IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特開2025-98844印刷フィルムの製造方法及びその製造装置
<>
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図1
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図2
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図3
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図4
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図5
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図6
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図7
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図8
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図9
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図10
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図11
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図12
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図13
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図14
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図15
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図16
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図17
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図18
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図19
  • 特開-印刷フィルムの製造方法及びその製造装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098844
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】印刷フィルムの製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250625BHJP
【FI】
B41J2/01 121
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215242
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 眞太郎
(72)【発明者】
【氏名】殷 興龍
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA05
2C056FA10
2C056FB02
2C056FD20
2C056HA41
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】 改質されたフィルムの表面にインクジェット方式にてインクを良好に付着させることができる印刷フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 表面改質処理を行ったフィルム1に、インクジェット方式で紫外線硬化型インクを印刷して印刷フィルムを製造する方法において、ステージ部2と、横方向に移動可能な改質処理部3と、横方向に移動可能なインクジェットヘッド部4と、紫外線照射部5と、を有する装置Aを用い、前記ステージ部2上にフィルム1を固定する工程、前記改質処理部3を前記フィルム1の横方向に移動させて、前記フィルム1の表面のうち、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行う改質工程、前記インクジェットヘッド部4を前記フィルム1の横方向に移動させて、前記改質済みの帯状領域B-1に横方向に沿って複数の表示Cを印刷する印刷工程、前記紫外線照射部5から前記帯状領域B-1に紫外線を照射する硬化工程、を有する。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面改質処理を行ったフィルムに、インクジェット方式で紫外線硬化型インクを印刷して印刷フィルムを製造する方法において、
ステージ部と、横方向に移動可能な改質処理部と、横方向に移動可能なインクジェットヘッド部と、紫外線照射部と、を有する装置を用い、
前記ステージ部上にフィルムを固定する工程、
前記改質処理部を前記フィルムの横方向に移動させて、前記フィルムの表面のうち、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行う改質工程、
前記インクジェットヘッド部を前記フィルムの横方向に移動させて、前記改質済みの帯状領域に横方向に沿って複数の表示を印刷する印刷工程、
前記紫外線照射部から前記帯状領域に紫外線を照射する硬化工程、を有する、印刷フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記改質工程が、
前記改質処理部を前記フィルムの横方向に移動させて、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行う工程、
前記改質済みの帯状領域を基準にしてそれよりも縦方向にずれた位置で、前記改質処理部を前記フィルムの横方向に移動させて、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行い、これを順に繰り返す工程、を有し、
前記改質済みの帯状領域を前記フィルムに複数形成した後に、前記印刷工程を行う、請求項1に記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記改質工程が、
前記改質処理部を前記フィルムの横方向第1端部から第2端部に移動させた後、前記フィルムの横方向第2端部から横方向第1端部に移動させることを含み、
前記改質処理部を前記フィルムの横方向第2端部に移動させた際に、前記改質処理部による表面改質処理を一時的に停止する、請求項1に記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記印刷工程が、
前記インクジェットヘッド部を前記フィルムの横方向に移動させて、改質済みの1つの帯状領域に複数の表示を印刷する工程、
前記表示が印刷された帯状領域を基準にしてそれよりも縦方向にずれた位置で、前記インクジェットヘッド部を前記フィルムの横方向に移動させて、次の改質済みの帯状領域に複数の表示を印刷し、これを順に繰り返す工程、を有する、請求項2に記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記硬化工程が、前記印刷工程によって全ての改質済みの帯状領域に表示を印刷した後に行われ、
