【0075】
第1の重合体が構造単位(UC)を含む場合、構造単位(UC)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(UC)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。
【0076】
第2の重合体が構造単位(UC)を含む場合、構造単位(UC)の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(UC)の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
【0077】
・構造単位(UD)について
構造単位(UD)は、芳香環と当該芳香環に結合する*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-(ただし、R2は水素原子又は1価の有機基であり、「*」は芳香環との結合手を表す。)とを有するジアミン(以下、「第4のジアミン」ともいう)に由来する構造単位である。構造単位(UD)を重合体に導入することによって、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造が重合体に導入される。このような部分構造を有する構造単位(UD)を含む重合体を液晶配向剤に含有させることにより、液晶素子の電荷の蓄積を抑制する効果を更に高めることができる。
【0078】
第4のジアミンにおいて、*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合する芳香環は、芳香族炭化水素環でもよく芳香族複素環でもよい。これらのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環又はピリミジン環が好ましい。*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合する芳香環は更に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
【0079】
R2で表される1価の有機基としては、炭素数1~5のアルキル基、1価の脱離性基が挙げられる。1価の脱離性基の具体例及び好ましい例については、第2のジアミンが有するR1で表される脱離性基の説明において示した基と同様のものが挙げられる。R2は、好ましくは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基である。なお、第4のジアミンにおいて、*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-はウレア結合の一部を構成していてもよい。
【0080】
芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造の一部又は全部を重合体の側鎖に導入する場合、第4のジアミンの具体例としては、上記式(C1-2)、式(C1-5)、式(C1-7)、式(C1-8)、式(C1-9)、式(C2-11)、式(C2-12)、式(C2-15)、式(C2-17)、式(C2-19)及び式(C2-29)のそれぞれで表される化合物、並びに垂直配向性基が*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-を介してジアミノフェニル基に結合した化合物等が挙げられる。
【0081】
芳香環に*-NR
2-CO-又は*-CO-NR
2-が結合した部分構造を重合体の主鎖に導入する場合、第4のジアミンは芳香族ジアミンであることが好ましく、具体的には下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【化10】
(式(4)中、X
41及びX
42は、互いに独立して*-NR
2-CO-又は*-CO-NR
2-である。「*」はベンゼン環との結合手を表す。X
43及びX
44は、互いに独立して単結合又は-NR
43-である。R
43は水素原子又は1価の有機基である。R
40は、2価の炭化水素基又は当該炭化水素基における炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-NR
44-、-NR
44-CO-若しくは-NR
44-CO-NR
45-を含む2価の基である。R
44及びR
45は、互いに独立して水素原子又は1価の有機基である。R
41及びR
42は、互いに独立して1価の置換基である。m1は0~3の整数である。m2及びm3は、互いに独立して0~4の整数である。m1が2以上の場合、複数のR
40は同一又は異なり、複数のX
44は同一又は異なり、複数のX
42は同一又は異なる。)
【0082】
上記式(4)において、R40で表される2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルカンジイル基がより好ましい。R40で表される2価の炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
R43、R44又はR45で表される1価の有機基の具体例及び好ましい例については、R2で表される1価の有機基の説明において示した基と同様のものが挙げられる。R43、R44又はR45はそれぞれ、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基であることが好ましい。
【0083】
芳香環に*-NR
2-CO-又は*-CO-NR
2-が結合した部分構造を重合体の主鎖に導入する場合、第4のジアミンの具体例としては、下記式(C4-1)~式(C4-9)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化11】
【0084】
第1の重合体が構造単位(UD)を含む場合、構造単位(UD)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(UD)の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、75モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、45モル%以下が更に好ましい。
【0085】
また、第2の重合体が構造単位(UD)を含む場合、構造単位(UD)の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(UD)の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、75モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、45モル%以下が更に好ましい。
【0086】
第1の重合体及び第2の重合体は、第1のジアミン、第2のジアミン、第3のジアミン及び第4のジアミンとは異なるジアミン(以下、「第5のジアミン」ともいう)に由来する構造単位を含んでいてもよい。第5のジアミンは、例えば、脂肪族ジアミン(鎖状ジアミン、脂環式ジアミン)、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0087】
これらの具体例としては、鎖状ジアミンとして、メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を;脂環式ジアミンとして、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等を;
芳香族ジアミンとして、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[4,4’-プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノスチルベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)-ピペラジン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、4,4’-ジアミノジフェネチルウレア、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テ
トラメチルジシロキサン等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0088】
第1の重合体において、第5のジアミンに由来する構造単位構造の含有割合は、第1の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましい。また、第2の重合体において、第5のジアミンに由来する構造単位の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましい。
【0089】
ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である場合の第1の重合体及び第2の重合体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応(縮重合反応)させる工程を含む方法により得ることができる。こうして得られた第1の重合体及び第2の重合体は、テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位と、ジアミン化合物に由来する構造単位とを含む。
【0090】
・テトラカルボン酸二無水物
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0091】
これらの具体例としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等を;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等を;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等を;それぞれ挙げることができる。また、テトラカルボン酸二無水物としては、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0092】
第2の重合体がポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である場合、第2の重合体において、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の含有割合は、第2の重合体を構成するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して、50モル%以下であることが好ましい。第2の重合体を構成する芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が多いと、不純物耐性が低下しやすい傾向がある。不純物耐性に優れた液晶素子を得ることができる点において、第2の重合体を構成する芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合は、第2の重合体を構成するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましく、20モル%以下がより更に好ましい。
【0093】
第1の重合体がポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である場合、第1の重合体を構成するテトラカルボン酸二無水物は、重合体の溶解性を高くできる点、及び良好な電気特性を示す液晶素子を得ることができる点で、脂肪族テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。具体的には、第1の重合体を構成する脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合は、第1の重合体を構成するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上が更に好ましく、80モル%以上がより更に好ましい。
【0094】
続いて、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体の製造方法について説明する。
【0095】
・ポリアミック酸の合成
ポリアミック酸は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましい。分子量調整剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸一無水物;アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物;フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物;等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
【0096】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等を挙げることができる。特に好ましい有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と、他の有機溶媒(例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0097】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0098】
・ポリイミドの合成
ポリイミドは、例えば、ポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミドは、イミド化率が20~90%であることが好ましく、30~85%であることがより好ましい。なお、イミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。
【0099】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法により行われる。この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。
【0100】
脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃である。反応時間は、好ましくは1.0~120時間である。なお、ポリイミドを含有する反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に用いられてもよい。また、反応溶液中からポリイミドを単離し、単離したポリイミドを液晶配向剤の調製に用いてもよい。
【0101】
・ポリオルガノシロキサンの合成
ポリオルガノシロキサンは、例えば、加水分解性のシラン化合物を加水分解・縮合することにより得ることができる。加水分解性のシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等の窒素・硫黄含有アルコキシシラン化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有アルコキシシラン化合物;トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などを挙げることができる。加水分解性シラン化合物は、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を含む意味である。
【0102】
上記の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行うことができる。反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは1~30モルである。使用する触媒としては、例えば、酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。触媒の使用量は、触媒の種類、温度などの反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば、シラン化合物の合計量に対して、好ましくは0.01~3倍モルである。使用する有機溶媒としては、例えば、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール等が挙げられる。これらのうち、非水溶性又は難水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の使用割合は、反応に使用するシラン化合物の合計100質量部に対して、好ましくは10~10,000質量部である。
【0103】
上記の加水分解・縮合反応は、例えば油浴等により加熱して実施することが好ましい。その際、加熱温度は130℃以下とすることが好ましく、加熱時間は0.5~12時間とすることが好ましい。反応終了後において、反応液から分取した有機溶媒層を、必要に応じて乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができる。なお、ポリオルガノシロキサンの合成方法は上記の加水分解・縮合反応に限らず、例えば加水分解性シラン化合物をシュウ酸及びアルコールの存在下で反応させる方法等により行ってもよい。
【0104】
第2の重合体として、含窒素構造FN、垂直配向性基又は芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有するポリオルガノシロキサンを用いる場合、上記の重合によりエポキシ基を側鎖に有するポリオルガノシロキサンを得て、次いで、含窒素構造FN、垂直配向性基又は芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造を有するカルボン酸と反応させることにより当該ポリオルガノシロキサンを得てもよい。エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応は、好ましくは触媒(例えば、3級有機アミンや4級有機アミン、4級アンモニウム塩等)及び有機溶媒の存在下で行うことができる。反応終了後には、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。水洗後、有機溶媒層を、必要に応じて適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的物であるポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【0105】
