(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098639
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20250625BHJP
H10K 59/123 20230101ALI20250625BHJP
H10K 59/131 20230101ALI20250625BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
G09G3/3233
H10K59/123
H10K59/131
G09G3/20 624B
G09G3/20 611H
G09G3/20 642A
G09G3/20 642C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214905
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】原田 賢治
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107DD39
3K107EE03
3K107HH05
5C080AA06
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5C080KK47
5C380AA01
5C380AB06
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5C380AC07
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5C380BA39
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5C380CB01
5C380CB17
5C380CC04
5C380CC07
5C380CC27
5C380CC33
5C380CC39
5C380CC52
5C380CC55
5C380CC65
5C380CD017
5C380CF07
5C380CF23
5C380CF33
5C380HA12
5C380HA13
(57)【要約】
【課題】表示品位の低下を抑制することが可能な表示装置を提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る表示装置は、基材と、基材上の表示領域に配置された複数の画素と、複数の画素の各々にデータ信号を供給するデータ信号線とを具備する。複数の画素の各々は、第1トランジスタ及び保持容量を有する画素回路と、画素回路によって駆動される発光素子とを含む。保持容量は、発光素子に供給される電流を制御する電圧が書き込まれるように構成される。第1トランジスタは、保持容量に書き込まれた電圧に基づいて発光素子に電流を供給するように構成される。表示領域に1フレームを表示する1フレーム期間は、保持容量にデータ信号に応じた電圧が書き込まれる第1期間の前に配置された第1トランジスタをオン状態にする第2期間を含む。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上の表示領域に配置された複数の画素と、
前記複数の画素の各々にデータ信号を供給するデータ信号線と
を具備し、
前記複数の画素の各々は、第1トランジスタ及び保持容量を有する画素回路と、前記画素回路によって駆動される発光素子とを含み、
前記保持容量は、前記発光素子に供給される電流を制御する電圧が書き込まれるように構成され、
前記第1トランジスタは、前記保持容量に書き込まれた電圧に基づいて前記発光素子に電流を供給するように構成され、
前記表示領域に1フレームを表示する1フレーム期間は、前記保持容量に前記データ信号に応じた電圧が書き込まれる第1期間の前に配置された前記第1トランジスタをオン状態にする第2期間を含む
表示装置。
【請求項2】
前記1フレーム期間は、前記第1期間の後に配置された前記発光素子に電流を供給する第3期間を含み、
前記第2期間は、前記第2期間を含む1フレーム期間の前の1フレーム期間に含まれる第3期間と、前記第2期間を含む1フレーム期間に含まれる第1期間との間に配置される
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素の各々に第1電圧を供給する第1電源線と、
前記複数の画素の各々に第2電圧を供給する第2電源線と
を更に具備し、
前記1フレーム期間は、前記第1及び第2電源線から供給される第1及び第2電圧に基づいて前記保持容量に書き込まれている電圧をリセットする第4期間を含み、
前記第2期間は、前記第4期間と前記第1期間との間に配置される
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記画素回路は、第2トランジスタを更に有し、
前記第2トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方は、前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方と接続され、
前記第2トランジスタのソース端子及びドレイン端子の他方は、前記第1トランジスタのゲート端子及び前記保持容量の一方の端子と接続され、
前記保持容量の一方の端子には、前記第1電源線から第1電圧が供給され、
前記保持容量の他方の端子には、前記第2電源線から第2電圧が供給され、
前記第2トランジスタは、前記第4期間及び前記第1期間においてオン状態になり、前記第2期間においてオフ状態になる
請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2電圧は、前記第2期間において、前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方に供給される請求項3記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の画素の各々に第3電圧を供給する第3電源線を更に具備し、
前記画素回路は、第3~第5トランジスタを有し、
前記第3トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方は、前記第3電源線に接続され、
前記第3トランジスタのソース端子及びドレイン端子の他方は、前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方と接続され、
前記第4トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方は、前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子の他方と接続され、
前記第4トランジスタのソース端子及びドレイン端子の他方は、前記発光素子及び前記第5トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方と接続され、
前記第5トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方は、前記保持容量の他方の端子と更に接続され、
前記第5トランジスタのソース端子及びドレイン端子の他方は、前記第2電源線に接続され、
前記第3トランジスタは、前記第4期間、前記第2期間及び第1期間においてオフ状態であり、前記第3期間においてオン状態であり、
前記第4トランジスタは、前記第4期間及び第1期間においてオフ状態であり、前記第2期間及び前記第3期間においてオン状態であり、
前記第5トランジスタは、前記第2期間及び前記第3期間においてオフ状態であり、前記第4期間及び前記第1期間においてオン状態である
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数の画素の各々に第1制御信号を供給する第1制御信号線と、
前記複数の画素の各々に第2制御信号を供給する第2制御信号線と
を更に具備し、
前記第3トランジスタのオフ状態及びオン状態は、前記第1制御信号に基づいて制御され、
前記第4及び第5トランジスタのオフ状態及びオン状態は、前記第2制御信号に基づいて制御される
請求項6記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、表示素子として機能する発光素子である有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。
【0003】
このような表示装置において発光素子は画素回路によって駆動されるが、当該発光素子の駆動方法によっては、当該表示装置の表示品位が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-036290号公報
