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  • 特開-非水電解液及び非水電解液二次電池 図1
  • 特開-非水電解液及び非水電解液二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098855
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】非水電解液及び非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20250625BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20250625BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250625BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20250625BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20250625BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250625BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250625BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/40
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/587
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215259
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】米原 丈博
(72)【発明者】
【氏名】重松 明仁
(72)【発明者】
【氏名】大西 仁志
(72)【発明者】
【氏名】中野 隆志
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
(57)【要約】
【課題】充放電サイクル後の容量維持率又は抵抗上昇率を改善する。
【解決手段】下記式(I)で表されるアルケン化合物を含有する、非水電解液(R11はフルオロ基(-F)、炭化フッ素基又は置換基としてフルオロ基を有する炭化水素基等、R12はフルオロ基(-F)、炭化フッ素基又は置換基としてフルオロ基(-F)を有する炭化水素基等、R13はシリル基、炭化フッ素基又はフルオロ基(-F)を有する炭化水素基等。)。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるアルケン化合物を含有する、非水電解液。
【化1】

(式(I)中、R11は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、水素原子(-H)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を、R12は、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を、R13は、それぞれ独立して、下記式(s-1)で表されるシリル基、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
【化2】

(式(s-1)中、R14は、それぞれ独立して、置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
さらに下記式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩、式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩、下記式(III)で表される塩、下記式(IV)で表されるイミド塩、下記式(V)で表されるスルホン酸塩、下記式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物、及び下記式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1に記載の非水電解液。
【化3】

(式(II-1)及び(II-2)中、M21 は、それぞれ独立して、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表す。
式(III)中、R31は、それぞれ独立して、単結合(-)、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、及びヨード基(-I)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を表し、Q31は、それぞれ独立して、オキサ基(-O-)又は第2級アミノ基(-NH-)を表し、X31は、それぞれ独立して、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、又はヨード基(-I)を表し、Z31は、ホウ素原子又はリン原子を表し、M31 は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表し、hは、前記Z31がホウ素原子のときに1又は2を、前記Z31がリン原子のときに1~3の整数を表し、iは、前記Z31がホウ素原子のときに0又は2を、前記Z31がリン原子のときに0、2、又は4を表す。
式(IV)中、R41は、それぞれ独立して、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表し、M41 は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表す。
式(V)中、R51は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表し、M51 は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表す。
式(VI)中、R61は、式(vi-1)で表される基、式(vi-2)で表される基、又は炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を表す。
式(VII)中、R71は、それぞれ独立して、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表し、jは、0~3の整数を表す。)
【化4】

(式(vi-1)中、R62は、オキサ基(-O-)、又は末端若しくは鎖中にオキサ基(-O-)を含んでもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を表し、
式(vi-2)中、R63は、炭素原子数1~8の炭化水素基、又は水素原子(-H)を表す。)
【請求項3】
正極と、負極と、請求項1又は請求項2に記載の非水電解液と、セパレータとを備える非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記負極が、集電体と、前記集電体上に設けられ、負極活物質を含有する負極合材層とを含み、
前記負極活物質が、ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、及び炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記負極活物質が、炭素単体粒子をさらに含む、請求項4に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記ケイ素単体粒子、前記酸化ケイ素粒子、及び前記炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種の総仕込質量が、前記負極活物質全体の総仕込質量を100質量%としたときに、30質量%以下である、請求項4に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解液及び非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
小型、軽量、高出力であるリチウムイオン二次電池等の蓄電装置は、近年さらなる高性能化が進んでおり、高性能化にともなって、小型の電気製品のみならず自動車等の大型の製品分野への利用が進んでいる。リチウムイオン二次電池は、出力特性、充放電特性、ガス発生等の様々な特性について所定の要件を満たすことが求められる。リチウムイオン二次電池においては、例えば、充放電サイクル試験後の容量維持率や出力特性も非常に重要な評価項目となっている。
【0003】
特許文献1には、3体積%以上の含フッ素環状カーボネート(A)と、含フッ素環状カーボネート(A)100容量部に対して0.1~40容量部の含フッ素不飽和炭化水素化合物を含む電解質塩溶解用溶媒が開示されている。特許文献1によれば、本組成の電解質塩溶解用溶媒を使用することにより、高温サイクル特性及び耐酸化性に優れたリチウムイオン二次電池となることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-123989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来においては、充放電サイクル後の容量維持率又は抵抗上昇率について満足できる非水電解液二次電池は知られていなかった。そこで、本開示の一態様の課題は、充放電サイクル後の容量維持率又は抵抗上昇率に優れる非水電解液及び非水電解液二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、式(I)で表されるアルケン化合物を非水電解液に配合することにより、非水電解液二次電池の充放電サイクル後の容量維持率や抵抗上昇率を改善することができることを見出した。
即ち、本開示の一態様としては、以下のものが挙げられる。
<1>下記式(I)で表されるアルケン化合物を含有する、非水電解液。
【0007】
【化1】
【0008】
(式(I)中、R11は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、水素原子(-H)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を、R12は、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を、R13は、それぞれ独立して、下記式(s-1)で表されるシリル基、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
【0009】
【化2】
【0010】
(式(s-1)中、R14は、それぞれ独立して、置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
<2>さらに下記式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩、式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩、下記式(III)で表される塩、下記式(IV)で表されるイミド塩、下記式(V)で表されるスルホン酸塩、下記式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物、及び下記式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、<1>に記載の非水電解液。
