(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009865
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】機器、時計及び機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 39/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G04B39/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084275
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】2023108275641
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】船原 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸一郎
(57)【要約】
【課題】接着剤のはみ出しを抑制できる、機器及び時計を提供すること。
【解決手段】
本発明の実施形態に係る機器(時計1)は、収容部(15)を有するケース(11)と、前記ケース(11)の前記収容部(15)に配されるカバー(13)と、を備え、前記ケース(11)の収容部(15)内の底面部と、前記カバー(13)の前記底面部と対向する面と、のいずれかに、第1凹部(21h)が形成され、前記カバー(13)の外周面に第2凹部(13f)が形成され、接着剤逃げ構造を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有するケースと、
前記ケースの前記収容部に配されるカバーと、
を備え、
前記ケースの収容部内の底面部と、前記カバーの前記底面部と対向する面と、のいずれかに第1凹部が形成され、
前記カバーの外周面に第2凹部が形成された、
接着剤逃げ構造を有する、機器。
【請求項2】
前記第1凹部または前記第2凹部の少なくとも何れかは、接着剤を保持している、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記第1凹部は、前記ケースの前記収容部における前記カバーと対向する側の底面部、または前記カバーにおける前記ケースの底面部に対向する面、のいずれかに形成され、
前記カバーの外周面は、前記カバーの前記第2凹部により、前記収容部の周壁部との間に隙間が形成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
前記カバーは透光性材料で板状に構成され、前記収容部の一方側を覆うとともに、
前記カバーの前記第2凹部は、前記ケースの前記収容部の周壁部の内面に対して隙間を介して対向し前記カバーの厚み方向である第1方向に沿う縦面部と、前記ケースの前記底面部に対向する天井部と、を有する、請求項1に記載の機器。
【請求項5】
前記天井部は、前記縦面部及び前記ケースの前記底面部に対して傾斜し、前記縦面部から前記ケースの表側及び外周側に向けて延出する傾斜面を有する、請求項4に記載の機器。
【請求項6】
前記縦面部は、前記カバーの外周面における第1周面部よりも、前記ケースの内側に位置する、請求項4に記載の機器。
【請求項7】
前記第2凹部は、前記ケースの表裏方向に沿う第1方向の長さが、前記第1方向と直交する前記ケースの周方向の長さよりも大きい、請求項4に記載の機器。
【請求項8】
前記第2凹部は前記第1凹部に対して前記ケースの外周側に離間して配置される、請求項4に記載の機器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の機器と、
前記ケース内に設けられる時計モジュールと、
を備える、時計。
【請求項10】
ケースの収容部内の底面部、またはカバーの下面の少なくとも何れかに形成された第1凹部に接着剤を塗布する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記カバーを前記ケースの前記収容部内に挿入し、接着固定する第2工程と、
を含み、
