(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098821
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】安定液、及び安定液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 8/508 20060101AFI20250625BHJP
E02D 5/02 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
C09K8/508
E02D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215208
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】森下 智貴
(72)【発明者】
【氏名】荒川 真
(72)【発明者】
【氏名】武内 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 晃平
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049GA03
(57)【要約】
【課題】造壁性が従来の安定液と同等であり、かつ取り扱いが容易である安定液及びその製造方法の提供。
【解決手段】ベントナイト、重量平均分子量が40万~60万のポリ不飽和カルボン酸、及び中和剤を含有する安定液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイト、重量平均分子量が40万~60万のポリ不飽和カルボン酸、及び中和剤を含有することを特徴とする安定液。
【請求項2】
前記ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量が、41万~57万である請求項1に記載の安定液。
【請求項3】
水を更に含有し、
前記ポリ不飽和カルボン酸の含有量が、前記水1Lあたり0.09質量%~0.37質量%である請求項1又は2に記載の安定液。
【請求項4】
前記中和剤が、炭酸ナトリウムである請求項1又は2に記載の安定液。
【請求項5】
ベントナイト、及び中和剤の混合物中に、重量平均分子量が40万~60万のポリ不飽和カルボン酸を添加することを特徴とする安定液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定液、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中連続壁工事や杭工事においては、地盤を掘削した孔に安定液を入れ、安定液を孔壁に付着させ、掘削時の孔壁崩壊を防止することが行われる。
安定液は、主にベントナイト、ポリマー、分散剤等を含有する。ポリマーとして、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCという場合がある)を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
安定液の成分は掘削する地盤の性質によって変更される。砂粒分が多い粘性土の地盤を掘削する場合、安定液に含まれるポリマーとしては、安定液の粘度の極端な増加を避けるために、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩を主成分とするポリマーを用いることが提案されている。
しかしながら、このポリアクリル酸塩を主成分とするポリマーは孔壁に付着する力が弱く、そのため、このポリマーのみを用いた安定液は造壁性が弱い。そこで、造壁性を向上させるため、このポリマーは、上述のCMCと組み合わせて用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安定液は、通常、施工現場に設けられた作液層で材料を混合することにより製造される。従って、材料の種類が少ない方が輸送コストを抑えることができる点で好ましい。
そこで、ポリマーとして、主成分であるポリアクリル酸塩などのポリ不飽和カルボン酸のみを用いた安定液が望まれてきた。
【0006】
しかしながら、安定液の成分として用いることのできる、即ち、造壁性を有するポリ不飽和カルボン酸ナトリウムなどのポリ不飽和カルボン酸塩は、分子量(重量平均分子量)が大きい。分子量の大きいポリ不飽和カルボン酸塩は、高粘度の液体である。このため、ポンプ等を用いてポリ不飽和カルボン酸塩を作液槽に直接投入し難く、施工現場における安定液の製造が困難であった。特に、気温の低い冬季においては、ポリ不飽和カルボン酸塩の粘度が更に増加するため、施工現場における安定液の製造が更に困難であった。
【0007】
本発明は、造壁性が従来の安定液と同等であり、かつ取り扱いが容易である安定液及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の安定液は、ベントナイト、重量平均分子量が40万~60万のポリ不飽和カルボン酸、及び中和剤を含有する。
また、本発明の安定液は、ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量が、41万~57万であることが好ましい。
また、本発明の安定液は、水を更に含有し、ポリ不飽和カルボン酸の含有量が、前記水1Lに対して、0.09%~0.37%であることが好ましい。
また、本発明の安定液は、中和剤が、炭酸ナトリウムであることが好ましい。
また、本発明の安定液の製造方法は、ベントナイト、及び中和剤の混合物中に、重量平均分子量が40万~60万のポリ不飽和カルボン酸を添加する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、造壁性が従来の安定液と同等であり、かつ取り扱いが容易である安定液及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(安定液)
