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特開2025-98567医用画像処理装置、医用画像処理方法、および医用画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098567
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、および医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20250625BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 382
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214791
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴苗 修平
(72)【発明者】
【氏名】森島 大静
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA04
4C096AA17
4C096AB41
4C096AB44
4C096AC01
4C096AD14
4C096AD24
4C096BA05
4C096BA19
4C096BA42
4C096BB22
4C096BB24
4C096DC20
4C096DC21
4C096DC35
(57)【要約】
【課題】2つの医用画像のミスマッチの定量評価の精度向上。
【解決手段】本実施形態に係る医用画像処理装置は、撮像部位を有する第1医用画像と第1医用画像に関する撮像と異なる撮像により収集され当該撮像部位を含む第2医用画像とを取得する取得部と、第1医用画像での病変に関する第1領域を特定する特定部と、第1領域が撮像部位に対して両側性か片側性かを判定する判定部と、第1領域が両側性であれば、第2医用画像において第1領域とは異なる領域を正常な部分を示す第2領域として決定し、第1領域が片側性であれば、第2医用画像において撮像部位の中心線に対して第1領域の線対称に対応する領域を第2領域として決定する決定部と、第2医用画像において、第1領域に関する第1特徴量と第2領域に関する第2特徴量とを計算し、第1、第2特徴量に基づいて第1、第2医用画像のミスマッチに関する指標を計算する計算部と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮像部位に対する所定の撮像により収集された第1医用画像と、前記所定の撮像と異なる撮像により収集され、前記撮像部位を含む第2医用画像とを取得する取得部と、
前記第1医用画像に基づいて、前記撮像部位における病変に関する第1領域を特定する特定部と、
前記撮像部位における前記第1領域の位置に基づいて、前記第1領域が前記撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定する判定部と、
前記第1領域が両側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記第1領域とは異なる領域を、前記撮像部位における正常な部分を示す第2領域として決定し、前記第1領域が片側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記撮像部位に対する中心線を対称軸として前記第1領域の線対称に対応する領域を、前記第2領域として決定する決定部と、
前記第2医用画像において、前記第1領域における複数の画素値による特徴を示す第1特徴量と前記第2領域における複数の画素値による特徴を示す第2特徴量とを計算し、前記第1特徴量と前記第2特徴量とに基づいて、前記第1医用画像と前記第2医用画像とのミスマッチに関する指標を計算する計算部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記第1医用画像と前記第2医用画像とは、前記撮像部位のアキシャル断面または前記撮像部位のコロナル断面である、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1医用画像は、拡散強調画像であって、
前記第2医用画像は、FLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)画像である、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1特徴量は、前記第1領域に含まれる複数の画素値に基づく統計値であって、
前記第2特徴量は、前記第2領域に含まれる複数の画素値に基づく統計値である、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記指標は、前記第1特徴量と前記第2特徴量との比である、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記撮像部位に対する中心線を対称軸として前記第1領域の線対称に対応する対称領域と前記第1領域とが重なる場合、前記第1領域が両側性であると判定し、前記対称領域と前記第1領域とが重ならない場合、前記第1領域が片側性であると判定する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記撮像部位に対する中心線を対称軸として前記第1領域の線対称に対応する対称領域と前記第1領域とが重なる重複領域のサイズが所定の閾値を超えた場合、前記第1領域が両側性であると判定し、前記重複領域のサイズが前記所定の閾値以下である場合、前記第1領域が片側性であると判定する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記撮像部位に対する中心線を超えて位置する解剖学的部位に前記第1領域が含まれるか否かを判定し、前記第1領域が前記解剖学的部位に含まれる場合、前記第1領域が両側性であると判定し、前記第1領域が前記解剖学的部位に含まれない場合、前記第1領域が片側性であると判定する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記特定部は、前記第2医用画像に対する所定の画像処理により、前記解剖学的部位を特定する、
請求項8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記第1領域が両側性であると判定された場合、前記決定部は、所定の値を超える見かけの拡散係数を有する領域を、前記第2領域として決定する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記撮像部位は、前記被検体の脳であって、
前記第1領域が両側性であると判定された場合、前記決定部は、前記被検体の脳脊髄液と前記脳の外側の領域とを含まない領域を、前記第2領域として決定する。
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記第1領域が両側性であると判定された場合、前記決定部は、前記第1領域における組織の性状と類似する領域を、前記第2領域として決定する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記第2医用画像に前記第1領域および前記第2領域を重畳して、前記指標とともに表示する表示部をさらに備える、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
