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特開2025-9876タービンブレードの制振システム用の可撓レッグ付きダンパ要素
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009876
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】タービンブレードの制振システム用の可撓レッグ付きダンパ要素
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/16 20060101AFI20250109BHJP
   F01D 25/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F01D5/16
F01D25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088770
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】18/343,953
(32)【優先日】2023-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー、ザカリー ジョン
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202BA02
3G202BB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積み重ねられた複数のダンパ要素を含むダンパ要素および振動減衰システムを提供する。
【解決手段】ダンパ要素は、タービンの回転ブレードの本体開口部に使用することができる。ダンパ要素は、少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材と、ヘッド部材から延びる複数の可撓レッグとを含む。各可撓レッグは、末端部を有する半径方向に延びる本体部を含み、末端部は、外側端面と内側端面とを有する。回転ブレードの回転によって引き起こされる遠心力によって、隣接するダンパ要素170のヘッド部材が、複数の可撓レッグの外側端面を本体開口部160の内側面と摩擦係合させて振動を減衰させる。特定の実施形態では、細長い本体が、1以上のダンパ要素のヘッド部材の開口部を通って延びることがある。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(108)の回転ブレード(114)の本体開口部(160)に設けられた振動減衰システム(120、320)用のダンパ要素(170、370)であって、
少なくとも部分的に傾斜した表面(174、204、226、344)を有するヘッド部材(172、202、224、342)と、
ヘッド部材(172、202、224、342)から延びる 複数の可撓レッグ(180)であって、各可撓レッグ(180)は、端部(184)を有する半径方向に延びる本体部(182)を含み、端部(184)は、外側端面(186)および内側端面(188)を有する、複数の可撓レッグ(180)と、を備える、ダンパ要素(170、370)。
【請求項2】
少なくとも部分的に傾斜した表面(174、204、226、344)が、本体開口部(160)の内面(162)に対して25°と55°との間の範囲の角度を有し、複数の可撓レッグ(180)の内側端面(188)が、本体開口部(160)の内面(162)に対して25°と55°との間の範囲の角度を有する、請求項1に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項3】
ヘッド部材(172、202、224、342)及び集合的に、複数の可撓レッグ(180)の半径方向に延びる本体部(182)は、それぞれ第1の外径を有し、複数の可撓レッグ(180)の外側端面(186)は、集合的に、第1の外径よりも大きい第2の外径を画定する、請求項1に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項4】
本体開口部(160)が、第3の内径を有する内面(162)を有し、第2の外径が第3の内径よりも小さく、それにより、弛緩状態において、複数の可撓レッグ(180)が本体開口部(160)内を自由に通過する、請求項3に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項5】
複数の可撓レッグ(180)の内側端面(188)が、隣接するダンパ要素(170、370)のヘッド部材(172、202、224、342)の少なくとも部分的に傾斜した表面(174、204、226、344)を受けるように構成され、
所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレード(114)の回転によって引き起こされる遠心力の影響下で、隣接するダンパ要素(170、370)のヘッド部材(172、202、224、342)が、複数の可撓レッグ(180)の外側端面(186)を本体開口部(160)の内側面(162)と摩擦係合させて振動を減衰させる、請求項3に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項6】
各可撓レッグ(180)の外側端面(186)は、線において本体開口部(160)の内側面(162)と摩擦係合する、請求項5に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項7】
各可撓レッグ(180)の外側端面(186)は、複数の可撓レッグ(180)の弛緩状態において、本体開口部(160)の内面(162)と平行である、請求項1に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項8】
複数の可撓レッグ(180)の隣接する半径方向に延びる本体部(182)が、丸みを帯びた半径方向外側の範囲(192)を有するスロット(190)をその間に画定する、請求項1に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項9】
少なくとも部分的に傾斜した表面(174、204、226、344)を有するヘッド部材(172、202、224、342)が、錐体形状を有する、請求項1に記載のダンパ要素(170、370)。
【請求項10】
回転ブレード(114)のための振動減衰システム(120、320)であって、
回転ブレード(114)に画定された本体開口部(160)に位置決めするための複数の積み重ねられたダンパ要素(170、370)を含み、各ダンパ要素(170、370)は、
少なくとも部分的に傾斜した表面(174、204、226、344)を有するヘッド部材(172、202、224、342)と、
ヘッド部材(172、202、224、342)から延びる複数の可撓レッグ(180)であって、各可撓レッグ(180)は、端部(184)を有する半径方向に延びる本体部(182)を含み、端部(184)は、外側端面(186)および内側端面(188)を有する、複数の可撓レッグ(180)と、を備える、振動減衰システム(120、320)。
【請求項11】
各ダンパ要素(170、370)の少なくとも部分的に傾斜した表面(174、204、226、344)は、本体開口部(160)の内面(162)に対して25°と55°との間の範囲の角度を有し、複数の可撓レッグ(180)の内側端面(188)は、本体開口部(160)の内面(162)に対して25°と55°との間の範囲の角度を有する、請求項10に記載の振動減衰システム(120、320)。
【請求項12】
ヘッド部材(172、202、224、342)と、集合的に、各ダンパ要素(170、370)の複数の可撓レッグ(180)の半径方向に延びる本体部(182)とが、それぞれ第1の外径を有し、各ダンパ要素(170、370)の複数の可撓レッグ(180)の外側端面(186)が、集合的に、第1の外径よりも大きい第2の外径を画定する、請求項10に記載の振動減衰システム(120、320)。
【請求項13】
本体開口部(160)が、第3の内径を有する内面(162)を有し、第2の外径が第3の内径よりも小さく、それにより、弛緩状態において、各ダンパ要素(170、370)の複数の可撓レッグ(180)が本体開口部(160)内を自由に通過する、請求項12に記載の振動減衰システム(120、320)。
【請求項14】
各ダンパ要素(170、370)の複数の可撓レッグ(180)の内側端面(188)が、積み重ねられた複数のダンパ要素(170、370)の隣接するダンパ要素(172、202、224、342)のヘッド部材(174、204、226、344)の少なくとも部分的に傾斜した表面を受けるように構成され、
所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレード(114)の回転によって引き起こされる遠心力の影響下で、隣接するダンパ要素(170、370)のヘッド部材(172、202、224、342)が、複数の可撓レッグ(180)の外側端面(186)を本体開口部(160)の内側面(162)と摩擦係合させて振動を減衰させる、請求項12に記載の振動減衰システム(120、320)。
【請求項15】