【0011】
【化3】
【0012】
(式(II-1)及び(II-2)中、M21 は、それぞれ独立して、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表す。
式(III)中、R31は、それぞれ独立して、単結合(-)、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、及びヨード基(-I)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を表し、Q31は、それぞれ独立して、オキサ基(-O-)又は第2級アミノ基(-NH-)を表し、X31は、それぞれ独立して、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、又はヨード基(-I)を表し、Z31は、ホウ素原子又はリン原子を表し、M31 は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表し、hは、前記Z31がホウ素原子のときに1又は2を、前記Z31がリン原子のときに1~3の整数を表し、iは、前記Z31がホウ素原子のときに0又は2を、前記Z31がリン原子のときに0、2、又は4を表す。
式(IV)中、R41は、それぞれ独立して、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表し、M41 は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表す。
式(V)中、R51は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表し、M51 は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、又はホスホニウムイオンを表す。
式(VI)中、R61は、式(vi-1)で表される基、式(vi-2)で表される基、又は炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を表す。
式(VII)中、R71は、それぞれ独立して、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表し、jは、0~3の整数を表す。)
【0013】
【化4】
【0014】
(式(vi-1)中、R62は、オキサ基(-O-)、又は末端若しくは鎖中にオキサ基(-O-)を含んでもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を表し、
式(vi-2)中、R63は、炭素原子数1~8の炭化水素基、又は水素原子(-H)を表す。)
<3>正極と、負極と、前記<1>又は前記<2>に記載の非水電解液と、セパレータとを備える非水電解液二次電池。
<4>前記負極が、集電体と、前記集電体上に設けられ、負極活物質を含有する負極合材層とを含み、前記負極活物質が、ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、及び炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<3>に記載の非水電解液二次電池。
<5>前記負極活物質が、炭素単体粒子をさらに含む、<4>に記載の非水電解液二次電池。
<6>前記ケイ素単体粒子、前記酸化ケイ素粒子、及び前記炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種の総仕込質量が、前記負極活物質全体の総仕込質量を100質量%としたときに、30質量%以下である、<4>に記載の非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、非水電解液二次電池の充放電サイクル後の容量維持率や抵抗上昇率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の非水電解液を含むリチウムイオン二次電池前駆体の要部断面図である。
図2】本開示の非水電解液を含むリチウムイオン二次電池前駆体の別の一例であるコイン型のリチウムイオン二次電池前駆体を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示を説明するに当たり具体例を挙げるが、本開示の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0018】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0019】
<非水電解液>
本開示の一態様である非水電解液(以下、「非水電解液」と略す場合がある。)は、下記式(I)で表されるアルケン化合物を含有する。
【0020】
【化5】
【0021】
(式(I)中、R11は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、水素原子(-H)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を、R12は、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を、R13は、それぞれ独立して、下記式(s-1)で表されるシリル基、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、炭素原子数1~12の炭化フッ素基、又は置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
【0022】
【化6】
【0023】
(式(s-1)中、R14は、それぞれ独立して、置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
【0024】
式(I)で表されるアルケン化合物を非水電解液に配合することにより、非水電解液二次電池の充放電サイクル後の電池特性を改善することができる。ここで、充放電サイクル後の電池特性とは、放電容量維持率及び抵抗上昇率のうち一方又は両方を意味する。充放電サイクル後の電池特性は、後述する実施例に記載したように、充放電サイクル試験を実施する前の放電容量と、充放電サイクル試験を実施した後の放電容量とから算出される充放電サイクル後の放電容量維持率、及び/又は、充放電サイクル試験を実施する前の抵抗値と、充放電サイクル試験を実施した後の抵抗値とから算出される充放電サイクル後の抵抗上昇率から評価することができる。
【0025】
充放電サイクル後の電池特性が改善するとは、本開示にかかるアルケン化合物を含まない非水電解液を用いた非水電解液二次電池と比較して、本開示にかかるアルケン化合物を含む非水電解液を用いた非水系電解液二次電池の前記放電容量維持率が高いこと、及び/又は、前記抵抗上昇率が低いことを意味する。
【0026】
一例であり限定されるものではないが、本開示にかかるアルケン化合物を含まない非水電解液を用いた非水電解液二次電池における充放電サイクル後の放電容量維持率を100としたときに、充放電サイクル後の放電容量維持率が101以上であるか、好ましくは102以上であるか、より好ましくは103以上であるか、更に好ましくは104以上である非水系電解液二次電池は、充放電サイクル後の電池特性が改善したものと判断できる。また、一例であり限定されるものではないが、本開示にかかるアルケン化合物を含まない非水電解液を用いた非水電解液二次電池における充放電サイクル後の抵抗値上昇率を100としたときに、充放電サイクル後の放電容量が95以下、好ましくは90以下であるか、より好ましくは85以下であるか、更に好ましくは80以下であるか、更に好ましくは75以下であるか、更に好ましくは70以下であるか、更に好ましくは65以下である非水系電解液二次電池は、充放電サイクル後の電池特性が改善したものと判断できる。
【0027】
以下、「式(I)で表されるアルケン化合物」等について詳細に説明する。
上記式(I)においてR11は、「フルオロ基(-F)」、「クロロ基(-Cl)」、「ブロモ基(-Br)」、「ヨード基(-I)」、「水素原子(-H)」、「炭素原子数1~12の炭化フッ素基」、又は「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基」を表している。「炭化フッ素基」とは、炭化水素基の全ての水素原子がフッ素原子に置換された基を意味し、直鎖構造を有する炭化フッ素基に限られず、分岐構造、環状構造及び炭素-炭素不飽和結合構造(炭素-炭素二重結合構造及び炭素-炭素三重結合構造)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する炭化フッ素基であってもよい。また、「炭化水素基」は、直鎖構造を有する脂肪族炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造及び炭素-炭素不飽和結合構造(炭素-炭素二重結合構造及び炭素-炭素三重結合構造)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する炭化水素基であってもよい。また、「炭化水素基」において、直鎖構造、分岐構造、環状構造及び炭素-炭素不飽和結合構造の数には限定されない。したがって、(非環式)脂肪族炭化水素基、単環式脂肪族炭化水素基、多環式脂肪族炭化水素基、単環式芳香族炭化水素基、多環式芳香族炭化水素基は、全て「炭化水素基」に含まれる。また、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等も、全て「炭化水素基」に含まれる。さらに、「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい」とは、炭化水素基の水素原子が、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)に、炭化水素基の炭素原子が、オキサ基(-O-)に置換されていてもよいことを意味する。
【0028】
11が炭化フッ素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。また、R11が炭化水素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0029】
11としては、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、ビニル基(-CH=CH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、s-ブチル基(-CHCH(CH)、t-ブチル基(-C(CH)、へキシル基(-CHCHCHCHCHCH)、シクロヘキシル基(-C11)、フェニル基(-C)、ベンジル基(-CH)、トリフルオロメトキシメチル基(-CHOCF)等が挙げられる。なかでも、R11としては、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)が特に好ましい。
【0030】