被検体の撮像部位に対する所定の撮像により収集された第1医用画像と、前記所定の撮像と異なる撮像により収集され、前記撮像部位を含む第2医用画像とを取得し、
前記第1医用画像に基づいて、前記撮像部位における病変に関する第1領域を特定し、
前記撮像部位における前記第1領域の位置に基づいて、前記第1領域が前記撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定し、
前記第1領域が両側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記第1領域とは異なる領域を、前記撮像部位における正常な部分を示す第2領域として決定し、
前記第1領域が片側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記撮像部位に対する中心線を対称軸として前記第1領域の線対称に対応する領域を、前記第2領域として決定し、
前記第2医用画像において、前記第1領域における複数の画素値による特徴を示す第1特徴量と前記第2領域における複数の画素値による特徴を示す第2特徴量とを計算し、
前記第1特徴量と前記第2特徴量とに基づいて、前記第1医用画像と前記第2医用画像とのミスマッチに関する指標を計算すること、
を備える医用画像処理方法。
【請求項15】
コンピュータに、
被検体の撮像部位に対する所定の撮像により収集された第1医用画像と、前記所定の撮像と異なる撮像により収集され、前記撮像部位を含む第2医用画像とを取得し、
前記第1医用画像に基づいて、前記撮像部位における病変に関する第1領域を特定し、
前記撮像部位における前記第1領域の位置に基づいて、前記第1領域が前記撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定し、
前記第1領域が両側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記第1領域とは異なる領域を、前記撮像部位における正常な部分を示す第2領域として決定し、
前記第1領域が片側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記撮像部位に対する中心線を対称軸として前記第1領域の線対称に対応する領域を、前記第2領域として決定し、
前記第2医用画像において、前記第1領域における複数の画素値による特徴を示す第1特徴量と前記第2領域における複数の画素値による特徴を示す第2特徴量とを計算し、
前記第1特徴量と前記第2特徴量とに基づいて、前記第1医用画像と前記第2医用画像とのミスマッチに関する指標を計算すること、
を実現させる医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、および医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳梗塞の発症時間を予測する方法として、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)画像のうち拡散強調画像(Diffusion Weighted Image:DWI)とFLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)画像とのミスマッチ(DWI/FLAIRミスマッチ現象)に着目する方法がある。
【0003】
DWI画像は、急性期の脳梗塞を描出することができる。一方、急性期の脳梗塞では、FLAIR画像では変化は見られない。これらのことから、ユーザーは、図10に示すように、DWI画像とFLAIR画像との差(ミスマッチ)を利用して、被検体の脳梗塞が急性期の脳梗塞か否かを判断する。図10に示すように、DWI画像とFLAIR画像とのミスマッチがある場合(TMM)では、急性期の脳梗塞に該当し、ミスマッチがない場合(NMM)では、急性期ではない脳梗塞に該当する場合が多い。
【0004】
急性期の脳梗塞であれば、例えば、rt-PA(recombinant tissue-type plasminogen activator)投与による血栓除去の効果が認められる。このため、被検体で発生した脳梗塞が急性期か否かを把握したいという要望がある。脳梗塞は、就寝中など夜中から朝方にかけて発症することが多く、脳梗塞の発症時間が不明な場合が多い。このため、DWI/FLAIRミスマッチ現象に着目することで、脳梗塞の発症からのおおよその経過時間を把握することが可能となることがある。
【0005】
DWI/FLAIRミスマッチ現象では、まず、DWI画像において脳梗塞に関する領域が患側側の領域(以下、患側領域と呼ぶ)が特定され、患側領域が、FLAIR画像にマッピングされる。次いで、FLAIR画像において、脳の中心線を対称軸として患側領域の線対称に対応する領域が、健側側の領域(以下、健側領域と呼ぶ)として決定される。続いて、FLAIR画像における患側領域と健側領域とを用いて、DWI/FLAIRミスマッチ現象を定量化することが知られている。
【0006】
しかしながら、小脳梗塞や両側性梗塞など被検体の脳の左右両側に梗塞がある場合、既知のDWI/FLAIRミスマッチ現象の定量化では、患側と健側との区別ができない。このため、患側領域と健側領域とによるDWI/FLAIRミスマッチ現象の定量評価が困難となる。したがって、医師は、自身の頭の中でDWI/FLAIRミスマッチ現象を定性的に判断している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cheng, Bastian, et al. “Quantitative measurements of relative fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR) signal intensities in acute stroke for the prediction of time from symptom onset.” Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism 33.1 (2013): 76-84.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、病変の両側性および片側性に関わらず、2つの医用画像におけるミスマッチの定量評価の精度を向上させることにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、特定部と、判定部、決定部と、計算部と、を備える。取得部は、被検体の撮像部位に対する所定の撮像により収集された第1医用画像と、前記所定の撮像と異なる撮像により収集され、前記撮像部位を含む第2医用画像とを取得する。特定部は、前記第1医用画像に基づいて、前記撮像部位における病変に関する第1領域を特定する。判定部は、前記撮像部位における前記第1領域の位置に基づいて、前記第1領域が前記撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定する。決定部は、前記第1領域が両側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記第1領域とは異なる領域を、前記撮像部位における正常な部分を示す第2領域として決定し、前記第1領域が片側性であると判定された場合、前記第2医用画像において前記撮像部位に対する中心線を対称軸として前記第1領域の線対称に対応する領域を、前記第2領域として決定する。計算部は、前記第2医用画像において、前記第1領域における複数の画素値による特徴を示す第1特徴量と前記第2領域における複数の画素値による特徴を示す第2特徴量とを計算し、前記第1特徴量と前記第2特徴量とに基づいて、前記第1医用画像と前記第2医用画像とのミスマッチに関する指標を計算する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る医用画像処理装置を含む医用情報処理システムの構成の一例を示すブロック図。