・付加重合体の合成
付加重合体は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体の1種又は2種以上を重合することにより得ることができる。付加重合体の具体例としては、スチレン系重合体、マレイミド系重合体、スチレン-マレイミド系重合体、(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
【0106】
付加重合体を構成する単量体としては、重合性不飽和結合を有する任意の単量体を用いることができる。当該単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルフェニル基、マレイミド基等を有する化合物が挙げられる。
【0107】
付加重合体を構成する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸:(メタ)アクリル酸アルキル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等)、(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルグリシジルエーテル等の不飽和カルボン酸エステル:無水マレイン酸等の不飽和多価カルボン酸無水物:等の(メタ)アクリル系化合物;
スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン及び4-(グリシジルオキシメチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物;1,3-ブタジエン及び2-メチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン化合物;
N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、4-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸、N-(4-グリシジルオキシフェニル)マレイミド、N-グリシジルマレイミド、3-マレイミド安息香酸、3-マレイミドプロピオン酸、3-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸、及び4-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸メチル等のマレイミド系化合物等が挙げられる。また、付加重合体を構成する単量体として、垂直配向性基を有する化合物を用いることもできる。
【0108】
付加重合体は、例えば、単量体を重合開始剤の存在下で重合することにより得ることができる。使用する重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が好ましい。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する全単量体100質量部に対して、0.01~30質量部とすることが好ましい。上記重合反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。反応に使用する有機溶媒としては、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物等が挙げられ、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。反応温度は30℃~120℃とすることが好ましく、反応時間は、1~36時間とすることが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。
【0109】
第2の重合体は、液晶配向膜のチルト付与性及びシール密着性を更に優れたものとする観点から、カルボキシ基、エポキシ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。ここで、カルボキシ基を有する重合体としては、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用することができる。また、カルボキシ基を有する単量体に由来する構造単位を含む付加重合体を用いてもよい。エポキシ基を有する重合体としては、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。ヒドロキシ基を有する重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【0110】
液晶配向膜のチルト付与性、不純物耐性及びシール密着性の改善効果をより高める観点から、第2の重合体は、カルボキシ基、エポキシ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する構造単位を含むことが好ましい。第2の重合体において、カルボキシ基、エポキシ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する構造単位の含有割合は、第2の重合体を構成する単量体に由来する構造単位の全量に対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。
【0111】
第1の重合体及び第2の重合体の各重合体につき、重合体の溶液粘度は、濃度10質量%の溶液としたときに10~800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、重合体の良溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0112】
第1の重合体及び第2の重合体の各重合体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。
【0113】
例えば、液晶配向剤に含有される第1の重合体及び第2の重合体がポリアミック酸である場合、第1の重合体と第2の重合体との組み合わせの好ましい具体的態様としては以下の態様〔1B〕~〔3B〕が挙げられる。
〔態様1B〕 第1の重合体が構造単位(UA)と構造単位(UB)と構造単位(UC)とを含むポリアミック酸であり、第2の重合体が構造単位(UA)を含まず構造単位(UB)を含むポリアミック酸である態様。
〔態様2B〕 第1の重合体が構造単位(UA)と構造単位(UB)と構造単位(UC)とを含むポリアミック酸であり、第2の重合体が構造単位(UA)及び構造単位(UB)を含まないポリアミック酸である態様。
〔態様3B〕 第1の重合体が構造単位(UA)と構造単位(UB)と構造単位(UC)とを含むポリアミック酸であり、第2の重合体が構造単位(UA)を含まず構造単位(UC)を含むポリアミック酸である態様。
これらの態様において、構造単位(UB)は構造単位(UA)とは異なる構造単位であることが好ましく、構造単位(UC)は構造単位(UA)とは異なる構造単位であることが好ましい。
【0114】
液晶配向剤における第1の重合体の含有量は、第1の重合体と第2の重合体との合計量100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、第1の重合体の含有量は、第1の重合体と第2の重合体との合計量100質量部に対して、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下が更に好ましい。また、第2の重合体の含有量は、第1の重合体と第2の重合体との合計量100質量部に対して、30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上が更に好ましい。また、第2の重合体の含有量は、第1の重合体と第2の重合体との合計量100質量部に対して、95質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。第1の重合体及び第2の重合体の含有量をそれぞれ上記範囲内とすることにより、良好なチルト付与性を確保するとともに、PSA型液晶素子の製造時に光重合性化合物を消費するための光照射時間の短縮化を図りつつ、不純物耐性に優れた液晶配向膜を得ることができる。
【0115】
<その他の成分>
液晶配向剤は、第1の重合体及び第2の重合体のほか、必要に応じて、第1の重合体及び第2の重合体とは異なる成分(その他の成分)を更に含有していてもよい。
【0116】
・その他の重合体
