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特開2025-98543積層フィルム、光学部材、及び画像表示装置
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  • 特開-積層フィルム、光学部材、及び画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098543
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】積層フィルム、光学部材、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20250625BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20250625BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20250625BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20250625BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B7/02
B32B27/36 102
G02B1/14
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214753
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 樹
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB15
2H149AB24
2H149BA02
2H149FD30
2H149FD41
2H149FD47
2K009AA15
2K009BB24
2K009CC24
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK45A
4F100AK45B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CC00C
4F100EH46C
4F100GB41
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JB04B
4F100JB04C
4F100JK12C
4F100JN10D
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】ハードコート性に優れ、かつ、屈曲性に優れ、屈曲させてもクラックの発生を抑制し得る積層フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による積層フィルムは、基材と、基材の一方の面に配置されたハードコート層とを備える。基材は、ハードコート層側から順に第1樹脂層と第2樹脂層とを含む。ハードコート層と第1樹脂層との溶解度パラメータの差は、1.5以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面に配置されたハードコート層と、を備え、
前記基材が、前記ハードコート層側から順に第1樹脂層と第2樹脂層とを含み、
前記ハードコート層と前記第1樹脂層との溶解度パラメータの差が、1.5以上である、
積層フィルム。
【請求項2】
前記第2樹脂層が、前記第1樹脂層に直接配置されている、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が、前記第1樹脂層に直接配置されている、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とのガラス転移温度の差が、40℃以下である、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記第2樹脂層が、ポリカーボネート系樹脂を含み、
前記ポリカーボネート系樹脂が、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位を含み、
前記ジヒドロキシ化合物が、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記第1樹脂層が、ポリカーボネート系樹脂を含み、
前記ポリカーボネート系樹脂が、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットからなる群から選択されるジヒドロキシ化合物由来の構造単位を実質的に含まない、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記第1樹脂層の厚みが、第2樹脂層の厚みよりも小さい、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記第1樹脂層の厚みが、0.5μm以上10μm以下である、
請求項7に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記第2樹脂層の厚みが、15μm以上40μm以下である、
請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の積層フィルムと、光学フィルムと、を備える、
光学部材。
【請求項11】
前記光学フィルムは、偏光子を含む、
請求項10に記載の光学部材。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の積層フィルムを備える、
画像表示装置。
【請求項13】
請求項10に記載の光学部材を備える、