図2図2は、実施形態に係り、第2医用画像において、第1領域と、対称領域との一例を示す図。
図3図3は、実施形態に係り、第2医用画像において、第1領域と、対称領域との一例を示す図。
図4図4は、実施形態に係り、第2医用画像において、第1領域と、対称領域との一例を示す図。
図5図5は、実施形態に係り、第1領域が両側性である場合において、第1領域と第2領域との一例を示す図。
図6図6は、実施形態に係り、ミスマッチ評価処理の手順の一例を示すフローチャート。
図7図7は、実施形態に係り、第1領域が片側性と判定された場合において、第2医用画像に第1領域および第2領域が重畳され、ミスマッチ指標の凡例とともに、ディスプレイに表示された一例を示す図。
図8図8は、実施形態係り、第1領域が両側性と判定された場合において、第2医用画像に第1領域および第2領域が重畳され、ミスマッチ指標の凡例とともに、ディスプレイに表示された一例を示す図。
図9図9は、図8に示す表示例において、複数の区分領域をさらに重畳させた一例を示す図。
図10図10は、従来技術に係り、DWI画像とFLAIR画像との差(ミスマッチ)の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理方法、および医用画像処理プログラムの実施形態について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る医用画像処理装置30を含む医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、実施形態に係る医用情報処理システム1は、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置10と、画像保管装置20と、医用画像処理装置30とを備える。図1に示すように、MRI装置10、画像保管装置20及び医用画像処理装置30は、ネットワークを介して相互に接続される。
【0013】
MRI装置10は、被検体Pから磁気共鳴画像(MR画像)を収集する。例えば、MRI装置10は、被検体PからMRデータを収集して再構成することにより、MR画像を生成する。MRI装置10は、生成したMR画像を画像保管装置20又は医用画像処理装置30に送信する。MRI装置10の構成としては、既知の構成が適用可能であるため、説明は省略する。MRI装置10は、画像撮像装置の一例である。
【0014】
MRI画像は、第1医用画像と、第2医用画像であるものとする。第1医用画像は、例えば、被検体の撮像部位に対する所定の撮像により収集される。以下、説明を具体的にするために、第1医用画像は、拡散強調画像(Diffusion Weighted Imaging:DWI)であるものとする。拡散強調画像は、ADC(見かけの拡散係数:Apparent Diffusion Coefficient)マップも含む。また、第1医用画像は、撮像部位のアキシャル断面または撮像部位のコロナル断面であるものとする。また、撮像部位は、被検体の脳であるものとする。所定の撮像は、例えば、エコープラナーイメージング(Echo Planar Imaging:EPI)を用いた拡散強調(DW)撮像(DW-EPI)であるものとする。DW撮像としては、T2強調画像系の既知の撮像手法が適用可能であるため、説明は省略する。DW撮像は、典型的には、撮像部位のアキシャル断面または撮像部位のコロナル断面に対して実施される。
【0015】
第2医用画像は、所定の撮像と異なる撮像により収集され、第1医用画像の収集に関する撮像部位を含む。第2医用画像は、FLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)画像であるものとする。また、第2医用画像は、撮像部位のアキシャル断面または撮像部位のコロナル断面であるものとする。また、撮像部位は、第1医用画像と同様に被検体の脳であるものとする。所定の撮像と異なる撮像は、例えば、高速スピンエコー(Fast Spin echo)法を用いたFLAIR撮像(FLAIR-FSE)であるものとする。FLAIR撮像としては、水抑制T2強調画像系の既知の撮像手法が適用可能であるため、説明は省略する。FLAIR撮像は、典型的には、撮像部位のアキシャル断面または撮像部位のコロナル断面に対して実施される。なお、第2医用画像は、第1医用画像と同一断面であってもよいし、第1医用画像と異なる断面であってもよい。
【0016】
なお、DWI撮像およびFLAIR撮像は、撮像部位のアキシャル断面または撮像部位のコロナル断面に限定されず、被検体の脳に対するボリュームスキャン、またはオブリーク断面など他の断面に対して実施されてもよい。このとき、第1医用画像および第2医用画像は、生成されたボリュームデータに対する断面変換処理により生成される。
【0017】
画像保管装置20は、MRI装置10によって収集された第1医用画像および第2医用画像などを保管する。例えば、画像保管装置20は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。具体的には、画像保管装置20は、PACS(Picture Archiving and Communication System:画像保存通信システム)サーバなどにより実現される。画像保管装置20は、医療用画像管理システムと称されてもよい。本実施形態では、画像保管装置20は、ネットワークを介してMRI装置10から第1医用画像および第2医用画像を取得し、取得した第1医用画像および第2医用画像を、装置内又は装置外に設けられたメモリに記憶させる。
【0018】
医用画像処理装置30は、ネットワークを介して第1医用画像および第2医用画像をMRI装置10または画像保管装置20から取得し、取得した第1医用画像および第2医用画像を用いて種々の処理を実行する。医用画像処理装置30は、医用画像解析装置または解析装置と称されてもよい。例えば、医用画像処理装置30は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。また、医用画像処理装置30は、第1医用画像および第2医用画像に基づいて処理された処理の結果を、ディスプレイ32に表示させる。
【0019】
図1に示すように、医用画像処理装置30は、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。
【0020】