本開示の液晶配向剤は、第1の重合体及び第2の重合体とは異なる重合体(その他の重合体)を更に含有していてもよい。その他の重合体としては、例えば、ポリエステル、ポリウレア、セルロース誘導体又はポリアセタールを主骨格とする重合体等が挙げられる。液晶配向剤におけるその他の重合体の含有量は、液晶配向剤に含まれる固形分の全量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
【0117】
・架橋剤
本開示の液晶配向剤は架橋剤を更に含有していてもよい。架橋剤としては、重合性炭素-炭素結合を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ヒドロキシアルキルアミド基、保護されたヒドロキシアルキルアミド基、環状カーボネート基、基「-CR90=CR91-R92-」(ただし、R90は、アミノ基との反応により脱離する1価の有機基である。R91は水素原子又はアルキル基、R92は電子求引性基である。)、シラノール基、アミノ基、保護されたアミノ基及びアルコキシシリル基よりなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基を有する化合物が挙げられる。
【0118】
上記の架橋性基のうち、重合性炭素-炭素結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、アルケニル基、ビニルフェニル基、ビニルエーテル基、3-メチレンテトラヒドロフラン-2(3H)-オン-5-イル基等が挙げられる。
【0119】
不純物耐性(特に、DC残像低減)の観点から、架橋剤としては上記のうち、アミノ基又はカルボキシ基と反応可能な官能基を有する化合物を好ましく使用することができる。中でも、環状エーテル基、ヒドロキシアルキルアミド基、保護されたヒドロキシアルキルアミド基、メチロール基、保護されたメチロール基、保護されたイソシアネート基、アミノ基、保護されたアミノ基及びアルコキシシリル基よりなる群から選択される少なくとも1種を1分子内に合計2個以上有する化合物を好ましく使用することができる。
【0120】
架橋剤が1分子内に有する架橋性基の数は、液晶素子の液晶配向性、電気特性及びシール材密着性をバランス良く改善する観点から、2~12個が好ましく、2~8個がより好ましい。架橋剤の分子量は、良好な保存安定性を確保する観点から、好ましくは1,200以下であり、より好ましくは1,000以下であり、更に好ましくは800以下である。
【0121】
架橋剤の具体例としては、環状エーテル基を有する化合物として、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジグリシジル-アミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジル-シクロヘキシルアミン、グリシジル基を2個以上有する環状シロキサン、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルの過酸化水素によるエポキシ化反応生成物等を;
ヒドロキシアルキルアミド基又は保護されたヒドロキシアルキルアミド基を有する化合物として、下記式(c-1)~式(c-3)で表される化合物等を;
メチロール基又は保護されたメチロール基を有する化合物として、下記式(c-4)~式(c-9)で表される化合物等を;
保護されたイソシアネート基を有する化合物として、下記式(c-10)~式(c-14)で表される化合物等を;
アミノ基又は保護されたアミノ基を有する化合物として、下記式(c-15)~式(c-19)のそれぞれで表される化合物等を、それぞれ挙げることができる。
【化12】
【化13】
(式(c-8)中、Acはアセチル基である。)
【化14】
(式(c-10)及び式(c-11)中、R
93はtert-ブトキシ基である。)
【化15】
【0122】
本開示の液晶配向剤に架橋剤を配合する場合、液晶配向剤における架橋剤の含有量は、液晶素子の液晶配向性及び電気特性と、液晶配向膜のシール材密着性とをバランス良く改善する観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全量(すなわち、第1の重合体と第2の重合体とその他の重合体との合計量)100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましい。架橋剤の含有割合は、重合体成分の全量100質量部に対して、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましい。また、架橋剤の含有量は、重合体成分の全量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0123】
・溶剤
本開示の液晶配向剤は、第1の重合体、第2の重合体及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
【0124】
溶剤としては有機溶媒が好ましく使用される。その具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、フェノール、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジアセトンアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、プロパン-1,2-ジオール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールジエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールジアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。溶剤としては、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0125】
液晶配向剤に含有されるその他の成分としては、上記のほか、例えば、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0126】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%以上であると、塗膜の膜厚を十分に確保でき、より良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を得ることができる点で好適である。一方、固形分濃度が10質量%以下であると、塗膜を適度な厚みとすることができ、良好な液晶配向性を示す液晶配向膜が得られやすい傾向がある。また、液晶配向剤の粘性が適度となり、塗布性を良好にできる傾向がある。
【0127】
≪第2の液晶配向剤≫
本開示の第2の液晶配向剤は、上述した第1の重合体と架橋剤とを含有する。第1の重合体及び架橋剤の種類や含有量等の詳細については、第1の液晶配向剤における上記の説明が適用される。また、第2の液晶配向剤は、第1の重合体及び架橋剤に加え、上述した溶剤等の成分を更に含有していてもよい。第2の液晶配向剤は、上述した第2の重合体を含有しない点以外は第1の液晶配向剤と同じである。
【0128】
≪液晶配向膜及び液晶素子≫
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定されず、例えばTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型(VA-MVA型、VA-PVA型等を含む)、IPS(In-Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA(Polymer Sustained Alignment)型といった種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
【0129】
(工程1:塗膜の形成)
先ず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一方の面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標 、酸化インジウム-酸化スズ(In2O3-SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。TN型、STN型、VA型又はPSA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。基板への液晶配向剤の塗布は、電極形成面上に、オフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行うことが好ましい。
【0130】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、必要に応じて、溶剤を完全に除去したり重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化したりすることを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、液晶配向膜、又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。