各可撓レッグ(180)の外側端面(186)が、本体開口部(160)の内側面(162)と線で摩擦係合する、請求項14に記載の振動減衰システム(120、320)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、回転ブレード(rotating blade)の振動を減衰させることに関する。より具体的には、本開示は、それぞれが複数の可撓レッグ(flexible legs)を有する複数のダンパ要素(damper elements)を含む振動減衰システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの運転で懸念されるのは、回転するタービンブレードが運転中に振動応力(vibrational stress:振動ストレス)を受ける傾向である。多くの設備では、タービンは頻繁な加減速の条件下で運転される。タービンの加減速中、ブレードのエアフォイル(airfoils:翼形)は、少なくとも瞬間的には、特定の周波数で振動応力を受け、多くの場合、二次周波数または三次周波数で振動応力を受ける。ノズル翼(Nozzle airfoils:ノズルエアフォイル)も同様の振動応力を受ける。例えば、ガス温度、圧力、および/または密度の変動は、ロータアセンブリ全体、特にブレード翼内において振動を励起する可能性がある。タービンおよび/または圧縮機セクションの上流から周期的、または「脈動:pulsating」的に出るガスも、望ましくない振動を励起する可能性がある。エアフォイルが振動応力を受けると、その振動振幅は、ガスタービンの運転および/または部品の寿命に悪影響を及ぼす可能性がある点まで容易に蓄積される。振動を減衰させるために、タービンブレード内に積み重ねられた固体ダンパ要素が使用されてきたが、遠心力によってダンパ要素がロックされ、振動を減衰させる能力が低下または消失する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
以下に述べるすべての側面、例、特徴は、技術的に可能なあらゆる方法で組み合わせることができる。
【0004】
本開示の一態様は、タービンの回転ブレードの本体開口部(body opening)の振動減衰システムのためのダンパ要素を提供し、このダンパ要素は、少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材と、ヘッド部材から延びる複数の可撓レッグであって、各可撓レッグは、端部(end section)を有する半径方向に延びる本体部を含み、端部は、外側端面(outer end surfaces)および内側端面(inner end surfaces)を有する、複数の可撓レッグとを備える。
【0005】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、少なくとも部分的に傾斜した表面は、本体開口部の内面に対して25°~55°の範囲の角度を有し、複数の可撓レッグの内側端面は、本体開口部の内面に対して25°~55°の範囲の角度を有する。
【0006】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、ヘッド部材および集合的に、複数の可撓レッグの半径方向に延びる本体部はそれぞれ、第1の外径を有し(the head member and, collectively, the radially extending body section of the plurality of flexible legs each have a first outer diameter)、複数の可撓レッグの外側端面は集合的に、第1の外径よりも大きい第2の外径を画定する(the outer end surfaces of the plurality of flexible legs collectively define a second outer diameter that is larger than the first outer diameter)。
【0007】
本開示の別の態様は、先の態様のいずれかを含み、本体開口部は、第3の内径を有する内面を有し、第2の外径は、第3の内径よりも小さく、それにより、弛緩状態において、複数の可撓レッグは、本体開口部内を自由に通過する。
【0008】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数の可撓レッグの内側端面は、隣接するダンパ要素のヘッド部材の少なくとも部分的に傾斜した表面を受容するように構成され、所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレードの回転によって引き起こされる遠心力の影響下で、隣接するダンパ要素のヘッド部材は、複数の可撓レッグの外側端面を本体開口部の内側表面と摩擦係合(frictional engagement)させて振動を減衰させる。
【0009】
本開示の別の態様は、先の態様のいずれかを含み、各可撓レッグの外側端面は、線において(at a line:一本の線で)本体開口部の内側表面と摩擦係合する。
【0010】
本開示の別の態様は、先の態様のいずれかを含み、各可撓レッグの外側端面は、複数の可撓レッグの弛緩状態において、本体開口部の内面に対して平行である。
【0011】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、可撓レッグの隣接する半径方向に延びる本体部は、丸みを帯びた半径方向外側の広がり(rounded radially outer extent)を有するスロットをその間に画定する。
【0012】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材は、錐体形状(frustoconical shape)を有する。
【0013】
本開示の一態様は、回転ブレードのための振動減衰システムを含み、振動減衰システムは、回転ブレードに画定された本体開口部に位置決めするための複数の積み重ねられたダンパ要素であって、各ダンパ要素は、少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材と、ヘッド部材(head member)から延びる複数の可撓レッグであって、各可撓レッグは、端部(end section)を有する半径方向に延びる本体部を含み、端部は、外側端面および内側端面を有する、複数の可撓レッグとを含む、振動減衰システムを含む。
【0014】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素の少なくとも部分的に傾斜した表面は、本体開口部の内面に対して25°と55°との間の範囲の角度を有し、複数の可撓レッグの内側端面は、本体開口部の内面に対して25°と55°との間の範囲の角度を有する。
【0015】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、ヘッド部材と、集合的に、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの半径方向に延びる本体部とは、それぞれ、第1の外径を有し、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの外側端面は、集合的に、第1の外径よりも大きい第2の外径を画定する。
【0016】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、本体開口部は、第3の内径を有する内面を有し、第2の外径は、第3の内径よりも小さく、それにより、弛緩状態において、各ダンパ要素の複数の可撓レッグは、本体開口部内を自由に通過する。
【0017】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの内側端面は、複数の積み重ねられたダンパ要素の隣接するダンパ要素のヘッド部材の少なくとも部分的に傾斜した表面を受けるように構成され、所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレードの回転によって引き起こされる遠心力の影響下で、隣接するダンパ要素のヘッド部材は、複数の可撓レッグの外側端面を本体開口部の内側表面との摩擦係合に付勢して振動を減衰させる。
【0018】
本開示の別の態様は、先の態様のいずれかを含み、各可撓レッグの外側端面は、線において本体開口部の内側表面と摩擦係合する。
【0019】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの隣接する半径方向に延びる本体部は、丸みを帯びた半径方向外側の広がりを有するスロットをその間に画定する。
【0020】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数の可撓レッグは、複数のダンパ要素のそれぞれのヘッド部材から半径方向内側に延び、積み重ねられた複数のダンパ要素のうちの半径方向最も内側のものの複数の可撓レッグの内側端面に係合するように構成された少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材を有する半径方向内側端部要素(radially inner end element)をさらに含む。
【0021】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数の可撓レッグは、複数のダンパ要素のそれぞれのヘッド部材から半径方向外側に延び、積み重ねられた複数のダンパ要素の半径方向最外側のものの複数の可撓レッグに係合するように構成された半径方向外側端部要素(radially outer end element)をさらに含む。
【0022】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数のダンパ要素は、少なくとも2つのダンパ要素の間で異なる以下の特性のうちの少なくとも1つを有する:全体の質量、全体の半径方向の長さ、複数の可撓レッグの半径方向の長さ、複数の可撓レッグを外側に撓ませるのに必要な力、内側端面の形状、外側端面の形状、少なくとも部分的に傾斜した面の角度。
【0023】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素のヘッド部材は、少なくとも部分的に錐形形状を有する傾斜した表面を有する。
【0024】
本開示の一態様は、タービンの回転ブレードの本体開口部の振動減衰システムのためのダンパ要素を含み、このダンパ要素は、少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材と、ヘッド部材の中心を通って画定された開口部と、ヘッド部材から延びる複数の可撓レッグであって、各可撓レッグは、端部を有する半径方向に延びる本体部を含み、端部は、外側端面および内側端面を有する、複数の可撓レッグと、ヘッド部材の開口部を通って延びる細長い本体部と、を備える。