入力インターフェース31は、各種指示や各種設定などを行なうためのトラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース31は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路34へと出力する。なお、入力インターフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置30とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース31の例に含まれる。入力インターフェース31は、入力部の一例である。
【0021】
ディスプレイ32は、表示制御機能34fによる制御の下で、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、各種のX線画像データを表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ32は、表示部の一例である。
【0022】
メモリ33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ33は、MRI装置10または画像保管装置20から取得された第1医用画像および第2医用画像を記憶する。また、例えば、メモリ33は、医用画像処理装置30に含まれる各回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。メモリ33は、記憶部の一例である。
【0023】
処理回路34は、取得機能34a、特定機能34b、判定機能34c、決定機能34d、計算機能34e、および表示制御機能34fを実行することで、医用画像処理装置30全体の動作を制御する。
【0024】
処理回路34は、取得機能34aに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、MRI装置10または画像保管装置20から第1医用画像と第2医用画像とを取得する。取得機能34aは、第1医用画像と第2医用画像とをメモリ33に記憶させる。取得機能34aを実現する処理回路34は、取得部に対応する。
【0025】
処理回路34は、特定機能34bに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行する。これにより、特定機能34bは、第1医用画像に基づいて、撮像部位における病変に関する第1領域を特定する。例えば、特定機能34bは、第1医用画像に対して画像処理を実行し、第1医用画像における第1領域を特定する。例えば、特定機能34bは、第1医用画像におけるADCマップにおいて、所定の閾値より低い画素値を有する複数の画素を、第1領域として特定する。所定の閾値は、例えば、見かけの拡散係数(ADC)が健常部分より低い値(以下、ADC閾値と呼ぶ)に対応する。ADC閾値は、予め設定されてメモリ33に記憶される。見かけの拡散係数が小さい値は、血管の梗塞により影響が表れている組織に相当する。このため、撮像部位が脳である場合、第1領域は、脳梗塞が発生している領域に対応する。
【0026】
なお、第1領域の特定は、第1医用画像におけるADCマップ対してADC閾値を用いたセグメンテーション処理に限定されない。例えば、第1医用画像を入力として第1領域を出力する学習済みモデルが第1領域の特定に用いられてもよい。
【0027】
また、処理回路34は、特定機能34bにより、第1医用画像と第2医用画像との位置合わせ(レジストレーション:registration)により、第1医用画像と第2医用画像との位置的な対応付けを特定する。位置的な対応付けは、例えば、第1医用画像における複数の画素各々を第2医用画像における複数の画素各々に対応付けるための変換行列(マッピング行列)に相当する。レジストレーションおよびマッピング行列の生成としては、既知の方法が適用可能であるため、説明は省略する。特定機能34bは、マッピング行列を、メモリ33に記憶させる。
【0028】
また、処理回路34は、特定機能34bにより、第2医用画像における撮像部位に対して中心線を特定する。撮像部位が脳などの略左右対称の臓器(すなわち略線対称な臓器)である場合、中心線は、略左右対称関する対称軸、すなわち略線対称な臓器に関する対称軸に相当する。中心線の特定に関する画像処理としては、既知の方法が適用可能であるため、説明は省略する。特定機能34bは、第2医用画像における撮像部位に対して特定された中心線(対称軸)を、メモリ33に記憶させる。特定機能34bを実現する処理回路34は、特定部に対応する。
【0029】
処理回路34は、判定機能34cにより、撮像部位における第1領域の位置に基づいて、第1領域が撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定する。撮像部位における第1領域の位置とは、例えば、左右対称の撮像部位における対称軸に対する第1領域の位置に相当する。判定機能34cは、第2医用画像における撮像部位における第1領域の位置を用いて、第1領域が撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定する。判定機能34cを実現する処理回路34は、判定部に対応する。
【0030】
具体的には、処理回路34は、判定機能34cにより、マッピング行列を用いて第1領域を第2医用画像にマッピングする。次いで、判定機能34cは、第2医用画像における撮像部位に対する中心線を対称軸として、第2医用画像における第1領域の線対称を計算して、当該線対称に対応する対称領域を特定する。判定機能34cは、第2医用画像において、第1領域と対称領域とが重なるか否かを判定する。第1領域と対称領域とが重なる場合、判定機能34cは、第1領域が両側性であると判定する。また、第1領域と対称領域とが重ならない場合、判定機能34cは、第1領域が片側性であると判定する。上記説明では、第2医用画像において第1領域の両側性または片側性が判定されたが、これに限定されず、第1医用画像において第1領域の両側性または片側性が判定されてもよい。
【0031】
図2は、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REと、対称領域SRとの一例を示す図である。図2に示すように、対称領域SRは、中心線CLを対象軸として第1領域1REの線対称に対応する位置に設定される。図2に示すように、第1領域1REと、対称領域SRとは重ならため、第1領域1REは、判定機能34cにより、片側性と判定される。
【0032】
図3は、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REと、対称領域SRとの一例を示す図である。図3に示すように、中心線CLを対象軸として第1領域1REの線対称に対応する位置に設定されて対称領域SRの一部分は、第1領域1REと重なる。このため、第1領域1REは、判定機能34cにより、両側性と判定される。
【0033】
なお、処理回路34は、判定機能34cにより、対称領域SRと第1領域1REとが重なる重複領域のサイズが所定の閾値を超えた場合、第1領域1REが両側性であると判定し、重複領域のサイズが所定の閾値以下である場合、第1領域1REが片側性であると判定してもよい。所定の閾値は、両側性または片側性の判定に関する閾値(以下、判定閾値と呼ぶ)であって、例えば、体積、面積、ボクセル数、ピクセル数などで予め設定されたメモリ33に記憶される。
