(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099083
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】画像形成装置、滑剤ムラ検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G03G21/00 312
G03G21/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215460
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向林 祐
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 邦章
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕行
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 正泰
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GB02
2H134KA40
2H134KB13
2H134KH01
2H134KH16
2H134LA01
2H134LA02
2H270LA98
2H270LA99
2H270LD04
2H270LD05
2H270MA31
2H270MB16
2H270MB27
2H270MC28
2H270MC51
2H270MD02
2H270MD10
2H270RA11
2H270RA12
2H270RB04
2H270RB05
2H270RC09
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】像担持体上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知する画像形成装置、滑剤ムラ検知方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を有する画像形成部を備える画像形成装置であって、前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給部と、前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定部と、前記測定部により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を有する画像形成部を備える画像形成装置であって、
前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給部と、
前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定部と、
前記測定部により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断部と、を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記物理量として前記像担持体の駆動トルクを測定するトルクセンサーを備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記物理量として前記ブレードの振動を直接的又は間接的に測定するセンサーを備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニング部は、前記ブレードを保持する保持部材を備え、
前記測定部は、前記物理量として前記保持部材の振動を測定する加速度センサーを備える請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング部は、バネを介して前記ブレードを保持し、
前記測定部は、前記物理量として前記バネの振動を測定する透磁率センサーを備える請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナーパッチ供給部は、主走査方向に分割して前記トナーパッチを供給する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トナーパッチ供給部は、間隔の異なる複数の前記トナーパッチを供給する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記判断部により前記滑剤の塗布量のムラが発生していると判断された場合、前記滑剤塗布部に塗布量のムラを解消させる回復処理を実行させる制御部を備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記滑剤塗布部に前記像担持体上の前記滑剤の塗布量を増加させる回復処理を実行させる請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記滑剤塗布部は、前記像担持体と接触して滑剤を塗布する回転ブラシを備え、
前記制御部は、前記回転ブラシの回転数を増加させる回復処理を実行させる請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記画像形成部に、前記像担持体上にトナーを供給させて前記像担持体上の前記滑剤を剥がした後、前記滑剤塗布部に、新たに前記像担持体に前記滑剤を塗布させる回復処理を実行させる請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記像担持体上の前記滑剤の塗布量が多い領域では前記滑剤を除去させ、前記滑剤塗布部に、前記滑剤の塗布量が少ない領域では前記滑剤を塗布させる回復処理を実行させる請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記画像形成部に、前記像担持体上にトナーを供給させて、前記像担持体上の長手位置に対する前記滑剤の塗布量と、前記像担持体上の長手位置に対するトナーの供給量とを同位相とすることにより、前記滑剤を除去させる回復処理を実行させる請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を有する画像形成部を備える画像形成装置の滑剤ムラ検知方法であって、
前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給工程と、
前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定工程と、
前記測定工程により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断工程と、を有する滑剤ムラ検知方法。
【請求項15】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を有する画像形成部を備える画像形成装置のコンピューターに、