【0025】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、細長い本体は、回転ブレードと同じ周波数で共振するように構成され、それにより、細長い本体は、ダンパ要素に対して力を発生させる。
【0026】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、少なくとも部分的に傾斜した表面は、本体開口部の内面に対して25°~55°の範囲の角度を有し、複数の可撓レッグの内側端面は、本体開口部の内面に対して25°~55°の範囲の角度を有する。
【0027】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、ヘッド部材および集合的に、複数の可撓レッグの半径方向に延びる本体部はそれぞれ、第1の外径を有し、複数の可撓レッグの外側端面は集合的に、第1の外径よりも大きい第2の外径を画定する。
【0028】
本開示の別の態様は、先の態様のいずれかを含み、本体開口部は、第3の内径を有する内面を有し、第2の外径は、第3の内径よりも小さく、それにより、弛緩状態において、複数の可撓レッグは、本体開口部内を自由に通過する。
【0029】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数の可撓レッグの内側端面は、隣接するダンパ要素のヘッド部材の少なくとも部分的に傾斜した表面を受容するように構成され、所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレードの回転によって引き起こされる遠心力の影響下で、隣接するダンパ要素のヘッド部材は、複数の可撓レッグの外側端面を本体開口部の内側表面と摩擦係合して振動を減衰させる(the head member of the adjacent damper element forces the outer end surfaces of the plurality of flexible legs into frictional engagement with an inner surface of the body opening to dampen vibration)。
【0030】
本開示の別の態様は、先の態様のいずれかを含み、各可撓レッグの外側端面は、線において本体開口部の内側表面と摩擦係合する。
【0031】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数の可撓レッグの隣接する半径方向に延びる本体部は、丸みを帯びた半径方向外側の広がりを有するスロットをその間に画定する。
【0032】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素のヘッド部材は、開口部が延びる錐形形状を有する少なくとも部分的に傾斜した表面を有する。
【0033】
本開示の一態様は、タービンの回転ブレードの本体開口部における振動減衰システム用のダンパ要素を含み、ダンパ要素は、少なくとも部分的に傾斜した表面と、ヘッド部材の中心を通って定義された開口部とを有するヘッド部材と、ヘッド部材から延びる複数の可撓レッグと、各可撓レッグが端部を有する半径方向に延びる本体部と、端部が外側端面と内側端面とを有することと、ヘッド部材の開口部を通って延びる細長い本体と、を備える。
【0034】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素の少なくとも部分的に傾斜した表面は、本体開口部の内面に対して25°と55°との間の範囲の角度を有し、複数の可撓レッグの内側端面は、本体開口部の内面に対して25°と55°との間の範囲の角度を有する。
【0035】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、ヘッド部材と、集合的に、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの半径方向に延びる本体部とは、それぞれ、第1の外径を有し、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの外側端面は、集合的に、第1の外径よりも大きい第2の外径を画定する。
【0036】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、本体開口部は、第3の内径を有する内面を有し、第2の外径は、第3の内径よりも小さく、それにより、弛緩状態において、各ダンパ要素の複数の可撓レッグは、本体開口部内を自由に通過する。
【0037】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの内側端面は、複数の積み重ねられたダンパ要素の隣接するダンパ要素のヘッド部材の少なくとも部分的に傾斜した表面を受けるように構成され、所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレードの回転によって引き起こされる遠心力の影響下で、隣接するダンパ要素のヘッド部材は、複数の可撓レッグの外側端面を本体開口部の内側表面との摩擦係合に付勢して振動を減衰させる。
【0038】
本開示の別の態様は、先の態様のいずれかを含み、各可撓レッグの外側端面は、線において本体開口部の内側表面と摩擦係合する。
【0039】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素の複数の可撓レッグの隣接する半径方向に延びる本体部は、丸みを帯びた半径方向外側の広がりを有するスロットをその間に画定する。
【0040】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、細長い本体に固定され、細長い本体に複数の積み重ねられたダンパ要素を保持する半径方向外側の保持要素をさらに含む。
【0041】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数の可撓レッグは、複数のダンパ要素のそれぞれのヘッド部材から半径方向内側に延び、さらに、半径方向内側端部要素を含み、該半径方向内側端部要素は、複数の積み重ねられたダンパ要素のうちの半径方向最も内側のものの複数の可撓レッグの内側端面に係合するように構成された少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材と、細長い本体が延びる、半径方向内側端部要素を通る開口部と、を有し、該半径方向内側端部要素は、該細長い本体上で摺動可能である。
【0042】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数の可撓レッグは、複数のダンパ要素のそれぞれのヘッド部材から半径方向外向きに延び、積み重ねられた複数のダンパ要素のうちの半径方向最も内側のもののヘッド部材に係合するように構成された半径方向内側端部要素をさらに含み、半径方向内側端部要素は、細長い本体が延びる開口を含み、半径方向内側端部要素は、細長い本体上で摺動可能である。
【0043】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、複数のダンパ要素は、少なくとも2つのダンパ要素の間で異なる以下の特性のうちの少なくとも1つを有する:全体の質量、全体の半径方向の長さ、複数の可撓レッグの半径方向の長さ、複数の可撓レッグを外側に撓ませるのに必要な力、内側端面の形状、外側端面の形状、少なくとも部分的に傾斜した面の角度。
【0044】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかを含み、各ダンパ要素のヘッド部材は、開口部が延びる錐形形状を有する少なくとも部分的に傾斜した表面を有する。
【0045】
この要約部に記載されているものを含め、本開示に記載されている2つ以上の態様を組み合わせて、本明細書に具体的に記載されていない実施形態を形成することができる。すなわち、本明細書に記載される全ての実施形態は、互いに組み合わせることができる。
【0046】
1つまたは複数の実施態様の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。他の特徴、目的および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本開示のこれらおよび他の特徴は、本開示の様々な実施形態を示す添付の図面と併せて取られる本開示の様々な態様の以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
図1】タービンを含むガスタービンシステムの一例を示す断面図である。
図2】本開示の実施形態による例示的なタービンの一部の断面図である。
図3】本開示の実施形態による、振動減衰システムを含む例示的なタービンブレードの透視図である。
図4】本開示の実施形態による、複数のダンパ要素を含む振動減衰システムを有するタービンブレードの概略断面図である。
図5】本開示の実施形態による、複数のダンパ要素を含む振動減衰システムを有するタービンブレードの概略断面図である。
図6】本開示の実施形態によるダンパ要素の側面図である。
図7A】本開示の実施形態による、第1の位置にある複数の積み重ねられたダンパ要素を含む振動減衰システムの側面部分断面図である。
図7B】本開示の実施形態による、第2の位置にある複数の積み重ねられたダンパ要素を含む振動減衰システムの側面の部分断面図である。
図8図8Aは、図7Aの図線8A-8Aに沿った上から見た図であり、図8Bは、図7Bの図線8B-8Bに沿った上から見た図である。
図9】本開示の任意の実施形態による、振動減衰システムの半径方向内側の端部要素の側面部分断面図である。
