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特開2025-9911誘導システム、推定システム、誘導方法、推定方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009911
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】誘導システム、推定システム、誘導方法、推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/00 20110101AFI20250109BHJP
【FI】
A01M29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096053
(22)【出願日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2023106864
(32)【優先日】2023-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501273886
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立環境研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】小熊 宏之
(72)【発明者】
【氏名】徳永 幸彦
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121AA07
2B121DA17
2B121DA33
2B121DA51
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA13
2B121FA16
(57)【要約】
【課題】鳥獣害を防ぎたい場所から鳥獣を追い出し、鳥獣が生息可能な場所へ鳥獣を誘導すること。
【解決手段】誘導システムは、複数の威嚇/誘引動作部と、複数の検出部と、取得部と、決定部と、動作/誘引制御部とを備える。複数の威嚇/誘引動作部は、複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を威嚇/誘引する。複数の検出部は、前記複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を検出する。取得部は、前記複数の検出部のうち一の検出部によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置を示す位置情報を取得する。決定部は、前記位置情報に基づいて、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する。動作制御部は、前記一の誘導パターンに基づく威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を威嚇/誘引する複数の威嚇/誘引動作部と、
前記複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を検出する複数の検出部と、
前記複数の検出部のうち一の検出部によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置を示す位置情報を取得する取得部と、
前記位置情報に基づいて、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する決定部と、
前記一の誘導パターンに基づく威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる動作制御部と、
を備える誘導システム。
【請求項2】
前記位置情報から特定されるエリアについて、威嚇/誘引態様に応じた鳥獣の移動方向を推定する方向推定部を備え、
前記決定部は、前記方向推定部によって推定された前記移動方向に基づいて、前記一の誘導パターンを決定する、
請求項1に記載の誘導システム。
【請求項3】
前記方向推定部は、前記位置情報と、前記特定されるエリアへの鳥獣の侵入方向を示す情報と、威嚇/誘引態様を示す情報とに基づいて、前記移動方向を推定する、
請求項2に記載の誘導システム。
【請求項4】
威嚇/誘引による効果が異なる複数種類の威嚇/誘引態様のうち、威嚇/誘引の効果が高い威嚇/誘引態様を推定する威嚇/誘引態様推定部を備え、
前記動作制御部は、前記威嚇/誘引態様推定部によって推定された威嚇/誘引の効果が高い威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の誘導システム。
【請求項5】
実際に威嚇/誘引の効果が認められた複数の威嚇/誘引態様に基づいて、前記複数の威嚇/誘引態様の特徴を有する新たな威嚇/誘引態様を生成する威嚇/誘引態様生成部を備え、
前記動作制御部は、前記威嚇/誘引態様生成部によって生成された新たな威嚇/誘引態様に変更して前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の誘導システム。
【請求項6】
複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を威嚇/誘引する複数の威嚇/誘引動作部と、
前記複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を検出する複数の検出部と、
に接続する管理装置が、
前記複数の検出部のうち一の検出部によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置を示す位置情報を取得する取得工程と、
前記位置情報に基づいて、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する決定工程と、
前記一の誘導パターンに基づく威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる動作制御工程と、
を含む処理を実行する誘導方法。
【請求項7】
複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を威嚇/誘引する複数の威嚇/誘引動作部と、
前記複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を検出する複数の検出部と、
に接続する管理装置のコンピュータを、
前記複数の検出部のうち一の検出部によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置を示す位置情報を取得する取得部、
前記位置情報に基づいて、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する決定部、
前記一の誘導パターンに基づく威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる動作制御部、
として機能させるプログラム。
【請求項8】
各種の動物が生息する複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで対象種を検出する複数の検出部と、
前記複数の検出部のうち一の検出部によって前記対象種が検出された場合、当該対象種の位置を示す位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記位置情報に基づいて、前記対象種の移動経路を推定する推定部と、
を備える推定システム。
【請求項9】
前記複数の検出部は、それぞれ前記対象種の挙動を検出し、
前記取得部は、前記対象種の挙動を含む検出結果を取得し、
前記推定部は、前記位置情報と前記検出結果とに基づいて、前記対象種の移動経路を推定する、
請求項8に記載の推定システム。
【請求項10】
前記複数の検出部は、それぞれ、前記動物を検出する第1検出器と、前記対象種の挙動を検出する第2検出器と、を含み、
前記第1検出器によって検出された前記動物が前記対象種である場合に、前記第2検出器を起動させる、
を含む請求項9に記載の推定システム。
【請求項11】
前記複数の検出部は、それぞれ複数種類の検出器を含み、前記複数種類の検出器によって検出された複数の前記検出結果に基づいて、前記対象種の検出と、前記対象種の挙動の検出とを行い、
前記取得部は、前記複数の前記検出結果を取得し、
前記推定部は、前記位置情報と前記複数の前記検出結果とに基づいて、前記対象種の移動経路を推定する、
請求項9に記載の推定システム。
【請求項12】
各種の動物が生息する複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで対象種を検出する複数の検出部に接続する管理装置が、
前記複数の検出部のうち一の検出部によって前記対象種が検出された場合、当該対象種の位置を示す位置情報を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された前記位置情報に基づいて、前記対象種の移動経路を推定する推定工程と、
を含む処理を実行する推定方法。
【請求項13】
各種の動物が生息する複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで対象種を検出する複数の検出部に接続する管理装置のコンピュータを、
前記複数の検出部のうち一の検出部によって前記対象種が検出された場合、当該対象種の位置を示す位置情報を取得する取得部、
前記取得部によって取得された前記位置情報に基づいて、前記対象種の移動経路を推定する推定部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導システム、推定システム、誘導方法、推定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鳥獣による農林水産業等への被害が生じている。鳥獣による被害は、農林水産業への被害のみならず、自然生態系への悪影響も含まれる。自然生態系への悪影響には、例えば、希少植物が生息する国立公園等に鳥獣が侵入し、当該鳥獣によって希少植物が食べられてしまうといったことを含む。さらに、今後見込まれる人口減少や、里山の衰退等により、野生動物と人間との軋轢が深刻化することが懸念される。例えば、野生動物が人間の生活圏に侵入することによって、人獣共通感染症のリスクなども懸念される。
【0003】
鳥獣に対する対策として、監視カメラが鳥獣を撮影すると、鳥獣の種別と撮像の開始日時と終了日時とに応じた追い払いパターン情報に基づいて、威嚇をおこなうシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-205033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、鳥獣害を防ぎたい場所から鳥獣を追い出して、鳥獣が生息可能な場所へ誘導することができない、という問題があった。また、むやみ追い払うだけでは、持続的な追い払い効果が期待できない、という問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、鳥獣害を防ぎたい場所から鳥獣を追い出し、鳥獣が生息可能な場所へ誘導することができるとともに、持続的な追い払い効果を得ることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る誘導システムは、複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を威嚇/誘引する複数の威嚇/誘引動作部と、前記複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を検出する複数の検出部と、前記複数の検出部のうち一の検出部によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置を示す位置情報を取得する取得部と、前記位置情報に基づいて、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する決定部と、前記一の誘導パターンに基づく威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる動作制御部と、を備える誘導システムである。
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る誘導方法は、複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を威嚇/誘引する複数の威嚇/誘引動作部と、前記複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を検出する複数の検出部と、に接続する管理装置が、前記複数の検出部のうち一の検出部によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置を示す位置情報を取得する取得工程と、前記位置情報に基づいて、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する決定工程と、前記一の誘導パターンに基づく威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる動作制御工程と、を含む処理を実行する誘導方法である。