前記硬化工程が、
前記印刷済みの帯状領域のうち、印刷済みの1つの帯状領域の全体に紫外線を照射する工程、
前記紫外線照射済みの帯状領域を基準にしてそれよりも縦方向にずれた位置で、印刷済みの1つの帯状領域の全体に紫外線を照射し、これを順に繰り返す工程、を有する、請求項4に記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記表面改質処理が、コロナ放電処理を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項7】
フィルムに表面改質処理を行い、前記フィルムにインクジェット方式で紫外線硬化型インクを印刷する製造装置において、
前記フィルムを固定するためのステージ部であって横方向に並んで配置された複数のステージ部と、
横方向に移動可能な改質処理部と、
横方向に移動可能なインクジェットヘッド部と、
紫外線照射部と、を有し、
前記複数のステージ部が、互いに独立して縦方向に移動可能に構成されており、
前記改質処理部及びインクジェットヘッド部が、前記複数のステージ部を横断するように横方向に移動可能に構成されている、印刷フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式でフィルムに所望の表示を印刷して印刷フィルムを製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムに所望の表示を印刷する方法は、グラビア印刷などの有版印刷方式と、インクジェット印刷などの無版印刷方式と、に大別できる。無版印刷方式は、版を使用しないので、オンデマンドな印刷フィルムを作製できる点で優れている。無版印刷方式の中でもインクジェット方式は、設備が比較的安価である上、綺麗な表示を素早く印刷できる。
しかしながら、フィルムの材質によっては、フィルム表面のインクに対する濡れ性が悪いため、フィルムに表面改質処理を施すことが行われる。
例えば、特許文献1の[0051]には、印字ヘッド10aを有するヘッド部10の前後に紫外線照射装置16,16が設けられたヘッドキャリッジ6を移動させ、印字前のメディアに前方の紫外線照射装置16により紫外線を照射し、前記紫外線照射直後に、前記メディアに印字ヘッド10aからインクを吐出して印字を行った後、後方の紫外線照射装置16により紫外線を照射してインクを固定化する描写装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-110844号公報
【発明の概要】
【0004】
上記描写装置は、印字ヘッド及び紫外線照射装置を同時に移動させ、メディアの表面改質、印字、インク硬化を一連に行っている。
しかしながら、上記描写装置は、印字ヘッドと紫外線照射装置がヘッドキャリッジに一体的に設けられているため、紫外線照射時間が不十分になり、良好な改質処理を行えないおそれがある上、インクに対する紫外線照射時間が短く、インクが良好に硬化しない場合がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フィルムの表面を改質し、改質されたフィルムの表面にインクジェット方式にてインクを良好に付着させ且つ良好に硬化させることができる印刷フィルムの製造方法及びその製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1形態に係る印刷フィルムの製造方法は、表面改質処理を行ったフィルムに、インクジェット方式で紫外線硬化型インクを印刷して印刷フィルムを製造する方法において、ステージ部と、横方向に移動可能な改質処理部と、横方向に移動可能なインクジェットヘッド部と、紫外線照射部と、を有する装置を用い、前記ステージ部上にフィルムを固定する工程、前記改質処理部を前記フィルムの横方向に移動させて、前記フィルムの表面のうち、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行う改質工程、前記インクジェットヘッド部を前記フィルムの横方向に移動させて、前記改質済みの帯状領域に横方向に沿って複数の表示を印刷する印刷工程、前記紫外線照射部から前記帯状領域に紫外線を照射する硬化工程、を有する。
【0007】
第2形態に係る印刷フィルムの製造方法は、上記第1形態の製造方法において、前記改質工程が、前記改質処理部を前記フィルムの横方向に移動させて、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行う工程、前記改質済みの帯状領域を基準にしてそれよりも縦方向にずれた位置で、前記改質処理部を前記フィルムの横方向に移動させて、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行い、これを順に繰り返す工程、を有し、前記改質済みの帯状領域を前記フィルムに複数形成した後に、前記印刷工程を行う。
第3形態に係る印刷フィルムの製造方法は、上記第1又は第2形態のいずれかの製造方法において、前記改質工程が、前記改質処理部を前記フィルムの横方向第1端部から第2端部に移動させた後、前記フィルムの横方向第2端部から横方向第1端部に移動させることを含み、前記改質処理部を前記フィルムの横方向第2端部に移動させた際に、前記改質処理部による表面改質処理を一時的に停止する。
【0008】
第4形態に係る印刷フィルムの製造方法は、上記第1乃至第3形態のいずれかの製造方法において、前記印刷工程が、前記インクジェットヘッド部を前記フィルムの横方向に移動させて、改質済みの1つの帯状領域に複数の表示を印刷する工程、前記表示が印刷された帯状領域を基準にしてそれよりも縦方向にずれた位置で、前記インクジェットヘッド部を前記フィルムの横方向に移動させて、次の改質済みの帯状領域に複数の表示を印刷し、これを順に繰り返す工程、を有する。
第5形態に係る印刷フィルムの製造方法は、上記第1乃至第4形態のいずれかの製造方法において、前記硬化工程が、前記印刷工程によって全ての改質済みの帯状領域に表示を印刷した後に行われ、前記硬化工程が、前記印刷済みの帯状領域のうち、印刷済みの1つの帯状領域の全体に紫外線を照射する工程、前記紫外線照射済みの帯状領域を基準にしてそれよりも縦方向にずれた位置で、印刷済みの1つの帯状領域の全体に紫外線を照射し、これを順に繰り返す工程、を有する。
第6形態に係る印刷フィルムの製造方法は、上記第1乃至第5形態のいずれかの製造方法において、前記表面改質処理が、コロナ放電処理を含む。
【0009】
別の局面では、印刷フィルムの製造装置が提供される。
印刷フィルムの製造装置は、フィルムに表面改質処理を行い、前記フィルムにインクジェット方式で紫外線硬化型インクを印刷する製造装置において、前記フィルムを固定するためのステージ部であって横方向に並んで配置された複数のステージ部と、横方向に移動可能な改質処理部と、横方向に移動可能なインクジェットヘッド部と、紫外線照射部と、を有し、前記複数のステージ部が、互いに独立して縦方向に移動可能に構成されており、前記改質処理部及びインクジェットヘッド部が、前記複数のステージ部を横断するように横方向に移動可能に構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法及び製造装置によれば、フィルムの表面のうち帯状領域に対して表面改質処理を行った後、その改質済みの帯状領域にインクジェット方式にて紫外線硬化型インクを付着させて表示を印刷する。このように改質済みの帯状領域をフィルムに形成することにより、当該改質済みの帯状領域が安定し、インクを良好に付着させ且つ良好に硬化させることができ、綺麗な表示をフィルムに印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】印刷対象のフィルムの平面図。