図10】本開示の任意の実施形態による、振動減衰システムの半径方向外側の端部要素の側面部分断面図である。
図11】本開示の他の実施形態によるダンパ要素の透視図である。
図12】本開示の他の実施形態による、複数のダンパ要素を含む振動減衰システムを有するタービンブレードの概略断面図である。
図13】本開示の他の実施形態による、複数のダンパ要素を含む振動減衰システムを有するタービンブレードの概略断面図である。
図14】本開示の他の実施形態による、その上面がダンパ要素の上に重ねられたダンパ要素の側面図である。
図15A】本開示の他の実施形態による、第1の位置にある複数の積み重ねられたダンパ要素を含む振動減衰システムの側面部分断面図である。
図15B】本開示の他の実施形態による、第2の位置にある複数の積み重ねられたダンパ要素を含む振動減衰システムの側面の部分断面図である。
図16図16Aは、図15Aの図線16A-16Aに沿った上から見た図であり、図16Bは、図15Bの図線16B-16Bに沿った上から見た図である。
【0048】
本開示の図面は必ずしも縮尺通りではないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを描写することを意図しており、したがって、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、同様の番号は、図面間の同様の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
はじめに、本開示の主題を明確に説明するために、タービン内の関連機械部品に言及し説明する際に、特定の用語を選択する必要がある。可能な限り、一般的な業界用語を使用し、その許容される意味と一致する方法で採用する。特に断りのない限り、このような用語は、本願の文脈および添付の特許請求の範囲と一致する広範な解釈が与えられるべきである。当業者であれば、特定の構成要素が複数の異なる用語または重複する用語を用いて言及されることが多いことを理解するであろう。本明細書において単一の部品であると説明されるものは、別の文脈では複数の部品から構成されるものを含み、参照される場合がある。あるいは、本明細書において複数の構成要素を含むものとして説明されているものが、他の箇所では単一部品として言及されている場合もある。
【0050】
さらに、本明細書では、いくつかの説明的な用語が頻繁に(regularly:定期的に)使用されることがあり、本節の冒頭でこれらの用語を定義しておくことが役立つはずである。中心軸に対して異なる半径方向位置に配置された部品を説明することがしばしば必要とされる。半径方向」という用語は、軸に垂直な移動または位置を指す。例えば、第1の部品が第2の部品よりも軸に近い位置にある場合、本明細書では、第1の部品が第2の部品よりも「半径方向内側」または「インボード」にあると述べる。一方、第1の構成要素が第2の構成要素よりも軸から遠くに存在する場合、本明細書では、第1の構成要素が第2の構成要素の「半径方向外側」または「アウトボード」にあると記載することができる。「軸方向」という用語は、軸に平行な移動または位置を指す。最後に、「円周方向」という用語は、軸の周りの移動または位置を指す。このような用語は、ダンパ要素の中心軸またはタービンの中心軸に関連して適用され得ることが理解されよう。
【0051】
さらに、本明細書では、以下に説明するように、いくつかの説明的用語が規則的に使用される場合がある。「第1」、「第2」、および「第3」という用語は、1つの構成要素を別の構成要素から区別するために互換的に使用されることがあり、個々の構成要素の位置または重要性を意味することを意図していない。
【0052】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、本明細書において使用される場合、用語 “含む:comprises”および/または“含んでいる:comprising”は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことが理解されるであろう。“任意の”または“任意に”とは、その後に記述される事象または状況が発生してもしなくてもよいこと、またはその後に記述される構成要素または要素が存在してもしなくてもよいこと、およびその記述が、その事象が発生する例または構成要素が存在する例と、それが発生しない例または存在しない例とを含むことを意味する。
【0053】
ある要素または層が、他の要素または層上に「載っている」、「係合されている」、「接続されている」、または「結合されている」と言及される場合、それは、他の要素または層上に直接、係合されている、接続されている、または結合されている可能性があり、または介在する要素または層が存在する可能性がある。これとは対照的に、ある要素が他の要素や層の上に「直接上に載っている」、「直接係合」、「直接接続」、「直接結合」していると呼ばれる場合は、介在する要素や層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の単語も同様に解釈されるべきである(例えば、「間に:between”」に対する「直接間に: directly between」、「隣接:adjacent」に対する「直接隣接:directly adjacent」など)。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0054】
本開示の実施形態は、タービンブレード用のダンパ要素および振動減衰システムを提供する。振動減衰システムは、積み重ねられた複数のダンパ要素(a plurality of the stacked damper elements)を含む。振動減衰システムのための1以上のダンパ要素は、タービンの回転ブレードの本体開口部に使用され得る。ダンパ要素は、少なくとも部分的に傾斜した表面を有するヘッド部材と、ヘッド部材から延びる複数の可撓レッグとを含む。各可撓レッグは、端部を有する半径方向に延びる本体部を含み、端部は、外側端面および内側端面を有する。所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレードの回転によって引き起こされる遠心力の影響下で、隣接するダンパ要素のヘッド部材は、ダンパ要素の複数の可撓レッグの外側端面を、振動を減衰させるために本体開口部の内側表面との摩擦係合に付勢する。特定の実施形態では、細長い本体が、1以上のダンパ要素のヘッド部材の開口部を通って延びていてもよい。
【0055】
本開示の実施形態による1以上のダンパ要素は、他の積み重ねられたダンパピン(other stacked damper pins)と比較して、回転ブレード内の本体開口部の内面に膨張して接触するように強制されるため、相対運動を捕捉する可能性が高い。この配置は、ダンパ要素が回転ブレードの胴体開口部の内面と共に即座に、すなわち、遠心力が可撓レッグを膨張させない可能性があるときに移動することを可能にし、無負荷の可撓レッグから負荷のかかった可撓レッグへの摺動運動(sliding movement from unloaded flexible legs to loaded, flexed legs)が、振動減衰に有効なスティック-スリップモーション(stick-slip motion:付着(固着)-滑り運動)を作り出すので有利である。振動減衰システムは、簡単な配置でブレードの振動を低減し、ブレードに余分な質量をあまり追加しない。従って、振動減衰システムとダンパ要素は、ブレード先端への全体的な遠心力を増加させず、ブレードの構成を変更する必要もない。
【0056】
図面を参照すると、図1は、本開示の教示を適用することができるタービンを含む例示的な機械の断面図である。図1では、燃焼タービンまたはガスタービン(GT)システム100(以下、「GTシステム100」という)の形態のターボマシン90が示されている。GTシステム100は、圧縮機102と燃焼器104とを含む。燃焼器104は、燃焼領域105及び燃料ノズル部106を含む。GTシステム100はまた、タービン108と、共通の圧縮機/タービンシャフト110(以下、「ロータ110」と称する)とを含む。
【0057】
GTシステム100は、例えば、General Electric Company, Greenville, S.C.から販売されている7HA.03エンジンとすることができる。本開示は、特定の1つのGTシステムに限定されるものではなく、例えば、General Electric Companyの他のHA、F、B、LM、GT、TM及びEクラスエンジンモデル並びに他社のエンジンモデルを含む他のエンジンに関連して実施することができる。さらに重要なことに、本開示の教示は、必ずしもGTシステムのタービンのみに適用されるものではなく、実質的にあらゆるタイプの産業機械または他のタービン、例えば、蒸気タービン、ジェットエンジン、(図1のような)圧縮機、ターボファン、ターボチャージャなどに適用することができる。したがって、GTシステム100のタービン108への言及は、単に説明のためのものであり、限定するものではない。
【0058】
図2は、タービン108の例示的な部分の断面図である。図示の例では、タービン108は、図1のGTシステム100と共に使用され得る4つのステージ(段)L0~L3を含む。4つのステージは、L0、L1、L2、およびL3と称される。ステージL0は、ファーストステージ(第1ステージ)であり、4つのステージの中で(半径方向において)最小である。ステージL1は第2ステージであり、軸方向において第1ステージL0に隣接して配置される。ステージL2は第3ステージであり、軸方向において第2ステージL1に隣接して配置される。ステージL3は4番目のラストステージであり、(半径方向で)最も大きい。4つのステージは一例として示されているに過ぎず、各タービンは4つより多いステージまたは少ないステージを有していてもよいことを理解されたい。
【0059】
