(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099118
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20250626BHJP
【FI】
H01R12/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215536
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢元 雄介
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB01
5E223AB25
5E223AC04
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB24
5E223CB31
5E223CB63
5E223CB64
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB09
5E223DB13
5E223DB40
(57)【要約】
【課題】端子金具の基板接続部の位置を定めつつ、小型化が可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、相手接続部11A及び基板接続部11Bを有する端子金具11と、相手接続部11Aが貫通して保持されるハウジング10と、ハウジング10に装着され、基板接続部11Bを位置決め可能な挿通孔12Dを有するアライメントプレート12と、を備えている。基板接続部11Bにおける挿通孔12D内に配置される部分は、基板接続部11Bの軸方向Adと直交する幅方向に弾性変形可能な弾性部11Dとして構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手接続部及び基板接続部を有する端子金具と、
前記相手接続部が貫通して保持されるハウジングと、
前記ハウジングに装着され、前記基板接続部を位置決め可能な挿通孔を有するアライメントプレートと、
を備え、
前記端子金具の前記基板接続部における前記挿通孔内に配置される部分は、前記基板接続部の軸方向と直交する幅方向に弾性変形可能な弾性部として構成されている、コネクタ。
【請求項2】
前記基板接続部における回路基板のスルーホール内に位置する部分は、前記幅方向に弾性変形可能なプレスフィット部として構成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記プレスフィット部の前記幅方向における最大幅寸法は、前記挿通孔の前記幅方向における最小寸法よりも小さい、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記弾性部は、前記軸方向に延びて前記軸方向の両端部が連結した一対の延出部と、一対の前記延出部の間に形成された孔部と、を有し、
前記孔部の前記軸方向の寸法は、前記プレスフィット部が有するアイホールの前記軸方向の寸法よりも大きい、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記挿通孔の開口形状は、円形状である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記端子金具は、前記弾性部を挟んで前記プレスフィット部と反対側に前記幅方向に張り出した張出部を有し、
前記張出部の前記軸方向の両端部のうち前記プレスフィット部とは反対側に位置する端部は、前記幅方向に沿った治具押圧面として構成され、
前記弾性部の前記幅方向の外縁は、前記張出部の前記幅方向の外縁と括れなく連なっている、請求項4に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンタクト(基板接続部)が挿通される位置決め孔が複数形成されたアライメントプレートが開示されている。このアライメントプレートの各位置決め孔には、複数の弾性片が設けられている。弾性片は、位置決め孔に挿通されたコンタクトに弾性的に接触し、コンタクトを支えてコンタクトの位置が定まるように作用する。特許文献2、3には、単にアライメントプレートに形成した挿通孔に基板接続部を挿通し、これにより基板接続部の位置を定めようとする技術が開示されている。また、特許文献4には、プレスフィットを用いて基板同士を接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-226571号公報
