(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098823
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】粉末固形化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20250625BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20250625BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20250625BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/02
A61K8/41
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215211
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健斗
(72)【発明者】
【氏名】喜納 貫
(72)【発明者】
【氏名】園山 悠治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB152
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB362
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC662
4C083AC691
4C083AD022
4C083AD152
4C083AD242
4C083BB06
4C083BB11
4C083BB21
4C083BB25
4C083BB26
4C083CC11
4C083DD17
4C083DD21
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】しっとりした使用感で肌に滑らかに塗布でき、なおかつ化粧持ちおよび耐衝撃性にも優れた固形粉末化粧料、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)化粧料全量に対して30質量%以上のマイカ;(B)親水性球状粉末;および(C)カチオン性界面活性剤を含有し、前記(A)マイカの少なくとも一部は、(a-1)未処理のマイカを(C)カチオン性界面活性剤で表面処理したマイカであり、前記(B)親水性球状粉末は、(b-1)未処理の親水性球状粉末を(C)カチオン性界面活性剤で表面処理した球状粉末を、化粧料全量に対して5質量%以上含有することを特徴とする粉末固形化粧料およびその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)化粧料全量に対して30質量%以上のマイカ;
(B)親水性球状粉末;および
(C)カチオン性界面活性剤を含有し、
前記(A)マイカの少なくとも一部は、(a-1)未処理のマイカを(C)カチオン性界面活性剤で表面処理したマイカであり、
前記(B)親水性球状粉末は、(b-1)未処理の親水性球状粉末を(C)カチオン性界面活性剤で表面処理した球状粉末を、化粧料全量に対して5質量%以上含有する、
ことを特徴とする粉末固形化粧料。
【請求項2】
(a-1)未処理のマイカを(C)カチオン性界面活性剤で表面処理したマイカの配合量が、化粧料全量に対して15~25質量%である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(C)カチオン性界面活性剤が、下記一般式(I):
[式中、R
1およびR
2は、各々独立に、炭素数6~35の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、X
-はハロゲンイオン又は有機アニオンである]
で表される第四級アンモニウム塩である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
第四級アンモニウム塩が、ジステアルジモニウムクロリドである、請求項3に記載の化粧料。
【請求項5】
(B)親水性球状粉末がシリカである、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項6】
(D)油分を更に含む、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項7】
(E)疎水化粉末(ただし、(A)マイカおよび(B)親水性球状粉末を母核とする粉末を除く)を更に含む、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項8】
タルクの配合量が5質量%以下である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項9】
(1)(A)マイカ、(B)親水性球状粉末、および(C)カチオン性界面活性剤を含む混合物を、極性溶媒に溶解ないし分散させてスラリーを形成する工程;