実施形態に係る安定液は、ベントナイト、ポリ不飽和カルボン酸、及び中和剤を含有し、水を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0011】
<ベントナイト>
ベントナイトは、安定液に造壁性を付与する。
ベントナイトは、粘土鉱物の一種であり、モンモリロナイトを主成分とし、吸水すると膨潤する、吸水すると粘性を発現するなどの性質を有している。
【0012】
モンモリロナイトは、負電荷を帯びた層間に陽イオンが存在する構造を有する結晶からなる。ベントナイトは、モンモリロナイトの結晶の層間に存在する陽イオンの種類によって、分類される。
モンモリロナイトの層間に存在する陽イオンにナトリウムイオンを多く有するナトリウム型ベントナイトは、膨潤性が高い(高膨潤性)。他方で、モンモリロナイトの層間に存在する陽イオンにカルシウムイオンを多く有するカルシウム型ベントナイトは、膨潤性がナトリウム型ベントナイトと比較して低い(低膨潤性)。
実施形態に係る安定液に用いられるベントナイトは、ナトリウム型、カルシウム型のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。
ベントナイトは、適宜合成したものでも、市販品を用いてもよい。
【0013】
ベントナイトの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、安定液を分散する水1Lに対して、0.5質量%~5質量%が好ましく、1質量%~3質量%がより好ましい。
【0014】
<ポリ不飽和カルボン酸>
ポリ不飽和カルボン酸は、不飽和カルボン酸の重合体であり、安定液に造壁性を付与する。
安定液に用いられてきたポリマーの主成分である分子量(重量平均分子量)が大きいポリ不飽和カルボン酸塩は、粘度が特に高いため、施工現場で用いることが難しかった。しかしながら、ポリ不飽和カルボン酸の中和前のポリ不飽和カルボン酸は、同程度の重量平均分子量のポリ不飽和カルボン酸塩より粘度が低いことが知られている。そこで、中和前のポリ不飽和カルボン酸を安定液の原料とすることで、従来の安定液と同様の造壁性を付与しつつ、施工現場での取り扱い性を担保することができるようになる。
【0015】
不飽和カルボン酸は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられるが、入手が容易である点から、アクリル酸が好ましい。
【0016】
ポリ不飽和カルボン酸は、合成したものでも、市販品を用いてもよい。
ポリ不飽和カルボン酸の合成方法は、例えば、溶液重合法が挙げられる。これは、単量体である不飽和カルボン酸を溶剤に添加し、次いで、これを50℃~150℃で常圧又は加圧下で重合させる方法である。
【0017】
溶剤は、例えば、水、イソプロピルアルコール、トルエン、エチレンジクロライド、メチルエチルケトン、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0018】
重合させるにあたっては、単量体である不飽和カルボン酸の合計質量に対し、0.1質量%~15質量%のラジカル重合開始剤を使用するとともに、連鎖移動剤を必要に応じて使用するのがよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤は、例えば、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトエタノールなどの含硫黄化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量を大きくする方法としては、重合開始剤の量を減らす方法や、重合時の反応液の濃度を上げる方法等が挙げられる。ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量を小さくする方法としては、重合開始剤の量を増やす方法や、重合時の反応液の濃度を下げる方法等が挙げられる。
【0020】
ポリ不飽和カルボン酸、及びポリ不飽和カルボン酸を中和したポリ不飽和カルボン酸塩の粘度は、重量平均分子量と相関があり、重量平均分子量が大きいほど粘度が高く、施工現場での取り扱いが難しくなる一方で、安定液の造壁性が向上する。
【0021】
ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量は、40万~60万であり、41万~57万が好ましく、47万~54万がより好ましい。ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量が、40万未満であると、水と共に土壌の壁をすり抜けるために造壁性が悪化する可能性がある。また、ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量が、60万を超えると、粘度が大きくなるため、ポンプによる圧送が難しくなり、施工現場において使用性が悪化する可能性がある。
【0022】
ポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件にて測定することができる。
装置:HLC-8320(東ソー株式会社製)
カラム:TSK Gel guard column PWXL、TSK Gel G6000PWXL、TSK Gel G5000PWXL、TSK Gel G3000PWXL(以上、東ソー株式会社製)
測定温度:40℃
試料溶液:0.5(w/v)%酢酸ナトリウム(水/メタノール=70/30(体積比))
溶液注入量:50μL
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール8点(分子量:1,046,000、580,000、277,000、101,000、49,390、27,000、3,870、1,010)
【0023】