【0131】
(工程2:配向処理)
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、配向処理としては、基板上に形成した塗膜の表面をコットン等で擦るラビング処理、及び塗膜に光照射を行って液晶配向能を付与する光配向処理が挙げられる。一方、垂直配向型(VA型)の液晶素子を製造する場合には、工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。垂直配向型の液晶素子に好適な液晶配向膜はPSA型の液晶素子にも好ましく用いることができる。PSA型の液晶素子を製造する場合に、ラビング処理によってプレチルト角を付与してもよい。
【0132】
光配向処理における光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
【0133】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタ
ルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー等を使用することができる。放射線の照射量は、好ましくは400~20,000J/m2であり、より好ましくは1,000~5,000J/m2である。塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。
【0134】
液晶配向膜の製造に際しては、光照射処理が施された塗膜を120℃以上280℃以下の温度範囲内で加熱することにより、液晶配向性を更に改善するようにしてもよい(加熱再配列)。この加熱は、ポストベークであってもよく、ポストベークとは別にポストベーク後に行う加熱処理であってもよい。光照射処理が施された塗膜に対する加熱処理に際し、加熱温度は、加熱による分子鎖の再配向を促進させる観点から、140℃以上とすることが好ましく、150℃~250℃とすることがより好ましい。加熱時間は、好ましくは5分~200分、より好ましくは10分~60分である。
【0135】
液晶配向膜の製造に際し、光照射処理が施された塗膜を、水、水溶性有機溶媒、又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒に接触させる工程を更に含んでいてもよい。ここで、水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロペンタノンが挙げられる。本工程で用いる溶媒は、これらのうち、水、イソプロパノール及びこれらの混合物が好ましい。塗膜と溶媒との接触方法としては、例えば噴霧(スプレー)処理、シャワー処理、浸漬処理、液盛り処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塗膜と溶媒との接触時間は特に限定されないが、例えば5秒~15分である。溶媒との接触後には塗膜の加熱処理を行ってもよい。
【0136】
(工程3:液晶セルの構築)
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、(1)液晶配向膜が対向するように間隙(スペーサー)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール材により貼り合わせ、基板表面及びシール材により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法;(2)液晶配向膜を形成した一方の基板上の所定の場所にシール材を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げる方法(ODF方式);等が挙げられる。製造した液晶セルにつき更に、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0137】
シール材としては、例えば、硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。スペーサーとしては、フォトスペーサー、ビーズスペーサー等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができる。これらの中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等を用いることができる。また、これらの液晶に、コレステリック液晶、カイラル剤、強誘電性液晶等を添加して使用してもよい。
【0138】
PSA型の液晶素子を製造する場合には、まず、液晶とともに光重合性化合物をセルギャップ内に充填することにより液晶セルを構築する。液晶セルを構築した後、液晶配向膜にプレチルト角を付与することを目的として、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する処理を行う。その後、液晶中に残存している光重合性化合物を消費することを目的として、液晶セルに電圧を印加しない状態で、プレチルト角付与を目的とする光照射と同等又はそれよりも弱い光を長時間照射する。具体的には、以下の工程を含む方法により液晶素子を製造することが好ましい。
〔1〕 導電膜を有する一対の基板のそれぞれの導電膜上に液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程(上記の工程1に相当)
〔2〕 塗膜を形成した一対の基板を、光重合性化合物を含む液晶層を介して塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程(上記の工程3に相当)
〔3〕 導電膜間に電圧を印加した状態で、液晶セルに光照射する工程(第1照射工程)
〔4〕 第1照射工程の後に、第1照射工程における光照射と同等又はそれよりも弱い強度の光を、第1照射工程よりも長時間、かつ導電膜間に電圧を印加しない状態で液晶セルに照射する工程(第2照射工程)
【0139】
光重合性化合物としては、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等といったラジカル重合が可能な官能基を2個以上有する多官能性化合物を好ましく用いることができる。反応性の観点からすると、光重合性化合物は、中でも、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル化合物が好ましい。また、液晶分子の配向性を安定に維持する観点から、光重合性化合物としては、液晶骨格として、シクロヘキサン環及びベンゼン環のうちの少なくともいずれか一種の環を合計2つ以上有する化合物を好ましく用いることができる。なお、このような光重合性化合物としては、従来公知のものを使用することができる。PSA型の液晶素子の製造に際し、光重合性化合物の使用割合は、液晶の合計100質量部に対して、例えば0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部である。
【0140】
第1照射工程において液晶セルに印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができ、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー等を使用することができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m2以上200,000J/m2以下であり、より好ましくは1,000~100,000J/m2である。第1照射工程において液晶セルに照射する光の強度は、好ましくは0.1~400mW/cm2である。第1照射工程における光照射時間(これを「UV1時間」ともいう)は、好ましくは10~200秒である。
【0141】
第2照射工程では、第1照射工程により光照射された後の液晶セルに対し、電圧を印加せずに光照射を行う。第2照射工程で液晶セルに照射する光及び照射光の光源については、第1照射工程の説明と同様である。第2照射工程において液晶セルに照射する光の強度は、好ましくは0.1~200mW/cm2であり、より好ましくは0.1~100mW/cm2であり、更に好ましくは0.1~30mW/cm2であり、より更に好ましくは0.1~5.0mW/cm2である。第2照射工程における光照射時間(これを「UV2時間」ともいう)は、UV1時間よりも長時間であり、好ましくは45~200分である。なお、光の照射量(J/m2)としては、第1照射工程における光照射と同等であってもよいし、第1照射工程における光照射より多くても少なくてもよい。また、例えば、第1照射工程と第2照射工程との光照射条件の一部又は全部が一致する場合に、第1照射工程と第2照射工程を連続して行ってもよい。
【0142】
特に、本開示の液晶配向剤を用いてPSA型液晶セルを製造した場合に、UV2時間の短縮化を図ることができる。そのため、光照射により液晶セルに与えるダメージを極力低減でき、また製造時間の短縮化を図ることもできる。