【特許文献2】特開2019-211665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、表示品位の低下を抑制することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る表示装置は、基材と、前記基材上の表示領域に配置された複数の画素と、前記複数の画素の各々にデータ信号を供給するデータ信号線とを具備する。前記複数の画素の各々は、第1トランジスタ及び保持容量を有する画素回路と、前記画素回路によって駆動される発光素子とを含む。前記保持容量は、前記発光素子に供給される電流を制御する電圧が書き込まれるように構成される。前記第1トランジスタは、前記保持容量に書き込まれた電圧に基づいて前記発光素子に電流を供給するように構成される。前記表示領域に1フレームを表示する1フレーム期間は、前記保持容量に前記データ信号に応じた電圧が書き込まれる第1期間の前に配置された前記第1トランジスタをオン状態にする第2期間を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る表示装置の構成例を示す図。
【
図2】画素に含まれる複数の副画素のレイアウトの一例を示す図。
【
図3】画素に含まれる複数の副画素のレイアウトの他の例を示す図。
【
図4】
図2中のA-A線に沿う表示装置の概略的な断面図。
【
図6】隔壁を利用して形成される発光素子について説明するための概略的な断面図。
【
図7】隔壁を利用して形成される発光素子について説明するための概略的な断面図。
【
図8】隔壁を利用して形成される発光素子について説明するための概略的な断面図。
【
図9】画素回路の回路構成の一例について説明するための図。
【
図10】本実施形態の比較例における画素回路の動作の一例について説明するための図。
【
図11】各1フレーム期間において表示されるフレームが黒色の画像である場合について説明するための図。
【
図12】各1フレーム期間において表示されるフレームが白色の画像である場合について説明するための図。
【
図13】黒表示から白表示に切り替えられる場合について説明するための図。
【
図14】本実施形態におけるPre-Activate期間の配置例を示す図。
【
図15】本実施形態における画素回路の動作の一例について説明するための図。
【
図16】本実施形態の比較例におけるゲート信号及び制御信号を実現するためのScan回路及びEM回路について説明するための図。
【
図17】Scan回路及びEM回路から構成されるゲートドライバの構成の一例を示す図。
【
図18】本実施形態におけるゲート信号及び制御信号を実現するためのScan回路及びEM回路について説明するための図。
【
図19】第2実施形態における画素回路の回路構成の一例を示す図。
【
図20】本実施形態における画素回路の動作の一例について説明するための図。
【
図21】本実施形態におけるゲート信号及び制御信号を実現するためのScan回路及びEM回路について説明するための図。
【
図22】Scan回路及びEM回路から構成されるゲートドライバの構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子(発光素子)として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パソコン、携帯端末、携帯電話等に搭載される。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基材10の上に、画像を表示する表示領域DAと、当該表示領域DAの周辺の非表示領域NDAとを有している。基材10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基材10の形状が長方形である。ただし、基材10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形または楕円形等の他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、互いに交差する第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配置された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、複数の副画素SPは、赤色の副画素SP1、緑色の副画素SP2及び青色の副画素SP3を含む。なお、複数の副画素SPは、副画素SP1、SP2及びSP3とともに白色等の他の色の副画素を含んでいてもよい。また、複数の副画素SPは、副画素SP1、SP2及びSP3のいずれかに代えて他の色の副画素を含んでいてもよい。
【0014】
なお、詳細については後述するが、複数の副画素SPの各々は、画素回路と、当該画素回路によって駆動される発光素子とを含む。画素回路は、例えば複数のトランジスタ(薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子)等から構成される。発光素子は、上記した有機発光ダイオードである。例えば、副画素SP1は赤色の波長域の光を放つように発光する発光素子を備え、副画素SP2は緑色の波長域の光を放つように発光する発光素子を備え、副画素SP3は青色の波長域の光を放つように発光する発光素子を備えている。
【0015】
図2は、画素PXに含まれる複数の副画素SP(SP1、SP2及びSP3)のレイアウトの一例を示す。ここでは、4個の画素PXに着目して説明する。
【0016】
1個の画素PXを構成する副画素SP1、SP2及びSP3は、それぞれ第2方向Yに延びた略長方形状に形成され、第1方向Xに並んでいる。第1方向Xに並んだ2個の画素PXに着目すると、第1方向Xに隣接する副画素SPにおいて表示される色は互いに異なる。また、第2方向Yに並んだ2個の画素PXに着目すると、第2方向Yに隣接する副画素SPにおいて表示される色は同一である。なお、副画素SP1、SP2及びSP3の各々の面積は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0017】
図3は、画素PXに含まれる複数の副画素SP(SP1、SP2及びSP3)のレイアウトの他の例を示す。
【0018】
1個の画素PXを構成する副画素SP1及びSP2は第2方向Yに並び、副画素SP1及びSP3は第1方向Xに並び、副画素SP2及びSP3は第1方向Xに並んでいる。副画素SP1は第1方向Xに延びた略長方形状に形成され、副画素SP2及びSP3は第2方向Yに延びた略長方形状に形成されている。副画素SP2の面積は副画素SP1の面積より大きく、副画素SP3の面積は副画素SP2の面積より大きい。なお、副画素SP1の形状及び面積は、副画素SP2と同一であってもよい。
【0019】
第1方向Xに並んだ2個の画素PXに着目すると、副画素SP1及びSP3が交互に配置された領域、及び、副画素SP2及びSP3が交互に配置された領域では、第1方向Xに隣接する副画素SPにおいて表示される色は互いに異なる。一方、第2方向Yに並んだ2個の画素PXに着目すると、副画素SP1及びSP2が交互に配置された領域では、第2方向Yに隣接する副画素SPにおいて表示される色は互いに異なる。また、複数の副画素SP3が並んだ領域では、第2方向に隣接する副画素SPにおいて表示される色は同一である。
【0020】
なお、
図2及び
図3に示す副画素SP1、SP2及びSP3の外形は、当該副画素SPにおいて色が表示される領域(つまり、発光領域)の外形に相当するが、簡略化して示したものであり、必ずしも実際の形状を反映したものとは限らない。
【0021】
ここで、詳細については後述するが、本実施形態における表示領域DAには、リブ及び隔壁が配置されている。リブは、副画素SP1、SP2及びSP3においてそれぞれ開口を有している。隔壁は、隣り合う副画素SPの境界に配置され、平面視においてリブと重なっている。具体的には、隔壁は、第1方向Xに隣り合う開口(副画素SP)との間、及び、第2方向Yに隣り合う開口(副画素SP)との間に配置されている。これにより、隔壁は、全体として副画素SP1、SP2及びSP3を区画するように形成された格子状を有する。換言すれば、隔壁は、リブと同様に、副画素SP1、SP2及びSP3において開口を有するということもできる。
【0022】
図4は、
図2中のA-A線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。表示装置DSPにおいては、上記したガラスのような光透過性を有する基材10の上(発光素子等が配置される側の面上)にアンダーコート層と称される絶縁層11が配置されている。
【0023】
絶縁層11は、例えばシリコン酸化膜(SiO)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコン酸化膜(SiO)を有する三層積層構造を有する。なお、絶縁層11は、三層積層構造に限られない。絶縁層11は、三層よりも多い積層構造を有していてもよいし、単層構造または二層積層構造を有していてもよい。
【0024】