前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給処理と、
前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定処理と、
前記測定処理により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、滑剤ムラ検知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセスを利用した画像形成装置では、感光体上のトナー像を中間転写ベルトに転写する際、一部のトナー粒子が転写されずに感光体上に残ってしまう。そのため、画像形成装置には、感光体上の残留トナー等の残留物を除去するクリーニング装置が設けられている。ただし、トナー粒子と感光体との付着力が大きい場合、クリーニング装置では感光体上の残留物を十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生してしまう。
【0003】
そこで、感光体上に滑剤を塗布し、トナー粒子と感光体との付着力を低下させ、クリーニング不良を抑制する技術が知られている。しかし、滑剤の塗布量が少ない箇所では、感光体上の残留物を十分にクリーニングできない。その結果、トナー粒子がクリーニングブレードからすり抜けてしまい、形成される画像上に縦スジが発生してしまう。そのため、滑剤は、感光体上に、適正量を均一に塗布されることが好ましい。
【0004】
感光体上の滑剤の塗布状態を検知する方法としては、白ベタ印字時又は滑剤塗布動作時の感光体の駆動トルクを測定する技術が開示されている(特許文献1、2)。また、感光体の主走査方向の部分的なトナー入力量で滑剤塗布ムラがあるかを判断する技術も開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-025692号公報
【特許文献2】特開2017-090665号公報
【特許文献3】特開2009-058732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、縦スジの原因である滑剤の塗布量のムラは、感光体の主走査方向において、規則正しいピッチ性もって発生することがわかった。なお、これは、カバレッジ、装置の設置環境等により、クリーニングブレードのエッジが、主走査方向に周期的な間隔で、局所的に、感光体の回転方向に引きつられることで発生すると考えられる。その結果、感光体上に滑剤の塗布量のムラが発生する。
【0007】
特許文献1及び特許文献2で開示されている技術では、感光体全体の平均的な滑剤の塗布量は検知できるが、主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを検知できない。特許文献3で開示されている技術でも、主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラは検知できない。
【0008】
また、滑剤の塗布量のムラが発生してすぐに縦スジが発生するわけではなく、ムラが発生した状態がしばらく続くことにより、クリーニングブレードにダメージが蓄積し、最終的に縦スジが発生する。そのため、感光体上の滑剤の塗布量のムラをいち早く検知することにより、縦スジの発生を未然に防げる。
【0009】
本発明の解決課題は、像担持体上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知する画像形成装置、滑剤ムラ検知方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を有する画像形成部を備える画像形成装置であって、
前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給部と、
前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定部と、
前記測定部により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断部と、を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記測定部は、前記物理量として前記像担持体の駆動トルクを測定するトルクセンサーを備える。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記測定部は、前記物理量として前記ブレードの振動を直接的又は間接的に測定するセンサーを備える。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記クリーニング部は、前記ブレードを保持する保持部材を備え、
前記測定部は、前記物理量として前記保持部材の振動を測定する加速度センサーを備える。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記クリーニング部は、バネを介して前記ブレードを保持し、
前記測定部は、前記物理量として前記バネの振動を測定する透磁率センサーを備える。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記トナーパッチ供給部は、主走査方向に分割して前記トナーパッチを供給する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記トナーパッチ供給部は、間隔の異なる複数の前記トナーパッチを供給する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記判断部により前記滑剤の塗布量のムラが発生していると判断された場合、前記滑剤塗布部に塗布量のムラを解消させる回復処理を実行させる制御部を備える。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、
前記制御部は、前記滑剤塗布部に前記像担持体上の前記滑剤の塗布量を増加させる回復処理を実行させる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、
前記滑剤塗布部は、前記像担持体と接触して滑剤を塗布する回転ブラシを備え、
前記制御部は、前記回転ブラシの回転数を増加させる回復処理を実行させる。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、
前記制御部は、前記画像形成部に、前記像担持体上にトナーを供給させて前記像担持体上の前記滑剤を剥がした後、前記滑剤塗布部に、新たに前記像担持体に前記滑剤を塗布させる回復処理を実行させる。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、
