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特開2025-98624コネクタ用ロック機構、このコネクタ用ロック機構を備えるコネクタ組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098624
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】コネクタ用ロック機構、このコネクタ用ロック機構を備えるコネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/633 20060101AFI20250625BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
H01R13/633
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214877
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 理司
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC40
5E021HC14
5E021HC35
(57)【要約】
【課題】コネクタ用ロック機構をコンパクト化する。
【解決手段】第1コネクタ10と第2コネクタ20をロックするコネクタ用ロック機構において、第1コネクタ10は、片持ち梁状のロック部材14を備え、ロック部材14には、第1ロック形状部15が形成されるとともに、ロック部材14の固定端14bと第1ロック形状部15の間には傾斜面である第1解除部16が形成され、第2コネクタ20は、移動可能に保持される解除部材23を備え、第2コネクタ20は、ロック部材14に形成される第1ロック形状部15に係合する第2ロック形状部22aを備え、解除部材23には、第1コネクタ10に対して第2コネクタ20を嵌め合わせ又は抜き去る際に第1コネクタ10が有する第1解除部16と対向接触する傾斜面である第2解除部23bが形成され、ロック部材14と解除部材23は、ロック状態では第1方向に直交する第3方向で重なった位置にある。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクタと第2コネクタをロックするコネクタ用ロック機構であって、
前記第1コネクタは、前記第2コネクタとの嵌合方向である第1方向に延びる片持ち梁状のロック部材を備え、
前記ロック部材には、第1ロック形状部が形成されるとともに、前記ロック部材の固定端と前記第1ロック形状部の間には傾斜面である第1解除部が形成され、
前記第2コネクタは、前記第1コネクタとの嵌合方向である第1方向に沿って移動可能に保持される解除部材を備え、また、
前記第2コネクタは、前記ロック部材に形成される前記第1ロック形状部に係合する第2ロック形状部を備え、
前記解除部材には、前記第1コネクタに対して前記第2コネクタを嵌め合わせ又は抜き去る際に前記第1コネクタが有する前記第1解除部の傾斜面と対向接触する傾斜面である第2解除部が形成され、
前記ロック部材と前記解除部材は、ロック状態では第1方向に直交する第3方向で重なった位置にあることを特徴とするコネクタ用ロック機構。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ用ロック機構であって、
前記第1コネクタに形成される前記第1解除部と前記第1ロック形状部は、第1方向で並列に配置されていることを特徴とするコネクタ用ロック機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタ用ロック機構であって、
前記ロック部材は、前記第1コネクタの外郭を構成する金属シェルの一部を切り欠いて形成されており、
前記ロック部材が有する前記第1解除部の傾斜面は、前記ロック部材を折り曲げて形成されていることを特徴とするコネクタ用ロック機構。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコネクタ用ロック機構であって、
前記第2コネクタは、前記解除部材が第1方向に沿って移動してロック解除状態になったのちに、前記解除部材が前記第2コネクタの一部に突き当たることで、前記解除部材の前記第2コネクタに対する相対移動範囲を規制する規制部を有することを特徴とするコネクタ用ロック機構。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のコネクタ用ロック機構であって、