絶縁層11の上には、回路層12が配置されている。回路層12は、上記したように副画素SP1、SP2及びSP3の各々に含まれる発光素子を駆動する画素回路(各種回路及び配線)を有する。回路層12は、絶縁層13により覆われている。
【0025】
絶縁層13は、回路層12により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
図4には示されていないが、絶縁層13には、下電極LEを画素回路に接続するためのコンタクトホールが設けられている。
【0026】
下電極LE(LE1、LE2及びLE3)は、絶縁層13の上に配置されている。リブ5は、絶縁層13と下電極LEとの上に配置されている。下電極LEの端部(一部)は、リブ5により覆われている。
【0027】
隔壁6は、リブ5の上に配置された下部61と、下部61の上面を覆う上部62とを有する。上部62は、下部61よりも第1方向X及び第2方向Yに大きい幅を有している。これにより、隔壁6は、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出した形状を有する。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状ということができる。
【0028】
有機層OR(OR1、OR2及びOR3)及び上電極UE(UE1、UE2及びUE3)は、上記した下電極LE(LE1、LE2及びLE3)とともに、副画素SPに含まれる発光素子を構成する。
【0029】
図4に示すように、有機層OR1は、互いに離間した第1有機層OR1a及び第2有機層OR1bを含む。上電極UE1は、互いに離間した第1上電極UE1a及び第2上電極UE1bを含む。第1有機層OR1aは、開口AP1(副画素SP1においてリブ5が有する開口)を通じて下電極LE1に接触するとともに、リブ5の一部を覆っている。第2有機層OR1bは、上部62の上に位置している。第1上電極UE1aは、下電極LE1と対向するとともに、第1有機層OR1aを覆っている。更に、第1上電極UE1aは、下部61の側面に接触している。第2上電極UE1bは、隔壁6の上方に位置し、第2有機層OR1bを覆っている。
【0030】
また、
図4に示すように、有機層OR2は、互いに離間した第1有機層OR2a及び第2有機層OR2bを含む。上電極UE2は、互いに離間した第1上電極UE2a及び第2上電極UE2bを含む。第1有機層OR2aは、開口AP2(副画素SP2においてリブ5が有する開口)を通じて下電極LE2に接触するとともに、リブ5の一部を覆っている。第2有機層OR2bは、上部62の上に位置している。第1上電極UE2aは、下電極LE2と対向するとともに、第1有機層OR2aを覆っている。更に、第1上電極UE2aは、下部61の側面に接触している。第2上電極UE2bは、隔壁6の上方に位置し、第2有機層OR2bを覆っている。
【0031】
また、
図4に示すように、有機層OR3は、互いに離間した第1有機層OR3a及び第2有機層OR3bを含む。上電極UE3は、互いに離間した第1上電極UE3a及び第2上電極UE3bを含む。第1有機層OR3aは、開口AP3(副画素SP3においてリブ5が有する開口)を通じて下電極LE3に接触するとともに、リブ5の一部を覆っている。第2有機層OR3bは、上部62の上に位置している。第1上電極UE3aは、下電極LE3と対向するとともに、第1有機層OR3aを覆っている。更に、第1上電極UE3aは、下部61の側面に接触している。第2上電極UE3bは、隔壁6の上方に位置し、第2有機層OR3bを覆っている。
【0032】
図4に示す例において、副画素SP1、SP2及びSP3は、有機層OR1、OR2及びOR3の発光層が発する光の光学特性を調整するためのキャップ層CP1、CP2及びCP3(光路調整層)を含む。
【0033】
キャップ層CP1は、互いに離間した第1キャップ層CP1a及び第2キャップ層CP1bを含む。第1キャップ層CP1aは、開口AP1に位置し、第1上電極UE1aの上に配置されている。第2キャップ層CP1bは、隔壁6の上方に位置し、第2上電極UE1bの上に配置されている。
【0034】
キャップ層CP2は、互いに離間した第1キャップ層CP2a及び第2キャップ層CP2bを含む。第1キャップ層CP2aは、開口AP2に位置し、第1上電極UE2aの上に配置されている。第2キャップ層CP2bは、隔壁6の上方に位置し、第2上電極UE2bの上に配置されている。
【0035】
キャップ層CP3は、互いに離間した第1キャップ層CP3a及び第2キャップ層CP3bを含む。第1キャップ層CP3aは、開口AP3に位置し、第1上電極UE3aの上に配置されている。第2キャップ層CP3bは、隔壁6の上方に位置し、第2上電極UE3bの上に配置されている。
【0036】
副画素SP1、SP2及びSP3には、封止層SE1、SE2及びSE3がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、第1キャップ層CP1a、隔壁6及び第2キャップ層CP1bを含む副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。封止層SE2は、第1キャップ層CP2a、隔壁6及び第2キャップ層CP2bを含む副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。封止層SE3は、第1キャップ層CP3a、隔壁6及び第2キャップ層CP3bを含む副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
【0037】
図4に示す例においては、副画素SP1とSP2との間の隔壁6上の第2有機層OR1b、第2上電極UE1b、第2キャップ層CP1b及び封止層SE1と、当該隔壁6上の第2有機層OR2b、第2上電極UE2b、第2キャップ層CP2b及び封止層SE2とが離間している。また、副画素SP2とSP3との間の隔壁6上の第2有機層OR2b、第2上電極UE2b、第2キャップ層CP2b及び封止層SE2と、当該隔壁6上の第2有機層OR3b、第2上電極UE3b、第2キャップ層CP3b及び封止層SE3とが離間している。
【0038】
封止層SE1、SE2及びSE3は、樹脂層14(平坦化膜)により覆われている。樹脂層14は、封止層15により覆われている。更に、封止層15は、樹脂層16により覆われている。
【0039】
絶縁層13と樹脂層14及び16とは、有機材料で形成されている。リブ5と封止層15及びSE(SE1、SE2及びSE3)とは、例えばシリコン窒化物(SiNx)等の無機材料で形成されている。
【0040】
隔壁6が有する下部61は、導電性を有している。隔壁6が有する上部62も同様に導電性を有していてもよい。下電極LEは、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明な導電性酸化物で形成されてもよいし、銀(Ag)等の金属材料と導電性酸化物との積層構造を有していてもよい。上電極UEは、ITO等の導電性酸化物で形成されてもよい。
【0041】
下電極LEの電位が上電極UEの電位よりも相対的に高い場合、下電極LEがアノードに相当し、上電極UEがカソードに相当する。また、上電極UEの電位が下電極LEの電位よりも相対的に高い場合、上電極UEがアノードに相当し、下電極LEがカソードに相当する。
【0042】
有機層ORは、一対の機能層と、これら機能層の間に配置された発光層とを含む。一例として、有機層ORは、正孔注入層、正孔輸入層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層及び電子注入層を順に積層した構造を有している。
【0043】
キャップ層CP(CP1、CP2及びCP3)は、例えば透明な複数の薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、複数の薄膜として、無機材料によって形成された薄膜及び有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UEの材料とは異なり、また、封止層SEの材料とも異なる。なお、キャップ層CPは省略されてもよい。
【0044】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE(第1上電極UE1a、UE2a及びUE3a)にそれぞれ供給される。下電極LE(LE1、LE2及びLE3)には、副画素SP(SP1、SP2及びSP3)がそれぞれ有する画素回路を通じて画素電圧が供給される。
【0045】
下電極LE1と上電極UE1との間に電位差が形成されると、第1有機層OR1aの発光層が赤色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2との間に電位差が形成されると、第1有機層OR2aの発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3との間に電位差が形成されると、第1有機層OR3aの発光層が青色の波長域の光を放つ。