前記制御部は、前記像担持体上の前記滑剤の塗布量が多い領域では前記滑剤を除去させ、前記滑剤塗布部に、前記滑剤の塗布量が少ない領域では前記滑剤を塗布させる回復処理を実行させる。
【0022】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の発明において、
前記制御部は、前記画像形成部に、前記像担持体上にトナーを供給させて、前記像担持体上の長手位置に対する前記滑剤の塗布量と、前記像担持体上の長手位置に対するトナーの供給量とを同位相とすることにより、前記滑剤を除去させる回復処理を実行させる。
【0023】
本発明の滑剤ムラ検知方法は、
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を有する画像形成部を備える画像形成装置の滑剤ムラ検知方法であって、
前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給工程と、
前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定工程と、
前記測定工程により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断工程と、を有する。
【0024】
本発明のプログラムは、
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を有する画像形成部を備える画像形成装置のコンピューターに、
前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給処理と、
前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定処理と、
前記測定処理により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、像担持体上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知する画像形成装置、滑剤ムラ検知方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図5】主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを示す図である。
【
図6】保持部材の振動を測定する加速度センサーを示す図である。
【
図7】バネの振動を測定する透磁率センサーを示す図である。
【
図8】画像形成装置の滑剤の塗布量のムラを検知し、クリーニング不良を防止する動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】間隔の異なる複数のトナーパッチを示す図である。
【
図10】複数に分割して供給されるトナーパッチを示す図である。
【
図11】感光体上に塗布ムラがある場合の、感光体の駆動トルクの測定結果を示すグラフである。
【
図12】感光体上に塗布ムラがない場合の、感光体の駆動トルクの測定結果を示すグラフである。
【
図13】感光体上に塗布ムラがある場合の、加速度センサーの測定結果を示すグラフである。
【
図14】感光体上に塗布ムラがある場合の、透磁率センサーの測定結果を示すグラフである。
【
図15】感光体の長手位置における摩擦係数と供給されるトナーパッチの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の1つまたは複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。しかしながら、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されるものではない。
【0028】
〔画像形成装置1の構成〕
まず、本実施の形態に係る画像形成装置1の構成について説明する。
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、
図1及び
図2に示すように、自動原稿搬送部2、スキャナー部3、画像形成部4、給紙部5、記憶部6、操作表示部7、通信部8、制御部10及び測定部11を備えて構成される。
【0029】
自動原稿搬送部2は、原稿Dを載置する載置トレイ、原稿Dを搬送する機構及び搬送ローラー等を備えて構成され、原稿Dを所定の搬送路に搬送する。
スキャナー部3は、光源や反射鏡等の光学系を備えて構成され、所定の搬送路を搬送された原稿D又はプラテンガラスに載置された原稿Dに光源を照射し、反射光を受光する。また、スキャナー部3は、受光した反射光を電気信号に変換して画像データとして制御部10に出力する。
【0030】
画像形成部4は、イエロー作像部Yと、マゼンタ作像部Mと、シアン作像部Cと、ブラック作像部Kと、ホワイト作像部Wと、中間転写ベルトTと、定着部Fと、を備えて構成される。なお、本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの通常のカラー印刷で用いられる4色の作像部の他、5色目(特色)の作像部としてホワイト(白)の作像部を備えることとして説明する。その他の色として、クリア(透明)の作像部等を備えることとしてもよい。また、6色目の作像部を備えることとしてもよい。
各作像部YMCKWは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトのトナー像を感光体41に形成し、感光体41に形成されたYMCKW各色のトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。
【0031】
図3は、画像形成部4の各作像部の概略構成を示す図である。各作像部は、感光体41、帯電装置42、露光装置43、現像装置44、一次転写ローラー45、クリーニング部471及び滑剤塗布部472を備える。
【0032】
感光体41は、ドラム状であり、
図3に示すA方向に回転駆動される。帯電装置42は、感光体41の表面を一様に帯電させる。露光装置43は、帯電装置42により帯電された感光体41の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置44は、露光装置43により形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて可視像化する。一次転写ローラー45は、感光体41上に形成されたトナー画像を
図3に示すB方向に移動する中間転写ベルトTに一次転写させる。クリーニング部471は、転写領域を通過した感光体41上のトナーを除去する。滑剤塗布部472は、感光体41に滑剤を供給する。
【0033】
中間転写ベルトTに転写されたトナー画像は、二次転写ローラー46によって用紙Pに転写され、その後、定着部Fに搬送され、用紙P上に定着される。上述の各作像部YMCKWの構成要素は、感光体41の軸方向に長尺である。