(2)前記スラリーを容器に充填する工程;および、
(3)極性溶媒を除去する工程;
を含む、請求項1に記載の粉末固形化粧料の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)における混合物が(D)油分を更に含む、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末固形化粧料に関する。より詳細には、しっとりした使用感があり、なおかつ化粧持ちの良好な粉末固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末固形化粧料は、粉末成分を主に油性の結合材で固めた構造を有し、ファンデーションやアイシャドウ等のメーキャップ化粧料の剤形として汎用されている。従来の粉末固形化粧料には、なめらかな使用感や柔らかな感触を付与する目的でマイクロプラスチックビーズ(MPB)を配合したものが多かった。しかし、MPBが環境等に与える影響に鑑み、特許文献1では、MPBを配合しない固形粉末化粧料を湿式成型(成形)で製造することが提案されている。
【0003】
特許文献1は、(A)フッ素処理タルク、(B)オルガノポリシロキサン処理シリカ、および(C)ステアリン酸処理微粒子酸化チタンという特定の表面処理を施した粉末と特定の油分とを所定量組み合わせて配合し、水とアルコール又は揮発性油を溶剤とする湿式製法で製造することにより、塗布時のなめらかさと耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料が得られるとしている。
タルクやマイカ等の体質顔料は、固形粉末化粧料の大きな部分を占める原料であり、その性質は化粧料の使用性にも影響する。特許文献1の化粧料は、湿式製法で製造されるが、配合される体質顔料のタルクがフッ素処理されていることが必要である。
【0004】
一方、乾式で製造される場合に、粉末表面をイオン性界面活性剤で処理すると、肌に対する滑らかさ、伸びのよさ、しっとり感が改善されることが知られている(特許文献2)。特許文献3には、カチオン性界面活性剤で表面処理した体質顔料を配合した粉体化粧料が、肌なじみ、肌への密着性、および化粧膜の均一性に優れることが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載された化粧料は、特許文献2と同様に乾式成型で製造されているため、いずれも粉っぽさや乾燥を感じることがあり、化粧持ちや耐衝撃性も十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6945809号公報
【特許文献2】特公平4-45483号公報
【特許文献3】特開2001-335410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、しっとりした使用感で肌に滑らかに塗布でき、なおかつ化粧持ちおよび耐衝撃性にも優れた粉末固形化粧料、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、体質顔料としてマイカを配合し、当該マイカの少なくとも一部をカチオン性界面活性剤で表面処理したものとするとともに、カチオン性界面活性剤で表面処理した球状粉末を共配合した粉末固形化粧料とすることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、前記の粉末固形化粧料は、湿式製法によって好適に製造できることも見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)化粧料全量に対して30質量%以上のマイカ;
(B)親水性球状粉末;および
(C)カチオン性界面活性剤を含有し、
前記(A)マイカの少なくとも一部は、(a-1)未処理のマイカを(C)カチオン性界面活性剤で表面処理したマイカであり、
前記(B)親水性球状粉末は、(b-1)未処理の親水性球状粉末を(C)カチオン性界面活性剤で表面処理した球状粉末を、化粧料全量に対して5質量%以上含有する、
ことを特徴とする粉末固形化粧料を提供する。
【0009】
さらに本発明は、
(1)(A)マイカ、(B)親水性球状粉末、(C)カチオン性界面活性剤、および(任意に)(D)油分を含む混合物を、極性溶媒に溶解ないし分散させてスラリーを形成する工程;
(2)前記スラリーを容器に充填する工程;および、
(3)極性溶媒を除去する工程;
を含む、前記の粉末固形化粧料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粉末固形化粧料は、体質顔料としてのマイカと、シリカ等の親水性球状粉末とを含み、それらの少なくとも一部をカチオン性界面活性剤で表面処理することによって、しっとりと滑らかな使用感を発揮し、耐衝撃性や化粧持ちにも優れている。
【0011】