複数の静止タービンベーンまたはノズル112(以下、「ノズル112」、または「ノズル112」)は、複数の回転タービンブレード114(以下、「ブレード114」、または「ブレード114」)と協働して、タービン108の各ステージL0~L3を形成し、タービン108を通る作動流体経路の一部を画定することができる。各ステージのブレード114は、例えば、それらをロータ110(図1)に円周方向に結合するそれぞれのロータホイール116によって、ロータ110(図1)に結合される。すなわち、ブレード114は、例えばロータホイール116によって、ロータ110に円周方向に間隔をあけて機械的に結合されている。静止ノズル部115は、ケーシング118に取り付けられ、ロータ110(図1)の周りに円周方向に間隔を置いて配置された複数のノズル112を含む。ブレード114はロータ110(図1)と共に回転し、従って遠心力を経験するが、ノズル112は静止していることが認識される。
【0060】
図1および図2を参照すると、運転中、空気は圧縮機102を通って流れ、加圧された空気が燃焼器104に供給される。具体的には、加圧空気は、燃焼器104と一体の燃料ノズル部106に供給される。燃料ノズル部106は、燃焼領域105と流路連通している。燃料ノズル部106は、燃料源(図1には図示せず)とも流路連通しており、燃料と空気を燃焼領域105に流す。燃焼器104は、燃料に点火して燃焼させ、燃焼ガスを発生させる。燃焼器104はタービン108と流路連通しており、その中で燃焼ガス流からの熱エネルギーは、燃焼した燃料(例えば作動流体)を作動流体経路に導いてブレード114を回転させることによって機械的な回転エネルギーに変換される。タービン108は、ロータ110に回転可能に連結され、ロータ110を駆動する。圧縮機102もまた、ロータ110に回転可能に連結されていてもよい。ロータ110の少なくとも一端は、圧縮機102またはタービン108から軸方向に離れて延びていてもよく、発電機、負荷圧縮機、および/または別のタービンなどの負荷または機械(図示せず)に取り付けられていてもよいが、これらに限定されない。
【0061】
図3は、本開示の振動減衰システム120、320の実施形態が採用され得るタイプの(回転)ブレード114の透視図である。本明細書で説明されるように、図4および図5は、本開示の様々な実施形態による、振動減衰システム120、320を含むブレード114の概略断面図を示す。
【0062】
図3を参照すると、各ブレード114は、基端(base end:ベース端部)130と、先端(tip end:チップ端部)132と、基端130と先端132との間に延びるエアフォイル134とを有する本体(body:ボディ)128を含む。図3に示すように、ブレード114は、基端130にダブテール(蟻溝)140を含み、これによってブレード114はロータ110(図1)のロータホイール116(図2)に取り付けられる。ブレード114の基端130は、ダブテール140とプラットフォーム146との間に延びるシャンク142をさらに含むことができる。プラットフォーム146は、エアフォイル134とシャンク142との接合部に配置され、タービン108を通る作動流体経路(図2)のインボード境界(inboard boundary)の一部を画定する。
【0063】
ブレード114のエアフォイル134は、作動流体の流れを遮断し、ロータ110(図1)を回転させるブレード114の能動的構成要素であることが理解されよう。ブレード114のエアフォイル134は、凹状の圧力側(PS:pressure side)外側側壁150と、それぞれ対向する前縁および後縁154、156の間に軸方向に延びる、周方向または横方向に対向する凸状の吸引側(SS:suction side)外側側壁152とを含むことが分かるであろう。側壁150、152はまた、基端130(すなわち、ブレード114のプラットフォーム146)から先端132(すなわち、ブレード114の先端158)まで半径方向に延びている。ただし、本開示の教示は、先端158に先端シュラウドを含むブレードにも同様に適用可能である。図3に示すブレード114は例示に過ぎず、本開示の教示は多種多様なブレードに適用できる。
【0064】
タービンの運転中、ブレード114は、数々の異なる力の作用(a number of different forcing functions:多くの異なる強制機能)によって振動を励起される可能性がある。例えば、作動流体の温度、圧力、および/または密度の変動は、ロータアセンブリ全体、特にエアフォイルおよび/またはブレード114の先端内で振動を励起する可能性がある。タービンおよび/または圧縮機セクションの上流から周期的、または「脈動:pulsating」的に出るガスも、望ましくない振動を励起する可能性がある。本開示の実施形態は、ブレードの設計を大幅に変更することなく、回転ブレード114の振動を低減する。
【0065】
図4および図5はそれぞれ、本開示の実施形態による振動減衰システム120を含むブレード114の概略断面図を示す。ブレード114のための振動減衰システム120は、その先端132と基端130との間の少なくとも部分的に本体128を通って延び、エアフォイル134を通って延びる本体開口部160を含み得る。本体開口部160は、基端130と先端132との間の距離の一部を延びてもよいし、基端130または先端132のうちの1つ以上を貫通して延びてもよい。本体開口部160は、本体128の任意の構造の任意の部分に画定することができる。例えば、本体128がその中に冷却回路を画定するための内部仕切り壁(図示せず)を含む場合、本体開口部160は、本体128の仕切り壁の内部空洞として規定されてもよい。本体開口部160は、一般に、本体128の半径方向に延びている。しかしながら、本体開口部160の、本体128の半径方向範囲に対する多少の角度付け、およびおそらく湾曲は可能である。本体開口部160は内面162を有する。本体開口部は内径IDを有することができる。
【0066】
図4に示すように、本体開口部160は、ブレード114の基端130を起点としてもよく、あるいは、図5に示すように、ブレード114の先端132を起点としてもよい。より詳細には、図4に示すように、本体開口部160は、基端130で開口して先端132で終端していてもよく、あるいは、図5に示すように、先端132で開口して基端130で終端していてもよい。本体開口部160は、どこに配置されていても、ブレード114における振動減衰システム120の組み立てを補助することができ、既存のブレードにシステムを後付けすることを可能にすることができる。図4に示すように、本体開口部160が基端130を通って延びる場合、本体開口部160を閉じるための閉鎖部材(closure member)164を設けてもよい。図5に示すように、本体開口部160が先端部132を通って延びる場合、本体開口部160用の閉鎖部材166を設けてもよい。本体開口部160を閉じることに加えて、閉鎖部材164、166はまた、例えば使用中に、本体開口部160から振動減衰システム120が取り外されるのを防止する。本体開口部160は、半径方向内側端部206および半径方向外側端部210を有してもよく、これらの各端部は、実施形態によっては、閉鎖部材164、166によって少なくとも部分的に提供されてもよい。
【0067】
図6は、本開示の実施形態による、ダンパ要素170の透視図である。図7Aは、本開示の実施形態による、第1の位置にある振動減衰システム120の部分断面図を示し、図7Bは、第2の位置にある振動減衰システム120の部分断面図を示す。図8Aは、図7Aの図線8A-8Aに沿った上面図を示し、図8Bは、図7Bの図線8B-8Bに沿った上面図を示す。
【0068】
図7A~Bに示すように、振動減衰システム120用のダンパ要素170は、タービン108(図1)の回転ブレード114の本体開口部160内に示されている。図6および図7A~Bに示されるように、ダンパ要素170は、少なくとも部分的に傾斜した表面174を有するヘッド部材172を含む。ダンパ要素170はまた、ヘッド部材172から延びる複数の可撓レッグ180(以下、単に「可撓レッグ180」)を含む。各可撓レッグ180は、端部(end section)184を有する(ブレード114に対して)半径方向に延びる本体部182を含む。端部184は、外側端面186および内側端面188を有する。本明細書でさらに説明されるように、また図7Bおよび図8Bに示されるように、ヘッド部材172は、別の隣接するダンパ要素170の可撓レッグ180と係合して、その可撓レッグ180を外側に撓ませ、振動を減衰させるために予め定義された回転速度よりも高い回転ブレード114の回転によって引き起こされる遠心力CFの影響下で本体開口部160の内面162と摩擦係合させる。
【0069】
各可撓レッグ180は、外側端面186がブレード114の本体開口部160の内側表面162と摩擦係合できるように、外側に撓むことを可能にする任意の構造を有することができる。図示の例示的実施形態では、可撓レッグ180の隣接する半径方向に延びる本体部182(以下、「本体部182」)は、その間にスロット190を画定する。スロット190はヘッド部材172で終端してもよい。スロット190は、丸みを帯びた半径方向外側の範囲192、例えば、U字形状を有することができるが、他の形状、例えば、V字形状、カテドラル形状等も可能である。任意の数の可撓レッグ180を各ダンパ要素170に設けることができる。特定の実施形態では、3個(3つ)から6個(6つ)の可撓レッグ180が各ダンパ要素170に使用されるが、他の個数も可能である。他の実施形態では、本体部182は、より広いまたはより薄い部分、湾曲、空隙などであるがこれらに限定されない、その撓みを補助および/または制御するための代替構造を有することができる。
【0070】
