(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099091
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215478
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】束村 慎一
(72)【発明者】
【氏名】田村 暢康
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA46
2H033BB02
2H033BB04
2H033BB14
2H033BB29
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA04
2H033CA08
2H033CA09
2H033CA16
2H033CA30
2H033CA35
(57)【要約】
【課題】画像形成された多層構造の記録媒体の提供に際してより適切な処理が可能な画像形成装置、画像形成方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、多層構造の記録媒体Pに画像を形成する画像形成部50と、記録媒体Pの情報を取得する取得部と、第1のプロセス部材と、第2のプロセス部材と、制御部10と、を備え、制御部10は、取得部が取得した記録媒体Pの第1面側の最上層P1の特性に基づいて、少なくとも第1のプロセス部材の条件を制御し、記録媒体Pの第2面側の最上層P4の特性に基づいて、少なくとも第2のプロセス部材の記録媒体Pに作用させる物理特性を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造の記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体の情報を取得する取得部と、
前記記録媒体の画像が形成される第1面側から前記記録媒体に物理的に作用する第1のプロセス部材と、
前記第1面と反対側の第2面側から前記記録媒体に物理的に作用する第2のプロセス部材と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記取得部が取得した前記第1面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第1のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整し、前記記録媒体の第2面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第2のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整する画像形成装置。
【請求項2】
前記第1のプロセス部材は、前記第1面側の最上層に対向する部材であり、
前記第2のプロセス部材は、前記第2面側の最上層に対向する部材であり、
前記制御部は、前記第1のプロセス部材及び前記第2のプロセス部材の物理量を別々に制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1のプロセス部材は、前記記録媒体に画像を定着させる定着部材を含み、
前記第2のプロセス部材は、前記定着部材と前記記録媒体を圧接する加圧部材を含み、
前記制御部は、前記定着部材及び前記加圧部材の温度を別々に制御する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記特性は、熱伝導率であり、
前記制御部は、前記第1面側の最上層及び/又は前記第2面側の最上層の熱伝導率の高さに応じて前記定着部材及び/又は前記加圧部材の温度が高くなるように制御する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記特性は、熱容量であり、
前記制御部は、前記第1面側の最上層及び/又は前記第2面側の最上層の熱容量の高さに応じて前記定着部材及び/又は前記加圧部材の温度が高くなるように制御する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、環境温度及び/又は前記記録媒体の温度に応じて前記定着部材及び前記加圧部材の条件を制御する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録媒体に画像を定着させる定着部材と、前記定着部材と前記記録媒体を圧接する加圧部材と、を備え、
前記第1のプロセス部材及び前記第2のプロセス部材は、前記定着部材及び前記加圧部材よりも搬送方向上流側で前記記録媒体を加熱する予備加熱部である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記定着部材及び前記加圧部材よりも搬送方向上流側に前記記録媒体を加熱する予備加熱部を備え、
前記制御部は、前記定着部材及び前記加圧部材の温度不足を補助するように前記予備加熱部を制御する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、環境温度及び/又は前記記録媒体の温度に応じて前記予備加熱部の温度を制御する請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記記録媒体は、連続紙である請求項1から9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記記録媒体の少なくとも前記第1面側の最上層及び前記第2面側の最上層の特性の情報を操作入力可能な操作部を備え、
前記取得部は、前記操作部に入力された情報を取得する請求項1から9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記記録媒体の少なくとも前記第1面側の最上層及び前記第2面側の最上層の特性の情報を検知可能な検知部を備え、
前記取得部は、前記検知部が検知した情報を取得する請求項1から9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
多層構造の記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体の情報を取得する取得部と、