【特許文献2】特開2022-86496号公報
【特許文献3】特開2004-31006号公報
【特許文献4】特開2000-260513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実装後、加熱や冷却によってアライメントプレートが膨張又は収縮して変形すると、アライメントプレートの位置決め孔に挿通された端子金具もアライメントプレートにつられて動かされてしまい、基板にストレスがかかるおそれがある。特許文献1のような構成の場合、アライメントプレートが変形しても、弾性片が弾性変形して基板接続部が変形しないように作用する。しかし、特許文献1のものは、弾性片を設けるスペースを各位置決め孔の周囲に確保する必要があるので、隣り合うコンタクト同士の距離をあまり近づけることができない。このため、特許文献1の技術は、コネクタを小型化する場合には不利である。従って、コンタクトの位置を定めつつ、コネクタの小型化を実現できる技術が望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、基板接続部の位置を定めつつ、小型化が可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
相手接続部及び基板接続部を有する端子金具と、
前記相手接続部が貫通して保持されるハウジングと、
前記ハウジングに装着され、前記基板接続部を位置決め可能な挿通孔を有するアライメントプレートと、
を備え、
前記端子金具の前記基板接続部における前記挿通孔内に配置される部分は、前記基板接続部の軸方向と直交する幅方向に弾性変形可能な弾性部として構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板接続部の位置を定めつつ、コネクタの小型化をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示のコネクタの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の端子金具の基板接続部を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示のコネクタを後方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、アライメントプレートを取り付ける前であって端子金具を装着したハウジングの一部を後方から見た部分背面図である。
【
図5】
図5は、本開示のアライメントプレートの一部を上方から見た部分平面図である。
【
図7】
図7は、アライメントプレートを取り付けたコネクタを後方から見た部分背面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すコネクタを基板に取り付けて後方から見た部分背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)相手接続部及び基板接続部を有する端子金具と、
前記相手接続部が貫通して保持されるハウジングと、
前記ハウジングに装着され、前記基板接続部を位置決め可能な挿通孔を有するアライメントプレートと、
を備え、
前記端子金具の前記基板接続部における前記挿通孔内に配置される部分は、前記基板接続部の軸方向と直交する幅方向に弾性変形可能な弾性部として構成されている、コネクタ。
【0010】
アライメントプレートが加熱又は冷却されると、その体積は膨張又は収縮する。このとき、挿通孔も膨張又は収縮し、挿通孔が大きく又は小さくなる。このため、アライメントプレートが膨張又は収縮すると、基板接続部には、アライメントプレートから軸方向と直交する向きから押圧力が付与され、これにより、基板接続部が接続する回路基板に対してストレスがかかるおそれがある。(1)のコネクタは、アライメントプレートが膨張又は収縮した場合であっても、端子金具の弾性部によってアライメントプレートからの押圧力を吸収し、基板接続部が接続する回路基板にストレスがかかることを防止する構成が可能となる。また、アライメントプレートには弾性変形する構成を不要とし挿通孔の間の距離を狭め易いので、コネクタを小型化する場合には有利である。