12は、「水素原子(-H)」、「フルオロ基(-F)」、「クロロ基(-Cl)」、「ブロモ基(-Br)」、「ヨード基(-I)」、「炭素原子数1~12の炭化フッ素基」、又は「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基」を表している。R12における「炭化フッ素基」と「炭化水素基」とは、R11の場合と同義である。
【0031】
12が炭化フッ素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。また、R12が炭化水素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0032】
12としては、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、ビニル基(-CH=CH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、s-ブチル基(-CHCH(CH)、t-ブチル基(-C(CH)、へキシル基(-CHCHCHCHCHCH)、シクロヘキシル基(-C11)、フェニル基(-C)、ベンジル基(-CH)、トリフルオロメトキシメチル基(-CHOCF)等が挙げられる。なかでも、R12としては、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)が特に好ましい。
【0033】
13は、それぞれ独立して、「式(s-1)で表されるシリル基」、「水素原子(-H)」、「フルオロ基(-F)」、「クロロ基(-Cl)」、「ブロモ基(-Br)」、「ヨード基(-I)」、「炭素原子数1~12の炭化フッ素基」、又は「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基」を表している。R13における「炭化フッ素基」と「炭化水素基」とは、R11の場合と同義である。
【0034】
13が炭化フッ素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。また、R12が炭化水素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0035】
式(s-1)中のR14は、それぞれ独立して、「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基」を表している。R14における「炭化水素基」は、R11の場合と同義である。
【0036】
14の炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0037】
13としては、トリメチルシリル基(-Si(CH)、トリエチルシリル基(-Si(C)、トリフェニルシリル基(-Si(C)、トリメトキシシリル基(-Si(OCH)、トリエトキシシリル基(-Si(OC)、トリフェノキシシリル基(-Si(OC)、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、ビニル基(-CH=CH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、s-ブチル基(-CHCH(CH)、t-ブチル基(-C(CH)、へキシル基(-CHCHCHCHCHCH)、シクロヘキシル基(-C11)、フェニル基(-C)、ベンジル基(-CH)、トリフルオロメトキシメチル基(-CHOCF)等が挙げられる。なかでも、R13としては、トリメチルシリル基(-Si(CH)、トリエチルシリル基(-Si(C)、トリフェニルシリル基(-Si(C)、トリメトキシシリル基(-Si(OCH)、フルオロ基(-F)、水素原子(-H)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)が特に好ましい。
【0038】
式(I)で表されるアルケン化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。なお、非水電解液は、1種類の式(I)でアルケン化合物を含むものでもよいが、2種類以上の式(I)で表されるアルケン化合物を含んでいてもよい。
【化7】
【0039】
非水電解液の式(I)で表されるアルケン化合物の総含有量は、非水電解液全量(非水電解液全量を100質量%としたとき)に対して、通常0.01質量%~5.0質量%であり、下限値として好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、上限値として好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。これらの化合物の総含有量が前記範囲内であると、充放電サイクル後の容量維持率及び抵抗上昇率を良好な値に制御し、より優れた電池特性を達成できる。
【0040】
本開示の非水電解液は、上述した式(I)で表されるアルケン化合物に加えて、以下で説明する下記式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩、式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩、下記式(III)で表される塩、下記式(IV)で表されるイミド塩、下記式(V)で表されるスルホン酸塩、下記式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物、及び下記式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。
【0041】
(式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩及び式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩)
非水電解液は、さらに下記式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩及び式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。
【0042】
【化8】
【0043】
式(II-1)及び(II-2)中、M21 は、それぞれ独立して、「アルカリ金属イオン」、「アルカリ土類金属イオン」、「アンモニウムイオン」、「イミダゾリウムイオン」、「ピリジニウムイオン」、「ピロリジニウムイオン」、「ピペリジニウムイオン」、又は「ホスホニウムイオン」を表している。なかでも、M21 は、リチウムイオンであることが特に好ましい。
【0044】
式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩及び式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩としては、下記式(II-1-1)で表されるジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、下記式(II-2-1)で表されるモノフルオロリン酸リチウム(LiPOF)等が挙げられる。なお、非水電解液は、1種類の式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩を含むものでもよいし、1種類の式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩を含むものでもよい。また、非水電解液は、2種類以上の式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩を含むものでもよいし、2種類以上の式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩を含むものでもよい。さらに、非水電解液は、1種類又は2種類以上の式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩と1種類又は2種類以上の式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩とを含むものでもよい。
【0045】
【化9】
【0046】
非水電解液の式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩及び式(II-2)で表されるモノフルオロリン酸塩の総含有量は、非水電解液全量(非水電解液全量を100質量%としたとき)に対して、通常0.01質量%~5.0質量%であり、下限値として好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、上限値として好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。これらの化合物の総含有量が前記範囲内であると、充放電サイクル後の容量維持率及び抵抗上昇率を良好な値に制御し、より優れた電池特性を達成できる。
【0047】
(式(III)で表される塩)
非水電解液は、さらに下記式(III)で表される塩を含有することが好ましい。
【0048】
【化10】
【0049】
式(III)中、R31は、それぞれ独立して、「単結合(-)」、又は「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、及びヨード基(-I)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基」を表している。R31が「単結合(-)」であるとは、R31に隣接する2つのカルボニル基(>C=O)が直接結合していることを意味する。また、「2価の炭化水素基」は、結合位置を2つ有する炭化水素基を意味し、直鎖構造を有する脂肪族炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、並びに炭素-炭素不飽和結合構造(炭素-炭素二重結合構造及び炭素-炭素三重結合構造)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する基であってもよく、また芳香族炭化水素基であってもよいことを意味する。即ち、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基等は、全て「2価の炭化水素基」に含まれる。
【0050】
31の炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。
【0051】
31としては、単結合(-)、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CHCH-)、n-プロピレン基(-CHCHCH-)等が挙げられる。なかでも、R31としては、単結合(-)、メチレン基(-CH-)が特に好ましい。
【0052】
式(III)中、Q31は、それぞれ独立して、「オキサ基(-O-)」又は「第2級アミノ基(-NH-)」を表し、2つのQ31が「オキサ基(-O-)」であり、R31が「単結合(-)」である場合、これはシュウ酸イオン(C 2-)が多座配位子となって、オキサラト錯体を形成していることを意味する。Q31としては、オキサ基(-O-)が特に好ましい。
【0053】
式(III)中、X31は、それぞれ独立して、「フルオロ基(-F)」、「クロロ基(-Cl)」、「ブロモ基(-Br)」、又は「ヨード基(-I)」を表している。なかでも、X31は、フルオロ基(-F)が特に好ましい。
【0054】