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係るプログラムは、複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を威嚇/誘引する複数の威嚇/誘引動作部と、前記複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで鳥獣を検出する複数の検出部と、に接続する管理装置のコンピュータを、前記複数の検出部のうち一の検出部によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置を示す位置情報を取得する取得部、前記位置情報に基づいて、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する決定部、前記一の誘導パターンに基づく威嚇/誘引態様で、前記複数の威嚇/誘引動作部をそれぞれ動作させる動作制御部、として機能させるプログラムである。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る推定システムは、各種の動物が生息する複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで対象種を検出する複数の検出部と、前記複数の検出部のうち一の検出部によって前記対象種が検出された場合、当該対象種の位置を示す位置情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記位置情報に基づいて、前記対象種の移動経路を推定する推定部と、を備える推定システムである。
上記の動物は、鳥獣害を及ぼす生き物や、絶滅危惧種を含み、さらに、例えば、カエルなどの両生類、ヘビなどの爬虫類、チョウなどの昆虫類、ブラックバスなどの魚類などを含む。
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る推定方法は、各種の動物が生息する複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで対象種を検出する複数の検出部に接続する管理装置が、前記複数の検出部のうち一の検出部によって前記対象種が検出された場合、当該対象種の位置を示す位置情報を取得する取得工程と、前記取得工程において取得された前記位置情報に基づいて、前記対象種の移動経路を推定する推定工程と、を含む処理を実行する推定方法である。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係るプログラムは、各種の動物が生息する複数のエリアにそれぞれ配置され、各エリアで対象種を検出する複数の検出部に接続する管理装置のコンピュータを、前記複数の検出部のうち一の検出部によって前記対象種が検出された場合、当該対象種の位置を示す位置情報を取得する取得部、前記取得部によって取得された前記位置情報に基づいて、前記対象種の移動経路を推定する推定部、として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鳥獣害を防ぎたい場所から鳥獣を追い出し、鳥獣が生息可能な場所へ誘導することができるとともに、持続的な追い払い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る誘導システムのネットワーク構成を示す説明図である。
図2】誘導装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】管理装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図5】誘導システムにおける動作を示すシーケンス図である。
図6】鳥獣が威嚇ゾーンに侵入してから、誘引ゾーンへ誘導する際の動作を示す図である。
図7】第1学習済モデルの一例を示す説明図である。
図8】第2学習済モデルの一例を示す説明図である。
図9】行動モデルの一例を示す説明図である。
図10】行動モデルを用いた管理装置の動作を示すフローチャートである。
図11】管理装置による価値関数の学習処理を示すフローチャートである。
図12】変形例1に係る誘導システムのネットワーク構成を示す説明図である。
図13】第2実施形態に係る推定システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
図14】第2実施形態に係る検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図15】第2実施形態の動物推定システムにおける動作を示すシーケンス図である。
図16】対象種の推定に係る第3学習済モデルの一例を示す説明図である。
図17】対象種の推定に係る第4学習済モデルの一例を示す説明図である。
図18】管理装置20が行う移動経路の推定に係る第5学習済モデルの一例を示す説明図である。
図19】利用エリアの推定結果の一例を示す図である。
図20】対象種の推定に係る第6学習済モデルの一例を示す説明図である。
図21】移動経路の推定に係る第7学習済モデルの一例を示す説明図である。
図22】移動経路の推定に係る第8学習済モデルの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
(誘導システム1のネットワーク構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る誘導システム1のネットワーク構成を示す説明図である。誘導システム1は、例えば、田畑、国立公園、里山など、鳥獣による被害が懸念される場所に導入される。誘導システム1が導入される場所は、威嚇ゾーン30aと、誘引ゾーン30bとを含む。威嚇ゾーン30aは、鳥獣を存在させないようにする領域であり、例えば、人間が生活する領域や、特定の国立公園などである。鳥獣は、例えば、鳥獣害を及ぼす生き物であり、例えば、シカ、サル、イノシシ、クマなどの動物や、カラス、スズメ、カモなどの鳥を含む。なお、鳥獣は、これらに限らない。例えば、鳥獣害を防ぐ目的以外に、保護対象の鳥獣を保護区内に誘導する目的で本誘導システム1を用いる場合には、鳥獣は、トキやコウノトリといった絶滅危惧種を含む。威嚇ゾーン30aは、複数の威嚇エリア40a~40iを含む。
【0016】
誘引ゾーン30bは、威嚇ゾーン30aから鳥獣を誘引する領域である。誘引ゾーン30bは、鳥獣の存在が許容され、かつ鳥獣が棲みつきやすい領域である。例えば、誘引ゾーン30bは、人間活動が少なく、餌資源が豊富な森林である。誘引ゾーン30bは、複数の誘引エリア40j~40oを含む。
【0017】
なお、図示では、威嚇ゾーン30aおよび誘引ゾーン30bは、説明の便宜上、特定の鳥獣(例えばシカ)を対象とした領域を示している。なお、威嚇ゾーン30aおよび誘引ゾーン30bは、鳥獣の種類に応じて、それぞれ異なる(可変となる)領域とすることが可能である。すなわち、シカに対して威嚇ゾーン30aとする場所でも、他の鳥獣に対しては威嚇ゾーン30aとはならないこともある。また、シカに対して誘引ゾーン30bとする場所でも、他の鳥獣に対しては誘引ゾーン30bとはならないこともある。
【0018】
誘導システム1は、複数の誘導装置10と、管理装置20とを備える。各装置は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などのネットワーク50を介して、有線または無線により接続されている。各装置は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信部などを備えたコンピュータ装置である。
【0019】
複数の誘導装置10は、威嚇ゾーン30aおよび誘引ゾーン30bの各エリア40にそれぞれ配置される。威嚇ゾーン30aに配置される誘導装置10は、鳥獣を威嚇して、自装置が配置されるエリア40から他のエリア40へ鳥獣を追い出す。一方、誘引ゾーン30bに配置される誘導装置10は、鳥獣を誘引するようにし、自装置が配置されるエリア40に鳥獣を留めさせる。
【0020】
誘導装置10は、検出部11と、威嚇/誘引動作部12とを備える。検出部11は、自装置が配置されるエリア40内を撮像するカメラを備え、カメラによって撮像された撮像データに基づいて、エリア40内に侵入した鳥獣を検出する。なお、検出部11は、カメラを用いて鳥獣を検出することに代えて又は加えて、マイクロフォン、マイクロフォンアレイを用いて鳴き声等を検出してもよいし、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダー、赤外線センサー、サーマルカメラを用いて鳥獣を検出してもよい。検出部11によって鳥獣が検出されると、誘導装置10は、鳥獣が侵入した旨の通知(鳥獣侵入通知)を管理装置20へ送信する。
【0021】
威嚇ゾーン30aに配置される威嚇/誘引動作部12は、鳥獣を威嚇することによって、自装置が配置されるエリア40から他のエリア40へ鳥獣を追い出す。威嚇は、鳥獣ごとに異なる威嚇態様で行われる。威嚇は、例えば、音と光の組み合わせによって行われる。具体的には、威嚇態様は、音の周波数、音の出力間隔、光の色、光の出力間隔などのほか、指向性スピーカを用いた音の出力方向や、レーザー光を用いた照射方向を含む。すなわち、威嚇態様は、所定の音の態様と、所定の発光態様とを組み合わせたものである。また、威嚇態様は、音や光を出力しない態様を含む。
【0022】
なお、威嚇は、音や光に限らず、振動(例えば木や水の振動)、映像の表示、物体の投てき、放水などであってもよいし、これら各種の組み合わせてとしてもよいし、これらのうちの一種類としてもよい。すなわち、威嚇は、例えば、音のみとしてもよいし、光のみとしてもよい。
【0023】
誘引ゾーン30bに配置される威嚇/誘引動作部12は、鳥獣を誘引する誘引態様(鳥獣を引き寄せるような態様)で音や光を出力する。例えば、誘引態様は、餌の存在を知らせる自種の鳴き声などである。また、誘引態様は、音や光を出力しない態様を含む。なお、誘引は、音や光に限らず、振動(例えば木や水の振動)、映像の表示、物体(例えば餌)の投てき、放水などであってもよいし、これら各種の組み合わせてとしてもよいし、これらのうちの一種類としてもよい。すなわち、誘引は、例えば、音のみとしてもよいし、光のみとしてもよい。
【0024】
管理装置20は、パソコン(personal computer)やサーバなどのコンピュータ装置である。管理装置20は、威嚇ゾーン30aの誘導装置10によってエリア40内に鳥獣が検出されると、鳥獣の位置および鳥獣の種類に基づいて、誘導パターンを決定し、決定した誘導パターンを複数の誘導装置10へ送信する。複数の誘導装置10は、誘導パターンを受信すると、当該誘導パターンに基づいて、それぞれ協調して威嚇または誘引を行う。これにより、威嚇ゾーン30a内の鳥獣を誘引ゾーン30bへ誘導する。
【0025】
(誘導装置10の構成例)
図2は、誘導装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。誘導装置10は、CPU101と、メモリ102と、通信部103と、音声制御部104と、発光制御部105と、検出部11とを備える。各部は、バス110を介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
CPU101は、中央演算処理装置であり、メモリ102に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより、誘導装置10の動作を制御する。各種プログラムは、第1実施形態に係る誘導動作プログラムを含む。誘導動作プログラムは、鳥獣の種別を判別するプログラムや、威嚇/誘引動作部12に所定の誘導態様(威嚇/誘引態様:威嚇態様または誘引態様)で動作を行わせるプログラムを含む。
メモリ102は、ROM、RAM、ハードディスクなどの記憶部である。メモリ102は、各種プログラムをはじめとしてCPU101が実行する各種の情報を記憶する。また、メモリ102は、検出部11によって撮像された撮像結果(例えば、動画および音声)を記憶(録画)してもよい。
通信部103は、他の装置(例えば、管理装置20)と情報を送受信するインターフェースである。
【0027】
音声制御部104は、威嚇/誘引動作部12に含まれる。音声制御部104は、音声出力部から音を出力させる。音声制御部104は、威嚇態様として、鳥獣が忌避する音を出力させることが可能であるとともに、誘引態様として、鳥獣を誘引する音を出力させることが可能である。また、音声制御部104は、音の出力のみならず、音を出力させる方向についても制御することも可能である。
【0028】
発光制御部105は、威嚇/誘引動作部12に含まれる。発光制御部105は、例えば、レーザー光の照射、フラッシュ、LED(Light Emitting Diode)の点灯によって、威嚇態様として、鳥獣が忌避する発光態様で発光部を発光させることが可能であるとともに、誘引態様として、鳥獣が好む発光態様で発光部を発光させることが可能である。また、発光制御部105は、発光部の発光態様のみならず、発光させる方向についても制御することも可能である。なお、音声出力部および発光部は、自装置が配置されるエリア40に複数台配置されていてもよい。
【0029】
検出部11は、CCD(charge coupled device)カメラや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラを備える。なお、検出部11は、誘導装置10に具備されることに限らず、誘導装置10とは別に設けられていてもよい。また、検出部11は、自装置が配置されるエリア40に複数台配置されていてもよい。また、検出部11として、マイクやマイクロフォンアレイ等のカメラ以外を用いる場合には、これらについても、自装置が配置されるエリア40に複数台配置されていてもよい。
【0030】
(管理装置20の構成例)
図3は、管理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。管理装置20は、CPU201と、メモリ202と、通信部203と、入力デバイス204と、出力デバイス205とを備える。各部は、バス210を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU201は、中央演算処理装置であり、メモリ202に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより、管理装置20の動作を制御する。各種プログラムは、第1実施形態に係る鳥獣誘導プログラムを含む。鳥獣誘導プログラムは、後述する各種モデルを用いて、威嚇ゾーン30a内の鳥獣を誘引ゾーン30bに誘導するための最適な誘導パターンを決定するプログラムを含む。
