IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 星光PMC株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099144
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】紙用柔軟剤及び紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/24 20060101AFI20250626BHJP
   D21H 17/07 20060101ALI20250626BHJP
   D21H 17/06 20060101ALI20250626BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
D21H21/24
D21H17/07
D21H17/06
A47K10/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215575
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】CHEMIPAZ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西 隆之
(72)【発明者】
【氏名】今井 美希
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 大輔
【テーマコード(参考)】
2D135
4L055
【Fターム(参考)】
2D135AA01
2D135AA02
2D135AA07
2D135AB02
2D135AB03
2D135AB06
2D135BA08
2D135DA28
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG34
4L055AG35
4L055AH29
4L055AH50
4L055CG32
4L055EA30
4L055EA32
4L055FA13
4L055FA16
4L055GA29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、パルプスラリーに添加した際に、優れた風合いを付与し、紙力の低下が少ない、紙用柔軟剤及び当該紙用柔軟剤を含有する紙を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)成分として、
(a1)ポリオキシアルキレンモノアルキル(又はアルケニル)アミン
(a2)ポリオキシアルキレンモノアルキル(又はアルケニル)プロピレンジアミンから選ばれる少なくとも1種であり、炭素素数が特定の範囲内である化合物
及び
(B)成分として、
(b1)ポリオキシアルキレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル
(b2)ポリオキシアルキレンモノアルキル(又はアルケニル)エステル
(b3)ポリオキシアルキレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテルモノアルケニルエステル
から選ばれる少なくとも1種であり、炭素素数が特定の範囲内である化合物
を含む紙用柔軟剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、
(a1)ポリオキシアルキレンモノアルキルアミン、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルアミン
(a2)ポリオキシアルキレンモノアルキルプロピレンジアミン、又はポリオキアルキレンモノアルケニルプロピレンジアミン
から選ばれる少なくとも1種であって、オキシアルキレン基の炭素数が2又は3であり、アルキル又はアルケニル基の炭素数が8~18である化合物
及び
(B)成分として、
(b1)ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル
(b2)ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエステル
(b3)ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルモノアルケニルエステル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルモノアルケニルエステル、
から選ばれる少なくとも1種であって、オキシアルキレン基の炭素数が2又は3であり、アルキル又はアルケニル基の炭素数が10~18である化合物
を含む紙用柔軟剤。
【請求項2】
(A)成分のオキシアルキレン基がエチレンオキシド基であることを特徴とする、請求項1に記載の紙用柔軟剤。
【請求項3】
(B)成分が(b1)、(b2)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の紙用柔軟剤。
【請求項4】
(B)成分が(b1)であり、オキシアルキレン基としてエチレンオキシド基及びプロピレンオキシド基を含むことを特徴とする、
請求項3に記載の紙用柔軟剤。
【請求項5】
(A)成分と(B)成分の質量比が(A)/(B)=80/20~20/80であることを特徴とする、請求項1に記載の紙用柔軟剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の紙用柔軟剤を0.01~3質量%含有することを特徴とする紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプスラリーに添加した際に、優れた風合いを付与し、紙力の低下が少ない、紙用柔軟剤及び当該紙用柔軟剤を含有する紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、タオルペーパー等の衛生用紙には、風合が良好で、破れ難いといった特性が求められている。一般に、紙用柔軟剤はセルロース繊維の表面に定着して風合を向上させるが、同時にセルロース繊維間の水素結合を阻害して紙力を低下させる。 そのため、優れた風合を付与し、かつ、紙力の低下が少ない紙用柔軟剤が求められている。
【0003】