ポリ不飽和カルボン酸の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、安定液を分散する水1Lに対して、0.09質量%~0.37質量%が好ましく、0.18質量%~0.37質量%がより好ましい。
【0024】
<中和剤>
中和剤は、安定液に含まれるポリ不飽和カルボン酸を中和する。
ポリ不飽和カルボン酸は酸性であるため、添加された土壌は酸性となる。したがって、本実施形態に係る安定液は、ポリ不飽和カルボン酸を中和するための中和剤を含有する。
中和剤は、ポリ不飽和カルボン酸を中和することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
これらの中でも、入手が容易である点から、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0025】
中和剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、安定液を分散する水1Lに対して、0.01質量%~0.40質量%が好ましく、0.08質量%~0.32質量%がより好ましい。
【0026】
<水>
水は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水道水、蒸留水などが挙げられる。
水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0027】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤などが挙げられる。
その他の成分の含有量としては、安定液の性能を阻害するものではない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0028】
(安定液の製造方法)
実施形態に係る安定液の製造方法は、ベントナイト、及び中和剤の混合物中に、重量平均分子量が40万~60万のポリ不飽和カルボン酸を添加する方法である。
ベントナイト、中和剤、及びポリ不飽和カルボン酸は上述のものを用いることができる。
【0029】
ベントナイト及び中和剤の混合物は、例えば、水にベントナイト及び中和剤を入れ、撹拌することで得られる。
ベントナイト及び中和剤の混合物を得るための装置は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。また、撹拌する際の回転数、時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0030】
ベントナイト及び中和剤の混合物中に、ポリ不飽和カルボン酸を添加する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
混合物中にポリ不飽和カルボン酸を添加し、撹拌することで安定液が得られる。この場合の撹拌する際の回転数、時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【実施例0031】
以下、開示の技術の実施例を説明するが、開示の技術は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
実施例において用いたポリアクリル酸の物性を以下の表1にまとめた。これらのポリアクリル酸は、公知の製造方法により得たものを用いた。
【0033】
【0034】
表1中の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。
装置:HLC-8320(東ソー株式会社製)
カラム:TSK Gel guard column PWXL、TSK Gel G6000PWXL、TSK Gel G5000PWXL、TSK Gel G3000PWXL(以上、東ソー株式会社製)
測定温度:40℃
試料溶液:0.5(w/v)%酢酸ナトリウム(水/メタノール=70/30(体積比))
溶液注入量:50μL
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール8点(分子量:1,046,000、580,000、277,000、101,000、49,390、27,000、3,870、1,010)
【0035】
表1中の固形分は、ポリアクリル酸を130℃、90分間加熱した後に残った質量と、加熱前のポリアクリル酸の質量に対する割合を示している。
表1中のpHは、50質量%溶液に希釈した溶液を、pHメーターを用いて測定した値である。
表1中の粘度は、5℃、25℃においてそれぞれB型粘度計を用い、回転数:12rpmにて測定した。
【0036】
一般的に、25℃における粘度が10,000mPa・s以下であると、施工現場において安定液を製造する際に問題にならず、取り扱い性がよいといえる。また、一般的に粘度と重量平均分子量とは比例関係にある。したがって、粘度が10,000mPa・s以下のポリアクリル酸を用いるためには、重量平均分子量が60万以下のポリアクリル酸を用いればよい。
一方、重量平均分子量が68万であるポリアクリル酸は、25℃における粘度が12,000mPa・sとなり、施工現場において安定液を製造するには粘度が高すぎるため、用いることが難しい。
なお、ポリアクリル酸以外のポリ不飽和カルボン酸の重量平均分子量については、ポリアクリル酸と同様の傾向を示すことが知られており、重量平均分子量が60万超のポリ不飽和カルボン酸の25℃における粘度は10,000mPa・s超となる。
【0037】
更に、5℃における粘度が10,000mPa・s以下であると、冬季に施工現場において安定液を製造する際に問題にならず、取り扱い性がよりよいといえる。
【0038】
(実施例1~4、比較例1~3)
<安定液の製造>
容器の中に、水、ベントナイト(クニゲルV2、クニミネ工業株式会社製)中和剤としての炭酸ナトリウムを入れた。その中に、表1に示す性質を有する各ポリアクリル酸A~Gを少量ずつ入れながら撹拌し、安定液を製造した。
次に、得られた安定液を模擬土(笠岡粘土)と混合した。水1Lに対するそれぞれの成分の含有量(質量%)を表2に示した。