前記記録媒体の画像が形成される第1面側から前記記録媒体に物理的に作用する第1のプロセス部材と、
前記第1面と反対側の第2面側から前記記録媒体に物理的に作用する第2のプロセス部材と、を備える画像形成装置の画像形成方法であって、
前記取得部が取得した前記第1面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第1のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整し、前記記録媒体の第2面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第2のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整する制御ステップを備える画像形成方法。
【請求項14】
多層構造の記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体の情報を取得する取得部と、
前記記録媒体の画像が形成される第1面側から前記記録媒体に物理的に作用する第1のプロセス部材と、
前記第1面と反対側の第2面側から前記記録媒体に物理的に作用する第2のプロセス部材と、を備える画像形成装置のコンピューターを、
前記取得部が取得した前記第1面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第1のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整し、前記記録媒体の第2面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第2のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整する制御部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセス技術を利用した画像形成装置が知られている。当該画像形成装置においては、帯電した感光体に対して、画像データに基づくレーザー光を照射することで静電潜像を形成する。画像形成装置は、静電潜像が形成された感光体ドラムに現像装置からトナーを供給することで、静電潜像を可視化してトナー像を形成する。そして、画像形成装置は、形成したトナー像を記録媒体Pに転写した後に、加熱及び加圧することで当該像を記録媒体に定着させる。
【0003】
ところで、記録媒体はその紙種に応じて伝熱性等の特性が異なる。そのため、一定の温度でトナー像を加熱しても、記録媒体の種類によっては加熱温度が低下して充分な定着温度とならず、定着不良が生じるおそれがある。そこで、例えば特許文献1には、記録媒体の紙種に係る情報を取得して、当該情報に応じて加熱温度を制御する画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば表面基材及び剥離紙を備える多層構造のタック紙が記録媒体である場合、加熱面である表面基材の紙種のみならず、表面基材と対向する剥離紙の紙種によっても加熱面への伝熱温度は変化する。そのため、単に記録媒体がタック紙であるという情報や、表面基材の種類の情報だけで温度(物理量)管理をしただけでは、定着温度が適温とならず、定着不良が生じることがあった。また、このような多層構造の記録媒体の画像形成時における画像品質に影響を与える物理量としては、温度に限らず、電荷量等がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、画像形成された多層構造の記録媒体の提供に際してより適切な処理が可能な画像形成装置、画像形成方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、画像形成装置であって、
多層構造の記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体の情報を取得する取得部と、
前記記録媒体の画像が形成される第1面側から前記記録媒体に物理的に作用する第1のプロセス部材と、
前記第1面と反対側の第2面側から前記記録媒体に物理的に作用する第2のプロセス部材と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記取得部が取得した前記第1面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第1のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整し、前記記録媒体の第2面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第2のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記第1のプロセス部材は、前記第1面側の最上層に対向する部材であり、
前記第2のプロセス部材は、前記第2面側の最上層に対向する部材であり、
前記制御部は、前記第1のプロセス部材及び前記第2のプロセス部材の物理量を別々に制御する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記第1のプロセス部材は、前記記録媒体に画像を定着させる定着部材を含み、
前記第2のプロセス部材は、前記定着部材と前記記録媒体を圧接する加圧部材を含み、
前記制御部は、前記定着部材及び前記加圧部材の温度を別々に制御する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記特性は、熱伝導率であり、
前記制御部は、前記第1面側の最上層及び/又は前記第2面側の最上層の熱伝導率の高さに応じて前記定着部材及び/又は前記加圧部材の温度が高くなるように制御する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記特性は、熱容量であり、
前記制御部は、前記第1面側の最上層及び/又は前記第2面側の最上層の熱容量の高さに応じて前記定着部材及び/又は前記加圧部材の温度が高くなるように制御する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、環境温度及び/又は前記記録媒体の温度に応じて前記定着部材及び前記加圧部材の条件を制御する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記記録媒体に画像を定着させる定着部材と、前記定着部材と前記記録媒体を圧接する加圧部材と、を備え、