従来の紙用柔軟剤としては、ジ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩(例えば特許文献1参照)に代表される4級アンモニウム塩型柔軟剤や、ポリアルキレンアルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤(例えば特許文献2,3参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、4級アンモニウム塩型柔軟剤は紙力の低下が大きく、その使用量に制限があった。また、非イオン性界面活性剤は、パルプスラリーに添加した場合に、紙への定着が悪く、その柔軟効果は十分に満足されるものではなかった。
【0005】
これらの問題に対して、4級アンモニウム塩型柔軟剤と非イオン性界面活性剤を予め混合してパルプスラリーに添加することで、非イオン性界面活性剤の定着を向上させた紙用柔軟剤(例えば、特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-165597号公報
【特許文献2】特公昭41-9801号公報
【特許文献3】特開昭56-107072号公報
【特許文献4】特開2004-44058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4で示された柔軟剤を使用して製造した紙も、風合は必ずしも十分ではなく、紙力の低下は依然として大きかった。
【0008】
本発明は、パルプスラリーに添加した際に、優れた風合を紙に付与し、紙力の低下が少ない紙用柔軟剤及び紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の構造を有する3級アミン化合物と非イオン性界面活性剤を予め混合してなる紙用柔軟剤が、優れた風合を示し、紙力の低下が小さいことを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、前記課題を解決するための手段である本発明は、
<1>(A)成分として、
(a1)ポリオキシアルキレンモノアルキルアミン、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルアミン
(a2)ポリオキシアルキレンモノアルキルプロピレンジアミン、又はポリオキアルキレンモノアルケニルプロピレンジアミン
から選ばれる少なくとも1種であって、オキシアルキレン基の炭素数が2又は3であり、アルキル又はアルケニル基の炭素数が8~18である化合物
及び
(B)成分として、
(b1)ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル
(b2)ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエステル
(b3)ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルモノアルケニルエステル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルモノアルケニルエステル、
から選ばれる少なくとも1種であって、オキシアルキレン基の炭素数が2又は3であり、アルキル又はアルケニル基の炭素数が10~18である化合物
を含む紙用柔軟剤、
<2>
(A)成分のオキシアルキレン基がエチレンオキシド基であることを特徴とする、前記<1>に記載の紙用柔軟剤、
<3>
(B)成分が(b1)、(b2)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記<1>に記載の紙用柔軟剤、
<4>
(B)成分が(b1)であり、オキシアルキレン基としてエチレンオキシド基及びプロピレンオキシド基を含むことを特徴とする、
前記<3>に記載の紙用柔軟剤、
<5>
(A)成分と(B)成分の質量比が(A)/(B)=80/20~20/80であることを特徴とする、前記<1>に記載の紙用柔軟剤、
<6>
前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の紙用柔軟剤を0.01~3質量%含有することを特徴とする紙、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた風合を紙に付与し、紙力の低下が小さい紙用柔軟剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、下記(A)成分及び(B)成分を含むことを特徴とする紙用柔軟剤である。(A)成分及び(B)成分は、それぞれ1種類のみを用いても良いし、2種類以上を混合してもよい。
【0013】
本発明における(A)成分は
(a1)ポリオキシアルキレンモノアルキルアミン、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルアミン
(a2)ポリオキシアルキレンモノアルキルプロピレンジアミン、又はポリオキアルキレンモノアルケニルプロピレンジアミン
から選ばれる少なくとも1種であって、オキシアルキレン基の炭素数が2又は3であり、アルキル又はアルケニル基の炭素数が8~18である化合物である。
【0014】
本発明で使用する化合物(a1)は、炭素数8~18のアルキル又はアルケニル基を有する1級アミンに2つ以上のオキシアルキレン基が付加した3級アミンの構造を有し、アミン1モルに対し、所定数のオキシアルキレン基が付加した化合物が市販されており、容易に入手可能である。
【0015】
化合物(a1)のオキシアルキレン基は、炭素数2のオキシアルキレン基(以下、エチレンオキサイド基とする)又は炭素数3のオキシアルキレン基(以下、プロピレンオキサイド基とする)であり、これらは単独で含んでいても良いし、二種を含んでも良い。二種を含む場合エチレンオキサイド基、及び/又はプロピレンオキサイド基の付加形態はランダムでもブロックでも良い。風合向上の観点から、各オキシアルキレン基の付加数の合計は2~20が好ましく、さらに好ましくは2~10である。また、好ましくはエチレンオキサイド基である。
【0016】
化合物(a1)のアルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数は、水への分散性、紙への風合付与の観点から、8~18である。炭素数8~18のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する1級アミンとしては、オクチルアミン(オクタン-1-アミン)、デシルアミン(デカン-1-アミン)、ラウリルアミン(ドデカン-1-アミン)、ミリスチルアミン(テトラデカン-1-アミン)、セチルアミン(ヘキサデカン-1-アミン)、ステアリルアミン(オクタデカン-1-アミン)、オレイルアミン((Z)-9-オクタデセン-1-アミン)等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0017】