メモリ202は、ROM、RAM、ハードディスクなどである。メモリ202は、各種プログラムをはじめとしてCPU201が実行する各種の情報を記憶する。
【0032】
通信部203は、他の装置(例えば、誘導装置10)と情報を送受信するインターフェースである。
入力デバイス204は、例えば、キーボード、マウス、マイクなどを含み、各種情報を入力する。
出力デバイス205は、ディスプレイ、スピーカなどを含み、各種情報を出力する。
なお、管理装置20がサーバ装置によって実現される場合、管理装置20は、入力デバイス204および出力デバイス205を備えなくてもよい。
【0033】
(管理装置20の機能的構成)
図4は、管理装置20の機能的構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、管理装置20は、取得部401と、方向推定部402と、決定部403と、動作制御部404と、威嚇/誘引態様推定部405と、威嚇/誘引態様生成部406との各機能部を備える。各機能部は、CPU201によって実現される。すなわち、CPU201が鳥獣誘導プログラムを実行することにより、各機能部を実現する。
【0034】
以下では、図5および図6を参照しつつ、図4に示す各機能部を説明する。
図5は、誘導システム1における動作を示すシーケンス図である。図5に示す各装置の各処理は、各装置の制御周期で行われる。
図6は、鳥獣が威嚇ゾーン30aに侵入してから、誘引ゾーン30bへ誘導する際の動作を示す図である。なお、以下では、説明を簡略化するため、特定の種別の鳥獣(例えばシカ)一頭について、鳥獣を誘引ゾーン30bへ誘導する例について説明する。また、威嚇ゾーン30a内の誘導装置10をそれぞれ同じ威嚇態様で動作させるものとし、誘引ゾーン30b内の誘導装置10をそれぞれ同じ誘引態様(例えば、シカを誘引する音など)として説明する。
【0035】
ステップS501:威嚇ゾーン30a内の誘導装置10は、カメラの撮像データに基づいて鳥獣の威嚇ゾーン30aへの侵入を検出したか否かを判断する。鳥獣の侵入を検出しない場合(ステップS501:NO)、誘導装置10は、ステップS506に進む。
【0036】
ステップS502:鳥獣の侵入を検出した場合(ステップS501:YES)、誘導装置10は、鳥獣の侵入を示す鳥獣侵入通知を管理装置20へ送信する。例えば、図6に示すように、威嚇エリア40fに配置される誘導装置10が鳥獣600を検出したとする。威嚇エリア40fの誘導装置10は、鳥獣侵入通知を管理装置20へ送信する。鳥獣侵入通知は、鳥獣600の種類を示す情報(例えば、シカを示す情報)や、鳥獣600の位置情報や、鳥獣600が侵入してきた方向(侵入方向)を含む。鳥獣600の位置情報は、例えば、鳥獣600を検出した誘導装置10の位置情報である。誘導装置10の位置情報は、予め誘導装置10に記憶されているものとする。このように、誘導装置10は、鳥獣600の侵入を検出する機能、および鳥獣の種別を判別する機能を有する。
【0037】
なお、ステップS501における鳥獣600の検出および種別の判別に係る機能は、管理装置20に具備されていてもよい。具体的には、管理装置20は、誘導装置10から撮像データおよび誘導装置10の位置情報を受信するようにし、受信した撮像データを画像解析することによって、鳥獣600の侵入や鳥獣の種類を特定するようにしてもよい。
【0038】
ステップS503:管理装置20は、誘導装置10から鳥獣侵入通知を受信したか否かを判断する。誘導装置10から鳥獣侵入通知を受信しない場合(ステップS503:NO)、管理装置20は、ステップS510に進む。
【0039】
ステップS504a:管理装置20は、鳥獣侵入通知が示す鳥獣の種類に応じた各ゾーン30(威嚇ゾーン30aおよび誘引ゾーン30b)を決定する。すなわち、あるエリア40について、ある鳥獣600については威嚇ゾーン30aに含まれることとなる場合があり、一方で、別の鳥獣600については誘引ゾーン30bに含まれることとなる場合がある。例えば、エリア40を市街地とすると、当該エリア40は、カラスについては存在してもよいことから誘引ゾーン30bに含まれることになり、一方で、イノシシについては存在してはならないことから威嚇ゾーン30aに含まれることになる。各ゾーン30の決定方法は、例えば、ユーザが管理装置20に設定した鳥獣600の種別ごとのエリア境界を用いて決定する方法や、検出部11のカメラを用いることによって農作物の収穫状況を管理装置20が自動判別して決定する方法などが挙げられる。
【0040】
ステップS504b:管理装置20は、威嚇エリア40a~40iおよび誘引エリア40j~40oごとに、過去に威嚇ゾーン30aに侵入した鳥獣600が、どのように進んでいったかといった履歴や、各エリアの地理情報(地形や土地被覆)に基づいて、威嚇/誘引態様および誘導パターンに応じて鳥獣600がどの方向へ移動していくかを予測する。具体的に説明すると、管理装置20がいずれかの誘導装置10から鳥獣侵入通知を受信することにより(ステップS503:YES)、取得部401は、鳥獣600の種類を示す情報や、鳥獣600の位置を示す情報や、鳥獣600の侵入方向を示す情報を取得する。そして、決定部403は、鳥獣600ごとに、鳥獣600の位置情報と、方向推定部402によって推定される移動方向とに基づいて、複数の威嚇/誘引動作部12をそれぞれ動作させる誘導パターンのうち一の誘導パターンを決定する。具体的には、決定部403は、後述する価値関数を用いて、一の誘導パターンを決定する。誘導パターンは、複数の威嚇/誘引動作部12について、それぞれの動作の有無や、それぞれの威嚇/誘引態様を含む。図6に示す誘導パターンは、例えば、エリア40e、40dに配置される威嚇/誘引動作部12に威嚇を行わせないようにし、それ以外の威嚇/誘引動作部12に威嚇/誘引を行わせようにするパターンを示している。
【0041】
なお、鳥獣600がエリア40eへ移動したとすると、決定部403は、例えば、エリア40eに配置される誘導装置10についても威嚇態様で動作をさせる誘導パターンを決定する。これにより、当該誘導装置10は、エリア40fから侵入してきた鳥獣600を、エリア40eからエリア40dへ追い出すことができる。さらに、鳥獣600がエリア40dに移動したとすると、決定部403は、例えば、エリア40dに配置される誘導装置10についても威嚇態様で動作をさせる誘導パターンを決定する。これにより、当該誘導装置10は、エリア40eから侵入してきた鳥獣600を、エリア40dからエリア40m(誘引ゾーン30b)へ追い出すことができる。
【0042】
なお、後述する価値関数の学習において、方向推定部402は、取得部401によって取得された位置情報からエリア40を特定する。そして、方向推定部402は、特定したエリア40について、鳥獣600の侵入方向および威嚇/誘引態様(音と光の態様)に応じた鳥獣600の移動方向を推定する。具体的には、方向推定部402は、後述する第2学習済モデル800(図8)を用いて、鳥獣600の移動方向を推定する。例えば、方向推定部402は、図6に示すように、鳥獣600がエリア40fからエリア40eへ移動することを推定する。また、移動方向の推定に用いられる威嚇/誘引態様は、威嚇/誘引態様推定部405によって推定された威嚇/誘引の効果(誘導の効果)の高い態様である。なお、威嚇/誘引態様推定部405は、後述する第1学習済モデル700(図7)を用いて、誘導の効果の高い威嚇/誘引態様を推定する。
【0043】
ステップS505:動作制御部404は、決定した誘導パターンに基づいて、各誘導装置10へ誘導指示を送信する。なお、鳥獣600がエリア40fからエリア40eに侵入すると、エリア40eに配置される誘導装置10は、鳥獣600を検出して、鳥獣侵入通知を管理装置20へ送信する。そして、管理装置20は、当該鳥獣侵入通知を受信すると、ステップS504a、S504b、S505の処理を行う。すなわち、管理装置20は、鳥獣600がそれぞれエリア40で検出されるたびに(鳥獣侵入通知を受信するたびに)、ステップS504a、S504b、S505の処理を行うことになる。なお、この場合、誘導対象の種別に対して、既にステップS504aにおいて各ゾーン30を決定済みである場合には、ステップS504aの処理をスキップしてもよい。
【0044】
なお、ステップS504bの処理は、鳥獣侵入通知を受信したタイミングで行われることに限らない。これらの処理は、例えば、威嚇ゾーン30a内のいずれかの誘導装置10で鳥獣600が検出されている期間に所定周期(例えば10秒など)で行われてもよい。
【0045】
ステップS506:誘導装置10は、管理装置20から誘導指示を受信したか否かを判断する。誘導指示を受信しない場合(ステップS506:NO)、誘導装置10は、ステップS508に進む。
【0046】
ステップS507:管理装置20から誘導指示を受信した場合(ステップS506:YES)、誘導装置10は、誘導指示に応じた動作態様(威嚇態様または誘引態様)で誘導動作(威嚇動作および誘引動作)を行う。これにより、各誘導装置10は、協調して誘導動作することになる。
【0047】
ステップS508:誘導装置10は、誘導結果の送信タイミングであるか否かを判断する。誘導結果は、誘導動作(威嚇動作または誘引動作)によって誘導の効果があったか否か(誘導できたか否か)、また、誘導の結果、鳥獣600が移動した方向を示す。このために、誘導装置10は、検出部11を用いて鳥獣600の移動方向を推定するようにしている。誘導結果の送信タイミングは、予め設定されたタイミングであり、例えば、誘導動作の開始から所定時間の経過としてもよいし、自装置が配置されるエリアから鳥獣600がいなくなった(追い出した)タイミングとしてもよい。また、所定時間が経過した際に、依然として鳥獣600を検出している場合(追い出せなかった場合)、誘導装置10は、誘導できなかったことを示す誘導結果を送信する。誘導結果の送信タイミングとなるまで、誘導装置10は、待機する(ステップS508:NO)。
【0048】
ステップS509:誘導結果の送信タイミングである場合(ステップS508:YESNO)、誘導装置10は、誘導結果を管理装置20へ送信する。
【0049】
ステップS510:管理装置20は、誘導装置10から誘導結果を受信したか否かを判断する。誘導結果を受信しない場合(ステップS510:NO)、誘導装置10は、そのまま処理を終え、次の処理の開始まで待機する。
【0050】
ステップS511:誘導結果を受信した場合(ステップS510:YES)、管理装置20は、誘導結果が効果ありを示すか否かを判断する。誘導結果が効果ありを示す場合(ステップS511:YES)、ステップS514に進み、各種データを管理する。
【0051】
ステップS512:誘導結果が効果なしを示す場合(ステップS511:YES)、すなわち、鳥獣600が現状の威嚇/誘引態様に慣れてしまい、鳥獣600を誘導できない場合、管理装置20は、誘導パターンを変更する。なお、変更する誘導パターンは、威嚇/誘引態様推定部405によって推定された誘導の効果が高い別の威嚇/誘引態様である。また、ステップS512では、威嚇態様の変更や誘引態様の変更の結果、鳥獣600が移動した経路に応じて、誘導パターンを変更してもよい。具体的には、例えば、管理装置20は、変更した威嚇/誘引態様に応じた鳥獣600の移動方向を方向推定部402に推定させるようにし、当該移動方向に基づいて一の誘導パターンを決定部403に決定させるようにしてもよい。また、管理装置20は、誘導装置10の地理的配置の変更をユーザに提案するようにしてもよい。
【0052】
ステップS513:動作制御部404は、各誘導装置10へ変更指示を送信する。
ステップS514:管理装置20は、各種データを管理して、そのまま処理を終え、次の処理の開始まで待機する。各種データは、威嚇/誘引を行った威嚇/誘引態様を示す情報、各誘導装置10の威嚇/誘引態様に加えて誘導パターンを示す情報、鳥獣600の位置情報、侵入方向を示す情報、実際に移動(撤退)した方向を示す情報、誘導結果などの各種情報を含む。各種データの管理は、データの蓄積のほか、行動モデル900における報酬の付与や、第1学習済モデル700および第2学習済モデル800のパラメータの更新などを含む。
【0053】
ステップS515:誘導装置10は、管理装置20から変更指示を受信したか否かを判断する。変更指示を受信しない場合(ステップS515:NO)、誘導装置10は、そのまま処理を終え、次の処理の開始まで待機する。
【0054】
ステップS516:変更指示を受信した場合(ステップS515:YES)、誘導装置10は、変更指示に応じた動作態様に誘導動作を変更し、そのまま処理を終え、次の処理の開始まで待機する。
【0055】
このようにして、誘導システム1は、例えば、図6に示すエリア40fに侵入した鳥獣600を、エリア40e→40d→40mの順で効率よく誘導させることができる。
【0056】
なお、誘引ゾーン30bへの鳥獣600の誘導が完了すると、誘導装置10は、誘導動作を終了する。具体的には、誘引ゾーン30bの誘導装置10は、検出部11によって鳥獣600の誘引ゾーン30bへの侵入が検出されると、鳥獣600の誘導が完了した旨を示す完了通知を管理装置20へ送信する。管理装置20は、完了通知を受信すると、各誘導装置10に終了指示を送信する。各誘導装置10は、終了指示を受信すると、誘導動作を終了する。
【0057】
また、上述した説明では、鳥獣600を一個体とした場合について説明したが、実際は、検出部11によって、複数の個体が同時に検出されることがある。このため、個体間の識別および整合を行う必要がある。個体間の識別および整合は、誘導装置10による画像認識等によって行われてもよいし、検出された鳥獣の時空間的な分布に基づいて管理装置20によって推定されてもよい。