前記第1コネクタが備える前記ロック部材の前記第1解除部および前記第2コネクタが備える前記解除部材の前記第2解除部は、前記解除部材を第1方向に沿って移動させたときに対向接触する傾斜面をそれぞれ備えていることを特徴とするコネクタ用ロック機構。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のコネクタ用ロック機構であって、
前記第2コネクタが備える前記解除部材が第1方向に沿って移動してロック解除状態になったのちに、前記解除部材を移動させて初期位置に戻すための弾性力を及ぼす弾性部材を有することを特徴とするコネクタ用ロック機構。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコネクタ用ロック機構を備えた前記第1コネクタおよび前記第2コネクタを互いに嵌合して形成されることを特徴とするコネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ用ロック機構と、このコネクタ用ロック機構を備えるコネクタ組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1コネクタと第2コネクタを互いに嵌合して形成されるコネクタ組立体において、第1コネクタと第2コネクタを嵌合した際に、嵌合状態をロックするためのコネクタ用ロック機構が公知である。例えば、下記特許文献1には、図28および図29で示すように、第1コネクタ(30)と第2コネクタ(40)とを嵌合させたときに、嵌合状態を固定保持するためのコネクタ用ロック機構を備えた電気コネクタ(100)が開示されている。この電気コネクタ(100)は、第1コネクタ(30)における嵌合方向の後方に延びた片持ち梁状の第1ロック部材(3)と、第1ロック部材(3)の固定端と自由端の間に開口部として形成されたロック部(31)と、第2コネクタ(40)においてロック部(31)に係合する突起として形成された第2ロック部材(5)と、第2コネクタ(40)において移動可能に保持された解除部材(7)と、を備えており、第2ロック部材(5)と解除部材(7)がロック状態において嵌合方向である前後方向に離れた位置にあることを特徴とするものであった。
【0003】
そして、特許文献1に開示された電気コネクタ(100)が有するコネクタ用ロック機構のロック解除の手順は、(i)第1ロック部材(3)に対して前後方向に離れた位置にある解除部材(7)を前方に移動させ、(ii)解除部材(7)を片持ち梁状の第1ロック部材(3)の下に滑り込ませ、(iii)このとき解除部材(7)が第1ロック部材(3)の自由端を上方に持ち上げるので、(iv)第2ロック部材(5)が、片持ち梁状の第1ロック部材(3)のロック部(31)から外れてロック解除となる、というものである。なお、先行技術文献の説明に関する符号については、括弧を付けることで本願発明の実施形態と区別した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0118886号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したコネクタ用ロック機構を有するコネクタの技術分野にあっては、コネクタ用ロック機構をコンパクト化することが求められていた。例えば、上記特許文献1に開示された電気コネクタ(100)の場合、第1コネクタ(30)と第2コネクタ(40)との嵌合方向で長さを有する片持ち梁状の第1ロック部材(3)のロック部(31)を第2ロック部材(5)に係合させる構成のため、コネクタ同士の嵌合方向でコネクタ用ロック機構の全長が大きくなってしまうという課題が存在していた。すなわち、特許文献1に開示された電気コネクタ(100)では、ロックと解除を行うための第1ロック部材(3)と第2ロック部材(5)が嵌合方向である前後方向で1列に配置される構成のため、嵌合方向での寸法が大きくなるという課題が存在していた。
【0006】