各作像部YMCKWの構成及び動作は何れも同様であるため、以下、イエロー作像部Yを例に挙げて、画像形成部4が行う一連の画像形成動作について説明する。
【0034】
感光体41は、ドラム状の金属基体の外周面に有機光導電体を含有させた樹脂からなる感光層が形成された有機感光体により構成され、
図3に示すAの方向に回転駆動される。感光層を構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
感光体41は、アルミニウム管などの導電性の素管の上に、下引き層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)の順に配置された層構造を有する。
【0035】
帯電装置42は、例えば、スコロトロン方式であり、帯電チャージャーを用いて感光体41をマイナス極性で一定の電位に帯電させる。
【0036】
露光装置43は、制御部10からの画像データDyに基づいて感光体41の非画像領域を露光して露光した部分の電荷を除去し、感光体41の画像領域に静電潜像を形成する。
具体的には、帯電装置42によってマイナス極性に帯電された感光体41表面に対して、露光装置43の露光により電荷が除去される。CGLの中の電荷発生材料(CGM:Charge Generation Material)で正負両電荷が発生すると、正電荷(ホール)はCTLを通過して感光体41の表面に、負電荷はUCLを通過して素管に達する。これにより、感光体41の表面上に静電潜像が形成される。
【0037】
現像装置44は、感光体41と現像領域を介して対向するように配置された現像スリーブ44aを備える。現像スリーブ44aには、例えば、帯電装置42の帯電極性と同極性、即ちマイナス極性の直流電圧に、交流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。これにより、感光体41に形成された静電潜像上に現像剤を供給し、感光体41にイエローのトナー像を形成する。なお、現像剤は、トナーと、トナーを帯電するためのキャリアと、を含む。
【0038】
トナーは特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができる。例えば、トナーは、バインダー樹脂中に、着色剤の他、必要に応じて荷電制御剤、離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものを使用することができる。トナー粒径は、特に限定されるものではないが、3~15μm程度が好ましい。
【0039】
一次転写ローラー45は、感光体41に形成されたイエローのトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。なお、他の作像部MCKWも同様に、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトのトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。これにより、中間転写ベルトT上にYMCKW各色のカラーのトナー像が形成される。
【0040】
中間転写ベルト(中間転写体)Tは、複数のローラーに懸架され回転可能に支持された半導電性エンドレスベルトであり、ローラーの回転に伴って
図3に示すBの方向に回転駆動される。この中間転写ベルトTは、一次転写ローラー45により、対向するそれぞれの感光体41に圧着される。一次転写ローラー45のそれぞれには、印加された電圧に応じた転写電流が流れる。これにより、各感光体41の表面に現像された各トナー像は、それぞれ各一次転写ローラー45により順次中間転写ベルトTに一次転写される。
【0041】
二次転写ローラー46は、二次転写ベルト(二次転写部材)462を介して中間転写ベルトTに圧接して回転する。これにより、当該中間転写ベルトTに転写されて形成されたYMCKW各色のトナー像を、給紙部5の給紙トレイ51~53から搬送されてきた用紙Pに二次転写する。詳細には、二次転写ローラー46は、二次転写ベルト462及び中間転写ベルトTを介して二次転写対向ローラー461に当接して配置される。二次転写ローラー46と二次転写対向ローラー461との間で形成される転写ニップを用紙Pが通過することにより、中間転写ベルトT上のトナー像が、用紙Pに二次転写される。なお、二次転写ベルト462を備えずに、二次転写ローラー46が直接中間転写ベルトTに圧接する構成としてもよい。この場合、二次転写ローラー46が本発明の二次転写部材に相当する。
【0042】
転写領域で中間転写ベルトT上に転写されずに感光体41上に残ったトナーは、クリーニング部471により回収される。
また、クリーニング部471により表面のトナーが回収された感光体41は、再び帯電装置42により帯電され、次の静電潜像が形成されトナー像を形成することを繰り返す。
【0043】
クリーニング部471は、ブレード部47a及び回収スクリュー47bを備える。
図4に示すように、ブレード部47aは、ブレードa1、保持部材a2、及びバネa3を備える。ブレード部47aは、ブレードa1が感光体41に摺擦するように設置され、感光体41の表面に残留する未転写のトナー等の付着物を掻き取って除去する。
図3に示す回収スクリュー47bは、ブレード部47aの略下側に設けられる。回収スクリュー47bは、一方向に回転しており、ブレード部47aで掻き取られて落下したトナーを、図示しない廃トナーボックスまで搬送する。
【0044】
ブレードa1は、例えば、ポリウレタンゴムなどを平板状に加工した弾性体を備える。
保持部材a2は、板状であり、保持部材a2の先端に、ブレードa1が固定されている。保持部材a2は、例えば、金属製であることが好ましく、例えば、SECC(電気亜鉛メッキ鋼板)などの鋼板が好ましい。
バネa3は、例えば、ブレードa1が感光体41に摺擦することにより巻き込まれる方向とは反対の方向に向けて付勢する圧縮バネである。バネa3は、保持部材a2を介してブレードa1を、感光体41に対して押圧保持している。
【0045】
図3に示すように、滑剤塗布部472は、塗布ブラシ(回転ブラシ)47c、滑剤棒47d、押圧部47e、及び固定化ブレード47fを備える。塗布ブラシ47cは、ブレード部47aに対して感光体41の回転方向における下流側に設けられる。滑剤棒47dは、塗布ブラシ47cに対して滑剤を供給する。押圧部47eは、滑剤棒47dを塗布ブラシ47cに対して押圧保持する。固定化ブレード47fは、塗布ブラシ47cに対して感光体41の回転方向における下流側に設けられる。
【0046】
塗布ブラシ47cは、感光体41にその先端部が接触可能な位置に配置されたロール状のブラシ部材である。塗布ブラシ47cは、制御部10の制御により、感光体41との接点において、表面が感光体41の表面の進行方向と逆方向に進行する、カウンター回転を行い、感光体41に滑剤を塗布(供給)する。
【0047】