【0046】
他の例として、有機層OR1、OR2及びOR3の発光層が同一色(例えば、白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1、SP2及びSP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1、SP2及びSP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0047】
図5は、隔壁6の概略的な拡大断面図である。
図5においては、リブ5、隔壁6、絶縁層13及び一対の下電極LE以外の要素を省略している。一対の下電極LEは、上記した下電極LE1、LE2及びLE3のいずれかに相当する。
【0048】
図5に示す例において、隔壁6が有する下部61は、リブ5の上に配置されたバリア層(ボトム部)611と、当該バリア層611の上に配置された金属層(軸部)612とを含む。バリア層611は、金属層612とは異なる材料で形成されており、例えばモリブデン(Mo)、チタン(Ti)及び窒化チタン(TiN)等の金属材料によって形成されている。金属層612は、バリア層611よりも厚く形成されている。金属層612は、単層構造であってもよいし、単なる金属材料の積層構造であってもよい。一例として、金属層612は例えばアルミニウム(Al)により形成される。
【0049】
上部(トップ部)62は、下部61よりも薄い。
図5に示す例において、上部62は、金属層612の上に配置された第1層621と、当該第1層621の上に配置された第2層622とを含む。一例としては、第1層621は例えばチタン(Ti)により形成され、第2層622は例えばITOにより形成される。
【0050】
図5に示す例においては、下部61の幅が上部62に近づくにつれて小さくなる。すなわち、下部61の側面61a及び61bは、第3方向Zに対して傾斜している。なお、上部62は、側面61aから突出した端部62aと、側面61bから突出した端部62bとを有している。
【0051】
側面61a及び61bからの端部62a及び62bの突出量D(以下、隔壁6の突出量Dと表記)は、例えば2.0μm以下である。本実施形態における隔壁6の突出量Dは、側面61a及び61bの下端(バリア層611)と端部62a及び62bとの間の、隔壁6の第3方向Zと直交する幅方向(第1方向Xまたは第2方向Y)における距離に相当する。
【0052】
なお、
図5に示す例においては、バリア層611の側面と金属層612の側面とが揃っており、段差のない平面を形成しているが、例えばバリア層611の側面は、金属層612の側面に対してわずかに後退していてもよいし、当該金属層612の側面に対して突出していてもよい。また、
図5においてはバリア層611及び金属層612の側面(つまり、下部61の側面61a及び61b)が第3方向Zに対して傾斜しているが、当該側面は第3方向Zと平行であってもよい。
【0053】
隔壁6の構造及び当該隔壁6の各部の材料は、例えば隔壁6を形成する手法等を考慮して、適宜、選定することができる。
【0054】
ここで、本実施形態において、隔壁6は、平面視において副画素SPを区画するように形成されている。上記した有機層ORは例えば異方性あるいは指向性のある真空蒸着法によって形成されるが、隔壁6が配置された状態で当該有機層ORを形成するための有機材料を基材10全体に蒸着した場合、隔壁6は
図4及び
図5に示すような形状を有しているため、当該隔壁6の側面には有機層ORは殆ど形成されない。これによれば、隔壁6によって副画素SP毎に分断されるような有機層OR(発光素子)を形成することができる。
【0055】
図6~
図8は、隔壁6を利用して形成される発光素子について説明するための概略的な断面図である。なお、
図6~
図8においては、基材10、絶縁層11及び回路層12が省略されている。また、
図6~
図8に示す副画素SPα、SPβ及びSPγは、副画素SP1、SP2及びSP3のいずれかに相当する。
【0056】
まず、上記したように隔壁6が配置された状態で
図6に示すように基材10全体に対して有機層OR、上電極UE、キャップ層CP及び封止層SEが順に蒸着によって形成される。有機層ORは、副画素SPαに対応する色の光を放つ発光層を含む。オーバーハング状の隔壁6によって、有機層ORは開口APを通じて下電極LEと接触する第1有機層ORaと隔壁6上の第2有機層ORbとに分断され、上電極UEは第1有機層ORaを覆う第1上電極UEaと第2有機層ORbを覆う第2上電極UEbとに分断され、キャップ層CPは第1上電極UEaを覆う第1キャップ層CPaと第2上電極UEbを覆う第2キャップ層CPbとに分断される。第1上電極UEaは、隔壁6の下部61に接触している。封止層SEは、第1キャップ層CPa、隔壁6及び第2キャップ層CPbを連続的に覆っている。
【0057】
次に、
図7に示すように、封止層SEの上にレジストRが形成される。レジストRは、副画素SPαを覆っている。すなわち、レジストRは、副画素SPαに位置する第1有機層ORa、第1上電極UEa及び第1キャップ層CPaの直上に配置されている。レジストRは、副画素SPαと副画素SPβとの間の隔壁6上の第2有機層ORb、第2上電極UEb及び第2キャップ層CPbのうち、副画素SPα寄りの部分の直上にも位置している。すなわち、隔壁6の少なくとも一部は、レジストRから露出している。
【0058】
更に、レジストRをマスクとしたエッチングにより、
図8に示すように有機層OR、上電極UE、キャップ層CP及び封止層SEのうちレジストRから露出した部分が除去される。これにより、副画素SPαには、下電極LE、第1有機層ORa、第1上電極UEa及び第1キャップ層CPaを含む発光素子が形成される。一方で、副画素SPβ及びSPγにおいては下電極LEが露出する。なお、上記したエッチングは、例えば封止層SEのドライエッチング、キャップ層CPのウェットエッチング及びドライエッチング、上電極UEのウェットエッチング、有機層ORのドライエッチングを含む。
【0059】
上記したように副画素SPαの発光素子が形成されると、レジストRが除去され、副画素SPβ及びSPγの発光素子が、副画素SPαと同様に、順に形成される。
【0060】
以上の副画素SPα、SPβ及びSPγについて例示したように副画素SP1、SP2及びSP3の発光素子を形成し、更に樹脂層14、封止層15及び樹脂層16を形成することにより、
図4に示した表示装置DSPの構造が実現される。
【0061】
ここで、上記したように複数の副画素SPの各々には、発光素子を駆動する画素回路が含まれる。以下、
図9を参照して、画素回路の回路構成の一例について説明する。なお、
図9に示す画素回路100は、7つのトランジスタTr1~Tr7と1つの保持容量Cstとを有する7Tr1C画素回路である。
【0062】
以下の説明においては、
図9に示すトランジスタTr1~Tr7の各々のソース端子及びドレイン端子の一方を第1端子、他方を第2端子とする。また、
図9に示す保持容量Cst(を実現する容量素子)の一方の端子を第1端子、他方の端子を第2端子とする。
【0063】
トランジスタTr1の第1端子は、ノードn3を介して、トランジスタTr2の第1端子及びトランジスタTr5の第2端子と接続されている。トランジスタTr1の第2端子は、データ信号Dataを供給するデータ信号線に接続されている。データ信号Dataは、画素に書き込まれる信号(画素信号)に相当する。なお、トランジスタTr1は、例えばnチャネル型トランジスタである。
【0064】
トランジスタTr2は、副画素SPに含まれる発光素子20(つまり、画素回路100によって駆動される発光素子20)に電流を供給する駆動トランジスタ(DRT)に相当する。トランジスタTr2の第1端子は、ノードn3を介して、トランジスタTr1の第1端子及びトランジスタTr5の第2端子と接続されている。トランジスタTr2の第2端子は、ノードn1を介して、トランジスタTr3の第2端子、トランジスタTr4の第1端子及びトランジスタTr7の第1端子と接続されている。なお、トランジスタTr2は、例えばnチャネル型トランジスタである。
【0065】
トランジスタTr3の第1端子は、ノードn2を介して、トランジスタTr2のゲート端子及び保持容量Cstの第2端子と接続されている。トランジスタTr3の第2端子は、ノードn1を介して、トランジスタTr2の第2端子、トランジスタTr4の第1端子及びトランジスタTr7の第1端子と接続されている。なお、トランジスタTr3は、例えばnチャネル型トランジスタである。
【0066】
トランジスタTr4の第1端子は、ノードn1を介して、トランジスタTr2の第2端子、トランジスタTr3の第2端子及びトランジスタTr7の第1端子と接続されている。トランジスタTr4の第2端子は、電源電圧VDDELを供給する電源線に接続されている。なお、トランジスタTr4は、例えばpチャネル型トランジスタである。
【0067】