よって本発明は、第1コネクタと第2コネクタを嵌合した際に、嵌合状態をロックするためのコネクタ用ロック機構について、従来技術に比べてコンパクト化したコネクタ用ロック機構と、このコネクタ用ロック機構を備えるコネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコネクタ用ロック機構は、第1コネクタと第2コネクタをロックするコネクタ用ロック機構であって、前記第1コネクタは、前記第2コネクタとの嵌合方向である第1方向に延びる片持ち梁状のロック部材を備え、前記ロック部材には、第1ロック形状部が形成されるとともに、前記ロック部材の固定端と前記第1ロック形状部の間には傾斜面である第1解除部が形成され、前記第2コネクタは、前記第1コネクタとの嵌合方向である第1方向に沿って移動可能に保持される解除部材を備え、また、前記第2コネクタは、前記ロック部材に形成される前記第1ロック形状部に係合する第2ロック形状部を備え、前記解除部材には、前記第1コネクタに対して前記第2コネクタを嵌め合わせ又は抜き去る際に前記第1コネクタが有する前記第1解除部の傾斜面と対向接触する傾斜面である第2解除部が形成され、前記ロック部材と前記解除部材は、ロック状態では第1方向に直交する第3方向で重なった位置にあることを特徴とするものである。
【0008】
すなわち、上掲した特許文献1に開示された従来のコネクタ用ロック機構は、「支点(第1ロック部材(3)の固定端)-作用点(第2ロック部材(5)とロック部(31)の係合位置)-力点(解除部材(7)が第1ロック部材(3)を持ち上げる位置)」という配置関係であるのに対して、本発明に係るコネクタ用ロック機構では、「支点(ロック部材の固定端)-力点(第2解除部が第1解除部と対向接触する位置)-作用点(第1ロック形状部と第2ロック形状部の係合位置)」の配置なので、従来技術よりも作用点の上下方向の変位量が拡大されており、解除部材の水平方向の移動量が少なくて済む。
【0009】
また、上掲した特許文献1に開示された従来のコネクタ用ロック機構では、第2ロック部材(5)と解除部材(7)はロック状態で前後方向に離れた位置に配置されており、両者が重なるように滑り込ませてロック解除するものであった。これに対し、本発明に係るコネクタ用ロック機構では、ロック状態の際にロック部材と解除部材は上下方向で重なっており、解除部材を少ない引き出し量でロック解除できるので、ロック状態でのロック機構の全長を短くすることができる。
【0010】
また、上掲した特許文献1に開示された従来のコネクタ用ロック機構では、解除部材(7)を前方に押してから第2コネクタ(40)を後方に引くという2動作が必要だったのに対し、本発明に係るコネクタ用ロック機構では、解除部材を後方に引くという1動作でロック解除するとともに第1コネクタから第2コネクタを後方に引き抜くことができる。
【0011】
本発明に係るコネクタ用ロック機構において、前記第1コネクタに形成される前記第1解除部と前記第1ロック形状部は、第1方向で並列に配置することができる。
【0012】
また、本発明に係るコネクタ用ロック機構において、前記ロック部材は、前記第1コネクタの外郭を構成する金属シェルの一部を切り欠いて形成し、前記ロック部材が有する前記第1解除部の傾斜面は、前記ロック部材を折り曲げて形成することができる。
【0013】
また、本発明に係るコネクタ用ロック機構において、前記第2コネクタは、前記解除部材が第1方向に沿って移動してロック解除状態になったのちに、前記解除部材が前記第2コネクタの一部に突き当たることで、前記解除部材の前記第2コネクタに対する相対移動範囲を規制する規制部を有することとすることができる。
【0014】
また、本発明に係るコネクタ用ロック機構において、前記第1コネクタが備える前記ロック部材の前記第1解除部および前記第2コネクタが備える前記解除部材の前記第2解除部は、前記解除部材を第1方向に沿って移動させたときに対向接触する傾斜面をそれぞれ備えていることとすることができる。
【0015】
また、本発明に係るコネクタ用ロック機構では、前記第2コネクタが備える前記解除部材が第1方向に沿って移動してロック解除状態になったのちに、前記解除部材を移動させて初期位置に戻すための弾性力を及ぼす弾性部材を有することとすることができる。
【0016】
また、本発明は、上述したコネクタ用ロック機構を備えた前記第1コネクタおよび前記第2コネクタを互いに嵌合して形成されることを特徴とするコネクタ組立体を含むものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1コネクタと第2コネクタを嵌合した際に、嵌合状態をロックするためのコネクタ用ロック機構について、従来技術に比べてコンパクト化したコネクタ用ロック機構と、このコネクタ用ロック機構を備えるコネクタ組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る第1コネクタを前方右上から見た外観斜視図である。
図2】本実施形態に係る第1コネクタを後方左下から見た外観斜視図である。
図3】本実施形態に係る第1コネクタの右側面図である。
図4】本実施形態に係る第1コネクタの上面図である。