図2】印刷対象のフィルムの1つの層構成例を示す参考側面図。
図3】同フィルムの他の層構成例を示す参考側面図。
図4】同フィルムの他の層構成例を示す参考側面図。
図5】印刷フィルムの製造装置の平面図。
図6図5の矢印VI方向から見た同製造装置の正面図。
図7図5の矢印VII方向から見た同製造装置の側面図。
図8図6のVIII-VIII線で切断した断面図。
図9】製造装置のステージ部にフィルムを載せて固定した状態を示す平面図。
図10】改質工程の過程で、改質処理部を横方向に移動させて、フィルムの帯状領域に表面改質処理を行う過程を示す正面図。
図11】改質処理部がフィルムの横方向第2端部に到達した状態を示す平面図。
図12】改質工程の過程で、ステージ部を縦方向に移動させ、フィルムを縦方向にずらした状態を示す平面図。
図13】改質処理部がフィルムの横方向第1端部に到達した状態を示す平面図。
図14】(a)は、表面改質処理の過程でフィルムの表面に形成される改質済みの帯状領域を示す平面図、(b)は、表面改質処理が完了した後のフィルムの表面に形成される改質済みの帯状領域を示す平面図。
図15】印刷工程の過程で、インクジェットヘッド部によって、フィルムの改質済みの帯状領域に印刷を行う状態を示す平面図。
図16】(a)は、印刷工程の過程で1つの改質済みの帯状領域に複数の表示が印刷された状態を示す平面図、(b)は、2つの改質済みの帯状領域に複数の表示が印刷された状態を示す平面図、(c)は、全ての改質済みの帯状領域に複数の表示が印刷された状態を示す平面図。
図17】硬化工程の過程で、ステージ部を縦方向に移動させた状態を示す平面図。
図18】第1ステージ部に固定したフィルムに対して印刷を行っている間に、第2ステージ部にフィルムを載せて固定した状態を示す平面図。
図19】印刷フィルムに切断線を形成して複数の製品を得る状態を示す平面図。
図20】変形例に係る製造装置の参考正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[フィルム]
印刷対象であるフィルム1は、形状の観点では、例えば、図1に示すような、大判の枚葉状などである。前記枚葉状のフィルム1の平面視形状は、例えば、長方形状又は正方形状である。枚葉状のフィルム1の大きさは、特に限定されないが、例えば、縦×横=10cm以上100cm以下×10cm以上100cm以下である。ただし、フィルム1の形状は、これらに限定されるわけではない。なお、平面視形状は、フィルムの表面に対して鉛直方向から見た形状をいう。
層構成の観点では、フィルム1の層構成は、単層でもよく、或いは、複層でもよい。
フィルム1が複層フィルムである場合、その層数は、2以上であり、その上限は特にないが、一般的には10以下である。
機能的な観点では、フィルム1は、光学機能を有するフィルム(以下、「光学機能フィルム」という)を含んでいてもよく、或いは、光学機能を有さないフィルム(以下、「光学機能フィルム以外のフィルム」という)でもよい。
フィルム1の厚みは、特に限定されず、例えば、10μm以上2mm以下である。
【0013】
図2乃至図4は、フィルム1の層構成を例示している。
図2に示すフィルム1は、例えば、3層の複層フィルムである。前記複層フィルムは、紙面上側から順に、第1構成層11と、第2構成層12と、第3構成層13と、を有する。
図3に示すフィルム1は、5層の複層フィルムである。前記複層フィルムは、紙面上側から順に、第4構成層14と、第5構成層15と、第6構成層16と、第7構成層17と、第8構成層18と、を有する。
図4に示すフィルム1は、単層フィルムである。前記単層フィルムは、第9構成層19を有する。
前記単層フィルム及び複層フィルムをそれぞれ構成する層は、特に限定されず、光学機能フィルム;表面保護フィルム;はく離ライナー;光学機能フィルム以外のフィルム;粘着剤層;オーバーコート層などの任意の適切な層;などが挙げられる。
【0014】
幾つかの例を挙げると、例えば、1つの例のフィルム1は、図2に示す第1構成層11が表面保護フィルムで、第2構成層12が粘着剤層で、第3構成層13が光学機能フィルムである。他の例のフィルム1は、図2に示す第1構成層11が表面保護フィルムで、第2構成層12が光学機能フィルムで、第3構成層13が光学機能フィルム以外のフィルムである。他の例のフィルム1は、図2に示す第1構成層11が光学機能フィルム以外のフィルムで、第2構成層12が粘着剤層で、第3構成層13がはく離ライナーである。
また、他の例のフィルム1は、図3に示す第4構成層14が表面保護フィルムで、第5構成層15が粘着剤層で、第6構成層16が光学機能フィルムで、第7構成層17が粘着剤層で、第8構成層18がはく離ライナーである。他の例のフィルム1は、図3に示す第4構成層14が表面保護フィルムで、第5構成層15が粘着剤層で、第6構成層16が光学機能フィルムで、第7構成層17が粘着剤層で、第8構成層18が表面保護フィルムである。
また、他の例のフィルム1は、図4に示す第9構成層19が光学機能フィルムである。
【0015】
前記光学機能フィルムには、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、光反射フィルムなどが含まれる。前記偏光フィルムは、特定の1つの方向に振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有するフィルムである。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などの延伸フィルムなどが挙げられる。前記光学機能フィルムは、前記偏光フィルムや位相差フィルムなどから選ばれる1種のみから構成されていてもよく、或いは、前記偏光フィルムや位相差フィルムなどから選ばれる2種以上が無色透明な粘着剤又は接着剤を介して積層接着されているものでもよい。
【0016】
前記表面保護フィルムとしては、例えば略等方性の無色透明なフィルムなどが挙げられる。前記略等方性の無色透明なフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリエチレン、環状若しくはノルボルネン構造を有するポリオレフィンなどのオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン6などのアミド系樹脂;イミド系樹脂;スルホン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;などを主たる樹脂成分とする樹脂フィルムを用いることができる。
【0017】
前記はく離ライナーは、粘着剤層の粘着力を隠蔽するためのフィルムである。はく離ライナーは、粘着剤層に対するはく離性を有し、通常、使用時に剥離される。はく離ライナーは、特に限定されないが、通常、光学機能フィルム以外のフィルムが用いられる。
【0018】
前記粘着剤層は、常温で粘着性を有し、その粘着性が長期間持続するものである。粘着剤層は、公知の粘着剤によって構成される。前記粘着剤は、無色透明であり、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。