前記第1のプロセス部材及び前記第2のプロセス部材は、前記定着部材及び前記加圧部材よりも搬送方向上流側で前記記録媒体を加熱する予備加熱部である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記定着部材及び前記加圧部材よりも搬送方向上流側に前記記録媒体を加熱する予備加熱部を備え、
前記制御部は、前記定着部材及び前記加圧部材の温度不足を補助するように前記予備加熱部を制御する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、環境温度及び/又は前記記録媒体の温度に応じて前記予備加熱部の温度を制御する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記記録媒体は、連続紙である。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記記録媒体の少なくとも前記第1面側の最上層及び前記第2面側の最上層の特性の情報を操作入力可能な操作部を備え、
前記取得部は、前記操作部に入力された情報を取得する。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記記録媒体の少なくとも前記第1面側の最上層及び前記第2面側の最上層の特性の情報を検知可能な検知部を備え、
前記取得部は、前記検知部が検知した情報を取得する。
【0019】
請求項13に記載の発明は、
多層構造の記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体の情報を取得する取得部と、
前記記録媒体の画像が形成される第1面側から前記記録媒体に物理的に作用する第1のプロセス部材と、
前記第1面と反対側の第2面側から前記記録媒体に物理的に作用する第2のプロセス部材と、を備える画像形成装置の画像形成方法であって、
前記取得部が取得した前記第1面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第1のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整し、前記記録媒体の第2面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第2のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整する制御ステップを備える。
【0020】
請求項14に記載の発明は、プログラムであって、
多層構造の記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体の情報を取得する取得部と、
前記記録媒体の画像が形成される第1面側から前記記録媒体に物理的に作用する第1のプロセス部材と、
前記第1面と反対側の第2面側から前記記録媒体に物理的に作用する第2のプロセス部材と、を備える画像形成装置のコンピューターを、
前記取得部が取得した前記第1面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第1のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整し、前記記録媒体の第2面側の最上層の特性に基づいて、少なくとも前記第2のプロセス部材の前記記録媒体に作用させる物理特性を調整する制御部として機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば画像形成された多層構造の記録媒体の提供に際してより適切な処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の主要構成図である。
【
図7A】表面基材及び剥離紙の種類に基づく温度設定テーブルの一例である。
【
図7B】表面基材及び剥離紙の種類に基づく温度設定テーブルの一例である。
【
図7C】表面基材及び剥離紙の坪量に基づく温度補正テーブルの一例である。
【
図7D】表面基材及び剥離紙の厚みに基づく温度補正テーブルの一例である。
【
図8】第2実施形態に係る画像形成装置の主要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る画像形成装置について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
[画像形成装置の全体構成]
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の主要構成を示す側断面図である。また、
図2は、画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。画像形成装置1は、制御部10、画像読取部20、操作表示部30、画像処理部40、画像形成部50、記録媒体搬送部60、定着部70及び予備加熱部80等を備える。
【0025】
なお、以下においてはX方向、Y方向及びZ方向は、
図1に示す方向を言うものとする。また、以下においてはX方向、Y方向及びZ方向をそれぞれ幅方向、搬送方向及び高さ方向と称して説明する。
【0026】
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を用いた中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、後述する感光体ドラム513上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)の各色のトナー画像を中間転写ベルト521に一次転写して重ね合わせる。そして、画像形成装置1は、中間転写ベルト521上のトナー画像を記録媒体Pに二次転写して画像を形成する。
【0027】
本発明における記録媒体Pは、
図1に示すように、ロール状の連続紙である。また、本発明における記録媒体Pは、例えばタック紙と呼ばれる、多層構造を有する記録媒体Pである。
【0028】
タック紙である記録媒体Pの構造を