また、本発明の粉末固形化粧料の製造方法は、カチオン性界面活性剤がスラリー形成の溶媒に溶解するため、製造工程を通して、配合した粉末成分の全てをカチオン性界面活性剤で表面処理されることになるが、カチオン性界面活性剤は未処理のマイカおよび未処理の親水性球状粉末の表面に特に吸着しやすいので、未処理のマイカや親水性球状粉末が選択的に表面処理される。その結果、各粉末成分を個別に表面処理しなくてもよく、前記の優れた特性を有する粉末固形化粧料を簡便に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<粉末固形化粧料>
本発明の一態様は、粉末固形化粧料(以下、単に「化粧料」ともいう)であり、(A)マイカ、(B)親水性球状粉末、および(C)カチオン性界面活性剤を必須成分として含む。
【0013】
(A)マイカ
本発明における「マイカ」(「成分A」ともいう)は、化粧料において使用されているものであればよい。「マイカ」(「雲母」ともいう)はケイ酸系鉱物からなる粉末であり、天然物としては「白雲母(硬質マイカ)」と「金雲母(軟質マイカ)」が汎用されている。合成物としては「合成金雲母(合成フルオロフロゴパイト)」が知られている。
本明細書では、特記しない限り、天然物および合成物を包含する上位概念を表す名称として「マイカ」を使用する。
【0014】
本発明の化粧料は、マイカ(成分A)を、化粧料全量に対して30質量%以上含むことが必要であり、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%含有する。マイカ(A成分)の配合量の上限は特に限定されないが、通常は、化粧料全量に対して70質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
本発明の化粧料におけるマイカ(成分A)の配合量範囲は、前記の下限値および上限値の間であればよく、例えば、化粧料全量に対して30~70質量%、35~65質量%、40~60質量%、あるいは下限値と上限値との別の組み合わせとすることができる。
【0015】
本明細書における「未処理のマイカ」とは、天然物または合成物の「マイカ」であって、表面処理を施されていないマイカを意味する。
本発明の化粧料におけるマイカ(成分A)は、「(a-1)未処理のマイカを(C)カチオン性界面活性剤で表面処理したマイカ」(「カチオン処理マイカ」または「成分a-1」ともいう)を含んでいる。
【0016】
「カチオン処理マイカ」(成分a-1)は、予めカチオン性界面活性剤で表面処理した未処理のマイカであってもよいし、未処理のマイカを原料として使用し、化粧料の製造工程の中で、カチオン性界面活性剤で表面処理したものであってもよい。
「カチオン処理マイカ」とは、未処理のマイカの表面の一部または全部にカチオン性界面活性剤が付着(または吸着)したものを意味し、例えば、カチオン性界面活性剤を溶解させた溶媒で未処理のマイカを被覆して溶媒を蒸発させること等により製造できる。これに対して、未処理のマイカと粉末状のカチオン性界面活性剤の混合物においてマイカと界面活性剤とが単に接触しているものは「カチオン処理マイカ」には該当しない。また、未処理のマイカをカチオン性界面活性剤以外の表面疎水化処理剤で処理し、その後にカチオン性界面活性剤で更に表面処理したものも、本発明における「カチオン処理マイカ」(成分a-1)には該当しない。
【0017】
本発明の化粧料では、マイカ(成分A)の少なくとも一部がカチオン処理マイカ(成分a-1)であることが必要である。
本発明の化粧料におけるカチオン処理マイカ(成分a-1)の配合量は、化粧料全量に対して15~25質量%とするのが好ましい。マイカ(成分A)の配合量に対するカチオン処理マイカ(成分a-1)の配合量の比率(質量比)である「(a-1)/(A)」の値を、0.3~1.0の範囲とするのが好ましく、より好ましくは0.4~0.9、さらに好ましくは0.5~0.8とする。
【0018】
マイカ(成分A)であってカチオン処理マイカ(成分a-1)に該当しないマイカ(「成分a-2」ともいう)は、未処理のマイカ(a-2(1));未処理のマイカをカチオン性界面活性剤以外の処理剤で疎水化処理したマイカ(a-2(2));および前記(a-2(2))の疎水化処理したマイカをカチオン性界面活性剤で更に表面処理したマイカ(a-2(3))を含む。
【0019】
ここで、「カチオン性界面活性剤以外の処理剤」とは、化粧料に配合する粉末の表面疎水化処理に使用される処理剤であって、カチオン性界面活性剤以外のものをいう。例えば、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ジメチコン、アモジメチコン等のシリコーン類;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等のフッ素化合物;N-アシルグルタミン酸等のアミノ酸類;レシチン;ステアリン酸マグネシウム、オクテニルコハク酸アルミニウム等の金属石鹸;脂肪酸;アルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0020】