滑剤棒47dは、例えば、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸の粉体の滑剤を、溶融成形して固形化して得られる。滑剤棒47dは、塗布ブラシ47cの先端部が接触可能な位置に配置され、塗布ブラシ47cの回転によって先端部から削り取られる。削り取られた滑剤はそのまま感光体41まで搬送されて感光体41表面に供給される。
【0048】
押圧部47eは、例えば、滑剤棒47dを塗布ブラシ47cの方向に向けて付勢する圧縮バネを備え、滑剤棒47dを塗布ブラシ47cに対して押圧保持している。
【0049】
固定化ブレード47fは、ブレード部47aと同様に、例えば、ポリウレタンゴムなどの弾性体を平板状に加工したものが用いられる。また、固定化ブレード47fは、感光体41の表面を引きずる方向に当接し(トレーリング当接)、その先端が感光体41に摺擦するように設置されている。
【0050】
この固定化ブレード47fは、感光体41表面に供給された滑剤の粉を引き伸ばし、感光体41表面に成膜させて皮膜(滑剤層)を形成するためのものである。ステアリン酸亜鉛で形成された滑剤層は、離型性が高く、すなわち純水接触角が高く、摩擦係数が小さいことが特徴である。そのため、ステアリン酸亜鉛で形成された滑剤層は、転写性及びクリーニング性がよく、また、感光体41の減耗も抑制されて長寿命化できる。
【0051】
また、用紙Pに転写されずに中間転写ベルトT上に残ったトナー等は、中間転写ベルトTに当接するブレード部材48aを備えるクリーニング部(クリーニング部材)48に搬送され、クリーニング部48により除去、回収される。
【0052】
画像形成部4は、YMCKW各色のトナー像が二次転写された用紙Pを定着部Fにより加熱及び加圧し、その後所定の搬送路に通して機外に排出する。
以上が画像形成部4の構成である。
【0053】
給紙部5は、複数の給紙トレイ51~53を備えて構成され、各給紙トレイ51~53に種類の異なる複数の用紙Pを収容する。給紙部5は、所定の搬送路により収容される用紙Pを画像形成部4に給紙する。
【0054】
記憶部6は、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリーなどにより構成される。記憶部6は、プログラムデータ、各種設定データ、ジョブ(Job)情報(ジョブの設定情報及びジョブの画像データ)等のデータを制御部10から読み書き可能に記憶する。ジョブの設定情報には、ジョブで使用される用紙の種類やサイズ、片面/両面、総印刷用紙数、応用設定等の情報等が含まれる。
【0055】
操作表示部7は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、表示部71及び操作部72として機能する。
表示部71は、制御部10から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。また、ユーザーによるタッチ操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。
操作部72は、テンキー、スタートキー等の各種操作キー、表示部71に形成されたタッチパネルを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。ユーザーは、操作表示部7を操作して、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定及び用紙設定等の画像形成に関する設定、用紙搬送指示、並びに装置の停止操作などを行うことができる。
【0056】
通信部8は、例えばLAN(Local Area Network)カード等の通信制御カードで構成され、LAN、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部機器との間で各種データの送受信を行う。例えば、通信部8は、ジョブ情報を外部機器から受信する。
【0057】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成され、CPUはROM又は記憶部6に記憶されている各種プログラムをRAMに展開し、展開された各種プログラムと協働して、自動原稿搬送部2、スキャナー部3、画像形成部4、給紙部5、記憶部6、操作表示部7、通信部8等の画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する(
図2参照)。
例えば、制御部10は、操作部72及びスキャナー部3により入力されたジョブ情報や通信部8により受信したジョブ情報を記憶部6に記憶し、ジョブの実行指示に基づいて後述する印刷制御処理(
図7参照)を実行する。
【0058】
滑剤の塗布量のムラは、制御部10及び測定部11により検知される。制御部10は、感光体41上に、
図5に示すように、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給する。このとき、制御部10は、トナーパッチ供給部として機能する。トナーパッチの主走査方向における間隔は、塗布ムラの間隔と同一とする。測定部11は、トナーパッチが供給された感光体41のクリーニング動作時の、感光体41とブレードa1における物理量を測定する。制御部10は、測定部11で得られた測定値を読み出し、測定値に基づいて、感光体41上の主走査方向において、滑剤の塗布量のムラの有無を判断する。このとき、制御部10は、判断部として機能する。
【0059】
測定部11としては、例えば、物理量として感光体41の駆動トルクを測定する場合、感光体41にトルクセンサーを取り付ける。また、物理量としてブレードa1の振動を直接的又は間接的に測定する場合、次のセンサーを取り付ける。物理量として保持部材a2の振動を測定してブレードa1の振動を間接的に測定する場合、
図6に示すように、保持部材a2に加速度センサー111を取り付ける。物理量としてバネa3の振動を測定してブレードa1の振動を間接的に測定する場合、
図7に示すように、バネa3のアーム部に、磁性体112(ネオジウム磁石等)を取り付ける。透磁率センサー113は、磁性体112と向かい合う、バネa3とは反対の位置に取り付けられる。
【0060】
透磁率センサー113は、TCR(Toner Carrier Ratio)センサーに用いられる透磁率センサーであってもよい。TCRセンサーは、現像装置に貯蔵されている現像剤のトナー濃度を検出する際に用いられる。
【0061】
制御部10及び測定部11により滑剤の塗布量のムラが発生していると判断した場合、制御部10は、画像形成部4の作像部及び滑剤塗布部472に指示し、滑剤の塗布量のムラを解消させる回復処理を実行させる。
【0062】
〔画像形成装置1の動作〕
画像形成装置1は、感光体41上の滑剤の塗布量のムラの発生を検知する。また、画像形成装置1は、滑剤の塗布量のムラを解消させる回復処理を実行することにより、クリーニング不良の発生を防止できる。