化合物(a1)の市販されているものとして、例えば、青木油脂工業株式会社製「ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アルキルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン」、花王株式会社製「ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン」、日本油脂株式会社製「ポリオキシエチレンヤシアルキルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アルキルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン」、ライオン株式会社製「ポリオキシエチレンヤシアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヤシアルキルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン」、三洋化成工業株式会社製「脂肪族アミン系ポリオール」が挙げられる。
【0018】
本発明で使用する化合物(a2)は、炭素数8~18のアルキル又はアルケニル基を有するプロピレンジアミンに、オキシアルキレン基が3つ以上付加した3級アミンを2つ有する構造であり、ジアミン1モルに対し、所定数のオキシアルキレン基が付加した化合物が市販されており、容易に入手可能である。
【0019】
化合物(a2)のオキシアルキレン基は、エチレンオキサイド基又はプロピレンオキサイド基であり、これらは単独で含んでいても良いし、二種を含んでも良い。二種を含む場合エチレンオキサイド基、及び/又はプロピレンオキサイド基の付加形態はランダムでもブロックでも良い。風合向上の観点から、各オキシアルキレン基の付加数の合計は3~20が好ましく、さらに好ましくは3~10である。また、好ましくはエチレンオキサイド基である。
【0020】
化合物(a2)のアルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数は、水への分散性、紙への風合付与の観点から、14~18である。炭素数14~18のアルキル基及び/又はアルケニル基を有するプロピレンジアミンとしては、 N-アルキル(C14~C18)-プロピレンジアミン、 N-硬化牛脂-プロピレンジアミン、 N-ステアリル-プロピレンジアミン等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0021】
化合物(a2)の市販されているものとして、例えば、青木油脂工業株式会社製「ポリオキシエチレン牛脂プロピレンジアミン、ポリオキシエチレンステアリルプロピレンジアミン」、日本油脂株式会社製「ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミン」、ライオン株式会社製「ポリオキシエチレン牛脂アルキルプロピレンジアミンン」が挙げられる。
【0022】
本発明における(B)成分は、
(b1)ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル
(b2)ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエステル
(b3)ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルモノアルケニルエステル、又はポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルモノアルケニルエステル
から選ばれる少なくとも1種であって、オキシアルキレン基の炭素数が2又は3であり、アルキル又はアルケニル基の炭素数が10~18である化合物である。
【0023】
本発明で使用する化合物(b1)は、炭素数10~18のアルコールにオキシアルキレン基が付加した構造を有し、アルコール1モルに対し、所定数のオキシアルキレン基が付加した化合物が市販されており、容易に入手可能である。
【0024】
化合物(b1)のオキシアルキレン基は、エチレンオキサイド基又はプロピレンオキサイド基であり、これらは単独で含んでいても良いし、二種を含んでいても良いが、エチレンオキサイド基とプロピレンオキサイド基の両方を用いる含むものが好ましい。エチレンオキサイド基、及び/又はプロピレンオキサイド基の付加形態はランダムでもブロックでも良い。
【0025】
炭素数10~18のアルコールは、直鎖アルコール、分岐を有するアルコール、飽和アルコール、及び不飽和アルコールのいずれでも良い。これら各種アルコールの中でもデシルアルコール(デカン-1-オール)、ラウリルアルコール(ドデカン-1-オール)、トリデシルアルコール(トリデカン-1-オール)、ミリスチルアルコール(テトラデカン-1-オール)、セチルアルコール(ヘキサデカン-1-オール)、ステアリルアルコール(オクタデカン-1-オール)、及びオレイルアルコール((Z)-9-オクタデセン-1-オール)が好ましい。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0026】
化合物(b1)の市販されているものとして、青木油脂工業株式会社製「ファインサーフ(登録商標)」シリーズ、「ブラウノン(登録商標)」シリーズ、「ワンダサーフ(登録商標)」シリーズ、花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)」シリーズ、日本油脂株式会社製「ノニオン」シリーズ、「ユニルーブ(登録商標)」シリーズ、ミヨシ油脂株式会社製「ペレテックス(登録商標)」シリーズ、ライオン株式会社製「レオックス(登録商標)」シリーズ、「レオコール(登録商標)」シリーズ、「ライオノール(登録商標)」シリーズが挙げられる。
【0027】
本発明で使用する化合物(b2)は、炭素数10~18の脂肪酸にオキシアルキレン基が付加した構造を有し、脂肪酸1モルに対し、所定数のオキシアルキレン基が付加した化合物が市販されており、容易に入手可能である。
【0028】