図5図4中の5-5線断面を示す断面図である。
図6図4中の6-6線断面を示す断面図である。
図7図4中の7-7線断面を示す断面図である。
図8】本実施形態に係る第2コネクタを前方右上から見た外観斜視図である。
図9】本実施形態に係る第2コネクタを後方左下から見た外観斜視図である。
図10】本実施形態に係る第2コネクタの右側面図である。
図11】本実施形態に係る第2コネクタの上面図である。
図12】本実施形態に係る第2コネクタを前方右上から見た分解斜視図である。
図13】本実施形態に係る第2コネクタが備える解除部材の動作を説明するための斜視図であり、図中の分図(a)では解除部材が前方に位置しており、分図(b)では解除部材が後方に位置している。
図14】本実施形態に係る第2コネクタが備える解除部材の動作を説明するための右側面図であり、図中の分図(a)では解除部材が前方に位置しており、分図(b)では解除部材が後方に位置している。
図15】本実施形態に係るコネクタ組立体を構成する第1コネクタと第2コネクタを前方右上から見た外観斜視図であり、第1コネクタと第2コネクタが未嵌合の状態が示されている。
図16】本実施形態に係るコネクタ組立体を構成する第1コネクタと第2コネクタを右方から見た右側面図であり、第1コネクタと第2コネクタが未嵌合の状態が示されている。
図17】本実施形態に係るコネクタ組立体を構成する第1コネクタと第2コネクタを上方から見た上面図であり、第1コネクタと第2コネクタが未嵌合の状態が示されている。
図18図17中の18-18線断面を示す断面図である。
図19図17中の19-19線断面を示す断面図である。
図20図18で示した第1コネクタと第2コネクタの嵌合状態を示した断面図である。
図21図19で示した第1コネクタと第2コネクタの嵌合状態を示した断面図であり、図中の分図(a)では第1コネクタと第2コネクタが完全に嵌合した状態が示されており、分図(b)では第1コネクタと第2コネクタの嵌合途中の状態が示されている。
図22】本実施形態に係るコネクタ組立体を構成する第1コネクタと第2コネクタが嵌合する際の機構を説明するための図であり、図中の分図(a)は本実施形態を示しており、分図(b)は比較例としての引用文献1に示された従来技術を示している。
図23】本発明の第2コネクタが取り得る多様な変形形態例を示す図であり、変形形態に係る第2コネクタを前方右上から見た外観斜視図である。
図24】本発明の第2コネクタが取り得る多様な変形形態例を示す図であり、変形形態に係る第2コネクタを後方左下から見た外観斜視図である。
図25】本発明の第2コネクタが取り得る多様な変形形態例を示す図であり、変形形態に係る第2コネクタを右方から見た右側面図である。
図26】本発明の第2コネクタが取り得る多様な変形形態例を示す図であり、変形形態に係る第2コネクタを上方から見た上面図である。
図27】本発明の第2コネクタが取り得る多様な変形形態例を示す図であり、変形形態に係る第2コネクタを前方右上から見た分解斜視図である。
図28】特許文献1の電気コネクタを示す上面図である。
図29】特許文献1の電気コネクタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明では第1方向、第2方向、第3方向を定義しており、図では、説明の便宜のために各方向をX方向、Y方向、Z方向と示した。本明細書において、第1方向は、前後方向である。図において、前後方向はX方向として示される。特に、前方を+X方向、後方を-X方向とする。また、本明細書において、第2方向は、左右方向である。図において、左右方向はY方向として示される。特に、右方を+Y方向、左方を-Y方向とする。さらに、本明細書において、第3方向は、上下方向である。図において、上下方向はZ方向として示される。特に、上方を+Z方向、下方を-Z方向とする。
【0020】
また、以下の各実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
まず、図1図7を参照して、本実施形態に係る第1コネクタ10を説明する。本実施形態に係る第1コネクタ10は、図1および図2に示すように、全体の外郭形状が略立方体形状をしており、後方には、後述する第2コネクタ20と嵌合するために開口した第1嵌合開口部11が形成されている。また、第1コネクタ10の上面、左右側面および下面の前方側は、平板状の金属板を折り曲げて形成した金属シェル12によって形成されており、この金属シェル12が第1コネクタ10の略立方体形状をした外郭の主要な部分を構成している。
【0022】