【0019】
[印刷フィルムの製造装置]
図5は、1つの例示的な製造装置Aの平面図であり、図6は、同製造装置Aの正面図であり、図7は、同製造装置Aの左側面図である。図8は、図6のVIII-VIII線で切断した断面図であり、同製造装置Aのアーム部61を下方から上方に向かって見た図である。図6において、ステージ部の一部分を断面で表している。また、図8において、支柱部62の内部構造は表していない。
図5乃至図8を参照して、印刷フィルムの製造装置Aは、フィルムに表面改質処理を行い、前記フィルムにインクジェット方式で紫外線硬化型インクを付着させて所望の表示を印刷する。前記製造装置Aは、ベース台63と、前記ベース台63上に設けられ且つ印刷対象であるフィルムを固定するためのステージ部2と、横方向に移動可能な改質処理部3と、横方向に移動可能なインクジェットヘッド部4と、紫外線硬化型インクを硬化させるために紫外線を照射する紫外線照射部5と、を有する。ここで、縦方向と横方向は、フィルムの表面に対して平行な面の面内において互いに直交する方向をいう。前記ベース台63は、製造装置Aを構成する各種のパーツ(ステージ部2など)を設けるための装置の基礎部分である。
【0020】
<ステージ部>
ステージ部2は、印刷対象のフィルムが不用意に動かないにように、前記フィルムを一時的に固定する。ステージ部2は、1つだけ設けられていてもよいが、作業時間の短縮化の観点から複数設けられていることが好ましい。ステージ部2が複数設けられる場合、それらのステージ部2はベース台63上に横方向に並んで配置される。1つの実施形態では、2つのステージ部2が横方向に並設されている。ただし、ステージ部2は、2つに限定されるわけではない。以下、2つのステージ部2を区別しながら説明する際に、その一方を「第1ステージ部2-1」といい、もう一方を「第2ステージ部2-2」という。
【0021】
第1ステージ部2-1は、前記ベース台63上に設けられている。第1ステージ部2-1は、フィルムを載せる台座部23と、前記台座部23の所定位置にフィルムを位置決めするための位置決め部24と、前記台座部23の所定位置に載せたフィルムを一時的に保持する保持手段25と、前記台座部23を縦方向に移動させるステージ移動手段26と、を有する。前記第1ステージ部2-1の台座部23の表面は、平坦状であり、フィルムの平面視形状よりも十分に大きい。前記第1ステージ部2-1の位置決め部24は、例えば、フィルムの2つの辺に対応して、平面視で直交する方向に2箇所設けられている。位置決め部24は、フィルムと略同厚又はフィルムの厚みよりも少し肉厚の薄板体からなり、前記台座部23の表面に取り付けられている。フィルムの1つの角部を構成する2つの辺を前記位置決め部24に当てることにより、フィルムを位置決めできる。つまり、フィルムを位置決め部24に当てることにより、フィルムを台座部23の所定位置に載せることができる。以下、台座部23の表面のうちフィルムを所定位置に載せる領域を「載置領域」という。
【0022】
前記第1ステージ部2-1の保持手段25は、載置領域に載せたフィルムが不用意に動かないように台座部23に固定する。また、保持手段25は、印刷作業完了後に印刷フィルムを台座部23から取り外すことができるように、前記固定を解除する。保持手段25は、特に限定されないが、例えば、フィルムをエアーにて吸着する機構を用いることができる。フィルムを吸着する保持手段25は、例えば、台座部23に形成された通気孔251と、台座部23の裏面側に設けられた閉塞空洞部252と、前記閉塞空洞部252内のエアーを吸引する吸引機(図示せず)と、を有する。前記通気孔251は、前記閉塞空洞部252と台座部23の表面との間に貫通されている。真空ポンプなどの吸引機によって閉塞空洞部252内のエアーを吸引することにより、前記閉塞空洞部252内が負圧になり、フィルムが通気孔251を通じて台座部23の表面に引き寄せられて固定される。一方、前記吸引機による吸引を停止すると、閉塞空洞部252内が常圧に戻り、フィルムの吸着が解除され、フィルムを台座部23から容易に取り外すことができる。
【0023】
前記ステージ移動手段26は、台座部23を縦方向に平行移動させる。ステージ移動手段26は、例えば、ベース台63上に形成された案内レール261と、前記台座部23に設けられ且つ前記案内レール261に沿って転動する車輪262と、台座部23を縦方向に移動させるモーターなどのアクチュエーター(図示せず)と、を有する。ただし、ステージ移動手段26は、前記案内レール261及び車輪262に限られず、例えば、歯車及びベルトなどから構成されていてもよい。ホームポジションにある第1ステージ部2-1は、図示しない制御部(コンピューターなど)がステージ移動手段26を作動させることによって、ベース台63上をスライドするように縦方向第1側から縦方向第2側に移動でき、且つ、前記縦方向第2側に移動し、縦方向第1側にも移動できる。なお、縦方向第1側は、縦方向における一方側をいい、縦方向第2側は、縦方向において前記第1側とは反対側をいう。
【0024】
第2ステージ部2-2は、第1ステージ部2-1の横隣に配置されている。第2ステージ部2-2は、台座部23と、位置決め部24と、保持手段25と、ステージ移動手段26と、を有する。第2ステージ部2-2の構成は、第1ステージ部2-1の構成と同様なので、その説明を省略し、符号をそのまま援用している。
第2ステージ部2-2も第1ステージ部2-1と同様に、ホームポジションから縦方向第1側から第2側に移動でき、且つ、縦方向第2側から第1側にも移動できる。第1ステージ部2-1の作動と第2ステージ部2-2の作動は、互いに独立して行うことができる。つまり、第1ステージ部2-1を作動させる制御と第2ステージ部2-2を作動させる制御は、互いに独立している。例えば、第1ステージ部2-1の保持手段25又は第2ステージ部2-2の保持手段25だけを作動させてフィルムを固定し且つ固定を解除でき、或いは、第1ステージ部2-1の保持手段25と第2ステージ部2-2の保持手段25を時間差で又は同時に作動させてそれぞれの台座部23にてフィルムを固定し且つ固定を解除できる。また、第1ステージ部2-1又は第2ステージ部2-2だけを縦方向に移動させることができ、或いは、第1ステージ部2-1と第2ステージ部2-2を同時に又は時間差で縦方向に移動させることができる。
【0025】
<改質処理部>
改質処理部3は、フィルムの表面改質処理を行う。表面改質処理は、フィルムの表面の濡れ性を向上させることができる処理であれば、特に限定されない。表面改質処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、赤外線照射処理などが挙げられる。コスト的に優れ、熱によるフィルムの変形などが生じ難いことから、コロナ放電処理を用いることが好ましい。
コロナ放電処理を行う改質処理部3は、放電電極部31と、接地された対向電極部と、を有する。前記改質処理部3は、放電電極部31と対向電極部の間に高電位差を生じさせ、その間に存在するフィルムの表面にコロナ放電処理を行うことができる。図示例の改質処理部3は、ステージ部2(第1及び第2ステージ部2-2)の台座部23が接地されており、台座部23が対向電極部を兼ねている。
【0026】
コロナ放電処理の放電量は、適宜設定できる。例えば、前記放電量は、積算照射電力量で3000W・min/cm以上6000W・min/cm以下であり、好ましくは 4600W・min/cm以上5600W・min/cm以下である。
【0027】
