(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098916
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/02 20060101AFI20250625BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20250625BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
H01R43/02 B
H01R4/18 A
H01R4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069133
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2023215004
(32)【優先日】2023-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
【テーマコード(参考)】
5E051
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA02
5E051LA06
5E051LB01
5E051LB04
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC09
5E085DD14
5E085FF01
5E085HH13
5E085HH34
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】簡素な工程で複数の素線を端子金具に圧着させることが可能な端子付き電線の製造方法を提供する。
【解決手段】端子付き電線の製造方法は、複数の素線13を含む導体11を備える電線10と、導体11を加締める導体加締部22を含む端子金具20とを準備する準備工程と、アンビル110とクリンパ120とで導体11を導体加締部22で加締めつつ、アンビル110とクリンパ120とを介して導体11及び導体加締部22に電流を流し、導体11及び導体加締部22に電流を流すことによって生じるジュール熱で素線13同士を溶接して単線化することで、単線化した導体11を導体加締部22に圧着する圧着工程とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線を含む導体を備える電線と、前記導体を加締める導体加締部を含む端子金具とを準備する準備工程と、
アンビルとクリンパとで前記導体を前記導体加締部で加締めつつ、前記アンビルと前記クリンパとを介して前記導体及び前記導体加締部に電流を流し、前記導体及び前記導体加締部に電流を流すことによって生じるジュール熱で前記素線同士を溶接して単線化することで、前記単線化した導体を前記導体加締部に圧着する圧着工程と、
を含む、端子付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記圧着工程では、前記クリンパが前記アンビルに最も近接している間の少なくともいずれかの時点に前記導体に電流を流す、請求項1に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記複数の素線の各々は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されている、請求項1又は2に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記端子金具は銅又は銅合金により形成されている、請求項1又は2に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項5】
前記準備工程において準備する前記端子金具の前記導体加締部は、底板と、前記底板に接続され、前記導体を加締めるための一対の導体加締片を含み、前記導体加締片の先端は、前記底板と同じ厚さで導体加締片を形成した場合よりも体積が小さく、
前記導体加締部で前記導体を加締める際に前記一対の導体加締片の先端が前記導体に食い込む、請求項1又は2に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項6】
前記導体加締片の先端は、前記底板の厚さよりも薄い薄肉部、複数の凹部、及び複数の貫通孔からなる群より選択される少なくとも1つを有している、請求項5に記載の端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車用のワイヤーハーネスは、複数の端子付き電線を備えている。端子付き電線は複数の素線を含む電線と端子金具とを備えており、端子金具に複数の素線が圧着されることによって複数の素線と端子金具とが接続される。しかしながら、素線の表面に酸化皮膜が形成されていると、複数の素線と端子金具との間の電気抵抗値が高くなるおそれがある。素線の表面に形成されている酸化皮膜は、単に圧着しただけでは酸化皮膜を十分に破壊できない部分があるため、圧着工程とは別に超音波振動による摺動によって酸化皮膜を除去していた。
【0003】