第1コネクタ10の外郭を構成する金属シェル12の上面には、図1に示すように、後方から前方に向けて切り欠きを施すことで形成された2条の切り欠き部13が形成されている。そして、2条の切り欠き部13によって挟まれた部分は、後述する第2コネクタ20との嵌合方向である第1方向(-X方向)に延びる片持ち梁状のロック部材14として形成されている。
【0023】
第1コネクタ10の上面に形成されたロック部材14は、後方の端部が自由端14aとなっており、2条の切り欠き部13の前方の切り欠き終端部を繋ぐ線上の箇所が固定端14bとなっている。したがって、-X方向に延びる片持ち梁状のロック部材14が上下方向の外力を受けた場合には、ロック部材14は固定端14bの近傍位置を支点として撓むこととなる。しかし、片持ち梁状のロック部材14は弾性力を発揮することになるので、上下方向の外力が消失した場合には、金属シェル12の上面に対して水平の状態に復帰することとなる。つまり、ロック部材14は、外力を受けていない通常状態においては、金属シェル12の上面に対して水平の状態を維持する構成となっている。
【0024】
また、ロック部材14には、後方の左右位置に開口した2つの係合穴15が形成されており、この2つの係合穴15は、本発明の第1ロック形状部として機能する。さらに、ロック部材14には、ロック部材14の固定端14bと第1ロック形状部である2つの係合穴15の間に対して、傾斜面である第1解除部16が形成されている(図5図7参照)。
【0025】
本発明の第1ロック形状部としての2つの係合穴15は、後述する第2コネクタ20が有する第2ロック形状部(2つの突部22a)が係合することで、第1コネクタ10と第2コネクタ20をロック状態とする機能を有する。一方、ロック部材14が有する第1解除部16の傾斜面は、ロック部材14を折り曲げることで、傾斜面を下方に向けて形成されている。第1解除部16の傾斜面は、後述する第2コネクタ20が有する第2解除部23bから上方(+Z方向)に向けた力を受けることで、ロック部材14を上方に撓ませる機能を有する。
【0026】
以上、本実施形態に係る第1コネクタ10を説明した。次に、図8図14を参照して、本実施形態に係る第2コネクタ20を説明する。本実施形態に係る第2コネクタ20は、図12に示すように、後方に電気コード25が挿し込まれた第2コネクタハウジング21と、第2コネクタハウジング21の前方に嵌め込まれる金属製のフレーム部材22と、第2コネクタハウジング21の上方で前後方向に移動可能に配置される解除部材23と、解除部材23に取り付けて解除部材23の前後方向(X方向)の移動操作を行う操作部材24とを有している。
【0027】
第2コネクタハウジング21には、図8および図12等に示すように、前方に第1コネクタ10と嵌合するために開口した第2嵌合開口部21aが形成されている。また、第2コネクタハウジング21の前方には、フレーム部材22を嵌め込んで固定できるようになっている。さらに、第2コネクタハウジング21の上方の左右位置には、解除部材23を前後方向で移動可能に保持するための保持形状部21bと、この保持形状部21bによって保持された解除部材23の前後方向での移動量を規制するための規制部21cが形成されている。
【0028】
フレーム部材22には、上方の左右位置に2つの突部22aが形成されている。2つの突部22aは、第2コネクタ20が有する本発明の第2ロック形状部として機能する部位である。したがって、2つの突部22aは、第1コネクタ10と第2コネクタ20を嵌合させたときに、第1コネクタ10ロック部材14に形成される第1ロック形状部としての2つの係合穴15に対して係合することで、第1コネクタ10と第2コネクタ20のロック状態が実現する。
【0029】
解除部材23は、第1コネクタ10との嵌合方向である第1方向(X方向)に沿って移動可能に保持される部材である。この解除部材23は、左右方向に延びる一対の腕部23aを備えており、この一対の腕部23aが第2コネクタハウジング21の保持形状部21bに保持されることで、第2コネクタハウジング21の上方での解除部材23の前後移動が可能となっている。また、一対の腕部23aが第2コネクタハウジング21の規制部21cが形成された範囲内で移動するとともに、規制部21cを構成する壁面形状の一部に突き当たることで、後方移動における可動域が規定されている。また、解除部材23の前方移動における可動域は、フレーム部材22の後方端によって規定されている。つまり、本実施形態の解除部材23は、第2コネクタハウジング21に形成された規制部21cと、フレーム部材22の後方端とによって、第2コネクタ20に対する相対移動範囲が規制されている。