改質処理部3は、横方向に移動可能とされ、さらに、必要に応じて、上下方向にも移動可能とされている。前記上下方向は、縦方向及び横方向のそれぞれに直交する方向である。
具体的には、ベース台63上には、支柱部62が立ち上げられ、その支柱部62には、横方向に延在するアーム部61が取り付けられている。アーム部61は、支柱部62に固定的取り付けられていてもよい。改質処理部3などを上下動可能とするために、アーム部61は、支柱部62に上下方向に移動可能に取り付けられている。例えば、支柱部62に昇降装置(図示せず)が設けられ、アーム部61の一方側の端部はその昇降装置を介して支柱部62に取り付けられている。昇降装置が上下動することにより、それに従動してアーム部61も上下動する。アーム部61の反対側の端部は、自由端部とされている。なお、アーム部61の反対側の端部にも同様な支柱部が設けられていてもよい(図示せず)。
前記アーム部61は、横方向に延在する直線状の部材であり、全てのステージ部2(図示例では第1ステージ部2-1及び第2ステージ部2-2)を横断するほどの長さを有する。詳しくは、横方向に並んだ複数のステージ部2の横方向第1端部から第2端部までの横長さを「ステージ全長」という。図5に示すように、2つのステージ部2からなる場合、前記ステージ全長は、第2ステージ部2-2の横方向第1端部から第1ステージ部2-1の横方向第2端部までの長さに相当する。アーム部61は、前記ステージ全長よりも十分に長く、従って、アーム部61は、全てのステージ部2を横切っている。
【0028】
改質処理部3には、改質部移動手段33が具備されている。改質部移動手段33は、改質処理部3を横方向に移動させる。前記改質部移動手段33は、例えば、アーム部61の第2側部に形成された案内用レール331と、前記案内用レール331に沿って転動する車輪332と、改質処理部3を横方向に移動させるモーターなどのアクチュエーター(図示せず)と、を有する。ただし、改質部移動手段33は、前記案内用レール331及び車輪332に限られず、例えば、歯車及びベルトなどから構成されていてもよく、ラック及びピニオンなどから構成されていてもよい。ホームポジションにある改質処理部3は、図示しない制御部(コンピューターなど)が支柱部62の昇降装置を作動させてアーム部61を上下動させることによって、上下に移動できる。さらに、改質処理部3は、制御部が改質部移動手段33を作動させることによって、アーム部61に沿って横方向第1側から横方向第2側に移動できる。図5において、横方向第1側にある改質処理部3を実線で表し、横方向第2側に移動した後の改質処理部3を二点鎖線で表している。改質処理部3は、前記第2側に移動した後、横方向第1側にも移動できる。なお、横方向第1側は、横方向における一方側をいい、横方向第2側は、横方向において前記第1側とは反対側をいう。
上述のように、アーム部61は、ステージ全長よりも十分に長いため、アーム部61の横方向第1側の端部にある改質処理部3(ホームポジションにある改質処理部3)を、アーム部61の横方向第2側の端部にまで移動させると、改質処理部3は、全てのステージ部2(図示例では第1及び第2ステージ部2-2)を横断する。
【0029】
<インクジェットヘッド部>
インクジェットヘッド部4は、表面改質済みのフィルムに所望の表示を印刷する。インクジェットヘッド部4は、従来公知のインクジェット印刷装置を用いることができる。インクジェットヘッド部4の方式は、ピエゾ方式やサーマル方式などのオンデマンド型又はコンティニュアス型のいずれでもよい。小型化でき、インクの吐出量を精度良く制御し易いことから、オンデマンド型のインクジェットヘッド部を用いることが好ましく、さらに、熱を必要としないことからピエゾ式のインクジェットヘッド部がより好ましい。インクジェットヘッド部4による印刷は、モノクロでもよく、カラーでもよい。例えば、インクジェットヘッド部4は、4色のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色に応じた多数のヘッドノズル41を有する。
インクとしては、非常に短時間で硬化し、さらに耐摩耗性にも優れていることから、紫外線硬化型インクが用いられる。紫外線硬化型インクも従来公知のものを適宜用いることができる。
【0030】
インクジェットヘッド部4は、横方向に移動可能とされ、さらに、必要に応じて、上下方向にも移動可能とされている。
具体的には、インクジェットヘッド部4には、インクヘッド移動手段42が具備されている。インクヘッド移動手段42は、インクジェットヘッド部4を横方向に移動させる。前記インクヘッド移動手段42は、例えば、アーム部61の第1側部に形成された案内用レール421と、前記案内用レール421に沿って転動する車輪422と、インクジェットヘッド部4を横方向に移動させるモーターなどのアクチュエーター(図示せず)と、を有する。ただし、インクヘッド移動手段42は、前記案内用レール421及び車輪422に限られず、例えば、歯車及びベルトなどから構成されていてもよく、ラック及びピニオンなどから構成されていてもよい。なお、インクジェットヘッド部4は、アーム部61のうち前記改質処理部3が設けられた側(アーム部61の第1側部)とは反対側に設けられている。ホームポジションにあるインクジェットヘッド部4は、支柱部62の昇降装置によりアーム部61が上下動すると、それと共に上下に移動できる。さらに、インクジェットヘッド部4は、図示しない制御部(コンピューターなど)がインクヘッド移動手段42を作動させることによって、アーム部61に沿って横方向第1側から横方向第2側に移動できる。図5において、横方向第1側にあるインクジェットヘッド部4を実線で表し、横方向第2側に移動した後のインクジェットヘッド部4を二点鎖線で表している。インクジェットヘッド部4は、前記第2側に移動した後、横方向第1側にも移動できる。
上述のように、アーム部61は、ステージ全長よりも十分に長いため、アーム部61の横方向第1側の端部にあるインクジェットヘッド部4(ホームポジションにあるインクジェットヘッド部4)を、アーム部61の横方向第2側の端部にまで移動させると、インクジェットヘッド部4は、全てのステージ部2(図示例では第1及び第2ステージ部2-2)を横断する。
【0031】
<紫外線照射部>
紫外線照射部5は、フィルムに印刷された紫外線硬化型インクを硬化させるため、紫外線を照射する。
紫外線照射部5は、筺体51と、前記筺体51に収容された光源52と、前記光源52の発光及び消灯を制御する制御部(図示せず)と、を有する。光源52は、特に限定されず、水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)などを用いることができる。水銀灯ランプなどのランプ類に比べて小型化でき、発熱し難いことから、LED又はLDを用いることが好ましく、特に、LEDを用いることがより好ましい。図示例では、下方が開放された筺体51の内部に、光源52としてLEDが設けられている。
【0032】
紫外線照射部5は、アーム部61の下方部に設けられている。紫外線照射部5は、アーム部61に設けられているので、アーム部61と共に上下動できる。紫外線照射部5は、横方向に移動可能に構成されていてもよいが、図示例では、紫外線照射部5は、横方向に延在してステージ全長よりも長く、アーム部61に固定的に取り付けられている。従って、紫外線照射部5は、全てのステージ部2を横切っている。このため、紫外線照射部5の光源52を発光させると、フィルムの横方向全体に亘って紫外線を照射できる。