式(III)中、Z31は、「ホウ素原子」又は「リン原子」を表している。なかでも、Z31は、ホウ素原子が特に好ましい。
【0055】
式(III)中、M31 は、「アルカリ金属イオン」、「アルカリ土類金属イオン」、「アンモニウムイオン」、「イミダゾリウムイオン」、「ピリジニウムイオン」、「ピロリジニウムイオン」、「ピペリジニウムイオン」、又は「ホスホニウムイオン」を表している。なかでも、M31 は、リチウムイオンであることが特に好ましい。
【0056】
式(III)中、hは、前記Z31がホウ素原子のときに1又は2を、前記Z31がリン原子のときに1~3の整数を表し、iは、前記Z31がホウ素原子のときに0又は2を、前記Z31がリン原子のときに0、2、又は4を表している。なかでも、Z31がホウ素原子のときに、hは2であり、iは0であることが特に好ましい。
【0057】
式(III)で表される塩としては、下記式(III-1-1)で表されるリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、下記式(III-1-2)で表されるリチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)、下記式(III-2-1)で表されるリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LiDFBOP)、下記式(III-2-2)で表されるリチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート(LiTFOP)等が挙げられる。なお、非水電解液は、1種類の式(III)で表される塩を含むものでもよいし、2種類以上の式(III)で表される塩を含んでいてもよい。
【0058】
【化11】
【0059】
非水電解液の式(III)で表される塩の総含有量は、非水電解液全量(非水電解液全量を100質量%としたとき)に対して、通常0.01質量%~5.0質量%であり、下限値として好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、上限値として好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。これらの化合物の総含有量が前記範囲内であると、充放電サイクル後の容量維持率及び抵抗上昇率を良好な値に制御し、より優れた電池特性を達成できる。
【0060】
(式(IV)で表されるイミド塩)
非水電解液は、さらに下記式(IV)で表されるイミド塩を含有することが好ましい。
【0061】
【化12】
【0062】
式(IV)中、R41は、それぞれ独立して、「フルオロ基(-F)」、「クロロ基(-Cl)」、「ブロモ基(-Br)」、「ヨード基(-I)」、「炭素原子数1~12の炭化フッ素基」、又は「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基」を表している。R41における「炭化フッ素基」と「炭化水素基」とは、R11の場合と同義である。
【0063】
41が炭化フッ素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。また、R41が炭化水素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0064】
41としては、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、ビニル基(-CH=CH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、s-ブチル基(-CHCH(CH)、t-ブチル基(-C(CH)、へキシル基(-CHCHCHCHCHCH)、シクロヘキシル基(-C11)、フェニル基(-C)、ベンジル基(-CH)、トリフルオロメトキシメチル基(-CHOCF)等が挙げられる。なかでも、R41としては、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)が特に好ましい。
【0065】
式(IV)中、M41 は、「アルカリ金属イオン」、「アルカリ土類金属イオン」、「アンモニウムイオン」、「イミダゾリウムイオン」、「ピリジニウムイオン」、「ピロリジニウムイオン」、「ピペリジニウムイオン」、又は「ホスホニウムイオン」を表している。なかでも、M41 は、リチウムイオンであることが特に好ましい。
【0066】
式(IV)で表されるイミド塩としては、下記式(IV-1-1)で表されるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、下記式(IV-1-2)で表されるリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、下記式(IV-1-3)で表されるリチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド等が挙げられる。なお、非水電解液は、1種類の式(IV)で表されるイミド塩を含むものでもよいし、2種類以上の式(IV)で表されるイミド塩を含んでいてもよい。
【0067】
【化13】
【0068】
非水電解液の式(IV)で表されるイミド塩の総含有量は、非水電解液全量(非水電解液全量を100質量%としたとき)に対して、通常0.01質量%~5.0質量%であり、下限値として好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、上限値として好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。これらの化合物の総含有量が前記範囲内であると、充放電サイクル後の容量維持率及び抵抗上昇率を良好な値に制御し、より優れた電池特性を達成できる。
【0069】
(式(V)で表されるスルホン酸塩)
非水電解液は、さらに下記式(V)で表されるスルホン酸塩を含有することが好ましい。
【0070】
【化14】
【0071】
式(V)中、R51は、「フルオロ基(-F)」、「クロロ基(-Cl)」、「ブロモ基(-Br)」、「ヨード基(-I)」、「炭素原子数1~12の炭化フッ素基」、又は「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基」を表している。なかでも、R51は、フッ素元素を含む官能基であることが好ましい。R51がフッ素元素を含む官能基である場合、式(V)で表されるスルホン酸塩は、フルオロスルホン酸塩となる。なお、R51における「炭化フッ素基」と「炭化水素基」とは、R11の場合と同義である。
【0072】
51が炭化フッ素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。また、R51が炭化水素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0073】
51としては、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、ビニル基(-CH=CH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、s-ブチル基(-CHCH(CH)、t-ブチル基(-C(CH)、へキシル基(-CHCHCHCHCHCH)、シクロヘキシル基(-C11)、フェニル基(-C)、ベンジル基(-CH)、トリフルオロメトキシメチル基(-CHOCF)等が挙げられる。なかでも、R51としては、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)が特に好ましい。
【0074】
式(V)中、M51 は、「アルカリ金属イオン」、「アルカリ土類金属イオン」、「アンモニウムイオン」、「イミダゾリウムイオン」、「ピリジニウムイオン」、「ピロリジニウムイオン」、「ピペリジニウムイオン」、又は「ホスホニウムイオン」を表している。なかでも、M51 は、リチウムイオンであることが特に好ましい。
【0075】
式(V)で表されるスルホン酸塩としては、下記式(V-1-1)で表されるフルオロスルホン酸リチウム(LiSOF)、下記式(V-1-2)で表されるトリフルオロメチルスルホン酸リチウム等が挙げられる。なお、非水電解液は、1種類の式(V)で表されるスルホン酸塩を含むものでもよいし、2種類以上の式(V)で表されるスルホン酸塩を含んでいてもよい。
【0076】
【化15】
【0077】
非水電解液の式(V)で表されるスルホン酸塩の総含有量は、非水電解液全量(非水電解液全量を100質量%としたとき)に対して、通常0.01質量%以上5.0質量%以下であり、下限値として好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、上限値として好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。これらの化合物の総含有量が前記範囲内であると、充放電サイクル後の容量維持率及びや抵抗上昇率を良好な値に制御し、より優れた電池特性を達成できる。
【0078】
(式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物)
非水電解液は、さらに下記式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物を含有することが好ましい。
【0079】
【化16】
【0080】
式(VI)中、R61は、「式(vi-1)で表される基」、「式(vi-2)で表される基」、又は「炭素原子数1~6の2価の炭化水素基」を表している。R61において「2価の炭化水素基」は、R31の場合と同義である。
【0081】
【化17】
【0082】
61が炭化水素基であるときの炭素原子数は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
【0083】
式(vi-1)及び式(vi-2)中の波線は、その先が式(VI)における2つのオキサ基を構成する酸素原子(-O-)にそれぞれ結合して、環状硫酸エステル構造を形成していることを意味する。また、R62は、オキサ基(-O-)、又は末端若しくは鎖中にオキサ基(-O-)を含んでもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を表している。具体的に、R62は、「オキシメチレン基(-OCH-)」、「オキシエチレン基(-OCHCH-)」、「オキサ基(-O-)」、又は「炭素原子数1~6の2価の炭化水素基」とすることができる。R62において「2価の炭化水素基」は、R31の場合と同義である。また、R62がオキシメチレン基(-OCH-)、オキシエチレン基(-OCHCH-)、又はオキサ基(-O-)であるとは、オキサ基が式(vi-1)の硫黄原子(-S(=O)O-)に結合して、環状硫酸エステル構造を形成していることを意味する。
【0084】
62としては、オキシメチレン基(-OCH-)、オキシエチレン基(-OCHCH-)が特に好ましい。
【0085】
63は、「炭素原子数1~8の炭化水素基」、又は「水素原子(-H)」を表している。R63としては、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、ビニル基(-CH=CH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、s-ブチル基(-CHCH(CH)、t-ブチル基(-C(CH)、へキシル基(-CHCHCHCHCHCH)、シクロヘキシル基(-C11)、フェニル基(-C)が挙げられる。なかでも、R63としては、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、水素原子(-H)が特に好ましい。