【0030】
また、解除部材23は、前方中央の位置に傾斜面である第2解除部23bが形成されている。解除部材23が有する第2解除部23bの傾斜面は、解除部材23を折り曲げることで、傾斜面を上方に向けて形成されている。第2解除部23bの傾斜面は、第1コネクタ10に対して第2コネクタ20を嵌め合わせ又は抜き去る際に第1コネクタ10が有する第1解除部16の傾斜面と対向接触する傾斜面である。したがって、第2解除部23bの傾斜面は、後述する第1コネクタ10が有する第1解除部16に対して上方(+Z方向)に向けた力を及ぼすことで、ロック部材14を上方に撓ませる機能を有する。
【0031】
さらに、解除部材23は、後方中央の位置に操作部材24を取り付けるための取付穴23cを有している。図12に示すように、操作部材24は、前方に取付溝部24aを有しており、この取付溝部24aの溝形状を取付穴23cに嵌め込むことで、解除部材23と操作部材24との結合が図られる。使用者は、操作部材24を前方に押したり、後方に引いたりすることで、解除部材23を前後方向(X方向)に移動操作することができる。
【0032】
上述したように、第2コネクタ20の解除部材23については、後方移動における可動域が規制部21cを構成する壁面形状によって規定され、前方移動における可動域がフレーム部材22の後方端によって規定されている。ここで、図13中の分図(a)および図14中の分図(a)には、第2コネクタ20の解除部材23が可動域の前方に位置する場合が示されており、図13中の分図(b)および図14中の分図(b)には、第2コネクタ20の解除部材23が可動域の後方に位置する場合が示されている。特に、図14で示すように、解除部材23の前後方向での移動可能寸法は、符号αで示す距離だけ移動可能となっている。この距離αの移動量によって、解除部材23に形成された傾斜面である第2解除部23bが移動し、少なくともロック部材14と解除部材23とのロック状態を解除状態に切り替えることが可能となっている。
【0033】
以上、本実施形態に係る第2コネクタ20を説明した。次に、図15図21を参照して、本実施形態に係るコネクタ組立体100を説明する。
【0034】
図15図19で示すように、第1コネクタ10の後方に開口した第1嵌合開口部11と、第2コネクタ20の前方に開口した第2嵌合開口部21aを対向配置させた上で、第1コネクタ10に対して第2コネクタを前方(+X方向)に移動させることで、第1コネクタ10と第2コネクタ20を嵌合させることができる。このとき、使用者は、第2コネクタ20の解除部材23を可動域の前方に位置する状態を保持した上で、そのまま挿し込むことで、図21中の分図(b)で示すように、第2コネクタ20が有する第2解除部23bと第1コネクタ10が有する第1解除部16が互いの傾斜面を対向接触させることとなる。このとき、第1解除部16の傾斜面が形成されたロック部材14は、片持ち梁状の部材として形成されているので、第1解除部16の下向きの傾斜面が第2解除部23bの上向きの傾斜面から上方(+Z方向)に向けた力を受けることで、ロック部材14は上方に撓むこととなる。このような図21中の分図(b)で示す状態から更に、第2コネクタ20を第1コネクタ10に向けて挿し込むと、第1解除部16の傾斜面と第2解除部23bの傾斜面との接触が解消され、図21中の分図(a)で示すような嵌合状態が実現する。このとき、第1コネクタ10のロック部材14は、解除部材23からの力が解消されて水平状態に復帰しており、さらに、図20に示すように、第1コネクタ10のロック部材14に形成された2つの係合穴15には、第2コネクタ20が有する2つの突部22aが係合することで、第1コネクタ10と第2コネクタ20とのロック状態が実現する。以上のように、本実施形態に係るコネクタ組立体100においては、第1コネクタ10と第2コネクタ20とを嵌合状態とするとともにロック状態とすることは、1動作で実現することができる。
【0035】