一方、特許文献1には、圧着工程を有する端子付き電線の製造方法が開示されている。圧着工程は、下型に載せ置かれた端子金具の導体加締部に向けて上型を下降させることによって、導体加締部の内壁面側に配置された素線間を半田付けさせ且つ導体加締部を素線に対して圧着させる。また、圧着工程では、導体加締部の内壁面又は素線間に設けた半田を溶融させ、半田が溶融状態にある何れかのタイミングで又は半田が溶融状態にある全期間に超音波振動を上型又は下型に印加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、超音波振動のキャビテーション効果により、素線と導体加締部の表面の酸化皮膜を除去することができる。そして、酸化皮膜が除去された導体加締部の内壁面と素線との間及び素線間を半田付けし、導体加締部と素線との間及び素線間の抵抗値を低く抑えることができる。しかしながら、従来の端子付き電線の製造方法では半田を使用する必要があるため、半田を使用しなくてもよい簡素な端子付き電線の製造方法が求められていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、簡素な工程で複数の素線を端子金具に圧着させることが可能な端子付き電線の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る端子付き電線の製造方法は、複数の素線を含む導体を備える電線と、導体を加締める導体加締部を含む端子金具とを準備する準備工程を含む。端子付き電線の製造方法は、アンビルとクリンパとで導体を導体加締部で加締めつつ、アンビルとクリンパとを介して導体及び導体加締部に電流を流し、導体及び導体加締部に電流を流すことによって生じるジュール熱で素線同士を溶接して単線化することで、単線化した導体を導体加締部に圧着する圧着工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な工程で複数の素線を端子金具に圧着させることが可能な端子付き電線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電線及び端子金具の一例を概略的に示す斜視図である。
【
図2】端子金具に対して電線の位置を調整する前の状態を示す斜視図である。
【
図3】端子金具に対して電線の位置を調整し、クリンパが下降し始めた状態を示す断面図である。
【
図4】電線を端子金具に加締めている状態を示す断面図である。
【
図5】端子金具に加締めた電線に電流を流している状態を示す断面図である。
【
図6】電線を端子金具に圧着した後の状態を示す断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る端子金具の一例を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る端子付き電線において電線を端子金具に圧着した後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係る端子付き電線の製造方法について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る端子付き電線の製造方法について
図1~
図6を用いて説明する。端子付き電線の製造方法は、準備工程と、圧着工程とを含んでいる。
【0012】
(準備工程)
準備工程は、
図1に示すように、電線10と端子金具20とを準備する工程である。電線10は、導体11と、導体11の外周を被覆する絶縁被覆12とを備えている。電線10の端部では、絶縁被覆12が剥ぎ取られ、導体11が絶縁被覆12から露出している。導体11は、複数の素線13を含んでいる。複数の素線13は、複数本の素線を束ねて構成された集合撚り線を含んでいてもよい。また、導体11は、1本の集合撚り線のみで構成されていてもよく、複数本の集合撚り線を束ねて構成された複合撚り線であってもよい。
【0013】
複数の素線13の各々は銅又はアルミニウムを主成分として含んでいてもよい。なお、主成分は、各素線13に含まれる金属のうち、最もモル比が多い金属を意味する。各素線13に含まれる金属のうち、最もモル比が多い金属は、モル比で50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は、95%以上含まれていてもよい。各素線13の材料は、それぞれ、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの金属を含む合金等であってもよい。軽量化の観点からは、複数の素線13の各々は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されていることが好ましい。
【0014】
絶縁被覆12の材料としては、電気絶縁性を確保できる熱可塑性樹脂を使用することができる。絶縁被覆12の材料は、例えば、オレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニルの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。オレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン共重合体及びプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも一種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0015】
端子金具20は、端子接続部21と、導体加締部22と、被覆加締部23と、第1継部24と、第2継部25とを含んでいる。端子接続部21は端子金具20の一方の端部に設けられており、導体加締部22は端子金具20のもう一方の端部に設けられている。なお、本明細書において、端子金具20の端子接続部21が設けられている方を前側、被覆加締部23が設けられている方を後側として説明する。
【0016】
端子接続部21は、端子金具20の長手方向の前部に設けられており、図示しない相手側端子に接続されるように構成されている。端子接続部21が相手側端子の端子接続部と接続されることにより、端子金具20は相手側端子と機械的かつ電気的に接続される。端子接続部21は、内部に筒状の空間を有するボックス状の形状をしており、内部に相手側端子と係合するバネ片を内蔵している。