画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、光学部材、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及びエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。有機EL表示装置においては、柔軟に屈曲させることができるフレキシブル性、折り曲げることができるフォルダブル性、湾曲可能なベンダブル性等といった屈曲性向上に対する要望が強まっている。
一方、表示装置の視認側には、擦傷、破損等を防止するためにハードコート層が設けられる場合がある。この場合、代表的には、基材とハードコート層とを有する積層フィルムが用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-118916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、屈曲性が求められる有機EL表示装置に用いられる積層フィルム(ハードコートフィルム)は、屈曲させるとクラックが生じる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、ハードコート性に優れ、かつ、屈曲性に優れ、屈曲させてもクラックの発生を抑制し得る積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の実施形態による積層フィルムは、基材と、前記基材の一方の面に配置されているハードコート層と、を備える。前記基材は、前記ハードコート層側から順に第1樹脂層と第2樹脂層とを含む。前記ハードコート層と前記第1樹脂層との溶解度パラメータの差は、1.5以上である。
[2]上記[1]に記載の積層フィルムにおいて、前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層に直接配置されていてもよい。
[3]上記[1]又は[2]に記載の積層フィルムにおいて、前記ハードコート層は、前記第1樹脂層に直接配置されていてもよい。
[4]上記[1]から[3]に記載の積層フィルムにおいて、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とのガラス転移温度の差は、40℃以下であってもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、前記第2樹脂層は、ポリカーボネート系樹脂を含んでもよい。前記ポリカーボネート系樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位を含んでもよい。前記ジヒドロキシ化合物は、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であってもよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、前記第1樹脂層は、ポリカーボネート系樹脂を含んでもよい。前記第1樹脂層における前記ポリカーボネート系樹脂は、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットからなる群から選択されるジヒドロキシ化合物由来の構造単位を実質的に含まなくてもよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、前記第1樹脂層の厚みは、第2樹脂層の厚みよりも小さくてもよい。
[8]上記[1]から[7]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、前記第1樹脂層の厚みは、0.5μm以上10μm以下であってもよい。
[9]上記[1]から[8]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、前記第2樹脂層の厚みは、15μm以上40μm以下であってもよい。
[10]本発明の別の局面による光学部材は、上記[1]から[9]のいずれかに記載の積層フィルムと、光学フィルムと、を備える。
[11]上記[10]に記載の光学部材において、光学フィルムは、偏光子を含む。
[12]本発明の別の局面による画像表示装置は、上記[1]から[9]のいずれかに記載の積層フィルムを備える。
[13]本発明の別の局面による画像表示装置は、上記[10]又は[11]に記載の光学部材を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、ハードコート性に優れ、かつ、屈曲性に優れ、屈曲させてもクラックの発生を抑制し得る積層フィルムを実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書において、「A及び/又はB」とは、「A」、「B」、「A及びB」のうちいずれかを意味する。
【0010】
A.積層フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。図示例の積層フィルム1は、ハードコート層10と基材20とを備える。ハードコート層10は、基材20の一方の面に配置されている。基材20は、第1樹脂層21と第2樹脂層22とを含み、第1樹脂層21がハードコート層10側に配置されている。すなわち、積層フィルム1は、ハードコート層10、第1樹脂層21、及び第2樹脂層22をこの順に備える。積層フィルム1において、ハードコート層10と第1樹脂層21との溶解度パラメータの差は、1.5以上である。
【0011】
本発明の実施形態による積層フィルムは、ハードコートフィルムとしての高いハードコート性を維持しつつ、屈曲させた場合の高い屈曲性を実現でき、かつ、屈曲させても、クラックの発生を抑制し得る。
【0012】
従来、ハードコート層を備える積層フィルムにおいては、ハードコート性と屈曲性とを両立することが難しいという問題がある。従来のハードコートフィルムとしての用途を有する積層フィルムは、基材とハードコート層との2層構造で形成されている。このような2層構造の積層フィルムは、屈曲性に優れた基材を使用しても、屈曲するとクラックが生じる場合がある。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記積層フィルムに生じるクラックは、基材とハードコート層との界面に形成される相溶層に起因し得ることを見出した。相溶層は、基材とハードコート層との成分が混在した層であり、機械的強度が不十分である。その結果、積層フィルムを屈曲させた場合に、相溶層を起点としてクラックが生じ得る。