【0058】
(第1学習済モデル700の一例について)
図7は、第1学習済モデル700の一例を示す説明図である。第1学習済モデル700は、鳥獣の種別ごとに生成される。図7に示すように、第1学習済モデル700は、例えば、ニューラルネットワークを用いて表されるモデルである。ただし、第1学習済モデル700および後述する第2学習済モデル800は、例えば、DNN(Deep Neural Network)、サポートベクトルマシン、ランダムフォレストなどであってもよい。学習済パラメータは、例えば、ニューラルネットワークの層数と、各層におけるニューロンの個数と、ニューロン同士の結合関係と、各ニューロン間の結合の重み(結合荷重)と、各ニューロンの閾値とを含む。
【0059】
第1学習済モデル700は、入力層701と、1以上の中間層702(隠れ層)と、出力層703とを含む。各層701~703は、1以上のニューロンを備えている。中間層702の層数や、各層におけるニューロンの個数等は、学習済パラメータによって設定されている。
【0060】
入力層701には、入力サンプルとして、威嚇態様/誘引態様を示す情報が入力される。威嚇態様/誘引態様を示す情報は、音の情報と光の情報との組み合わせである。音の情報は、例えば、周波数、出力間隔、持続時間、音量、音の向きのそれぞれを示す情報を含む。光の情報は、色、出力間隔、持続時間、光の強さ、および光の向きのそれぞれを示す情報を含む。
【0061】
出力層703からは、誘導の効果(威嚇/誘引の効果)として、「効果あり」を示す出力値と、「効果なし」を示す出力値(それぞれの確度)とが出力される。誘導の効果は、例えば、所定時間、対象の威嚇態様で威嚇/誘引動作を行い、鳥獣を誘導することができた場合に「効果あり」とし、鳥獣を誘導することができなかった場合に「効果なし」とする。なお、誘導の効果は、効果あり、効果なし、とすること限らず、例えば、誘導に要した時間に応じた複数のランクとすることも可能である。具体的には、複数のランクは、例えば、所定時間で誘導できればランク1、所定時間以上を要して誘導できた場合にランク2、誘導できなかった場合にランク3などとすることも可能である。なお、モデルの出力を追い出しにかかる秒数として回帰し、最も少ない秒数が最も効果が高いとみなしてもよい。
【0062】
第1学習済モデル700は、入力サンプルを入力層701に入力して、出力層703から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層701に入力される威嚇/誘引態様を示す情報(音の情報および光の情報)である。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層703からの出力値と比較するための正解となる情報(正解ラベル)であり、具体的には、「効果あり」または「効果なし」を示す。なお、正解ラベルは、「効果あり」、「効果なし」に代えて又は加えて、追い出しまでに要した動作秒数としてもよい。
【0063】
入力サンプルおよび出力サンプルは、予め実験等によって得られた実証済みのデータである。威嚇/誘引態様を示す情報は、ユーザによって生成されたものでもよいし、管理装置20等によってランダムに生成されたものでもよい。例えば、第1学習済モデル700の生成において、管理装置20は、鳥獣が検出された各誘導装置10に、所定の威嚇/誘引態様で威嚇/誘引動作させ、各誘導装置10から誘導の効果を取得する。管理装置20は、入力サンプルを威嚇/誘引態様とし、出力サンプルを誘導の効果として、学習モデルを訓練させて第1学習済モデル700を生成する。第1実施形態に係る誘導システム1は、複数の威嚇/誘引動作部12を備えることから、鳥獣を検出する機会を増やすことができるため、迅速に学習を行うことができる。
【0064】
そして、第1学習済モデル700が生成された後に、威嚇/誘引態様推定部405は、例えば、生成した複数種類の威嚇/誘引態様をそれぞれ第1学習済モデル700に入力し、各威嚇/誘引態様について誘導の効果(効果あり、効果なし)を推定する。そして、管理装置20は、「効果あり」と推定された威嚇態様のうち、確度の高い威嚇/誘引態様を選択して、誘導装置10を威嚇/誘引動作させる。これにより、これまでに使用したことのない威嚇/誘引態様で実際に威嚇/誘引動作させなくても、誘導の効果の高い威嚇/誘引態様を得ることができる。
【0065】
ここで、鳥獣が威嚇/誘引態様に慣れた場合、これまでと類似の威嚇/誘引態様であれば、誘導の効果が期待できないことがある。そこで、威嚇/誘引態様生成部406(図4)は、実際に誘導の効果が認められた複数の威嚇/誘引態様に基づいて、複数の威嚇/誘引態様の特徴を有する新たな威嚇/誘引態様を生成する。例えば、威嚇/誘引態様生成部406は、威嚇/誘引態様の生成に際して、予め誘導の効果が認められる変数のデータセットを用意しておく。変数のデータセットは、例えば、過去の試行データに基づいて、誘導の効果のあるものをサンプリングすることによって得られる。具体的には、変数のデータセットは、例えば、音または光に含まれる情報のうち、誘導の効果が認められる一部の情報(例えば、周波数、出力間隔、持続時間、音量を示す情報)に基づくデータである。威嚇/誘引態様生成部406は、変数のデータセットに基づいて、威嚇/誘引態様を生成する。例えば、過去に効果のあった複数のサンプルから、周波数、出力間隔、持続時間、音量のそれぞれをランダムに抽出して、これらのパラメータを組み合わせて作られる音を、新規な威嚇/誘引態様のデータとして生成する。これにより、誘導の効果があり、かつ、新規な威嚇態様を生成することができる。
【0066】
なお、新規な威嚇/誘引態様の生成は、このような手法に限らず、別途用意した威嚇/誘引態様のデータセットから機械学習された生成モデル(変分オートエンコーダや敵対的生成モデルなど)によって、乱数を用いて誘導の効果があると推定される新規な威嚇/誘引態様を生成する手法とすることも可能である。
【0067】
また、威嚇/誘引態様推定部405は、例えば、威嚇/誘引態様生成部406によって生成された新たな威嚇/誘引態様を第1学習済モデル700に入力し、誘導の効果(効果あり、効果なし)を推定すればよい。動作制御部404は、誘導の効果が低下すると、新たな威嚇/誘引態様に変更して、複数の威嚇/誘引動作部12をそれぞれ動作させる。これにより、威嚇/誘引動作部12は、鳥獣の慣れに対して、効果的な威嚇/誘引態様で誘導を行うことができる。
【0068】
(第2学習済モデル800の一例について)
図8は、第2学習済モデル800の一例を示す説明図である。第2学習済モデル800は、鳥獣の種別ごとに生成される。第2学習済モデル800は、入力層801と、1以上の中間層802と、出力層803とを含む。入力層801には、入力サンプルとして、鳥獣の位置情報と、鳥獣の方向情報と、威嚇/誘引態様とが入力される。
【0069】
位置情報は、例えば、鳥獣を検出した誘導装置10の位置情報である。なお、位置情報は、これに限らず、鳥獣が位置する地図データ上の座標としてもよい。
侵入方向情報は、例えば、鳥獣がエリア40に侵入してきた方向(例えば、東西南北等)を示す情報である。なお、侵入方向情報は、これに限らず、鳥獣が向いている方向(頭の向き)を示す情報としてもよい。
威嚇/誘引態様を示す情報は、威嚇/誘引態様推定部405によって推定された誘導の効果の高い威嚇/誘引態様を示す情報(音の情報および光の情報)である。
なお、入力サンプルは、上記の情報のほかに、地形を示す情報を含めてもよい。地形を示す情報は、例えば、傾斜の有無や角度や、草木の有無や規模、道路の有無や幅などをそれぞれ示す情報である。
出力層803からは、鳥獣が現在のエリア40から他のエリア40へ移動する方角(例えば、東西南北等)および移動速度のそれぞれ示す出力値(それぞれの確度)が出力される。
【0070】
第2学習済モデル800は、入力サンプルを入力層801に入力して、出力層803から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルおよび出力サンプルは、誘導装置10によって観測された過去の観測結果に基づくデータである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層701に入力されるデータ(位置情報、侵入方向情報、威嚇/誘引態様を示す情報)である。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層803からの出力値と比較するための正解となるデータ(正解ラベル)であり、例えば、「移動方向1」、「移動方向2」、…「移動方向N」のうちいずれか一つを示す。
【0071】
方向推定部402は、鳥獣の位置情報と、鳥獣の侵入方向情報と、威嚇/誘引態様とを示す各情報とを第2学習済モデル800に入力することにより、エリア40内の鳥獣の移動方向を推定する。
【0072】
(行動モデルについて)
図9は、行動モデル900の一例を示す説明図である。行動モデル900は、鳥獣の種別ごとに生成される、鳥獣の行動を予測するための抽象モデルである。図9に示すように、行動モデル900は、エージェント901と、環境902とを備える。エージェント901は、強化学習を利用して学習を行うものである。強化学習では、ある環境902内におけるエージェント901が、現在の状態903を観測し、取るべき行動904を決定する。強化学習は一連の行動904を通じて最終的な報酬905が最も多く得られるような方策を学習する手法である。
【0073】
具体的には、エージェント901は、環境902の状態903に基づいて、行動904を実行する。環境902は、エージェント901の行動904に応じて状態903を更新し、行動904の結果として報酬905をエージェント901に返す。エージェント901は、総報酬がなるべく多くなる行動904の選び方を模索する。エージェント901は、例えば、状態価値関数および行動価値関数に基づいて、報酬905の期待値を算出し、行動904を決定する。
【0074】
第1実施形態において、エージェント901は、誘導装置10である。環境902は、鳥獣の位置(鳥獣が存在する威嚇エリア40)と、鳥獣の侵入方向とによって表される。状態903は、鳥獣が現在のエリア40から他のエリア40へ移動した移動方向である。行動904は、誘導パターンである。報酬905は、例えば、威嚇ゾーン30aに存在する鳥獣の位置と誘引ゾーン30bまでの距離が短いほど高い値が付与される。
【0075】
図10は、行動モデル900を用いた管理装置20の動作を示すフローチャートである。管理装置20は、図5のステップS504bによる誘導パターンの決定に係る処理を実行すると、以下の処理を実行する。まず、管理装置20は、現在の環境を取得し、取得した環境をメモリ202に記憶する(ステップS1001)。次に、管理装置20は、ステップS1001で取得した環境と、メモリ202が記憶する前回の制御タイミングにおける行動(誘導パターン)とに基づいて、前回の行動の報酬を算出する(ステップS1002)。
【0076】
次に、管理装置20は、次の制御タイミングにおける複数の行動の候補(誘導パターン)を生成する(ステップS1003)。複数の行動の候補は、複数の誘導装置10を協調(連動)させた誘導パターンの候補である。管理装置20は、ステップS1003で生成した複数の行動の候補を1つずつ選択し、各候補について、ステップS1005の処理を実行する(ステップS1004)。管理装置20は、メモリ202が記憶する価値関数に、予め用意されたシミュレーションデータと、ステップS1004で選択した行動の候補を入力することで、当該候補について価値を算出する(ステップS1005)。
【0077】
そして、管理装置20は、複数の行動の候補のうち、例えば最も価値の高いものを、制御対象に施す行動(誘導パターン)に決定する(ステップS1006)。管理装置20は、ステップS1006において決定した行動を誘導装置10に出力する(ステップS1007)。
【0078】
(価値関数の学習)
管理装置20は、図10の処理を行う前に、予め行動モデル900における価値関数のパラメータを学習する。この第1実施形態では、鳥獣に対する威嚇と移動のシミュレーションによって価値関数を学習する。シミュレーションでは、所定のステップ数(Pステップ)での鳥獣の移動を模擬する。
図11は、管理装置20による価値関数の学習処理を示すフローチャートである。管理装置20は、仮想空間にランダムに鳥獣を配置する(ステップS1101)そして、管理装置20は、次の制御タイミングにおける行動候補を生成する(ステップS1102)。さらに、管理装置20(方向推定部402)は、生成した行動候補を、第2学習済モデル800に代入して、鳥獣の移動方向を推定することにより、次の制御タイミングにおける鳥獣の位置と侵入方向を予測する(ステップS1103)。そして、管理装置20は、移動後の鳥獣の位置に基づいて、報酬を計算する(ステップS1104)。報酬は、例えば鳥獣の位置から誘引ゾーン30bまでの距離が近いほど高い値である。
【0079】
管理装置20は、ステップS1102で生成した行動候補が、Pステップ後の制御タイミングに係る行動候補であるか否かを判定する(ステップS1105)。生成した行動候補がPステップより前の制御タイミングに係る行動候補ではない場合(ステップS1105:NO)、管理装置20は、ステップS1102に処理を戻し、さらに次の制御タイミングについて状態と報酬とを予測する。
【0080】
ステップS1102で生成した行動候補がPステップ後の制御タイミングに係る行動候補である場合(ステップS1105:YES)、管理装置20は、Pステップにおける報酬の総和を算出する(ステップS1106)。次に、管理装置20は、Pステップ分の行動候補の生成の試行回数がQ(Qは、自然数)回以上であるか否かを判定する(ステップS1107)。Pステップ分の行動候補の生成の試行回数がQ回未満である場合(ステップS1107:NO)、ステップS1101に処理を戻し、再度Pステップ分の行動候補を生成し、報酬を予測する。Pステップ分の行動候補の生成の試行回数がQ回以上である場合(ステップS1107:YES)、ステップS1105でQ回算出された報酬の総和のうち最大のものを特定する(ステップS1108)。報酬の総和が最大となる行動候補のパターンは、試行した中で最も効率的に鳥獣を誘引ゾーン30bへ誘導することができるパターンであるといえる。