【0143】
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。これにより液晶素子が得られる。
【0144】
本開示の液晶素子は、種々の用途に有効に適用することができる。具体的には、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置や、調光装置、位相差フィルム等として用いることができる。
【0145】
本開示によれば、以下の手段が提供される。
〔手段1〕 「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基である。W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。「*」は結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する第1の重合体と、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であって、ベンゾフェノン構造を有する構造単位を実質的に含まない第2の重合体と、を含有し、前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、2級アミノ基、3級アミノ基、*1-NR1-*2及び含窒素複素環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である含窒素構造(ただし、R1は1価の脱離性基である。「*1」及び「*2」は、(チオ)カルボニル基中の炭素を除く炭素原子との結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含む、液晶配向剤。
〔手段2〕 前記第1の重合体は、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕に記載の液晶配向剤。
〔手段3〕 前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、前記含窒素複素環構造を有するジアミンに由来する構造単位を含む、〔手段1〕又は〔手段2〕に記載の液晶配向剤。
〔手段4〕 前記第1の重合体がポリアミック酸である、〔手段1〕~〔手段3〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段5〕 前記第2の重合体は、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であり、テトラカルボン酸無水物に由来する構造単位を含み、前記テトラカルボン酸無水物に由来する構造単位のうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が50モル%以下である、〔手段1〕~〔手段4〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段6〕 前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、垂直配向性基を有する構造単位を含む、〔手段1〕~〔手段5〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段7〕 前記第1の重合体及び前記第2の重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が、芳香環に*-NR2-CO-又は*-CO-NR2-が結合した部分構造(ただし、R2は水素原子又は1価の有機基である。「*」は芳香環との結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含む、〔手段1〕~〔手段6〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段8〕 架橋剤を更に含有する、〔手段1〕~〔手段7〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段9〕 「*-X1-W1」で表される基を有するジアミンが、上記式(CA-1)で表される、〔手段1〕~〔手段8〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段10〕 「*-X1-W1」で表される基(ただし、X1は2価の連結基である。W1はベンゾフェノン構造を有する1価の基である。「*」は結合手を表す。)を有するジアミンに由来する構造単位を含み、「*-X1-W1」で表される基を側鎖に有する重合体と、架橋剤と、を含有する、液晶配向剤。
〔手段11〕 〔手段1〕~〔手段10〕のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
〔手段12〕 〔手段11〕の液晶配向膜を備える液晶素子。
〔手段13〕 上記式(CA-1-1)で表される化合物。
【実施例0146】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0147】
以下の例において、ポリイミドのイミド化率及び重合体の分子量(Mw、Mn)は以下の方法により測定した。
<ポリイミドのイミド化率>
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で1H-NMR測定を行った。得られた1H-NMRスペクトルから、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1-(β1/(β2×α)))×100 …(1)
(数式(1)中、β1は化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、β2はその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
<重合体の分子量(Mw、Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。
装置:昭和電工(株)の「GPC-101」
GPCカラム:(株)島津ジーエルシー製の「GPC-KF-801」、「GPC-KF-802」、「GPC-KF-803」及び「GPC-KF-804」を結合
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0148】
下記の例で使用した化合物の略称を以下に示す。なお、以下では便宜上、「式(X)で表される化合物」を単に「化合物(X)」と示すことがある。
【0149】
(テトラカルボン酸二無水物)TA-1~TA-8
【化16】
【0150】
(ジアミン)DA-1~DA-10、daa-1~daa-3
【化17】
【化18】
【0151】
【0152】
【0153】
(その他の単量体、カルボン酸)M-1~M-9、S-1、C-1
【化21】
【0154】
【0155】
<モノマーの合成>
[合成例1A]
下記スキームに従い、化合物(DA-3)を合成した。
【化23】
【0156】
50mLナスフラスコに4-ヒドロキシベンゾフェノン3.85mmol、3,5-ジニトロベンジルクロリド4.62mmol、炭酸カリウム4.62mmol、及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)8mLを加えた。反応温度を室温から80℃まで昇温し、1時間撹拌した。LC-MS分析にて反応終了を確認後、室温まで冷却した。その後、酢酸エチルと水を加えて分液精製を行い、有機層を濃縮した。得られた紫色固体を乾燥させることで、化合物(DA-3-1)を1.45g得た(収率~99%)。
続いて、50mLナスフラスコに化合物(DA-3-1)を3.83mmol、亜鉛粉末76.7mmol、塩化アンモニウム38.3mmol、テトラヒドロフラン(THF)8.7mL、及びエタノール(EtOH)1.5mLを加えた後、氷浴で0℃に冷却した。反応溶液を撹拌しつつ、そこへ蒸留水109mmolを滴下した。0℃で10分間撹拌を継続した後、反応温度を室温まで昇温し、更に4時間撹拌した。LC-MS分析にて反応終了を確認後、セライトろ過により亜鉛を除去した。ろ液に酢酸エチルと水を加えて分液精製し、有機層を濃縮した。得られた固体を乾燥させることで目的のジアミン(DA-3)を1.16g得た(収率95%、黄土色固体)。ジアミン(DA-3)の構造を
1H-NMRスペクトルにて確認した。ジアミン(DA-3)の
1H-NMRスペクトルを
図1に示す。
【0157】
<重合体の合成>
1.ポリアミック酸の合成
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-1)15モル部及び化合物(TA-3)85モル部、並びに、ジアミン化合物として化合物(daa-1)30モル部、化合物(DB-12)30モル部、化合物(DC-14)30モル部及び化合物(DC-2)10モル部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸(これを重合体(PAA-1)とする)を20質量%含有する溶液を得た。