【0034】
図4は、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REと、対称領域SRとの一例を示す図である。図4に示すように、対称領域SRは、中心線CLを対象軸として第1領域1REの線対称に対応する位置に設定された対称領域SRの一部分は、第1領域1REと重なる。これにより、図4に示すように、対称領域SRと第1領域1REとが重なる重複領域OLRのサイズと判定閾値とを比較することで、判定機能34cには、第1領域1REが片側性であるか両側性であるかを判定する。
【0035】
なお、処理回路34は、判定機能34cにより、撮像部位に対する中心線CLを超えて位置する解剖学的部位に第1領域1REが含まれるか否かを判定し、第1領域1REが解剖学的部位に含まれる場合、第1領域1REが両側性であると判定し、第1領域1REが解剖学的部位に含まれない場合、第1領域1REが片側性であると判定してもよい。撮像部位が脳である場合、解剖学的部位は、例えば、小脳、脳幹などである。
【0036】
具体的には、判定機能34cによる判定に先立って、処理回路34は、特定機能34bにより、第2医用画像に対する所定の画像処理により、解剖学的部位を特定する。所定の画像処理としては、例えば、脳のパーセレーション(Brain Parcellation:脳の区分化)などのセグメンテーション処理、および学習済みモデルなど既知の手法が適用可能であるため、説明は省略する。なお、脳の区分化は、例えば、脳の機能に応じた脳の領域分割に対応する。このとき、特定機能34bは、脳の画像に対する脳の区分化により、脳の機能に応じた複数の区分領域を特定する。次いで、判定機能34cは、マッピング行列を適用後の第1領域1REと特定された解剖学的部位とを比較し、第1領域1REが解剖学的部位に含まれれば第1領域1REが両側性であると判定し、第1領域1REが解剖学的部位に含まれなければ第1領域1REが片側性であると判定する。
【0037】
処理回路34は、決定機能34dにより、撮像部位における正常な部分を示す第2領域2REを決定する。第2領域2REは、第2医用画像2MEにおいて第1領域1REとは異なる領域であって、正常な組織を示す正常領域に対応する。例えば、第1領域1REが片側性であると判定された場合、決定機能34dは、第2医用画像2MEにおいて撮像部位に対する中心線CLを対称軸として第1領域1REの線対称に対応する領域を、第2領域2REとして決定する。図2に示すように、第1領域1REが片側性である場合、第2領域2REは、対称領域SRに対応する。また、決定機能34dを実現する処理回路34は、決定部に対応する。
【0038】
なお、決定機能34dは、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REを除く他の領域全体を第2領域2REとして決定してもよい。このとき、決定機能34dは、例えば、第2医用画像2MEから第1領域1REを差分することにより第2領域2REを決定する。また、決定機能34dは、第2領域2REを出力可能な学習済みモデルに、第2医用画像2MEと第1領域1REとを入力することで、第2領域2REを決定してもよい。
【0039】
第1領域1REが両側性であると判定された場合、処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像において、第1領域1REとは異なる領域を、第2領域2REとして決定する。図5は、第1領域1REが両側性である場合において、第1領域1REと第2領域2REとの一例を示す図である。撮像部位に対する第2領域2REの位置および大きさは、図5に限定されず、任意に設定可能である。
【0040】
例えば、第1領域1REが両側性であると判定された場合、処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像において、所定の値を超える見かけの拡散係数(ADC値)を有する領域を、第2領域2REとして決定してもよい。所定の値は、例えば、ADC閾値である。なお、所定の値は、ADC閾値より大きい値に設定されてもよい。具体的には、決定機能34dは、ADCマップにおいて、所定の値を超える領域(以下、超過領域と呼ぶ)を決定する。次いで、決定機能34dは、超過領域にマッピング行列を適用して、超過領域を第2医用画像2ME上にマッピングする。続いて、決定機能34dは、第2医用画像において、マッピングされた超過領域のうち、第1領域1REとは異なる領域を、第2領域2REとして決定する。
【0041】
なお、処理回路34は、決定機能34dにより、ADCマップにマッピング行列を適用して、ADCマップを第2医用画像2ME上にマッピングし、次いで、第2医用画像2ME上にマッピングされたADCマップに所定の値を適用して超過領域を決定してもよい。このとき、決定機能34dは、第2医用画像において、決定された超過領域のうち第1領域1REとは異なる領域を、第2領域2REとして決定する。
【0042】
また、第1領域1REが両側性であると判定された場合、処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像において、第1領域1REとは異なる領域のうち、被検体の脳脊髄液と脳の外側の領域(すなわち、撮像部位が表示されていない領域)とを含まない領域を、第2領域2REとして決定してもよい。具体的には、決定機能34dによる第2領域2REの決定に先立って、特定機能34bは、第2医用画像に対する所定の画像処理により、脳脊髄液の領域と脳の外側とを特定する。所定の画像処理としては、各種セグメンテーション処理、および学習済みモデルなどの既知の手法が適用可能であるため、説明は省略する。次いで、決定機能34dは、第2医用画像において、被検体の脳脊髄液と脳の外側の領域とを含まず、かつ第1領域1REとは異なる領域を第2領域2REとして決定する。
【0043】
なお、第1領域1REが両側性であると判定された場合、処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像における第1領域1REとは異なる領域のうち、被検体の脳脊髄液と脳の外側の領域とを含まず、かつ、マッピング行列を適用後のADCマップにおいて所定の値を超える超過領域を、第2領域2REとして決定してもよい。
【0044】
また、第1領域1REが両側性であると判定された場合、処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像において、第1領域1REにおける組織の性状と類似する領域を、第2領域2REとして決定してもよい。例えば、決定機能34dによる第2領域2REの決定に先立って、特定機能34bは、第2医用画像に対する所定の画像処理により、第1領域1REと組織性状と類似する領域(以下、類似領域と呼ぶ)を特定する。所定の画像処理としては、脳の区分化などのセグメンテーション処理、および学習済みモデルなどの既知の手法が適用可能であるため、説明は省略する。次いで、決定機能34dは、第2医用画像において、第1領域1REとは異なる領域のうち類似領域を、第2領域2REとして決定する。
【0045】