一方、図20および図21中の分図(a)で示すように、第1コネクタ10と第2コネクタ20とがロック状態で嵌合された状態から、第1コネクタ10と第2コネクタ20との嵌合状態を解除するには、使用者が操作部材24を後方(-X方向)に引くことで、1動作で行うことができる。すなわち、図21中の分図(a)で示すロック状態から使用者が操作部材24を後方(-X方向)に引くと、操作部材24と接続した解除部材23は距離αの範囲で後方(-X方向)に向けて移動することとなる。解除部材23が距離αの範囲で後方(-X方向)に向けて移動すると、図21中の分図(b)で示すように、第2コネクタ20が有する第2解除部23bと第1コネクタ10が有する第1解除部16が互いの傾斜面を対向接触させることとなる。このとき、第1解除部16の傾斜面が形成されたロック部材14は、片持ち梁状の部材として形成されているので、第1解除部16の下向きの傾斜面が第2解除部23bの上向きの傾斜面から上方(+Z方向)に向けた力を受けることで、ロック部材14が上方に撓むことになる。ロック部材14が上方に撓むと、図20で示した第1コネクタ10のロック部材14に形成された2つの係合穴15と、第2コネクタ20が有する2つの突部22aとの係合関係が解消するので、第1コネクタ10と第2コネクタ20とのロックが解除された状態となる。この状態から、そのまま使用者が操作部材24を後方(-X方向)に引き続けることで、第1コネクタ10と第2コネクタ20は、図21中の分図(b)の状態から図19の状態へと移行し、第1コネクタ10から第2コネクタ20を抜き去る動作が1動作で実現されることとなる。
【0036】
続いて、図22を参照図面に加えることで、第1コネクタ10と第2コネクタ20をロックするコネクタ用ロック機構を説明する。ここで、図22の分図(a)は本実施形態のコネクタ用ロック機構を説明するための模式図であり、分図(a1)がロック状態を示し、分図(a2)がロック解除の状態を示している。また、図22の分図(b)は引用文献1に開示された従来技術のコネクタ用ロック機構を説明するための模式図であり、分図(b1)がロック状態を示し、分図(b2)がロック解除の状態を示している。
【0037】
図22で示すように、上掲した特許文献1に開示された従来技術に係るコネクタ用ロック機構では、「支点(第1ロック部材(3)の固定端)-作用点(第2ロック部材(5)とロック部(31)の係合位置)-力点(解除部材(7)が第1ロック部材(3)を持ち上げる位置)」という配置関係であった。この場合、支点と作用点の距離が近く、力点と作用点との距離が遠いので、作用点を移動させてロックを解除状態とするには、力点に力を及ぼす解除部材(7)の移動量を大きくしなければならなかった。つまり、従来技術では、解除部材(7)の移動量を大きくしなければロックの解除状態を実現することができなかった。これに対して、本実施形態に係るコネクタ用ロック機構では、「支点(ロック部材14の固定端14b)-力点(第2解除部23bが第1解除部16と対向接触する位置)-作用点(第1ロック形状部(2つの係合穴15)と第2ロック形状部(2つの突部22a)の係合位置)」の配置関係を採用した。特に、本実施形態では、力点が中央にあり、作用点が自由端側に離れて配置されているので、てこの原理により従来技術よりも作用点の上下方向の変位量が拡大されており、解除部材の水平方向の移動量が少なくて済むという利点を得ることができる。
【0038】
また、上掲した特許文献1に開示された従来のコネクタ用ロック機構では、第2ロック部材(5)と解除部材(7)はロック状態で前後方向に離れた位置に配置されており、両者が重なるように滑り込ませてロック解除するものであった。これに対し、本実施形態に係るコネクタ用ロック機構では、ロック状態の際にロック部材14と解除部材23は上下方向(第3方向であるZ方向)で重なっており、解除部材23を少ない引き出し量でロック解除できるので、ロック状態でのロック機構の全長を短くすることができるという利点を得ることができる。
【0039】
また、上掲した特許文献1に開示された従来のコネクタ用ロック機構では、解除部材(7)を前方に押してから第2コネクタ(40)を後方に引くという2動作が必要であった。つまり、従来技術では、第2コネクタ(40)を引く方向と解除部材(7)を押し込む方向が逆であった。これに対して、本実施形態に係るコネクタ用ロック機構では、上述したように解除部材23を後方に引くという1動作でロック解除するとともに、第1コネクタ10から第2コネクタ20を後方に引き抜くことができる。つまり、本実施形態では、第1コネクタ10から第2コネクタ20を引き抜く方向と、解除部材23を移動する方向が同一方向であるため、操作性に優れるという利点を得ることができる。なお、この利点は、上述した本実施形態の「支点(ロック部材14の固定端14b)-力点(第2解除部23bが第1解除部16と対向接触する位置)-作用点(第1ロック形状部(2つの係合穴15)と第2ロック形状部(2つの突部22a)の係合位置)」の配置関係に加えて、第1コネクタ10に形成される第1解除部16と第1ロック形状部(2つの係合穴15)が、前後方向(第1方向であるX方向)で並列に配置された配置関係によって得られるものである。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0041】