【0011】
(2)前記基板接続部における回路基板のスルーホール内に位置する部分は、前記幅方向に弾性変形可能なプレスフィット部として構成される、(1)に記載のコネクタ。
【0012】
(2)のコネクタは、プレスフィット部が弾性変形可能なので、基板接続部がアライメントプレートによって動かされたとしても、回路基板に対してよりストレスがかかり難くできる。
【0013】
(3)前記プレスフィット部の前記幅方向における最大幅寸法は、前記挿通孔の前記幅方向における最小寸法よりも小さい、(2)に記載のコネクタ。
【0014】
(3)のコネクタは、プレスフィット部を挿通孔に挿通する際に生じる挿入抵抗を抑えることができる。
【0015】
(4)前記弾性部は、前記軸方向に延びて前記軸方向の両端部が連結した一対の延出部と、一対の前記延出部の間に形成された孔部と、を有し、
前記孔部の前記軸方向の寸法は、前記プレスフィット部が有するアイホールの前記軸方向の寸法よりも大きい、(2)又は(3)に記載のコネクタ。
【0016】
(4)のコネクタは、弾性部をプレスフィット部よりも撓み易い形態とすることが可能となり、アライメントプレートから付与される押圧力を柔軟に吸収し易くでき、その結果、回路基板に対してよりストレスがかかり難くすることができる。
【0017】
(5)前記挿通孔の開口形状は、円形状である、(1)から(4)のいずれかに記載のコネクタ。
【0018】
(5)のコネクタは、弾性部が基板接続部の軸線周りに傾いている場合であっても、弾性部に対する挿通孔の当たり具合いを安定させ易い。
【0019】
(6)前記端子金具は、前記弾性部を挟んで前記プレスフィット部と反対側に前記幅方向に張り出した張出部を有し、
前記張出部の前記軸方向の両端部のうち前記プレスフィット部とは反対側に位置する端部は、前記幅方向に沿った治具押圧面として構成され、
前記弾性部の前記幅方向の外縁は、前記張出部の前記幅方向の外縁と括れなく連なっている、(2)から(4)のいずれかに記載のコネクタ。
【0020】
(6)のコネクタは、弾性部と張出部とを一体化して形成でき、端子金具の形成工程を簡素化し易い。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
<実施形態1>
本開示のコネクタ1を具体化した実施形態1を、
図1から
図8を参照して説明する。図中、「前側」、「後側」、「上側」、「下側」、「右側」、及び「左側」は、それぞれ「F」、「B」、「U」、「D」、「R」、及び「L」で表される。なお、方向の基準は便宜的に規定したものであり、コネクタ1が車両等に搭載された状態における方向と必ずしも一致しない。例えば、上下方向は、重力方向に限定されない。
【0022】
図1に示すように、コネクタ1は、ハウジング10と、複数の端子金具11と、アライメントプレート12と、を備えている。ハウジング10は、合成樹脂製であり、端子保持部10Aと、フード部10Bと、左右対称な一対の側壁部10Cと、を有している。端子保持部10Aは、壁厚方向を前後方向に向けた方形の壁状をなす。フード部10Bは、端子保持部10Aの外周縁から前向きに角筒状に突出している。
【0023】
側壁部10Cは、壁厚方向を左右方向(端子保持部10Aの壁厚方向と直角な方向)に向け、端子保持部10Aの後面における左右両端部から後向きに突出している。側壁部10Cの各々には、左右対称な一対の係止部10Dが形成されている。ハウジング10の係止部10Dは、前後方向に延びて、側壁部10Cの左右方向の内側の下端縁部から左右方向内向きに突出している。各係止部10Dの前後方向中央部には、ガイド溝10Eが形成されている。ガイド溝10Eは、各係止部10Dにおいて左右方向外側に凹むように形成されている。
図1には、左側の係止部10Dにおけるガイド溝10Eのみ現れている。
【0024】
複数の端子金具11の各々は、細長い金属素材をL字形に屈曲した形状をなす。各端子金具11は、前後方向に延びる相手接続部11Aと、相手接続部11Aの後端から下方へ直角に延出した基板接続部11Bと、を有する。基板接続部11Bの上端部(基端部)は、相手接続部11Aの後端に連なっている。
図1には、全ての端子金具11は現れておらず、一部の端子金具11のみ表している。
【0025】
