(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009872
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電池用集電体、電池用電極、電池用集電体の製造方法及び電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20250109BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20250109BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/64 A
H01M4/139
H01M4/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086449
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2023108426
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000231202
【氏名又は名称】日本黒鉛工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】辻 宣浩
(72)【発明者】
【氏名】村田 学
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 享大
(72)【発明者】
【氏名】川上 尚
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 和人
(72)【発明者】
【氏名】今井 康人
(72)【発明者】
【氏名】小島 嘉朗
(72)【発明者】
【氏名】向井 瞳
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB01
5H017BB08
5H017BB12
5H017BB14
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH01
5H017HH08
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA04
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA07
5H050GA27
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】本発明は、電極活物質層の集電体への付着強度を大きくすることができる電池用集電体を提供する。
【解決手段】本発明の電池用集電体は、導電体層と、前記導電体層上に設けられたプライマーコート層とを備え、前記プライマーコート層は、結晶性樹脂とカーボン粒子との混合物層であり、単位面積当たりの前記プライマーコート層の質量が0.1g/m
2以上5g/m
2より小さく、前記プライマーコート層に含まれる結晶性樹脂の融点は、200℃以下であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体層と、前記導電体層上に設けられたプライマーコート層とを備え、
前記プライマーコート層は、結晶性樹脂とカーボン粒子との混合物層であり、
単位面積当たりの前記プライマーコート層の質量が0.1g/m2以上5g/m2より小さく、
前記プライマーコート層に含まれる結晶性樹脂の融点は、200℃以下であることを特徴とする電池用集電体。
【請求項2】
前記プライマーコート層は、結晶性樹脂100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下のカーボン粒子を含む請求項1に記載の電池用集電体。
【請求項3】
前記プライマーコート層は、前記プライマーコート層の前記導電体層側の面の実質的全体が前記導電体層と接触するように設けられた請求項1に記載の電池用集電体。
【請求項4】
前記導電体層は、金属箔である請求項1に記載の電池用集電体。
【請求項5】
前記プライマーコート層に含まれる結晶性樹脂は、ポリオレフィンである請求項1に記載の電池用集電体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の集電体と、前記プライマーコート層上に設けられた電極活物質層とを含む電池用電極。
【請求項7】
水溶性有機化合物又は液状有機化合物と水とを含む分散媒に結晶性樹脂粒子及びカーボン粒子が分散している分散液を導電体層上に塗布し、塗布膜を乾燥させることによりプライマーコート層を形成するステップを含む電池用集電体の製造方法。
【請求項8】
前記分散液に含まれる前記結晶性樹脂粒子は、エマルション由来の樹脂粒子である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1つに記載の集電体に電極活物質層を圧接させることにより前記集電体と前記電極活物質層とを接合する接合ステップを含む電池用電極の製造方法。
【請求項10】
前記接合ステップは、80℃以上200℃以下の温度で行われる請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用集電体、電池用電極、電池用集電体の製造方法及び電池用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などに含まれる電極は、通常、バインダーが溶解している有機溶媒中に電極活物質が分散しているスラリーを集電体上に塗工し、塗布膜を乾燥させることにより製造される。しかし、塗布膜を乾燥させるために多くのエネルギーを使うことからCO2排出量が大きいという問題がある。塗工以外の方法として、ホットプレスにより電極活物質層を集電体に固着する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ホットプレスにより電極活物質層を集電体に固着する方法では、電極活物質層の集電体への付着性が弱い場合がある。この付着性が弱いと、電極活物質層と集電体との界面抵抗が大きくなり電池の内部抵抗が大きくなる場合がある、また、集電体から電極活物質層が剥離し脱離する場合がある。