【0086】
式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物としては、下記式(VI-1-1)で表される環状硫酸エステル化合物、下記式(VI-2-1)で表される環状硫酸エステル化合物、下記式(VI-2-2)で表される環状硫酸エステル化合物等が挙げられる。なお、非水電解液は、1種類の式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物を含むものでもよいし、2種類以上の式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物を含んでいてもよい。
【0087】
【化18】
【0088】
非水電解液の式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物の総含有量は、非水電解液全量(非水電解液全量を100質量%としたとき)に対して、通常0.01質量%~5.0質量%であり、下限値として好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、上限値として好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。これらの化合物の総含有量が前記範囲内であると、充放電サイクル後の容量維持率及び抵抗上昇率を良好な値に制御し、より優れた電池特性を達成できる。
【0089】
(式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物)
非水電解液は、さらに下記式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物を含有することが好ましい。
【0090】
【化19】
【0091】
式(VII)中の実線と点線の二重線は、単結合(-)又は二重結合(=)であることを意味する。
【0092】
式(VII)中、R71は、それぞれ独立して、「フルオロ基(-F)」、「クロロ基(-Cl)」、「ブロモ基(-Br)」、「ヨード基(-I)」、「炭素原子数1~12の炭化フッ素基」、又は「置換基としてフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、及びオキサ基(-O-)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい炭素原子数1~12の炭化水素基」を表している。R71において「炭化フッ素基」と「炭化水素基」とは、R11の場合と同義である。
【0093】
71が炭化フッ素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。また、R71が炭化水素基であるときの炭素原子数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0094】
71としては、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、ビニル基(-CH=CH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、s-ブチル基(-CHCH(CH)、t-ブチル基(-C(CH)、へキシル基(-CHCHCHCHCHCH)、シクロヘキシル基(-C11)、フェニル基(-C)、ベンジル基(-CH)、トリフルオロメトキシメチル基(-CHOCF)等が挙げられる。なかでも、R71としては、水素原子(-H)、フルオロ基(-F)、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、n-ヘプタフルオロプロピル基(-C)が特に好ましい。
【0095】
jは、0~3の整数を表しているが、0であることが好ましい。
【0096】
式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物としては、下記式(VII-1-1)で表される1,3-プロペンスルトン(PRS)、下記式(VII-1-2)で表される1,3-プロパンスルトン(PS)等が挙げられる。なお、非水電解液は、1種類の式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物を含むものでもよいし、2種類以上の式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物を含んでいてもよい。
【0097】
【化20】
【0098】
非水電解液の式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物の総含有量は、非水電解液全量(非水電解液全量を100質量%としたとき)に対して、通常0.01質量%~5.0質量%であり、下限値として好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、上限値として好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。これらの化合物の総含有量が前記範囲内であると、充放電サイクル後の容量維持率及び抵抗上昇率を良好な値に制御し、より優れた電池特性を達成できる。
【0099】
(非水溶媒)
非水電解液は、非水溶媒を含有する。非水溶媒としては種々公知のものを適宜選択することができる。非水溶媒は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0100】
非水溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、含フッ素鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、含フッ素脂肪族カルボン酸エステル類、γ-ラクトン類、含フッ素γ-ラクトン類、環状エーテル類、含フッ素環状エーテル類、鎖状エーテル類、含フッ素鎖状エーテル類、ニトリル類、アミド類、ラクタム類、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド燐酸、などが挙げられる。
【0101】
環状カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、などが挙げられる。含フッ素環状カーボネート類としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、などが挙げられる。鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、などが挙げられる。
【0102】
脂肪族カルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酪酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、トリメチル酪酸エチル、などが挙げられる。γ-ラクトン類としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、などが挙げられる。
【0103】
環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、などが挙げられる。鎖状エーテル類としては、例えば、1,2-エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、などが挙げられる。ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、などが挙げられる。アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。ラクタム類としては、例えば、N-メチルピロリジノン、N-メチルオキサゾリジノン、N,N'-ジメチルイミダゾリジノン、などが挙げられる。
【0104】
非水溶媒は、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、及び含フッ素鎖状カーボネート類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、及び含フッ素鎖状カーボネート類の合計の割合は、非水溶媒の全量に対して、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
【0105】
非水溶媒は、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、非水溶媒中に占める、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類の合計の割合は、非水溶媒の全量に対して、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
【0106】
非水溶媒の含有量の上限は、非水電解液の総量に対して、好ましくは99質量%であり、好ましくは97質量%であり、更に好ましくは90質量%である。非水溶媒の含有量の下限は、非水電解液の総量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0107】
非水溶媒の固有粘度は、電解質の解離性及びイオンの移動度をより向上させる観点から、25℃において10.0mPa・s以下であることが好ましい。
【0108】
(電解質)
非水電解液は、電解質を含有する。
【0109】
電解質は、フッ素を含むリチウム塩(以下、「含フッ素リチウム塩」という場合がある。)、及びフッ素を含まないリチウム塩の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0110】
含フッ素リチウム塩としては、例えば、無機酸陰イオン塩、有機酸陰イオン塩などが挙げられる。無機酸陰イオン塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF)、などが挙げられる。有機酸陰イオン塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CFSON)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(CSON)などが挙げられる。なかでも、含フッ素リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)が更に好ましい。
【0111】
フッ素を含まないリチウム塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li10Cl10)などが挙げられる。
【0112】
電解質が含フッ素リチウム塩を含む場合、含フッ素リチウム塩の含有割合は、電解質の全量に対して、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