前述のように、ヘッド部材172は、少なくとも部分的に傾斜した表面174を有する。少なくとも部分的に傾斜した表面174(以下、簡潔にするために「傾斜した表面(ramped surface)174」)は、例えば、中実の円形表面として、その全周に延在していてもよいし、ヘッド部材172の周囲に部分的に、すなわち、同様に傾斜した表面の間に切れ目または開いた領域を有していてもよい。傾斜した表面174は、本体開口部160の内面162に対して25°~55°の範囲の角度αを有することができる。前述のように、本体開口部160は、ブレード114の本体128内を概ね半径方向に延びていてもよい。複数の可撓レッグ180の内側端面188は、隣接するダンパ要素170のヘッド部材172の傾斜した表面174を受けるように、すなわち、傾斜した表面174の影響を受けて係合し移動するように構成される。可撓レッグ180の内側端面188は、本体開口部160の内側表面162に対して25°~55°の範囲の角度βを有することができる。角度αと角度βは同じであってもよいが、ヘッド部材172が隣接するダンパ要素170の可撓レッグ180を本体開口部160の内面162に向かって外向きに付勢できる限り、これはすべての場合において必要ではない。すなわち、隣接するダンパ要素170のヘッド部材172は、ブレード114の所定の回転速度に基づいて特定の遠心力CFが加えられたときに振動を減衰させるために、可撓レッグ180の外端面186を本体開口部160の内面162と摩擦係合させることができる。
【0071】
特定の実施形態において、ヘッド部材172および集合的に可撓レッグ180の本体部182はそれぞれ、第1の外径OD1を有する。可撓レッグ180の外端面186は、集合的に、第1の外径OD1よりも大きい第2の外径OD2を画定する。したがって、ヘッド部材172および本体部182は、可撓レッグの外端面186よりも小さい外径OD1、すなわちOD2を有する。同じ外径OD1として図示および説明されているが、本体部182およびヘッド部材172は、それらが両方とも外側端面186の外径OD2より小さい限り、異なる外径を有してもよい。図7Aおよび図8Aに示すように、外側端面186の第2の外径OD2は、弛緩状態において、可撓レッグ180が本体開口部160内を自由に通過する本体開口部160の内径IDよりも小さい。さらに、ある実施形態では、各可撓レッグ180の外側端面186は、複数の可撓レッグ180の弛緩状態において、本体開口部160の内面162と平行であってもよい。他の実施形態では、各可撓レッグ180の外側端面186は、複数の可撓レッグ180の弛緩状態において、本体開口部160の内側表面162に対して非平行であってもよいが、±5°以内である。いずれにせよ、ダンパ要素170は、その端部184の外側端面186が挿入を妨害することなく、単独で、または予め積み重ねられた様式で、本体開口部160に容易に挿入することができる。
【0072】
図7Bおよび図8Bに示すように、所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレード114の回転によって引き起こされる遠心力CFの影響下で、隣接するダンパ要素170のヘッド部材172は、可撓レッグ180の外側端面186を本体開口部160の内側表面162と摩擦係合させて振動を減衰させる。特定の実施形態では、図示されているように、各可撓レッグ180の外側端面186は、本体開口部160の内側表面162と線で摩擦係合する縁部(edge)194を含むことができる。各可撓レッグ180の外側端面186は、複数の可撓レッグ180の弛緩状態では本体開口部160の内側表面162と平行であるが、可撓レッグ180が外側に撓んでその縁部194で内側表面162と合わさるにつれて傾く。
【0073】
図7A~8Bに示すように、回転ブレード114用の振動減衰システム120は、回転ブレード114に画定された本体開口部160に位置決めするための複数の積み重ねられたダンパ要素170を含む。任意の数のダンパ要素170を使用することができる。前述のように、各ダンパ要素170は、少なくとも部分的に傾斜した表面174を有するヘッド部材172と、ヘッド部材172から延びる複数の可撓レッグ180とを含む。各可撓レッグ180は、外側端面186および内側端面188を有する端部184を有する半径方向に延びる本体部182を含む。各ダンパ要素170の複数の可撓レッグ180の内側端面188は、積み重ねられた複数のダンパ要素170の隣接するダンパ要素170のヘッド部材172の傾斜した表面174を受けるように構成される。図7Bおよび図8Bに示すように、所定の回転速度よりも高い回転速度での回転ブレード114の回転によって引き起こされる遠心力CFの影響下で、隣接するダンパ要素170のヘッド部材172は、複数の可撓レッグ180の外側端面186を本体開口部160の内側表面162との摩擦係合に付勢して振動を減衰させる。
【0074】
スタック内のダンパ要素170が同一である場合、それらはすべて同じ様式で反応することができ、例えば、スタック内で同時にまたは順番に、可撓レッグ180が外向きにバネする。しかしながら、他の実施形態では、2つ以上のダンパ要素170を異なる態様で反応するようにカスタマイズすることができる。この場合、複数のダンパ要素170は、全体の質量、全体の半径方向の長さ、複数の可撓レッグの半径方向の長さ、複数の可撓レッグを外側に撓ませるのに必要な1以上の力、内側端面の1以上の形状、外側端面の1以上の形状、および/または少なくとも部分的に傾斜した面の1以上の角度のうちの少なくとも1つの特性が、少なくとも2つのダンパ要素間で異なっている。異なるダンパ要素170は、異なる状況において摩擦減衰に作動され得る。例えば、1つ以上のダンパ要素170は、回転ブレード114の第1の所定の回転速度ω1における第1の遠心力CF1の下で活性化され(activated:作動され)てもよく、1つ以上の異なるダンパ要素170は、回転ブレード114の第2の所定の回転速度ω2(第1の所定の回転速度ω1とは異なる)における第2の遠心力CF2(第1の遠心力CF1とは異なる)の下で活性化されてもよい。当業者であれば認識するように、例えば、異なる遠心力、ブレード114に沿った異なる半径、とりわけ他の動作パラメータにおいて、カスタマイズされた振動減衰を提供するために、多数の異なる特性および異なるダンパ要素170を使用することができる。
【0075】
特定の実施形態では、図4および図5に示すように、振動減衰システム120は、複数の積み重ねられたダンパ要素170を単独で含み、すなわち、ダンパ要素が、本体開口部160の半径方向外側端部210、すなわち図4のような本体開口部160の端部と相互作用するか、または図5のような半径方向外側端部210の少なくとも一部を提供する閉鎖部材166と相互作用する。
【0076】
図9は、図4と同様に、複数の可撓レッグ180がダンパ要素170のそれぞれのヘッド部材172から半径方向内側に延びている任意の実施形態の断面図を示す。図9において、振動減衰システム120は、複数の積み重ねられたダンパ要素170の半径方向最も内側のもの170Iの複数の可撓レッグ180の内側端面188に係合するように構成された少なくとも部分的に傾斜した表面204を有するヘッド部材202を有する半径方向内側端部要素(radially inner end element)200をさらに含む。半径方向内側端部要素200の傾斜した表面204は、ダンパ要素170のヘッド部材172の傾斜した表面174と同様の構成を有することができる。より詳細には、半径方向内側端部要素200は、回転ブレード114の弛緩した非作動状態において、本体開口部160の半径方向内側端部206(すなわち、閉鎖部材164(図9の破線内)を有するかまたは有しない本体開口部160の端部)に係合するように構成された半径方向内側端部208を有することができる。ブレード114の作動状態において、遠心力CFは、半径方向内側端部要素200を半径方向最も内側のダンパ要素170Iに対して付勢し、その可撓レッグ180の外側端面186(すなわち、縁部194)を本体開口部160の内側表面162と摩擦係合させて振動を減衰させる。半径方向内側の端部要素200は、その半径方向外側の積み重ねられたダンパ要素170に加えられる遠心力CFを増大させるように加重されてもよい。
【0077】
図10は、図5と同様に、複数の可撓レッグ180が、複数の積み重ねられたダンパ要素170のそれぞれのヘッド部材172から半径方向外側に延びている任意の実施形態の断面図を示す。図10において、振動減衰システム120は、複数の積み重ねられたダンパ要素170のうちの半径方向最外側のもの170Xの可撓レッグ180と係合するように構成された半径方向外側端部要素220をさらに含むことができる。より詳細には、半径方向外側端部要素220は、本体開口部160の半径方向外側端部210に係合するように構成された半径方向外側端部222(すなわち、閉鎖部材166を有するかまたは有しない本体開口部160の端部(図9の破線))と、複数の積み重ねられたダンパ要素170の半径方向最外側のもの170Xの複数の可撓レッグ180の内側端面188に係合するように構成された少なくとも部分的に傾斜した表面226を有するヘッド部材224とを有することができる。半径方向外側端部要素220の傾斜した表面226は、ダンパ要素170のヘッド部材172の傾斜した表面174と同様の構成を有することができる。遠心力CFは、半径方向最外側のダンパ要素170Xを半径方向外側端部要素220に対して付勢し、その外側端面186(すなわち、縁部194)を本体開口部160の内面162と摩擦係合させて振動を減衰させる。
【0078】
図4および図5をさらに参照すると、図4は、複数の可撓レッグ180が複数のダンパ要素170のそれぞれのヘッド部材172から半径方向内向きに延び、閉鎖部材164がブレード114の基端130にある実施形態の断面図を示す。また、図5は、複数の可撓レッグ180が複数の積み重ねられたダンパ要素170のそれぞれのヘッド部材172から半径方向外向きに延び、閉鎖部材166がブレード114の先端132にある実施形態の断面図を示す。図4および図5における積み重ねられたダンパ要素170の配置は切り替え可能であることが強調される。すなわち、図5に示すダンパ要素170の配置は、図4のように閉鎖部材164がブレード114の基端130にあるブレード114に使用することができ、図4に示すダンパ要素170の配置は、図5のように閉鎖部材166がブレード114の先端132にあるブレード114に使用することができる。端部要素200、220の任意の実施形態もまた、それらの代替配置において所望に応じて使用され得る。