例えば、上述した第2コネクタ20については、上述した作用効果を発揮する構成を維持した上で、さらなる変形形態を採用することができる。そこで、図23図27を参照して、本発明の第2コネクタが取り得る多様な変形形態例を説明する。なお、変形形態に係る第2コネクタ40について、嵌合相手となる相手側コネクタは、図1図7を参照して説明した本実施形態の第1コネクタ10と同じである。また、上述した本実施形態の第2コネクタ20と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略することとする。
【0042】
図23図27に示す変形形態に係る第2コネクタ40は、解除部材23の中央位置に弾性力を及ぼす弾性部材としてのバネ板形状部43を有している。このバネ板形状部43は、後方(-X方向)に延びる片持ち梁状の部材であり、常には解除部材23を構成する上面と平行となるように水平状態を維持している。
【0043】
一方、第2コネクタハウジング21の上面やや後方の中央位置には、上方に向けて斜面形状を有して突出する傾斜形状部41が形成されている。
【0044】
バネ板形状部43と傾斜形状部41の位置関係としては、図23および図26に示すように、第2コネクタ40の解除部材23が可動域の前方に位置する場合には、バネ板形状部43と傾斜形状部41は互いに干渉せず、バネ板形状部43は弾性力を傾斜形状部41に対して及ぼすことは無い。しかし、上述したように、使用者が操作部材24を後方に引いて解除部材23を後方向(-X方向)に移動操作し、ロック部材14と解除部材23とのロック状態が解除されるときには、第2コネクタ40の解除部材23が可動域の後方に移動するので、バネ板形状部43の後方の自由端が傾斜形状部41に乗り上げて、バネ板形状部43は傾斜形状部41に対して弾性力を及ぼすことになる。この弾性力は、バネ板形状部43が元の水平状態に戻ろうとして解除部材23を可動域の前方に向けて押し出す力となる。したがって、使用者が操作部材24を後方に引いて解除部材23を後方向(-X方向)に移動操作し、ロック部材14と解除部材23とのロック状態が解除されたのち、使用者が操作部材24から手を離すと、バネ板形状部43は解除部材23を前方(+X方向)に移動させて初期位置に戻すための弾性力を及ぼすこととなる。つまり、変形形態に係る第2コネクタ40によれば、第1コネクタ10とのロック状態と嵌合状態が解除された第2コネクタ40の解除部材23を、自動的に初期状態である可動域の前方位置に復帰させることができる。
【0045】
さらに、本発明に係るコネクタ用ロック機構については、上述した実施形態および変形形態と同様の作用効果を発揮できる範囲内において、多様な変形を加えることができる。例えば、上述した実施形態および変形形態では、第1コネクタについて、本発明の第1ロック形状部である係合穴15を左右に2つ配置し、その間に1つの第1解除部16を配置する構成とした。また、この構成に対応するように、第2コネクタについて、本発明の第2ロック形状部である突部22aを左右に2つ配置し、その間に1つの第2解除部23bを配置する構成とした。しかしながら、本発明に係るコネクタ用ロック機構では、第1ロック形状部と第2ロック形状部の個数は1個でもよいし、3個以上でもよい。また同様に、第1解除部と第2解除部の個数についても、2個以上あってもよい。さらに、第1ロック形状部と第2ロック形状部、および、第1解除部と第2解除部の配置位置についても、あらゆる配置構成を採用することができる。
【0046】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0047】
10 (本実施形態に係る)第1コネクタ
11 第1嵌合開口部
12 金属シェル
13 切り欠き部
14 ロック部材
14a 自由端
14b 固定端
15 係合穴(第1ロック形状部)
16 第1解除部
20 (本実施形態に係る)第2コネクタ
21 第2コネクタハウジング
21a 第2嵌合開口部
21b 保持形状部
21c 規制部
22 フレーム部材
22a 突部(第2ロック形状部)
23 解除部材
23a 腕部
23b 第2解除部
23c 取付穴
24 操作部材
24a 取付溝部
25 電気コード
40 (変形形態に係る)第2コネクタ
41 傾斜形状部
43 バネ板形状部(弾性部材)
100 コネクタ組立体
図1
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