含フッ素リチウム塩が六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を含む場合、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)の含有割合は、電解質の全量に対して、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
【0113】
非水電解液が電解質を含む場合、非水電解液における電解質の濃度は、好ましくは0.1mol/L~3mol/L、より好ましくは0.5mol/L~2mol/Lである。
【0114】
非水電解液が六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を含む場合、非水電解液における六フッ化リン酸リチウム(LiPF)の濃度は、好ましくは0.1mol/L~3mol/L、より好ましくは0.5mol/L~2mol/Lである。
【0115】
<非水電解液二次電池>
本開示の別の一態様である非水電解液二次電池は、「正極」、「負極」、上述した本開示の「非水電解液」、及び「セパレータ」を備える非水電解液二次電池である。
以下、「正極」、「負極」、「セパレータ」等について詳細に説明する。
【0116】
(正極)
通常正極は、正極活物質と結着材、必要に応じて導電助剤、増粘剤を溶媒に分散させてスラリーとし、このスラリーを集電体に塗布、乾燥、圧縮して、集電体上に正極合材層(「正極活物質層」とも呼ばれる。)を形成することによって製造することができる。
【0117】
正極活物質としては、MoS、TiS、MnO、V等の遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1-X)(0<X<1)、LiNiCoMn(x、y及びzは、それぞれ独立に、0超1.00未満であり、かつ、x、y及びzの合計は、0.99~1.00である。)(いわゆる「NCM」;例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Co0.3Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1)等のリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物;LiNi1-x-yCoAl(tは、0.95~1.15であり、xは、0~0.3であり、yは、0.1~0.2であり、x及びyの合計は、0.5未満である。)(いわゆる「NCA」;例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05)等のリチウムと遷移金属と典型金属とからなる複合酸化物;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体等の導電性高分子材料;リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸マンガン鉄リチウム(LiMnFe1-xPO;0<x<1)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)、リン酸ニッケルリチウム(LiNiPO)等のリン酸金属リチウム;等が挙げられる。
【0118】
正極の結着材としてはポリフッ化ビニリデン等が挙げられ、正極の導電助剤としてはカーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、アモルファスウィスカー、グラファイト等が、正極の増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。また、正極を形成するためのスラリーの溶媒としては、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。
【0119】
正極合材層における正極活物質の総含有量は、正極合材層の総含有量を100質量%としたときに、通常70質量%~97質量%であるが、好ましくは75質量%以上であり、好ましくは95質量%以下である。
【0120】
正極の集電体の材質としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタル、カーボンクロス、カーボンペーパー等が挙げられる。
【0121】
(負極)
通常負極は、負極活物質と結着材(バインダー)、必要に応じて導電助剤、増粘剤を溶媒に分散させてスラリーとし、このスラリーを集電体に塗布、乾燥、圧縮して、集電体上に負極合材層(「負極活物質層」とも呼ばれる。)を形成することによって製造することができる。
【0122】
負極活物質となる単体又は化合物は、(1)リチウムイオンをドープ/脱ドープ可能な炭素単体と炭素化合物、(2)リチウムと合金化が可能な金属と合金、(3)リチウムイオンをドープ/脱ドープ可能な酸化物と窒化物と炭化物等に分類することができ、負極活物質がケイ素単体等である場合、通常粒子(粉体)状の単体又は化合物を使用する。また、使用する負極活物質は、1種類に限られず、2種類以上を混ぜ合わせて使用してもよい。
【0123】
負極活物質としては、ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、及び炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに、負極活物質としては、ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、及び炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種に加えて、さらに炭素単体粒子を含むことが好ましい。なお、炭素単体粒子としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)粒子、カーボンブラック粒子、活性炭粒子、非晶質炭素粒子等が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが挙げられる。非晶質炭素材料としては、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)等が挙げられる。
【0124】
負極活物質となる単体又は化合物が通粒子(粉体)状である場合、詳細な形状としては、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状が挙げられる。
【0125】
負極活物質が炭素単体粒子を含む場合の炭素単体のメディアン径D50は、通常1μm~30μmであり、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上で、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0126】
負極活物質が炭素単体粒子を含む場合の炭素単体のBET比表面積は、通常1.0m/g~5.0m/gであり、好ましくは2.0m/g以上、より好ましくは3.0m/g以上で、好ましくは4.5m/g以下、より好ましくは4.0m/g以下である。
【0127】
前記酸化ケイ素粒子を構成する酸化ケイ素は、SiOで表すことができ、xは変数、即ち酸化ケイ素における酸素原子の含有量は、特に限定されないが、xは通常0≦x<2であり、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上で、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。
【0128】
ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、又は炭化ケイ素粒子のメディアン径D50は、通常0.5μm~20μmであり、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上で、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0129】
ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、又は炭化ケイ素粒子のBET比表面積は、通常1.0m/g~5.0m/gであり、好ましくは1.5m/g以上、より好ましくは2.0m/g以上で、好ましくは4.5m/g以下、より好ましくは4.0m/g以下である。
【0130】
負極活物質が、ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、及び炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、負極活物質における、ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、及び炭化ケイ素粒子の総仕込質量は、負極活物質全体の総仕込質量を100質量%としたときに、30質量%以下であることが好ましく、1質量%~20質量%とすることができ、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0131】
負極活物質が、炭素単体粒子と、ケイ素単体粒子、酸化ケイ素粒子、及び炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種とを含む場合、負極活物質における炭素単体粒子の総仕込質量は、負極活物質全体の総仕込質量を100質量%としたときに、通常70質量%~99質量%であるが、好ましくは80質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。炭素単体粒子等の総仕込質量が前記範囲内であると、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度と容量維持率のバランスを確保しやすくなる。
【0132】
負極合材層における負極活物質の総含有量は、負極合材層全体を100質量%としたときに、通常70質量%~99.5質量%であるが、好ましくは75質量%以上であり、好ましくは99質量%以下である。
【0133】
負極の結着材としては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
負極合材層における結着材の共重合体の総含有量は、負極合材層全体を100質量%としたときに、通常0.1質量%~5質量%であるが、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0134】
負極合材層は、さらに導電助剤を含有することが好ましい。負極の導電助剤としては、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、カーボンナノチューブ、アモルファスウィスカー、グラファイト等が挙げられる。
【0135】
負極合材層における導電助剤の総含有量は、負極合材層全体を100質量%としたときに、通常0.01質量%~3質量%であるが、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0136】
負極合材層は、さらに増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤を含むことにより、スラリーの粘度を調整しやすくなり、生産性が向上する。負極の増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリオキシエチレン及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその変性体、多糖類等が挙げられる。