図2に示すように、基板接続部11Bの下端部(先端部)には、一対の張出部11Cと、弾性部11Dと、プレスフィット部11Eと、が設けられている。一対の張出部11Cは、左右方向外側に向けて(幅方向に)張り出して設けられている。張出部11Cの軸方向Adの両端部のうちプレスフィット部11Eとは反対側に位置する端部は、左右方向(幅方向)に沿った治具押圧面11Kとして構成されている。基板接続部11Bを回路基板SのスルーホールHに挿入する際、治具押圧面11Kには、上方から図示しない治具が押し当てられる。
【0026】
弾性部11Dは、一対の張出部11Cの下側に連なるように設けられている。弾性部11Dは、一対の延出部11Fと、一対の延出部11Fの間に形成された孔部11Gと、を有している。一対の延出部11Fは、その上端部同士が連結しつつ一対の張出部11Cの各々の下端から下向きに延びている。また、一対の延出部11Fの下端部同士が互いに連結している。一対の延出部11Fは、基板接続部11Bの軸方向Adに延びており、軸方向Adにおける両端部が連結している。
【0027】
一対の張出部11Cと、一対の延出部11Fとは、左右方向の外縁が面一に括れなく連なっている。言い換えると、弾性部11Dの左右方向(幅方向)の外縁は、一対の張出部11Cの左右方向(幅方向)の外縁と括れなく連なっている。一対の延出部11Fの下部は、左右方向の幅寸法が小さくなるように湾曲して形成されている。一対の延出部11Fは、左右方向外側から左右方向内向きに押圧されると、左右方向の幅寸法を狭めるように左右方向内向きに弾性変形し、孔部11G内へ進入する。そして、押圧を止めると、一対の延出部11Fは、弾性復帰する。
【0028】
プレスフィット部11Eは、弾性部11Dの下側に連なるように設けられている。つまり、張出部11Cは、弾性部11Dを挟んでプレスフィット部11Eと反対側に配置されている。プレスフィット部11Eは、一対の湾曲延出部11Hと、アイホール11Jと、を有している。一対の湾曲延出部11Hは、上下方向に延びており、その上端部及び下端部の各々が互いに連結しており、上下方向中央部が左右方向外向きに離れるように湾曲して形成されている。
【0029】
アイホール11Jは、一対の湾曲延出部11Hの間に形成されている。孔部11Gにおける軸方向Adの寸法は、アイホール11Jにおける軸方向Adの寸法よりも大きい。弾性部11Dとプレスフィット部11Eとは、左右方向の外縁が左右方向内向きに括れるように連なっている。プレスフィット部11Eの左右方向の最大幅寸法は、弾性部11Dの左右方向の最大幅寸法よりも小さくされている。一対の湾曲延出部11Hは、左右方向外側から左右方向内向きに押圧されると、左右方向の幅寸法を狭めるように左右方向内向きに弾性変形し、アイホール11J内へ撓んで進入する。そして、押圧を止めると、一対の湾曲延出部11Hは、弾性復帰する。
【0030】
図3に示すように、端子金具11は、相手接続部11Aを端子保持部10Aに前後方向に貫通させた状態で端子保持部10Aに保持されている。複数の端子金具11をハウジング10に取り付けて固定した状態では、相手接続部11A同士が互いに平行をなして並列するとともに、基板接続部11B同士が互いに平行をなして並列する。相手接続部11Aの前端部は、端子保持部10Aの前面からフード部10B内に前向きに突出している(図示せず)。
【0031】
相手接続部11Aの後端部と基板接続部11Bの全体は、端子保持部10Aの後方に露出している。弾性部11Dの下端部、及びプレスフィット部11Eは、側壁部10Cの下端縁よりも下方へ突出している(
図4参照)。
【0032】
アライメントプレート12は、合成樹脂製である。
図1に示すように、アライメントプレート12は、プレート本体12Aと、一対の係止片12Bと、一対のガイド片12Cと、を有している。プレート本体12Aは、板厚方向を上下方向(基板接続部11Bの軸方向Adと平行な方向)に向けた平板状をなす。プレート本体12Aは、長辺を左右方向に向けた長方形状をなしている。プレート本体12Aには、複数の基板接続部11Bを個別に挿通させる複数の挿通孔12Dが形成されている。挿通孔12Dの開口形状は、円形状をなしている(
図5参照)。挿通孔12Dは、上端から下端にかけて、徐々に縮径するように形成されている(
図6参照)。なお、
図1、5には、プレート本体12Aの左右方向両端の挿通孔12Dのみ表れている。
図1、5において、左右方向中央部の挿通孔12Dは図示を省略する。
【0033】