図8は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の滑剤の塗布量のムラを検知し、クリーニング不良を防止する動作の一例を示すフローチャートである。本明細書では、感光体41の主走査方向において発生する滑剤の塗布量のムラのことを、単に「塗布ムラ」又は「滑剤ムラ」ともいう。
【0063】
ステップS11では、制御部10は、画像形成部4の作像部に指示し、感光体41上に主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給させる。制御部10は、ステップS12に工程を進める。
【0064】
ステップS12では、制御部10は、クリーニング部471に指示し、感光体41上のトナーをクリーニングさせる。制御部10は、ステップS13に工程を進める。
【0065】
ステップS13では、制御部10は、クリーニング動作時の感光体41とブレードa1における物理量を測定部11に測定させる。
制御部10は、ステップS14に工程を進める。
【0066】
ステップS14では、制御部10は、測定部11で得られた測定値を読み出し、ステップS15に工程を進める。
【0067】
ステップS15では、制御部10は、得られた測定値が閾値から外れているかどうか判断する。閾値から外れていれば(S15:YES)、制御部10は、塗布ムラが発生しておりクリーニング不良が発生する可能性があると判断し、ステップS16に工程を進める。閾値から外れていなければ(S15:NO)、制御部10は、塗布ムラは発生しておらずクリーニング不良は発生しないと判断する。そして、動作を終了させる。
【0068】
ステップS15では、制御部10は、感光体41に下記の滑剤回復処理を行い、動作を終了させる。
【0069】
トナーパッチが供給された感光体41のクリーニング動作時の、感光体41とブレードa1における物理量は、トナーの有無及び滑剤の塗布量に応じて、大きく変化する。滑剤は、感光体41の表面に付与されることにより、感光体41の摩擦係数を増加させる。そのため、感光体41上において、滑剤の塗布量が多い領域では、感光体41の摩擦係数は大きく、感光体41とブレードa1に働く力は大きくなる。滑剤の塗布量が多い領域にトナーが供給されると、トナーは感光体41及びブレードa1とそれぞれ作用し、感光体41とブレードa1における物理量の変化は比較的大きくなる。
【0070】
反対に、感光体41上において、滑剤の塗布量が少ない領域では、感光体41の摩擦係数は小さい。そのため、滑剤の塗布量が少ない領域にトナーが供給されても、感光体41とブレードa1における物理量の変化は、比較的小さい。
【0071】
トナーパッチの縞模様の間隔は、塗布ムラの間隔と同一であるため、複数存在する滑剤の塗布量が多い領域又は少ない領域に、それぞれ同時にトナーが供給される。その結果、滑剤の塗布量が多い領域に同時にトナーが供給されると、感光体41とブレードa1における物理量は、非常に大きくなる。反対に、滑剤の塗布量が少ない領域に同時にトナーが供給されても、感光体41とブレードa1における物理量は、比較的小さい。
【0072】
トナーパッチの縞模様は、主走査方向において斜めである。測定部11では感光体41とブレードa1における物理量の時間推移を測定する。これにより、主走査方向における塗布ムラの位置を正確に特定しなくても、滑剤の塗布量が多い又は少ない領域に、ある一定周期でトナーが供給される。
【0073】
塗布ムラの間隔は、ブレードa1の材質、厚さ、設置角度、装置の設置環境等により変化するため、正確に把握することは難しい。そこで、
図9に示すように、間隔の異なる複数のトナーパッチを用いることが好ましい。複数のトナーパッチを用い、そのうち一つでも得られる測定値が閾値を外れる場合、塗布ムラが発生していると判断できる。なお、間隔の異なる複数のトナーパッチのカバレッジは同じ値とする。
【0074】
トナーパッチは、
図10に示すように、主走査方向において複数に分割してもよい。
図10では、トナーパッチを主走査方向において3分割し副走査方向にずらして供給し、感光体41とブレードa1における物理量の時間推移を測定する。得られる測定値が閾値を外れる場合、その時間においてトナーパッチが供給されている箇所に塗布ムラが発生していると判断できる。トナーパッチの分割数を増やすことにより、感光体上の塗布ムラが発生している箇所を詳細に判断できる。
【0075】
物理量として、トルクセンサーで感光体41の駆動トルクを測定する場合について説明する。
図11は、感光体41上に塗布ムラがある場合の、感光体41の駆動トルクの測定結果を示すグラフである。また、
図12は、感光体41上に塗布ムラがない場合の、感光体41の駆動トルクの測定結果を示すグラフである。
【0076】
図11に示すように、感光体41上に塗布ムラがある場合、滑剤の塗布量が多い領域にトナーが供給されると、駆動トルクの値は大きくなる。その後、滑剤の塗布量が少ない領域にトナーが供給されると、駆動トルクの値は小さくなる。駆動トルクの値が閾値を下回る場合、滑剤の塗布量のムラが発生していると判断し、クリーニング不良が発生する可能性を予測できる。なお、
図12に示すように、感光体41上に塗布ムラがない場合、駆動トルクの値は閾値を上回り一定で推移する。
【0077】
物理量として、加速度センサー111で、保持部材a2の振動を測定する場合について説明する。
ブレードa1の位置は、トナーの有無及び滑剤の塗布量に応じて、大きく変化する。例えば、滑剤の塗布量が多い領域にトナーが供給されると、ブレードa1は、感光体41の回転方向に引き込まれる。滑剤の塗布量が少ない領域では、トナーが供給されても、ブレードa1は感光体41に引き込まれにくい。その結果、ブレードa1のスティックスリップ運動が大きくなり、保持部材a2に振動が発生する。
【0078】
図13は、感光体41上に塗布ムラがある場合の、加速度センサー111の測定結果を示すグラフである。
図13に示すように、感光体41上に塗布ムラがある場合、滑剤の塗布量が多い領域にトナーが供給されると、加速度センサー111の出力値の絶対値は大きくなる。その後、滑剤の塗布量が少ない領域にトナーが供給されると、出力値の絶対値は小さくなる。出力値が上限の閾値を上回る又は下限の閾値を下回る場合、滑剤の塗布量のムラが発生してクリーニング不良が発生する可能性を予測できる。
【0079】
物理量として、透磁率センサー113で、バネa3の振動を測定する場合について説明する。
ブレードa1の位置は、トナーの有無及び滑剤の塗布量に応じて、大きく変化する。例えば、滑剤の塗布量が多い領域にトナーが供給されると、ブレードa1は、感光体41の回転方向に引き込まれ、磁性体112と透磁率センサー113との距離が小さくなる。磁性体112と透磁率センサー113との距離が小さいほど、透磁率センサー113の出力値は、大きくなる。滑剤の塗布量が少ない領域では、トナーが供給されても、ブレードa1は感光体41に引き込まれにくく、透磁率センサー113の出力値は、小さくなる。