前記第2工程は、前記第1凹部内からはみ出した前記接着剤が、前記カバーの外周面に形成された第2凹部に入り込む、機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器、時計及び機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計などの機器において、カバーをケースに接着剤により接着固定する構造において、余剰な接着剤を、ケース側の内側面に設けた溝で吸収し、外観面に接着剤がはみ出すのを防止するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ケースの内周面に接着剤を逃がす溝を設ける方法は、ケース側を切削加工する必要が有りコスト増の要因となる。
【0005】
本発明はこうした課題を解決するためのものであり、接着剤のはみ出しを抑制できる、機器、時計及び機器の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る機器は、収容部を有するケースと、前記ケースの前記収容部に配されるカバーと、を備え、前記ケースの収容部内の底面部と、前記カバーの前記底面部と対向する面と、のいずれかに、第1凹部が形成され、前記カバーの外周面に第2凹部が形成され、接着剤逃げ構造を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着剤のはみ出しを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る時計の平面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る時計の一部を示す断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態1に係る時計の一部を示す断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態2に係る時計の一部を示す断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態3に係る時計の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第1実施形態にかかる時計1について、
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る時計1の平面図であり。
図2は時計1の一部を示す断面図である。本実施形態において1例として機器が時計1の文字板に適用された例を示している。図中X、Y、Zは互いに直交する三方向をそれぞれ示す。例えば本実施形態において、時計1は、Z軸に沿う第1方向が時計1の表裏方向に、X軸が時計1の6時と12時を結ぶ縦方向に、Y軸が時計1の3時と9時を結ぶ横方向に、それぞれ沿う姿勢を例として説明するが、これに限られるものではない。
【0010】
図1及び
図2に示す機器としての時計1は、例えば腕時計であり、外郭を構成する時計ケース11と、時計ケース11内に設けられる時計モジュール12と、時計モジュール12の第1方向一方側である表側を覆う透明なカバー13と、時計モジュール12の第1方向他方側である裏側を覆う裏蓋(図示せず)と、を備える。また、時計1は、時計ケース11の外周部の2箇所に接続される時計バンド14や、時計ケース11の外周に配された複数のスイッチを備える。
【0011】
時計ケース11は、時計モジュール12の外周部に配される枠体20を備える。時計ケース11は外周部において互いに対向する2箇所、例えば時計の6時と12時の位置に、それぞれ時計バンド14が取付けられるバンド取付部を備える。
【0012】
枠体20は金属または樹脂材料により形成され、時計モジュール12及びカバー13の外周部を覆う周壁部21を備え、中央部に時計モジュール12及びカバー13が配置される空間となる収容部15が形成されている。本実施形態において枠体20及び収容部15は矩形状に形成される。すなわち、枠体20はX軸に沿う横方向に延びる2辺と、Y軸に沿う縦方向に延びる2辺に囲まれる四角形状に構成される。例えば本実施形態において時計ケース11の内外方向は、周方向及び表裏方向に直交する方向となり、例えば縦方向に沿う辺においては横方向が内外方向となり、横方向に沿う辺においては縦方向が内外方向となる。なお、時計ケース11が円形状の場合には、枠体20及び収容部15の形状も円形状に形成される。
【0013】
周壁部21は、全周に亘って内周方向に突出する突出壁部22を有する。なお、枠体20は複数のケース部材を組み合わせて構成されていてもよい。