なお、第1領域1REが両側性であると判定された場合、処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REとは異なる領域のうち白質や灰白質などの特定の組織のみを、第2領域として決定してもよい。また、例えば、第1領域1REが小脳梗塞である場合、決定機能34dは、第2医用画像において小脳ではない領域を第2領域として決定してもよい。白質や灰白質などの特定の組織の特定および小脳以外の領域特定としては、第2医用画像に対する脳の区分化などのセグメンテーション処理、および学習済みモデルなどの既知の手法が適用可能であるため、説明は省略する。また、決定機能34dは、例えば、第2医用画像において、脳領域の自動抽出アプリなどで第2医用画像における脳領域の分割を行い、第2領域を選定してもよい。
【0046】
処理回路34は、計算機能34eにより、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REにおける複数の画素値による特徴を示す第1特徴量と、第2領域2REにおける複数の画素値による特徴を示す第2特徴量とを計算する。第1特徴量は、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REに含まれる複数の画素値に基づく統計値である。また、第2特徴量は、第2医用画像2MEにおいて、第2領域2REに含まれる複数の画素値に基づく統計値である。統計値は、例えば、複数の画素値の中央値である。すなわち、第1特徴量は、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REに含まれる複数の画素値の中央値(以下、第1中央値と呼ぶ)である。また、第2特徴量は、第2医用画像2MEにおいて、第2領域2REに含まれる複数の画素値の中央値(以下、第2中央値と呼ぶ)である。なお、第2特徴量に対応する統計値は、第2領域2REにおける複数の画素値による標準偏差(以下、正常標準偏差と呼ぶ)であってもよい。なお、統計値は上記に限定されず、既知のものが適宜利用可能である。
【0047】
処理回路34は、計算機能34eにより、第1特徴量と第2特徴量とに基づいて、第1医用画像と第2医用画像とのミスマッチに関する指標(以下、ミスマッチ指標と呼ぶ)を計算する。当該ミスマッチ指標は、例えば、第1特徴量と第2特徴量との比である。具体的には、計算機能34eは、第2中央値に対する第1中央値の比を、ミスマッチ指標として計算する。なお、計算機能34eは、第2中央値に対して第1領域1REにおける複数の画素値各々の比を、第1領域1REにおけるミスマッチ指標のマップとして計算してもよい。また、計算機能34eは、第2中央値を0とした場合に、第1領域1REにおける複数の画素値各々が正常標準偏差の何倍になっているかを示す値を、第1領域1REにおけるミスマッチ指標のマップとして計算してもよい。このとき、ミスマッチ指標のマップ各々の値(ミスマッチ指標)は、Zスコアに対応する数値に相当する。
【0048】
処理回路34は、計算機能34eにより計算されたミスマッチ指標またはミスマッチ指標のマップを、第1領域1REと対応付けて、メモリ33に記憶させる。計算機能34eを実現する処理回路34は、計算部に対応する。
【0049】
処理回路34は、表示制御機能34fに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行する。これにより、表示制御機能34fは、計算機能34eにより計算されたミスマッチ指標と第1領域1REと第2領域2REとを、ディスプレイ32に表示させる。例えば、表示制御機能34fは、第1領域1REと第2領域2REとミスマッチ指標とを第2医用画像に重畳させた重畳画像を、ディスプレイ32に表示させる。このとき、ディスプレイ32は、第2医用画像2MEに第1領域1REおよび第2領域2REを重畳して、ミスマッチ指標とともに表示する。表示制御機能34fを実現する処理回路34は、表示制御部に対応する。
【0050】
以上、実施形態に係る医用情報処理システム1の全体構成について説明した。以下、第1医用画像および第2医用画像におけるミスマッチの定量評価に関する処理(以下、ミスマッチ評価処理と呼ぶ)について、図6を用いて説明する。
【0051】
図6は、ミスマッチ評価処理の手順の一例を示すフローチャートである。以下、説明を具体的にするために、撮像部位は、上述のように被検体の脳であって、第1医用画像は、拡散強調画像であって、第2医用画像はFLAIR画像であるものとする。また、第1医用画像および第2医用画像は、ミスマッチ評価処理の実施に先立って、予め生成されているものとする。
【0052】
(ミスマッチ評価処理)
(ステップS601)
処理回路34は、取得機能34aにより、MRI装置10または画像保管装置20から第1医用画像と第2医用画像とを取得する。取得機能34aは、第1医用画像と第2医用画像とをメモリ33に記憶させる。
【0053】
(ステップS602)
処理回路34は、特定機能34bにより、第1医用画像に対して画像処理を実行し、第1医用画像において第1領域を特定する。例えば、特定機能34bは、第1医用画像におけるADCマップにおいて、ADC閾値より低い画素値を有する複数の画素を、第1領域として特定する。特定機能34bは、マッピング行列により第2医用画像上において特定された第1領域1REを、メモリ33に記憶させる。
【0054】
(ステップS603)
処理回路34は、判定機能34cにより、撮像部位における第1領域の位置に基づいて、第1領域が撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定する。例えば、判定機能34cは、第2医用画像における対称軸(中心線)を第1領域がまたいでいれば、第1領域を両側性として判定する。他の判定方法については、上述の内容に準拠するため、説明は省略する。
【0055】
(ステップS604)
第1領域が両側性と判定されれば(ステップS604のYes)、ステップS605の処理が実行される。第1領域1REが両側性と判定されなければ(ステップS604のNo)、すなわち第1領域が片側性と判定されれば、ステップS606の処理が実行される。
【0056】
(ステップS605)
処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像2REにおいて、第1領域1REとは異なる領域を、第2領域2REとして決定する。第1領域が両側性と判定された場合における第2領域2REの決定方法は、上記に準拠するため、説明は省略する。決定機能34dは、第2医用画像上において決定された第2領域2REを、メモリ33に記憶させる。
【0057】
(ステップS606)
処理回路34は、決定機能34dにより、第2医用画像2REにおける撮像部位の対称軸として、第1領域1REの線対称に対応する領域(対象領域)を、第2領域2REとして決定する。第1領域1REが片側性と判定された場合における第2領域2REの決定方法は、上述の内容に準拠するため、説明は省略する。決定機能34dは、第2医用画像上において決定された第2領域2REを、メモリ33に記憶させる。
【0058】
(ステップS607)