本発明の化粧料は、成分a-2として、表面を疎水化処理したマイカ(前記のa-2(2)および/またはa-2(3))を含むのが好ましい。これらは、母核がマイカであるので、本明細書では、(E)疎水化粉末には属さず、(A)マイカに属するものとする。一方、本発明の化粧料は、未処理のマイカ(a-2(1))を多く含むと、粉っぽさを感じたり、化粧持ちや耐衝撃性が低下したりする場合がある。よって、本発明の化粧料における、未処理のマイカ(a-2(1))の配合量は、化粧料全量に対して3質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下とし、本発明の化粧料は、未処理のマイカ(a-2(1))を含まない態様を包含する。
【0021】
(B)親水性球状粉末
本発明における「親水性球状粉末」(「成分B」ともいう)は、形状が略球状であって、その表面が親水性を示す粉末をいう。略球状とは、真球または回転楕円体であり、長径/短径の比(楕円率)が、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下の粉末を意味する。
親水性とは、例えば、粉末を打錠機でプレスした成型体の表面に水を滴下して接触角を測定したとき、接触角が90度以下となる粉末を親水性と定義できる。
親水性球状粉末(B成分)の粒径は特に限定されないが、好ましくは1~20μm、より好ましくは5~10μmの平均粒径を持つ球状粉末が用いられる。本明細書における平均粒径とは、顕微鏡観察によって測定した粒子直径の算術平均値である。
【0022】
親水性球状粉末としては、球状シリカ粉末、デンプン、球状ガラスビーズ、球状セルロース、あるいは、表面に水酸基やカルボキシル基を導入して親水化した球状ナイロン粉末、球状ウレタン粉末などの高分子粉末を使用することができる。本発明の化粧料では、シリカ(無水ケイ酸)の球状粉末を用いるのが特に好ましい。
【0023】
本発明の化粧料における親水性球状粉末(B成分)の配合量範囲は、化粧料全量に対して、5~25質量%とするのが好ましく、より好ましくは7~20質量%、さらに好ましくは10~15質量%である。
【0024】
本明細書における「未処理の親水性球状粉末」とは、表面処理を施されていない親水性球状粉末を意味する。
本発明の化粧料における親水性球状粉末(B成分)は、「(b-1)未処理の親水性球状粉末を(C)カチオン性界面活性剤で表面処理した親水性球状粉末」(「カチオン処理球状粉末」または「成分b-1」ともいう)を含んでいる。
【0025】
「カチオン処理球状粉末」(成分b-1)は、予めカチオン性界面活性剤で表面処理した未処理の親水性球状粉末であってもよいし、未処理の親水性球状粉末を原料として使用し、化粧料の製造工程の中で、カチオン性界面活性剤で表面処理したものであってもよい。
「カチオン処理球状粉末」とは、未処理の親水性球状粉末の表面の一部または全部にカチオン性界面活性剤が付着(または吸着)したものを意味し、例えば、カチオン性界面活性剤を溶解させた溶媒で未処理の親水性球状粉末を被覆し、溶媒を蒸発させること等により製造できる。これに対して、未処理の親水性球状粉末と粉末状のカチオン性界面活性剤の混合物において親水性球状粉末と界面活性剤とが単に接触しているものは「表面処理された親水性球状粉末」には該当しない。また、未処理の親水性球状粉末をカチオン性界面活性剤以外の表面疎水化処理剤で処理し、その後にカチオン性界面活性剤で更に表面処理したものも、本発明における「カチオン処理球状粉末」(成分b-1)には該当しない。
【0026】
本発明の化粧料では、親水性球状粉末(B成分)がカチオン処理球状粉末(成分b-1)を含有し、当該カチオン処理球状粉末(成分b-1)の配合量を、化粧料全量に対して5質量%以上とすることが必要であり、7質量%以上とするのが好ましく、9質量%以上とするのが更に好ましい。カチオン処理球状粉末(成分b-1)の配合量が5質量%未満であると、滑らかな使用感が得られず、粉っぽさを感じるようになる。カチオン処理球状粉末の配合量の上限値は特に限定されないが、通常は20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。
【0027】
本発明の化粧料における親水性球状粉末(成分B)の配合量に対するカチオン処理球状粉末(成分b-1)の配合量の比率(質量比)である「(b-1)/(B)」は、0.6~1.0の範囲とするのが好ましく、より好ましくは0.7~0.9、さらに好ましくは0.75~0.85である。
【0028】
親水性球状粉末(成分B)であってカチオン処理球状粉末(成分b-1)に該当しない球状粉末(「成分b-2」ともいう)は、未処理の親水性球状粉末(b-2(1));未処理の親水性球状粉末をカチオン性界面活性剤以外の処理剤で疎水化処理した球状粉末(b-2(2));および前記(b-2(2))の疎水化処理した球状粉末をカチオン性界面活性剤で更に表面処理した球状粉末(b-2(3))を含む。「カチオン性界面活性剤以外の処理剤」とは上述の通りである。