【0080】
図14は、感光体41上に塗布ムラがある場合の、透磁率センサー113の測定結果を示すグラフである。
図14に示すように、感光体41上に塗布ムラがある場合、滑剤の塗布量が多い領域にトナーが供給されると、透磁率センサー113の出力値は大きくなる。その後、滑剤の塗布量が少ない領域にトナーが供給されると、出力値は小さくなる。出力値が閾値を下回る場合、滑剤の塗布量のムラが発生していると判断し、クリーニング不良が発生する可能性を予測できる。
【0081】
〔滑剤回復処理〕
本実施形態の画像形成装置1は、制御部10により塗布ムラが発生していると判断された場合、すなわち塗布ムラが検知された場合、制御部10に、滑剤塗布部に塗布量のムラを解消させる回復処理を実行させることが好ましい。感光体41における滑剤の塗布量を回復させる方法としては、例えば下記の方法が挙げられる。
【0082】
回復方法の一例として、感光体41上における滑剤の塗布量を全体的に増加させる方法が挙げられる。この方法では、滑剤の塗布量が全体的に増加するため、滑剤の塗布量が比較的少ない領域にも、クリーニング不良が生じない程度の十分な量の滑剤が塗布される。具体的には、制御部10は、上記滑剤塗布部472に指示し、回転ブラシ47cの回転数を増加させる。
【0083】
回復方法の一例として、感光体41上における滑剤を剥がし、新たに感光体41上に滑剤を塗布する方法が挙げられる。この方法では、滑剤を塗布し直すため、塗布ムラを解消できる。具体的には、制御部10は、画像形成部4の作像部に指示して、感光体41上に全体的にトナーを供給させる。トナー及び滑剤をこすり合わせることで、感光体41上から滑剤を除去する。そして、制御部10は、上記滑剤塗布部472に指示し、滑剤を塗布し直しさせる。
【0084】
回復方法の一例として、感光体41上における塗布ムラが発生している箇所を詳細に検知できる場合、塗布量が多い領域では滑剤を除去し、塗布量が少ない領域では滑剤を塗布する方法が挙げられる。この方法では、塗布ムラを解消できる。
【0085】
具体的には、制御部10は、画像形成部4の作像部に指示して、
図15に示すように、感光体41上に部分的にトナーを供給させる。
図15は、感光体41の長手位置(主走査方向)における摩擦係数と供給されるトナーパッチの関係を示す図である。
図15に示すように、感光体41の長手位置を横軸とする場合、摩擦係数は波形で表される。摩擦係数の値は滑剤の塗布量に比例することから、感光体41の長手位置を横軸とする場合、滑剤の塗布量も同じく波形で表される。そのため、感光体41上の長手位置に対するトナーの供給量を、滑剤の塗布量と同位相の波形で表される量とし、滑剤の塗布量に応じてトナーを供給する。トナー及び滑剤をこすり合わせることで、部分的に滑剤を除去する。そして、制御部10は、上記滑剤塗布部472に指示し、感光体41上の滑剤の塗布量が少ない領域に、すなわち摩擦係数の比較的小さい領域に、滑剤を塗布させる。
【0086】
〔滑剤ムラ検知方法〕
本実施形態の滑剤ムラ検知方法は、トナー像を担持する像担持体41と、像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部472と、像担持体41の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部471と、を有する画像形成部4を備える画像形成装置1の滑剤ムラ検知方法であって、像担持体41上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給工程と、トナーパッチが形成された像担持体41のクリーニング動作時の、像担持体41とブレードa1における物理量を測定する測定工程と、前記測定工程により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断工程と、を有する。
【0087】
〔プログラム〕
本実施形態のプログラムは、トナー像を担持する像担持体を有する画像形成部と、前記像担持体に滑剤を塗布する滑剤塗布部と、前記像担持体の表面に残留するトナーをブレードで清掃するクリーニング部と、を備える画像形成装置のコンピューターに、前記像担持体上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給処理と、前記トナーパッチが形成された前記像担持体のクリーニング動作時の、前記像担持体と前記ブレードにおける物理量を測定する測定処理と、前記測定処理により測定されたその測定値に基づいて、前記像担持体上の主走査方向における、前記滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断処理と、を実行させる。
【0088】
プログラムを格納するコンピューター読み取り可能な媒体は、特に限定されず、可搬型記録媒体を適用してもよい。また、通信回線を介してプログラムのデータを提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)を適用してもよい。
【0089】
本実施形態では、トナー像を担持する像担持体41と、像担持体41に滑剤を塗布する滑剤塗布部472と、像担持体41の表面に残留するトナーをブレードa1で清掃するクリーニング部471と、を有する画像形成部4を備える画像形成装置1において、像担持体41上に、主走査方向に等間隔の斜め縞模様のトナーパッチを供給するトナーパッチ供給部(制御部10)と、トナーパッチが形成された像担持体41のクリーニング動作時の、像担持体41とブレードa1における物理量を測定する測定部11と、測定部11により測定されたその測定値に基づいて、像担持体41上の主走査方向における、滑剤の塗布量のムラの有無を判断する判断部(制御部10)と、を備える。これにより、像担持体41上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知できる。
【0090】
本実施形態では、測定部11は、物理量として像担持体41の駆動トルクを測定するトルクセンサーを備える。これにより、像担持体41上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知できる。
【0091】
本実施形態では、測定部11は、物理量としてブレードa1の振動を直接的又は間接的に測定するセンサーを備える。これにより、像担持体41上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知できる。
【0092】
本実施形態では、クリーニング部471は、ブレードa1を保持する保持部材a2を備え、測定部11は、物理量として保持部材a2の振動を測定する加速度センサー111を備える。これにより、像担持体41上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知できる。
【0093】