図3に示す。タック紙は、画像形成部50と対向する側であり、画像が形成される第1面側から順に、表面基材P1、接着剤P2、剥離剤P3、剥離紙P4の順に積層されて多層構造を有する。表面基材P1は、第1面側の最上層である。また、剥離紙P4は、第1面側と反対側の第2面側の最上層である。表面基材P1は、接着剤P2及び剥離剤P3により、剥離紙P4に剥離可能に貼着されている。また、表面基材P1及び剥離紙P4は、例えば紙やPET(polyethylene terephthalate)等である。
【0029】
(制御部)
{CPU、ROM、RAM、記憶部}
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13及び記憶部14等を備える。CPU11は、ROM12から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM13に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各部の動作を集中制御する。このとき、記憶部14に格納されている各種データが参照される。記憶部14は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0030】
{通信部}
また、制御部10は、通信部15を介して、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部のパーソナルコンピューター等の装置との間で各種データを送受信する。制御部10は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、当該画像データ(入力画像データ)に基づいて、画像形成部50によって記録媒体Pにトナー像を形成させる。通信部15は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0031】
(画像読取部)
画像読取部20は、通信部15によらず入力画像データを取得する。画像読取部20は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置21及び原稿画像走査装置22(スキャナー)等を備えて構成される。
【0032】
{自動原稿給紙装置}
自動原稿給紙装置21は、原稿トレイに載置された原稿を搬送機構により搬送して原稿画像走査装置22へ送り出す。自動原稿給紙装置21は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿の画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0033】
{原稿画像走査装置}
原稿画像走査装置22は、自動原稿給紙装置21からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査する。そして、原稿画像走査装置22は、原稿からの反射光を不図示のCCD(Charge Coupled Device)センサーの受光面上に結像させて原稿画像を読み取る。画像読取部20は、原稿画像走査装置22による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。当該入力画像データは、画像処理部40において所定の画像処理が施される。
【0034】
(操作表示部)
操作表示部30は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。操作表示部30は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部31及び操作部32として機能する。
【0035】
{表示部}
表示部31は、制御部10やユーザーから入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等を表示する。
【0036】
{操作部}
操作部32は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーからの各種の操作指示を受け付ける。
【0037】
また、ユーザーは、後述する画像形成処理に際して、操作表示部30より記録媒体Pの情報を操作入力する。ユーザーが操作入力する記録媒体Pの情報とは、多層構造の記録媒体Pの表面基材P1と剥離紙P4の紙種、厚みあるいは坪量等である。
【0038】
(画像処理部)
画像処理部40は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部40は、制御部10の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部40は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部50が制御される。
【0039】
(画像形成部)
画像形成部50は、入力画像データに基づいて、Y~Kの各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット51Y~51K及び中間転写ユニット52等を備える。
【0040】
{画像形成ユニット}
画像形成ユニット51Y~51Kは、用いられるトナーを除いて同様の構成を有する。そのため、図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY~Kを添えて示す。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット51Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット51M~51Kの構成要素については符号が省略されている。
【0041】
画像形成ユニット51は、不図示の露光装置、不図示の現像装置、感光体ドラム513、不図示の帯電装置及び不図示のドラムクリーニング装置等を備える。
【0042】
感光体ドラム513は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層、電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した負帯電型の有機感光体である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなる。電荷発生層は、露光装置による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなる。電荷輸送層は、電荷発生層で発生した正電荷をその表面まで輸送する。