なお、改質処理部3、インクジェットヘッド部4及び紫外線照射部5の配置は、平面視で、縦方向第1側から第2側に向かって、改質処理部3/紫外線照射部5/インクジェットヘッド部4の順とされている。
【0033】
[印刷フィルムの製造方法及び製造装置の動作]
印刷フィルムは、表面改質処理を行ったフィルムにインクジェット方式で紫外線硬化型インクを印刷し、このインクを硬化させることによって得られる。印刷フィルムの製造方法は、例えば、ステージ部2と、改質処理部3と、インクジェットヘッド部4と、紫外線照射部5と、を有する上記製造装置Aを用いて実施される。
印刷フィルムの製造方法は、ステージ部上にフィルムを固定する固定工程、改質処理部を前記フィルムの横方向に移動させて、前記フィルムの表面のうち、横方向に沿った帯状領域に表面改質処理を行う改質工程、インクジェットヘッド部を前記フィルムの横方向に移動させて、前記改質済みの帯状領域に横方向に沿って複数の表示を印刷する印刷工程、紫外線照射部5から前記帯状領域に紫外線を照射する硬化工程、を有する。
【0034】
<固定工程>
図9に示すように、1つのステージ部2(例えば、第1ステージ部2-1)の台座部23の載置領域に印刷対象のフィルム1を載せ、その台座部23の位置決め部24に前記フィルム1の2つの辺を当てて位置決めする。前記フィルム1を台座部23に載せて位置決めする作業は、手作業で行ってもよく、或いは、フィルム供給装置を用いるなどの機械的な動作で行ってもよい。次に、保持手段25を作動させて、前記フィルム1を吸着して台座部23の表面に固定する。
フィルム1を固定した第1ステージ部2-1を、ステージ移動手段26によって、縦方向第1側から第2側へと移動させる。この際、フィルム1の面内であってフィルム1の縦方向第2端部の近傍が改質処理部3の横下方に位置するように、フィルム1を縦方向第2側へと移動させる。図9において、縦方向に移動させた後のフィルム1及び第1ステージ部2-1を、二点鎖線で表している。
【0035】
<改質工程>
図10に示すように、アーム部61を下降させ、フィルム1と改質処理部3の放電電極部31との隙間を調整する。コロナ放電処理の場合、通常、放電電極部31とフィルム1との隙間が数ミリメートル程度に設定される。前記隙間となるように、アーム部61を下方に下げる。次に、改質処理部3の表面改質処理(放電)を作動させつつ、改質部移動手段33によって、改質処理部3を横方向に移動させる。当初、ホームポジションにある改質処理部3は、フィルム1の横方向第1端部1aの表面に対して改質処理(コロナ放電処理など)を行い、改質処理部3の横方向への移動に伴ってフィルム1の横方向に連続的に改質処理を行っていく。改質処理部3がフィルム1の横方向第2端部1bを過ぎると直ぐに、改質処理部3を停止させる。図10において、ホームポジションにある改質処理部3を実線で表し、横方向に移動している途中の改質処理部3を二点鎖線で表し、フィルム1の横方向第2端部1bの付近で停止した改質処理部3を一点鎖線で表している。
フィルム1の横方向第2端部1bに達した改質処理部3は、移動停止と共に、表面改質処理(放電)も一時的に停止する。コロナ放電処理の場合、フィルム1の横方向第2端部1bの付近で停止すると、放電電極部31への印加を停止する。
【0036】
改質処理部3を横方向第1側から第2側に移動させることにより、フィルム1の表面のうち、横方向に沿った帯状領域に改質処理が施される。前記改質処理が施された帯状領域は、改質処理部3の放電電極部31の移動軌跡に相当する。
図11は、改質処理部3がフィルム1の横方向第2端部1bに移動した後、そこで停止している状態を示す平面図である。図11に示すように、まず最初に、フィルム1の表面のうち、縦方向第2端部の近傍において、横方向に延在する帯状領域が改質処理される。改質済みの帯状領域B-1の幅WBは、放電電極部31の幅W31に略等しい(符号WBは図11に、符号W31は図8に示している)。
図11において、改質済みの帯状領域B-1を小さな破線で表している(他の図に表される改質済みの帯状領域についても、同様に小さな破線で表している)。以下、フィルム1の表面のうち、改質済みの帯状領域を「改質済み帯状領域」といい、最初に改質処理された帯状領域の冒頭に「第1」を付し、時系列で順次改質処理されていく帯状領域の冒頭に順に「第2」、「第3」…を付し、最後に改質処理された帯状領域の冒頭に「第n」を付す。
【0037】
フィルム1の横方向第2端部1bにて改質処理部3を停止させた後、図12に示すように、第1ステージ部2-1を縦方向第2側へと所定量移動させる。つまり、第1ステージ部2-1を縦方向に移動させ、第1改質済み帯状領域B-1(フィルム1の表面のうち、最初に改質された帯状領域)を基準にしてそれよりも縦方向第2側に、フィルム1を所定量ずらす。
フィルム1の横方向第2端部1b付近で停止させていた改質処理部3を、改質部移動手段33によって、横方向第1側に移動させると共に放電を再開して改質処理を行う。改質処理部3の横方向への移動に伴ってフィルム1の横方向に連続的に改質処理を行っていく。改質処理部3がフィルム1の横方向第1端部1aを過ぎたあたりで、改質処理部3を停止させる。フィルム1の横方向第1端部1aに達した改質処理部3は、移動停止と共に、改質処理(放電)も一時的に停止する。このようにして、フィルム1を縦方向にずらし、改質処理部3を横方向第2側から第1側に移動させることにより、図13に示すように、横方向に沿って延在する第2改質済み帯状領域B-2が形成される。
以後、同様にして、改質処理を行う。すなわち、第2改質済み帯状領域B-2を形成した後、ステージ部2を縦方向第2側へと所定量移動させることにより、フィルム1を第2改質済み帯状領域B-2を基準にしてそれよりも縦方向第2側にずらす。横方向第1端部1a付近で停止していた改質処理部3を横方向に移動させて改質処理を行い、フィルム1の横方向第2端部1bの付近で改質処理部3の移動及び放電を停止する。これにより、図14(a)に示すように、縦方向第2側から第1側に向かって順に、フィルム1の表面に、第1改質済み帯状領域B-1、第2改質済み帯状領域B-2、第3改質済み帯状領域B-3が間隔を開けて形成される。このように、フィルム1のずらしと、改質処理部3の横方向への移動と、端部に至った改質処理部3の停止とを1サイクルとして、これを繰り返す。改質工程が完了すると、図14(b)に示すように、複数の改質済み帯状領域B-1乃至B-nが間隔を開けて縦方向に多段状に並んだ表面を有するフィルム1が得られる。図14(b)では、縦方向第2側から第一側に向かって順に、第1改質済み帯状領域B-1/第2改質済み帯状領域B-2/第3改質済み帯状領域B-3/第4改質済み帯状領域B-4/第5改質済み帯状領域B-5/第6改質済み帯状領域B-6/第n改質済み帯状領域B-nが等間隔で形成されたフィルム1を表している。ただし、改質する帯状領域の数は図示例に限定されるものではない。
【0038】
<印刷工程>
改質工程が完了した後、アーム部61を上方又は下方に移動させ、フィルム1とインクジェットヘッド部4との隙間を調整する。前記フィルム1とインクジェットヘッド部4との隙間は、インクジェット方式でインクをフィルム1に付着させるのに適した隙間をいう。なお、フィルム1とインクジェットヘッド部4の隙間が、前記フィルム1と放電電極部31の隙間と略一致している場合には、アーム部61の上下移動は省略される。
【0039】
