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特開2025-9894ディスクカバーおよびこれを備えた切断装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009894
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ディスクカバーおよびこれを備えた切断装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/10 20060101AFI20250109BHJP
   B28D 1/04 20060101ALI20250109BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20250109BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20250109BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20250109BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20250109BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20250109BHJP
   B24B 55/05 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B24B55/10
B28D1/04 A
B28D7/02
B23Q11/00 M
B23Q11/10 A
B24B23/02
B24B55/02 D
B24B55/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024091782
(22)【出願日】2024-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2023106417
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023202205
(32)【優先日】2023-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506162828
【氏名又は名称】FSテクニカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正吾
【テーマコード(参考)】
3C011
3C047
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
3C011BB02
3C011BB06
3C011EE02
3C011EE04
3C047FF07
3C047GG07
3C047HH13
3C047JJ12
3C047JJ13
3C069AA01
3C069BA02
3C069BA04
3C069BB01
3C069BB02
3C069BB03
3C069BC02
3C069CA07
3C069CA12
3C069DA05
3C069DA06
3C069DA07
3C069EA01
3C158AA03
3C158AC05
(57)【要約】
【課題】本発明は、切断砥石により研削した研削屑混じりの冷却廃液を適切に回収することができるディスクカバーおよび切断装置を提供する。
【解決手段】切込み開放端123を有すると共に駆動軸11が臨む軸用開口部133を有し、切断砥石20を覆って遮蔽空間122を構成するカバー本体121と、接触開放端124aを有し、カバー本体121の周囲を覆うと共に吸引空間125を構成するアウターカバー124と、アウターカバー124に付設され、吸引空間125に連通する連通口141を有すると共にエアー吸引するための吸引口142を有する吸引ジョイント部126と、を備え、接触開放端124aは切断対象物Sに接触し、切込み開放端123は切断対象物Sとの間に吸引のための流路139を構成する。
【選択図】 図12


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に取り付けた切断砥石に冷却液を供給しながら切断対象物を切断する切断装置に設けられ、切込み側を開放した状態で前記切断砥石を覆うディスクカバーであって、
前記切込み側に切込み開放端を有すると共に前記駆動軸が臨む軸用開口部を有し、前記切断砥石を覆って遮蔽空間を構成するカバー本体と、
前記切込み側に接触開放端を有し、前記カバー本体の前記切込み開放端側の周囲を覆うと共に前記カバー本体との間に吸引空間を構成するアウターカバーと、
前記アウターカバーに付設され、一方の端部に前記吸引空間に連通する連通口を有すると共に、他方の端部に研削に伴う冷却廃液をエアー吸引するための吸引口を有する吸引ジョイント部と、を備え、
前記接触開放端は前記切断対象物に接触し、前記切込み開放端は前記切断対象物との間に吸引のための流路を構成することを特徴とするディスクカバー。
【請求項2】
前記カバー本体は、前記切込み開放端を形成したボトムカバー部と、前記ボトムカバー部に接合され、前記ボトムカバー部との間で前記軸用開口部が分割されるように形成したトップカバー部と、前記ボトムカバー部に前記トップカバー部を接合するためのカバー接合部とを有し、
前記ボトムカバー部、前記カバー接合部および前記アウターカバーは、一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスクカバー。
【請求項3】
前記トップカバー部は、プラスチックで形成され、
前記ボトムカバー部、前記カバー接合部および前記アウターカバーは、ゴムで一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のディスクカバー。
【請求項4】
前記トップカバー部は、前記カバー接合部に対し差込み接合されていることを特徴とする請求項3に記載のディスクカバー。
【請求項5】
前記アウターカバーには、前記切断砥石の左右方向の位置を指標する位置指標部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のディスクカバー。
【請求項6】
前記吸引のための流路の総断面積が、前記吸引口の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のディスクカバー。
【請求項7】
前記軸用開口部は、前記切断砥石の両側方に位置して前記カバー本体に2つ形成され、
前記冷却廃液のエアー吸引に際し、2つの前記軸用開口部からのエアーの流入量をそれぞれ抑制する第1流入抑制部材および第2流入抑制部材を、更に備え、
前記第1流入抑制部材および前記第2流入抑制部材は、前記カバー本体の内側から2つの前記軸用開口部にそれぞれ対峙し、且つこの状態で前記駆動軸と共に回転することを特徴とする請求項1に記載のディスクカバー。
【請求項8】
前記切断対象物の凹凸を吸収する不陸アタッチメントを、更に備え、
前記不陸アタッチメントは、前記遮蔽空間および前記吸引空間に連通する内部空間を構成すると共に、前記アウターカバーに着脱自在に装着されることを特徴とする請求項1に記載のディスクカバー。
【請求項9】