【0079】
図4図10において、ダンパ要素170のヘッド部材172は、錐体形状を有する傾斜した表面174を有する。図11は、ヘッド部材172が傾斜した表面174を有するが、ドーム状端部230を有する、すなわち、平坦な端部ではなく丸みを帯びた端部を有する、別の実施形態によるダンパ要素170の透視図を示す。
【0080】
運転時には、積み重ねられたダンパ要素170はそれぞれ、膨張して本体開口部160の内面162に摩擦係合する可撓レッグ180を提供する。前述のように、ダンパ要素170は、異なる動作パラメータで膨張して摩擦係合するように、多くの方法でカスタマイズすることができる。積み重ねられたダンパ要素170は、ブレード114の本体開口部160の内面162に膨張して接触するように強制されるため、相対運動を捕捉しやすい。この配置は、ダンパ要素170がブレード114の本体開口部160とともに直ちに動くことを可能にするだけでなく、隣接するダンパ要素170間の摺動が、振動減衰にも効果的なスティック・スリップモーションを生み出すので有利である。
【0081】
図12図16Bは、本開示の他の実施形態による、複数のスタック減衰要素370を有する振動減衰システム320を示す。図12図16Bは、レイアウトの点で図4図8Bと同様である。より詳細には、図12は、本開示の他の実施形態による、ダンパ要素370を含む振動減衰システム320を有するタービンブレードの概略断面図を示し、図13は、本開示のさらに他の実施形態による、複数のダンパ要素370を含む振動減衰システム320を有するタービンブレードの概略断面図を示す。図14は、その上面388がダンパ要素の上に重ね合わされたダンパ要素370の側面図を示す。図15Aは、本開示の他の実施形態による、第1の位置にある複数の積み重ねられたダンパ要素370を含む振動減衰システム320の側面、部分断面図を示し、図15Bは、第2の位置にある複数の積み重ねられたダンパ要素370を含む振動減衰システム320の側面、部分断面図を示す。図16Aは、図15Aの図線16A-16Aに沿った上面図であり、図16Bは、図16Bの図線16B-16Bに沿った上面図である。
【0082】
図12および図13に示すように、ブレード114のための振動減衰システム320は、その先端132と基端130との間の少なくとも部分的に本体128を通って、エアフォイル134を通って延びる本体開口部160を含むことができる。本体開口部160は、基端130と先端132との間の距離の一部を延びてもよいし、基端130または先端132のうちの1つまたは複数を通って延びてもよい。本体開口部160は、本体128の任意の構造の任意の部分に画定することができる。例えば、本体128がその中に冷却回路を画定するための内部仕切り壁(図示せず)を含む場合、本体開口部160は、本体128の仕切り壁の内部空洞として規定されてもよい。本体開口部160は、一般に、本体128の半径方向に延びている。しかしながら、本体開口部160の、本体128の半径方向範囲に対する多少の角度付け、およびおそらく湾曲は可能である。本体開口部160は内面162を有する。本体開口部は内径IDを有することができる。
【0083】
図12に示すように、本体開口部160は、ブレード114の基端130を起点としてもよく、あるいは、図13に示すように、ブレード114の先端132を起点としてもよい。より詳細には、図12に示すように、本体開口部160は、基端130で開いていて先端132で終端していてもよいし、図13に示すように、先端132で開いていて基端130で終端していてもよい。開放端は、ブレード114における振動減衰システム120の組み立てを支援し、既存のブレードへのシステムの後付けを可能にすることができる。図12に示すように、本体開口部160が基端130を通って延びる場合、本体開口部160を閉じるための閉鎖部材164を設けてもよい。図13に示されるように、本体開口部160が先端132を通って延びる場合、本体開口部160のための閉鎖部材166が設けられてもよい。本体開口部160を閉じることに加えて、閉鎖部材164、166は、例えば、使用中に、振動減衰システム120が本体開口部160から取り外されるのを防止する。本体開口部160は、半径方向内側端部206および半径方向外側端部210を有してもよく、これらの各端部は、実施形態によっては、閉鎖部材164、166によって少なくとも部分的に提供されてもよい。
【0084】
振動減衰システム320(およびそのためのダンパ要素370)は、本明細書の他の実施形態に関連して説明したものと、構造的および機能的に実質的に類似している。例えば、ダンパ要素370は、図4図8Bに関連して説明したダンパ要素170に実質的に類似している。特に、ダンパ要素370は、少なくとも部分的に傾斜した表面174を有するヘッド部材172と、ヘッド部材172から延びる複数の可撓レッグ180とを含む。ダンパ要素170(図4~8B)とは対照的に、ダンパ要素370は、ヘッド部材172の中心を通って画定された開口部390と、ヘッド部材172の開口部390を通って延びる細長い本体392とを含む。図14に示すように、各ダンパ要素370のヘッド部材172は、開口部390が延びる錐体形状を有する傾斜した表面174を有する。ヘッド部材172の他の形状も可能である。
【0085】
開口部390および細長い本体392は、円形(例えば、図14に示すように)、長円形または楕円形、多角形などの任意の嵌合断面形状を有することができる。単一の細長い本体392は、振動減衰システム320内のダンパ要素370のスタック内の各ダンパ要素370を通って延びることができる。細長い本体392は、回転ブレード114と同じ周波数で共振するように構成され、それによって細長い本体392は、ダンパ要素370に対して力を発生させる。細長い本体392は、特にその質量、撓み、硬度、直径および長さを制御することによって、回転ブレード114と同じ周波数で共振するように構成することができる。細長い本体392は、開口部390内で自由に摺動するが、ブレード114の振動によって引き起こされる細長い本体392の動きが開口部390の内側に物理的に衝撃を与え、それぞれのダンパ要素370を移動させるように、開口部390と密接なクリアランスを有する。このようにして、細長い本体392は、ダンパ要素370が本体開口部160の内面162に対して、または互いに固着する可能性を低減することができる。
【0086】
振動減衰システム320は、ダンパ要素170について図4および図5に示した配置と同様に、積み重ねられたダンパ要素370だけを含むことができる。他の実施形態では、図12および図13に示すように、振動減衰システム320は、細長い本体392上に複数の積み重ねられたダンパ要素370を保持するために、細長い本体392に固定された半径方向外側保持要素(radially outer retainer element)330をさらに含むことができる。半径方向外側保持要素330は、様々な形態をとることができる。図12に示す一例では、半径方向外側保持要素330は、使用中に、本体開口部160の半径方向外側端部210、すなわち、閉鎖部材166(図13)の有無にかかわらず本体開口部160の端部に隣接するように構成された端部332を含むことができる。半径方向外側保持要素330はまた、半径方向最も外側のダンパ要素370Xのヘッド部材172に対応する形状を有する半径方向内側端部334を含むことができる。より詳細には、図12に示されるように、複数の可撓レッグ180が複数のダンパ要素370のそれぞれのヘッド部材172から半径方向外側に延びる場合、半径方向外側保持要素330の半径方向内側端部334は、半径方向最も外側のダンパ要素370Xのヘッド部材172に係合する、またはヘッド部材172を受ける形状を有する。例えば、半径方向外側保持要素330の半径方向内側端部334は、ヘッド部材172に係合する平面を有していてもよいし、(相補的に)適合するヘッド部材172を受ける台形凹状断面(図示略)を有していてもよい。ヘッド部材172が異なる形状を有する場合、半径方向外側保持要素330の半径方向内側端部334は、相補的な形状を有してもよい。図13において、複数の可撓レッグ180が複数のダンパ要素370の各々のそれぞれのヘッド部材172から半径方向外側に延びる場合、半径方向外側保持要素330の半径方向内側端部334は、半径方向最も外側のダンパ要素370Xのヘッド部材172と同様の形状、すなわち、半径方向最も外側のダンパ要素370Xの可撓レッグ180を本体開口部160の内側表面162との摩擦係合に付勢するための錐体形状を有する。ヘッド部材172が異なる形状を有する場合、半径方向外側保持要素330の半径方向内側端部334は、相補的な形状であってもよい。
【0087】
図12および図13にも示すように、振動減衰システム320は、細長い本体392に摺動可能に連結されて、細長い本体392上の複数の積み重ねられたダンパ要素370に追加の遠心力を加えるための半径方向内側端部要素340をさらに含んでもよい。図12に示すように、可撓レッグ180が複数のダンパ要素370のそれぞれのヘッド部材172から半径方向内側に延びる場合、半径方向内側端部要素340は、複数のダンパ要素370の内側端部表面188(図15A~B)に係合するように構成された少なくとも部分的に傾斜した表面344を有する半径方向外側端部(ヘッド部材)342を含むことができる。積み重ねられたダンパ要素370の最も半径方向内側の1つ370Iの複数の可撓レッグ180(図15A~B)の内端面188(図15A~B)と、細長い本体392が延びる半径方向内側の端部要素340を貫通する開口346とを含む。半径方向内端要素340は、細長い本体392上で摺動可能であり、すなわち、積み重ねられたダンパ要素370に追加の遠心力を加える。半径方向内側端部要素340の半径方向内側端部348は、ブレード114の非作動状態、すなわち閉鎖部材164(図12)の有無にかかわらず、本体開口部160の半径方向内側端部206に隣接する任意の形状を有することができる。