【0017】
導体加締部22は、端子金具20の長手方向において、端子接続部21よりも後部に設けられている。具体的には、導体加締部22は、端子金具20の長手方向において、端子接続部21と被覆加締部23との間に設けられている。導体加締部22は、電線10の導体11を加締めて圧着するものであり、導体11と直接接触している。導体加締部22は、導体11を載置するための底板26と、底板26に接続され、導体11を径方向に包み込んで加締めるための一対の導体加締片27とを含んでいる。一対の導体加締片27は、底板26の左右両側の縁部から上方に延在している。導体加締部22は、電線10の圧着前において、底板26と一対の導体加締片27とにより、断面視U字状又はV字状に形成されている。本実施形態において、導体加締部22は、一対の導体加締片27によって導体11を加締めた場合に、B形状となるように導体11が端子金具20に圧着される。
【0018】
被覆加締部23は、端子金具20の長手方向において、導体加締部22よりも後部に設けられている。被覆加締部23は、電線10の端部に設けられた絶縁被覆12を加締めるものであり、絶縁被覆12と直接接触している。被覆加締部23は、電線10を載置するための底板26と、底板26に接続され、電線10を径方向に包み込んで加締めるための一対の被覆加締片28とを含んでいる。一対の被覆加締片28は、底板26の左右両側の縁部から上方に延在している。被覆加締部23は、電線10の圧着前において、底板26と一対の被覆加締片28とにより、断面視U字状又はV字状に形成されている。本実施形態において、被覆加締部23は、一対の被覆加締片28によって絶縁被覆12を加締めた場合に、一対の被覆加締片28は重なり合った状態で絶縁被覆12が端子金具20に圧着される。
【0019】
第1継部24は、端子金具20の長手方向において、端子接続部21と導体加締部22との間を接続している。第1継部24は、底板26と、底板26の左右両側の縁部から上方に延在した一対の側板とを含んでいる。第1継部24は、底板26と一対の側板とで断面視U字状又はV字状に形成されている。
【0020】
第2継部25は、端子金具20の長手方向において、導体加締部22と被覆加締部23との間を接続している。第2継部25は、底板26と、底板26の左右両側の縁部から上方に延在した一対の側板とを含んでいる。第2継部25は、底板26と一対の側板とで断面視U字状又はV字状に形成されている。
【0021】
端子金具20は、本実施形態においては、1枚の板状部材を折り曲げ加工することによって形成されている。そのため、端子接続部21の底板26から被覆加締部23の底板26が、1枚の共通した底板26として連続して形成されている。また、第1継部24の低背の側板の前後端は、端子接続部21の側板の後端及び導体加締部22の一対の導体加締片27の前端の各下半部にそれぞれ連続して形成されている。第2継部25の低背の側板の前後端は、導体加締部22の一対の導体加締片27の後端及び被覆加締部23の一対の被覆加締片28の前端の各下半部にそれぞれ連続して形成されている。
【0022】
端子金具20は、導電性材料により形成されている。端子金具20を形成する材料は、例えば、銅、アルミニウム、鉄及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属を含んでいてもよい。端子金具20の表面はめっきされていてもよく、めっきされていなくてもよい。
【0023】
端子金具20は銅又はアルミニウムを主成分として含んでいてもよい。なお、主成分は、端子金具20に含まれる金属のうち、最もモル比が多い金属を意味する。端子金具20に含まれる金属のうち、最もモル比が多い金属は、モル比で50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は、95%以上含まれていてもよい。端子金具20の材料は、それぞれ、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの金属を含む合金等であってもよい。導電性の観点からは、端子金具20は、銅又は銅合金により形成されていることが好ましい。
【0024】
(圧着工程)
圧着工程は、導体11を導体加締部22に圧着する工程である。導体11を導体加締部22に圧着することにより、電線10の導体11が端子金具20と機械的かつ電気的に接続される。
【0025】
圧着工程では、端子金具20の底板26の上に電線10の導体11が露出した部分を挿入する。これにより、導体加締部22の底板26の上面に導体11を載置される。また、被覆加締部23の底板26の上面に電線10の絶縁被覆12の付いた部分が載置される。
【0026】
圧着工程では、
図2に示すような圧着装置100を用いて圧着することができる。圧着装置100は、アンビル110と、アンビル110に対して上昇又は下降するクリンパ120とを備えている。アンビル110は、端子金具20を載置する台であり、端子金具20の底板26を支持している。クリンパ120は、アンビル110と上下方向に対向して配置されている。クリンパ120は、クランクピストン機構、シリンダピストン機構、ボールネジ機構、又はリニアモータのような昇降機構によって昇降し、アンビル110に対して近づいたり離れたりさせることができる。なお、本実施形態では、アンビル110を固定してクリンパ120を昇降する場合について説明するが、クリンパ120を固定してアンビル110を昇降させてもよい。
図3に示すように、クリンパ120はガイド溝121を有している。
【0027】