図15に示すように、フィルム1の第1改質済み帯状領域B-1がインクジェットヘッド部4の横下方に位置するように、ステージ移動手段26によって、第1ステージ部2-1を縦方向に移動させる。次に、インクジェットヘッド部4を、インクヘッド移動手段42によって、横方向に移動させると共に、インクジェットヘッド部4のヘッドノズルから紫外線硬化型インクを吐出し、所望の表示を第1改質済み帯状領域B-1に印刷する。当初、ホームポジションにあるインクジェットヘッド部4は、フィルム1(第1改質済み帯状領域B-1)の横方向第1端部1a側から第2端部1b側に向かって、横方向に沿って複数の表示を印刷する。インクジェットヘッド部4がフィルム1(第1改質済み帯状領域B-1)の横方向第2端部1bを過ぎると、インクジェットヘッド部4を停止させる。図15において、ホームポジションにあるインクジェットヘッド部4を実線で表し、横方向第2端部に達して停止したインクジェットヘッド部4を一点鎖線で表している。このようにして、図16(a)に示すように、第1改質済み帯状領域B-1に複数の表示Cが印刷されたフィルム1が得られる。
前記複数の表示Cは、図示のように、横方向に等間隔で印刷されていてもよく、或いは、特に図示しないが、横方向にランダムな間隔で印刷されていてもよい。後述するように、印刷フィルム1から複数の製品を打ち抜く場合には、前記複数の表示Cは、横方向に等間隔で印刷される。前記表示Cの内容は、特に限定されず、任意の文字、記号、図形、絵柄及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。なお、図16では、表示Cの例として、星マークを例示している。
インクジェットヘッド部4を横方向に移動させる過程で、インクジェットヘッド部4は表示Cを印刷する。このようなインクジェットヘッド部4としては、例えば、株式会社キーエンス製の商品名「MK-Gシリーズ」などの市販品を用いることができる。
【0040】
第1改質済み帯状領域B-1に対して表示Cを印刷した後、フィルム1の第2改質済み帯状領域B-2がインクジェットヘッド部4の横下方に位置するように、ステージ移動手段26によって、第1ステージ部2-1を縦方向第2側に所定量移動させる。つまり、第1ステージ部2-1を縦方向に移動させ、第1改質済み帯状領域B-1を基準にしてそれよりも縦方向第2側に、フィルム1を所定量ずらす。
フィルム1の横方向第2端部1bで停止させていたインクジェットヘッド部4を、インクヘッド移動手段42によって、横方向第1側に移動させながら、紫外線硬化型インクを吐出し、所望の表示Cを第2改質済み帯状領域B-2に印刷する。インクジェットヘッド部4がフィルム1(第2改質済み帯状領域B-2)の横方向第1端部1aを過ぎると、インクジェットヘッド部4を停止させる。このようにして、図16(b)に示すように、第2改質済み帯状領域B-2に複数の表示Cが印刷されたフィルム1が得られる。
以後、同様にして、印刷を行う。すなわち、第2改質済み帯状領域B-2に表示Cを印刷した後、ステージ部2を縦方向第2側へと所定量移動させることにより、インクジェットヘッド部4の横下方に第3改質済み帯状領域B-3を位置させる。横方向第1端部1a付近にあるインクジェットヘッド部4を横方向に移動させて複数の表示Cを印刷し、フィルム1の横方向第2端部1bに達したインクジェットヘッド部4を停止する。このように、フィルム1の縦方向のずらしと、インクジェットヘッド部4の横方向への移動と、端部に至ったインクジェットヘッド部4の停止とを1サイクルとして、これを繰り返す。印刷工程が完了すると、図16(c)に示すように、全ての改質済み帯状領域に複数の表示Cが印刷されたフィルム1が得られる。
【0041】
<硬化工程>
印刷工程が完了した後、アーム部61を上方又は下方に移動させ、フィルム1と紫外線照射部5との隙間を調整する。前記フィルム1と紫外線照射部5との隙間は、紫外線硬化型インクを紫外線にて硬化させる際に、紫外線を照射するために適した隙間をいう。なお、前記隙間が、フィルム1とインクジェットヘッド部4の隙間と同程度でも、或いは、それよりも大きくても、紫外線照射によりインクが硬化するので、印刷工程の後に必ずしもアーム部61を上下移動させなくてもよい。
【0042】
図17に示すように、フィルム1の第1改質済み帯状領域B-1が紫外線照射部5の下方に位置するように、ステージ移動手段26によって、第1ステージ部2-1を縦方向に移動させる。なお、アーム部61の下方に設けられている紫外線照射部5は、図17のような平面図には明瞭に表れないことに留意されたい。
次に、紫外線照射部5の光源52を発光させる。紫外線照射部5は、横方向においてステージ全長よりも長く延在されているので、紫外線照射部5を発光させると、印刷された第1改質済み帯状領域B-1の全体に紫外線が照射される。このため、紫外線照射部5を横方向に移動させる必要がない。紫外線の照射により、第1改質済み帯状領域B-1に印刷された全ての表示C(紫外線硬化型インク)が硬化する。
【0043】
第1改質済み帯状領域B-1に対して紫外線を照射して紫外線硬化型インクを硬化させた後、フィルム1の第2改質済み帯状領域B-2が紫外線照射部5の下方に位置するように、ステージ移動手段26によって、第1ステージ部2-1を縦方向第2側に所定量移動させる。つまり、第1ステージ部2-1を縦方向に移動させ、第2改質済み帯状領域B-2が紫外線照射部5の下方に位置するように、フィルム1を所定量ずらす。つまり、第1ステージ部2-1を縦方向に移動させ、第1改質済み帯状領域B-1を基準にしてそれよりも縦方向第2側に、フィルム1を所定量ずらす。紫外線照射部5によって第2改質済み帯状領域B-2の全体に紫外線を照射することにより、第2改質済み帯状領域B-2に印刷された表示C(紫外線硬化型インク)が硬化する。
以後、同様にして、紫外線照射を行う。すなわち、第2改質済み帯状領域B-2に紫外線を照射した後、ステージ部2を縦方向第2側へと所定量移動させることにより、紫外線照射部5の下方に第3改質済み帯状領域B-3を位置させる。紫外線照射部5によって第3改質済み帯状領域B-3の全体に紫外線を照射することにより、第3改質済み帯状領域B-3に印刷された表示C(紫外線硬化型インク)が硬化する。このように、フィルム1の縦方向のずらしと、紫外線照射部5による紫外線の照射とを1サイクルとして、これを繰り返す。
【0044】
なお、紫外線硬化型インクは、紫外線を所定時間照射すると硬化する。改質済み帯状領域に対する紫外線の照射時間は、例えば、0.1秒~2秒、好ましくは0.2秒~1秒である。このため、上記硬化工程においては、第1改質済み帯状領域B-1から第n改質済み帯状領域B-nにまで紫外線を照射する間、紫外線照射部5の光源52を発光させたままで、第1ステージ部2-1(フィルム1)を縦方向に一定速度で連続的に移動させる。
このようにして、全ての改質済み帯状領域に印刷された表示Cを硬化させることにより、印刷が完了したフィルム100(本明細書で「印刷フィルム100」という)が得られる。第1ステージ部2-1の保持手段25を解除して、印刷フィルム100を第1ステージ部2-1から取り外す。
【0045】
<他のステージ部を用いた印刷フィルムの製造>
上記では、1つのステージ部2にフィルム1を固定して印刷を行う場合を説明したが、製造装置Aが複数のステージ部2を有するので、他のステージ部2にフィルム1を固定して印刷を行うこともできる。
例えば、上記のように製造装置Aが2つのステージ部2(第1ステージ部2-1及び第2ステージ部2-2)を有する場合、上記第1ステージ部2-1と同様にして、第2ステージ部2-2にフィルム1を固定して印刷を行うことができる。第2ステージ部2-2を用いたフィルム1の印刷の説明については、上記<固定工程>、<改質工程>、<印刷工程>及び<硬化工程>の「第1ステージ部2-1」を「第2ステージ部2-2」に読み替え、その具体的な記載は省略する。