【0081】
管理装置20は、ステップS1101で生成した鳥獣の配置と、ステップS1102で生成した行動候補を入力サンプルとし、ステップS1108で特定した報酬の総和を出力サンプルとして、価値関数のパラメータを学習する(ステップS1109)。管理装置20は、価値関数の学習の終了条件を満たしたか否かを判定する(ステップS1110)。学習の終了条件は、例えばパラメータの変化率が閾値未満となることや、試行回数が所定回数を超えることなどが挙げられる。価値関数の学習の終了条件を満たしていない場合(ステップS1110:NO)、ステップS1101に処理を戻し、パラメータの更新を繰り返し実行する。他方、価値関数の学習の終了条件を満たした場合(ステップS1110:YES)、管理装置20は、学習済みの価値関数をメモリ202に記憶し、処理を終了する。
【0082】
なお、上述した処理では、方向推定部402による鳥獣の威嚇に対応する移動シミュレーション結果を用いて価値関数を学習させ、この価値関数を用いて行動を決定する例について説明したが、これに限られない。例えば、学習された価値関数を用いずに、毎回、方向推定部402による鳥獣の威嚇に対応する移動シミュレーションを実行し、最も報酬の総和が高くなるパターンを求めるようにすることも可能である。
【0083】
なお、上述した説明では、説明を簡略化するため、特定の種別の一頭の鳥獣(例えばシカ)について、威嚇/誘引態様する例について説明した。ただし、本誘導システム1は、種別の異なる複数の鳥獣が複数の威嚇エリア40にそれぞれ侵入する場合でも、ゾーン30ごとまたはエリア40ごとに最適な威嚇/誘引態様となる誘導パターンを決定して、誘導を行うことができる。例えば、あるエリア40内にシカと、サルとが侵入した場合に、シカに対して有効な威嚇/誘引態様で所定時間威嚇/誘引を行い、その後にサルに対して有効な威嚇/誘引態様で威嚇/誘引を行うことが可能である。
【0084】
また、上述した説明では、複数の誘導装置10でそれぞれゾーン30ごとに同じ威嚇/誘引態様とする例について説明したが、これに限らず、複数の誘導装置10でそれぞれ異なる威嚇/誘引態様とすることもできる。具体的には、例えば、管理装置20は、誘導の効果の高い異なる3種類の威嚇/誘引態様を用いて、行動モデル900における価値関数のパラメータを学習させるようにすればよい。これにより、管理装置20は、複数の誘導装置10でそれぞれ異なる威嚇/誘引態様とする誘導パターンを決定することも可能である。
【0085】
以上説明したように、第1実施形態に係る誘導システム1は、複数の誘導装置10のうち一の誘導装置10によって鳥獣が検出された場合、当該鳥獣の位置情報に基づいて、一の誘導パターンを決定し、当該誘導パターンで複数の威嚇/誘引動作部12をそれぞれ動作させる。これにより、鳥獣を威嚇ゾーン30aから誘引ゾーン30bへの誘導を効果的に行うことができる。したがって、鳥獣が再び威嚇ゾーン30aに戻ってきてしまうことを抑えることができるため、威嚇ゾーン30aから鳥獣を好適に追い出すことができる。これにより、鳥獣害を抑えることができるとともに、トキやコウノトリなどの保護対象の鳥獣を好適に保護区内に留めることができるため、鳥獣の保護に利用することもできる。よって、本誘導システム1を用いることにより、鳥獣を人間活動にとって害のない区域に誘導して留めておくゾーニングが可能になる。このため、鳥獣の生息を可能にした状態で鳥獣害を軽減することができ、よって、鳥獣と人間との共存を支援することができる。
【0086】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、鳥獣の位置情報から特定されるエリアについて、威嚇/誘引態様に応じた鳥獣の移動方向を推定するようにし、推定した移動方向に基づいて一の誘導パターンを決定する。これにより、鳥獣の誘導をより効果的に行うことができるため、威嚇ゾーン30aの各エリア40からより好適に鳥獣を追い出すことができる。
【0087】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、鳥獣の位置情報と、鳥獣の侵入方向を示す情報と、威嚇態様を示す情報とに基づいて、鳥獣の移動方向を推定する。これにより、鳥獣の移動方向の推定精度を向上させることができるため、威嚇ゾーン30aの各エリア40からより好適に鳥獣を追い出すことができる。
【0088】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、威嚇の効果が異なる複数種類の威嚇態様のうち、威嚇の効果が高い威嚇態様を推定し、推定した威嚇の効果が高い威嚇態様で、威嚇/誘引動作部12をそれぞれ動作させる。これにより、威嚇の効果の高い別の威嚇態様で威嚇動作を行うことができる。このため、威嚇ゾーン30aの各エリア40から鳥獣を好適に追い出すことができる。
【0089】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、実際に威嚇の効果が認められた複数の威嚇態様に基づいて、当該複数の威嚇態様の特徴を有する新たな威嚇態様を生成し、威嚇態様を変更して、複数の威嚇/誘引動作部12をそれぞれ動作させる。これにより、鳥獣が威嚇に慣れてしまったとしても、威嚇の効果の高い別の威嚇態様で威嚇動作を行うことができる。このため、威嚇ゾーン30aの各エリア40から鳥獣をより好適に追い出すことができる。
【0090】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、鳥獣を誘引する威嚇/誘引動作部12を備え、決定した一の誘導パターンに基づいて、威嚇/誘引動作部12を誘引動作させる。これにより、威嚇ゾーン30aから誘引ゾーン30bへ鳥獣をより好適に誘導することができるとともに、鳥獣を誘引ゾーン30bに留まらせることができる。したがって、鳥獣が再び威嚇ゾーン30aに戻ってきてしまうことを抑えることができる。よって、威嚇ゾーン30aから誘引ゾーン30bへ鳥獣をより好適に誘導することができる。
【0091】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、鳥獣の位置情報と、鳥獣の侵入方向を示す情報と、威嚇態様を示す情報とに基づいて、鳥獣の移動方向を推定する。これにより、鳥獣の移動方向の推定精度を向上させることができるため、より好適に鳥獣を誘引ゾーン30bへ誘導することができるとともに、鳥獣を誘引ゾーン30bに留まらせることができる。
【0092】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、誘引の効果が異なる複数種類の誘引態様のうち、誘引の効果が高い誘引態様を推定し、推定した誘引の効果が高い誘引態様で、威嚇/誘引動作部12をそれぞれ動作させる。これにより、誘引の効果の高い別の誘引態様で誘引動作を行うことができる。このため、威嚇ゾーン30aから誘引ゾーン30bへ鳥獣を好適に誘導することができるとともに、鳥獣を誘引ゾーン30bに留まらせることができる。
【0093】
また、第1実施形態において、誘導システム1は、実際に誘引の効果が認められた複数の誘引態様に基づいて、当該複数の誘引態様の特徴を有する新たな誘引態様を生成し、誘引態様を変更して、複数の威嚇/誘引動作部12をそれぞれ動作させる。これにより、鳥獣が誘引に慣れてしまったとしても、誘引の効果の高い別の誘引態様で誘引動作を行うことができる。このため、より好適に鳥獣を誘引ゾーン30bに留まらせることができる。
【0094】
(第1実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。なお、以下の各変形例では、上述した第1実施形態で説明した内容については、適宜説明を省略する。また、以下の各変形例、および上述した第1実施形態をそれぞれ組み合わせることも可能である。
【0095】
(変形例1)
まず、第1実施形態の変形例1について説明する。変形例1では、蓮田に誘導システム1を適用した例について説明する。蓮田1200内には複数の領域が存在し、それぞれの領域について、モザイク状にレンコンが収穫される。すなわち、収穫後の領域と収穫前の領域とがモザイク状に混在することとなる。収穫前の領域は、カモなどの鳥獣600によって食害の発生するおそれのある領域である。一方で、収穫後の領域は、商品には至らなかった小さなレンコンが残存する領域であり、残存するレンコンを鳥獣600の餌としても問題のない領域である。
【0096】
図12は、変形例1に係る誘導システム1のネットワーク構成を示す説明図である。変形例1において、蓮田1200は、威嚇ゾーン30aと、誘引ゾーン30bとを含む。威嚇ゾーン30aは、収穫前のレンコンが植えられている領域である。誘引ゾーン30bは、レンコンが収穫された後の領域であり、食害が生じない領域である。
【0097】
威嚇ゾーン30aおよび誘引ゾーン30bには、それぞれ誘導装置10が配置される。威嚇ゾーン30aに配置される誘導装置10は、鳥獣600を威嚇して、鳥獣600を誘引ゾーン30bへ追いだす。一方、誘引ゾーン30bに配置される誘導装置10は、鳥獣600を誘引するための音や光を発するようにし、鳥獣600を留めさせる。
【0098】
変形例1において、威嚇ゾーン30aに配置される威嚇/誘引動作部12による威嚇/誘引態様は、例えば、レーザー光の照射である。具体的には、威嚇ゾーン30aに配置される威嚇/誘引動作部12は、鳥獣600に向けて所定の色および点滅態様で、レーザー光を照射する。一方で、誘引ゾーン30bに配置される威嚇/誘引動作部12は、レーザー光の照射をせず、例えば、鳥獣が周囲の鳥獣600に餌の存在を知らせる鳴き声を出力する。また、威嚇ゾーン30aおよび誘引ゾーン30bは、それぞれ、ユーザによって設定されてもよいし、農作物の収穫状況の検出結果に基づいて自動で設定されてもよい。
【0099】
威嚇ゾーン30aの誘導装置10は、鳥獣600を検出すると、鳥獣600侵入通知を管理装置20へ送信する。管理装置20は、当該誘導装置10の位置情報に基づいて、誘導パターンを決定し、各誘導装置10へ送信する。これにより、複数の誘導装置10は、当該誘導パターンに基づいて、それぞれ協調して威嚇および誘引を行う。具体的には、威嚇ゾーン30aの誘導装置10は、それぞれ所定の威嚇態様で威嚇を行う。また、誘引ゾーン30bの誘導装置10は、それぞれ所定の誘引態様で誘引を行う。
【0100】
変形例1によれば、威嚇ゾーン30aから、鳥獣600の餌も存在する誘引ゾーン30bへ鳥獣600を誘導することができる。したがって、鳥獣600が再び威嚇ゾーン30aに戻ってきてしまうことを抑えることができる。よって、威嚇ゾーン30aから鳥獣600を好適に追い出すことができる。また、駆除等による鳥獣害対策と異なり、鳥獣600を適切に保護することができる。
【0101】
(変形例2)
次に、第1実施形態の変形例2について説明する。変形例2では、管理装置20は、誘導の効果の高いことが実証済みの威嚇/誘引態様を用意しておき、鳥獣の慣れが生じるまで、当該威嚇/誘引態様で威嚇/誘引動作させる例について説明する。変形例2において、実証済みの威嚇/誘引態様は、実験等により、実際に誘導の効果が得られた威嚇/誘引態様である。管理装置20は、鳥獣の慣れが生じるまで、当該威嚇/誘引態様で誘導装置10に威嚇/誘引させる。鳥獣の慣れが生じると、管理装置20は、第1学習済モデル700によって推定される誘導の高い威嚇/誘引態様で誘導装置10に威嚇/誘引させるようにする。このようにしても、最適な威嚇/誘引を行うことができ、よって、最適な誘導を行うことができる。
【0102】
(変形例3)
次に、第1実施形態の変形例3について説明する。上述した第1実施形態では、各種モデル(図7~9)を用いた例について説明した。変形例3では、各種モデルを用いずに、誘導パターンを決定する例について説明する。変形例3において、誘導システム1は、鳥獣の位置情報と誘導パターンとを対応付けた誘導データを記憶する。誘導データは、管理装置20に記憶されていてもよいし、外部の記憶装置に記憶されていてもよい。誘導データは、実験結果や過去の履歴などから得られた、予め用意されたデータである。
【0103】
管理装置20は、誘導装置10から鳥獣侵入通知を受信すると、当該通知に含まれる鳥獣の位置情報に基づいて誘導パターンを決定し、決定した誘導パターンで各誘導装置10を威嚇/誘引動作させる。このようにしても、威嚇ゾーン30aから誘引ゾーン30bへ鳥獣を好適に誘導することができる。
【0104】
また、誘導データは、鳥獣の位置情報と、侵入方向情報と、誘導パターンとが対応付けられたデータであってもよい。この場合、管理装置20は、誘導装置10から鳥獣侵入通知を受信すると、当該通知に含まれる鳥獣の位置情報と侵入方向情報とに基づいて誘導パターンを決定し、決定した誘導パターンで各誘導装置10を威嚇/誘引動作させればよい。このようにすれば、威嚇ゾーン30aから誘引ゾーン30bへ鳥獣を、より好適に誘導することができる。
【0105】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下の第2実施形態では、上述した第1実施形態、および第1実施形態に係る変形例で説明した内容については、適宜説明を省略する。
【0106】
多くの動物は、一定の場所にとどまっているのではなく、採餌や休憩、移動といった用途に合わせて様々な場所(以下「利用エリア」という。)を利用する。ところで、従来技術では、各種動物ごとに利用エリアの利用実態を効率よく把握することができないことがあった。このため、各種動物に対して、利用エリアに応じた最適な追い払いや誘引を効果的に行うことができないことがあった。そこで、第2実施形態では、各種動物の利用エリアの利用実態を効率よく把握できるようにしている。