トランジスタTr5の第1端子は、ノードn4を介して、トランジスタTr6の第1端子、保持容量Cstの第1端子及び発光素子20のアノード端子と接続されている。トランジスタTr5の第2端子は、ノードn3を介して、トランジスタTr1の第1端子及びトランジスタTr2の第1端子と接続されている。なお、トランジスタTr5は、例えばpチャネル型トランジスタである。
【0068】
トランジスタTr6の第1端子は、ノードn4を介して、トランジスタTr5の第1端子、保持容量Cstの第1端子及び発光素子20のアノード端子と接続されている。トランジスタTr6の第2端子は、初期化電圧Viniを供給する電源線に接続されている。なお、トランジスタTr6は、例えばnチャネル型トランジスタである。
【0069】
トランジスタTr7の第1端子は、ノードn1を介して、トランジスタTr2の第2端子、トランジスタTr3の第2端子及びトランジスタTr4の第1端子と接続されている。トランジスタTr7の第2端子は、電源電圧VSHを供給する電源線に接続されている。なお、トランジスタTr7は、例えばnチャネル型トランジスタである。
【0070】
また、
図9に示すように、トランジスタTr1のゲート端子は、ゲート信号Scan2を供給するゲート信号線に接続されている。トランジスタTr3のゲート端子は、ゲート信号Scan1を供給するゲート信号線に接続されている。トランジスタTr4~Tr6のゲート端子は、制御信号EMを供給する制御信号線に接続されている。トランジスタTr7のゲート端子は、ゲート信号Scan3を供給するゲート信号線に接続されている。
【0071】
保持容量Cstの第1端子は、ノードn4を介して、トランジスタTr5の第1端子、トランジスタTr6の第1端子及び発光素子20のアノード端子と接続されている。保持容量Cstの第2端子は、ノードn2を介して、トランジスタTr2のゲート端子及びトランジスタTr3の第1端子と接続されている。
【0072】
発光素子20のアノード端子は、ノードn4を介して、トランジスタTr5の第1端子、トランジスタTr6の第1端子及び保持容量Cstの第1端子と接続されている。発光素子20のカソード端子は、電源電圧VSSELを供給する電源線に接続されている。上記した電源電圧VDDELは発光素子20に供給されるアノード電圧に相当し、電源電圧VSSELは発光素子20に供給されるカソード電圧に相当する。
【0073】
以下、
図10を参照して、本実施形態の比較例における画素回路100(7Tr1C画素回路)の動作の一例について説明する。
図10は、画素回路100(を含む副画素SP)に対するゲート信号Scan1~Scan3及び制御信号EMの出力例を示すタイミングチャートである。
【0074】
なお、画素回路100を構成する複数のトランジスタにはnチャネル型トランジスタ及びpチャネル型トランジスタが含まれるが、nチャネル型トランジスタは、ゲート端子にロー(レベル)の信号が供給されるとオフ状態(非導通状態)となり、当該ゲート端子にハイ(レベル)の信号が供給されるとオン状態(導通状態)となるスイッチング素子である。一方、pチャネル型トランジスタは、ゲート端子にハイ(レベル)の信号が供給されるとオフ状態(非導通状態)となり、当該ゲート端子にロー(レベル)の信号が供給されるとオン状態(導通状態)となるスイッチング素子である。
【0075】
図10に示す期間t0においては、制御信号EMがローであるため、画素回路100に含まれる7つのトランジスタのうちのトランジスタTr4及びTr5はオン状態であり、トランジスタTr6はオフ状態である。
【0076】
また、期間t0においては、ゲート信号Scan1~Scan3がローであるため、トランジスタTr1、Tr3及びTr7はオフ状態である。
【0077】
これによれば、トランジスタTr2のゲート電圧(前フレームのデータ信号Dataに基づいてトランジスタTr2のゲート端子に供給される電圧)によって制御された電流が発光素子20(OLED)に流れ、当該発光素子20が発光している状態が維持されている。
【0078】
なお、期間t0が終了するタイミングで、制御信号EMは、ローからハイに切り替えられる。
【0079】
次に、
図10に示す期間t1は、電源電圧VSH及び初期化電圧Viniに基づいて保持容量Cstに書き込まれている電圧をリセットするリセット期間に相当する。期間t1においては、制御信号EMがハイであるため、トランジスタTr4及びTr5はオフ状態であり、トランジスタTr6はオン状態である。この場合、ノードn4にはトランジスタTr6を介して初期化電圧Viniが供給されるが、当該初期化電圧Viniは発光素子20に電流が流れない値に設定されているため、期間t1において当該発光素子20には電流は流れない。
【0080】
また、期間t1が開始するタイミングで、ゲート信号Scan1は、ローからハイに切り替えられる。このため、期間t1において、トランジスタTr3はオン状態になる。更に、期間t0が終了した後、期間t1が開始する前に、ゲート信号Scan3はローからハイに切り替えられる。このため、期間t1において、トランジスタTr7はオン状態である。これによれば、トランジスタTr7及びTr3を介して、トランジスタTr2のゲート端子に電源電圧VSHが供給されている状態となる。この場合、保持容量Cst(の第1及び第2端子間)にはVSH-Viniの電圧が印加され、前フレームの情報がリセットされる。
【0081】
なお、期間t1が終了するタイミングで、ゲート信号Scan3は、ハイからローに切り替えられる。
【0082】
次に、
図10に示す期間t2は、保持容量Cstにデータ信号Dataに応じた電圧が書き込まれるサンプリング期間に相当する。期間t2が開始するタイミングで、ゲート信号Scan2は、ローからハイに切り替えられる。このため、期間t2において、トランジスタTr1はオン状態になる。また、期間t2においては、ゲート信号Scan3はローであるため、トランジスタTr7はオフ状態である。
【0083】
この場合、トランジスタTr2のゲート端子(ノードn2)には、トランジスタTr1~Tr3を介して、データ信号Data(に対応する電圧Vdata)及びトランジスタTr2のしきい値電圧Vth(つまり、Vdata+Vthに相当する電圧)が供給される。これによれば、保持容量CstにVdata+Vth-Viniの電圧が印加され、Vdata及びVthに関する情報が保持容量Cstに書き込まれる(つまり、トランジスタTr2が発光素子20に供給する電流を制御する電圧が保持容量Cstに書き込まれる)。
【0084】
なお、期間t2が終了するタイミングで、ゲート信号Scan1は、ハイからローに切り替えられる。
【0085】
次に、
図10に示す期間t3は、発光素子20に電流を供給する(つまり、発光素子20を発光させる)発光期間に相当する。期間t3においては、ゲート信号Scan1はローであるため、トランジスタTr3はオフ状態である。また、期間t3が開始する前にゲート信号Scan2はハイからローに切り替えられているため、トランジスタTr1はオフ状態である。更に、期間t3が開始するタイミングで制御信号EMはハイからローに切り替えられる。このため、トランジスタTr4及びTr5はオン状態になり、トランジスタTr6はオフ状態になる。
【0086】
ここで、トランジスタTr2の第1端子がソース端子であるものとすると、トランジスタTr2のゲート端子-ソース端子(ノードn2~ノードn3)間の電圧Vgsは、保持容量Cstの電圧(Vdata+Vth-Vini)となる。この場合、トランジスタTr2がオン状態になり、トランジスタTr4の第2端子に接続される電源線(電源電圧VDDELを供給する電源線)からノードn4に向かって電流が流れる。これに伴い、ノードn4の電位の上昇が始まり、当該電位が発光素子20(OLED)のしきい値を超えると、当該発光素子20に電流が流れ始め、当該発光素子20における発光が開始される。最終的に、発光素子20に流れる電流IoledがトランジスタTr2から与えられる出力電流(トランジスタTr2の飽和領域の出力電流)Idrtに達すると、ノードn4の電位上昇が止まり、発光素子20は定常発光状態となる。
【0087】
なお、トランジスタTr2のゲート端子-ソース端子間の電圧Vgs=Vdata+Vth-ViniをTFT飽和式であるIdrt=1/2Cox*μ*W/L*(Vgs-Vth)2に代入すると、Idrt(=Ioled)=1/2Cox*μ*W/L*(Vdata-Vini)2となる。Coxは単位面積あたりのゲート静電容量、μはキャリア移動度、WはトランジスタTr2のチャネル幅、LはトランジスタTr2のチャネル長である。
【0088】
これによれば、IdrtがトランジスタTr2のしきい値電圧Vthに依存しない値となり(つまり、トランジスタTr2のしきい値電圧Vthに依存しない電流が発光素子20に流れることになり)、当該しきい値電圧VthのばらつきがIdrtに与える影響を排除することができることがわかる。
【0089】
すなわち、上記した画素回路100は(7Tr1C画素回路)は、トランジスタTr2のしきい値電圧Vthのばらつきを補正する機能(Vth補正機能)を有しているといえる。