化合物(b2)のオキシアルキレン基は、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基であり、これらは単独で含んでいても良いし、二種を含んでいても良いが、エチレンオキサイド基とプロピレンオキサイド基の両方を含むものが好ましい。エチレンオキサイド基及び/又はプロピレンオキサイド基の付加形態はランダムでもブロックでも良い。
【0029】
炭素数10~18の脂肪酸は、直鎖脂肪酸、分岐を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸のいずれでも良い。これら各種脂肪酸の中でもラウリン酸(ドデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、及びオレイン酸(オクタデセン酸)が好ましい。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0030】
化合物(b2)の市販されているものとして、青木油脂工業株式会社製「ファインサーフ(登録商標)」シリーズ、「ブラウノン(登録商標)」シリーズ、花王株式会社製「エマトーンシリーズ」、日本油脂株式会社製「ノニオン」シリーズ、「ユニルーブ(登録商標)」シリーズ、ミヨシ油脂株式会社製「ペレテックス(登録商標)」シリーズ、ライオン株式会社製「レオファット(登録商標)」シリーズが挙げられる。
【0031】
本発明で使用する化合物(b3)は、炭素数10~18のアルキル基及び/又はアルケニル基を有するアルコール化合物に、所定数のアルキレンオキサイド基を付加させた後、炭素数10~18の脂肪酸を反応させた化合物が市販されており、容易に入手可能である。
【0032】
化合物(b3)のオキシアルキレン基は、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基であり、これらは単独で含んでいても良いし、二種を含んでいても良いが、エチレンオキサイド基とプロピレンオキサイド基の両方を含むものが好ましい。エチレンオキサイド基及び/又はプロピレンオキサイド基の付加形態はランダムでもブロックでも良い。
【0033】
炭素数10~18のアルコールは、直鎖アルコール、分岐を有するアルコール、飽和アルコール、及び不飽和アルコールのいずれでも良く、中でもミリスチルアルコール(テトラデカン-1-オール)、及びオレイルアルコール((Z)-9-オクタデセン-1-オール)が好ましい。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0034】
炭素数10~18の脂肪酸は、直鎖脂肪酸、分岐を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸のいずれでも良いが、オレイン酸(オクタデセン酸)が好ましい。
【0035】
本発明における(B)成分としては、少なくとも化合物(b1)及び/又は化合物(b2)を含むことが、得られる紙の風合の観点から好ましい。
【0036】
本発明におけるA成分とB成分との質量比(%)は、A/B=80/20~20/80が好ましく、さらに好ましくは、A/B=60/40~40/60である。A成分の割合が80以下とすることで、風合が良好でありかつ紙力の低下が少なくなり、20以上とすることで、良好な風合とともに十分な柔軟性を得ることができる。
【0037】
本発明の紙用柔軟剤は、無溶媒下又は溶媒中に前記A成分及び前記B成分を含有する。前記溶媒としては例えば水、イソプロピルアルコール等のアルコール等を挙げることができる。
【0038】
本発明の紙用柔軟剤の溶媒として水を使用する場合は、保存安定性を向上する為に、pH調整剤を用いてpHを調整することができる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;アンモニア等のモノアミン化合物が挙げられる。
【0039】
本発明の紙用柔軟剤は前記の割合で(A)成分及び(B)成分とを混合することにより、いっそう好ましい紙用柔軟剤を得ることができる。この紙用柔軟剤は、紙料(パルプスラリー)に添加して使用することで、紙の風合と柔軟性を向上させることができる。A成分とB成分とを別々に紙料に添加すると本発明の目的は達成できない。このように本発明に係る紙用柔軟剤は、A成分における疎水部とB成分における疎水部とがファンデルワールス力により緩やかに結合し、(A)成分及び(B)成分からなるミセルが形成されるため、(A)成分と(B)成分とを別々に添加したときには得られない本発明の技術的効果が奏されるものと考えられる。
【0040】
本発明で用いる紙用柔軟剤は、通常、パルプの絶乾重量に対し(A)成分及び(B)成分の合計が0.01~3質量%、好ましくは0.02~1.5質量%の使用割合で添加すればよい。0.02質量%未満では十分な風合向上効果が得られない場合があり、1.5質量%を超えては、紙力の低下が大きくなる場合がある。
【0041】
かくして、得られた本発明の紙用柔軟剤は、紙料に添加することにより、優れた風合を紙に付与し、紙力の低下が小さい紙を得る事ができる。
【0042】
本発明の紙用柔軟剤を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、及び感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、及び純白ロール紙等の包装用紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、及びキッチンペーパーなどの衛生用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、及び石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。この中でも特に衛生用紙が好ましい。
【0043】
本発明の紙用柔軟剤を含有する紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料とポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有してもよい。
【0044】
本発明の紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、嵩高剤、紙厚向上剤、不透明化剤、及び濾水性向上剤などの添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の紙用柔軟剤と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。
