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  • 特開-ワイヤハーネス組付体 図1
  • 特開-ワイヤハーネス組付体 図2
  • 特開-ワイヤハーネス組付体 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098685
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス組付体
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20250625BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20250625BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
H02G3/04
B60R16/02 620C
G10K11/16 130
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214999
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 良
(72)【発明者】
【氏名】西尾 幸雄
【テーマコード(参考)】
5D061
5G357
【Fターム(参考)】
5D061BB03
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD14
5G357DG04
(57)【要約】
【課題】防音性を向上することができるワイヤハーネス組付体を提供する。
【解決手段】電線7と、電線7の端末部に電気的に接続されたコネクタ9とを有するワイヤハーネス3と、ベース材11と、ベース材11の一面側に一体に設けられるカバー材13とを有し、ベース材11とカバー材13との間にワイヤハーネス3が配置される防音部材5とを備えたワイヤハーネス組付体1において、ベース材11とカバー材13とのうち少なくともいずれか一方に、複数の貫通孔15を設け、複数の貫通孔15が、単位面積当たりの開口率が異なる複数の開口領域17を有した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、前記電線の端末部に電気的に接続されたコネクタとを有するワイヤハーネスと、
ベース材と、前記ベース材の一面側に一体に設けられるカバー材とを有し、前記ベース材と前記カバー材との間に前記ワイヤハーネスが配置される防音部材と、
を備え、
前記ベース材と前記カバー材とのうち少なくともいずれか一方には、複数の貫通孔が設けられ、
複数の前記貫通孔は、単位面積当たりの開口率が異なる複数の開口領域を有するワイヤハーネス組付体。
【請求項2】
複数の前記開口領域は、前記貫通孔の形状と、隣り合う前記貫通孔の間隔とのうち少なくともいずれか一方が異なる請求項1に記載のワイヤハーネス組付体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス組付体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネス組付体としては、電線と、電線の端末部に電気的に接続されたコネクタとを有するワイヤハーネスを備えている。また、ベース材としての多孔質体と、多孔質体の一面側に一体に設けられるカバー材としてのシート状体とを有し、多孔質体とシート状体との間にワイヤハーネスが配置される防音部材を備えたものが知られている(特許文献1参照)。このワイヤハーネス組付体では、シート状体に、複数の貫通孔が設けられている。シート状体に複数の貫通孔を設けることにより、貫通孔を設けていないシート状体に比較して、幅広い周波数領域で吸音することができ、防音性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-67085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のようなワイヤハーネス組付体では、防音部材の全面に対して、複数の貫通孔が、均一に設けられている。複数の貫通孔が均一であると、防音部材のどの位置においても、吸音できる周波数領域が同じである。このため、従来の防音部材では、吸音できる周波数領域に限界があり、さらなる防音性の向上が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、防音性を向上することができるワイヤハーネス組付体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るワイヤハーネス組付体は、電線と、前記電線の端末部に電気的に接続されたコネクタとを有するワイヤハーネスと、ベース材と、前記ベース材の一面側に一体に設けられるカバー材とを有し、前記ベース材と前記カバー材との間に前記ワイヤハーネスが配置される防音部材と、を備え、前記ベース材と前記カバー材とのうち少なくともいずれか一方には、複数の貫通孔が設けられ、複数の前記貫通孔は、単位面積当たりの開口率が異なる複数の開口領域を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防音性を向上することができるワイヤハーネス組付体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るワイヤハーネス組付体の斜視図である。