【0107】
なお、上述した第1実施形態において、「鳥獣」は、鳥獣害を及ぼす生き物や、絶滅危惧種であるものとして説明したが、このほかにも、他の動物を含む。他の動物は、例えば、カエルなどの両生類、ヘビなどの爬虫類、チョウなどの昆虫類、ブラックバスなどの魚類などを含む。以下に説明する第2実施形態において対象とする動物は、上記の鳥獣や他の動物を含む。なお、以下では、動物を「鳥獣」として説明する。
【0108】
(第2実施形態に係る推定システム1300の機能的構成)
第2実施形態では、音声によってエリア40内の鳥獣を検出した後に、カメラを起動させて鳥獣の挙動を検出する例について説明する。
図13は、第2実施形態に係る推定システム1300の機能的構成の一例を示すブロック図である。図13に示すように、推定システム1300は、管理装置20と、検出装置1310とを備える。管理装置20は、取得部401と、推定部1301との各機能部を備える。各機能部は、CPU201(図3)によって実現される。すなわち、CPU201が推定プログラムを実行することにより、各機能部を実現する。
【0109】
第2実施形態において、推定システム1は、第1実施形態の誘導装置10に代えて、検出装置1310を備える。検出装置1310は、威嚇/誘引動作部12を備えない点で、誘導装置10とは異なる。検出装置1310は、各種の鳥獣(動物)が生息する複数のエリア40にそれぞれ配置される。検出装置1310は、検出部11を備える。検出部11は、各エリアで鳥獣を検出する。なお、検出部11は、検出器(例えば、図14に示すマイクロフォンアレイ1404およびカメラ1405)の検出結果に基づいて、鳥獣を検出する。
【0110】
(検出装置1310の構成例)
図14は、第2実施形態に係る検出装置1310のハードウェア構成の一例を示す図である。検出装置1310は、CPU1401と、メモリ1402と、通信部1403と、マイクロフォンアレイ1404と、カメラ1405とを備える。各部は、バス1410を介して相互に通信可能に接続されている。
【0111】
CPU1401は、中央演算処理装置であり、メモリ1402に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより、検出装置1310の動作を制御する。各種プログラムは、第2実施形態に係る検出プログラムを含む。検出プログラムは、エリア40内の鳥獣の出現を検出するプログラムや、当該鳥獣の種別を判別するプログラムや、当該鳥獣の挙動を検出するプログラムを含む。
【0112】
メモリ1402は、ROM、RAM、ハードディスクなどの記憶部である。メモリ1402は、各種プログラムをはじめとしてCPU1401が実行する各種の情報を記憶する。また、メモリ1402は、マイクロフォンアレイ1404やカメラ1405の検出結果(例えば、音の情報や画像情報)を記憶してもよい。
通信部1403は、他の装置(例えば、管理装置20)と情報を送受信するインターフェースである。
【0113】
マイクロフォンアレイ1404は、エリア40内の鳥獣の存在を検出する検出器である。マイクロフォンアレイ1404は、第1検出器の一例である。マイクロフォンアレイ1404は、音を検出する。また、マイクロフォンアレイ1404は、音源の方向を検出する。具体的には、マイクロフォンアレイ1404は、各マイクロフォンに到達する信号の時間差を利用して、特定の方向から到来する信号を強調あるいは抑圧することにより、音源の到来方向を推定するとともに、到来方向ごとに音源を分離することができる。なお、第1検出器は、マイクロフォンとしてもよい。
【0114】
鳥獣の存在を検出するための検出器は、マイクロフォンアレイ1404に限らない。詳細については変形例で後述するが、例えば、鳥獣の存在を検出するための検出器には、これらに代えて又は加えて、マイクロフォン、カメラ1405、LiDAR、サーマルセンサー(サーマルカメラ)、赤外線センサー(赤外線カメラ)、モーションセンサー(モーションカメラ)、ミリ波レーダーを用いることも可能である。
【0115】
カメラ1405は、対象種の挙動を検出する検出器(第2検出器)の一例である。カメラ1405は、例えば、CCDやCMOSカメラであり、動画または静止画を撮像する。カメラ1405の撮像範囲は、例えば、自装置が配置されるエリア40の範囲である。
【0116】
検出対象となる対象種の挙動は、以下のいずれか又は全部を含む。
・エリア40内における鳥獣の位置。
・鳥獣までの距離。
・鳥獣が侵入してきた方向(侵入方向)。
・鳥獣が撤退した方向(撤退方向)。
・鳥獣の移動速度。
【0117】
また、第2実施形態において、第2検出器(対象種の挙動を検出する検出器)は、マイクロフォンアレイ1404を含む。すなわち、マイクロフォンアレイ1404は、エリア40内の鳥獣の存在を検出することに加えて、対象種の挙動を検出することが可能である。なお、挙動の検出精度について、検出部11は、マイク140に比べて、マイクロフォンアレイ1404の方が高い検出精度を得ることが可能である。
【0118】
対象種の挙動を検出するための検出器は、マイクロフォンアレイ1404およびカメラ1405に限らない。詳細については変形例で後述するが、例えば、対象種の挙動を検出するための検出器には、これらに代えて又は加えて、マイクロフォン、LiDAR、サーマルセンサー(サーマルカメラ)、赤外線センサー(赤外線カメラ)、モーションセンサー(モーションカメラ)、ミリ波レーダーを用いることも可能である。
【0119】
検出装置1310には、例えば、複数(例えば4つ)のカメラ1405が具備される。各カメラ1405は、それぞれ異なる4方向(例えば、東西南北)を向けて配置される。なお、検出装置1310は、単一のカメラ1405を備えるようにしてもよい。また、検出装置1310は、カメラ1405を回転可能にする機構を備えるようにしてもよい。また、カメラ1405は、光源(フラッシュ)を備える。光源は、夜間に起動する。
【0120】
以下では、図15を参照しつつ、図13に示す各機能部を説明する。
図15は、第2実施形態の動物推定システム1における動作を示すシーケンス図である。図15に示す各装置の各処理は、各装置の制御周期で行われる。
【0121】
(検出装置1310の処理)
ステップS1501:複数のエリア40にそれぞれ配置されるいずれかの検出装置1310(検出部11)は、マイクロフォンアレイ1404によって音(鳥獣の鳴き声)が検出されたか否かを判断する。検出装置1310は、音を検出しない場合(ステップS1501:NO)、そのまま処理を終え、次の処理の開始まで待機する。
【0122】
ステップS1502:検出装置1310は、音を検出すると(ステップS1501:YES)、マイクロフォンアレイ1404を用いて、複数の方向について音源の推定、分離を行い、分離した各音について、音源の方向を推定する。
【0123】
ステップS1503:特定した方向の音に基づいて、当該音を発した鳥獣の種別を推定する。具体的には、検出装置1310は、音の情報(鳴き声)と、後述する第3学習済モデル1600(図16)とに基づいて、鳥獣の種別を推定する。
【0124】
ステップS1504:そして、検出装置1310は、鳥獣の種別が対象種であるか否かを判断する。対象種は、予め設定される追跡対象の鳥獣である。また、対象種は、一種類(例えば、シカのみ)であってもよいし、複数種類(例えば、シカとサル)であってもよい。推定した鳥獣が対象種ではない場合(ステップS1504:NO)、検出装置1310は、そのまま処理を終え、次の処理の開始まで待機する。
【0125】
ステップS1505:一方、推定した鳥獣が対象種である場合(ステップS1504:YES)、検出装置1310は、ステップS1504において推定した方向に向けられているカメラ1405に対して起動指示を行い、カメラ1405を起動する。なお、カメラ1405を回転可能にする機構を備える場合、検出装置1310は、当該機構を制御して、ステップS1504において推定した方向に、カメラ1405を向けさせるようにすればよい。また、検出装置1310が単一のカメラ1405を備え、回転可能する機構を備えない場合、当該対象種が存在する方向の特定(ステップS1502の処理)を行わずに、当該単一のカメラ1405に起動指示を行うようにしてもよい。
【0126】
ステップS1506:検出装置1310は、夜間であるか否かを判断する。検出装置1310は、夜間であるか否かの判断として、時計から得られる時間情報に基づいて、予め設定された特定の時間帯(夜間時間帯)であるか否かを判断してもよい。時計は、例えば、検出装置1310に具備される内部時計としてもよいし、GPS電波時計としてもよい。また、検出装置1310が光センサー(周囲の暗さ(明るさ)を検出するセンサー)を備える場合には、検出装置1310は、当該光センサーの検出結果に基づいて、夜間であるか否かを判断としてもよい。ステップS1506において、夜間ではない場合(ステップS1506:NO)、検出装置1310は、ステップS1508に進む。
【0127】
ステップS1507:一方、夜間である場合(ステップS1506:YES)、検出装置1310は、カメラ1405が備える光源をONにする。このように、日中は、光源の電源をOFFにした状態が保持されることになる。これにより、光源の使用に係る電力の消費を抑えることができる。なお、カメラ1405を日中にのみ起動させる場合には、すなわち、夜間にはカメラ1405を使用しない場合には、光源の電源を常時OFFにしてもよい。この場合、検出装置1310は、ステップS1506およびステップS1507の処理を行わないようにしてもよい。
【0128】
ステップS1508:検出装置1310は、カメラ1405を起動すると、マイクロフォンアレイ1404による音の情報と、カメラ1405による画像の情報とを含む検出結果(以下、「挙動検出結果」という場合がある。)を得る。そして、検出装置1310は、挙動検出結果と、後述する第4学習済モデル1700(図17)とに基づいて、鳥獣の種別を推定する。
【0129】
なお、ステップS1508における種別の推定は、音の情報に加えて画像の情報が用いられていることから、ステップS1503における種別の推定よりも高精度な推定される場合がある。また、対象種によっては、ステップS1508における種別の推定よりも、音の情報による推定(ステップS1503の推定)の方が正確に推定される場合もある。このため、仮に、ステップS1508における種別の推定と、ステップS1503における種別の推定とで推定結果が異なったとする。この場合、ステップS1503において推定した種別、およびステップS1508において推定した種別のうちいずれかを、対象種に応じて優先して、推定結果としてもよい。また、ステップS1503において推定した種別、およびステップS1508において推定した種別のうち、いずれを推定結果とするかを、対象種に応じて切り替えるようにしてもよい。なお、ステップS1508における推定結果が対象種ではない場合、検出装置1310は、そのまま処理を終えるようにしてもよい。
【0130】
ステップS1509:次に、検出装置1310は、対象種の位置情報と、挙動検出結果との送信タイミングとなったか否かを判断する。対象種の位置情報は、対象種を検出した検出装置1310の位置情報である。検出装置1310は、予め位置情報を記憶しているものとする。
【0131】
当該送信タイミングは、例えば、カメラ1405の撮像範囲から、当該対象種がいなくなったタイミングである。ただし、送信タイミングは、これに限らず、カメラ1405の起動開始から所定時間の経過としてもよい。検出装置1310は、当該送信タイミングとなるまで待機する(ステップS1507:NO)。
【0132】
ステップS1510:当該送信タイミングになると(ステップS1507:YES)、検出装置1310は、対象種の位置情報と、挙動検出結果とを管理装置20へ送信する。また、送信タイミングになると、検出装置1310は、カメラ1405の電源をオフにする。
【0133】
なお、ステップS1503に示した機能(対象種であるか否かの判別機能)は、検出装置1310に具備されることに限らず、管理装置20に具備されていてもよい。具体的には、管理装置20は、検出装置1310から音の情報を受信するようにし、受信した音の情報に基づいて、鳥獣の種別を検出するようにしてもよい。管理装置20は、対象種を検出した場合、当該エリア40の所定方向に向けられるカメラ1405に対して、起動指示を行う。すなわち、この場合、カメラ1405は、管理装置20からの起動指示に基づいて起動することになる。
【0134】
(管理装置20の処理)
ステップS1511:管理装置20(取得部401)は、検出装置1310から位置情報と挙動検出結果とが送信されることにより、これらを取得したか否かを判断する。これらを取得しない場合(ステップS1511:NO)、管理装置20は、そのまま処理を終え、次の処理の開始まで待機する。
【0135】
ステップS1512:取得部401によって位置情報と挙動検出結果とが取得されると、推定部1301は、位置情報と、挙動検出結果と、後述する第5学習済モデル1800(図18)とに基づいて、当該対象種の移動経路を推定する。移動経路は、対象種が検出されたエリア40から、当該対象種が最終的に到達するエリア40までを含む経路である。
【0136】
ステップS1513:推定部1301は、推定した移動経路に基づいて、各対象種がそれぞれ最も多く生息する利用エリアを推定する。利用エリアの推定には、例えば、各種推定方法を用いることが可能である。一例として、当該推定には、ベイズ統計による手法が用いられる。ベイズ統計では、事前データから得られる事前確率と、新規データ(移動経路の情報)によって更新される尤度とを組み合わせて算出される、生息領域の事後確率に基づいて、利用エリアを推定することが可能である。
【0137】