一対の係止片12Bは、プレート本体12Aの左右両側縁の各々に一つずつ設けられている。一対の係止片12Bは、プレート本体12Aの左右両側縁の各々から上向きに立ち上がり、上端部が左右方向外向きに突出して設けられている。
【0034】
一対のガイド片12Cは、プレート本体12Aの左右両側縁の各々に一つずつ設けられている。一対のガイド片12Cは、一対の係止片12Bよりも前方に配置されている。一対のガイド片12Cは、プレート本体12Aの左右両側縁の各々から左右方向外向きに突出して設けられている。ガイド片12Cは、ガイド溝10Eに嵌合可能となっている(図示せず)。
【0035】
図7に示すように、アライメントプレート12は、挿通孔12Dに基板接続部11Bを貫通させた状態でハウジング10の一対の側壁部10Cの間に装着される。具体的には、ハウジング10に端子金具11が取り付けられた状態の基板接続部11Bをアライメントプレート12の挿通孔12Dに上方から挿通させる。このとき、先ず、プレスフィット部11Eを上方から挿通孔12Dに挿通する。プレスフィット部11Eの左右方向(幅方向)における最大幅寸法は、挿通孔12Dの左右方向(幅方向)における最小寸法(挿通孔12Dの下端の内径寸法)よりも小さい。このため、プレスフィット部11Eは、挿通孔12Dとの間に生じる接触抵抗が小さい、又は無い状態で挿通孔12Dを下向きに通過する。
【0036】
次に、アライメントプレート12の一対の係止片12Bは、ハウジング10の一対の係止部10Dに接触して左右方向内向きに弾性変形する。これとともに、一対のガイド片12Cは、ハウジング10の一対のガイド溝10Eに嵌合する(図示せず)。
【0037】
アライメントプレート12の上向きの移動を続けると、次に、弾性部11Dが挿通孔12Dに挿通される。弾性部11Dの最大幅寸法は、挿通孔12Dの左右方向(幅方向)における最大寸法(挿通孔12Dの上端の内径寸法)よりも小さく、挿通孔12Dの左右方向(幅方向)における最小寸法(挿通孔12Dの下端の内径寸法)よりも大きく形成されている。このため、弾性部11Dは、挿通孔12Dに対して上下方向の途中まで挿通されたところで、一対の延出部11Fの外縁が挿通孔12Dの内面に接触して止まる。このとき、孔部11Gは、プレート本体12Aよりも上方と、プレート本体12Aよりも下方と、に飛び出すように配置される。すなわち、基板接続部11Bにおける挿通孔12D内に配置される部分は、基板接続部11Bの軸方向Adと直交する左右方向(幅方向)に弾性変形可能な弾性部11Dとして構成されている。そして、一対の係止片12Bの上端部がハウジング10の一対の係止部10Dを上向きに通過して、一対の係止片12Bは、弾性復帰する。
【0038】
こうして、アライメントプレート12の挿通孔12Dは、その内面に一対の延出部11Fの外縁が接触することによって、貫通された各基板接続部11Bの相対位置を位置決めして、ハウジング10に装着される。挿通孔12Dは、基板接続部11Bを位置決め可能である。
【0039】
回路基板Sにコネクタ1を、
図8に示すように取り付ける。具体的には、回路基板Sには、複数のスルーホールHが板厚方向に貫通して形成されている。各スルーホールHには、プレスフィット部11Eの一対の湾曲延出部11Hが弾性変形した状態で挿通される。例えば、治具押圧面11Kに治具を押し当てることによって、各スルーホールHに各プレスフィット部11Eを圧入する。プレスフィット部11EがスルーホールHに挿通されると一対の湾曲延出部11Hは、互いに近づく向きに弾性変形する。これにより、スルーホールHの内面には、プレスフィット部11Eの一対の湾曲延出部11Hが弾性的に接触する。こうして、コネクタ1を回路基板Sに取り付ける。つまり、基板接続部11Bにおける回路基板SのスルーホールH内に位置する部分は、左右方向(幅方向)に弾性変形可能なプレスフィット部11Eとして構成されている。
【0040】
次に、実施形態1の作用を説明する。
【0041】
コネクタ1は、相手接続部11A及び基板接続部11Bを有する端子金具11と、相手接続部11Aが貫通して保持されるハウジング10と、ハウジング10に装着され、基板接続部11Bを位置決め可能な挿通孔12Dを有するアライメントプレート12と、を備えている。端子金具11の基板接続部11Bにおける挿通孔12D内に配置される部分は、基板接続部11Bの軸方向Adと直交する左右方向(幅方向)に弾性変形可能な弾性部11Dとして構成されている。
【0042】