駆動軸に取り付けた切断砥石に冷却液を供給しながら切断対象物を切断する切断装置であって、
前記駆動軸を有するモーターと、
前記駆動軸を露出させた状態で前記モーターを内蔵した装置ボディと、
前記切断砥石を前記駆動軸に装着すると共に、前記切断砥石に冷却液を供給するための供給口を有する装着ユニットと、
請求項1に記載のディスクカバーと、を備えたことを特徴とする切断装置。
【請求項10】
前記ディスクカバーを前記装置ボディに保持するカバーホルダを、更に備え、
前記カバーホルダは、
前記装置ボディに固定されるボディ取付け部と、
前記ボディ取付け部に連なり、前記ディスクカバーを前記切断砥石の切込み方向にスライド自在に保持するホルダガイド部と、
前記ディスクカバーを前記切込み側に付勢するばね機構と、を有することを特徴とする請求項9に記載の切断装置。
【請求項11】
前記ホルダガイド部は、前記ディスクカバーの回動を更に許容し、
前記ばね機構は、前記ディスクカバーに対し下方に押さえるように係合するクランクプレートと、前記クランクプレートを介して前記ディスクカバーを下方に向かって付勢するコイルスプリングと、を有することを特徴とする請求項10に記載の切断装置。
【請求項12】
前記ホルダガイド部には、同軸上に前記駆動軸が臨む円形の摺動ガイド部が形成され、
前記カバー本体には、長円形の前記軸用開口部が形成され、
前記ディスクカバーは、前記軸用開口部を介して前記摺動ガイド部にスライド自在に係合していることを特徴とする請求項10に記載の切断装置。
【請求項13】
前記駆動軸は、回止め軸部と、同軸上において前記回止め軸部の端面から突出した雄ネジ軸部とから成り、
前記装着ユニットは、
前記回止め軸部に係合すると共に前記切断砥石を受けるインナーフランジと、
前記雄ネジ軸部に螺合すると共に、前記インナーフランジとの間に前記切断砥石を挟持するロックナットと、
前記ロックナットを介して、前記切断砥石に冷却液を供給する供給ジョイント部と、を有し、
前記ロックナットは、前記切断砥石に冷却液を供給するための内部流路を有し、
前記供給ジョイント部は、前記内部流路に連通する軸心流路を備えた連結軸部と、前記連結軸部を囲繞すると共に径方向から軸心流路に連通する環状液溜りおよび前記環状液溜りに連通する前記供給口を備えた回転許容部と、を有することを特徴とする請求項9に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する切断砥石に冷却液を供給しながら切断対象物を切断する切断装置に設けられ、切込み側を開放した状態で前記切断砥石を覆うディスクカバーおよびこれを備えた切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の切断装置として、内部に冷却媒体用の貫通孔を有する回転刃により、切削対象物を切削する装置が知られている(特許文献1参照)。
この装置は、先端部に回転刃が嵌着され、中空部を流体流路とする駆動軸と、駆動軸が水密に且つ回転自在に貫通するマニホールドと、導管を介してマニホールドに冷却媒体を供給する液体の供給源と、を備えている。
供給源の冷却媒体は、導管を介してマニホールドに供給される。マニホールドでは、回転する駆動軸の流体流路に、マニホールド側開口端から冷却媒体が供給され、さらに先端部に形成された回転刃開放端から回転刃の貫通孔に冷却媒体が供給される。回転刃に流入した冷却媒体は、貫通孔および孔を経て刃部に供給される。
刃部から噴出される冷却媒体によって切粉が切削個所の外部に流しだされると共に、刃部が冷却され回転刃の劣化が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64-42108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、回転刃により切削を行う従来の装置では、回転する駆動軸および回転刃への冷却媒体の供給は適切に行われるものの、切粉および使用済み冷却媒体の回収については考慮されていない。すなわち、冷却媒体の供給により切削媒体を効率良く研削することができるものの、切粉および冷却媒体(冷却廃液)を回収する手段を有しないため、流れ出た冷却廃液の回収処理に手間がかかる問題があった。
もっとも、回転刃を覆う防塵カバーのようなディスクカバーを設け、このディスクカバーを介して、冷却廃液を吸引・回収することが考えられる。しかし、この種のディスクカバーでは、対象物に対する回転刃の切込み深さが変化しても、常に対象物に接している必要がある。このため、駆動軸が臨むディスクカバーのサイド開口は、切込み深さに対応可能な大きさを有することとなる。よって、ディスクカバー内をエアー吸引しても、サイド開口からのエアーのリークが極端に多くなり、冷却廃液を吸引・回収することが困難となってしまうことが想定される。
【0005】
本発明は、切断砥石により研削した研削屑混じりの冷却廃液を適切に回収することができるディスクカバーおよびこれを備えた切断装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のディスクカバーは、駆動軸に取り付けた切断砥石に冷却液を供給しながら切断対象物を切断する切断装置に設けられ、切込み側を開放した状態で切断砥石を覆うディスクカバーであって、切込み側に切込み開放端を有すると共に駆動軸が臨む軸用開口部を有し、切断砥石を覆って遮蔽空間を構成するカバー本体と、切込み側に接触開放端を有し、カバー本体の切込み開放端側の周囲を覆うと共にカバー本体との間に吸引空間を構成するアウターカバーと、アウターカバーに付設され、一方の端部に吸引空間に連通する連通口を有すると共に、他方の端部に研削に伴う冷却廃液をエアー吸引するための吸引口を有する吸引ジョイント部と、を備え、接触開放端は切断対象物に接触し、切込み開放端は切断対象物との間に吸引のための流路を構成することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、切断装置に切断砥石を取り付け、冷却液を供給しながら切断対象物を切断すると、切断ポイントに研削屑と冷却液とが混合した冷却廃液が生ずる。一方、吸引ジョイント部の吸引口を介してエアー吸引を行うと、カバー本体とアウターカバーとの間の吸引空間が負圧となる。カバー本体は切断ポイントに臨んでおり、切断ポイントに生じた冷却廃液は、切断対象物に対峙する切込み開放端の流路間隙から、吸引空間に吸引される。すなわち、吸引空間が負圧になると、軸用開口部から流入するエアーに乗って、冷却廃液がカバー本体の切込み開放端をくぐって吸引空間に流入し、更に吸引ジョイント部の吸引口から外部にエアー吸引される。
このように、カバー本体で構成される遮蔽空間の外側に吸引空間を形成し、冷却廃液をカバー本体の切込み開放端から吸引するようにしているため、冷却廃液を軸用開口部からのリークエアーに乗せて吸引することができる。また、カバー本体の遮蔽空間で発生した冷却廃液が、アウターカバーを越えて外部に漏れ出ることもない。したがって、冷却廃液を効率良く吸引することができると共に適切に回収することができる。
【0008】