そこで、本発明者らは、上記相溶層の発生を抑制すべく、鋭意検討を継続し、本発明の実施形態による積層フィルムを完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の実施形態による積層フィルムでは、第1樹脂層及び第2樹脂層を含む基材とハードコート層との3層構造とし、かつ、ハードコート層とハードコート層側に配置される第1樹脂層との溶解度パラメータの差を、1.5以上としている。このような構成とすることで、ハードコート層と基材(実質的には、第1樹脂層)との間に相溶層の形成が抑制され得る。さらに、ハードコート層と第2樹脂層との間に介在している第1樹脂層が、第2樹脂層を保護する保護層としても働き得る。その結果、本発明の実施形態による積層フィルムは、高いハードコート性を維持しつつ、屈曲性が向上し、屈曲させてもクラックの発生が抑制され得る。なお、このようなメカニズムは、あくまで推察であり、本発明を拘束するものでも限定的に解釈するものでもない。
【0015】
本明細書において、「ハードコート層と第1樹脂層との溶解度パラメータの差」とは、ハードコート層(ハードコート層を形成する材料)の溶解度パラメータと、第1樹脂層(第1樹脂層を形成する材料)の溶解度パラメータとの差の絶対値である。溶解度パラメータは、分子凝集エネルギー密度の平方根であり、δとも表される。具体的には、ある物質の溶解度パラメータδは、モル体積をV、1モルあたりの凝集エネルギーをΔEと表した場合に、以下の式により定義される。
δ=(ΔE/V)1/2
溶解度パラメータは、sp値と称される場合もある。sp値の単位は、MPa1/2である。ハードコート層のsp値、及び、第1樹脂層のsp値は、Fedorsのsp値推算方法に基づいて算出される。
【0016】
本発明の実施形態による積層フィルムにおいて、ハードコート層は、第1樹脂層に直接配置され得る。このような構成であれば、本発明の実施形態による積層フィルムは、高いハードコート性を維持しながらも、上述のとおり相溶層の形成が抑制されているので、高い屈曲性が良好に維持され得る。この場合の「直接配置」とは、第1樹脂層とハードコート層との間に接着層(接着剤層又は粘着剤層)が介在していないことをいう。
【0017】
本発明の実施形態による積層フィルムにおいて、第1樹脂層は、第2樹脂層に直接配置され得る。このような構成であれば、本発明の実施形態による積層フィルムは、高いハードコート性を維持しながら、より優れた屈曲性を実現し得る。さらに、このような構成であれば、本発明の実施形態による積層フィルムの薄型化にも特に寄与し得る。この場合の「直接配置」とは、第1樹脂層と第2樹脂層との間に接着層(接着剤層又は粘着剤層)が介在していないことをいう。なお、本発明の目的を逸脱しない範囲において、第1樹脂層と第2樹脂層との間には、1以上の層が介在してもよい。
【0018】
本発明の実施形態による積層フィルムのハードコート性は、鉛筆硬度(引っ掻き硬度(鉛筆法)により評価され得る。具体的には、本発明の実施形態による積層フィルムにおけるハードコート層側の表面の鉛筆高度は、好ましくは2H以上であり、より好ましくは3H以上である。鉛筆硬度は、JIS K 5600 5-4に準じて測定され得る。
【0019】
本発明の実施形態による積層フィルムの屈曲性は、屈曲試験を行うことにより評価され得る。屈曲試験は、例えば、JIS P 8115に準拠して、MIT試験を行うことで評価される。詳しくは、屈曲を繰り返してクラックを生じるまでの繰り返し回数で評価され得る。積層フィルムは、好ましくは当該条件で、50000回以上、より好ましくは100000回以上、更に好ましくは150000回以上、特に好ましくは200000回以上、繰り返しても破断(クラック)が確認されないという屈曲性を有する。
【0020】
本発明の実施形態による積層フィルムは、好ましくは、折り曲げ後の復元性を有し得る。折り曲げ後の復元性とは、折り曲げた後に折れ痕が残ることなく元の状態に戻ることをいう。折り曲げ後の復元性は、例えば、上記JIS P 8115に準拠して、MIT試験を行うことで評価される。詳しくは、折り曲げを繰り返した後に折れ痕がつくまでの繰り返し回数で評価され得る。積層フィルムは、好ましくは当該条件で50000回以上、より好ましくは100000回以上、更に好ましくは150000回以上、特に好ましくは200000回以上、繰り返しても折れ痕が残ることなく元の状態に戻るという復元性を有する。
【0021】
本発明の実施形態による積層フィルムの光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準じて測定され得る。
【0022】
本発明の実施形態による積層フィルムのヘイズ(曇価)は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下である。ヘイズは、JIS K 7136:2000に準じて測定され得る。
【0023】
以下、本発明の実施形態による積層フィルムを構成し得る各部材について、具体的に説明する。
【0024】
B.ハードコート層
本明細書において、「ハードコート層」は、表面保護機能を有する硬質の表面処理層の総称として用いられる。したがって、ハードコート層は、一般的なハードコート層のみならず、反射防止層、スティッキング防止層、アンチグレア層、アンチブロッキング層も包含し得る。
【0025】
ハードコート層は、任意の適切な材料で構成され得る。本実施形態の積層フィルムにおいては、上述のとおり、ハードコート層と基材における第1樹脂層とのsp値の差が、1.5以上であればよい。したがって、ハードコート層を形成し得る材料としては、第1樹脂層のsp値との差が1.5以上であれば、任意の適切な材料が選択され得る。ハードコート層のsp値とは、ハードコート層を形成し得る材料のsp値である。第1樹脂層のsp値は、第1樹脂層を形成し得る材料のsp値である。