【0043】
制御部10は、感光体ドラム513を回転させる不図示の駆動モーターに供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム513を一定の周速度で回転させる。
【0044】
帯電装置は、光導電性を有する感光体ドラム513の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム513に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム513の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム513の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム513の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0045】
現像装置は、例えば二成分現像方式の現像装置である。現像装置は、感光体ドラム513の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0046】
ドラムクリーニング装置は、感光体ドラム513の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有する。ドライクリーニング装置は、一次転写後に感光体ドラム513の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0047】
{中間転写ユニット}
中間転写ユニット52は、中間転写ベルト521、不図示の一次転写ローラー、不図示の複数の支持ローラー、二次転写ローラー524及び不図示のベルトクリーニング装置等を備える。
【0048】
中間転写ベルト521は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラーにループ状に張架される。複数の支持ローラーのうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラーよりもベルト走行方向下流側に配置されるローラーが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト521は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0049】
一次転写ローラーは、各色成分の感光体ドラム513に対向して、中間転写ベルト521の内周面側に配置される。中間転写ベルト521を挟んで、一次転写ローラーが感光体ドラム513に圧接されることにより、感光体ドラム513から中間転写ベルト521へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0050】
二次転写ローラー524は、駆動ローラーのベルト走行方向下流側に配置される不図示のバックアップローラーに対向して、中間転写ベルト521の外周面側に配置される。中間転写ベルト521を挟んで、二次転写ローラー524がバックアップローラーに圧接されることにより、中間転写ベルト521から記録媒体Pへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0051】
一次転写ニップを中間転写ベルト521が通過する際、感光体ドラム513上のトナー像が中間転写ベルト521に順次重ねられて一次転写される。具体的には、一次転写ローラーに一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト521の裏面側(一次転写ローラーと当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト521に静電的に転写される。
【0052】
その後、記録媒体Pが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト521上のトナー像が記録媒体Pに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー524に二次転写バイアスを印加し、記録媒体Pの剥離紙P4側(二次転写ローラー524側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は記録媒体Pに静電的に転写される。トナー像が転写された記録媒体Pは定着部70に向けて搬送される。
【0053】
ベルトクリーニング装置は、中間転写ベルト521の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト521の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー524に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
【0054】
(記録媒体搬送部)
記録媒体搬送部60は、給紙部61、排紙部62及び搬送経路部63等を備える。給紙部61は、ロール状に巻き取られた連続紙の記録媒体Pを下流側へ繰り出す繰り出しローラー61aを備える。
【0055】
給紙部61の下流側へ繰り出された記録媒体Pは、搬送経路部63により、予備加熱部80の通過後に画像形成部50に搬送される。画像形成部50において、中間転写ベルト521のトナー像が記録媒体Pの表面基材P1に一括して二次転写され、定着部70において定着工程が施される。排紙部62は、画像形成された記録媒体Pをロール状に巻き取る巻き取りローラー62aを備える。搬送経路部63は、記録媒体Pを保持搬送する搬送ローラー63aを有している。なお、搬送経路部63は、記録媒体Pにテンションを付与する不図示のテンション付与ローラー及び記録媒体Pの蛇行を調整する不図示の蛇行調整ローラーを有してもよい。
【0056】
(定着部)
定着部70は、上側定着部70A、下側定着部70B、上加熱源70C及び下加熱源70D等を備える。