【0029】
本発明の化粧料は、成分b-2として、表面を疎水化処理した球状粉末(前記のb-2(2)および/またはb-2(3))を含むのが好ましい。これらは、母核が親水性球状粉末であるので、本明細書では、(E)疎水化粉末には属さず、(B)親水性球状粉末に属するものとする。一方、本発明の化粧料は、未処理の親水性粉末(b-2(1))を多く含むと、湿式成型で製造したときに化粧料表面が硬くなり、化粧料のとれが悪くなる傾向がある。よって、本発明の化粧料における、未処理の親水性粉末(b-2(1))の配合量は、化粧料全量に対して3質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下とし、本発明の化粧料は、未処理の親水性粉末(b-2(1))を含まない態様を包含する。
【0030】
(C)カチオン性界面活性剤
本発明に使用するカチオン性界面活性剤としては、化粧料に配合可能なものであれば特に限定されない。中でも、下記一般式(I)で表される第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0031】
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、各々独立に、炭素数6~35の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、X
-はハロゲンイオン又は有機アニオンである。]
中でも、R
1およびR
2が、各々独立に、炭素数6~35の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R
3及びR
4が、各々独立に、水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、X
-はハロゲンイオン又は有機アニオンである第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0032】
より具体的には、炭素原子数6~35の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であるR1は、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ミリストレイル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノイル基、リノレイル基、リシノレイル基、イソステアリル基等が挙げられる。R2、R3及びR4は、上述のように、同一又は異なって水素原子又は炭素原子数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。また、Xは、塩素、ヨウ素、臭素等のハロゲンイオン、又は、メトサルフェート、エトサルフェート、メトホスフェート、エトホスフェート等の有機アニオンが挙げられる。
【0033】
本発明において特に好適なカチオン性界面活性剤としては、R1、R2、R3及びR4がのうちの2つが炭素数18のアルキル基であり残りの2つがメチル基でありXが塩素であるジステアリルジメチルアンモニウムクロリド(=ジステアルジモニウムクロリド)、R1、R2、R3及びR4がのうちの1つが炭素数22のアルキル基であり残りの3つがメチル基でありXが塩素であるベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(=ベヘントリモニウムクロリド)、R1、R2、R3及びR4がのうちの1つが炭素数18のアルキル基であり残りの3つがメチル基でありXが塩素であるステアリルトリメチルアンモニウムクロリド(=ステアルトリモニウムクロリド)、R1、R2、R3及びR4がのうちの1つが炭素数16のアルキル基であり残りの3つがメチル基でありXが塩素であるセチルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これらの中でも、ジステアルジモニウムクロリドが好ましく用いられる。
【0034】
本発明の化粧料におけるカチオン性界面活性剤(成分C)は、粉末の表面に付着(または吸着)した状態で存在するのが好ましい。特に、カチオン性界面活性剤が、未処理のマイカおよび未処理の親水性球状粉末の表面に主に付着(または吸着)した状態(「表面被覆状態」ともいう)とするのが好ましい。
【0035】
例えば、未処理のマイカおよび未処理の親水性球状粉末を予めカチオン性界面活性剤で表面処理するなどしてカチオン処理マイカおよびカチオン処理球状粉末を入手し、それらを含む原料から、湿式成型または乾式成型を用いて製造することにより、カチオン性界面活性剤が表面被覆状態で存在する化粧料を得ることができる。
【0036】