【0045】
填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0046】
サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのような脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン、及びロジンエステル系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2-オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0047】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。
【0048】
湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。また、湿潤紙力向上剤は本発明の紙用柔軟剤を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【0049】
歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0050】
濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、又はカチオン性、両性若しくはアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0051】
また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、又はカレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール、及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、防滑剤、並びに多価アルコール系の保湿剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて質量%である。
【0053】
(実施例1)
晒クラフトパルプ(広葉樹/針葉樹=7/3)を、ナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアンスタンダード・フリーネス(CSF)を550、濃度2.4%のパルプスラリーを調整した。パルプスラリーを撹拌しながら、表1の実施例1記載の紙用柔軟剤の1%希釈液を(A)成分及び(B)成分の合計がパルプの絶乾重量に対して0.3%となる様に添加した。1分間撹拌後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、湿度50%の条件下に24時間調湿した。
【0054】
<紙の評価>
(風合の評価)
得られた調湿後の手抄き紙2枚を両面が表面となるように重ね、手で握って風合の官能評価を行った。
10名で評価を行い、10人中8人以上が触り心地を良いと感じた紙を◎、10人中5人以上8人未満が触り心地を良いと感じた紙を○、10人中5人以上が触り心地を悪いと感じた紙を×、上記以外を△とし、風合を3段階評価した。結果を表1に示す。
評価:風合優れる◎←○←△←×風合劣る。
【0055】
(乾燥強度及び柔軟性の評価)
得られた調湿後の手抄き紙に対し、乾燥引張強度および柔軟性の指標としてヤング率の測定を下記方法により測定した。結果を表1に示す。
乾燥引張強度:JIS P8113に準拠
ヤング率:野村商事製配向性測定器SST-2500により超音波伝播速度Vを測定し、下記式よりヤング率を求めた。数値が低いほど紙が柔軟になったことを示す。
ヤング率∝ρV2(ρ:密度)
【0056】
<紙用柔軟剤の評価>
(希釈分散性の評価)
50ミリリットルのビーカーに水30ミリリットルを入れ、回転数300rpm(回転子30mm×7mm)で攪拌しながら、使用液の温度を25℃にし、そのまま攪拌をしつつ、実施例1記載の紙用柔軟剤を0.3ミリリットル添加して、目視にて均一になるまでの時間を測定した。
時間が短いほど分散性に優れており、結果を表1に示す。
◎:30秒未満で分散したもの
○:30以上60秒未満で分散したもの
△:60秒以上120秒未満で分散したもの
×:120秒以上を要したもの
【0057】
(静置安定性の評価)
表1の実施例1記載の紙用柔軟剤を25℃で1ヶ月間静置したときの安定性を調べた。評価は、紙用柔軟剤が、25℃で1ヶ月間静置したとき目視で多層分離していない場合を○、多層分離したものと認められる場合を×と評価した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2~10)、(比較例1~7)
実施例1で用いた紙用柔軟剤を表1の実施例2~10、比較例2~7の紙用柔軟剤に変えた以外は実施例1と同様にして、坪量40g/mの手抄き紙を得た。比較例1にあっては、紙用柔軟剤を用いない外は前記実施例1と同様にして、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、湿度50%の条件下に24時間調湿した。調湿後の手すき紙の風合、乾燥引張強度、ヤング率、を上記実施例1と同様の方法により測定した。また、表1の実施例2~10、比較例2~7の紙用柔軟剤の分散性、静置安定性の評価を上記実施例1に記載した方法と同様の方法により測定した。ただし、比較例7の紙用柔軟剤においては市販の28%水溶液を希釈して実施例1に記載した方法と同一の濃度に希釈して測定した。測定結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
<表中の語句の説明>
脂肪族アミン系ポリオール:三洋化成工業株式会社製「サンニックス(登録商標)AP-470」
ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンヤシアルキルアミン(8EO)(8PO):ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)C/18-18」
ポリオキシエチレンステアリルアミン:日本油脂株式会社製「ナイミーン(登録商標)S-204」
N,N′,N′-ポリオキシエチレン-N-アルキル(牛脂)-1,3-ジアミノプロパン(15EO):ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)DA-T/25」
ポリオキシエチレンラウリルアミン:青木油脂工業株式会社製「ブラウノン(登録商標)L-202」