アライメントプレート12が加熱又は冷却されると、その体積は膨張又は収縮する。このとき、挿通孔12Dも膨張又は収縮し、挿通孔12Dが大きく又は小さくなる。このため、アライメントプレート12が膨張又は収縮すると、基板接続部11Bには、アライメントプレート12から軸方向Adと直交する向きから押圧力が付与され、これにより、基板接続部11Bが接続する回路基板Sに対してストレスがかかるおそれがある。本開示のコネクタ1は、アライメントプレート12が膨張又は収縮した場合であっても、弾性部11Dによってアライメントプレート12からの押圧力を吸収し、基板接続部11Bが接続する回路基板Sにストレスがかかることを防止する構成が可能となる。また、アライメントプレート12には弾性変形する構成を不要とし挿通孔12Dの間の距離を狭め易いので、コネクタ1を小型化する場合には有利である。
【0043】
基板接続部11Bにおける回路基板SのスルーホールH内に位置する部分は、幅方向に弾性変形可能なプレスフィット部11Eとして構成されている。この構成によれば、プレスフィット部11Eが弾性変形可能なので、基板接続部11Bがアライメントプレート12によって動かされたとしても、回路基板Sに対してよりストレスがかかり難くできる。
【0044】
プレスフィット部11Eの左右方向(幅方向)における最大幅寸法は、挿通孔12Dの左右方向(幅方向)における最小寸法よりも小さい。この構成によれば、プレスフィット部11Eを挿通孔12Dに挿通する際に生じる挿入抵抗を抑えることができる。
【0045】
弾性部11Dは、軸方向Adに延びて軸方向Adの両端部が連結した一対の延出部11Fと、一対の延出部11Fの間に形成された孔部11Gと、を有し、孔部11Gの軸方向Adの寸法は、プレスフィット部11Eが有するアイホール11Jの軸方向Adの寸法よりも大きい。この構成によれば、弾性部11Dをプレスフィット部11Eよりも撓み易い形態とすることが可能となり、アライメントプレート12から付与される押圧力を柔軟に吸収し易くでき、その結果、回路基板Sに対してよりストレスがかかり難くすることができる。
【0046】
挿通孔12Dの開口形状は、円形状である。この構成によれば、弾性部11Dが基板接続部11Bの軸線周りに傾いている場合であっても、弾性部11Dに対する挿通孔12Dの当たり具合いを安定させ易い。
【0047】
端子金具11は、弾性部11Dを挟んでプレスフィット部11Eと反対側に幅方向に張り出した張出部11Cを有し、張出部11Cの軸方向Adの両端部のうちプレスフィット部11Eとは反対側に位置する端部は、幅方向に沿った治具押圧面11Kとして構成され、弾性部11Dの幅方向の外縁は、張出部11Cの幅方向の外縁と面一に括れなく連なっている。この構成によれば、弾性部11Dと張出部11Cとを一体化して形成でき、端子金具11の形成工程を簡素化し易い。
【0048】
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0049】
実施形態1とは異なり、弾性部の延出部と、張出部と、の間を括れるように連結した形態であっても基板接続部として使用することが可能である。
【0050】
実施形態1とは異なり、プレスフィット部を設けず、基板接続部をスルーホールに挿通し、回路基板に対して半田を用いて固定する構成としてもよい。
【0051】
実施形態1とは異なり、挿通孔の開口形状を楕円形状や方形形状としてもよい。
【0052】
実施形態1とは異なり、プレスフィット部にアイホールを設けないZ型やM型等の形態を採用してもよい。
【0053】
実施形態1とは異なり、弾性部及びプレスフィット部を前後方向に弾性変形可能に配置してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 :コネクタ
10 :ハウジング
10A :端子保持部
10B :フード部
10C :側壁部
10D :係止部
10E :ガイド溝
11 :端子金具
11A :相手接続部
11B :基板接続部
11C :張出部
11D :弾性部
11E :プレスフィット部
11F :延出部
11G :孔部
11H :湾曲延出部
11J :アイホール
11K :治具押圧面
12 :アライメントプレート
12A :プレート本体
12B :係止片
12C :ガイド片
12D :挿通孔
Ad :基板接続部の軸方向
H :スルーホール
S :回路基板