このように、利用エリアを推定することにより、管理装置20は、各種動物が生息するエリア40内において、対象種がどのエリア40に、どの程度分布しているかを定量化することができる。具体的には、管理装置20は、対象種の個体密度の推定を行ったり、対象種が時間帯や時期などに応じて存在する可能性の高いエリア40をマップ化したりすることができる。
【0138】
(ユーザ端末への表示)
移動経路の推定結果や、利用エリアの推定結果は、所定の端末(以下「ユーザ端末」という)に表示することが可能である。具体的には、管理装置20は、自装置にアクセス可能なユーザ端末からの送信要求に応じて、移動経路の推定結果や利用エリアの推定結果を、要求元のユーザ端末へ送信する。ユーザ端末は、管理装置20から当該推定結果を受信すると、当該推定結果を表示する。これにより、ユーザは、移動経路の推定結果や利用エリアの推定結果を把握することができる。
【0139】
(学習済モデルの一例について)
次に、図16~18を用いて、学習済モデルについて説明する。なお、以下に説明する各学習済モデルは、ニューラルネットワークを用いて表されるモデルを示す。各学習済モデルにおいて、学習済パラメータは、例えば、ニューラルネットワークの層数と、各層におけるニューロンの個数と、ニューロン同士の結合関係と、各ニューロン間の結合の重み(結合荷重)と、各ニューロンの閾値とを含む。また、各学習済モデルは、入力層と、1以上の中間層(隠れ層)と、出力層とを含む。各層は、1以上のニューロンを備えている。中間層の層数や、各層におけるニューロンの個数等は、学習済パラメータによって設定されている。なお、学習済モデルは、DNN(Deep Neural Network)、サポートベクトルマシン、ランダムフォレストなどであってもよい。
【0140】
(第3学習済モデル:音の情報に基づく種別の推定(カメラ起動用))
図16は、第2実施形態の対象種の推定に係る第3学習済モデル1600の一例を示す説明図である。図16に示すように、第3学習済モデル1600は、入力層1601と、1以上の中間層1602(隠れ層)と、出力層1603とを含む。
【0141】
入力層1601には、入力サンプルとして、音の情報が入力される。図16に示す音の情報は、カメラ1405を起動させるための情報である。音の情報は、例えば、周波数、出力間隔、持続時間、音量のそれぞれを示す情報を含む。なお、入力サンプルとしての音の情報は、複数の音が重なった際の情報や、背景音のみで検出対象種の音が含まれない場合の情報を含む。
【0142】
出力層1603からは、鳥獣の種別を示す出力値(それぞれの確度)が出力される。第3学習済モデル1600は、入力サンプルを入力層1601に入力して、出力層1603から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層1601に入力される音の情報である。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層1603からの出力値と比較するための正解となる情報(正解ラベル)である。具体的には、出力サンプルは、例えば、「種別1(シカ)」、「種別2(サル)」、…「種別N(カラス)」のうち、いずれか一つの種別または複数の種別を示し、または、いずれの種別も含まれないことを示す。なお、当該括弧内は、例示である。
【0143】
検出装置1310は、マイクロフォンアレイ1404によって音が検出されると、検出された音の情報を第3学習済モデル1600に入力する。これにより、検出装置1310は、自装置が配置されるエリア40内に存在する鳥獣の種別を推定する。
【0144】
(第4学習済モデル:挙動検出結果に基づく種別の推定)
図17は、対象種の推定に係る第4学習済モデル1700の一例を示す説明図である。図17に示すように、第4学習済モデル1700は、入力層1701と、1以上の中間層1702(隠れ層)と、出力層1703とを含む。
【0145】
入力層1701には、入力サンプルとして、挙動検出結果としての音の情報と画像の情報とが入力される。音の情報は、各種鳥獣の鳴き声を示す情報である。音の情報は、例えば、周波数、出力間隔、持続時間、音量のそれぞれを示す情報を含む。画像の情報は、例えば画素データである。なお、入力サンプルとしての画像の情報は、複数種が一度にカメラに映った際の情報を含む。
【0146】
出力層1703からは、対象種の種別を示す出力値(それぞれの確度)が出力される。第4学習済モデル1700は、入力サンプルを入力層1701に入力して、出力層1703から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層1701に入力される音の情報と画像の情報とである。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層1703からの出力値と比較するための正解となる情報(正解ラベル)である。具体的には、出力サンプルは、例えば、「種別1(シカ)」、「種別2(サル)」、…「種別N(カラス)」のうちいずれか一つの種別または複数の種別を示し、または、いずれの種別も含まれないことを示す。なお、当該括弧内は、例示である。
【0147】
検出装置1310は、カメラ1405を起動させると、マイクロフォンアレイ1404によって検出された音の情報と、カメラ1405によって検出された画像の情報とを第4学習済モデル1700に入力する。これにより、検出装置1310は、自装置が配置されるエリア40内に存在する鳥獣の種別を、より精度よく推定する。
【0148】
(第5学習済モデル:位置情報、音の情報および画像の情報に基づく移動経路の推定)
図18は、管理装置20が行う移動経路の推定に係る第5学習済モデル1800の一例を示す説明図である。第5学習済モデル1800は、鳥獣の種別ごとに生成される。図18に示すように、第5学習済モデル1800は、入力層1801と、1以上の中間層1802(隠れ層)と、出力層1803とを含む。
【0149】
入力層1801には、入力サンプルとして、位置情報と、挙動検出結果としての音の情報と、挙動検出結果としての画像の情報とが入力される。位置情報は、対象種を検出した検出装置1310の位置情報である。
【0150】
出力層1803からは、対象種の移動経路を示す出力値(それぞれの確度)が出力される。第5学習済モデル1800は、入力サンプルを入力層1801に入力して、出力層1803から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層1801に入力される位置情報と、音の情報と、画像の情報と、である。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層1803からの出力値と比較するための正解となる情報(正解ラベル)である。具体的には、出力サンプルは、例えば、「移動経路1(東方向)」、「移動経路2(西方向)」、…「移動経路N(北方向)」のうちいずれか一つを示す。なお、当該括弧内は、例示である。
【0151】
管理装置20は、取得部401によって位置情報と、音の情報と、画像の情報と、が取得されると、これらを第5学習済モデル1800に入力する。これにより、管理装置20は、対象種の移動経路を推定する。
【0152】
(利用エリアの推定結果の一例)
図19は、利用エリアの推定結果の一例を示す図である。図19において、推定結果1900は、「種別」と、「利用エリア」と、「期間」、「個体密度」とを含む。
【0153】
「種別」は、鳥獣の種類を示す。
「利用エリア」は、各種の鳥獣が最終的に到達するエリア40を示す。
「期間」は、例えば、1時間ごとの時間帯を示す。ただし、「期間」は、季節ごと、月単位などとしてもよい。
「個体密度」は、利用エリアごとの密度(所定面積当たりの個体数)を示す。
【0154】
このように、管理装置20は、期間ごとに、各種別の利用エリアや各種別の活動を定量化することができる。なお、推定結果1900は、表として表されることに限らない。例えば、推定結果1900に基づいて、地図上の各エリア40に対応する位置に、個体密度を図示化して表示することも可能である。当該図示化は、例えば、個体密度に応じた色に表示したり、個体密度を示すグラフを表示したりすることである。また、当該図示化した推定結果を、時系列に応じて遷移する動画として表示するようにしてもよい。このように推定結果1900を図示化することにより、各種別の利用エリアや各種別の活動を可視化できる。したがって、各種別の利用エリアや各種別の活動を、より把握しやすくすることができる。
【0155】
以上説明したように、第2実施形態に係る推定システム1300は、複数の検出部11のうち一の検出部11によって対象種が検出された場合、当該対象種の位置を示す位置情報に基づいて、対象種の移動経路を推定する。これにより、対象種が検出されたエリア40から、最終的に到達するエリア40までの経路を精度よく推定することができる。したがって、対象種が最も多く生息する利用エリアを精度よく推定することができる。このため、ユーザは、対象種の移動経路の利用実態や利用エリアの利用実態を効率よく把握することができる。これにより、追い払いや誘引に際し、各対象種の利用エリアを誘引ゾーン30bに設定することができる。よって、対象種ごとに、より最適な追い払いや誘引を行うことができる。
【0156】
また、第2実施形態に係る推定システム1300は、対象種の挙動を検出するようにし、位置情報に加えて、挙動検出結果に基づいて、対象種の移動経路を推定する。これにより、対象種が検出されたエリア40から、最終的に到達するエリア40までの経路を、より精度よく推定することができる。
【0157】
また、第2実施形態に係る推定システム1300は、マイクロフォンアレイ1404(第1検出器)の検出結果に基づいて対象種を検出し、カメラ1405(第2検出器)の検出結果に基づいて対象種の挙動を検出する。これにより、動物の検出に適した第1検出器と、挙動の検出に適した第2検出器とを用いることができる。
【0158】
例えば、消費電力の少ない装置を第1検出器に用い、消費電力の高い装置を第2検出器に用いることができる。より具体的には、鳥獣の検出には、マイクロフォンアレイ1404など、常時電源がONでも消費電力の少ないものを用いることができる。そして、検出装置1310は、マイクロフォンアレイ1404の検出結果に基づいて対象種を検出した場合に、カメラ1405を起動させる。これにより、カメラ1405を常時ONにしなくてもよいため、カメラ1405(バッテリー)の消費電力を抑えることができる。よって、推定システム1300において、各検出器に最適なものを適用することができる。
【0159】
(第2実施形態に係る変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。なお、以下の各変形例の番号は、上述した第1実施形態の変形例1~3に続く番号(変形例4~)として説明する。以下の各変形例のそれぞれと、上述した第1実施形態と、第1実施形態に係る変形例のそれぞれと、上述した第2実施形態と、のうちいずれかを組み合わせることも可能である。
【0160】
(変形例4)
第2実施形態では、カメラ1405を起動し、対象種がいなくなると、カメラ1405の電源をオフにする例について説明した。変形例4では、カメラ1405の電源を常時ONにする例について説明する。例えば、電源を直接得ることができる場合や、バッテリー容量が大きい場合など、電源環境が整っている場合、カメラ1405の電源のON/OFFを切り替えないようにし、常時ONにしてもよい。
【0161】
変形例4に係る検出装置1310は、図15のステップS1502~ステップS1507の処理を不要としてもよい。より具体的には、検出装置1310は、マイクロフォンアレイ1404による音を検出すると(ステップS1501:YES)、または、カメラ1405によって動物を検出すると、マイクロフォンアレイ1404およびカメラ1405の検出結果に基づいて、鳥獣の種別を推定すればよい(ステップS1508)。推定した種別が対象種である場合には、送信タイミングになると(ステップS1509:YES)、位置情報と挙動検出結果とを管理装置20へ送信すればよい。
【0162】
変形例4によれば、カメラ1405を常時ONにするため、カメラ1405の起動に係る検出や制御を不要にすることができる。したがって、変形例4によれば、簡単な制御で対象種の挙動を検出することができる。
【0163】
(変形例5)
次に、変形例5について説明する。第2実施形態では、エリア40内の鳥獣の存在、および対象種の挙動を検出する検出器として、マイクロフォンアレイ1404と、カメラ1405とを用いて行う例について説明した。変形例5では、鳥獣の存在および対象種の挙動を検出する検出器として、これらに代えて又は加えて、他の検出器を用いる例について説明する。なお、以下では、変形例5に係る検出器を「挙動検出器」という。
【0164】
変形例5に係る挙動検出器は、例えば、マイクロフォンアレイ1404、マイクロフォン、カメラ1405、LiDAR、赤外線センサー、赤外線カメラ、モーションセンサー(モーションカメラ)、ミリ波レーダーなどの複数種類のうち、一種類または複数(L種類)である。なお、対象種の推定精度や、移動経路の推定精度を向上させるという観点からすると、使用する挙動検出器の種類数を多くすることが望ましい。変形例5において、Lは複数とする。
【0165】
複数種類の挙動検出器は、いずれも対象種の挙動を検出することが可能である。また、複数種類の検出器は、いずれも、エリア40内の鳥獣の存在を検出することが可能である。
【0166】
また、変形例5において、いずれかの検出器(常時ONの検出器)で鳥獣の存在を検出するようにし、当該存在が検出されることに応じて、他の検出器(ON/OFFの切替えが可能な検出器)を起動させるようにしてもよい。常時ONの検出器と、ON/OFFの切替えが可能な検出器とは、それぞれ、消費電力に応じて設定すればよい。具体的には、常時ONの検出器は、消費電力の少ない検出器(例えば、マイクロフォンアレイ1404や、赤外線センサー)とすればよい。また、ON/OFFの切替えが可能な検出器は、消費電力の高い検出器(例えば、カメラ1405や、LiDAR)とすればよい。