図2】本実施形態に係るワイヤハーネス組付体の分解斜視図である。
図3】本実施形態に係るワイヤハーネス組付体のカバー材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本実施形態に係るワイヤハーネス組付体について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネス組付体1は、例えば、車両に搭載された電源と機器との間、或いは機器と機器との間など、電気部品(不図示)の間を電気的に接続するワイヤハーネス3に適用される。ワイヤハーネス3は、一体に組付けられる防音部材5の内部に、所定の形状で配置される。ワイヤハーネス組付体1は、例えば、車両のドアトリムなどの対象部材(不図示)に組付けられる。対象部材に組付けられた防音部材5は、例えば、外部から車室内へ伝播される音を吸収し、車室内の静粛性を保持する。
【0011】
図1図3に示すように、ワイヤハーネス組付体1は、ワイヤハーネス3と、防音部材5とを備えている。
【0012】
図1図3に示すように、ワイヤハーネス3は、電線7と、コネクタ9とを備えている。
【0013】
電線7は、例えば、導電性材料からなる芯線の外周を絶縁被覆で被覆した被覆電線からなり、複数(ここでは4本)用いられる。なお、電線7は、複数の芯線が並列に配置された状態で、外周を絶縁被覆で被覆されたフラットケーブルであってもよい。複数の電線7の両側の端末部は、それぞれ防音部材5から露出して配置される。複数の電線7の一端側の端末部は、1箇所に集約されて配置され、他端側の端末部は、それぞれ分岐するように配置される。
【0014】
コネクタ9は、例えば、合成樹脂などの絶縁性材料からなるハウジング(不図示)と、導電性材料からなる端子(不図示)とを備えている。ハウジングは、例えば、車両に搭載された電気部品に電気的に接続された相手コネクタ(不図示)の相手ハウジング(不図示)と嵌合可能となっている。端子は、電線7の端末部に電気的に接続され、ハウジングに収容されている。端子は、ハウジングと相手ハウジングとが嵌合することにより、相手ハウジングに収容された相手端子(不図示)と電気的に接続される。コネクタ9は、防音部材5から露出する複数の電線7の端末部に対応して、複数(ここでは5つ)用いられる。
【0015】
図1図3に示すように、防音部材5は、ベース材11と、カバー材13とを備えている。
【0016】
ベース材11は、例えば、ウレタンなどの発泡体、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル系繊維などの不織布からなり、防音性や断熱性を有している。ベース材11は、大きさが、対象部材の範囲内に配置されるように設定されたシート状に形成され、圧入などの固定手段(不図示)によって、対象部材に組付けられる。ベース材11には、一面側に、ワイヤハーネス3の複数(ここでは4本)の電線7が、所定の形状で配置される。ベース材11に配置された複数の電線7の端末部は、それぞれの電線7が所定の長さを有してベース材11の外縁から露出し、コネクタ9がベース材11の外部に配置される。
【0017】
カバー材13は、例えば、塩化ビニル、ポリエチレンなどのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エラストマーなどの独立発泡体や連続発泡体などからなり、防音性や断熱性を有している。カバー材13は、大きさが、対象部材の範囲内に配置されるように、ベース材11と同等に設定され、厚さが、ベース材11より薄く設定されたシート状に形成されている。カバー材13は、ベース材11との対向面に、接着剤が塗布されており、ベース材11と複数の電線7を挟み込むように、ベース材11の一面側に貼り付けられる。ベース材11にカバー材13が一体に貼り付けられた状態では、ベース材11とカバー材13との内部に、所定の形状に配置された複数の電線7が保持された状態となる。このため、防音部材5によって、ワイヤハーネス3の電線7を保護することができると共に、電線7の配置形状を保持することができる。
【0018】
防音部材5から露出するコネクタ9は、ワイヤハーネス組付体1を対象部材に組付けた状態で、相手コネクタに嵌合される。このとき、電線7は、所定の長さを有して防音部材5の外縁から露出しているので、コネクタ9を自由に動かすことができ、コネクタ9と相手コネクタとの嵌合を行い易くされている。コネクタ9と相手コネクタとの嵌合により、電気部品の間が電気的に接続される。
【0019】
このようなワイヤハーネス組付体1の防音部材5において、カバー材13には、複数の貫通孔15が設けられている。カバー材13に複数の貫通孔15を設けることにより、貫通孔15が設けられていないカバー材13に比較して、幅広い周波数領域で吸音することができ、防音性を向上することができる。防音部材5の一面側の全面積に対して、複数の貫通孔15の開口面積が小さくなると、低周波領域での吸音性が高くなり、複数の貫通孔15の開口面積が大きくなると、高周波領域での吸音性が高くなることが知られている。このため、狙いの周波数領域に合わせて、複数の貫通孔15の開口面積を設定することにより、所望の防音性を得ることができる。
【0020】