【0026】
ハードコート層を形成し得る材料(以下、「ハードコート層形成用材料」と称する場合がある。)としては、代表的には、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、電子線)硬化性樹脂が挙げられる。このような硬化性樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)、又は電子線等により硬化する(メタ)アクリレート基を有する硬化型化合物が採用され得る。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」を意味する。
【0027】
硬化性樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレートのオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。硬化性樹脂として市販品を用いてもよい。
【0028】
ハードコート層形成用材料は、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、及び官能基を有するオリゴマーとモノマーとの共重合体のうち少なくとも一種を含んでいてもよい。官能基を有するモノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレートは、好ましくは2官能以上であり、より好ましくは3官能以上である。官能基を有するオリゴマーとしては、例えば、硬化型ウレタン(メタ)アクリレート(例えばsp値11.25MPa1/2)が挙げられる。
【0029】
ハードコート層(実質的には、ハードコート層形成用材料)は、全ハードコート層形成用樹脂100重量部に対して、硬化型ウレタン(メタ)アクリレート及び3官能以上の(メタ)アクリレートを合計で60重量部以上含み得る。当該合計量は、好ましくは70重量部以上であり、より好ましくは80重量部以上であり、更に好ましくは90重量部以上であり、特に好ましくは95重量部以上である。当該合計量は100重量部であってもよい。すなわち、ハードコート層形成用材料がすべて、硬化型ウレタン(メタ)アクリレート及び/又は3官能以上の(メタ)アクリレートで構成されていてもよい。
硬化型ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のUV硬化型ウレタンアクリレート(具体的には商品名「UV-1700TL」、三菱ケミカル株式会社製の商品名「UT-7314」)が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、DIC社製の商品名「ユニディック(登録商標)17-807」、東亜合成株式会社製の商品名「M-920」等が挙げられる。
【0030】
上記ハードコート層形成用材料は、任意の適切な添加剤を更に含み得る。添加剤としては、例えば、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。また、上記ハードコート層形成用材料は、任意の適切な溶媒を含み得る。
【0031】
ハードコート層は、例えば、塗布面(例えば、基材の一方の面(図示例では、第1樹脂層21))にハードコート層形成用材料を塗布して塗布層を形成し、塗布層を加熱(必要に応じて)及び硬化して形成され得る。
【0032】
ハードコート層形成用材料の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法、コンマコート法が挙げられる。
【0033】
上記塗布層の加熱温度は、ハードコート層形成用材料の組成に応じて、適切な温度に設定され得る。加熱温度は、例えば、50℃~150℃である。
【0034】
上記塗布層の硬化としては、任意の適切な硬化処理が採用され得る。代表的には、硬化処理は紫外線照射により行われる。紫外線照射の積算光量は、好ましくは100mJ/cm~400mJ/cmである。
【0035】
ハードコート層は、ハードコート層形成用材料から作製され得る樹脂フィルムを採用してもよい。樹脂フィルムは、任意の適切な材料から作製され得る。樹脂フィルムを採用する場合、本発明の実施形態による積層フィルムは、樹脂フィルムを基材(第1樹脂層)に、接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層:図示せず)を介して貼り合わせることで作製され得る。なお、この場合の樹脂フィルムは、硬化前の接着剤、及び第1樹脂層(第1樹脂層を形成する材料)のsp値、並びに接着剤に含まれる溶剤に応じて任意の適切なフィルムが選択され得る。
【0036】
ハードコート層が基材(第1樹脂層)に貼り合わせられる場合には、ハードコート層は、任意の適切な転写用基材上に、上記と同様にして形成され、次いで、接着層を介して基材に貼り合わせられ、その後、転写用基材が剥離除去されて、基材(実質的には第1樹脂層)への転写が完了する。このようにして本発明の実施形態による積層フィルムを作製してもよい。なお、硬化前の接着剤により、接着層と基材との界面に相溶層が形成され得る。
【0037】
ハードコート層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは4μm以上である。ハードコート層の厚みは、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下である。ハードコート層の厚みがこのような範囲であれば、積層フィルムの機械的強度が向上し得、かつ、積層フィルムに優れたより屈曲性が付与され得る。
【0038】
C.基材
基材は、上述のとおり、第1樹脂層と第2樹脂層とを含む。ただし、本発明の実施形態による積層フィルムにおける基材の構成は、これに限定されない。例えば、基材において、第1樹脂層と、第2樹脂層との間に、適切な任意の1以上の層が介在していてもよく、第2樹脂層の、第1樹脂層が配置されている面とは反対側の面に、適切な任意の1以上の層が備えられていてもよい。以下、代表的に、第1樹脂層、及び第2樹脂層について具体的に説明する。