図4は、定着部70を概略的に示す図である。なお、本実施の形態では、定着方式をベルト定着方式に限定するが、本発明では、ベルト定着方式に限らない。
【0057】
定着部70は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた記録媒体Pを定着ニップで加熱、加圧することにより、記録媒体Pにトナー像を定着させる。定着部70は、定着器すなわち筐体内にユニットとして配置される。
【0058】
{上側定着部}
上側定着部70Aは、記録媒体Pの表面基材P1側に配置される定着面側部材を備える。上側定着部70Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト71、加熱ローラー72及び上加圧ローラー73を備える(ベルト加熱方式)。定着ベルト71は、加熱ローラー72及び上加圧ローラー73の間に所定の張力がかかった状態で架け渡されている。本実施形態において、上側定着部70Aは、上加熱源70Cと共に、表面基材P1に対向して、画像形成処理において表面基材P1に作用する第1プロセス部材を構成する。
【0059】
定着ベルト71は、例えばPI(ポリイミド)からなる基体の外周面を弾性層として耐熱性のシリコンゴムで被覆し、さらに、表層に耐熱性樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシ)のチューブを被覆またはコーティングをしてなる。定着ベルト71は、トナー像が形成された記録媒体Pに接触して、当該トナー像を記録媒体Pに所定温度範囲で加熱定着する。
【0060】
加熱ローラー72は、定着ベルト71を加熱する。加熱ローラー72は、定着ベルト71を加熱する上加熱源70Cを内蔵している。上加熱源70Cは、例えば、ハロゲンヒーターである。加熱ローラー72は、アルミニウム等から形成された円筒状の芯金における外周面をPTFE(PolyTetraFluoroEthylene)でコーティングした樹脂層で被覆されている。
【0061】
上加熱源70Cの温度は、制御部10によって制御される。上加熱源70Cによって加熱ローラー72が加熱され、その結果、定着ベルト71が加熱される。これによって、記録媒体Pに形成されたトナーが加熱される。制御部10は、例えば、所定のデューティー比の半波単位のオン/オフパターンに基づいて上加熱源70Cを制御することで、トナーの定着温度を制御する。
【0062】
上加圧ローラー73は、例えば鉄等の金属から形成された中実の芯金を、弾性層で被覆したものである。弾性層の材質として、例えば、耐熱性のシリコンゴムを用いることができる。また、弾性層として、耐熱性のシリコンゴムを、低摩擦で耐熱性樹脂であるPTFEでコーティングした樹脂層で被覆した構成とすることができる。上加圧ローラー73は、記録媒体Pに用紙を定着させる定着部材である。
【0063】
{下側定着部}
下側定着部70Bは、記録媒体Pの剥離紙P4側に配置される裏面側支持部材を備える。本実施形態において、下側定着部70Bは、下加熱源70Dと共に、剥離紙P4に対向して、画像形成処理において剥離紙P4に作用する第2プロセス部材を構成する。
【0064】
下側定着部70Bは、裏面側支持部材を構成する下加圧ローラー74及び下加熱源70Dを備える(ローラー加圧方式)。下加圧ローラー74は、Al(アルミニウム)からなる基材層の外周面を弾性層で被覆したものである。弾性層の材質として、例えば、耐熱性のシリコンゴムを用いることができる。また、弾性層として、耐熱性のシリコンゴムを、表面離型層としてPFAチューブの樹脂層で被覆した構成とすることができる。
【0065】
下加熱源70Dは、ハロゲンヒーター等の加熱源が内蔵されている。当該加熱源が発熱することにより、下加圧ローラー74が加熱されて、記録媒体Pに形成されたトナーが加熱される。制御部10は、例えば、所定のデューティー比の半波単位のオン/オフパターンに基づいて加熱源を制御することで、トナーの定着温度を制御してもよい。
【0066】
下加圧ローラー74は、定着ベルト71を介して上加圧ローラー73に所定の定着荷重で圧接される。下加圧ローラー74は、このように、上加圧ローラー73と記録媒体Pを圧接される。上加圧ローラー73及び定着ベルト71と下加圧ローラー74との間には、記録媒体Pを狭持して搬送する定着ニップNPが形成される。
【0067】
下加圧ローラー74は、不図示のモーターやギアなどに接続され、当該モーターの駆動力が下加圧ローラー74に伝達されるようになっている。制御部10は、かかる下加圧ローラー74を駆動するモーターに駆動信号を出力して、下加圧ローラー74の周速度を制御する。
【0068】
(予備加熱部)
図1に戻って、予備加熱部80は、画像形成部50よりも搬送方向上流側に設けられ、画像形成前の記録媒体Pを必要に応じて加熱する。予備加熱部80は、表面加熱部81、裏面加熱部82、第1温度計測部83及び第2温度計測部84を備える。
【0069】
{表面加熱部、裏面加熱部}
表面加熱部81及び裏面加熱部82は、例えば、回転自在なアルミニウム製の伝熱性のスリーブの内部にハロゲンヒーターなどの加熱源が配置されたローラーである。表面加熱部81、裏面加熱部82は、それぞれ記録媒体Pの表面(表面基材P1)、裏面(剥離紙P4)を加熱する。
【0070】
{第1温度計測部、第2温度計測部}
第1温度計測部83は、表面加熱部81及び裏面加熱部82よりも搬送方向上流側に設けられる。第1温度計測部83は、表面加熱部81及び裏面加熱部82の加熱前の記録媒体Pの表面温度を非接触方式で計測して、当該計測結果を制御部10に出力する。第2温度計測部84は、表面加熱部81及び裏面加熱部82よりも搬送方向下流側に設けられる。第2温度計測部84は、表面加熱部81及び裏面加熱部82の加熱後の記録媒体Pの表面温度を非接触方式で計測して、当該計測結果を制御部10に出力する。
【0071】
[画像形成処理]
次に、本実施形態の画像形成装置1による記録媒体Pへの画像形成処理について説明する。
図5は、画像形成処理の概略の流れを示すフローチャートである。
【0072】
初めに、制御部10は、入力画像データを取得する(ステップS101)。上記したように、入力画像データは、例えば画像読取部20によって原稿から取得できる。あるいは、入力画像データは、例えば通信部15によって外部装置から取得できる。
【0073】