【0137】
負極合材層における増粘剤の総含有量は、負極合材層全体を100質量%としたときに、通常0.1質量%~5質量%であるが、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0138】
スラリーは、溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、アセチルピリジン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルホルムアミド、メチルエチルケトン、フルフラール、エチレンジアミン等が挙げられる。なお、溶媒は、前述の溶媒を混合した混合溶媒であってもよい。
【0139】
負極の集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が挙げられる。
【0140】
<セパレータ>
本開示の一態様である非水電解液二次電池におけるセパレータとしては、多孔質の樹脂平板が挙げられる。多孔質の樹脂平板の材質としては、樹脂、樹脂を含む不織布などが挙げられる。樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミドなどが挙げられる。
なかでも、セパレータは、単層又は多層構造の多孔性樹脂シートであることが好ましい。多孔性樹脂シートの材質は、一種又は二種以上のポリオレフィン樹脂を主体とする。セパレータの厚みは、好ましくは5μm~30μmである。セパレータは、好ましくは、正極と負極との間に配置される。
【0141】
<ケース>
ケースの形状などは、特に限定はなく、本開示のリチウムイオン二次電池前駆体の用途などに応じて、適宜選択される。ケースとしては、ラミネートフィルムを含むケース、電池缶と電池缶蓋とからなるケース、などが挙げられる。
【0142】
<リチウムイオン二次電池前駆体の具体例>
図1は、本開示のリチウムイオン二次電池前駆体の一例である積層型のリチウムイオン二次電池前駆体を示す概略断面図である。
【0143】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池前駆体1は、積層型の電池前駆体である。詳細には、リチウムイオン二次電池前駆体1では、電池素子10は、外装体30の内部に封入されている。外装体30は、ラミネートフィルムで形成されている。電池素子10には、正極リード21及び負極リード22の各々が取り付けられている。正極リード21及び負極リード22の各々は、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。
【0144】
電池素子10は、図1に示すように、正極11と、セパレータ13と、負極12と、が積層されてなる。正極11は、正極集電体11Aの両方の主面上に正極合材層11Bが形成されてなる。負極12は、負極集電体12Aの両方の主面上に負極合材層12Bが形成されてなる。正極11の正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極合材層11Bと、正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極合材層12Bとは、セパレータ13を介して向き合っている。
【0145】
リチウムイオン二次電池前駆体1の外装体30の内部には、本開示の非水電解液が注入されている。本開示の非水電解液は、正極合材層11B、セパレータ13、及び負極合材層12Bに浸透している。リチウムイオン二次電池前駆体1では、隣接する正極合材層11B、セパレータ13及び負極合材層12Bによって、1つの単電池層14が形成されている。なお、正極及び負極は、各集電体の片面上に各活物質層が形成されているものであってもよい。
【0146】
なお、リチウムイオン二次電池前駆体1は、積層型のリチウムイオン二次電池前駆体であるが、本開示にかかるリチウムイオン二次電池前駆体はこれに限定されず、例えば、捲回型のリチウムイオン二次電池前駆体であってもよい。捲回型のリチウムイオン二次電池前駆体では、正極、セパレータ、負極、及びセパレータをこの順の配置で重ねて層状とし、これを巻回することで電気素子とする。捲回型のリチウムイオン二次電池前駆体には、円筒型のリチウムイオン二次電池前駆体及び角形リチウムイオン二次電池前駆体が包含される。
【0147】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池前駆体1において、正極リード21及び負極リード22の各々が外装体30の内部から外部に向けて突出する方向は、外装体30に対して反対方向であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、正極リード21及び負極リード22の各々が外装体30の内部から外部に向けて突出する方向は、外装体30に対して同一方向であってもよい。
【0148】
図2は、本開示のリチウムイオン二次電池前駆体の別の一例であるコイン型のリチウムイオン二次電池前駆体を示す概略断面図である。
【0149】
図2に示すコイン型のリチウムイオン二次電池前駆体は、円盤状正極41と、円盤状負極42と、円盤状正極41及び円盤状負極42の間に配設された、非水電解液を注入したセパレータ45とを備えている。リチウムイオン二次電池前駆体は、円盤状正極41と円盤状負極42とセパレータ45を含む積層体を挟み込むように配設された、ステンレス又はアルミニウム等で形成されたスペーサー板47、48を有していてもよい。リチウム二次電子前駆体では、スペーサー板47、円盤状正極41、セパレータ45、円盤状負極42、スペーサー板48がこの順で積層されてなる積層体を正極缶43(以下、「電池缶」ともいう)と封口板44(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納している。正極缶43と封口板44とはガスケット46を介してかしめられ、内部を密封している。
この一例では、セパレータ45に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。
【0150】
〔リチウムイオン二次電池及びその製造方法〕
本開示のリチウムイオン二次電池は、前述したリチウムイオン二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して製造することができる。すなわち、本開示のリチウムイオン二次電池の製造方法は、前述した本開示のリチウムイオン二次電池前駆体を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、上記リチウムイオン二次電池前駆体に対して、充電及び放電を施す工程と、を含む。
【0151】
本開示のリチウムイオン二次電池及びその製造方法においては、充放電サイクル後の電池特性、特に、充放電サイクル後における放電容量維持率を高く維持することができ、充放電サイクル後の抵抗上昇率を低く抑えることが可能となる。
【0152】
準備工程は、予め製造された本開示のリチウムイオン二次電池前駆体を充電及び放電を施す工程に供するために単に用意するだけの工程であってもよいし、本開示にかかるリチウムイオン二次電池前駆体を製造する工程であってもよい。
【0153】
充電及び放電を施す工程において、リチウムイオン二次電池前駆体に対する充電及び放電は、公知の方法に従って行うことができる。本工程では、リチウムイオン二次電池前駆体に対し、充電及び放電のサイクルを、複数回繰り返してもよい。この充電及び放電により、リチウムイオン二次電池前駆体における正極(特に正極活物質)及び/又は負極(特に負極活物質)の表面に、好ましくはSEI(Solid Electrolyte Interface)膜が形成される。
【0154】
充電及び放電を施す工程は、リチウムイオン二次電池前駆体に対し、25℃~70℃の環境下で、充電及び放電の組み合わせを1回以上施すことが好ましい。
【実施例0155】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
以下、「%」は、特に断りが無い限り「質量%」である。
【0156】
〔実施例1〕
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(以下、「EC」)と、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」)と、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」)とを、EC:DMC:EMC=30:35:35(体積比)で混合した。これにより、非水溶媒として混合溶媒を得た。得られた混合溶媒に対し、電解質としてのLiPFを、最終的に得られる非水電解液中の濃度が1.0mol/Lとなるように溶解させ、電解液(以下、「基本電解液」ともいう)を得た。得られた基本電解液に対して、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量が1.0質量%になるように、下記式(I-1-1)で表されるアルケン化合物を配合して、非水電解液を得た。
【0157】
【化21】
【0158】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi0.8Co0.1Mn0.1(94質量%)と、導電助剤としての、カーボンブラック(3質量%)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)(3質量%)と、を混合した混合物を得た。得られた混合物を、N-メチルピロリドン溶媒中に分散させ、正極合材スラリーを得た。正極集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔を準備した。得られた正極合材スラリーをアルミニウム箔上に塗布し、乾燥後、プレス機で圧延し、シート状の正極を得た。正極は、正極集電体と正極活物質層とからなる。
【0159】
<負極の作製>
負極活物質としてグラファイト92.15質量%と酸化ケイ素(SiO(x=1)、一酸化ケイ素)4.85質量%、増粘剤として純水中で分散したカルボキシメチルセルロースナトリウムを固形分で1.5質量%、バインダーとして純水中で分散したスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を固形分で1.5質量%混合し、負極合材スラリーを得た。負極集電体として厚さ10μmの銅箔を準備した。得られた負極合材スラリーを銅箔上に塗布し、乾燥後、プレス機で圧延し、シート状の負極を得た。負極は、負極集電体と負極活物質層とからなる。
【0160】
<セパレータの準備>
セパレータとして、多孔性ポリエチレンフィルムを準備した。
【0161】
<リチウムイオン二次電池前駆体の作製>
負極を直径14mmで、正極を直径13mmで、セパレータを直径17mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いた。これにより、コイン状の負極、コイン状の正極、及びコイン状のセパレータをそれぞれ得た。得られたコイン状の負極、コイン状のセパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(サイズ:2032サイズ)内に積層した。次いで、この電池缶内に非水電解液20μLを注入し、セパレータと正極と負極とを非水電解液に含漬させた。次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより、電池を密封した。以上により、図2で示す構成を有するコイン型のリチウムイオン二次電池前駆体(即ち、充電及び放電が施される前のリチウムイオン二次電池)を得た。リチウムイオン二次電池前駆体のサイズは、直径20mm、高さ3.2mmであった。