あるいは、未処理のマイカおよび未処理の親水性球状粉末を含む原料から、カチオン性界面活性剤を溶解した溶剤でスラリーを形成する湿式成型を用いて製造することにより、カチオン性界面活性剤が表面被覆状態で存在する化粧料を得ることができる。この方法では、未処理のマイカおよび未処理の親水性球状粉末以外の粉末の表面にもカチオン性界面活性剤が付着するが、粉末表面の疎水性/親水性および表面電荷等により、カチオン性界面活性剤は、疎水化処理された粉末表面より、未処理のマイカまたは未処理の親水性球状粉末の表面に優先的に付着すると考えられる。
【0037】
本発明の化粧料におけるカチオン性界面活性剤(成分C)の配合量は、化粧料全量に対して0.1~2.0質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.3~1.5質量%、さらに好ましくは0.5~1.2質量%である。配合量が0.1質量%未満であると、滑らかでしっとりした使用感が得られない場合がある。
【0038】
本発明の化粧料は、上記の(A)マイカ、(B)親水性球状粉末、および(C)カチオン性界面活性剤に加えて、固形粉末化粧料に配合され得る他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
【0039】
(D)油分
本発明の化粧料に配合される油分(「成分D」ともいう)は、通常の化粧料に用いられるものであればよく、特に限定されない。例えば、常温(25℃)で液状の油分としては、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、高級アルコール、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系油、油性の紫外線吸収剤などが挙げられる。また、常温(25℃)で固形状または半固形状の油分(「固形油分または半固形油分」)を含んでもよい。
【0040】
炭化水素油としては、水添ポリデセン、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、スクワレン、ワセリン等が挙げられる。エステル油としては、トリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が例示できる。
【0041】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の変性シリコーン(フェニル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等)が挙げられる。
固形油分または半固形油分としては、例えば、マカデミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネート等の半固形油、シリコーンエラストマーペーストなどのペースト状油が挙げられる。
【0042】
本発明の化粧料における油分(D成分)の配合量は、特に限定されないが、通常は化粧料全量に対して1~20質量%とすることが好ましく、より好ましくは3~15質量%、さらに好ましくは5~12質量%である。
【0043】
(E)疎水化粉末
本発明の化粧料には、表面を疎水化処理した粉末(「疎水化粉末」または「成分E」という)を更に配合するのが好ましい。本発明における「疎水化粉末」(成分E)は、未処理の粉末(ただし、マイカおよび親水性球状粉末を除く)の表面を任意の処理剤(カチオン性界面活性剤を含む)で疎水化処理した粉末と、カチオン性界面活性剤以外の処理剤で表面疎水化処理した粉末をカチオン性界面活性剤で更に表面処理した粉末とを含む。「カチオン性界面活性剤以外の処理剤」とは上述の通りである。すなわち、母核(基材)が(A)マイカまたは(B)親水性球状粉末である粉末は「疎水化粉末」(成分E)に含まれない。
【0044】
疎水化粉末(成分E)の母核となる粉末としては、例えば、体質顔料(ただし、マイカを除く)、無機顔料(白色顔料、着色顔料)、有機顔料、パール剤、紫外線散乱剤、その他の無機粉末および有機粉末(ただし、親水性球状粉末を除く)等が挙げられる。具体例には以下を含むが、これらに限られない。
窒化ホウ素、硫酸バリウム、カオリン、絹雲母(セリサイト)、タルク、焼成タルク、焼成セリサイト、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン)、還元亜鉛華;有機粉末(例えば、でんぷん粉末、ラウロイルリシン粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色顔料(例えば、赤酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色顔料(例えば、γ-酸化鉄等);無機黄色顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色顔料(例えば、群青、紺青等);パール剤(例えば、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等);紫外線散乱剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等)。
【0045】