【0039】
C-1.第1樹脂層
第1樹脂層は、樹脂材料から作製され得る。上述のとおり、第1樹脂層は、ハードコート層とのsp値の差が、1.5以上である。したがって、第1樹脂層を形成し得る樹脂材料としては、ハードコート層のsp値との差が1.5以上である材料を選択し得る。
【0040】
第1樹脂層を形成するための樹脂材料(以下、「第1樹脂材料」と称する場合がある。)は、単一の樹脂成分からなる材料であってもよく、複数の成分から組成される材料(組成物)であってもよい。第1樹脂層が組成物から作製される場合、第1樹脂層の溶解度sp値とは、組成物全体としてのsp値を意味する。
【0041】
第1樹脂材料は、好ましくは熱可塑性樹脂である。第1樹脂材料の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂;ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;これらの共重合体樹脂が挙げられる。
【0042】
なかでも、第1樹脂材料は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、及び、ポリカーボネート系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂材料である。第1樹脂材料が上記の少なくとも一種の樹脂であると、第1樹脂層とハードコート層とのsp値の差が1.5以上となるように、特に調整しやすい。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な樹脂を採用し得る。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖又は分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。(メタ)アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。具体的な(メタ)アクリル系樹脂の市販品の例としては、株式会社カネカ製の製品名 HTX-Z(sp値:9.5MPa1/2)等が挙げられる。
【0044】
シクロオレフィン系樹脂としては、任意の適切な樹脂を採用し得る。具体的には、シクロオレフィン系樹脂は、例えば環状オレフィン骨格を有するポリオレフィン、より具体的にはポリノルボルネン等が挙げられる。具体的なシクロオレフィン系樹脂の市販品の例としては、日本ゼオン株式会社製の製品名 ZEONOR(sp値:8.5MPa1/2)等が挙げられる。
【0045】
ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート樹脂が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂は、分子内にカーボネート基(-O=(C=O)-O-)を少なくとも1つ有する熱可塑性樹脂である。ポリカーボネート系樹脂は、例えばジヒドロキシ化合物と;炭酸ジアルキル化合物、炭酸ジアリール化合物、炭酸ジフェニル等と;から合成し得る。具体的なポリカーボネート系樹脂の市販品の例としては、出光興産株式会社製の製品名 タフロン(sp値:9.7MPa1/2)等が挙げられる。
【0046】
第1樹脂層がポリカーボネート系樹脂である場合、ポリカーボネート系樹脂は、好ましくは、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットからなる群から選択される少なくとも一種のジヒドロキシ化合物由来の構造単位を実質的に含まない。この場合、積層フィルムにおいて、ハードコート層と第1樹脂層との間に相溶層が形成されるのを特に良好に抑制し得る。その結果、積層フィルムの屈曲性の向上に、特に寄与し得る。本明細書において、上記の「実質的に含まない」とは、第1樹脂層における上記ジヒドロキシ化合物由来の構造単位の割合が、第1樹脂層の全重量に対して、1質量%以下であることを意味する。第1樹脂層における上記ジヒドロキシ化合物由来の構造単位の割合は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。上記第1樹脂層の全質量とは、揮発成分を除く全成分の合計量をいう。
【0047】
ハードコート層(実質的には、ハードコート層形成用材料)と第1樹脂層(実質的には、第1樹脂材料)との好ましい組み合わせは、以下のとおりである;
・ハードコート層:HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート。sp値11.25MPa1/2)と、第1樹脂層:シクロオレフィンポリマー(sp値8.5MPa1/2)、(メタ)アクリル系樹脂(sp値9.5MPa1/2)、又はポリカーボネート系樹脂(sp値9.7MPa1/2);
・ハードコート層:HPA(ヒドロキシプロピルアクリレート。sp値11.0MPa1/2)と、第1樹脂層:シクロオレフィンポリマー(sp値8.5MPa1/2)、又は、(メタ)アクリル系樹脂(sp値9.5MPa1/2)。
【0048】
第1樹脂層は、単一の樹脂フィルムであってもよく、第2樹脂層との多層押出フィルムであってもよい。第1樹脂層は、単一の樹脂フィルムである場合は、任意の適切な形成方法で作製し得る。第1樹脂層は、好ましくは、第2樹脂層との多層押出によって形成されるフィルム(多層押出フィルム)である。多層押出フィルムであると、第1樹脂層と第2樹脂層との間に接着層を設ける必要がなく、接着剤による悪影響が防止され得る。さらに、第1樹脂層及び第2樹脂層(特に第1樹脂層)を薄型化し得る。
【0049】