【0158】
[合成例2~20]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類及び量を表1に記載のとおり変更した以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸(重合体(PAA-2)~(PAA-20))を得た。なお、表1中、テトラカルボン酸二無水物(酸二無水物1~3)の数値は、重合体の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。ジアミン化合物(ジアミン1~5)の数値は、重合体の合成に使用したジアミン化合物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。
【0159】
2.ポリイミドの合成
[合成例21]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-1)90モル部及び化合物(TA-6)10モル部、並びにジアミン化合物として化合物(DA-6)10モル部、化合物(DB-8)20モル部、化合物(DC-14)20モル部、化合物(DC-5)30モル部及び化合物(DC-13)20モル部をNMPに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを追加してポリアミック酸濃度10質量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を添加して80℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約70%のポリイミド(これを重合体(PI-1)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0160】
[合成例22]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類及び量を表1に記載のとおり変更した以外は合成例21と同様の操作を行い、ポリイミド(重合体(PI-2))を得た。
【0161】
【0162】
3.スチレン-マレイミド系共重合体の合成
[合成例23]
窒素下、100mL二口フラスコに、重合モノマーの合計100モル部に対し、化合物(M-2)40モル部、化合物(M-3)40モル部及び化合物(M-8)20モル部、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3922g(重合モノマーの合計量100質量部に対して10質量部)、並びに溶剤としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)15.68g(重合モノマーの合計量100質量部に対して400質量部)を加え、70℃で6時間重合した。メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、室温で8時間真空乾燥することで目的の付加重合体(これを重合体(PM-1)とする)を得た。
【0163】
[合成例24]
使用する重合モノマーの種類及び量を表2に記載のとおり変更した以外は合成例23と同様の操作を行い、付加重合体(これを重合体(PM-2)とする)を得た。
【0164】
【0165】
4.ポリオルガノシロキサンの合成
[合成例25]
1000mL三口フラスコに、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(化合物(S-1))100.0g、メチルイソブチルケトン500g、及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗から30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、これを0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去した。メチルイソブチルケトンを適量添加し、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(これを「重合体(PS-1)」とする)の50質量%溶液を得た。
【0166】
[合成例26]
合成例25と同様にして重合体(PS-1)を得た。500mL三口フラスコに、化合物(C-1)を、重合体(PS-1)が有するエポキシ基量に対して20モル%、テトラブチルアンモニウムブロミド1.00g、重合体(PS-1)含有溶液20.0g、及びメチルイソブチルケトン290.0gを加え、90℃で18時間撹拌した。室温まで冷却した後、蒸留水で分液洗浄操作を10回繰り返した。その後、有機層を回収し、ロータリーエバポレータにより濃縮とNMP希釈を2回繰り返した後、NMPを用いて固形分濃度が10質量%になるように調整し、ポリオルガノシロキサン(これを重合体(PS-2)とする)のNMP溶液を得た。
【0167】
【0168】
<液晶配向剤の調製及び評価>
[実施例1]
1.液晶配向剤の調製
合成例11で得た重合体(PAA-11)50質量部を含む溶液と、合成例6で得た重合体(PAA-6)50質量部を含む溶液とを混合し、更にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ブチルセロソルブ(BC)、ダイアセトンアルコール(DAA)及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)により希釈し、溶剤組成がNMP/GBL/BC/DAA/DEDG=30/30/15/15/10(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
【0169】
2.液晶組成物の調製
ネマチック液晶(メルク社製、MLC-6608)10gに対し、下記式(L1-1)で表される液晶性化合物を5質量%、及び下記式(L2-1)で表される光重合性化合物を0.3質量%添加して混合し、液晶組成物LC1を得た。
【化24】
【0170】
3.絶縁膜形成用組成物の調製
冷却管と撹拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)7質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部、メタクリル酸15質量部、グリシジルメタクリレート30質量部、スチレン20質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5質量部、及びイソボルニルアクリルレート30質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに撹拌を始めた。反応溶液を62℃まで上昇させた後、この温度を5時間の間維持して、アクリル系共重合体(R-1)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液をヘキサン900質量部に滴下してアクリル系共重合体(R-1)を沈殿させた。沈殿したアクリル系共重合体(R-1)を分離し、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート150質量部を入れ、40℃まで加熱、減圧蒸留して、アクリル系共重合体(R-1)を含む重合体溶液を得た。得られたアクリル系共重合体(R-1)を含む重合体溶液の固形分濃度は30質量%であり、GPC分析の結果、未反応モノマーと重合開始剤の面積が2.3%であり、重量平均分子量(Mw)は12800であった。
アクリル系共重合体(R-1)100質量部(固形分)に相当する量に対して、感光剤として4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物25質量部、重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬社製の「KAYARAD DPHA」)5質量部、造膜助剤として2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(協和発酵キリン社製の「キョーワノールM」)10質量部、レベリング剤としてSH28PA(東レダウコーニング社製)を混合し、固形分濃度が18質量%となるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルを混合したものに溶解させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、絶縁膜形成用組成物(RD-1)を調製した。
【0171】
4.評価用PSA型液晶セルの製造
上記で調製した液晶配向剤(AL-1)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙に液晶組成物LC1を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、更に液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