【0090】
ところで、表示装置DSPは表示領域DAにフレーム(画像)を順次表示するように動作するが、本実施形態の比較例において、当該表示領域DAに1フレームを表示する期間(以下、1フレーム期間と表記)には、上記したリセット期間(
図10に示す期間t1)、サンプリング期間(
図10に示す期間t2)及び発光期間(
図10に示す期間t3)が含まれる。
【0091】
ここで、
図11を参照して、各1フレーム期間において表示されるフレームが黒色の画像である場合(以下、黒表示と表記)について説明する。上記したように1フレーム期間に含まれる発光期間においては保持容量Cstに書き込まれている電圧に基づいてトランジスタTr2から発光素子20に電流が供給されるが、黒表示時の発光期間においては、
図11に示す輝度201を実現するために、トランジスタTr2に印加される電圧Vgsを小さくする(つまり、発光素子20に電流を供給しないようにトランジスタTr2をオフ状態にする)。この場合、黒表示時の発光期間が終了したタイミングにおいて、トランジスタTr2は、当該トランジスタTr2を構成する半導体層のチャネル領域内の欠陥にキャリアがトラップされていない状態(以下、非トラップ状態と表記)にある。
【0092】
次に、
図12を参照して、各1フレーム期間において表示されるフレームが白色の画像である場合(以下、白表示と表記)について説明する。この白表示時の発光期間においては、
図12に示す輝度202を実現するために、トランジスタTr2に印加される電圧Vgsを大きくする(つまり、発光素子20に電流を供給するようにトランジスタTr2をオン状態にする)。この場合、白表示時の発光期間が終了したタイミングにおいて、トランジスタTr2は、当該トランジスタTr2を構成する半導体層のチャネル領域内の欠陥にキャリアがトラップされている状態(以下、トラップ状態と表記)にある。このようにトラップ状態にあるトランジスタTr2は、非トラップ状態にある場合と比較して、流れる電流が小さくなる。
【0093】
なお、上記した
図11及び
図12においては、1フレーム期間に含まれるリセット期間、サンプリング期間及び発光期間の配置を模式的に示しており、「Reset」はリセット期間を表し、「Samp」はサンプリング期間を表している。また、
図11に示す「Black」は黒表示時の発光期間を表し、
図12に示す「White」は白表示時の発光期間を表している。以下の
図13及び
図14においても同様である。
【0094】
ここで、
図13を参照して、黒表示から白表示に切り替えられる場合について説明する。
図13においては、n-1番目の1フレーム期間に表示されるフレームが黒色の画像であり、n~n+2番目の1フレーム期間に表示されるフレームが白色の画像である場合を想定している。
【0095】
まず、n-1番目の1フレーム期間に含まれる発光期間においてトランジスタTr2はオフ状態であるため、当該発光期間が終了したタイミングで当該トランジスタTr2は非トラップ状態にある。
【0096】
次に、n番目の1フレーム期間に含まれるリセット期間及びサンプリング期間において画素回路100が動作することによって、保持容量CstにVdata+Vth-Viniの電圧が書き込まれる(印加される)。これにより、n番目の1フレーム期間に含まれる発光期間においては、保持容量Cstに書き込まれた電圧(Vdata+Vth-Vini)に基づいてトランジスタTr2から供給される電流Idrt(=1/2Cox*μ*W/L*(Vdata-Vini)2)に応じて発光素子20が発光する。
【0097】
なお、n番目の1フレーム期間に含まれる発光期間においてトランジスタTr2はオン状態であるため、当該発光期間が終了したタイミングで当該トランジスタTr2はトラップ状態にある。
【0098】
次に、n+1番目の1フレーム期間に含まれるリセット期間及びサンプリング期間において画素回路100が動作した場合、トランジスタTr2はトラップ状態にあるため、当該サンプリング期間において当該トランジスタTr2に流れる電流は、上記したn番目の1フレーム期間に含まれるサンプリング期間において当該トランジスタTr2に流れる電流よりも小さくなる。
【0099】
この場合、n番目の1フレーム期間に含まれるサンプリング期間においてはVdata+Vthに相当する電圧がノードn2に供給されるのに対して、n+1番目の1フレーム期間に含まれるサンプリング期間においてはノードn2の電位がVdata+Vthに到達しない(つまり、Vdata+Vthまで書き込みが行えず、Vdata+Vth+αに相当する電圧がノードn2に供給される)。これによれば、保持容量CstにVdata+Vth-Vini+αの電圧が書き込まれ、n+1番目の1フレーム期間において保持容量Cstに書き込まれる電圧は、n番目の1フレーム期間においてCstに書き込まれる電圧よりも高くなる。
【0100】
n+1番目の1フレーム期間に含まれる発光期間においては、このように保持容量Cstに書き込まれた電圧(Vdata+Vth-Vini+α)に基づいてトランジスタTr2から供給される電流Idrt(=1/2Cox*μ*W/L*(Vdata-Vini+α)2)に応じて発光素子20が発光する。
【0101】
ここではn+1番目の1フレーム期間について説明したが、n+2番目の1フレーム期間についても同様であるため、当該n+2番目の1フレーム期間についての詳細な説明については省略する。
【0102】
上記したように黒表示から白表示に切り替えられる場合、
図13に示す輝度203のように、n番目の1フレーム期間においてはフレーム(白表示の1フレーム目)が電流Idrt(=1/2Cox*μ*W/L*(Vdata-Vini)
2)に応じて発光素子20が発光することによって実現される輝度で表示されるのに対して、n+1番目以降の1フレーム期間におけるフレーム(白表示の2フレーム目以降)は、電流Idrt(=1/2Cox*μ*W/L*(Vdata-Vini+α)
2)に応じて発光素子20が発光することによって実現される輝度で表示される。
【0103】
すなわち、上記した本実施形態の比較例においては、白表示の1フレーム目を表示する1フレーム期間に含まれるサンプリング期間におけるサンプリングの進行が速い(つまり、当該サンプリング期間においてトランジスタTr2に多くの電流が流れる)ため、白表示の1フレーム目の輝度が白表示の2フレーム目以降の輝度よりも低くなり、当該輝度差に基づいて表示装置DSPの表示品位が低下する。
【0104】
そこで、本実施形態においては、
図14に示すように、各1フレーム期間に含まれるリセット期間及びサンプリング期間の間にPre-Activate期間を配置する。なお、Pre-Activate期間は、トランジスタTr2をオン状態にするために、当該トランジスタTr2に電圧Vgsを印加する期間である。
【0105】
本実施形態においては、上記したPre-Activate期間にトランジスタTr2をオン状態にしておくことにより、例えば白表示の1フレーム目であっても当該トランジスタTr2がトラップ状態にあるため、サンプリング期間において当該トランジスタTr2に流れる電流は、白表示の2フレーム目以降と同程度になる。これにより、本実施形態においては、
図14に示す輝度204のように、白表示の1フレーム目と2フレーム目以降とにおける輝度差を低減し、表示装置DSPの表示品位の低下を抑制することができる。
【0106】
以下、
図15を参照して、本実施形態における画素回路100の動作の一例について説明する。なお、ここでは上記した
図10と異なる部分について主に説明する。
【0107】
図15に示すように、本実施形態においては期間t1(リセット期間)及び期間t2(サンプリング期間)の間に期間t4(Pre-Activate期間)が配置されている。
【0108】
期間t4が開始するタイミングで、ゲート信号Scan1は、ハイからローに切り替えられる。このため、期間t4において、トランジスタTr3はオフ状態になる。
【0109】
このような期間t4によれば、ゲート信号Scan1を供給するゲート信号線(トランジスタTr3)及びノードn1のカップリングにより、トランジスタTr2のソース端子及びドレイン端子(ノードn1及びノードn3)の電圧をゲート電圧よりも引き落とすことができる。
【0110】
具体的には、期間t4においてトランジスタTr3には電流は流れないが、ノードn1の電圧は、ゲート信号Scan1を供給するゲート信号線のカップリングの影響により低下する。これによれば、トランジスタTr2のゲート端子-ドレイン端子間の電圧VgdによりトランジスタTr2がオン状態になり、ノードn3の電圧が低下するため、本実施形態の比較例における期間t1及びt2の間の期間と比較して、トランジスタTr2に高い電圧Vgsを印加することができる。
【0111】