この場合、カバー本体は、切込み開放端を形成したボトムカバー部と、ボトムカバー部に接合され、ボトムカバー部との間で軸用開口部が分割されるように形成したトップカバー部と、ボトムカバー部にトップカバー部を接合するためのカバー接合部とを有し、ボトムカバー部、カバー接合部およびアウターカバーは、一体に形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ボトムカバー部、カバー接合部およびアウターカバーを一体とした下側のカバー要素と、トップカバー部である上側のカバー要素との上下2分割構造としているため、構造が複雑であっても比較的簡単に製造することができる。また、この2分割構造において、トップカバー部がボトムカバー部との間で軸用開口部を分割するように形成されているため、切断装置(駆動軸)に対する切断砥石の着脱作業とディスクカバーの着脱作業との相互間で支障が生ずることがなく、これらの作業を円滑に行うことができる。
【0010】
この場合、トップカバー部は、プラスチックで形成され、ボトムカバー部、カバー接合部およびアウターカバーは、ゴムで一体に形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、切断対象物に接する側の部材をゴム製とすることで、特にアウターカバーを切断対象物に隙間が生じないように接触させることができ、冷却廃液の吸引時においてエアーのリークを極力少なくすることができる。
【0012】
この場合、トップカバー部は、カバー接合部に対し差込み接合されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、トップカバー部とボトムカバー側とを簡単に着脱することができ、切断砥石の交換等を簡単に行うことができる。
【0014】
また、アウターカバーには、切断砥石の左右方向の位置を指標する位置指標部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、位置指標部材は、ディスクカバーで覆われた切断砥石の左右の位置を表しており、位置指標部材を目安とすることで、切断対象物に対し精度良く切り込んでゆくことができる。
【0016】
一方、吸引のための流路の総断面積が、吸引口の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、冷却廃液をエアー吸引する装置側の流速に比して、吸引のための流路(切込み開放端は切断対象物との間隙)における流速を十分に速くすることができ、冷却廃液を効率良く吸引することができる。
【0018】
また、軸用開口部は、切断砥石の両側方に位置してカバー本体に2つ形成され、冷却廃液のエアー吸引に際し、2つの軸用開口部からのエアーの流入量をそれぞれ抑制する第1流入抑制部材および第2流入抑制部材を、更に備え、第1流入抑制部材および第2流入抑制部材は、カバー本体の内側から2つの軸用開口部にそれぞれ対峙していることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第1流入抑制部材および第2流入抑制部材により、2つの軸用開口部からのエアーの流入量をそれぞれ抑制(コントロール)する。これにより、吸引空間が十分な負圧状態となり、冷却廃液を効率良くエアー吸引することができる。
【0020】
また、切断対象物の凹凸を吸収する不陸アタッチメントを、更に備え、不陸アタッチメントは、遮蔽空間および吸引空間に連通する内部空間を構成すると共に、アウターカバーに着脱自在に装着されることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、切断対象物の表面に凹凸が生じていても、不陸アタッチメントを用いることで、この凹凸を吸収して冷却廃液を適切に吸引・回収することができる。
【0022】
本発明の切断装置は、駆動軸に取り付けた切断砥石に冷却液を供給しながら切断対象物を切断する切断装置であって、切断砥石が装着される駆動軸を有するモーターと、駆動軸を露出させた状態でモーターを内蔵した装置ボディと、切断砥石を駆動軸に装着すると共に、切断砥石に冷却液を供給するための供給口を有する装着ユニットと、上記したディスクカバーと、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、モーターの駆動軸に切断砥石を装着し、切断砥石を回転させて切断対象物を切断する。その際、装着ユニットを介して切断砥石に、外部から冷却液を供給することで、切断時の熱的影響を回避することができ、切断対象物を効率良く切断することができる。また、ディスクカバーを介して、切断時に生ずる冷却廃液を効率良く吸引することができ、冷却廃液を適切に回収することができる。
【0024】
この場合、ディスクカバーを装置ボディに保持されているため、するカバーホルダを、更に備え、カバーホルダは、装置ボディに固定されるボディ取付け部と、ボディ取付け部に連なり、ディスクカバーを切断砥石の切込み方向にスライド自在に保持するホルダガイド部と、ディスクカバーを切込み側に付勢するばね機構と、を有することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、ディスクカバーが、ホルダガイド部を介して装置ボディに固定のボディ取付け部にスライド自在に保持され、且つばね機構により切込み側に向かって付勢されているため、切断砥石の切込み深さが変化しても、ディスクカバーの開放端(接触開放端)を切断対象物に常に接触させておくことができる。すなわち、切断作業において、切断砥石の切込み深さが変化しても、冷却廃液の適切な回収を安定して行うことができる。
【0026】
この場合、ホルダガイド部は、ディスクカバーの回動を更に許容し、ばね機構は、ディスクカバーに対し下方に押さえるように係合するクランクプレートと、クランクプレートを介してディスクカバーを下方に向かって付勢するコイルスプリングと、を有することが好ましい。
【0027】
また、ホルダガイド部には、同軸上に駆動軸が臨む円形の摺動ガイド部が形成され、カバー本体には、長円形の軸用開口部が形成され、ディスクカバーは、軸用開口部を介して摺動ガイド部にスライド自在に係合していることが好ましい。
【0028】
ところで、切断作業に際し、切断対象物と装置ボディの軸線とが平行であることが好ましいが、実際の現場ではこの角度が変化する。
これらの構成によれば、摺動ガイド部が円形となっているため、切断対象物と装置ボディとの間で角度変化が生じても、ディスクカバーの開放端(接触開放端)を切断対象物に常に接触させておくことができる。すなわち、切断作業において、切断対象物と装置ボディとの間の角度が変化しても、冷却廃液の適切な回収を安定して行うことができる。
【0029】
一方、駆動軸は、回止め軸部と、同軸上において回止め軸部の端面から突出した雄ネジ軸部とから成り、装着ユニットは、回止め軸部に係合すると共に切断砥石を受けるインナーフランジと、雄ネジ軸部に螺合すると共に、インナーフランジとの間に切断砥石を挟持するロックナットと、ロックナットを介して、切断砥石に冷却液を供給する供給ジョイント部と、を更に備え、ロックナットは、切断砥石に冷却液を供給するための内部流路を有し、供給ジョイント部は、内部流路に連通する軸心流路を備えた連結軸部と、連結軸部を囲繞すると共に径方向から軸心流路に連通する環状液溜りおよび環状液溜りに連通する冷却液の供給口を備えた回転許容部と、を有することが好ましい。
【0030】