なお、表2におけるポリアクリル酸の含有量は純分換算値を示しており、表2中のポリアクリル酸の安定液に対する量(純分換算する前の量)は、すべて0.8質量%である。
【0039】
得られた安定液について、比重、及びファンネル粘度(F.Vと略記される)を評価した。また、安定液と模擬土との混合物の造壁性を評価した。比重、ファンネル粘度、及び造壁性の評価方法については、平成22年7月に地中連続壁基礎協会発行の「地中連続壁基礎工法施工指針(案)」の実験方法に基づく。これらの評価結果は表2に併記した。
【0040】
<比重(単位体積当たりの水に対する試料の重量比)の測定>
泥水比重計(マッドバランス)を用いて各安定液の比重を測定した。測定結果を表2に示した。
【0041】
<ファンネル粘度(F.V.)>
ファンネル粘度計を用いて各安定液のファンネル粘度(秒)を測定した。測定結果を表2に示した。
【0042】
<造壁性(API造壁性)>
造壁性は、濾過試験により評価した。底蓋にパッキング、金網、ろ紙、パッキングの順に置き、その上にシリンダーセル(内径:76.2mm、高さ:63.5mm)を締め込むことにより用意されたろ過試験器を用いた。
ろ過試験器のシリンダーセル内に各安定液を290mL入れ、上蓋を密閉固定し、0.3MPaの圧力を30分間かけ、容器下端から流出するろ過水量(mL)を測定し、下記評価基準に基づき評価した。
-評価基準-
〇:ろ過水量が30mL以下
×:ろ過水量が30mL超
【0043】
<総合評価>
ポリアクリル酸の25℃における粘度、及び造壁性の結果から、下記評価基準に基づき総合評価を行った。評価結果は、表2に併記した。
◎:25℃における粘度が10,000mPa・s以下、5℃における粘度が10,000mPa・s以下、かつ造壁性における評価が「〇」
〇:25℃における粘度が10,000mPa・s以下、5℃における粘度が10,000mPa・s超、かつ造壁性における評価が「〇」
×:25℃における粘度が10,000mPa・s以下、又は造壁性における評価が「×」
【0044】
【0045】
比較例3の安定液は、造壁性の評価結果が「〇」であるが、25℃における粘度が12,000mPa・sであるため、現場での取り扱いが難しい。
表2の結果から明らかなように、重量平均分子量が40万~60万であるポリアクリル酸を含有する実施例1~4の安定液は、造壁性の評価結果が「〇」であるのに対し、重量平均分子量が40万未満であるポリアクリル酸を含有する比較例1~2の安定液は、造壁性の評価結果が「×」であった。
以上から、実施例1~4の安定液は、造壁性が従来の安定液と同等であり、かつ取り扱いが容易であることが明らかになった。また、実施例1、2の安定液に含有されるポリアクリル酸は、5℃における粘度が10,000mPa・s以下であるため、冬季においても取り扱いが容易である点で、更に好ましいことが明らかになった。
【0046】
(実施例5~8、比較例4~6)
次に、ポリアクリル酸の量を上記より増加させた場合における安定液を製造し、上述の安定液と同様に評価を行った。安定液の組成及び評価結果を表3に示した。
なお、表3におけるポリアクリル酸の含有量は純分換算値を示しており、表3中のポリアクリル酸の安定液に対する量(純分換算する前の量)は、すべて1.6質量%である。
【0047】
【0048】
比較例6の安定液は、造壁性の評価結果が「〇」であるが、25℃における粘度が12,000mPa・sであるため、現場での取り扱いが難しい。
表3の結果から明らかなように、重量平均分子量が40万~60万であるポリアクリル酸を含有する実施例5~8の安定液は、造壁性の評価結果が「〇」であるのに対し、重量平均分子量が40万未満であるポリアクリル酸を含有する比較例4~5の安定液は、造壁性の評価結果が「×」であった。
以上から、実施例5~8の安定液は、造壁性が従来の安定液と同等であり、かつ取り扱いが容易であることが明らかになった。また、実施例5、6の安定液に含有されるポリアクリル酸は、5℃における粘度が10,000mPa・s以下であるため、冬季においても取り扱いが容易である点で、更に好ましいことが明らかになった。
【0049】
(実施例9~11、比較例7~8)
次に、ポリアクリル酸の量を上記より減少させた場合における安定液を製造し、上述の安定液と同様に評価を行った。安定液の組成及び評価結果を表4に示した。
なお、表4におけるポリアクリル酸の含有量は純分換算値を示しており、表4中のポリアクリル酸の安定液に対する量(純分換算する前の量)は、すべて0.4質量%である。
【0050】
【0051】
比較例8の安定液は、造壁性の評価結果が「〇」であるが、25℃における粘度が12,000mPa・sであるため、現場での取り扱いが難しい。
表4の結果から明らかなように、重量平均分子量が40万~60万であるポリアクリル酸を含有する実施例9~11の安定液は、造壁性の評価結果が「〇」であるのに対し、重量平均分子量が40万未満であるポリアクリル酸を含有する比較例7の安定液は、造壁性の評価結果が「×」であった。
以上から、実施例9~11の安定液は、造壁性が従来の安定液と同等であり、かつ取り扱いが容易であることが明らかになった。また、実施例9の安定液に含有されるポリアクリル酸は、5℃における粘度が10,000mPa・s以下であるため、冬季においても取り扱いが容易である点で、更に好ましいことが明らかになった。
【0052】
以上の結果から、重量平均分子量が40万~60万であるポリ不飽和カルボン酸を含有する安定液は、造壁性が従来の安定液と同等であり、かつ取り扱いが容易であることが明らかになった。これは、ポリ不飽和カルボン酸の含有量には依存しないことも明らかになった。
また、ベントナイト、及び中和剤の混合物中に、重量平均分子量が40万~60万のポリ不飽和カルボン酸を添加する方法により安定液を製造することで、比較的粘度が低い材料により製造できるため、取り扱いが容易であることが明らかになった。また、この方法により得られた安定液の造壁性は、従来の安定液と同等であることが明らかになった。