【0014】
収容部15は、時計モジュール12及びカバー13が配置される凹部である。収容部15は、表側及び裏側に開口する空間である。例えば枠体20において収容部15を構成する開口の表側はカバー13によって覆われ、裏側は裏蓋によって覆われる。
【0015】
一例として、時計ケース11の収容部15は、カバー13が配置される第1収容部15aと、第1収容部15aの裏側において時計モジュール12が配置される第2収容部15bと、を有する。第1収容部15aと、第2収容部15bと、の間に、枠体20の内周面の一部が内方に突出する突出壁部22が配される。
【0016】
枠体20の内周面には、部品の配置に対応して複数の段差が形成される。例えば枠体20の表面は、時計モジュール12の外周に対向する第1内周面21aと、突出壁部22の裏面であり時計モジュール12の外周縁部の表側に配置される裏縁面21bと、突出壁部22の表面でありカバー13の周縁の裏側に対向する表縁面21cと、カバー13の外周面に対向する第2内周面21dと、外表面21eと、裏面部と、を有する。
【0017】
すなわち、時計ケース11内において、第2収容部15bを形成する第1内周面21aと、突出壁部22の裏面である裏縁面21bとによって時計モジュール支持部が形成され、突出壁部22の表面である表縁面21cと、第1収容部15aを構成する第2内周面21dと、によってカバー支持部が形成される。
【0018】
第1内周面21aは、第1方向に沿って立設される内壁面であり、時計モジュール12の外周部の外側に対向配置される。
【0019】
裏縁面21bは、第1内周面21aの表側端部から、連続し、径方向内側に延出する突出壁部の裏面であり、時計1の厚さ方向である第1方向に直交する平面を形成する。裏縁面21bは、時計モジュール12の周縁の表面に対向配置される。例えば突出壁部22の裏縁面21bは時計モジュール12の第1方向の位置を規制する抑え部となる。突出壁部22の裏縁面21bは対向する部材に応じた段差や凹凸を有していてもよい。
【0020】
表縁面21cは、カバー13の裏面の周縁に対向配置される。表縁面21cの外周側の端縁は、裏縁面21bの外周側の端縁よりも外側に配置される。
【0021】
表縁面21cは、カバー13の周縁部の裏面側を支持する底支持部21fと、底支持部21fの内側において裏側に退避する退避凹部21gと、底支持部21fの外側において裏側に退避し接着剤が配置される保持溝部21h(第1凹部)と、を有する。
【0022】
底支持部21fは、突出壁部22の表面の外周側の領域においてカバー13の裏面に対向する底面部を有する。底支持部21fは、退避凹部21gの底面よりも表側に位置するとともに第1方向に直交する平面部を有する上面(一方の面)を有し、カバー13の裏面に当接、あるいは対向配置することで、カバー13を支持する。例えば底支持部21fは、第2内周面21dの裏側の基端部から内周側に延出し、保持溝部21hによって2箇所に分割される平面を有する。すなわち、底支持部21fに保持溝部21hが形成されることにより、保持溝部21hの内側と外側の領域がそれぞれ、保持溝部21hの底面よりも表側の位置で、カバー13の外周部の裏面側に対向配置される。
【0023】
退避凹部21gは、突出壁部22の表面における時計ケース11の中央側の領域に形成され、底支持部21fよりも裏側に退避する底面を形成する。退避凹部21gの底面は、カバー13の裏面に対して所定の隙間G1をあけて配置される。すなわち、時計ケース11の突出壁部22の表面と、カバー13の裏面との間は、中央側の領域が表裏方向において離間した配置となり、全周が底支持部21fによって囲まれた隙間G1が形成される。
【0024】
保持溝部21hは、底支持部21fの外周側の領域が裏側に凹む周溝であり、枠状の時計ケース11の周方向の全周に亘って連続して形成される。保持溝部21hは接着剤Pを保持し、時計ケース11とカバー13とを接着する接着部を構成する。ここで保持溝部21hの深さ方向である(Z軸に沿う)第1方向の寸法は、隣接して形成される退避凹部21gの深さ方向の寸法よりも、浅く構成される。また、保持溝部21hは、(Z軸に沿う)第1方向に沿う深さ方向よりも、内外方向に沿う溝幅方向の寸法が大きく構成される。
【0025】
なお、保持溝部21hの深さが、退避凹部21gの深さより深くても構わない。また、保持溝部21hの深さが、保持溝部21hの溝幅より大きくても構わない。