一方、塗工法を用いて集電体上に電極活物質層を形成した場合でも電極活物質層の集電体への付着性が弱い場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電極活物質層の集電体への付着強度を大きくすることができる電池用集電体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、導電体層と、前記導電体層上に設けられたプライマーコート層とを備え、前記プライマーコート層は、結晶性樹脂とカーボン粒子との混合物層であり、単位面積当たりの前記プライマーコート層の質量が0.1g/m2以上5g/m2より小さく、前記プライマーコート層に含まれる結晶性樹脂の融点は、200℃以下であることを特徴とする電池用集電体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電池用集電体を用いると、電極活物質層の集電体への付着強度を大きくすることができる。このことは、本願の発明者等が行った実験により明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の電池用集電体の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の電池用電極の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の複数の実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0009】
図1は本実施形態の電池用集電体の概略断面図であり、
図2は本実施形態の電池用電極の概略断面図である。
本実施形態の電池用集電体10は、導電体層2と、導電体層2上に設けられたプライマーコート層3とを備え、プライマーコート層3は、結晶性樹脂とカーボン粒子との混合物層であり、単位面積当たりのプライマーコート層3の質量が0.1g/m
2以上5g/m
2より小さく、プライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂の融点は、200℃以下である。
本実施形態の電池用電極20は、本実施形態の電池用集電体10と、プライマーコート層3上に設けられた電極活物質層5とを含む。
【0010】
電池用集電体10は、電池の電極用の集電体であり、電極活物質層5と電池端子との間の導電経路となる。前記電池は、特に限定されないが、リチウムイオン電池であることが好ましい。また、電池用集電体10は、電池の正極に用いられるものであってもよく、電池の負極に用いられるものであってもよい。また、電池用集電体10は、電極活物質層5のプラス電荷またはマイナス電荷を集電するための集電体であってもよい。
【0011】
導電体層2は、電池用集電体10の主要部材であり、電極活物質層5と電池端子との間の導電経路となる。導電体層2は、例えば金属箔であり、より具体的には、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス鋼箔、ニッケル箔などである。導電体層2は、プライマーコート層3を形成する前にコロナ放電処理が施されていてもよい。このことにより、導電体層2の表面の親水性を向上させることができ、プライマーコート層3の形成において水性分散媒を用いることができる。
【0012】
プライマーコート層3は、導電体層2上に設けられる層である。また、電池用電極20においては、プライマーコート層3は、導電体層2と電極活物質層5との間に位置する。
プライマーコート層3は、200℃以下の融点を有する結晶性樹脂とカーボン粒子との混合物層である。プライマーコート層3に含まれるカーボン粒子が導電体層2と電極活物質層5との間の導電経路となる。このため、導電体層2と電極活物質層5との間の電気抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0013】
プライマーコート層3に含まれるカーボン粒子は、例えば、黒鉛粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等の導電材料及びこれらのうち2つ以上の混合物などである。プライマーコート層3に含まれるカーボン粒子の平均粒径D50は、例えば50μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。
【0014】
プライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂(結晶性高分子)は、プライマーコート層3のバインダーとしての機能を有する。結晶性樹脂(結晶性高分子)は、結晶性を有する高分子であり、ガラス転移温度と融点とを有する。また、プライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂の融点は、200℃以下である。プライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂の融点は、180℃以下であってもよく、160℃以下であってもよい。
【0015】
プライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂は、例えば、ポリオレフィンであり、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などである。また、プライマーコート層3は、これらの樹脂のうち少なくとも2つを混合したものを含んでもよい。
プライマーコート層3における結晶性樹脂の大きさ又は厚さは、0.01μm以上40μm以下であり、好ましくは0.01μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上20μm以下である。
【0016】
プライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂は、水性分散媒中に結晶性樹脂粒子が分散しているエマルション由来の樹脂であってもよい。エマルションに含まれる結晶性樹脂粒子は粒子径が小さいため、プライマーコート層3を均質化することができる。