本実施形態では、クリーニング部471は、バネa3を介してブレードa1を保持し、測定部11は、物理量としてバネa3の振動を測定する透磁率センサー113を備える。これにより、像担持体41上において主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを好適に検知できる。
【0094】
本実施形態では、トナーパッチ供給部(制御部10)は、主走査方向に分割してトナーパッチを供給する。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量のムラが発生している箇所を検知できる。
【0095】
本実施形態では、トナーパッチ供給部(制御部10)は、間隔の異なる複数のトナーパッチを供給する。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量のムラの間隔を把握できない場合でも、塗布量のムラを検知できる。
【0096】
本実施形態では、判断部(制御部10)により滑剤の塗布量のムラが発生していると判断された場合、滑剤塗布部472に塗布量のムラを解消させる回復処理を実行させる制御部10を備える。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量を回復できる。
【0097】
本実施形態では、制御部10は、滑剤塗布部472に像担持体41上の滑剤の塗布量を増加させる回復処理を実行させる。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量を回復できる。
【0098】
本実施形態では、滑剤塗布部472は、像担持体41と接触して滑剤を塗布する回転ブラシ47cを備え、制御部10は、回転ブラシ47cの回転数を増加させる回復処理を実行させる。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量を回復できる。
【0099】
本実施形態では、制御部10は、画像形成部4に、像担持体41上にトナーを供給させて像担持体41上の滑剤を剥がした後、滑剤塗布部472に、新たに像担持体41に滑剤を塗布させる回復処理を実行させる。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量を回復できる。
【0100】
本実施形態では、制御部10は、像担持体41上の滑剤の塗布量が多い領域では滑剤を除去させ、滑剤塗布部472に、滑剤の塗布量が少ない領域では滑剤を塗布させる回復処理を実行させる。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量を回復できる。
【0101】
本実施形態では、制御部10は、画像形成部4に、像担持体41上にトナーを供給させて、像担持体41上の長手位置に対する滑剤の塗布量と、像担持体上の長手位置に対するトナーの供給量とを同位相とすることにより、滑剤を除去させる回復処理を実行させる。これにより、像担持体41上の滑剤の塗布量を回復できる。
【0102】
その他、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0103】
画像形成装置「Accurio(登録商標)Press C14000」(コニカミノルタ株式会社製)を準備し、感光体にトルクセンサーを取り付けた。ブレード部の当接角度は、上限値とした。当該画像形成装置を用いて、低カバレッジの過酷耐久試験(両面連続印刷)を実施した。その後、実施例1~3では、感光体上にトナーパッチを供給し、クリーニング動作時の感光体の駆動トルクの時間推移を測定した。
【0104】
表Iに記載のとおり、過酷耐久試験時の画像形成条件及びブレード材の種類を変化させ、その後、感光体の駆動トルクの時間推移を測定した。当該試験における画像形成条件は、確実に感光体に塗布ムラが発生する条件であった。
なお、表Iにおいて、「-」は、実施しなかったことを表す。
【0105】
【0106】
画像形成条件の「全面ベタ」では、用紙全面に白ベタ画像を形成した。その結果、感光体の主走査方向の全域において、等間隔の塗布ムラが発生した。「部分ベタ」では、用紙を主走査方向に3分割し、その中央部のみに白ベタ画像を形成した。その結果、感光体を主走査方向に3分割したその中央部のみに、等間隔の塗布ムラが発生した。クリーニングブレードは、材料の異なるブレードA及びBを使用した。
【0107】
比較例では、画像形成条件を全面ベタとし、ブレードAを使用した。感光体の駆動トルクの時間推移は測定しなかった。その後、用紙全面にハーフトーン画像を形成したところ、ハーフトーン画像上に白の縦スジが確認された。
【0108】
実施例1では、比較例と同じく、画像形成条件を全面ベタとし、ブレードAを使用した。トナーパッチとして、
図5に示す、縞模様の間隔が6.0mmであるトナーパッチを使用した。クリーニング動作時の感光体の駆動トルクの時間推移を測定したところ、ある時間において閾値を下回り、感光体の塗布ムラを検知した。滑剤回復処理として、回転ブラシの回転数を増加させ、感光体上における滑剤の塗布量を全体的に増加させた。その後、用紙全面にハーフトーン画像を形成したところ、ハーフトーン画像上に白の縦スジは確認されなかった。
【0109】
実施例2では、画像形成条件を部分ベタとし、ブレードAを使用した。トナーパッチとして、
図10に示す、縞模様の間隔が6.0mmであり、主走査方向において3分割されたトナーパッチを使用した。クリーニング動作時の感光体の駆動トルクの時間推移を測定したところ、ある時間において閾値を下回り、感光体の塗布ムラを検知した。なお、閾値を下回った時間から、主走査方向に3分割したその中央部に塗布ムラが発生していることを検知した。滑剤回復処理として、感光体上の中央部にトナーを供給して滑剤を除去した後、感光体上の中央部に滑剤を塗布し直した。その後、用紙全面にハーフトーン画像を形成したところ、ハーフトーン画像上に白の縦スジは確認されなかった。
【0110】
実施例3では、比較例と同じく、画像形成条件を全面ベタとし、ブレードBを使用した。トナーパッチとして、
図9に示す、縞模様の間隔がそれぞれ6.0mm、6.2mm、6.4mmである複数のトナーパッチを供給した。クリーニング動作時の感光体の駆動トルクの時間推移を測定したところ、縞模様の間隔が6.2mmであるトナーパッチ供給時のある時間において閾値を下回り、感光体の塗布ムラを検知した。滑剤回復処理として、供給量が、塗布ムラの波形と同位相の波形となるよう、感光体上にトナーを供給し、滑剤を一部除去した。また、感光体上の滑剤の塗布量が少ない領域には、滑剤を塗布した。その後、用紙全面にハーフトーン画像を形成したところ、ハーフトーン画像上に白の縦スジは確認されなかった。
【0111】
実施例1~3から、本実施形態の画像形成装置は、主走査方向に発生する滑剤の塗布量のムラを検知できる。また、本実施形態の画像形成装置は、滑剤回復処理を行うことにより、縦スジの発生を未然に防げることがわかる。