この構成によれば、インナーフランジとロックナットの間に切断砥石を挟持する形態で、切断砥石を駆動軸に確実に取り付ける(装着する)ことができる。また、この状態で、供給ジョイント部からロックナットを介して切断砥石に冷却液を供給することができる。この場合、冷却液を、供給口に連通する環状液溜りから連結軸部の軸心流路を経て、ロックナットの内部流路に供給するようにしているため、回転することの回転許容部から回転するロックナットおよび切断砥石に、冷却液を円滑に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る切断装置の外観斜視図である。
図2】ディスクカバーを取り除いた切断装置の外観斜視図である。
図3】切断砥石の構造を表した図であって、平面図(a)および側面図(b)である。
図4】切断砥石における第1基板の構造を表した図であって、断面図(a)および裏面図(b)である。
図5】切断砥石における第2基板の構造を表した図であって、裏面図(a)および断面図(b)である。
図6】切断砥石を装着するための装着ユニットの半部裁断側面図である。
図7】切断砥石を装着するための装着ユニットの分解側面図である。
図8】装着ユニットにおけるインナーフランジの正面図(a)、側面図(b)および裏面図(c)である。
図9】装着ユニットにおけるロックナットの正面図(a)、側面図(b)および裏面図(c)である。
図10】冷却液ジョイント部におけるジョイント本体の側面図(a)、裏面図(b)および底面図(c)である。
図11】冷却液ジョイント部における連結雄ネジ部材の正面図(a)、側面図(b)および裏面図(c)である。
図12】実施形態に係るディスクカバーの側面図である。
図13】ディスクカバーにおけるトップカバーの側面図(a)および底面図(b)である。
図14】ディスクカバーにおけるボトムユニットの平面図(a)および側面図(b)である。
図15】変形例に係るディスクカバーの分解状態の側面図である。
図16】アウターカバー廻りの機能を説明するための断面模式図である。
図17】ディスクカバーを含む第1・第2流入抑制部材廻りの平面図である。
図18】第1・第2流入抑制部材廻りの分解平面図である。
図19】変形例に係る第1・第2流入抑制部材廻りの平面図である。
図20】変形例に係る第1・第2流入抑制部材廻りの分解平面図である。
図21】不陸アタッチメントを装着した状態のディスクカバーの側面図である。
図22】不陸アタッチメントの平面図(a)および側面図(b)である。
図23】ディスクカバーを取り付けるためのカバーホルダの図であって、正面図(a)、側面図(b)および平面図(c)である。
図24】カバーホルダにおけるばね機構の図であって、ディスクカバーがホーム位置にある状態のばね機構の側面図(a)、およびディスクカバーが上動位置にある状態のばね機構の側面図(b)である。
図25】ディスクカバーとばね機構との関係を表した説明図である。
図26】変形例に係るカバーホルダ廻りの図であって、正面図(a)、側面図(b)および平面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るディスクカバーおよびこれを備えた切断装置について説明する。この切断装置は、ディスクグラインダの基本形態を有し、ディスクである切断砥石を取り付けて、コンクリート、モルタル、タイル等を研削により切断するものである。実施形態の切断砥石は内部に冷却液流路を有しており、切断装置は、対象物の切断に際し、切断砥石に冷却液を供給する機能および研削粉混じりの冷却廃液を回収する機能を有している。このため、図示では省略したが、切断装置には冷却液供給装置および冷却廃液回収装置が接続されている。また、冷却廃液を回収するための構造として、切断砥石を覆うように特殊なディスクカバーが設けられている。
【0033】
[切断装置]
図1は、実施形態に係る切断装置の外観斜視図である。図2は、ディスクカバーを外した切断装置の外観斜視図である。これらの図に示すように、切断装置10は、切断砥石20(ディスク)を取り付けるための駆動軸11を露出させた、いわゆるディスクグラインダの基本形態を有しており、駆動軸11を有するモーター12と、モーター12を内蔵した装置ボディ13と、切断砥石20を駆動軸11に装着すると共に、切断砥石20に冷却液を供給するための供給口15を有する装着ユニット14と、切断砥石20を覆うディスクカバー16と、を備えている。
【0034】
また、切断装置10は、ディスクカバー16を装置ボディ13に保持するためのカバーホルダ17を備えると共に、装着ユニット14の一部を廻り止めとするための廻止めアーム18を備えている。そして、詳細は後述するが、このように構成された切断装置10の装着ユニット14に、給液チューブ21を介して冷却液供給装置(図示省略)が接続され、且つディスクカバー16に、廃液チューブ22を介して冷却廃液回収装置(図示省略)が接続されている。
【0035】
モーター12を内蔵した装置ボディ13は、手持ちの電動工具として円筒状を為し、先端側にディスク取付けベース24が配設されると共に、ディスク取付けベース24の中心に駆動軸11が突出するように設けられている。装置ボディ13の基端には、電源コード25が接続されている。そして、電源コード25、給液チューブ21および廃液チューブ22は、作業の邪魔にならないように一体に束ねられている。
【0036】
[切断砥石]
図3は、切断砥石の構造図であり、図4は、ブレード基板の第1基板の構造図であり、図5は、ブレード基板の第2基板の構造図である。これらの図に示すように、切断砥石20は、いわゆるダイヤモンドホイールであり、中心部に駆動軸11への装着孔32を有する円板状のブレード基板31と、ブレード基板31の外周端にロウ付けされた複数(8個)のセグメントチップ33と、ブレード基板31の外周部に形成された複数(8個所)の逃がし溝34と、ブレード基板31の内部に放射状を為すように形成された複数(8つ)の冷却液流路35と、を備えている。そして、ブレード基板31は、薄板状(薄板円板状)の第1基板40と薄板状(薄板円板状)の第2基板50とを貼り合わせて形成されている。
【0037】
第1基板40には、装着孔32を構成する第1装着孔41、逃がし溝34を構成する8個所の第1U字溝42、冷却液流路35を構成する8つの第1流路溝43がそれぞれ形成されている。同様に、第2基板50には、装着孔32を構成する第2装着孔51、逃がし溝34を構成する8個所の第2U字溝52、冷却液流路35を構成する8つの第2流路溝53がそれぞれ形成されている。そして、ブレード基板31は、このように形成された第1基板40および第2基板50を、その裏面同士を付き合わせ8個所の溶接個所55においてスポット溶接して構成されている(図3参照)。
【0038】
なお、第2装着孔51は、第1装着孔41よりも大径に形成されている(図3参照)。これにより、ブレード基板31の中心部には、環状段部32aを有する装着孔32が形成されている。そして、環状段部32aに各冷却液流路35の流入口35aが開口し、各逃がし溝34の溝底34aに各冷却液流路35の流出口35bが開口している。したがって、この切断砥石20では、冷却液流路35を通って供給された冷却液が、逃がし溝34を介してセグメントチップ33に供給される。
【0039】
[装着ユニット]