本実施形態においては、期間t1の前に配置された期間t4において画素回路100が上記したように動作することにより、トランジスタTr2をオン状態にするPre-Activate期間を実現することができる。このようなPre-Activate期間によれば、前のフレームが黒色の画像である場合であっても当該フレームに基づくトランジスタTr2の状態(非トラップ状態)を解消し、白表示の1フレーム目の時点で2フレーム目以降と同程度の電流をトランジスタTr2に流す(つまり、当該白表示の1フレーム目における輝度の低下を抑制する)ことができる。
【0112】
ここで、
図16を参照して、本実施形態の比較例におけるゲート信号Scan1~Scan3及び制御信号EMを実現するためのScan回路及びEM回路について簡単に説明する。
【0113】
Scan回路は、ゲート信号Scan1~Scan3を出力するための回路であり、複数のレジスタ(回路)から構成されるシフトレジスタ(以下、Scan回路用シフトレジスタと表記)を備える。Scan回路は、
図16に示す水平期間(H)に従って供給されるスタート信号G1VST及びクロック信号G1CLK1~G1CLK3がScan回路用シフトレジスタに入力されることにより、当該Scan回路用シフトレジスタの各段(ステージ)に配置されたレジスタからゲート信号Scan1~Scan3を出力するように動作する。なお、ゲート信号Scan1~Scan3は、Scan回路用シフトレジスタに入力されるスタート信号G1VST及びクロック信号G1CLK1~G1CLK3がローからハイに切り替えられるタイミングに従って出力され得る。
【0114】
また、EM回路は、制御信号EMを出力するための回路であり、複数のレジスタ(回路)から構成されるシフトレジスタ(以下、EM回路用シフトレジスタと表記)を備える。EM回路は、
図16に示す水平期間(H)に従って供給されるスタート信号E1VST及びクロック信号E1CLKがEM回路用シフトレジスタに入力されることにより、当該EM用シフトレジスタの各段(ステージ)に配置されたレジスタから制御信号EMを出力するように動作する。なお、制御信号EMは、EM回路用シフトレジスタに入力されるスタート信号E1VST及びクロック信号E1CLK1がローからハイに切り替えられるタイミングに従って出力され得る。
【0115】
また、
図17は、上記したScan回路及びEM回路から構成されるゲートドライバの構成の一例を示す。
【0116】
図17に示す例において、Scan回路用シフトレジスタ301は、レジスタSR1~SR4を含む複数のレジスタから構成されている。レジスタSR1~SR4の各々は表示領域DAの各行を構成する複数の副画素SP(に含まれる画素回路100)に接続されるゲート信号線と接続されており、Scan回路用シフトレジスタ301は、当該レジスタSR1~SR4の各々からゲート信号Scan3を順次出力するように動作する。
【0117】
具体的には、例えばレジスタSR1が表示領域DAのm+1行を構成する複数の副画素SPにゲート信号Scan3を出力する場合、レジスタSR2は、当該レジスタSR1からゲート信号Scan3が出力された後に、表示領域DAのm+2行を構成する複数の副画素SPにゲート信号Scan3を出力する。なお、レジスタSR2から出力されるゲート信号Scan3は、表示領域DAのm+1行を構成する複数の副画素SPに出力されるゲート信号Scan1として利用される。
【0118】
更に、例えばレジスタSR2が表示領域DAのm+2行を構成する複数の副画素SPにゲート信号Scan3を出力する場合、レジスタSR3は、当該レジスタSR2からゲート信号Scan3が出力された後に、表示領域DAのm+3行を構成する複数の副画素SPにゲート信号Scan3を出力する。なお、レジスタSR3から出力されるゲート信号Scan3は、表示領域DAのm+1を構成する複数の副画素SPに出力されるゲート信号Scan2及び表示領域DAのm+2を構成する複数の副画素SPに出力されるゲート信号Scan1として利用される。
【0119】
また、
図17に示す例において、EM回路用シフトレジスタ302は、レジスタER1~ER3を含む複数のレジスタから構成されている。レジスタER1~ER3はそれぞれNOT回路(インバータ)302aと接続され、当該NOT回路302aの各々は表示領域DAの各行を構成する複数の副画素SP(に含まれる画素回路100)に接続される制御信号線に接続されている。EM回路用シフトレジスタ302は、レジスタER1~ER4の各々と接続されたNOT回路302aから制御信号EMを順次出力するように動作する。
【0120】
図17に示すゲートドライバの構成によれば、表示領域DAの行(を構成する複数の副画素SP)毎にゲート信号Scan1~Scan3及び制御信号EMを順次出力することが可能である。
【0121】
ところで、本実施形態の比較例においては、上記した
図16に示すスタート信号VST及びクロック信号G1CLK1~G1CLK3と、スタート信号E1VST及びクロック信号E1CLK1とに基づいてゲート信号Scan1~Scan3及び制御信号EMがScan回路及びEM回路から出力されるものとして説明したが、本実施形態においては、
図18に示すスタート信号VST及びクロック信号G1CLK1~G1CLK3と、スタート信号E1VST及びクロック信号E1CLK1とに基づいてゲート信号Scan1~Scan3及び制御信号EMがScan回路及びEM回路から出力される。
【0122】
なお、本実施形態の比較例におけるゲート信号Scan1及びScan2はゲート信号Scan3の位相をずらすことによってタイミング形成される信号であるところ、
図15に示すように、本実施形態におけるゲート信号Scan1及びScan2も同様にScan3の位相をずらすことによってタイミング形成される信号とする。また、本実施形態における制御信号EMは、本実施形態の比較例における制御信号EMと同様である。
【0123】
これによれば、本実施形態におけるゲート信号Scan1~Scan3及び制御信号EMは、本実施形態の比較例におけるScan回路用シフトレジスタ301及びEM回路用シフトレジスタ302(つまり、1系統のシフトレジスタ)を用いて実現することができるため、本実施形態は、本実施形態の比較例と比較して、周辺回路幅が大きくなることはない。
【0124】
上記したように本実施形態に係る表示装置DSPは、基材10と、当該基材10上の表示領域DAに配置された複数の副画素SPと、当該複数の副画素SPの各々にデータ信号Dataを供給するデータ信号線とを備える。複数の副画素SPの各々は、トランジスタTr2(第1トランジスタ)及び保持容量Cstを有する画素回路100と、当該画素回路100によって駆動される発光素子20とを含む。保持容量Cstは、発光素子20に供給される電流を制御する電圧が書き込まれるように構成されている。トランジスタTr2は、保持容量Cstに書き込まれた電圧に基づいて発光素子20に電流を供給するように構成されている。表示領域DAに1フレーム(画像)を表示する1フレーム期間は、保持容量Cstにデータ信号Dataに応じた電圧が書き込まれるサンプリング期間(第1期間)の前に配置されたトランジスタTr2をオン状態にするPre-Activate期間(第2期間)を含む。
【0125】
本実施形態においては、上記した構成により、表示装置DSPの表示品位の低下を抑制することができる。具体的には、本実施形態の比較例においては黒表示から白表示に切り替えられる場合に当該白表示の1フレーム目におけるサンプリングが2フレーム目以降と比べて速く進行する(つまり、最初の白書き込み時のサンプリングが他の白書き込み時より早い)ことにより当該1フレーム目の輝度が低下するのに対して、本実施形態においては、白表示の1フレーム目を表示する1フレーム期間に含まれるサンプリング期間の前のPre-Activate期間においてトランジスタTr2をオン状態にする(つまり、事前に当該トランジスタTr2に電流を流して当該トランジスタTr2をトラップ状態にしておく)ことにより、当該サンプリング期間においてトランジスタTr2に流れる電流の大きさを2フレーム目と同程度にすることができるため、白表示の1フレーム目と2フレーム目以降とで輝度の差異を低減する(つまり、黒白応答を改善し、表示品位の低下を抑制する)ことが可能となる。
【0126】
換言すれば、本実施形態の比較例においては、黒表示から白表示への切り替わりにおける1フレーム目においてトランジスタTr2に流れる電流が大きくなることにより、結果として当該1フレーム目の輝度が低下するのに対し、本実施形態においては、各1フレーム期間においてサンプリング期間の前にPre-Activate期間が配置されるため、前フレームが黒色の画像である場合であっても当該前フレームが白色の画像である場合であっても各1フレーム期間に含まれるサンプリング期間においてトランジスタTr2に流れる電流の大きさ(つまり、サンプリングの進行)を揃えることができる。
【0127】