【0167】
(第6学習済モデル:位置情報と複数の挙動検出結果とに基づく種別の推定)
図20は、対象種の推定に係る第6学習済モデル2000の一例を示す説明図である(変形例5)。図20に示すように、第6学習済モデル2000は、入力層2001と、1以上の中間層2002(隠れ層)と、出力層2003とを含む。
【0168】
入力層2001には、入力サンプルとして、位置情報と、挙動検出結果1~Lとが入力される。位置情報は、対象種を検出した検出装置1310の位置情報である。Lは、挙動検出器の種類数である。挙動検出結果1~Lは、複数種類(L種類)の挙動検出器のそれぞれによって検出される。
【0169】
出力層2003からは、対象種の種別を示す出力値(それぞれの確度)が出力される。第6学習済モデル2000は、入力サンプルを入力層2001に入力して、出力層2003から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層2001に入力される位置情報と挙動検出結果とである。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層2003からの出力値と比較するための正解となる情報(正解ラベル)である。具体的には、出力サンプルは、例えば、「種別1(シカ)」、「種別2(サル)」、…「種別N(カラス)」のうちいずれか一つの種別または複数の種別を示し、または、いずれの種別も含まれないことを示す。
【0170】
検出装置1310は、対象種を検出すると、位置情報と、複数種類の挙動検出器によって検出された挙動検出結果とを、第6学習済モデル2000に入力する。これにより、検出装置1310は、自装置が配置されるエリア40内に存在する鳥獣の種別を推定する。
【0171】
(第7学習済モデル:位置情報と複数の挙動検出結果とに基づく移動経路の推定)
図21は、移動経路の推定に係る第7学習済モデル2100の一例を示す説明図である。第7学習済モデル2100は、鳥獣の種別ごとに生成される。図21に示すように、第7学習済モデル2100は、入力層2101と、1以上の中間層2102(隠れ層)と、出力層2103とを含む。
【0172】
入力層2101には、入力サンプルとして、位置情報と、挙動検出結果1~Lとが入力される。位置情報は、対象種を検出した検出装置1310の位置情報である。Lは、挙動検出器の種類数である。挙動検出結果1~Lは、複数種類(L種類)の挙動検出器のそれぞれによって検出される。
【0173】
出力層2103からは、対象種の移動経路を示す出力値(それぞれの確度)が出力される。第7学習済モデル2100は、入力サンプルを入力層2101に入力して、出力層2103から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層2101に入力される位置情報と挙動検出結果とである。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層2103からの出力値と比較するための正解となる情報(正解ラベル)である。具体的には、出力サンプルは、例えば、「移動経路1(東方向)」、「移動経路2(西方向)」、…「移動経路N(北方向)」のうちいずれか一つを示す。
【0174】
管理装置20は、取得部401によって位置情報と挙動検出結果とが取得されると、位置情報と挙動検出結果とを第7学習済モデル2100に入力する。これにより、管理装置20は、対象種の移動経路を推定する。
【0175】
変形例5によれば、複数種類の挙動検出器の検出結果に基づいて、鳥獣の存在、種別の判別、および対象種の挙動を検出するため、検出精度を向上させることができる。したがって、対象種が検出されたエリア40から、最終的に到達するエリア40までの経路を、より精度よく推定することができる。
【0176】
(変形例6)
次に、変形例6について説明する。変形例6では、実際の運用において想定される挙動検出器の仕様変更(追加、削除、バージョンアップなど)を行う例について説明する。変形例6において、推定システム1300は、挙動検出器の仕様変更があると、仕様変更に応じた他の学習済モデル(第6学習済モデル2000に対応する学習済モデルや、第7学習済モデル2100に対応する学習済モデル)を用いて、各種推定を行う。他の学習済モデルは、別途生成された学習済みモデルである。例えば、カメラ1405を削除して、LiDARを追加する場合、他の学習済モデルは、入力サンプルとして、カメラ1405の挙動検出結果を除き、LiDARの挙動検出結果を入力して生成された学習済モデルである。挙動検出器の仕様変更があると、検出装置1310に他の学習済モデルがインストールされる。
【0177】
具体的には、検出装置1310は、挙動検出器の仕様変更があると、変更された挙動検出器に応じた学習済モデルを取得(インストール)する。より具体的には、検出装置1310は、挙動検出器の仕様変更があると、仕様変更された挙動検出器の種別(例えば、カメラ1405、LiDAR)の組合せを示す情報を取得し、当該組合せに対応する学習済モデルの送信要求を管理装置20に対して行う。
【0178】
当該送信は、USB(Universal Serial Bus)接続される無線LANなどの回線を介して行われてもよい。検出装置1310は、管理装置20から学習済モデルを受信することにより、変更後の挙動検出器の組合せに応じた適切な学習済モデルをインストールすることができる。なお、当該インストールは、通信によって行われることに限らず、例えば、USBフラッシュメモリなどの記憶媒体からの読取りによって行われてもよい。
【0179】
また、仕様変更された挙動検出器の分解能やレンジは、学習済モデルの生成において使用した挙動検出器の分解能やレンジとは異なることがある。具体的には、例えば、挙動検出器がカメラ1405であれば、仕様変更されたカメラ1405によって検出される画像データの画素数と、入力サンプルに用いられた画像データの画素数とが異なることがある。
【0180】
そこで、検出装置1310は、使用する挙動検出器によって検出されるデータ(例えば、画像データ)を、入力サンプルと同様の指標となるように補正を行うようにする。具体的には、検出装置1310は、撮像画像を所定の画素数に拡大縮小したり、トリミングしたりするなど、入力サンプルと同様の画像データに補正して、学習済モデルに入力すればよい。これにより、仕様変更された挙動検出器の分解能やレンジは、学習済モデルの生成において使用した挙動検出器の分解能やレンジとは異なる場合でも、鳥獣の種別の推定や移動経路の推定を適切に行うことができる。
【0181】
なお、使用が想定される全種類の挙動検出器を用いた学習済モデルを予め生成しおくようにしてもよい。例えば、仕様変更によって特定の挙動検出器(例えば、LiDAR)が使用されなくなる場合には、当該学習済モデルにおいて、LiDARによって検出される挙動検出結果の入力をなしとして、各種推定を行うようにしてもよい。
【0182】
変形例6によれば、推定システム1300の挙動検出器に仕様変更が生じた場合でも、当該仕様変更に対応して、各種(種別や移動経路)の推定を行うことができる。
【0183】
(変形例7)
次に、変形例7について説明する。変形例7では、検出装置1310に、威嚇/誘引動作部12を後付けする例について説明する。変形例7において、複数の検出装置1310には、それぞれに対応して、威嚇/誘引動作部12が後付けされる。また、威嚇/誘引動作部12を後付けする場合、検出装置1310は、第1実施形態に示した誘導動作プログラムをインストールする。当該インストールは、通信によって行われてもよいし、USBフラッシュメモリなどの記憶媒体からの読取りによって行われてもよい。
【0184】
対象種の誘引に際し、第2実施形態に示した移動経路の推定結果から得られる利用エリアが、対象種の存在が許容されるエリアであれば、当該利用エリアを誘引ゾーン30bに設定することが可能である。これにより、管理装置20は、エリア40内に対象種が検出された場合、当該対象種の位置情報に基づいて、利用エリア(誘引ゾーン30b)までの最適な誘導パターンを決定することができる。したがって、利用エリアまでの効果的な誘引および追い払いを行うことができる。
【0185】
(変形例8)
次に、変形例8について説明する。変形例8では、第1実施形態に示した誘導装置10が備える威嚇/誘引動作部12の機能について、ON/OFFの切替えを可能にする例について説明する。変形例8において、誘導装置10は、威嚇/誘引動作部12の機能をOFFにすると、検出部11のみの機能を備えることになり、すなわち、検出装置1310が備える機能と同様となる。言い換えれば、変形例8において、誘導装置10は、威嚇/誘引動作部12の機能をOFFにすることにより、検出装置1310として利用することが可能である。一方で、威嚇/誘引動作部12の機能をONにすることにより、対象種に対する威嚇/誘引を行うことが可能にある。
【0186】
このような構成によれば、誘導装置10は、例えば、鳥獣の利用エリアが明らかになっていない場合には、威嚇/誘引動作部12の機能をOFFにして利用エリアの推測を行うことができる。そして、対象種の利用エリアの推定が完了すると、誘導装置10は、利用エリアを誘引ゾーン30bに設定することにより、利用エリアまでの効果的な誘引および追い払いを行うことができる。
【0187】
また、定期的に威嚇/誘引動作部12の機能をOFFにしてもよい。これにより、定期的に、季節や時間帯に応じた各種動物の利用エリアを把握することができるとともに、威嚇/誘引の効果を確認することが可能である。
【0188】
(変形例9)
次に、変形例9について説明する。上述した第2実施形態では、管理装置20は、位置情報と挙動検出結果とに基づいて、対象種の移動経路を推定する例について説明した。変形例9では、挙動検出結果を用いずに、位置情報に基づいて、対象種の移動経路を推定する例について説明する。
【0189】
変形例9において、検出部11は、検出器の検出結果に基づいて、自装置が配置されるエリア40内の対象種を検出する。検出器は、鳥獣の種別の判別に用いられる検出結果を得ることが可能な装置であればよい。検出器は、例えば、マイクロフォンアレイ1404、マイクロフォン、カメラ1405、LiDAR、サーマルセンサー、赤外線センサー、モーションセンサー、ミリ波レーダーなどのうち、一または複数である。
【0190】
変形例9において、検出装置1310は、検出器によってエリア40内に鳥獣が検出されると、検出器の検出結果に基づいて、鳥獣の種別を推定する(図15のステップS1508)。推定した種別が対象種である場合、送信タイミングになると(ステップS1509:YES)、検出装置1310は、自装置が配置されるエリア40の位置情報を管理装置20へ送信する(ステップS1510)。
【0191】
言い換えれば、変形例9に係る検出装置1310は、ステップS1502~ステップS1507の処理を行わないようにしてもよい。管理装置20は、位置情報を取得すると(ステップS1511:YES)、位置情報と、後述する第8学習済モデル2200(図22)とに基づいて、対象種の移動経路を推定する(ステップS1512)。
【0192】
(第8学習済モデル:位置情報に基づく移動経路の推定)
図22は、移動経路の推定に係る第8学習済モデル2200の一例を示す説明図である。第8学習済モデル2200は、鳥獣の種別ごとに生成される。図22に示すように、第8学習済モデル2200は、入力層2201と、1以上の中間層2202(隠れ層)と、出力層2203とを含む。
【0193】
入力層2201には、入力サンプルとして、位置情報が入力される。位置情報は、対象種を検出した検出装置1310の位置情報である。
【0194】
出力層2203からは、対象種の移動経路を示す出力値(それぞれの確度)が出力される。第8学習済モデル2200は、入力サンプルを入力層2201に入力して、出力層2203から得られるそれぞれの出力値と、出力サンプルのそれぞれとの差が少なくなるように、パラメータが更新されて、生成されたモデルである。入力サンプルは、学習モデルの訓練時に入力層2201に入力される位置情報である。出力サンプルは、学習モデルの訓練時に出力層2203からの出力値と比較するための正解となる情報(正解ラベル)である。具体的には、出力サンプルは、例えば、「移動経路1(東方向)」、「移動経路2(西方向)」、…「移動経路N(北方向)」のうちいずれか一つを示す。
【0195】
管理装置20は、取得部401によって位置情報が取得されると、位置情報を第8学習済モデル2200に入力する。これにより、管理装置20は、対象種の移動経路を推定する。なお、変形例9において、入力層2201に入力情報は、位置情報に加えて、対象種の出現回数や当該エリア40の滞在時間などを含めるようにしてもよい。このようにすれば、より精度よく移動経路を推定できる。
【0196】
変形例9によれば、挙動検出結果に基づかずに、対象種が検出されたエリア40の位置情報に基づいて、当該対象種が最終的に到達するエリア40までの移動経路を推定する。これにより、簡単な構成および簡単な制御で、移動経路を推定することができる。
【0197】
なお、以上に説明した誘導システム1、誘導装置10および管理装置20を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、USB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0198】
1…誘導システム、10…誘導装置、11…検出部、12…誘引動作部、20…管理装置、30a…威嚇ゾーン、30b…誘引ゾーン、40…エリア、401…取得部、402…方向推定部、403…決定部、404…動作制御部、405…威嚇/誘引態様推定部、406…威嚇/誘引態様生成部、600…鳥獣、1300…推定システム、1301…推定部、1310…検出装置
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