次いで、得られた液晶セルに対し、電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、50,000J/m2の照射量にて紫外線を照射した(第1照射)。この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。続いて、第1照射後の液晶セルに対し、電極間に電圧を印加しない状態で、第1照射と同じ紫外線照射装置を用いて、強度3.22mW/cm2で100分(=UV2時間)、紫外線を照射した(第2照射)。なお、第1照射は、液晶配向剤により形成した有機膜近傍の液晶にチルト角を付与するための紫外線照射であり、第2照射は、液晶中に残存している光重合性化合物の消費を目的として行う紫外線照射である。これにより、PSA型液晶セルを製造した。
【0172】
5.チルト付与性の評価
上記4.で製造した評価用PSA型液晶セルを用い、非特許文献「T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys. vol48, p.1783(1977)」及び「F.Nakano,et.al., JPN.J.Appl.Phys. vol.19, p.2013(1980)」に記載の方法に準拠して、He-Neレーザー光を用いる結晶回転法により液晶分子の基板面からの傾き角の値を測定し、これをプレチルト角とした。評価用PSA型液晶セルのプレチルト角が88.5°未満の場合であった場合を「良好(○)」、88.5°以上89.0°未満であった場合を「可(△)」、89.0°以上であった場合を「不良(×)」と判定した。その結果、この実施例のチルト付与性は「良好(○)」であった。
【0173】
6.第2照射における光照射時間(UV2時間)の評価
第2照射における紫外線照射時間(UV2時間)を100分から50分に変更したこと以外は、上記4.と同様にして評価用PSA型液晶セルを製造した。この評価用PSA液晶セルにつき、「5.チルト付与性の評価」と同様にして、He-Neレーザー光を用いる回転結晶法により液晶分子の基板面からの傾き角の値を測定し、これをプレチルト角とした。測定は、液晶セルに電圧印加する前のプレチルト角(これを「初期プレチルト角θini」とする)、及びAC9V、バックライト上にて室温で48時間駆動した後のプレチルト角(これを「駆動後プレチルト角θac」とする)について行った。また、測定した初期プレチルト角θini及び駆動後プレチルト角θacを用いて、下記式(y)によりプレチルト角変化率β[%]を算出した。
β[%]=[(θac-θini/θini]×100 ・・・(y)
UV2時間は、液晶層中の光重合性化合物を消費するための光照射時間であり、この時間を短くした場合にも所望のプレチルト角を付与できれば、その液晶セルではUV2時間を短縮でき、良好であるといえる。プレチルト角変化率βが3%未満であった場合を「良好(○)」、3%以上5%未満であった場合を「可(△)」、5%以上であった場合を「不良(×)」と評価した。その結果、この実施例のUV2時間は「良好(○)」の評価であった。
【0174】
7.シール材密着性の評価
液晶配向剤(AL-1)を、ガラス基板上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで2分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.10μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。これと同様の操作を繰り返すことにより、塗膜が形成されたガラス基板を2枚作製した。塗膜を形成した1枚のガラス基板の塗膜上に、ODFシール材(積水化学社製、S-WB42)を幅が0.5mmになるように塗布し、もう一枚のガラス基板の塗膜とODFシール材とが接触するように貼り合わせた。その後、メタルハライドランプを用いて30,000J/m2(365nm換算)の光を照射した後、120℃のオーブンで1時間加熱した。その後、今田製作所の引張圧縮試験機(型番:SDWS-0201-100SL)を用いて密着力を測定することによりシール材密着性を評価した。
評価は、密着力が180N/cm2以上であった場合を「良好(○)」、150N/cm2以上180N/cm2未満であった場合を「可(△)」、150N/cm2未満であった場合を「不良(×)」とした。その結果、この実施例のシール材密着性は「良好(○)」の評価であった。
【0175】
8.不純物耐性評価用液晶セルの製造
櫛歯型にパターニングされたITO電極が設けられているガラス基板と、電極が設けられていないガラス基板とを準備した。電極が設けられていないガラス基板上に絶縁膜形成用組成物(RD-1)をスピンコータで塗布した後、ホットプレート上で90℃にて2分間プレベークした。次いで、プロキシミティ露光機(キヤノン社の「MA-1200」(ghi線混合))を用いて300mJ/cm2の光を基板全面に照射した後、オーブンにて230℃で30分間加熱(ポストベーク)して硬化させ、ガラス基板上に膜厚3μmの絶縁膜を形成した。
櫛歯型にパターニングされたITO電極が設けられている基板における電極形成面と、絶縁膜を備える基板における絶縁膜形成面のそれぞれに、液晶配向剤(AL-1)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、庫内を窒素置換したオーブン中、230℃で1時間加熱して、膜厚0.1μmの液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
絶縁膜を備える基板における液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に液晶組成物LC1を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを130℃で加熱してから室温まで徐冷し、不純物耐性評価用の液晶セルを製造した。なお、基板の作製が簡便であることから、不純物耐性評価用液晶セルについてはIPS型液晶セル用の電極基板を用いて作製した。
【0176】
9.VHRによる不純物耐性の評価
上記8.で製造した不純物耐性評価用液晶セルを60℃のオーブンに静置した後、東陽テクニカ社製VHR測定装置「VHR-1」を用いて、1V、1670ミリ秒の条件で電圧保持率(VHR)を測定した。VHRが60%よりも高い場合に「良好(○)」、60%以下45%以上の場合に「可(△)」、45%未満の場合に「不良(×)」とした。その結果、この実施例のVHRによる不純物耐性は「良好(○)」の評価であった。
【0177】
10.残留DCによる不純物耐性の評価
上記8.で製造した不純物耐性評価用液晶セルにつき、AC2.5Vで駆動させて任意の2画素の間の輝度差を0に設定した後、AC2.5Vで駆動させつつ片方の画素のみにDC1Vを20分間印加して電荷を蓄積させた。DC1Vの印加を終了してAC2.5Vでの駆動のみに戻すと、蓄積された電荷によって2画素の間に輝度差が生じた。この輝度差の経時変化を観測することで、残留DC値が減衰する過程の緩和時間を算出した。緩和時間が10秒未満であった場合を「良好(○)」、緩和時間が10秒以上30秒未満であった場合を「可(△)」、緩和時間が30秒以上であった場合を「不良(×)」と判定した。その結果、この実施例の残留DCによる不純物耐性は「良好(○)」の評価であった。
【0178】
[実施例2~14及び比較例1~7]
液晶配向剤の調製に使用する重合体及び添加剤の種類及び量を表4のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様にして評価用液晶セルを製造し、各種評価を行った。評価結果を表4に示す。表4中、重合体欄及び添加剤欄の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の全量100質量部に対する、各化合物の固形分での配合割合(質量部)を表す。
【0179】
【0180】
表4に示すように、実施例1~14の液晶配向剤は、チルト付与性、UV2時間、シール材密着性及び不純物耐性のいずれも、良好(○)又は可(△)の評価であり、各種特性のバランスが取れていた。これに対し、ベンゾフェノン構造を有する特定ジアミン(第1のジアミン)に由来する構造単位を含む重合体を含有しない比較例1~4は、チルト付与性、UV2時間、シール材密着性及び不純物耐性のうち1つ以上の評価において不良(×)であり、実施例1~14よりも劣っていた。また、特定の含窒素構造を有する構造単位を含まない重合体のみを用いた比較例5は、不純物耐性が不良の評価であった。さらに、重合体を1種のみを含有する比較例6,7と実施例1~14とを対比すると、比較例6についてはVHRを指標とする不純物耐性が不良であり、比較例7についてはシール材密着性が不良の評価であった。
【0181】
以上の結果から、本開示の液晶配向剤によれば、不純物耐性、チルト付与性及びシール材密着性に優れた液晶配向膜を得ることができ、しかもPSA型液晶素子の製造時における光重合性化合物の消費のための光照射時間を短縮できることが明らかになった。