第1樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、更に好ましくは120℃以上である。第1樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは280℃以下、より好ましくは175℃以下、更に好ましくは170℃以下である。第1樹脂層のガラス転移温度が上記範囲内であると、積層フィルムの加工性を確保しながら、耐熱性を向上させ得る。
【0050】
第1樹脂層と第2樹脂層とのガラス転移温度の差は、好ましくは40℃以下、より好ましくは38℃以下、更に好ましくは35℃以下である。第1樹脂層と第2樹脂層とのガラス転移温度の差が上記範囲内であると、積層フィルムのより高い耐熱性及び高い屈曲性を維持し得る。
【0051】
第1樹脂層の厚みは、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下である。第1樹脂層の厚みは、好ましくは、0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。第1樹脂層は、多層押出により作製されると、単一の樹脂フィルムでは実現不可能な薄型化が可能である。
【0052】
第1樹脂層の厚みは、第2樹脂層の厚みよりも小さいことが好ましい。この場合、本発明の実施形態による積層フィルムを薄型化しながら、上記積層フィルムの屈曲性の更なる向上に寄与し得る。
【0053】
C-2.第2樹脂層
第2樹脂層は、樹脂材料から作製され得る。第2樹脂層を作製するための樹脂材料(以下、「第2樹脂材料」と称する場合がある。)は、一種の樹脂からなる材料であってもよく、複数の成分から組成される材料(組成物)であってもよい。
【0054】
第2樹脂材料は、任意の適切な材料を採用し得る。具体例としては、C-1項で説明した第1樹脂材料の例と同様の樹脂を挙げることができる。なかでも、第2樹脂材料は、好ましくは、ポリカーボネート系樹脂を含む。本発明の効果が得られる範囲内において、第2樹脂材料におけるポリカーボネート系樹脂は、C-1項で説明したポリカーボネート系樹脂と同様の構成を採用し得る。
【0055】
本発明の実施形態による積層フィルムにおいては、好ましくは、第2樹脂層がポリカーボネート系樹脂を含み、より好ましくは、第2樹脂層が第1樹脂層に採用され得るポリカーボネート系樹脂とは異なるポリカーボネート系樹脂を含む。第2樹脂層が第1樹脂層に採用され得るポリカーボネート系樹脂とは異なるポリカーボネート系樹脂を含む場合、第2樹脂層におけるポリカーボネート系樹脂は、好ましくは、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位を含む。ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットからなる群から選択される少なくとも一種のジヒドロキシ化合物由来の構造単位を含む。このような構成であれば、本発明の実施形態による積層フィルムの屈曲性を顕著に向上させ得る。イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットは、下記式(1)に示す構造の立体異性体の関係にある。
【化1】
【0056】
ポリカーボネート系樹脂において上記ジヒドロキシ化合物は、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイデットのうち、イソソルビドを含むことが特に好ましい。すなわち、第2樹脂層は、イソソルビド由来の構造単位を含むことが特に好ましい。このような構成であれば、本発明による実施形態の積層フィルムの屈曲性を特に顕著に向上させ得る。それだけでなく、イソソルビドは、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるため、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面において優れる。
【0057】
第2樹脂層におけるポリカーボネート系樹脂は、好ましくは、下記式(2)に示す構造を有し得る。
【化2】
式(2)中、n及びmは、それぞれ1以上の正の数である。式(2)中、Rは、炭酸ジアルキル化合物及び/又は炭酸ジアリール化合物の残基である。
【0058】
第2樹脂材料に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂及びその作製方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特許第5528606号公報に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0059】
第2樹脂層において、上記ジヒドロキシ化合物由来の構造単位の割合は、第2樹脂層の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、例えば100質量%であってもよい。上記ジヒドロキシ化合物由来の構造単位の割合は、第2樹脂層の全重量に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記第2樹脂層の全質量とは、揮発成分を除く全成分の合計量をいう。
【0060】
第2樹脂層は、単一の樹脂フィルムであってもよく、第1樹脂層との多層押出フィルムであってもよい。第2樹脂層は、単一の樹脂フィルムである場合は、任意の適切な形成方法で作製し得る。第2樹脂層は、好ましくは、第1樹脂層との多層押出フィルムである。多層押出フィルムであると、第1樹脂層と第2樹脂層との間に接着層を設ける必要がなく、接着剤による悪影響が防止され得る。さらに、第1樹脂層及び第2樹脂層(特に第1樹脂層)を薄型化し得、第2樹脂層は、薄型化された第1樹脂層の支持体としても機能し得る。
【0061】
第2樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上である。第2樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは160℃以下である。第2樹脂層のガラス転移温度が上記範囲内であると、積層フィルムの加工性を確保しながら、耐熱性を向上させ得る。第2樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは第1樹脂層のガラス転移温度よりも低い。