本発明の化粧料は、疎水化粉末(成分E)を、化粧料全量に対して5~30質量%含有するのが好ましく、より好ましくは10~25質量%、さらに好ましくは15~22質量%含有する。
なお、本発明の化粧料にタルクを配合すると、塗布した際の滑らかさが低下し、粉っぽい感触となる場合がある。よって、本発明の化粧料におけるタルクの配合量は、10質量%以下とするのが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。本発明の化粧料は、タルクを含有しない態様を包含する。
【0046】
本発明の化粧料は、カチオン性界面活性剤で表面処理された親水性球状粉末(成分b-1)を所定量含有しているので、塗布した際の滑らかさやしっとり感、および化粧持ちにも優れる。したがって、本発明の化粧料は、従来は使用性の改善のために配合されていたマイクロプラスチックビーズ(MPB)を含まない態様も包含する。
【0047】
本発明の化粧料に配合しうる他の任意成分としては、例えば、保湿剤、酸化防止剤、防腐剤、各種薬剤、香料などを挙げることができるが、これらに限られない。
【0048】
<製造方法>
本発明の別の態様は、
(1)(A)マイカ、(B)親水性球状粉末、および(C)カチオン性界面活性剤を含む混合物を、極性溶媒に溶解ないし分散させてスラリーを形成する工程;
(2)前記スラリーを容器に充填する工程;および、
(3)極性溶媒を除去する工程;
を含む、粉末固形化粧料の製造方法である。
【0049】
本発明の製造方法は、極性溶媒を用いた湿式成型を用いる固形粉末化粧料の製造方法である。前記の工程(1)における混合物には、(D)油分、(E)疎水化粉末および他の任意成分を添加してもよく、必要に応じて加熱することによりスラリーを形成する。
具体的には、ディスパーミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、コンビミックス(登録商標)、アジホモミキサー及び二軸混練機などの装置に、溶媒および原料混合物を投入して混合/分散する。
【0050】
本発明の製造方法における極性溶媒は、水または水と水性溶剤との混合物を用いるのが好ましい。水性溶剤としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低沸点アルコールが例示できる。
極性溶媒としては、水を主成分とする溶媒を用いるのが好ましい。即ち、水のみ、あるいは、低沸点アルコールを水に溶解したアルコール水溶液が好ましく、アルコール水溶液中の低沸点アルコール濃度は、50質量%以下とするのが好ましい。
【0051】
本発明の製造方法では、(A)マイカ、(B)親水性球状粉末、および(C)カチオン性界面活性剤を含む混合物を、極性溶媒に溶解ないし分散させて形成したスラリーでは、(C)カチオン性界面活性剤が極性溶媒に溶解しているため、(A)マイカおよび(B)親水性球状粉末を含む全部の粉末成分の表面がカチオン性界面活性剤で表面処理される。その結果、乾式成型で製造した場合に比較して化粧持ちが更に向上する。
【0052】
スラリー形成工程における原料混合物と溶媒との配合量比率(質量比)は、原料混合物(質量)/溶媒(質量)の値が、1/7~1/11の範囲内とするのが好ましく、より好ましくは1/9~1/11である。
【0053】
次いで、工程(2)において、工程(1)で得られたスラリーを容器に充填し、溶媒を除去しながら圧縮成型する(工程(3))。
圧縮成型を実施する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スラリーを射出充填などにより金属や樹脂製の中皿等の容器内に充填し、充填されたスラリー中の溶媒を吸引または吸収して除去しながら圧縮成型することにより、本発明の化粧料を得る。
【0054】
本発明に係る化粧料は、塗布の際に滑らかでしっとりした使用感を持つ粉末固形化粧料として、例えば、ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディーパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、プレスドパウダー、デオドラントパウダー、おしろい等のメーキャップ化粧料の形態で提供することができる。
【実施例0055】
以下に、具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例における配合量は特に断らない限り、化粧料全量に対する質量%を示す。
【0056】
下記の表1及び表2に記載した処方の粉末固形化粧料を調製した。表中、「製造方法」の欄に「湿式」と記載されている例は下記の<湿式成型法>を用いて製造し、「乾式」と記載されている例は下記の<乾式成型法>を用いて製造した。なお、表中に記載した符号は以下の意味である。
(*1)ジステアリルジモニウムクロリド処理マイカ
(*2)アモジメチコン処理マイカ
(*3)ステアリン酸Mg処理合成金雲母
(*4)ジメチコン処理シリカ