次に、図6の半部断面図および図7の分解図を参照しながら切断砥石20の装着ユニット14について説明する。装着ユニット14は、切断砥石20を駆動軸11に冷却液を供給が可能な状態で取り付ける(着脱自在に装着)ものである。両図に示すように、駆動軸11は、回止めカット軸部11a(回止め軸部)と、同軸上において回止めカット軸部11aの端面から突出した雄ネジ状軸部11b(雄ネジ軸部)と、を有している。これに対し、装着ユニット14は、インナーフランジ61と、ロックナット62と、供給ジョイント部63とを備えている。
【0040】
この場合、インナーフランジ61は、駆動軸11の回止めカット軸部11aに係合すると共に、切断砥石20を駆動軸11と同軸上に位置決めする機能を有している。ロックナット62は、駆動軸11の雄ネジ状軸部11bに螺合してインナーフランジ61との間に切断砥石20を挟持すると共に、切断砥石20の冷却液流路35に冷却液を供給する機能を有している。そして、供給ジョイント部63は、冷却液供給装置(図示省略)から供給される冷却液を、回転するロックナット62に供給する機能を有している。
【0041】
図6図7および図8に示すように、インナーフランジ61は、駆動軸11の回止めカット軸部11aに係合する軸係合部71と、軸係合部71に連なり切断砥石20(ブレード基板31)を駆動軸11と同軸上に位置決めする基板嵌合部72と、軸係合部71に連なり切断砥石20に接触する挟持接触受け部73と、で一体に形成されている。また、インナーフランジ61の軸心には、駆動軸11の雄ネジ状軸部11bが挿通する挿通孔74が形成されている。
【0042】
このインナーフランジ61では、挿通孔74を雄ネジ状軸部11bに通すようにして、軸係合部71を上側から回止めカット軸部11aに係合する。このようにして、インナーフランジ61を駆動軸11にセットするが、セットしたインナーフランジ61に対し切断砥石20は、装着孔32(第1装着孔41)を基板嵌合部72に嵌合するようにして、挟持接触受け部73に着座させるようにする。
【0043】
図6図7および図9に示すように、ロックナット62は、外周部にDカットの工具掛け部81aを形成したナット本体81と、ナット本体81の先端側に突出するリング状凸部82と、ナット本体81の基端側に形成され、インナーフランジ61との間に切断砥石20を挟持する環状の挟持接触部83と、を有している。
【0044】
また、ロックナット62は、挟持接触部83の内側に窪入形成され、切断砥石20の環状段部32aに臨む冷却液溜り84と、先端側が冷却液溜り84に連なると共に、駆動軸11の雄ネジ状軸部11bに螺合する雌ネジ状部85と、雌ネジ状部85の2個所において凹入形成した2つの凹入流路部86と、同軸上において、雌ネジ状部85の先端側に連なり、後述する連結雄ネジ部材92が螺合する連結雌ネジ部87と、を有している。
【0045】
この場合、雌ネジ状部85および連結雌ネジ部87は、ナット本体81の軸心に形成されている。雌ネジ状部85を介して、ロックナット62を駆動軸11に螺合することで、駆動軸11、インナーフランジ61、切断砥石20およびロックナット62が一体化すると共に、一体回転する。
【0046】
冷却液溜り84は、螺合した雄ネジ状軸部11bの外側において、切断砥石20の環状段部32aに臨み、冷却液を切断砥石20の冷却液流路35に送り込む。雌ネジ状部85は、これに雄ネジ状軸部11bの長さに対し十分な深さを有している。すなわち、雌ネジ状部85の基端側の半部は雄ネジ状軸部11bの螺合領域85aを構成し、先端側の半部は冷却液の流路となる非螺合領域85bを構成している。
【0047】
各凹入流路部86は、雌ネジ状部85において断面「U」字状を為すように径方向に凹入形成されると共に、冷却液溜り84から雌ネジ状部85の先端位置まで延在している。2つの凹入流路部86は、180°点対称位置において、雌ネジ状部85のネジ山を切り欠くようにして凹入形成されている。すなわち、連結雌ネジ部87、雌ネジ状部85の非螺合領域85b、2つの凹入流路部86および冷却液溜り84が連通しており、ロックナット62を介して供給ジョイント部63から切断砥石20に冷却液が供給できるようになっている。
【0048】
図6図7図10および図11に示すように、供給ジョイント部63は、ジョイント本体91(図10参照)と、ジョイント本体91をロックナット62に連結する連結雄ネジ部材92(図11参照)とを備えている。
【0049】
連結雄ネジ部材92は、ジョイント本体91を挿通(貫通)した状態で、ロックナット62の連結雌ネジ部87に螺合している。そして、ロックナット62とジョイント本体91との間には、第1Oリング93が介設され、ジョイント本体91と連結雄ネジ部材92のヘッド部101との間には、第2Oリング94およびスペーサリング95が介設されている。
【0050】
これにより、ジョイント本体91は、ロックナット62との間で供給する冷却液のシールが行われ、且つこの状態でロックナット62の回転を許容する。なわち、ジョイント本体91には、給液チューブ21を介して冷却液供給装置が接続され(図示省略)、供給ジョイント部63は、冷却液を回転するロックナット62に供給する。
【0051】
連結雄ネジ部材92は、ヘッド部101とシャフト部102とを有し、シャフト部102の先端部にロックナット62の連結雌ネジ部87に螺合する雄ネジ102aが形成されている。シャフト部102の軸心には、冷却液の流路となる有底の軸方向孔103が雄ネジ102a側から穿孔されている。また、シャフト部102の中間部には、径方向に貫通して軸方向孔103に連通する径方向孔104が形成されている。
【0052】
連結雄ネジ部材92を、ロックナット62の連結雌ネジ部87に螺合すると、ジョイント本体91とロックナット62との間およびジョイント本体91と連結雄ネジ部材92のヘッド101との間がシールされると共に、軸方向孔103と連結雌ネジ部87とが連通する。
【0053】
ジョイント本体91は、連結雄ネジ部材92が挿通する回転許容部111と、給液チューブ21が接続されるチューブ接続部112と、で一体に形成されている。回転許容部111には、上記の第1Oリング93が装着される第1シール受け孔113と、第2Oリング94およびスペーサリング95が装着される第2シール受け孔114とが形成されている。
【0054】
また、回転許容部111には、第1シール受け孔113と第2シール受け孔114の間に位置して、挿通した連結雄ネジ部材92(シャフト部102)との間に冷却液の環状液溜り115を構成する遊嵌孔116が形成されている。これにより、連結雄ネジ部材92の径方向孔104を介して、ジョイント本体91の環状液溜り115と連結雄ネジ部材92の軸方向孔103とが連通する。すなわち、ロックナット62と一体回転する連結雄ネジ部材92に対し、環状液溜り115内の冷却液が常に供給可能な状態となる。
【0055】
チューブ接続部112には、給液チューブ21のカプラが螺合するテーパ雌ネジ117が形成されている。そして、このテーパ雌ネジ117に給液チューブ21を接続することで、冷却液供給装置からジョイント本体91に冷却液の供給が可能となる。
【0056】
なお、ジョイント本体91には、後述するカバーホルダ17から延びる廻止めアーム18の先端が係合している(図1参照)。これにより、給液チューブ21が接続されたジョイント本体91のロックナット62との連れまわりが阻止される。
【0057】