【0062】
第2樹脂層の厚みは、好ましくは、第1樹脂層の厚みよりも大きい。第2樹脂層の厚みは、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である。第2樹脂層の厚みは、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上である。第2樹脂層は、1つの実施形態においては、第1樹脂層の支持体としても機能し得る。
【0063】
C-3.基材の作製方法
本発明の実施形態による積層フィルムにおける基材は、好ましくは、多層押出法(共押出成形法とも称される。)で作製され得る。具体的には、多層押出法による基材の作製は、例えば以下のようにして行われ得る。
まず、第1樹脂材料と第2樹脂材料とを用意する。第1樹脂材料は、ペレット状であってもよい。第2樹脂材料も同様である。
続いて、第1樹脂材料用注入口及び第2樹脂材料用注入口を備えた多層押出成形装置のそれぞれの注入口に、第1樹脂材料及び第2樹脂材料を投入し、任意の適切な温度で加熱することでそれぞれ溶融させる。注入口へは、予め加熱し溶融させた状態(溶融状態)のそれぞれの樹脂材料を投入してもよい。
続いて、多層押出成形装置(第1樹脂材料用吐出口及び第2樹脂材料用吐出口を備える)のそれぞれの吐出口から、第1樹脂材料及び第2樹脂材料をそれぞれ連続的に吐出させながら、多層押出成形装置のTダイで所定の寸法に引き延ばし、第1樹脂材料と第2樹脂材料とを積層フィルム状に成形し積層体を得る。
続いて、積層体をロールで搬送しながら、積層体を任意の適切な温度で冷却して固化させる。これにより、第1樹脂層と第2樹脂層とが直接積層された基材が得られる。
【0064】
D.積層フィルムの製造方法
本発明の実施形態による積層フィルムは、ハードコート層、第1樹脂層、及び第2樹脂層がこの順に配置されるように積層することで作製され得る。例えば、第1樹脂層と第2樹脂層とを含む基材は、上述の多層押出法により作製され得る。
続いて、第1樹脂層と第2樹脂層とを含む基材の第1樹脂層側(すなわち第1樹脂層の第2樹脂層を向く面とは反対の面側)に、ハードコート層が配置される。ハードコート層の配置は、基材の第1樹脂層側に、ハードコート層形成用材料を任意の適切な方法で塗布し、次いで塗布したハードコート層形成用材料の塗布層を、任意の適切な硬化処理をすることにより、硬化して硬化膜としてのハードコート層を作製する。これにより、本発明の実施形態による積層フィルムが得られ得る。
【0065】
なお、本発明の実施形態による積層フィルムの製造方法は、上記に限定されない。本発明の実施形態による積層フィルムは、ハードコート層、第1樹脂層、及び第2樹脂層がこの順に積層されて配置されるように、任意の適切な方法により作製すればよい。
【0066】
E.光学部材
本発明の実施形態は、上記の積層フィルムを用いた光学部材も包含する。本発明の実施形態による光学部材は、上記の積層フィルムと光学フィルムとを備える。
【0067】
光学フィルムとしては、任意の適切な光学フィルムが挙げられる。光学フィルムは、単一層で構成されるフィルムであってもよく、積層体であってもよい。単一層で構成される光学フィルムの具体例としては、偏光子、位相差フィルムが挙げられる。積層体として構成される光学フィルムの具体的な例としては、偏光板(具体的には、偏光子と保護フィルムとの積層体)、タッチパネル用導電性フィルム、表面処理フィルム、ならびに、これらの単一層で構成される光学フィルム及び/又は積層体として構成される光学フィルムを目的に応じて適切に積層した積層体(例えば、反射防止用円偏光板、タッチパネル用導電層付偏光板)が挙げられる。
【0068】
F.画像表示装置
本発明の実施形態は、上記の積層フィルム又は上記の光学部材を用いた画像表示装置も包含する。したがって、本発明の実施形態による画像表示装置は、上記の積層フィルム、又は上記の光学部材を備え得る。本発明の実施形態による画像表示装置は、好ましくは画像表示パネルと、画像表示パネルの視認側に上記の積層フィルム又は上記光学部材と、を備える。本発明の実施形態による画像表示装置では、好ましくは積層フィルムのハードコート層が画像表示パネルの視認側に配置される。
【0069】
本発明の実施形態による画像表示装置としては、任意の適切な画像表示装置が挙げられる。画像表示装置は、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置であり、好ましくは、有機EL表示装置である。本発明の実施形態による積層フィルムは、特に、屈曲可能、折りたたみ可能、又は湾曲可能な有機EL表示装置に有用に用いられ得る。このような場合に、本発明の実施形態による効果が顕著であるからである。
【0070】
なお、本発明の実施形態による積層フィルムの用途は、上記に限られず、任意な適切の光学装置等にも適用可能である。
【実施例0071】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0072】
1.評価方法
(1)ハードコート性(引っ掻き硬度(鉛筆法))
実施例及び比較例で得られた積層フィルムのハードコート層側の表面の鉛筆硬度を、JIS K 5600-5-4に準拠して測定した。
(2)屈曲試験
実施例及び比較例で得られた積層フィルムの屈曲性をJIS P 8115に準拠したMIT試験に供し、以下のように評価した。
積層フィルム(厚み0.4mm)を長さ100cm、幅29cmに打ち抜き測定試料(サンプル)とした。サンプルをMIT耐折試験装置(テスター産業社製)にセットし、温度25℃、折り畳み(曲げ)の屈曲半径R=1.5mm、屈曲速度30回/分、加重9.8Nの条件で折り畳みを繰り返した。折り畳みは、ハードコート層が内側となるようにして行った。折り畳み回数を確認しながら、積層フィルムの状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