処理回路34は、計算機能34eにより、第2医用画像2REにおいて、第1領域1REにする第1特徴量と、第2領域2REに関する第2特徴量とを計算する。第1特徴量と、第2特徴量との計算に関する処理内容は、上述の内容に準拠するため、説明は省略する。計算機能34eは、第1特徴量と第2特徴量とに基づいて、ミスマッチ指標を計算する。また、ミスマッチ指標の計算に関する処理内容は、上述の内容に準拠するため、説明は省略する。計算機能34eは、ミスマッチ指標を、第1領域1REおよび第2領域2REと関連で付けてメモリ33に記憶させる。
【0059】
(ステップS608)
処理回路34は、表示制御機能34fにより、第2医用画像2MEに第1領域1REおよび第2領域2REを重畳して、計算されたミスマッチ指標とともに、ディスプレイ32に表示させる。以下、第1領域1REが片側性である場合の表示例と、第1領域1REが両側性である場合の表示例とについて、図7乃至図9を用いて説明する。
【0060】
図7は、第1領域1REが片側性と判定された場合において、第2医用画像2MEに第1領域1REおよび第2領域2REが重畳され、ミスマッチ指標の凡例INBとともに、ディスプレイ32に表示された一例を示す図である。図7では、第2中央値に対する第1中央値の比がミスマッチ指標として、第1領域1REに重畳して、ディスプレイ32に表示される。
【0061】
図8は、第1領域1REが両側性と判定された場合において、第2医用画像2MEに第1領域1REおよび第2領域2REが重畳され、ミスマッチ指標の凡例INBとともに、ディスプレイ32に表示された一例を示す図である。図8では、第2中央値に対する第1中央値の比がミスマッチ指標として、第1領域1REに重畳して、ディスプレイ32に表示される。
【0062】
図9は、図8に示す表示例において、複数の区分領域をさらに重畳させた一例を示す図である。例えば、図9では、第2医用画像2MEに、複数の区分領域(A1~A6)がそれぞれ重畳され、次いで第1領域1REおよび第2領域2REが重畳される。図9に示すように、脳の機能に応じた複数の区分領域が重畳されることで、病変領域と正常領域とにおける脳の機能との対応を容易に把握することができる。このため、図9に示す表示例によれば、病変領域と正常領域とに関する脳の機能領域を容易に把握できるため、ユーザーに対する検査の負担を軽減させることができる。これらのことから、実施形態に係る医用画像処理装置30によれば、被検体に対する検査のスループットを向上させることができる。
【0063】
以上に述べた実施形態に係る医用画像処理装置30は、第1医用画像と第2医用画像2MEとを取得し、第1医用画像に基づいて第1領域1REを特定し、第2医用画像2REにおける撮像部位における第1領域1REの位置に基づいて、第1領域1REが両側性であるかまたは片側性であるかを判定し、第1領域1REが両側性であると判定された場合、第2医用画像2REにおいて第1領域1REとは異なる領域を第2領域2REとして決定し、第1領域1REが片側性であると判定された場合、第2医用画像2MEにおいて撮像部位に対する中心線CLを対称軸として第1領域1REの線対称に対応する領域を第2領域2REとして決定し、第2医用画像において第1領域1REに関する第1特徴量と第2領域2REに関する第2特徴量とを計算し、第1特徴量と第2特徴量とに基づいてミスマッチ指標を計算する。また、実施形態に係る医用画像処理装置30は、第2医用画像2MEに第1領域1REおよび第2領域2REを重畳して、ミスマッチ指標とともに表示する。
【0064】
実施形態に係る医用画像処理装置30において、第1医用画像と前記第2医用画像とは、撮像部位のアキシャル断面または撮像部位のコロナル断面である。また、実施形態に係る医用画像処理装置30において、第1医用画像は拡散強調画像であって、第2医用画像は、FLAIR画像である。また、実施形態に係る医用画像処理装置30において、第1特徴量は、第1領域1REに含まれる複数の画素値に基づく統計値であって、第2特徴量は、第2領域2REに含まれる複数の画素値に基づく統計値である。また、実施形態に係る医用画像処理装置30において、ミスマッチ指標は、第1特徴量と第2特徴量との比である。
【0065】
実施形態に係る医用画像処理装置30は、撮像部位に対する中心線を対称軸として第1領域1REの線対称に対応する対称領域SRと第1領域1REとが重なる場合、第1領域1REが両側性であると判定し、対称領域SRと第1領域1REとが重ならない場合、第1領域1REが片側性であると判定してもよい。また、実施形態に係る医用画像処理装置30は、対称領域SRと第1領域1REとが重なる重複領域OLRのサイズが所定の閾値を超えた場合、第1領域1REが両側性であると判定し、重複領域OLRのサイズが所定の閾値以下である場合、第1領域1REが片側性であると判定してもよい。
【0066】
また、実施形態に係る医用画像処理装置30は、第2医用画像2MEに対する所定の画像処理により、撮像部位に対する中心線CLを超えて位置する解剖学的部位を特定し、特定された解剖学的部位に第1領域1REが含まれるか否かを判定し、第1領域1REが解剖学的部位に含まれる場合、第1領域1REが両側性であると判定し、第1領域1REが解剖学的部位に含まれない場合、第1領域1REが片側性であると判定してもよい。
【0067】
また、実施形態に係る医用画像処理装置30は、第1領域1REが両側性であると判定された場合、所定の値を超える見かけの拡散係数を有する領域を、第2領域2REとして決定してもよい。また、実施形態に係る医用画像処理装置30において、撮像部位は、被検体の脳であって、実施形態に係る医用画像処理装置30は、第1領域1REが両側性であると判定された場合、被検体の脳脊髄液と脳の外側の領域とを含まない領域を、第2領域2REとして決定してもよい。また、実施形態に係る医用画像処理装置30は、第1領域1REが両側性であると判定された場合、第1領域1REにおける組織の性状と類似する領域を、第2領域2REとして決定してもよい。
【0068】
これらのことから、実施形態に係る医用画像処理装置30によれば、被検体の病変(例えば、脳梗塞)が片側性か両側性かを判定し、病変領域が急性期か否かの判断となるミスマッチ指標の算出の基準となる健側の領域(正常領域)を適切に設定することができる。これにより、実施形態に係る医用画像処理装置30によれば、病変の両側性および片側性に関わらず、DWI/FLAIRミスマッチ現象の定量評価の精度を向上させることができる。加えて、実施形態に係る医用画像処理装置30によれば、ユーザーなどの医師に自身の頭の中でDWI/FLAIRミスマッチ現象を定性的に判断してもらう必要がなく、ユーザーに対する検査の負担を軽減させることができる。さらに、実施形態に係る医用画像処理装置30によれば、ユーザーによる定性的な判断が低減できるため、被検体に対する検査のスループットを向上させることができる。
【0069】
(応用例)
本応用例は、ミスマッチ指標に基づいて病変が急性期か否かを判定し、判定結果をディスプレイ32に表示することにある。メモリ33は、ミスマッチ指標が急性期か否かを判定するための閾値(以下、急性期判定閾値と呼ぶ)を記憶する。本応用例におけるミスマッチ評価処理では、図6のステップS607続いて以下の処理が実行される。処理回路34は、判定機能34cにより、ミスマッチ指標と急性期判定閾値と比較する。ミスマッチ指標が急性期判定閾値を超えている場合、判定機能34cは、第1領域1REに関する病変が急性期であると判定する。