【0026】
第2内周面21dは、突出壁部22の表面の外周側の端縁から第1方向に沿って表側に立設される内壁面であり、カバー13の外周部の外側に対向配置される。例えば第2内周面21dは、第1内周面21aよりも外側に位置する。
【0027】
外表面21eは、第2内周面21dの表側端部から外方に延出し、時計ケース11の表側及び外周側の表面を構成する。
【0028】
枠体20の裏面部は、接着や締結により裏蓋に接合される。例えば枠体20の裏面部には、裏蓋の間を気密にする防水リングが装着される。
【0029】
時計モジュール12は、枠体20の収容部15に収容される。例えば時計モジュール12はカバー13の裏側に配置され、収容部15のうち裏側の領域である第1収容部15aに配置される。例えば時計モジュール12は、時刻等の各種情報を表示する表示装置や、駆動部としてのICやアンテナ等の各種電子部品を搭載した回路基板を備える。時計モジュール12は、他に、電池、ソーラー基板、各種センサ部品、その他の時計機能に必要な各種部品を備える。本実施形態において積層配置される表示装置や回路基板は、時計ケース11の形状に対応する例えば矩形状に構成される。
【0030】
カバー13は、例えばSiO2ガラス等の透光性材料で形成された透明部材である。例えばカバー13は第1収容部15の形状に沿う矩形板状の時計ガラスであり、時計モジュール12の表側に配され、時計モジュール12の表側を覆う。例えば、カバー13は時計ケース11の表側の開口の内周縁に支持される。カバー13は、裏側の周面部が、保持溝部21hを有する底支持部21fに対向配置され、保持溝部21hに供給された接着剤Pによって、時計ケース11に接着される。一例として、本実施形態において、カバー13は、時計ケース11の枠体20との間にパッキンを介在し、且つ接着剤Pによって時計ケース11の枠体20に接合される。
【0031】
カバー13は板状に構成され、表面13a及び裏面13bと、外周面13cと、を有する。表面13a及び裏面13bは軸方向に直交する平面を構成する。また表面13aと外周面13cとの間の縁部は、面取り加工により切り欠かれた傾斜面13dを構成する。
【0032】
カバー13の裏面13bと外周面13cとの間の縁部、すなわち外周面13cの裏側の端部であるコーナー部(角部)には、周方向に沿って全周に亘って形成された切り欠きである逃がし溝部13f(第2凹部)が形成されている。すなわち、カバー13の外周面13cは、裏側の一部の領域が表側の領域よりも、時計ケース11の内側に退避する。
【0033】
例えばカバー13の外周面13cは、表側の第1周面部113aと、第1周面部113aよりも内側に退避した第2周面部113bと、第1周面部113aと第2周面部113bとを接続する天井部113cと、を連続して有する。すなわち逃がし溝部13fは、収容部15の周壁部の内面に対して隙間を介して対向する縦面部となる第2周面部113bと、ケース11の底面部に傾斜して対向する天井部113cと、によって形成される。
【0034】
第1周面部113aは、枠体20の第2内周面21dに沿って対向配置される。
【0035】
第2周面部113b(縦面部)は、第2内周面21dに対して、所定の隙間G2を介して離間して対向する。すなわち、第2周面部113bは第1周面部113aよりも内側に退避した位置に配置される。
【0036】
天井部113cは、天井部113cは、第1周面部113aと第2周面部113bとを連続する。天井部は、表裏方向及び内外方向に対して傾斜する。例えば天井部は、2周面部113bから外方及び表側に向けて延出するテーパ状の傾斜面を有する。
【0037】
例えばカバー13は、第2周面部113bにおいて切断した第1方向に直交する断面の面積が、第1周面部113aにおいて切断した第1方向に直交する断面の面積よりも小さく構成される。
【0038】
第1周面部113aと第2周面部113bとは互いに平行な面を有する。例えば周面部113a.113bは、それぞれ、縦横2組の平面部を有する。
【0039】