(*5)ジステアリルジモニウムクロリド処理マイカ
(*6)オクテニルコハク酸Al処理でんぷん粉末
【0057】
<湿式成型法>
(A)成分1~26を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、さらにパルペライザーを用いて粉砕して均一な混合物を得る。
(B)(A)の混合物に等量の溶媒(水)を添加し、ディスパーミキサーを用いて混合してスラリーを得る。
(C)(B)のスラリーを中皿に充填し、前記溶媒を吸引除去した後乾燥を行い、固形粉末化粧料を得る。
【0058】
<乾式成型法>
(A)成分1~17を混合する。
(B)成分18~26を均一に混合する
(C)(A)に(B)を添加し、均一に混合する。
(D)(C)を粉砕し、中皿に圧縮成型して固形粉末化粧料を得る。
【0059】
各例の化粧料について、(1)使用性、(2)化粧持ち、(3)耐衝撃性、および(4)成型性を評価した。評価方法は以下の通りである。各例の化粧料についての評価結果を下記の表2に示す。
【0060】
(1)使用性評価
5名の化粧品専門パネルで各例の固形粉末化粧料を肌に塗布してもらい、「塗布した際の滑らかさ」、「粉っぽさのなさ」、「ツヤ」、「しっとりさ」について5段階評価しした。
A:非常に良い
B:良い
C:普通(基準)
D:悪い
E:非常に悪い
【0061】
(2)化粧持ち評価
5名の化粧品専門パネルに各例の固形粉末化粧料を肌に塗布してもらい、3時間後に専門評価者3名に「ヨレ評価」及び「テカリ評価」に基づいて、下記の評価基準に基づき5段階評価した。
A:非常に良い(ヨレ、テカリがない又は極めて少ない)
B:良い
C:普通(標準)
D:悪い
E:非常に悪い(ヨレ、テカリが非常に感じられる)
【0062】
(3)耐衝撃性評価
各例の固形粉末化粧料(試料数N=3)を化粧品用のコンパクト容器にセットし、化粧料面が下向きの状態で30cmの高さから金属板上に落下させ、割れるまでの回数を調べた。各例につき、3試料が割れた回数の平均値に基づいて、以下のように判定した。
A:7回以上
B:5回以上かつ7回未満
C:3回以上かつ5回未満
D:3回未満
【0063】
(4)成型性
各例の固形粉末化粧料について、樹脂製の中皿に、湿式の場合はスラリーを、乾式の場合は粉末化粧料を充填して加圧成型した。成型時および成型後の状態を以下の評価基準に基づいて評価した。
<湿式>
A:スラリーに適度な硬度があり非常に成型がしやすい
B:成型時に中皿から若干漏れがあるが成型可能
C:スラリーが少しやわらかく中味漏れがあるが成型可能
D:スラリーがやわらかく、中味が漏れてしまい成型が難しい
E:成型後に中味がほとんど漏れてしまい成型できない
<乾式>
A:粉末に油分が適度に含まれていて成型しやすい
B:粉末の油分量が若干少ないが成型可能
C:普通
D:得られた成型体がもろく成型しにくい
E:加圧後も粉末状で成型不能
【0064】
【0065】
【0066】
表1に記載した結果によれば、(A)マイカの合計配合量が30質量%以上であり、(a-1)カチオン処理マイカを含み、なおかつ(b-1)カチオン処理球状粉末(カチオン処理シリカ)を5質量%以上配合した本発明の化粧料は、評価した項目の全てにおいて満足できるものであった。中でも、(a-1)カチオン処理マイカの配合量を15質量%以上とした実施例1、2、4及び5は、(a-1)カチオン処理マイカの配合量が10質量%の実施例3よりも、しっとりした使用感及び化粧持ちにおいて優れていた。また、(a-1)カチオン処理マイカの配合量が30質量%を超える実施例2に比較して、25質量%以下である実施例1、4及び5の方が、塗布した際の滑らかさが優れていた。
【0067】
なお、未処理のマイカ及び未処理の親水性球状粉末(シリカ)のカチオン性界面活性剤による処理は、湿式成型の工程内で実施した場合(実施例1~4)と予め表面処理した原料を使用した場合(実施例5)との間に有意な差は見られず、いずれの方法でも良好な化粧料が得られることが確認された。
これに対して、実施例1と同じ処方の化粧料を乾式成型で製造した場合、即ち、カチオン性界面活性剤(ジステアリルジモニウムクリリド)がマイカ及び親水性球状粉末の表面に吸着(付着)せず、固体状で化粧料内に存在する場合は、評価した全ての項目で劣る結果となった(比較例1)。
【0068】
一方、表2に示した結果では、(a-1)カチオン処理マイカ及び(b-1)カチオン処理球状粉末を含まない比較例2は、全ての項目で低い評価となり、いずれか一方を含まない比較例3及び比較例7でも、満足できる化粧料が得られなかった。また、(b-1)カチオン処理球状粉末の配合量が5質量%に満たない比較例6は、特に、塗布したときの滑らかさに欠け、粉っぽい感触の化粧料となった。さらに、化粧料におけるマイカの配合量が30質量%未満となる比較例4は、全ての項目で低レベルの評価となり、マイカとタルクの合計配合量を30質量%以上としても、マイカの配合量が30質量%未満であると、しっとりした使用感触及び塗布した際の滑らかさやツヤが得られなかった(比較例5)。