【0162】
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記リチウムイオン二次電池前駆体に対し、25℃~70℃の温度範囲下、4.2Vまでの充電及び2.5Vまでの放電を3回繰り返すことで、リチウムイオン二次電池を得た。
【0163】
<初期放電容量の測定>
上記リチウムイオン二次電池を、25℃の恒温槽中、4.2Vまで充電し、次いで2.5Vまで放電し、放電容量[mAh](以下、「初期放電容量」ともいう)を測定した。
【0164】
<初期抵抗値の測定>
初期放電容量測定後のリチウムイオン二次電池を、3.7Vまで充電し、次いで-20℃の恒温槽中で、放電レート0.1C~1.0Cの各々におけるCC10s放電による各電圧低下量(=放電開始前の電圧-放電開始後10秒目の電圧)を測定した。ここで、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間行う放電を意味する。得られた各電圧低下量と、各電流値(即ち、放電レート0.1C~1.0Cに相当する各電流値)と、に基づき、初期抵抗値としての直流抵抗[Ω]を測定した。
【0165】
<充放電サイクル試験>
次に、初期抵抗測定後のリチウムイオン二次電池を、25℃の恒温槽中で、充電レート0.5Cにて4.2Vまで定電流充電した。次いで放電レート0.5Cにて2.5Vまで定電流放電した。上記の充放電サイクルを50回繰り返した。
【0166】
<充放電サイクル後放電容量維持率の測定と相対値の算出>
次に、充放電サイクル試験後のリチウムイオン二次電池の放電容量を、初期放電容量と同様の方法で測定した。後述の比較例1についても、同様の方法によって充放電サイクル試験後のリチウムイオン二次電池の放電容量を測定した。比較例1の充放電サイクル後の放電容量維持率を100とした場合の実施例1の充放電サイクル後の放電容量維持率を相対値として算出した(下記式参照)。
実施例1の充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)=(実施例1の充放電サイクル後の放電容量維持率)/(比較例1の充放電サイクル後の放電容量維持率)×100
【0167】
<充放電サイクル後抵抗上昇率の測定と相対値の算出>
次に、充放電サイクル試験後のリチウムイオン二次電池の抵抗値を、初期抵抗値と同様の方法で測定した。後述の比較例1についても、同様の方法によって充放電サイクル試験後のリチウムイオン二次電池の抵抗値を測定した。比較例1の充放電サイクル後の抵抗上昇率を100とした場合の実施例1の充放電サイクル後の抵抗上昇率を相対値として算出した(下記式参照)。
実施例1の充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)=(実施例1の充放電サイクル後の抵抗上昇率)/(比較例1の充放電サイクル後の抵抗上昇率)×100
【0168】
〔比較例1〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物を非水電解液に添加しなかった以外、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、実施例1の「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」の基準値とした。結果を表1に示す。
【0169】
〔実施例2〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物を非水電解液全質量に対する含有量が2.0質量%となるように添加した以外は、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、比較例1のリチウムイオン二次電池の「充放電サイクル後の放電容量維持率」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率」を100とした相対値を算出して、「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」とした。結果を表1に示す。
【0170】
〔実施例3〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物に加えて、下記式(II-1-1)で表されるジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を非水電解液全質量に対する含有量が1.0質量%となるように添加した以外は、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、比較例1のリチウムイオン二次電池の「充放電サイクル後の放電容量維持率」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率」を100とした相対値を算出して、「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」とした。結果を表1に示す。
【0171】
【化22】
【0172】
〔実施例4〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物に加えて、下記式(III-1-1)で表されるリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)を非水電解液全質量に対する含有量が1.0質量%となるように添加した以外は、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、比較例1のリチウムイオン二次電池の「充放電サイクル後の放電容量維持率」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率」を100とした相対値を算出して、「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」とした。結果を表1に示す。
【0173】
【化23】
【0174】
〔実施例5〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物に加えて、下記式(IV-1-1)で表されるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を非水電解液全質量に対する含有量が1.0質量%となるように添加した以外は、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、比較例1のリチウムイオン二次電池の「充放電サイクル後の放電容量維持率」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率」を100とした相対値を算出して、「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」とした。結果を表1に示す。
【0175】
【化24】
【0176】
〔実施例6〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物に加えて、下記式(V-1-1)で表されるフルオロスルホン酸リチウム(LiSOF)を非水電解液全質量に対する含有量が1.0質量%となるように添加した以外は、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、比較例1のリチウムイオン二次電池の「充放電サイクル後の放電容量維持率」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率」を100とした相対値を算出して、「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」とした。結果を表1に示す。
【0177】
【化25】
【0178】
〔実施例7〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物に加えて、下記式(VI-1-1)で表される環状硫酸エステル化合物を非水電解液全質量に対する含有量が1.0質量%となるように添加した以外は、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、比較例1のリチウムイオン二次電池の「充放電サイクル後の放電容量維持率」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率」を100とした相対値を算出して、「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」とした。結果を表1に示す。
【0179】
【化26】
【0180】
〔実施例8〕
式(I-1-1)で表されるアルケン化合物に加えて、下記式(VII-1-1)で表される1,3-プロペンスルトン(PRS)を非水電解液全質量に対する含有量が1.0質量%となるように添加した以外は、実施例1に記載の内容と同様の操作によって非水電解液を作製し、リチウムイオン二次電池を作製した。さらに実施例1に記載の内容と同様の操作によって、充放電サイクル後の放電容量維持率と充放電サイクル後の抵抗上昇率を測定し、比較例1のリチウムイオン二次電池の「充放電サイクル後の放電容量維持率」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率」を100とした相対値を算出して、「充放電サイクル後の放電容量維持率(相対値)」と「充放電サイクル後の抵抗上昇率(相対値)」とした。結果を表1に示す。
【0181】
【化27】
【0182】
[結果]
【表1】

【0183】
表1から明らかなように、式(I)で表されるアルケン化合物を配合した非水電解液を使用した実施例1~8のリチウムイオン二次電池は、充放電サイクル後の容量維持率が上昇し、抵抗上昇率が低下していることから、比較例1と比べて充放電サイクル後の電池特性に優れているといえる。また、式(II-1)で表されるジフルオロリン酸塩、式(III)で表される塩、式(IV)で表されるイミド塩、式(V)で表されるスルホン酸塩、式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物、及び式(VII)で表される環状スルホン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに配合した場合(実施例3~8のリチウムイオン二次電池)は、充放電サイクル後の容量維持率が更に上昇し、抵抗上昇率が更に低下することから、充放電サイクル後の電池特性に更に優れているといえる。
【符号の説明】
【0184】
1…リチウムイオン二次電池前駆体1、10…電池素子、11…正極、12…負極、13…セパレータ、14…単電池層、21…正極リード、22…負極リード、30…外装体、41…円盤状正極、42…円盤状負極、43…正極缶、44…封口板、45…セパレータ46…ガスケット、47…スペーサー板、48…スペーサー板
図1
図2