ガイド溝121は、突出部122と、端子金具20の短手方向において突出部122の両端に設けられた湾曲面123とを含んでいる。突出部122は、アンビル110に向かって突出している。湾曲面123は、突出部122と接続され、突出部122の突出方向とは反対側に向かって窪んで円弧状に湾曲している。ガイド溝121は、突出部122と湾曲面123とによって、端子金具20の長手方向から見てM字状に形成されている。
【0028】
図3に示すように、クリンパ120が下降すると、端子金具20の導体加締片27が、ガイド溝121内に導入される。
【0029】
図4に示すように、クリンパ120がさらに下降すると、一対の導体加締片27が湾曲面123に沿って湾曲を開始する。そして、一対の導体加締片27は、電線10の導体11を包み込むように内側に曲がり、一対の導体加締片27の先端29同士が、次第に突出部122に近づいていく。
【0030】
図5に示すように、クリンパ120がさらに下降すると、一対の導体加締片27の先端29同士が突き当たり、さらに突出部122に導かれて下方に向きを変え、導体11に食い込んでいく。このようにして、一対の導体加締片27の先端29が導体11に食い込むように導体加締部22が加締められる。一対の導体加締片27の先端29を導体11に食い込ませることにより、素線径の大きい導体11との機械的接合を強化することができる。そして、導体11が底板26の上面に密着した状態となるように加締められる。このようにして、アンビル110とクリンパ120とで導体11を導体加締部22で加締めることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る圧着工程では、
図5の矢印で示すように、導体11を導体加締部22で加締めつつ、アンビル110とクリンパ120とを介して導体11及び導体加締部22に電流を流す。そして、
図6に示すように、導体11に電流を流すことによって生じるジュール熱で素線13同士を溶接して単線化する。そして、単線化した導体11を導体加締部22に圧着する。これにより、導体加締部22は単線化した導体11に電気的及び機械的に接続される。具体的には、導体加締部22は、単線化した導体11の周方向を取り囲むように導体11を被覆する。圧着工程において、導体11を単線化し、かつ、単線化した導体11を導体加締部22に圧着することができるため、簡素な工程で複数の素線13を端子金具20に圧着させることができる。
【0032】
圧着工程では、アンビル110とクリンパ120とを電極として使用することにより、アンビル110とクリンパ120とを介して導体11及び導体加締部22に電流を流してもよい。アンビル110及びクリンパ120は、図示しない電源と電気的に接続されており、電源によってアンビル110とクリンパ120との間に電圧を印加することによって導体11に電流を流すことができる。電流は直流であってもよく、交流であってもよい。また、電流が流れる方向は、アンビル110からクリンパ120へ流れてもよく、クリンパ120からアンビル110へ流れてもよい。そして、導体11に発生したジュール熱によって金属を溶融させることにより、導体11を導体加締部22で加締めることと、素線13同士を溶接することとを同時に行うことができる。
【0033】
圧着工程では、クリンパ120がアンビル110に最も近接している間の少なくともいずれかの時点に導体11に電流を流してもよい。導体加締部22は、通常、クリンパ120がアンビル110に最も近接した際に変形量が最も大きくなっている。圧着工程では、クリンパ120がアンビル110に最も近接している間の少なくともいずれかの時点に電流を瞬間的に流すものであってもよい。圧着工程では、クリンパ120がアンビル110に最も近接している間の少なくともいずれかの時点に継続して電流を流すものであってもよい。圧着工程では、クリンパ120がアンビル110に最も近接してからクリンパ120が上昇し始めるまでの間の少なくともいずれかの時点に電流を流してもよい。電流は断続的に導体11に流してもよく、連続的に流し続けてもよい。クリンパ120がクランクピストン機構によって昇降する場合、クリンパ120がアンビル110に最も近接している状態は下死点であってもよい。また、圧着工程では、クリンパ120が下降して導体加締部22に接触してから、クリンパ120が上昇して導体加締部22から離れるまで電流を流してもよい。
【0034】
単線化した導体11は、電線10の端部に設けられるが、末端に設けられる必要はない。電線10の端部に単線化した導体11が設けられることにより、導体11の端部から絶縁被覆12内に水が浸入するのを抑制することができる。単線化した導体11は空隙を有していないことが好ましいが、少量の空隙を含んでいてもよい。
【0035】
なお、例えば、アルミニウム電線と銅端子とを溶接した場合は、異種金属の接合界面に脆弱な金属間化合物が生成されるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、圧着工程における圧着によって溶融状態の金属間化合物を外部に排出することができる。したがって、金属間化合物による端子金具20の機能低下を抑制することができる。
【0036】
なお、導体加締部22の加締め方法について説明したが、電流を流すことを除き、被覆加締部23も同様の方法によって加締めることができる。例えば、被覆加締部23の一対の被覆加締片28を、絶縁被覆12の付いた部分を包み込むように内側に曲げ、絶縁被覆12が底板26の上面に密着した状態となるように導体加締部22を加締めてもよい。一対の被覆加締片28によって絶縁被覆12を加締めることにより、電線10と端子金具20とを強固に機械的に接続することができる。
【0037】