N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)O/12」
ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミン:日本油脂株式会社製「ナイミーン(登録商標)DT-208」
ポリオキシエチレンオレイルアミン(5EO):ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)O/15」
N,N′,N′-トリス(2-ヒドロキシエチル)-N-アルキル(牛脂)1,3-ジアミノプロパン:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)DA-T/13」
ステアリルアミン:花王株式会社製「ファーミン(登録商標)80S」
ラウリルアミン:花王株式会社製「ファーミン(登録商標)20D」
オレイルアミン:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポミン(登録商標)OD」
ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド:花王株式会社製「コータミン86W」(28%水溶液)
POEPOPMSEO:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテルのオレイン酸エステルの略
POEPOPOEO:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテルのオレイン酸エステルの略
ポリオキシエチレンデシルエーテル:青木油脂工業株式会社製「ファインサーフ(登録商標)D-1303」
ポリオキシプロピレンステアリルエーテル:日本油脂株式会社製「ユニルーブ(登録商標)MS-70K」
ポリオキシエチレンオレイルエステル:青木油脂工業株式会社製「ブラウノン(登録商標)O-200SA」
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル:青木油脂工業株式会社製「ワンダサーフ(登録商標)S-1000」
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル:青木油脂工業株式会社製「ブラウノン(登録商標)SA-30/70 2000R」
【0060】
(実施例11)
晒クラフトパルプ(広葉樹/針葉樹=7/3)を、ナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアンスタンダード・フリーネス(CSF)を550、濃度2.4%のパルプスラリーを調整した。パルプスラリーを撹拌しながら、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(WS4020:星光PMC製)を0.05%添加した後、表2の実施例11記載の紙用柔軟剤の1%希釈液を(A)成分及び(B)成分の合計がパルプの絶乾重量に対して0.3%となる様に添加した。1分間撹拌後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、湿度50%の条件下に24時間調湿した。調湿後の手抄き紙の風合、乾燥引張強度、ヤング率の評価を上記実施例1と同様の方法により測定を行った。また、表2の実施例11記載の紙用柔軟剤の分散性、静置安定性の評価を前記実施例1と同様の方法により測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0061】
(実施例12~17)、(比較例8~10)
実施例11で用いた紙用柔軟剤を表2の実施例12~17、比較例9、10の紙用柔軟剤に変えた以外は実施例11と同様にして、坪量40g/mの手抄き紙を得た。比較例8にあっては、紙用柔軟剤を用いない外は前記実施例1と同様にして、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、湿度50%の条件下に24時間調湿した。調湿後の手抄き紙の風合、乾燥引張強度、ヤング率の評価を上記実施例1と同様の方法により測定を行った。また、表2の実施例12~17、比較例9、10の紙用柔軟剤の分散性、静置安定性の評価を前記実施例1と同様の方法により測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
<表中の語句の説明>
ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンヤシアルキルアミン(8EO)(8PO):ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)C/18-18」
ポリオキシエチレンステアリルアミン:日本油脂株式会社製「ナイミーン(登録商標)S-204」
N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン(EO2):ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)O/12」
ポリオキシエチレンオレイルアミン(5EO):ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)O/15」
N,N′,N′-トリス(2-ヒドロキシエチル)-N-アルキル(牛脂)1,3-ジアミノプロパン:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポノール(登録商標)DA-T/13」
POEPOPMSEO:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテルのオレイン酸エステルの略
POEPOPOEO:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテルのオレイン酸エステルの略
ポリオキシプロピレンステアリルエーテル:日本油脂株式会社製「ユニルーブ(登録商標)MS-70K」
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル:青木油脂工業株式会社製「ワンダサーフ(登録商標)S-1000」
【0063】
表1、表2に示したように、本発明の構成を満足する実施例1~17の紙用柔軟剤を含む内添紙は、本発明で特定したA成分及びB成分のどちらか片方でも欠ける比較例2~10に対し、柔軟性、風合が優れる紙が得られる。