また、プライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂は、結晶性樹脂の粉末由来の樹脂であってもよい。
【0017】
プライマーコート層3は、結晶性樹脂100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下のカーボン粒子を含むことができ、好ましくは、120質量部以上800質量部以下のカーボン粒子を含むことができ、さらに好ましくは130質量部以上500質量部以下のカーボン粒子を含むことができる。プライマーコート層3がカーボン粒子を含むことにより、電池用電極20の内部抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0018】
単位面積当たりのプライマーコート層3の質量(目付量)は、0.1g/m2以上5g/m2より小さく、好ましくは、0.3g/m2以上4.0g/m2以下であり、好ましくは0.5g/m2以上3.0g/m2以下である。プライマーコート層3の質量を0.1g/m2以上とすることにより、導電体層2に対する電極活物質層5の付着強度を大きくすることができる。また、プライマーコート層3の質量を5g/m2より小さくすることにより、電池用電極20の内部抵抗が大きくなることを抑制することができる。
プライマーコート層3は、実質的に均等な厚みを有する層であってもよい。また、プライマーコート層3は、プライマーコート層3の導電体層側の面の実質的全体が導電体層2と接触するように設けられてもよい。
【0019】
プライマーコート層3は、例えば、分散媒に結晶性樹脂粒子及びカーボン粒子が分散している分散液(プライマーコート層用塗布液)を導電体層2上に塗布し、塗布膜を乾燥させることにより形成することができる。プライマーコート層用塗布液を導電体層2上に塗布する方法は特に限定されないが、例えば、グラビアコーティング法である。
【0020】
プライマーコート層用塗布液(分散液)の分散媒は、水であってもよく、水と水溶性有機化合物とを含む水性分散媒であってもよく、水と液状有機化合物とを含む分散媒であってもよい。プライマーコート層用塗布液が水溶性有機化合物又は液状有機化合物を含むことにより、結晶性樹脂粒子が凝集することを抑制することができ、プライマーコート層3の均質性を向上させることができる。このことにより、導電体層2に対する電極活物質層5の付着強度を大きくすることができる。水溶性有機化合物又は液状有機化合物は、70℃以上の沸点を有する有機化合物であってもよく、100℃以上の沸点を有する有機化合物であってもよく、130℃以上の沸点を有する有機化合物であってもよく、150℃以上の沸点を有する有機化合物であってもよく、180℃以上の沸点を有する有機化合物であってもよい。
【0021】
プライマーコート層用塗布液に含まれる水溶性有機化合物又は液状有機化合物は、例えば、イソプロピルアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノン、テトラヒドロナフタレン、ノルマル-ドデカンなどである。プライマーコート層用塗布液は、これらの有機化合物のうち2つ以上を含んでもよい。
プライマーコート層用塗布液における有機化合物の割合は、例えば0.5質量パーセント以上85質量パーセント以下であり、好ましくは0.5質量パーセント以上55質量パーセント以下であり、さらに好ましくは1.0質量パーセント以上35質量パーセント以下である。
【0022】
プライマーコート層用塗布液に含まれる結晶性樹脂は、水性分散媒中に結晶性樹脂粒子が分散しているエマルション由来の樹脂であってもよい。また、プライマーコート層用塗布液に含まれる結晶性樹脂は、結晶性樹脂の粉末由来の樹脂であってもよい。
プライマーコート層用塗布液に含まれるカーボン粒子は、例えば、黒鉛粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等の導電材料である、また、プライマーコート層用塗布液は、これらから選択される2種類以上のカーボン粒子を含んでもよい。
【0023】
プライマーコート層3上に形成される電極活物質層5(電池用電極20に含まれる電極活物質層5)は、正極活物質層であってもよく、負極活物質層であってもよい。電極活物質層5は、多孔性を有することができ、電極活物質粒子とバインダーとを含むことができる。また、必要に応じて電極活物質層5は導電材を有することができる。また、電極活物質層5は、電極活物質と固体電解質の両方を含む層(全固体電池用の電極活物質層)であってもよい。
リチウムイオン電池の正極の場合、電極活物質は、例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどである。電極活物質粒子の平均粒径は、例えば0.1μm以上50μm以下である。
【0024】
電極活物質層5は、電極活物質層用ペーストを塗工して形成した塗膜を乾燥させたものであってもよい。また、電極活物質層5は、集電体10に電極活物質層5を圧接させることにより、集電体10に接合したもの(例えば、ドライプロセスで作製した電池用電極、全固体電池用電極など)であってもよい。この場合、電池用電極20の製造方法は、集電体10に電極活物質層5を圧接させることにより集電体10と電極活物質層とを接合するステップを含むことができる。この接合ステップは、80℃以上200℃以下の温度で行うことができ、80℃以上180℃以下の温度で行うことが好ましい。また、接合ステップは、80℃以上の温度でプライマーコート層3に含まれる結晶性樹脂の融点よりも高い温度で行うことができる。
【0025】
電池用正極及びリチウムイオン電池の作製
実施例1~3、比較例1~3の電池用正極及びリチウムイオン電池を作製した。表1に各リチウムイオン電池に含まれる正極のプライマーコート層の作製に用いた塗料の組成(質量部で記載)及び単位面積当たりのプライマーコート層の質量(目付量)を示している。
【0026】
【0027】
[実施例1]