断面視において、逃がし溝部13fは表側に傾斜辺を有する台形状に構成される。逃がし溝部13fは、接着剤が配置される保持溝部21hとの間に、底支持部21fの一部を挟んで離れて配置されている。すなわち、逃がし溝部13fは、保持溝部21hに対して時計ケース11の外周側に離間して配置される。逃がし溝部13fは表裏方向に沿う第1方向の寸法Lzが、第1方向及び周方向に直交する内外方向の寸法Lxよりも大きく構成される。すなわち、第1方向に沿う溝幅方向の寸法が、内外方向に沿う溝の深さ方向よりも大きく構成される。逃がし溝部13fは保持溝部21hに配される接着剤Pの余剰分が入り込む逃げ部(接着剤逃げ構造部)となる。
【0040】
第1凹部である保持溝部21hまたは第2凹部である逃がし溝部13fの少なくとも何れかは、接着剤を保持する。また、保持溝部21hまたは逃がし溝部13fの少なくとも何れかは、接着剤がはみ出た場合に収容される接着剤逃げ構造を構成する。すなわち、機器としての時計1は、接着剤逃げ構造を有する。
【0041】
例えば保持溝部21hに配される接着剤Pの余剰分が逃がし溝部13fに入り込む場合には、逃がし溝部13fが接着剤逃げ構造となる。あるいは、逃がし溝部13fに配される接着剤Pの接着剤Pの余剰分が保持溝部21hに入り込む場合には保持溝部21hが接着剤逃げ構造となる。
【0042】
例えばカバー13を樹脂ガラスで成型により形成する場合には、金型に樹脂を流し込み成型する際の型に、突起を形成することで、工程数を増やさず逃がし溝部13fを形成できる。また無機ガラスでカバー13を構成する場合、側面研磨の際に、研磨用の工具に突起や段差を設けることにより、同時に逃がし溝部13fを形成できる。
【0043】
時計バンド14は、時計ケース11の外周の対向する2箇所にそれぞれ接続される、一対のバンド部材やバックル等の連結機構を備える。
【0044】
スイッチは、例えばケースの外周部に設けられ、操作者の押し込み操作により、時計モジュール12のモード切替や時刻修正などを行う。
【0045】
以上の様に構成された時計ケース11とカバー13とは、保持溝部21hに配置される接着剤Pにより、カバー13に接着固定される。
【0046】
例えば時計1の組付け工程において、時計ケース11の収容部15の底面の外周側に形成された保持溝部21hに接着剤Pを塗布し、カバー13を時計ケース11の枠体20の表側から挿入し、接着固定する。
【0047】
接着剤Pは例えば弾性を有し温度及び湿度で硬化するシリコン系やウレタン系の樹脂を用いる。
【0048】
すなわち、本実施形態にかかる時計1の製造方法は、ケース11の収容部15内の底面部、またはカバー13の下面の少なくとも何れかに形成された第1凹部としての保持溝部21hに接着剤を塗布する第1工程と、第1工程の後に、カバー13をケース11の収容部15内に挿入し、接着固定する第2工程と、を含む。第2工程において、保持溝部21h内からはみ出した接着剤が、カバー13の外周面に形成された第2凹部である逃がし溝部13fに入り込む。
【0049】
本実施形態に係る機器及び時計1によれば、時計1の組付け工程において保持溝部21hに供給された接着剤Pが、外周側面側にはみ出しても、カバー13の外周面に形成される逃がし溝部13fに接着剤Pが入り込むことで、接着剤Pのケースの外表面へのはみ出しを防止できる。
【0050】
また、逃がし溝部13fは、表側に向けて立設される周面を有する構造であり、例えば面取り形状と比べ、表裏方向の寸法を長くとることにより内外方向の寸法を小さくすることができる。すなわち、外観を損なわずに、逃がし溝の体積を確保できる。例えばカバー13の裏面の角部にC面取りを形成する場合、体積を確保するためには内側に大きく取る必要があるため、外観に影響するが、上記本実施形態においては、表裏方向に沿う第1方向に寸法を確保することで、表側から見た場合に目立たない形状となる。
【0051】
従来のように、ケース側の内周面に、溝を形成する場合には、切削工具を用いて削る加工を追加する必要がある。しかし、例えばカバー13として樹脂ガラスを用いた場合は、金型に樹脂を流し込み成型するため、型に、突起を形成することで、工程数を増やさずに形成できる。またカバー13として無機ガラスを用いた場合には、通常行われる側面研磨において切欠き形状の形成が可能なため、同時に第1凹部を形成できる。したがって、工程数を増やさずに、容易に、接着剤の逃げ部を形成できる。
【0052】
なお、逃がし溝部13fは、保持溝部21hと連続せず、間に底支持部21fの一部を挟んで離間する構成としたことにより、保持溝部21hの容積を抑えて接着剤の必要量を抑えることができ、接着性を確保しながら、余剰の接着剤を吸収できる。すなわち、保持溝部21hに優先的に接着剤を行き渡らせた上で、余剰の接着剤Pを逃がし溝部13fで吸収することができる。