このように、切断砥石20を、装着ユニット14を介して切断装置20の駆動軸11に取り付けるようにしているので、冷却液流路35を有する切断砥石20を着脱自在に且つ適正に装着することができる。すなわち、装着ユニット14を介して駆動軸11に切断砥石20を、 冷却液を供給可能な状態で取り付けることができる。
【0058】
[ディスクカバー]
次に、図12ないし図14を参照して、ディスクカバー16について説明する。ディスクカバー16は、切断砥石20を覆い、冷却廃液の無用な飛散を防止する機能を有すると共に、冷却廃液の吸引・回収する機能を有している。
【0059】
これらの図に示すように、ディスクカバー16は、切断砥石20を覆って遮蔽空間122を構成するカバー本体121と、カバー本体121の切込み開放端123側の周囲を覆うと共にカバー本体121との間に吸引空間125を構成するアウターカバー124と、アウターカバー124に付設された吸引ジョイント部126と、を備えている。また、カバー本体121は、切込み開放端123を形成したボトムカバー127と、ボトムカバー127に接合されるトップカバー128と、ボトムカバー127にトップカバー128を接合するためのカバー接合部129と、を有している(図14(b)参照)。
【0060】
トップカバー128は、透明なプラスチックで形成されている。ボトムカバー127、カバー接合部129、アウターカバー124および吸引ジョイント部126は、ボトムユニット130を構成し、ボトムユニット130はゴムで一体に形成されている。トップカバー128の下端とボトムカバー127の上端とは、遮蔽空間122に段差が生じないように同形に形成されている。また、トップカバー128の下端部の外側に位置して、ボトムユニット130から突出するようにカバー接合部129が形成されている。
【0061】
トップカバー128は、その下端がボトムカバー127の上端に突き当てられるように、カバー接合部129に対し差込み接合される。すなわち、ディスクカバー16は、トップカバー128がボトムユニット130に着脱自在に装着される、上下2分割の構造となっており、装置ボディ13に対するディスクカバー16の着脱や切断砥石20の着脱が簡単に行えるようになっている。
【0062】
図15は、ディスクカバー16のカバー接合部129廻りの変形例である。この変形例では、トップカバー128の下端部に第1係止突起128aおよび第1係止孔128bが形成され、これに対応してカバー接合部129に第2係止孔129aおよび第2係止突起129bが形成されている。トップカバー128の下端部がカバー接合部129に差込まれると、第1係止突起128aが第2係止孔129aにクリック的に係止され、且つ第2係止突起129bが第1係止孔128bにクリック的に係止される。これにより、トップカバー128がボトムユニット130にしっかりと装着されるようになっている。
【0063】
また、アウターカバー124の前端部(後述する側壁部137の前端部)には、左右方向における切断砥石20の位置を指標する位置指標部材140が設けられている。位置指標部材140は、ステンレス製のピン状部材で構成され、アウターカバー124の側壁部137に突出するようにして装着されている。位置指標部材140は、ディスクカバー16で覆われた切断砥石20の位置を表しており、作業者は、切断対象物Sの切断ライン(例えば、墨だし線)に対し、この位置指標部材140を位置合わせしながら切断作業を進める。
【0064】
なお、この切断装置10では、切断砥石20を手前に引きながら切断動作させることも可能である。したがって、アウターカバー124の後端部にも位置指標部材140を設けることが好ましい。この後端部に設ける位置指標部材140は、アウターカバー124に描いた白線のようなものであってもよい。
【0065】
図13に示すように、トップカバー128は、切断砥石20が臨む半円部131と半円部131に連なる接合端部132とを有しており、内部に遮蔽空間122が構成されている。トップカバー128の側面には、駆動軸11や装着ユニット14が臨む軸用開口部133a,133bが形成されている。駆動軸11が臨む奥側の軸用開口部133bは幅狭に形成され、装着ユニット14が臨む手前側の軸用開口部133aは幅広に形成されている。そして、トップカバー128の頂部には、後述するクランクプレート173が固定される頂部固定部134が形成されている。
【0066】
図14に示すように、ボトムユニット130は、トップカバー128の延長部分となるボトムカバー127と、ボトムカバー127の外側において上方に延設したカバー接合部129と、吸引空間125を存してボトムカバー127の外側に配設したアウターカバー124と、アウターカバー124の一方の端部から後方に延設した吸引ジョイント部126とを有している。トップカバー128およびボトムカバー127を構成する遮蔽空間122は、ボトムカバー127の下端部でボトムカバー127およびアウターカバー124で構成される吸引空間125に連通し(図16参照)、吸引空間125は吸引ジョイント部126の内部空間と連通している。
【0067】
上述のように、ボトムユニット130はゴムで構成され、カバー接合部129にトップカバー128を装着すると、側面の奥側および手前側に長円形の軸用開口部133a,133bが形成される(図12参照)。実施形態のカバー本体121は、トップカバー128およびボトムカバー127の2分割構造であり、長円形の2つの軸用開口部133a,133bも上下2分割構造となっている。この状態でエアーの吸引を行うと、軸用開口部133a,133bから遮蔽空間122にエアーが流入する。ディスクカバー16のエアーの吸引においては、この2つの軸用開口部133a,133bがエアーの吸込み口となり、冷却廃液はここから吸引したエアーに乗って外部に廃棄される。
【0068】
カバー接合部129は、アウターカバー124の天壁部136から上方に延在するように形成されている。ボトムカバー127は天壁部136に連なり、トップカバー128の延長上において、下方に延在するように形成されている。アウターカバー124は、天壁部136と側壁部137とから成り、その内部には吸引ジョイント部126に連なる吸引空間125が形成されている。
【0069】
この場合、ボトムカバー127の下端である切込み開放端123は、微小な流路間隙139(流路)を存して切断対象物Sに対峙している。冷却廃液を含んだエアーは、流路間隙139の部分で流速を増して吸引空間125に流入する(図16参照)。一方、アウターカバー124の下端である接触開放端124aは、その肉厚の外側半部が切断対象物Sに気密に接触するようになっている。遮蔽空間122に生じた冷却廃液は、切込み開放端123と切断対象物Sとの間の流路間隙139をくぐり抜けるようにして吸引空間125に流入し、吸引空間125から吸引ジョイント部126に導かれる。
【0070】
なお、流路間隙139は、平面内において連続している必要はなく、凹凸や波型に断続していてもよい。また、流路間隙139に代えて多数の小穴を横並びに形成したものであってもよいし、これらを複合した形態のものであってもよい。もっとも、本実施形態では、流路間隙139(吸引のための流路)の総断面積が、後述する吸引ジョイント部126の吸引口142の断面積よりも十分に小さくなるように構成している。これにより、流路間隙139に流れるエアーの流速を上げ、冷却廃液を効率良く吸引できるようにしている。
【0071】