なお、本実施形態において、1フレーム期間は電源電圧VSH(第1電圧)及び初期化電圧Vini(第2電圧)に基づいて保持容量Cstに書き込まれている電圧をリセットするリセット期間(第4期間)を含み、Pre-Activate期間が当該リセット期間とサンプリング期間との間に配置されるものとして説明したが、例えば、当該Pre-Activate期間は、当該1フレーム期間の前の1フレーム期間に含まれる発光期間(第3期間)と当該Pre-Activate期間を含む1フレーム期間に含まれるサンプリング期間との間(つまり、当該発光期間よりも後であって当該サンプリング期間よりも前)に配置されていればよい。
【0128】
また、本実施形態における画素回路100はトランジスタTr3(第2トランジスタ)を更に有し、当該トランジスタTr3の第2端子(ソース端子及びドレイン端子の一方)はトランジスタTr2の第2端子(ソース端子及びドレイン端子の一方)と接続され、トランジスタTr3の第1端子(ソース端子及びドレイン端子の他方)はトランジスタTr2のゲート端子及び保持容量Cstの第2端子(一方の端子)と接続される。また、保持容量Cstの第2端子には電源電圧VSHが供給され、当該保持容量Cstの第1端子(他方の端子)には初期化電圧Viniが供給される。トランジスタTr3は、リセット期間及びサンプリング期間においてオン状態になり、Pre-Activate期間においてオフ状態になる。本実施形態においては、このような構成により、1フレーム期間にPre-Activate期間を挿入することができる。
【0129】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。前述した第1実施形態においてはPre-Activate期間にトランジスタTr3をオフ状態にすることによってトランジスタTr2のソース端子及びドレイン端子の電圧をゲート電圧よりも引き落とすものとして説明したが、当該Pre-Activate期間において印加されるVgsの大きさが十分でない場合には、黒白応答を改善する程度が小さい可能性がある。
【0130】
そこで、本実施形態においては、前述した第1実施形態において説明したPre-Activate期間においてトランジスタTr2に印加される電圧Vgsを更に大きくするための構成について説明する。
【0131】
図19は、本実施形態における画素回路の回路構成の一例を示す。
図19においては、
図9と同様の部分については同一参照符号を付してその詳しい説明を省略し、当該
図9と異なる部分について主に説明する。
【0132】
前述した第1実施形態においてはトランジスタTr4~Tr6のゲート端子が1本の制御信号線(制御信号EMを供給する制御信号線)に接続されているものとして説明したが、本実施形態においては、当該制御信号線を分離する。具体的には、
図19に示すように、トランジスタTr4のゲート端子は、制御信号EM1を供給する制御信号線に接続される。また、トランジスタTr5及びTr6のゲート端子は、制御信号EM2を供給する制御信号線に接続される。
【0133】
次に、
図20を参照して、本実施形態における画素回路100の動作の一例について説明する。なお、ここでは上記した
図15と異なる部分について主に説明する。
【0134】
図20に示すように、制御信号EM2は期間t1が開始する前にローからハイに切り替えられるため、期間t1において、トランジスタTr5はオフ状態であり、トランジスタTr6はオン状態である。これによれば、上記したように保持容量CstにはVSH-Viniの電圧が印加される。
【0135】
また、制御信号EM2は期間t1が終了した後にハイからローに切り替えられるため、期間t4において、トランジスタTr5はオン状態であり、トランジスタTr6はオフ状態である。
【0136】
ここで、上記した制御信号EM2によれば、期間t1から期間t4にわたってトランジスタTr6及びTr5が順にオン状態になる。このため、本実施形態においては、トランジスタTr6及びTr5を介して期間t4中にノードn3に初期化電圧Viniが供給される。これによれば、ノードn3に供給された初期化電圧Viniにより、トランジスタTr2のソース端子及びドレイン端子の電圧をゲート電圧よりも引き落とすことができる。
【0137】
前述した第1実施形態においてはゲート信号Scan1を供給するゲート信号線及びノードn1のカップリングによりトランジスタTr2に電圧Vgsが印加されるものとして説明したが、本実施形態においては上記したように初期化電圧ViniによりトランジスタTr2に電圧Vgsが印加される。このように本実施形態においてトランジスタTr2に印加される電圧Vgsは、前述した第1実施形態においてトランジスタTr2に印加される電圧Vgsよりも大きくなる。
【0138】
なお、本実施形態における制御信号EM1は、トランジスタTr4にのみ供給される点以外は本実施形態における制御信号EMと同様である。
【0139】
ところで、詳しい説明については省略するが、本実施形態におけるScan回路は、前述した第1実施形態におけるScan回路と同様に、
図21に示すスタート信号G1VST及びクロック信号G1CLK1~G1CLK3に基づいてゲート信号Scan1~Scan3を出力するように動作する。
【0140】
一方、本実施形態におけるEM回路は、前述した第1実施形態におけるEM回路とは異なり、
図21に示すスタート信号E1VST、クロック信号E1CLK1及びE1CLK2に基づいて制御信号EM1及びEM2を出力するように動作する。
【0141】
また、本実施形態におけるEM回路用シフトレジスタ302は、
図22に示すようにレジスタER1~ER3の各々と接続されたNOT回路302aから制御信号EM1を出力するとともに、当該レジスタER1~ER3の各々及びクロック信号E1CLK2を供給する信号線と接続されたNOR回路302bから制御信号EM2を出力するように構成されている。
【0142】
すなわち、本実施形態においては、前述した第1実施形態におけるEM回路(EM回路用シフトレジスタ302)に対して、クロック信号を供給する信号線1本とNOR回路(端子)1個というシンプルな回路素子の追加で制御信号EM1及びEM2を実現することが可能となる。
【0143】
なお、
図22に示すように、本実施形態におけるScan回路用シフトレジスタ301は、
図17に示すScan回路用シフトレジスタ301と同様であり、変更する必要がない。
【0144】
上記したように本実施形態においては、Pre-Activate期間においてトランジスタTr2の第1端子に初期化電圧Viniが供給される。
【0145】
なお、本実施形態におけるPre-Activate期間にトランジスタTr2の第1端子に初期化電圧Viniを供給することを実現するために、電源電圧VDDEL(第3電圧)を供給する電源線及びノードn1の間に配置されるトランジスタTr4(第3トランジスタ)のオン状態及びオフ状態は制御信号EM1(第1制御信号)に基づいて制御され、ノードn3とノードn4との間に配置されるトランジスタTr5(第4トランジスタ)及び初期化電圧Viniを供給する電源線とノードn4との間に配置されるトランジスタTr6(第5トランジスタ)は制御信号EM2(第2制御信号)に基づいて制御される。
【0146】
この場合、トランジスタTr4は、リセット期間、Pre-Activate期間及びサンプリング期間においてオフ状態であり、発光期間においてオン状態であるように制御される。トランジスタTr5は、リセット期間及びサンプリング期間においてオフ状態であり、Pre-Activate期間及び発光期間においてオン状態であるように制御される。トランジスタTr6は、Pre-Activate期間及び発光期間においてオフ状態であり、リセット期間及びサンプリング期間においてオン状態であるように制御される。
【0147】
本実施形態においては、上記した構成により、前述した第1実施形態の構成と比較してトランジスタTr2に印加される電圧Vgsを大きくすることができるため、黒白応答を更に改善することが可能となる。
【0148】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0149】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0150】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0151】
DSP…表示装置、DA…表示領域、NDA…非表示領域、PX…画素、SP,SP1,SP2,SP3…副画素、AP,AP1,AP2,AP3…開口、LE,LE1,LE2,LE3…下電極、UE,UE1,UE2,UE3…上電極、OR,OR1,OR2,OR3…有機層、SE,SE1,SE2,SE3…封止層、Tr1~Tr7…トランジスタ、Cst…保持容量、SR1~SR4…レジスタ、ER1~ER3…レジスタ、5…リブ、6…隔壁、10…基材、11…絶縁層、12…回路層、13…絶縁層、14…樹脂層、15…封止層、16…樹脂層、20…発光素子、61…下部、62…上部、100…画素回路、301…Scan回路用シフトレジスタ、302…EM回路用シフトレジスタ、302a…NOT回路、302b…NOR回路。