複数のステージ部2が設けられている製造装置Aを用いることにより、短時間で複数のフィルム1の印刷を完了できる。詳しくは、ステージ部2にフィルム1を位置決めし、固定する作業には比較的時間を要する。正確な位置に表示Cを印刷するためには、前記ステージ部2の台座部23の所定位置にフィルム1を精度良く固定する必要があるが、この正確な位置決め作業には比較的時間がかかる。複数のステージ部2を有することにより、例えば、図18に示すように、第1ステージ部2-1にフィルム1を固定して印刷を行っている間に、第2ステージ部2-2の台座部23にフィルム1を載せて位置決め作業を行うことができる。そして、第1ステージ部2-1を用いたフィルム1の印刷が完了した後、第2ステージ部2-2に固定したフィルム1の印刷を行い、この印刷を行っている間に、第1ステージ部2-1の印刷フィルム100を取り外し、次のフィルム1を第1ステージ部2-1に位置決め固定する作業を行い、これを繰り返していく。このようにすることにより、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0046】
[印刷フィルムの用途]
印刷フィルム100は、任意の適切な用途に使用される。例えば、フィルム1が光学機能を有する場合には、印刷フィルム100は、光学用途に使用できる。光学用途としては、液晶ディスプレイなどの画像表示装置、反射防止フィルムなどの光学フィルム、サングラス、電磁波シールド、窓ガラスなどが挙げられ、印刷フィルム100は、これらに組み込まれて使用される。
印刷フィルム100は、必要に応じて、用途に適した形状に切断される。例えば、図19に示すように、印刷フィルム100を打ち抜く又は切り取るなどを行い、印刷フィルム100に製品外形に応じた切断線7を形成することにより、印刷フィルム100から複数の製品110を得ることができる。
【0047】
[利点]
上記製造方法によれば、フィルム1の表面のうち横方向に沿った帯状領域(表示Cを印刷する領域)に改質処理を行い、改質済み帯状領域を縦方向にずれた位置で間隔を開けて複数形成するので、フィルム1の表面全体をほぼ隙間無く改質処理を行う場合に比して、改質処理時間を短縮化できる。
さらに、帯状領域を改質した後に、つまり、改質済み帯状領域を形成した後にインクを吐出して表示Cを印刷するので、改質済み帯状領域が安定しており、従来のように改質処理直後にインクを付着させる場合に比して、インクを前記改質済み帯状領域に良好に付着させることができる。このため、綺麗な表示Cをフィルム1に印刷できる。さらに、フィルム1に全ての改質済み帯状領域を形成した後に、印刷工程を行うので、改質処理から印刷までの時間的な間隔を長く確保でき、より綺麗な表示Cをフィルム1に印刷できる。特に、第1改質済み帯状領域B-1から第n改質済み帯状領域B-nを形成した後(全ての改質済み帯状領域を形成した後)、第1改質済み帯状領域B-1から第n改質済み帯状領域B-nの順で印刷を行うので、各帯状領域において改質処理から印刷までの時間的な間隔が略一定となる。
また、改質工程において、改質処理部3をフィルム1の横方向第2端部1b又は横方向第1端部1aに移動させた際に、表面改質処理を一時的に停止するので、フィルム1の端部や装置のパーツなどが放電によって損傷することを防止でき、安全性にも優れている。
さらに、硬化工程において印刷済みの1つの帯状領域(インクが付着した1つの改質済み帯状領域)の全体に紫外線を照射するので、インクに対する紫外線照射時間を比較的長く確保でき、インクを良好に硬化させることができる。詳しくは、紫外線硬化型インクを良好に硬化させるためには、紫外線照射を上述のように1秒程度行うことが望ましい。しかし、複数の表示(インク付着部分)について個々の表示毎に紫外線を前記時間で照射した場合、全体の処理時間(改質工程から硬化工程を経て印刷フィルム100を得るまでの時間)が長くなる。この点、上記のように、印刷済みの1つの帯状領域の全体に紫外線を照射することにより、当該帯状領域の複数の表示に対して同時に紫外線を照射できる。このため、個々の表示毎に紫外線を照射する場合に比して、インクを良好に硬化させるための時間が短くなり、全体の処理時間が長くなることを防止できる。よって、良好な複数の表示が印刷された印刷フィルム100を比較的早く製造できる。
【0048】
[変形例]
上記では、改質処理部3、インクジェットヘッド部4及び紫外線照射部5が1つのアーム部61に設けられているので、製造装置Aを小型化できるという利点があるが、改質処理部3、インクジェットヘッド部4及び紫外線照射部5が別々のアーム部に設けられていてもよい(図示せず)。
また、上記では、ステージ部2が縦方向に移動し、且つ改質処理部3、インクジェットヘッド部4及び紫外線照射部5は縦方向に移動しないので、各部の制御を簡素化できるが、例えば、改質処理部3、インクジェットヘッド部4及び紫外線照射部5の少なとも1つの部が縦方向に移動できるように構成されていてもよい(図示せず)。
【0049】
さらに、ステージ部2にフィルム1を供給する供給装置を、製造装置Aに附随させてもよい。
図20は、供給装置8が具備された製造装置Aを示す。
供給装置8は、フィルム1の表面に吸着する吸着部81を複数有する。供給装置8は、印刷対象となるフィルム1を多数枚収容した第1コンテナケース88から、1枚のフィルム1を吸着し、これをステージ部2の台座部23上に搬送し、吸着を解除してフィルム1を台座部23に載せる動作を行う。また、供給装置8は、印刷フィルム100を吸着し、これを第2コンテナケース89上に搬送し、吸着を解除して印刷フィルム100を第2コンテナケース89内に収容する動作を行う。
製造装置Aは、上記[印刷フィルムの製造装置]と同様な構成であるが、さらに、ステージ部2に、フィルム1の向きを調整する向き調整手段9が設けられていることが好ましい。
供給装置8を用いた場合、台座部23の所定位置にフィルム1を正確に台座部23の載置領域に載せることができないことがある。このため、ステージ部2には、向き調整手段9が設けられることが好ましい。向き調整手段9は、ステージ部2の上方に配置された少なくとも1つの撮像機91と、ステージ部2を回転及び縦横に動かす微調整装置(図示せず)と、前記撮像機91からの画像を処理して微調整装置を動作させる制御部(図示せず)と、を有する。
供給装置8を用いてフィルム1をステージ部2の台座部23に載せた後、保持手段25により、フィルム1を台座部23に固定する。次に、撮像機91にてフィルム1を撮像し(例えば、フィルム1の角部や縁部などを撮像し)、フィルム1が台座部23の所定位置に固定されているか否かを制御部が確認する。制御部が位置ずれしていると判断したときには、微調整装置を作動させ、ホームポジションにあるステージ部2を、少し回転及び/又は縦横に少し動かし、フィルム1の向きを調整する。このようにして、フィルム1を正確な位置に位置決めでき、事後、上記と同様にして、フィルム1の印刷作業を行う。
【符号の説明】
【0050】
1 フィルム
100 印刷フィルム
2,2-1,2-2 ステージ部
3 改質処理部
4 インクジェットヘッド部
5 紫外線照射部
A 製造装置
B-1,B-2,B-3,B-4,B-5,B-6,B-n 改質済みの帯状領域
C 表示
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20