吸引ジョイント部126は、アウターカバー124の端部に付設され、一方の端部に吸引空間125に連通する連通口141を有すると共に、他方の端部に研削に伴う冷却廃液をエアー吸引するための吸引口142を有している(図14参照)。吸引口142には、継手27を介して廃液チューブ22が接続され(図1参照)、廃液チューブ22の下流端には冷却廃液回収装置(図示省略)が接続されている。
【0072】
この場合の冷却廃液回収装置には、コストを考慮してクリーナー型集塵機を改造したものを用いるようにしている。このため、冷却廃液回収装置にはエアーの吸引力に限界があり、2つの軸用開口部133a,133bからのエアー(リークエアー)の流入量が多いと、吸引空間125が十分に負圧にならず、冷却廃液を効率良くエアー吸引することができなくなる。
【0073】
そこで、図17および図18に示すように、本実施形態では、2つの軸用開口部133a,133bの内側に第1流入抑制部材143および第2流入抑制部材144を設け、エアー吸引時に2つの軸用開口部133a,133bからのエアーの流入を抑制するようにしている。第1流入抑制部材143および第2流入抑制部材144は、ゴム製やプラスチック製の羽根車で構成され、切断砥石20(駆動軸11)と共に回転する。
【0074】
第1流入抑制部材143および第2流入抑制部材144は、それぞれカバー本体121内のエアーを外部に送気するよう回転する羽根車で構成されている。幅広に形成された第1流入抑制部材143は、ロックナット62のナット本体81にキーの形式(第1流入抑制部材143側が凸でナット本体81側が凹)で装着され、ロックナット62と共に回転してカバー本体121内のエアーを外部(ロックナット62側)に送気する。同様に、第2流入抑制部材144は、インナーフランジ61の挟持接触受け部73にキーの形式(第2流入抑制部材144側が凸で挟持接触受け部73側が凹)で装着され、インナーフランジ61と共に回転してカバー本体121内のエアーを外部(装置ボディ13側)に送気する。
【0075】
この場合の第1流入抑制部材143および第2流入抑制部材144の送気は、上記冷却廃液回収装置のエアー吸引に抗する形で実施される。一方で、カバー本体121は密閉ケースではないため、第1流入抑制部材143および第2流入抑制部材144におけるエアーの送気は、実質的に軸用開口部133a,133bからのエアーの流入を抑制するものとなる。これにより、吸引空間125が十分な負圧状態となり、冷却廃液を効率良くエアー吸引することができる。
【0076】
図19および図20は、第1流入抑制部材143および第2流入抑制部材144の変形例を表している。この場合の第1流入抑制部材143Aおよび第2流入抑制部材144Aは、リング状の発泡ウレタン(独立発泡)で形成されている。そして、第1流入抑制部材143Aおよび第2流入抑制部材144Aは、それぞれカバー本体121に内側からほぼ接するように配設されている。
【0077】
この場合も、第1流入抑制部材143Aは、ロックナット62のナット本体81に装着(嵌合)され、切断砥石20に接した状態でロックナット62と共に回転する。同様に、第2流入抑制部材144Aは、インナーフランジ61の挟持接触受け部73に装着(嵌合)され、切断砥石20に接した状態でインナーフランジ61と共に回転する。
【0078】
この変形例では、ロックナット62がコンパクトに形成されると共に、軸用開口部133a,133bも可能な限り幅狭に形成されている。そして、第1流入抑制部材143Aおよび第2流入抑制部材144Aは、軸用開口部133a,133bを一定のリークエアーを許容しつつ閉塞するように配設されている。なお、冷却廃液回収装置の吸引力に対しリークエアーが極端に少ない場合には、カバー本体121が切断対象物Sに強く吸着され動かし難くなる。かかる場合には、第1流入抑制部材143Aおよび第2流入抑制部材144Aを薄く形成すること、或いはアウターカバー124の下端の一部に切欠きを設けることで対処することが好ましい。
【0079】
このように、軸用開口部133a,133bに対峙する第1流入抑制部材143Aおよび第2流入抑制部材144Aは、軸用開口部133a,133bからのエアーの流入を極力抑制する。これにより、吸引空間125が十分な負圧状態となり、冷却廃液を効率良くエアー吸引することができる。
【0080】
図21および図22は、アウターカバー124の下端部に着脱自在に装着される不陸アタッチメント145を表している。切断対象物Sに凹凸(不陸)がある場合に、平坦に形成されたアウターカバー124の接触開放端124aを接触させようとしても、隙間が生じエアーがリークして冷却廃液の吸引が良好に行われなくなるおそれある。そこで、切断対象物Sの凹凸を吸収する不陸アそれぞれタッチメント145が用意されている。
【0081】
不陸アタッチメント145は、スポンジ(独立発砲のウレタン)で形成され、外観がアウターカバー124よりも一回り大きな直方体形状に形成されている。不陸アタッチメント145の内側には、アウターカバー124の側壁部137が嵌まり込む接合段部146と、接合段部146に連なる貫通開口部147が形成されている(図22参照)。
【0082】
ディスクカバー16に不陸アタッチメント145を装着したものでは、不陸アタッチメント145の下部が切断対象物Sの凹凸を吸収するように変形する(図22参照)。すなわち、アウターカバー124の接触開放端124aが、不陸アタッチメント145を介して、凹凸のある切断対象物Sに密接する。これにより、不陸アタッチメント145の内部空間である貫通開口部147が切断対象物Sに対峙し、この貫通開口部147に上記の遮蔽空間122および吸引空間125が臨む。この場合も、冷却廃液は、切込み開放端123と切断対象物Sとの間の流路間隙139をくぐるようにして吸引空間125に流入し、吸引空間125から吸引ジョイント部126に導かれる。
【0083】
[カバーホルダ]
次に、図23ないし図25を参照しつつ、ディスクカバー16を装置ボディ13に保持するカバーホルダ17について説明する。カバーホルダ17は、装置ボディ13に固定されるボディ取付け部151と、ボディ取付け部151に連なり、ディスクカバー16を切断砥石20の切込み方向にスライド自在に保持するホルダガイド部152と、ディスクカバー16を切込み側に付勢するばね機構153と、を有している(図1参照)。
【0084】
装置ボディ13には、上記のディスク取付けベース24に隣接する上面に、アタッチメント用の固定ナット155が設けられており、ボディ取付け部151は、この固定ナット155にネジ止め固定されている(図2参照)。ボディ取付け部151は、前下がりに傾斜する直角三角形様の取付け部プレート156と、取付け部プレート156上に固着され、ばね機構153を取り付けるための機構ベース157と、固定ナット155にネジ止めするためのバカ穴158とを有している。
【0085】
バカ穴158を介して固定ナット155にネジ止めされたボディ取付け部151は、その取付け部プレート156が前下がりにわずかに傾斜すると共に、底辺がディスク取付けベース24と平行、すなわちディスクカバー16と平行に位置する。取付け部プレート156と後述するホルダガイド部152のガイド部プレート162とは、1枚の板材を折り曲げて形成されており、取付け部プレート156を介して、ホルダガイド部152(ガイド部プレート162)がディスク取付けベース24を覆うように、装置ボディ13に取り付けられている。