【0088】
図13に示すように、可撓レッグ180がダンパ要素370のそれぞれのヘッド部材172(図15A~B)から半径方向外側に延びる場合、半径方向内側端部要素340は、積み重ねられたダンパ要素370の半径方向最内側1つ370Iのヘッド部材172(図14)に係合するように構成されてもよい。例えば、半径方向内側端部要素340の半径方向外側端部342は、ヘッド部材172に係合する平面を有していてもよいし、(相補的に)適合するヘッド部材172を受容する台形凹状断面(図示略)を有していてもよい。半径方向内端要素340はまた、細長い本体392が延びる開口346を含む。半径方向内端要素340は、細長い本体392上で摺動可能であり、すなわち、積み重ねられたダンパ要素370に付加的な遠心力を加える。図13において、半径方向内側端部要素340の半径方向内側端部348は、ブレード114の非作動状態、すなわち閉鎖部材164(図12)の有無にかかわらず、本体開口部160の半径方向内側端部206に隣接する任意の形状を有することができる。
【0089】
回転ブレード114用の振動減衰システム320は、回転ブレード114に画定された本体開口部160に位置決めするための複数の積み重ねられたダンパ要素370を含む。前述のように、各ダンパ要素370は、少なくとも部分的に傾斜した表面174と、ヘッド部材172の中心を通って画定された開口390とを有するヘッド部材172を含む。複数の可撓レッグ180がヘッド部材172から延び、細長い本体392が各ダンパ要素370のヘッド部材172の開口部390を通って延びる。振動減衰システム320の他の態様は、振動減衰システム120(図4図5図7A図8B)に対して説明したように配置されてもよい。
【0090】
特定の実施形態では、スタック内のダンパ要素370が同一である場合、それらはすべて同じ様式で反応することができ、例えば、スタック内で同時にまたは順番に、可撓レッグ180が外向きに跳ね上がる(spring outwardly)。しかしながら、他の実施形態では、2つ以上のダンパ要素370を異なる態様で反応するようにカスタマイズすることができる。この場合、複数のダンパ要素370は、全体の質量、全体の半径方向長さ、複数の可撓レッグの半径方向長さ、複数の可撓レッグを外側に撓ませるのに必要な力、内側端面の形状、外側端面の形状、少なくとも部分的に傾斜した面の角度、の少なくとも1つの特性が少なくとも2つのダンパ要素間で異なる。このようにして、異なるダンパ要素370は、異なる状況において摩擦減衰に作動することができる。例えば、1つ以上のダンパ要素370は、回転ブレード114の第1の所定の回転速度ω1における第1の遠心力CF1(図面には示されていない)の下で活性化されてもよく、1つ以上の異なるダンパ要素370は、回転ブレード114の第2の所定の回転速度ω2(第1の所定の回転速度ω1とは異なる)における第2の遠心力CF2(第1の遠心力CF1とは異なる)の下で活性化されてもよい。当業者であれば認識するように、例えば、異なる遠心力、ブレード114に沿った異なる半径、とりわけ他の動作パラメータにおいて、カスタマイズされた振動減衰を提供するために、複数の(多数の)異なる特性および異なるダンパ要素370を使用することができる。
【0091】
作動時には、積み重ねられたダンパ要素370はそれぞれ、膨張して本体開口部160の内面162に摩擦係合する可撓レッグ180を提供する。前述のように、ダンパ要素370は、異なる動作パラメータで膨張して摩擦係合するように、多くの方法でカスタマイズすることができる。積み重ねられたダンパ要素370は、ブレード114の本体開口部160の内面162に膨張して接触するように強制されるため、相対運動を捕捉(capture relative motion)しやすい。この配置は、ダンパ要素370がブレード114の本体開口部160と即座に動くことを可能にするだけでなく、隣接するダンパ要素370間の摺動により、振動減衰にも有効なスティック・スリップモーションが生じるので有利である。細長い本体392は、ダンパ要素370が本体開口部160の内面162に対して、または互いに固着する可能性を低減する。
【0092】
ダンパ要素170、370は、現在知られている、または後に開発される任意の製造プロセス、例えば鋳造を用いて形成することができる。特定の好ましい実施形態では、ダンパ要素170、370は、コバルトクロムを含むがこれに限定されない、使用される環境に耐えることができる任意の材料から付加的に製造することができる。ダンパ要素170、370、細長い本体392、および様々な端部要素200、220、330、340は、ブレード114内の所定の機能および環境に対して十分な強度、可撓性および耐久性を有する任意の材料で作ることができる。
【0093】
本開示の実施形態は、様々な技術的および商業的利点を提供し、その例は本明細書で説明される。1以上のダンパ要素およびダンパ要素を有する振動減衰システムは、それらが強制的に膨張して回転ブレードの本体開口部の内面に接触するため、相対運動を捕捉する可能性が高くなる。本明細書で説明する様々な配置は、1以上のダンパ要素が回転ブレードの胴体開口部の内面と即座に、すなわち遠心力が可撓レッグを膨張させないときに一緒に動くことを可能にするだけでなく、負荷のかかっていない可撓レッグから負荷のかかって撓んだレッグへの摺動(sliding from unloaded flexible legs to loaded, flexed legs)が、振動減衰に効果的なスティック・スリップモーションを作り出すので有利である。振動減衰システムはまた、単純な配置でブレードの振動を低減し、ブレードに余分な質量をあまり追加しない。従って、振動減衰システムとダンパ要素は、ブレード先端への全体的な遠心力を著しく増加させたり、ブレードの構成を変更する必要はない。
【0094】
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて使用される近似的な表現は、それが関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく許容可能に変化し得るあらゆる定量的表現を修正するために適用することができる。したがって、「約:about」、「およそ:approximately」、「実質的に:substantially」などの用語によって修正される値は、指定された正確な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似的な表現は、値を測定するための機器の精度に対応することがある。本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、範囲の限定は、組み合わされ、及び/又は交換される場合がある。このような範囲は、文脈又は文言がそうでないことを示さない限り、特定され、そこに含まれるすべてのサブ範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「凡そ」または「約」は、両端値に適用され、値を測定する機器の精度に依存しない限り、記載された値の±10%を示す場合がある。
【0095】
以下の特許請求の範囲におけるすべての手段またはステッププラス機能要素の対応する構造、材料、行為、および等価物は、具体的に特許請求されるように、他の特許請求される要素と組み合わせて機能を実行するための任意の構造、材料、または行為を含むことを意図している。本開示の説明は、例示および説明の目的で提示されたが、開示された形態での開示について網羅的または限定的であることを意図するものではない。本開示の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。実施形態は、本開示の原理および実際的な適用を最もよく説明するために、また、当業者が、企図される特定の用途に適するように様々な変更を伴う様々な実施形態について本開示を理解できるようにするために、選択され、説明された。
【符号の説明】
【0096】
90:ターボマシン 100:GTシステム 102:圧縮機 104:燃焼器 105:燃焼領域 106:燃料ノズル部 108:タービン 110:ロータ 112:ノズル 114:回転ブレード 116:ロータホイール 118:ケーシング 120:振動減衰システム 128:本体 130:基端 132:先端 134:エアフォイル 140:ダブテール 142:シャンク 146:プラットフォーム 150:圧力側外側側壁 152:吸引側外側側壁 156:前縁 158:後縁 160:本体開口部 162:内面 164、166:閉鎖部材 170:ダンパ要素 170I:半径方向最も内側のダンパ要素 170X:半径方向最も外側のダンパ要素 172:ヘッド部材 174:少なくとも部分的に傾斜した表面/傾斜した表面 180:可撓レッグ 182:本体部 184:端部 186:外側端面 188:内側端面 190:スロット 192:丸みを帯びた半径方向外側範囲 194:縁部 200:半径方向内側端部要素 202:ヘッド部材 204:傾斜した表面 206:半径方向内側端部 208:半径方向内側端部 210:半径方向外側端部 220:半径方向外側端部要素 224:ヘッド部材 226:傾斜した表面 230:ドーム状の端部 320:振動減衰システム 330:半径方向外側保持要素 332:端部 334:半径方向内側端部 340:半径方向内側端部要素 342:半径方向外側端部 344:少なくとも部分的に傾斜した表面 346:開口部 348:半径方向内側端部 370:ダンパ要素 370I:半径方向最も内側のダンパ要素 370X:半径方向最も外側のダンパ要素 388:上面 390:開口部 392:細長い本体 α:角度 ID:内径 CF:遠心力 L0~L3:ステージ OD1:第1の外径 OD2:第2の外径 ω1:第1の回転速度 ω2:第2の回転速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
【外国語明細書】