A(優良):20万回以上繰り返しても、破断(クラック)は認められなかった
B(良好):20万回繰り返すと、破断(クラック)が確認されたが、15万回以上20万回未満の繰り返しでは、破断(クラック)は認められなかった
C(中程度):15万回繰り返すと、破断(クラック)が確認されたが、10万回以上15万回未満の繰り返しでは、破断(クラック)は認められなかった
D(不十分):10万回繰り返すと、破断(クラック)が確認されたが、5万回以上10万回未満の繰り返しでは、破断(クラック)は認められなかった
E(不良):5万回以下の繰り返しで、破断(クラック)が確認された
【0073】
2.積層フィルムの作製
[実施例1]
ハードコート層形成用材料として、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)樹脂の溶液(sp値:11.25MPa1/2)、第1樹脂層及び第2樹脂層を形成するための樹脂材料として、それぞれ表1に示す「樹脂材料1」及び「樹脂材料4」を用意した。ハードコート層と第1樹脂層とのsp値の差は、表1の「ハードコート層とハードコート層が配置される樹脂層とのsp値の差」の欄に示すとおりである。
「樹脂材料1」及び「樹脂材料4」を、第1樹脂材料用注入口及び第2樹脂材料用注入口を備えた多層押出装置の注入口にそれぞれ注入し、多層押出装置のTダイにより積層体を作製した。押出しは、シリンダー温度240℃、吐出量を4.0kg/hで押出し、次いで、270℃のTダイでシート状に押出し、続いて、110℃、120℃、及び、180℃の3本のロールにより冷却することによりおこなった。これにより、全体厚み40μm(第1樹脂層の厚み10μm:第2樹脂層の厚み30μm)の基材フィルム(基材)を作製した。
得られた基材の第1樹脂層上に、「ハードコート層形成用材料」を塗布してから、60℃、1分の条件で加熱し、次いで、紫外線(UVA)を積算光量2000mJ/minの条件で光照射し、ハードコート層形成用材料の塗布膜を硬化させることにより、基材上にハードコート層(厚み2μm)を形成した。これにより、積層フィルムを作製した。
作製した積層フィルムのサンプルに対し、上記鉛筆硬度の測定によりハードコート性を評価し、屈曲試験を行うことにより、屈曲性を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例2~3及び比較例1]
第1樹脂材料を表1の「第1樹脂層」の欄に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0075】
[比較例2]
第1樹脂層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0076】
表1に示す材料の詳細は、下記のとおりである。
・樹脂材料1:アクリル系樹脂(カネカ社製 品名 HTX-Z)。sp値:9.5MPa1/2。ガラス転移温度:128℃
・樹脂材料2:シクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン社製 品名 ZEONOR)。sp値:8.5MPa1/2。ガラス転移温度:163℃。
・樹脂材料3:ポリカーボネート系樹脂(出光興産社製 品名 タフロン)。sp値:9.7MPa1/2。ガラス転移温度:150℃。
・樹脂材料4:ポリカーボネート系樹脂。sp値:10.5MPa1/2。ガラス転移温度:130℃。樹脂材料4は、以下のように調製した。
イソソルビド(ISB)37.5質量部、9,9-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)91.5質量部、平均分子量400のポリエチレングリコール(PEG)8.4質量部、ジフェニルカーボネート(DPC)105.7質量部、及び、触媒として炭酸セシウム(0.2質量%水溶液)0.594質量部をそれぞれ反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、反応容器の熱媒温度を150℃にし、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
次いで、反応容器内の圧力を常圧から13.3kPaにし、反応容器の熱媒温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器内温度を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、反応容器の熱媒温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、更に発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に減圧した。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出した後に、ペレット化を行い、BHEPF/ISB/PEG=42.9モル%/52.8モル%/4.3モル%の割合でジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート系樹脂を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
表1から明らかなとおり、ハードコート層と第1樹脂層との溶解度パラメータ(sp値)の差が1.5以上である本発明の実施例の積層フィルムでは、ハードコート性及び屈曲性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の実施形態による積層フィルムは、偏光板等の光学部材、及び有機ELデバイス等の画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0080】
1 積層フィルム
10 ハードコート層
20 基材
21 第1樹脂層
22 第2樹脂層
図1