なお、端子付き電線の製造方法は、圧着工程の後に、防食材を形成する防食材形成工程を含んでいてもよい。防食材形成工程では、導体11と第2継部25との接合部などのように、導体11と端子金具20とが接する部分に液状の防食材を塗布して硬化する工程である。防食材は、例えば、モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方を硬化させることによって形成することができる。モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方は、紫外線硬化型樹脂などであってもよい。紫外線硬化型樹脂は、紫外線を照射することによって瞬時に硬化することができる。防食材は、導体11と端子金具20との接合部に設けられる。電線10の導体11と端子金具20との材質が異なると、イオン化傾向の違いにより、これらの接合部で腐食が発生しやすくなる。そのため、当該接合部に防食材を設けることにより、腐食の発生を抑制することができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る端子付き電線の製造方法について、
図7及び
図8を用いて説明する。第1実施形態に係る端子付き電線の製造方法では、端子金具20は、均一な厚さを有する1枚の板状部材を折り曲げ加工することによって形成されていた。一方、第2実施形態に係る端子付き電線の製造方法では、導体11及び導体加締部22に電流を流すことによって生じるジュール熱で導体11の内部の発熱及び溶融が促進されるように導体加締片27の先端29が加工されている。以下、第2実施形態に係る端子付き電線の製造方法について詳細に説明するが、第1実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0039】
準備工程において準備する端子金具20の導体加締部22は、上述のように、底板26と、底板26に接続され、導体11を加締めるための一対の導体加締片27を含んでいる。一対の導体加締片27の先端29は、導体加締部22で導体11を加締める際に導体11に食い込むように構成されている。導体加締片27の先端29は、底板26と同じ厚さで導体加締片27を形成した場合よりも体積が小さくなるように形成されている。
【0040】
具体的には、
図7に示すように、本実施形態に係る端子金具20の導体加締片27は、導体加締片27が導体11を加締める加締方向において、先端29の厚さT1が底板26の厚さT2よりも薄い。より具体的には、加締方向において導体加締片27が底板26から先端29に向かって徐々に薄くなっている。
【0041】
圧着工程において、一対の導体加締片27の先端29は、導体加締部22で導体11を加締める際に導体11に食い込む。本実施形態に係る端子付き電線の製造方法では、
図8に示すように、加締時に導体11の内部に食い込む導体加締片27の先端29の厚さT3は、底板26と同じ厚さで導体加締片27を形成した場合よりも薄くなっている。導体加締片27の先端29の厚さT1が底板26の厚さT2よりも薄い場合、厚さT1が厚さT2と同じである場合と比較し、導体加締片27の先端29の体積が小さくなり、同じジュール熱を発生させるのに必要な電流量を低減することができる。そのため、導体11及び導体加締部22に電流を流した際に、導体11及び端子金具20に流れる電流量にばらつきが生じた場合であっても、一番熱の伝わりにくい導体11の内部の発熱及び溶融を促進することができる。
【0042】
なお、導体加締片27の先端29は、
図7に示すような底板26の厚さT2よりも薄い薄肉部、複数の凹部、及び複数の貫通孔からなる群より選択される少なくとも1つを有していてもよい。導体加締片27の先端29がこのような構造を有している場合であっても、導体加締片27の先端29は、底板26と同じ厚さT1で導体加締片27を形成した場合よりも体積が小さく、導体11の内部の発熱及び溶融を促進することができる。
【0043】
以上の通り、本実施形態に係る端子付き電線の製造方法は、複数の素線13を含む導体11を備える電線10と、導体11を加締める導体加締部22を含む端子金具20とを準備する準備工程を含む。端子付き電線の製造方法は、アンビル110とクリンパ120とで導体11を導体加締部22で加締めつつ、アンビル110とクリンパ120とを介して導体11及び導体加締部22に電流を流し、導体11及び導体加締部22に電流を流すことによって生じるジュール熱で素線13同士を溶接して単線化することで、単線化した導体11を導体加締部22に圧着する圧着工程を含む。
【0044】
このように、本実施形態に係る端子付き電線の製造方法では、導体11を加締めつつ、導体11を単線化することができる。また、素線13の表面の酸化皮膜は、溶接によって破壊されるため、素線13間の電気抵抗が上昇するのを抑制することができる。そのため、圧着工程の前に、電線10の素線13間を超音波溶着などのような別工程で接合しなくてもよい。すなわち、素線13間を接合する接合工程のための専用設備を設けなくてもよく、作業時間を低減することができる。したがって、本実施形態に係る端子付き電線の製造方法によれば、簡素な工程で複数の素線13を端子金具20に圧着させることができる。
【0045】
端子付き電線は、自動車などのような車両で使用されるワイヤーハーネスに用いることができる。
【0046】
なお、導体11を導体加締部22にいわゆるBクリンプとなるように圧着する例について説明した。しかしながら、端子金具20の圧着様式は、このような形態に限定されず、オーバラップクリンプなどのような形態で導体11を導体加締部22に圧着してもよい。また、端子金具20の導体加締部22は、筒状の形状を有するスリーブタイプ、及び、複数の部品を組み合わせて圧着する割スリーブタイプなどであってもよい。
【0047】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 電線
11 導体
20 端子金具
22 導体加締部
110 アンビル
120 クリンパ