【0086】
ホルダガイド部152は、リング状の摺動ガイド部161と、摺動ガイド部161が取り付けられたガイド部プレート162と、ガイド部プレート162の先端側下部に形成された2つのアーム取付け穴163とを有している。摺動ガイド部161は、短筒部165と短筒部165の一方の端面に固着した抜止め円板166とから成り、短筒部165の他方の端部でガイド部プレート162の半円切欠き部162aに固着されている。
【0087】
図示では省略したが、摺動ガイド部161(短筒部165)の中心にはディスク取付けベース24の駆動軸11が臨んでおり、短筒部165にはディスクカバー16(カバー本体121)の軸用開口部133bがスライド自在に係合している(図25参照)。すなわち、軸用開口部133bは、摺動ガイド部161にガイドされる摺動部を構成している。これにより、切断対象物Sに対し切断砥石20を切り込んでいっても、アウターカバー124の接触開放端124aが常に切断対象物Sの表面に密接し、冷却廃液の吸引・回収が円滑に行われるようになっている。
【0088】
一方、2つのアーム取付け穴163には、廻止めアーム18がネジ止め固定されている(図2参照)。廻止めアーム18は、上述した装着ユニット14のジョイント本体91に係合する二又ヘッド部18aと、二又ヘッド部18aを保持すると共に基端部でアーム取付け穴163にネジ止めされた湾曲アーム部18bと、で一体に形成されている。湾曲アーム部18bは、ホルダガイド部152の位置からディスクカバー16を迂回して装着ユニット14の位置まで延びている。そして、湾曲アーム部18bの先端に設けた二又形状の二又ヘッド部18aがジョイント本体91に係合し(図1参照)、給液チューブ21が接続されたジョイント本体91のロックナット62との連れまわりが阻止されるようになっている。
【0089】
ばね機構153は、摺動ガイド部161を介してスライドするディスクカバー16を、元の位置(ホーム位置)に復帰させるものである。すなわち、切断装置10の駆動軸11に装着されている切断砥石20は、装置ボディ13の手持ち操作で切断対象物Sに切り込んでゆくが、その際、ディスクカバー16は常に切断対象物Sに弾力的に接触している必要がある。言い換えれば、切断砥石20を切断対象物Sに切り込んでゆくときに、相対的に上動するディスクカバー16を常にホーム位置に向かって付勢しておく必要がある。
【0090】
図23ないし図25に示すように、ばね機構153は、ボディ取付け部151の機構ベース157に立設した棒状ガイド171と、棒状ガイド171に巻回したコイルスプリング172(圧縮ばね)と、下端部で棒状ガイド171にスライド自在に係合すると共に上端部でディスクカバー16の頂部に固定されたクランクプレート173と、を有している。
【0091】
クランクプレート173は、帯状の素材をクランク上に折り曲げて形成されており、棒状ガイド171に係合する下端平板部175と、ディスクカバー16に固定される上端平板部176と、下端平板部175および上端平板部176を連結する連結平板部177とで一体に形成されている。
【0092】
下端平板部175には、棒状ガイド171の径に対応するガイド孔175aが形成されており、このガイド孔175aを介して、クランクプレート173が棒状ガイド171に上下方向にスライド自在に係合している。また、上端平板部176は、ディスクカバー16(トップカバー128)の頂部固定部134にネジ止め固定されている。
【0093】
コイルスプリング172は、棒状ガイド171に巻回した状態で、棒状ガイド171の上端に設けたストッパ円板178とクランクプレート173の下端平板部175との間に介設されている。ディスクカバー16が上動すると、棒状ガイド171に案内されてクランクプレート173も上動する。クランクプレート173が上動すると、ストッパ円板178と下端平板部175との間でコイルスプリング172が圧縮される。これにより、上動するディスクカバー16には、常にホーム位置に向かってが下動させようとする付勢力が作用するようになっている
【0094】
図26は、カバーホルダ17廻りの変形例を表している。この変形例では、ディスクカバー16が、摺動ガイド部161、ガイド部プレート162、機構ベース157Aおよびクランクプレート173Aにより位置規制されるものの、所定寸法の上下動および所定角度の傾動(回動)を許容されるようになっている。
【0095】
この場合の機構ベース157Aは、上記のものと異なりクランクプレート173Aを前後から挟むようにして「U」字状に形成されている。機構ベース157Aの丈は、クランクプレート173Aよりもわずかに低く形成され、ディスクカバー16側の端面が、ガイド部プレート162と面一に配設されている(図26(b)および(c)参照)。
【0096】
また、クランクプレート173Aは、上記のものに比して幅狭に形成され、上端平板部176の先に下向平板部179が形成されている(図26(b)参照)。この場合、ディスクカバー16は、クランクプレート173A(上端平板部176)にネジ止め固定されておらず、連結平板部177、上端平板部176および下向平板部179により、位置規制された状態となっている。
【0097】
これにより、ディスクカバー16は、切断作業に倣って上動および下動が許容されるだけでなく、摺動ガイド部161を中心とする傾動が許容される。したがって、切断作業において冷却廃液を適切に回収することができる一方、切断作業の作業性が損なわれることがない。
【0098】
なお、ディスクカバー16の傾動が許容されるこの変形例では、ガイド部プレート162に対し廻止めアーム18が、装置ボディ13が角度10°程度傾いて固定されている。これにより、ディスクカバー16の傾動(相対的傾動)において、廻止めアーム18がディスクカバー16(ボトムユニット130)と干渉しない構造になっている。
【符号の説明】
【0099】
10…切断装置、11…駆動軸、11a…回止めカット軸部、11b…雄ネジ状軸部、12…モーター、13…装置ボディ、14…装着ユニット、16…ディスクカバー、17…カバーホルダ、20…切断砥石、31…ブレード基板、32…装着孔、33…セグメントチップ、34…逃がし溝、35…冷却液流路、61…インナーフランジ、62…ロックナット、63…冷却液ジョイント部材、81…ナット本体、85…雌ネジ状部、86…凹入流路部、87…連結雌ネジ部、91…ジョイント本体、92…連結雄ネジ部材、111…回転許容部、115…環状液溜り、121…カバー本体、122…遮蔽空間、123…切込み開放端、124…アウターカバー、124a…接触開放端、125…吸引空間、126…吸引ジョイント部、127…ボトムカバー、128…トップカバー、129…カバー接合部、130…ボトムユニット、133a,133b…軸用開口部、139…流路間隙、140…位置指標部材、141…連通口、142…吸引口、143,143A…第1流入抑制部材、144,144A…第2流入抑制部材、145…不陸アタッチメント、146…接合段部、147…貫通開口部、151…ボディ取付け部、152…ホルダガイド部、153…ばね機構、161…摺動ガイド部、172…コイルスプリング、173…クランクプレート、S…切断対象物、
図1
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