【0053】
また、上記実施形態にかかるカバー13は、外周面のうち裏面側のコーナー部の断面積が切欠きにより小さくなるため、カバー13を時計ケース11の収容部15に挿入して装着する際の組立時の呼び込みになって組み込み作業を案内でき、組付け性を向上できる。
【0054】
さらに第1周面部113aと第2周面部113bとがテーパ状に拡がる天井部113cで連続されることにより、収容部15への挿入を案内でき、組付け性をさらに向上できる。仮に、カバー13の下面(他方の面)を上面(一方の面)と同じように、単純にC面取りにしてしまうと、内側に大きくなるので,C面取り(接着剤)が目立つ様になる。第1実施形態では、接着剤溜まりの容量は切欠きの高さ方向で稼ぐので上面から見た際に目立つことはない。
【0055】
なお、上述した実施形態は例示であり、発明の範囲を限定するものではない。また、複数の実施形態における特徴を組み合わせてもよい。
【0056】
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては、カバー13の裏側のコーナー部に、接着剤Pが配置される保持溝部21hが形成された例を示したが、これに限られるものではない。例えば第2実施形態として
図3に示す時計1Aのカバー13Aのように、外周面13cの軸方向における中央付近において、全周に逃がし溝部213fが形成されていてもよい。
【0057】
カバー13として樹脂ガラスを用いた場合、切削工程において、切削ツール形状を製品側面形状に合わせることで工程増無しで溝を形成することができる。また、カバー13として無機ガラスを用いた場合には、側面研磨時に溝形成が同時に可能なので、工数が増えることはない。砥石の一部に環状の凸部を設けることで可能となる。
【0058】
(他の実施形態1)
上記第1実施形態において、逃がし溝部13fは、天井部113cがテーパ状の傾斜面を有する台形状に形成される例を示したが、これに限られるものではない。他の実施形態1として
図4に示す時計1Bのカバー13Bのように、断面形状が長方形に構成される逃がし溝部313fを備えていてもよい。
【0059】
(他の実施形態2)
また、他の実施形態2として
図5に示す時計1Cのカバー13Cのように、溝の内面が曲面状に形成される逃がし溝部413fを備えていてもよい。
【0060】
(他の実施形態3)
上記第1実施形態、上記第2実施形態及び他の実施形態1、2においては、時計ケース11においてカバー13の裏側に対向する底面部に、接着剤Pが配置される保持溝部21hが形成された例を示したが、これに限られるものではない。他の実施形態3として
図6に示す時計1Dのカバー13Dのように、時計ケース11の底面部に対向する対向面となるカバー13Dの裏面13b側に、第1凹部としての保持溝部513gが形成されていてもよい。保持溝部513gは、カバー13Dの裏面13bが、表側に退避する凹部であり、接着剤Pを保持可能に構成される。なお時計1Dにおいて時計ケース11の底支持部21fには溝が形成されず、平面状に構成される。本実施形態においても、保持溝部513gに供給された接着剤Pの余剰分は逃がし溝部13fに吸収されるため、時計ケース11とカバー13Dとの間からの接着剤Pのはみ出しを抑制できる。
【0061】
また、異なる実施形態を組み合わせてもよく、例えば逃がし溝部が複数箇所に形成されていてもよい。
【0062】
時計1は角型としたが、円形であってもよい。なお、時計1が円形状の場合、内外方向は、径方向となる。すなわち内周側は径方向内側、外周側は径方向外側となる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B、1C、1D…時計、11…時計ケース、12…時計モジュール、13、13B、13C、13D…カバー、13a…表面、13b…裏面、13c…外周面、13d…傾斜面、13f、213f、313f、413f…逃がし溝部(第2凹部)、14…時計バンド、15…収容部、15a…第1収容部、15b…第2収容部、20…枠体、21…周壁部、21a…内周面、21b…裏縁面、21c…表縁面、21d…内周面、21e…外表面、21f…底支持部、21g…退避凹部、21h、513g…保持溝部(第1凹部)、22…突出壁部、113a…周面部、113b…周面部、113c…天井部、G1…隙間、G2…隙間。