また、制御部10は、記録媒体Pの情報を取得する(ステップS102)。本実施形態において、制御部10は、操作表示部30より記録媒体Pの情報を取得する。
【0074】
制御部10は、記録媒体Pの種類及び厚み等を設定入力可能な、例えば
図6Aに示すような設定変更画面を表示部31に表示させる。ユーザーは、表示された記録媒体Pの情報に相違が無ければ、操作部32の操作により承認する。他方で、例えば表示された記録媒体Pの種類に相違があった場合、ユーザーは、操作部32の操作により、
図6Bに示すような記録媒体種類設定画面を表示部31に表示させて、表面基材P1の種類を含む記録媒体Pの種類を指定する。記録媒体種類設定画面において、記録媒体が多層構造である(タック紙である)と指定された場合、制御部10は、
図6Cに示すような剥離紙種類設定画面を表示部31に表示させる。そしてユーザーは、操作部32の操作により、記録媒体Pの剥離紙P4の種類を指定する。このようにして、制御部10は、記録媒体Pの表面基材P1と、剥離紙P4の情報を取得する。
【0075】
記録媒体Pの情報の取得後、制御部10は、記録媒体搬送部60により、記録媒体Pの搬送を開始する(ステップS103)。ここで、制御部10は、第1温度計測部83から記録媒体Pの表面温度を取得する。そして、制御部10は、ステップS102で取得した記録媒体Pの情報及び当該表面温度に応じて、表面加熱部81及び/又は裏面加熱部82により記録媒体Pを加熱する。表面加熱部81及び/又は裏面加熱部82で加熱した場合、制御部10は、第2温度計測部84から加熱後の記録媒体Pの表面温度を取得する。
【0076】
そして、制御部10は、記録媒体Pの表面温度を含む、取得した記録媒体Pの情報に基づいて、プロセス部材の物理特性を調整する(ステップS104)。詳細には、本実施形態において、制御部10は、表面基材P1の種類に基づいて、上加圧ローラー73(上加熱源70C)の温度を調整する。また、制御部10は、剥離紙P4の種類に基づいて、下加圧ローラー74(下加熱源70D)の温度を調整する。
【0077】
図7A及び
図7Bに、表面基材(上紙)P1及び剥離紙P4の種類に基づく上加圧ローラー73及び下加圧ローラー74の温度設定テーブルの一例を示す。なお、
図7Aは、記録媒体Pの温度が20℃以上である場合の温度設定テーブルであり、
図7Bは、記録媒体Pの温度が20℃未満である場合の温度設定テーブルである。
【0078】
図7A及び
図7Bに示すように、制御部10は、例えば表面基材P1及び/又はP4がPETである場合は、紙である場合よりも、上加圧ローラー73及び/又は下加圧ローラー74の温度が高くなるように上加熱源70C及び/又は下加熱源70Dを制御する。PETは紙に比べて熱伝導率が高く、上加圧ローラー73又は下加圧ローラー74でPETを加熱しても熱が表面基材P1から剥離紙P4に伝達しやすく、表面基材P1の表面温度である定着温度が低下して画像定着性が低下するからである。
【0079】
また、
図7A及び
図7Bに示すように、制御部10は、記録媒体Pの温度が20℃未満である場合は、20℃以上である場合に比べて、上加圧ローラー73の温度が高くなるように上加熱源70Cを制御する。記録媒体Pの温度が低い場合は、上加圧ローラー73で記録媒体Pを加熱しても定着温度が上がりきらず、画像定着性が低下するからである。
【0080】
また、制御部10は、
図7C及び
図7Dに示すように、表面基材P1及び剥離紙P4の紙種のみならず、表面基材P1及び剥離紙P4の坪量及び厚みに基づいて両プロセス部材の温度を補正する。また、表面基材P1又は剥離紙P4の坪量及び厚みが既知であると、表面基材P1又は剥離紙P4の種類に基づく比熱及び密度から熱容量が算出可能である。そのため、制御部10は、算出した表面基材P1及び/又は剥離紙P4の熱容量の高さに応じて、上加圧ローラー73及び/又は下加圧ローラー74の温度が高くなるように上加熱源70C及び/又は下加熱源70Dを制御する。なおこの時、制御部10は、表面基材P1又は剥離紙P4の熱容量のみならず、熱伝導率の高さにも応じて、プロセス部材の温度を制御するのがより好ましいが、これに限られない。
【0081】
ただし、記録媒体Pの表面温度が20℃未満であって、かつ、表面基材P1がPETであり、剥離紙P4が紙である場合は、上加圧ローラー73及び下加圧ローラー74の温度を制御しても、十分な定着温度とすることができない。そこで、制御部10は、
図7Bに示すように、ステップS103において、表面加熱部81により記録媒体Pが20℃以上となるように加熱することで、上加圧ローラー73及び下加圧ローラー74の温度不足を補助する。同様に、制御部10は、紙温度が20℃未満かつ、表面基材P1及び剥離紙P4がPETである場合は、ステップS103において、表面加熱部81及び裏面加熱部82により記録媒体Pを所定温度に加熱する。
【0082】
プロセス部材の調整後、制御部10は、画像形成部50により、記録媒体Pに画像を形成する(ステップS105)。画像の形成後、制御部10は、記録媒体Pを定着部70に搬送させることで画像を定着させ(ステップS106)、排紙部62に排紙する。なお、画像形成部50による記録媒体Pへの画像形成方法及び画像定着方法は、従来公知の方法と同様であるため、上記したように詳細な説明は省略する。
【0083】
[第1実施形態の効果]
以上に示したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、多層構造の記録媒体Pに画像を形成する画像形成部50と、記録媒体Pの情報を取得する取得部として機能する制御部10を備える。また、画像形成装置1は、記録媒体Pの画像が形成される表面基材P1側から記録媒体Pに物理的に作用する第1のプロセス部材として機能する上側定着部70Aを備える。また、画像形成装置1は、表面基材P1と反対側の剥離紙P4側から記録媒体Pに物理的に作用する第2のプロセス部材として機能する下側定着部70Bを備える。そして、制御部10は、取得した表面基材P1の特性に基づいて、少なくとも上側定着部70Aの温度を調整する。また、制御部10は、剥離紙P4の特性に基づいて、少なくとも下側定着部70Bの温度を調整する。当該構成によれば、多層構造の記録媒体Pの表面基材P1及び剥離紙P4の特性に合わせた適切な温度で定着処理ができ、画像形成された多層構造の記録媒体Pの提供に対してより適切な処理ができる。