500質量部の水と、300質量部のジエチレングリコールモノメチルエーテルと、150質量部のカーボン粒子(黒鉛粒子+カーボンブラック)と、100質量部の水性ポリエチレンエマルション(固形分濃度:30wt%)とを混合してプライマーコート層用塗料を調製した。単位面積当たりのプライマーコート層の質量(目付量)が1.0g/m2となるように、コロナ放電処理済みのアルミニウム箔上にプライマーコート層用塗料をグラビアコーティング法を用いて塗布した。そして塗布膜を乾燥させることによりプライマーコート層を形成し、実施例1の集電体を作製した。
【0028】
正極活物質であるニッケルコバルトマンガン酸リチウム(三元系NCM811、平均粒径10μm)とバインダーと溶剤とを混合して正極活物質ペーストを調製したのちロールに通し乾燥し正極活物質シートを作製した。実施例1の集電体のプライマーコート層上に作製した正極活物質シートを乗せ、ロールラミネーターで圧延し実施例1の電池用正極を作製した。ロールラミネートの条件は線圧34kg/cmで温度100℃である。
【0029】
負極活物質である黒鉛粒子と水分散媒とを混合することにより負極活物質ペーストを調製し、負極活物質ペーストを銅箔上に塗工し乾燥させることにより負極活物質層を形成した。このようにして、電池用負極を作製した。
実施例1の電池用正極、作製した電池用負極、セパレータ、電解液を用いて実施例1のコイン型リチウムイオン電池を作製した。
【0030】
[実施例2]
800質量部の水と、150質量部のカーボン粒子(黒鉛粒子+カーボンブラック)と、100質量部の水性ポリエチレンエマルション(固形分濃度:30wt%)とを混合してプライマーコート層用塗料を調製したこと以外は実施例1の電池用正極及びリチウムイオン電池と同様に実施例2の電池用正極及びリチウムイオン電池を作製した。
【0031】
[実施例3]
800質量部の水と、150質量部のカーボン粒子(黒鉛粒子+カーボンブラック)と、100質量部のポリエチレン粒子(平均粒径:約10μm)とを混合してプライマーコート層用塗料を調製したこと以外は実施例1の電池用正極及びリチウムイオン電池と同様に実施例3の電池用正極及びリチウムイオン電池を作製した。
【0032】
[比較例1]
プライマーコート層の形成において、単位面積当たりのプライマーコート層の質量(目付量)が5.0g/m2となるように、コロナ放電処理済みのアルミニウム箔上にプライマーコート層用塗料をグラビアコーティング法を用いて塗布したこと以外は実施例1の電池用正極及びリチウムイオン電池と同様に比較例1の電池用正極及びリチウムイオン電池を作製した。
【0033】
[比較例2]
800質量部の水と、150質量部のカーボン粒子(黒鉛粒子+カーボンブラック)と、100質量部の水性アクリルエマルション(固形分濃度:40wt%)とを混合してプライマーコート層用塗料を調製したこと以外は実施例1の電池用正極及びリチウムイオン電池と同様に比較例2の電池用正極及びリチウムイオン電池を作製した。
【0034】
[比較例3]
800質量部の水と、150質量部のカーボン粒子(黒鉛粒子+カーボンブラック)と、100質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)とを混合してプライマーコート層用塗料を調製したこと以外は実施例1の電池用正極及びリチウムイオン電池と同様に比較例3の電池用正極及びリチウムイオン電池を作製した。
【0035】
剥離強度試験
180度剥離強度試験機を用いてピール強度の測定を行い、実施例1~3、比較例1~3の電池用正極に含まれるアルミニウム箔と、正極活物質シートとの間の付着強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。表1では、アルミニウム箔と正極活物質シートとの間の付着強度が大きく剥離強度試験中に正極活物質シートが切れた電池用正極の評価を「◎」とし、ピール強度が0.4N/cm以上であった電池用電極の評価を「〇」とし、ピール強度が0.4N/cm未満であった電池用電極の評価を「×」とした。
【0036】
プライマーコート層がポリエチレンを含む実施例1~3、比較例1の電池用電極の付着強度の評価は「◎」又は「〇」であったのに対し、プライマーコート層がアクリル樹脂を含む比較例2の電池用電極の付着強度の評価及びプライマーコート層がCMCを含む比較例3の電池用電極の付着強度の評価は、「×」であった。このことから、プライマーコート層がポリエチレンを含むことにより正極活物質シートの集電体に対する付着強度を大きくすることができることがわかった。
【0037】
水溶性有機化合物であるジエチレングリコールモノメチルエーテルと水とを含むプライマーコート層用塗料を用いて作製したプライマーコート層を含む実施例1、比較例1の電池用電極の付着強度の評価は「◎」であったのに対し、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを含まないプライマーコート層用塗料を用いて作製したプライマーコート層を含む実施例2、3の電池用電極の付着強度の評価は「〇」であった。このことから、水溶性有機化合物と水とを含むプライマーコート層用塗料を用いてプライマーコート層を形成することにより、正極活物質シートの集電体に対する付着強度を大きくすることができることがわかった。
【0038】
充放電サイクル試験
実施例1~3、比較例1~3の各リチウムイオン電池を用いて充放電サイクルを100サイクル行い、各リチウムイオン電池の充放電サイクル特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。表1では、100サイクル目の充放電効率が80%以上であったリチウムイオン電池の評価を「〇」で示し、100サイクル目の充放電効率が80%以下であったリチウムイオン電池の評価を「×」で示した。
実施例1~3、比較例2、3のリチウムイオン電池の評価は「〇」であり、これらの電池は高い充放電効率を有することがわかった。
比較例1のリチウムイオン電池の評価は「×」であった。これは、単位面積当たりのプライマーコート層の質量が大きくポリエチレン粒子の密度が高いために、正極の内部抵抗が高くなったためと考えられる。
【符号の説明】
【0039】
2:導電体層 3:プライマーコート層 5:電極活物質層 10:電池用集電体 20:電池用電極