【0070】
また、応用例におけるミスマッチ評価処理では、図6のステップS608において、以下の処理がさらに実行される。処理回路34は、表示制御機能34fにより、第2医用画像2MEに第1領域1REおよび第2領域2REを重畳した重畳画像とともに、ミスマッチ指標および急性期か否かの判定結果を、ディスプレイ32に表示させる。
【0071】
なお、本応用例の変形例として、メモリ33は、ミスマッチ指標を入力として第1領域1REに関する病変の発症時刻および/または当該病変の発症からの経過時間を計算する計算式または学習済みモデルなどのアルゴリズム(以下、病変発症計算アルゴリズムと呼ぶ)を記憶してもよい。このとき、処理回路34は、計算機能34eにより、ミスマッチ指標を病変発症計算アルゴリズムに適用することで、病変の発症時刻および/または当該病変の発症からの経過時間を計算する。次いで、処理回路34は、表示制御機能34fにより、第2医用画像2MEに第1領域1REおよび第2領域2REを重畳した重畳画像、ミスマッチ指標、および急性期か否かの判定結果に加えて、病変の発症時刻および/または当該病変の発症からの経過時間を、ディスプレイ32に表示させる。
【0072】
なお、病変発症計算アルゴリズムの代わりに、ミスマッチ指標に対する病変の発症時刻および/または当該病変の発症からの経過時間の対応表が、メモリ33に記憶されてもよい。このとき、処理回路34は、決定機能34dにより、ミスマッチ指標と対応表とを照合することで、病変の発症時刻および/または当該病変の発症からの経過時間を決定する。
【0073】
本応用例に係る医用画像処理装置30によれば、片側性および両側性の病変(例えば脳梗塞)における発症時間などを予測することができる。これにより、本応用例に係る医用画像処理装置30によれば、ユーザーに対する検査の負担をさらに軽減し、被検体に対する検査のスループットをさらに向上させることができる。他の効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0074】
本実施形態における技術的思想を医用画像処理方法で実現する場合、当該医用画像処理方法は、被検体の撮像部位に対する所定の撮像により収集された第1医用画像と、所定の撮像と異なる撮像により収集され、当該撮像部位を含む第2医用画像2REとを取得し、第1医用画像に基づいて、撮像部位における病変に関する第1領域1REを特定し、撮像部位における第1領域1REの位置に基づいて、第1領域1REが撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定し、第1領域1REが両側性であると判定された場合、第2医用画像2REにおいて第1領域1REとは異なる領域を、撮像部位における正常な部分を示す第2領域2REとして決定し、第1領域1REが片側性であると判定された場合、第2医用画像2MEにおける撮像部位に対する中心線CLを対称軸として第1領域1REの線対称に対応する領域を、第2領域2REとして決定し、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REにおける複数の画素値による特徴を示す第1特徴量と第2領域2REにおける複数の画素値による特徴を示す第2特徴量とを計算し、第1特徴量と第2特徴量とに基づいて、第1医用画像と第2医用画像2MEとのミスマッチに関する指標を計算する。医用画像処理方法における処理手順は、ミスマッチ評価処理の手順に準拠する。また、医用画像処理方法による効果は、実施形態と同様である。これらのことから、医用画像処理方法におけるミスマッチ評価処理の処理手順および効果について、説明は省略する。
【0075】
実施形態における技術的思想を医用画像処理プログラムで実現する場合、当該医用画像処理プログラムは、コンピュータに、被検体の撮像部位に対する所定の撮像により収集された第1医用画像と、所定の撮像と異なる撮像により収集され、当該撮像部位を含む第2医用画像2REとを取得し、第1医用画像に基づいて、撮像部位における病変に関する第1領域1REを特定し、撮像部位における第1領域1REの位置に基づいて、第1領域1REが撮像部位に対して両側性であるかまたは片側性であるかを判定し、第1領域1REが両側性であると判定された場合、第2医用画像2REにおいて第1領域1REとは異なる領域を、撮像部位における正常な部分を示す第2領域2REとして決定し、第1領域1REが片側性であると判定された場合、第2医用画像2MEにおける撮像部位に対する中心線CLを対称軸として第1領域1REの線対称に対応する領域を、第2領域2REとして決定し、第2医用画像2MEにおいて、第1領域1REにおける複数の画素値による特徴を示す第1特徴量と第2領域2REにおける複数の画素値による特徴を示す第2特徴量とを計算し、第1特徴量と第2特徴量とに基づいて、第1医用画像と第2医用画像2MEとのミスマッチに関する指標を計算すること、を実現させる。
【0076】
例えば、図1に示す医用画像処理装置30やMRI装置10などのコンピュータに画像処理プログラムをインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても、ミスマッチ評価処理を実現することができる。このとき、コンピュータに当該処理を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。また、医用画像処理プログラムの頒布は、上記媒体に限定されず、例えば、インターネットを介したダウンロードなど、電気通信機能を用いて頒布されてもよい。医用画像処理プログラムにおける処理手順は、ミスマッチ評価処理に準拠する。また、医用画像処理プログラムによる効果は、実施形態と同様である。これらのことから、医用画像処理プログラムにおけるミスマッチ評価処理の処理手順および効果について、説明は省略する。
【0077】
本実施形態における技術的特徴は、MRI装置により実現可能である。このとき、MRI装置に搭載された処理回路は、図1に示す取得機能34a、特定機能34b、判定機能34c、決定機能34d、計算機能34e、および表示制御機能34fを有することとなる。このとき、MRI装置は、ミスマッチ評価処理を実現する。取得機能34a、特定機能34b、判定機能34c、決定機能34d、計算機能34e、および表示制御機能34fを実現するMRI装置における処理手順は、実施形態のミスマッチ評価処理に準拠する。また、MRI装置による効果は、実施形態と同様である。これらのことから、MRI装置におけるミスマッチ評価処理の処理手順および効果について、説明は省略する。
【0078】
以上説明した少なくとも実施形態、応用例等によれば、病変の両側性および片側性に関わらず、2つの医用画像におけるミスマッチの定量評価の精度を向上させることができる。
【0079】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 医用情報処理システム
10 MRI装置
20 画像保管装置
30 医用画像処理装置
31 入力インターフェース
32 ディスプレイ
33 メモリ
34 処理回路
34a 取得機能
34b 特定機能
34c 判定機能
34d 決定機能
34e 計算機能
34f 表示制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10