ここで、従来のワイヤハーネス組付体では、防音部材5の一面側の全面に対して、複数の貫通孔15が、同一形状に設けられ、隣り合う貫通孔15,15の間隔が、同一に設定されていた。このため、従来のワイヤハーネス組付体では、複数の貫通孔15が、防音部材5のどの部分においても、単位面積当たりの開口率が等しい開口領域を形成していた。ここで、単位面積当たりの開口率とは、所定の面積に対して、貫通孔15の開口面積がどれだけ占有しているかを示す割合である。すなわち、単位面積当たりの開口率は、所定の範囲に配置された貫通孔15の開口面積の合計を、所定の範囲の面積で割ることによって、求めることができる。このような従来のワイヤハーネス組付体では、防音部材5のどの部分においても、吸音できる周波数領域が同じであり、吸音できる周波数領域に限界があった。
【0021】
そこで、ワイヤハーネス組付体1では、複数の貫通孔15が、単位面積当たりの開口率が異なる複数の開口領域17を有する。なお、以下では、カバー材13に複数の貫通孔15が設けられているものとして説明するが、ベース材11に複数の貫通孔15を設けてもよい。
【0022】
図1図3に示すように、カバー材13の全面において、複数の貫通孔15は、単位面積当たりの開口率が異なる複数の開口領域17を有している。ここでは、例えば、開口領域17Aと、開口領域17Bと、開口領域17Cとを有している。開口領域17Aでは、大径で円形の貫通孔15が複数設けられ、隣り合う貫通孔15,15の間隔が狭く設定されている。開口領域17Bでは、小径で円形の貫通孔15が複数設けられ、隣り合う貫通孔15,15の間隔が広く設定されている。開口領域17Cでは、長方形状の貫通孔15が1つ設けられている。
【0023】
ここでは、単位面積当たりの開口率が最も高いのは、開口領域17Cとなっている。単位面積当たりの開口率が次に高いのは、開口領域17Aとなっている。単位面積当たりの開口率が最も低いのは、開口領域17Bとなっている。このため、それぞれの開口領域17では、吸音できる周波数領域が異なっている。複数の開口領域17を有する防音部材5では、複数の開口領域17が位置する部分で異なる周波数領域の音を吸収することができ、吸音できる周波数領域が幅広くなっている。このため、防音部材5によって、幅広い周波数領域で吸音することができ、防音性を向上することができる。加えて、複数の開口領域17では、貫通孔15の形状や隣り合う貫通孔15,15の間隔が異なっているので、簡易な構造で、開口領域17における単位面積当たりの開口率を異ならせることができる。
【0024】
なお、防音部材5の内部に配置されるワイヤハーネス3の電線7は、複数の貫通孔15を避けるように配置されることが好ましい。複数の貫通孔15を避けるように電線7を配置することにより、防音部材5から電線7が露出することがなく、防音部材5によって、電線7を安定して保護することができる。
【0025】
このようなワイヤハーネス組付体1では、電線7と、電線7の端末部に電気的に接続されたコネクタ9とを有するワイヤハーネス3を備えている。また、ベース材11と、ベース材11の一面側に一体に設けられるカバー材13とを有し、ベース材11とカバー材13との間にワイヤハーネス3が配置される防音部材5を備えている。さらに、ベース材11とカバー材13とのうち少なくともいずれか一方には、複数の貫通孔15が設けられている。そして、複数の貫通孔15は、単位面積当たりの開口率が異なる複数の開口領域17を有する。
【0026】
複数の貫通孔15が複数の開口領域17を有する防音部材5では、複数の開口領域17が位置する部分で異なる周波数領域の音を吸収することができ、吸音できる周波数領域が幅広くなっている。このため、防音部材5によって、幅広い周波数領域で吸音することができ、防音性を向上することができる。
【0027】
従って、このようなワイヤハーネス組付体1では、防音性を向上することができる。
【0028】
また、複数の開口領域17は、貫通孔15の形状と、隣り合う貫通孔15,15の間隔とのうち少なくともいずれか一方が異なる。
【0029】
このため、簡易な構造で、開口領域17における単位面積当たりの開口率を異ならせることができる。
【0030】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0031】
例えば、本実施形態に係るワイヤハーネス組付体では、貫通孔の形状が、真円形状や四角形状となっているが、これに限らず、例えば、貫通孔の形状を、楕円形状や三角形状などの多角形状など、どのような形状にしてもよい。例えば、貫通孔の形状を、四角形状とした場合には、貫通孔の形状を真円形状とし、隣り合う貫通孔を同一間隔とした場合に比較して、単位面積当たりの開口率を高くすることができる。
【0032】
また、複数の開口領域は、防音部材において、3箇所となっているが、これに限らず、複数の開口領域を、防音部材において、2箇所、或いは4箇所以上としてもよい。
【0033】
また、複数の貫通孔は、カバー材に設けられているが、これに限らず、複数の貫通孔を、ベース材に設けてもよい。この場合には、カバー材に、複数の貫通孔を設けなくてもよいが、吸音できる周波数領域を調整するように、カバー材に、貫通孔を設けてもよい。加えて、吸音する周波数領域に合わせて、カバー材やベース材の厚さなどを調整してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ワイヤハーネス組付体
3 ワイヤハーネス
5 防音部材
7 電線
9 コネクタ
11 ベース材
13 カバー材
15 貫通孔
17 開口領域
図1
図2
図3