【0084】
また、制御部10は、第1のプロセス部材及び第2のプロセス部材の物理量を別々に制御する。具体的には、制御部10は、上加圧ローラー73及び下加圧ローラー74の温度を別々に制御する。当該構成によれば、多層構造の記録媒体Pへの画像形成に際して、定着温度をより適切に制御できる。
【0085】
また、制御部10は、表面基材P1及び/又は剥離紙P4の熱伝導率や熱容量の高さに応じて第1のプロセス部材及び/又は第2のプロセス部材の温度が高くなるように制御する。当該構成によれば、定着温度が低下して充分な画像定着性を得られなくなるのを防ぐことができる。
【0086】
また、上加圧ローラー73及び下加圧ローラー74よりも搬送方向上流側で記録媒体Pを加熱する予備加熱部80を備える。そして、制御部10は、上加圧ローラー73及び下加圧ローラー74の温度不足を補助するように予備加熱部80の温度を制御する。当該構成によれば、定着温度が低下して充分な画像定着性を得られなくなるのを防ぐことができる。
【0087】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る画像形成装置1について、
図8を元に説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。第2実施形態の画像形成装置1は、
図8に示すように、検知部90を備える点が第1実施形態と相違する。また、画像形成処理のステップS102において、制御部10が検知部90の検知結果から記録媒体Pの情報を取得する点が第1実施形態と相違する。
【0088】
(検知部)
検知部90は、例えば予備加熱部80及び画像形成部50よりも上流側に設けられ、搬送された記録媒体Pの物性を検知する。検知部90は、例えば記録媒体Pの密度、透気度、剛気、電気抵抗、厚み、平滑性及び平滑度等を検知する。そして、検知部90は、検知した記録媒体Pの物性値を制御部10に送信する。制御部10は、取得した物性値に基づいて、記録媒体Pの坪量や紙種等を導出して、上側定着部70A及び下側定着部70Bの温度を調整する。
【0089】
[第2実施形態の効果]
以上に示したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、記録媒体Pの少なくとも表面基材P1及び剥離紙P4の特性の情報を検知可能な検知部90を備える。当該構成によれば、ユーザーが操作表示部30で操作入力をせずとも記録媒体Pの情報を取得でき、手間をかけずとも第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
なお、検知部90による検知は、画像形成処理の前であっても、画像形成処理中であっても構わない。
【0091】
[変形例]
以上、本発明に係る実施の形態に基づいて具体的に説明を行ったが、本発明が上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明が、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む様々な変更が可能であるのはもちろんである。
【0092】
例えば上記においては、制御部10が記録媒体Pの温度に応じてプロセス部材の温度を制御する構成を例示したが、これに限られない。制御部10は、記録媒体Pの温度のみならず、環境温度にも基づいてプロセス部材の温度を制御してもよい。当該構成とすることで、定着温度をより適切に制御できる。また、制御部10は、環境温度のみに基づいてプロセス部材の温度を制御してもよい。
【0093】
また、上記においては、記録媒体Pがロール状の連続紙である場合を例示したが、これに限られず、枚葉紙であってもよい。記録媒体Pが枚葉紙である場合は、紙間において、上加圧ローラー73の熱が下加圧ローラー74に伝熱する。そのため、上加圧ローラー73の温度は、記録媒体Pがロール状の連続紙である場合と比較して、相対的に低く設定してよい。
【0094】
また、上記においては、記録媒体Pが20℃未満であり、所定の紙種である場合に20℃以上となるように加熱する構成として予備加熱部80を例示したが、これに限られない。すなわち、表面加熱部81及び裏面加熱部82をそれぞれ第1、第2のプロセス部材として、記録媒体Pの情報や環境温度に基づいて、記録媒体Pの温度を制御する構成としてもよい。
【0095】
また、上記においては、画像形成部50よりも搬送方向上流側に設けた電荷調整装置をプロセス部材として、記録媒体Pの情報に基づいて、物理特性として除電や電荷を調整する構成としてもよい。また、画像形成部50よりも搬送方向下流側に設けた冷却装置をプロセス部材として、記録媒体Pの情報に基づいて、物理特性として冷却温度を調整する構成としてもよい。また、画像形成部50よりも搬送方向下流側に設けたデカーラーをプロセス部材として、記録媒体Pの情報に基づいて、物理特性としてデカーラー条件を調整する構成としてもよい。
【0096】
なお、上記したこれらの構成においては、プロセス部材の物理特性を調整するステップS104と記録媒体Pに画像を形成するステップS105の順番を入れ替えてもよい。
【0097】
また、上記においては、表面加熱部81及び裏面加熱部82が、記録媒体Pに直接接触することで加熱する、接触式の加熱部材である場合を例示したが、これに限られない。表面加熱部81及び裏面加熱部82は、例えば温風装置等の、非接触式の加熱部材でも構わない。
【0098】
また、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用する例を開示したが、これに限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用できる。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0099】
1 画像形成装置
10 制御部(取得部)
32 操作部
50 画像形成部
70A 上側定着部(第1のプロセス部材)
70B 下側定着部(第2のプロセス部材)
73 上加圧ローラー(定着部材)
74 下加圧ローラー(加圧部材)
80 予備加熱部
81 表面加熱部(第1のプロセス部材)
82 裏面加熱部(第2のプロセス部材)
90 検知部
P 記録媒体
P1 表面基材(第1面側の最上層)
P4 剥離紙(第2面側の最上層)