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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099168
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】光電変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02S 30/20 20140101AFI20250626BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20250626BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20250626BHJP
【FI】
H02S30/20
H10K30/50
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215609
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】藩 テン
(72)【発明者】
【氏名】谷本 勉
(72)【発明者】
【氏名】冨田 要介
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251BA15
5F251XA32
(57)【要約】
【課題】従来の光電変換装置は、太陽電池における巻取り軸の近傍部分で応力による劣化が生じ、発電性能が低下する恐れがあった。
【解決手段】可撓性を有するシート2と、シート2に配置した可撓性を有する光電変換セルと、シート2の巻取り用の芯部材3とを備え、シート2の一端から他端に至る方向を展開方向とし、シート2に、複数の光電変換セルC1~C7を展開方向に並べて配置すると共に、隣接する光電変換セル同士の境界Bを芯部材3と平行に配置し、複数の光電変換セルC1~C7のうちの芯部材3に隣接する光電変換セルC1の展開方向の長さL1が、他の光電変換セルの展開方向の長さLよりも相対的に小さい光電変換装1とし、芯部材3に近接する光電変換セルC1の劣化を抑制して良好な発電性能を維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシートと、前記シートに配置した可撓性を有する光電変換セルと、前記シートの一端を連結した巻取り用の芯部材とを備えた光電変換装置であって、
前記シートの一端から他端に至る方向を展開方向とし、
前記シートに、複数の前記光電変換セルを前記展開方向に並べて配置すると共に、隣接する前記光電変換セル同士の境界を前記芯部材と平行に配置し、
複数の前記光電変換セルのうちの前記芯部材に隣接する光電変換セルの前記展開方向の長さが、他の光電変換セルの前記展開方向の長さよりも相対的に小さいことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
複数の前記光電変換セルは、前記展開方向の長さが互いに異なると共に、前記展開方向において、その長さが前記芯部材に近いものから小さい順に配置してあることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
全ての前記光電変換セル、又は前記芯部材に隣接する光電変換セル以外の他の光電変換セルが、前記芯部材と平行に配置した複数の分割セルから成り、
各々の前記光電変換セルは、前記展開方向において前記分割セルの数が順次増加すると共に、前記分割セルの面積が互いに等しく、互いに直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項4】
複数の前記光電変換セルが、単数又は並列接続された複数の前記光電変換セルから成る複数のモジュールに区画してあり、
各々の前記モジュールは、前記光電変換セルの総面積が互いに等しいと共に、互いに直列接続してあることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記光電変換セルが、有機太陽電池であり且つペロブスカイト太陽電池であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取り可能なシートに光電変換セルを配置した光電変換装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、上記したような光電変換装置は、例えば、ロールカーテン装置の名称で特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、建物の窓の上部に固定したボックス内に、ロールスクリーンを巻取り可能に備えると共に、ロールスクリーンの窓側の面に、フィルム型太陽電池を貼り付けた構造を有している。このロールカーテン装置は、ボックス内のロールスクリーンを引き出して展開させることにより、フィルム型太陽電池によって発電を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-42142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の光電変換装置は、ロールスクリーンの巻取り及び展開を繰り返し行うと、とくに、太陽電池における巻取り軸の近傍部分に、曲率半径の小さい曲げ及び引張の負荷が繰り返し加わり、これによる応力で太陽電池が劣化し、発電性能が低下する恐れがあるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、巻取りと展開が繰り返し行われるシート状の光電変換装置において、光電変換セルの劣化を抑制し、良好な発電性能を維持することができる光電変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる光電変換装置は、可撓性を有するシートと、シートに配置した可撓性を有する光電変換セルと、シートの一端を連結した巻取り用の芯部材とを備えた光電変換装置である。この光電変換装置は、シートの一端から他端に至る方向を展開方向とし、シートに、複数の光電変換セルを展開方向に並べて配置すると共に、隣接する光電変換セル同士の境界を芯部材と平行に配置している。そして、光電変換装置は、複数の光電変換セルのうちの芯部材に隣接する光電変換セルの展開方向の長さが、他の光電変換セルの展開方向の長さよりも相対的に小さいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる光電変換装置は、巻取りと展開が繰り返し行われるシート状の光電変換装置において、上記構成を採用したことにより、とくに、巻取り中心となる芯部材の近傍部分の光電変換セルの劣化を抑制し、良好な発電性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係わる光電変換装置の第1実施形態を説明する平面図である。
図2】車両のサンシェードに適用した光電変換装置を示す説明図である。
図3】本発明に係わる光電変換装置の第2実施形態を説明する平面図である。
図4】本発明に係わる光電変換装置の第3実施形態を説明する平面図である。
図5】光電変換セルの配置と出力との関係を示す説明図である。
図6】本発明に係わる光電変換装置の第4実施形態を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1に示す光電変換装置1は、可撓性を有するシート2と、シート2に配置した可撓性を有する光電変換セルC1~C7と、シート2の一端を連結した巻取り用の芯部材3とを備えている。
【0010】
上記の光電変換装置1は、シート2の一端から他端に至る方向(図1中で左方向)を展開方向とし、その逆方向を巻取り方向として、シート2に、複数(図示例では7つ)の光電変換セルC1~C7を展開方向に並べて配置すると共に、隣接する光電変換セル同士の境界Bを芯部材3と平行に配置している。
【0011】
そして、上記の光電変換装置1は、複数の光電変換セルC1~C7のうちの芯部材3に隣接する光電変換セルC1の展開方向の長さL1が、他の光電変換セル2~C7の展開方向の長さLよりも相対的に小さい構成である。
【0012】
シート2は、例えば樹脂製であり、図示例では展開方向を長辺とする長方形状を成している。各光電変換セルC1~C7は、可撓性を有するものであれば良く、より好ましい実施形態として、有機太陽電池であり且つペロブスカイト太陽電池である。
【0013】
また、芯部材3に隣接する光電変換セルC1の展開方向の長さL1は、光電変換セルCの性質や芯部材3の直径などに応じて選択することができ、例えば、芯部材3の全周の長さ又はそれ未満、芯部材3の半周の長さ又はそれ未満、芯部材3の直径の長さ又はそれ未満等々のように適宜選択することが可能である。
【0014】
各光電変換セルC1~C7は、いずれも展開方向に対して垂直方向の幅(図1中で上下方向の幅)を同一にした長方形状を成しており、展開方向の長さLが異なるものや同一のものを含めて配置してある。これにより、隣接する光電変換セル同士の境界Bは、芯部材3と平行な直線状を成している。
【0015】
上記の光電変換装置1は、例えば、図2に示すように、車両VのフロントガラスGの上部に取り付けたサンシェードとして用いられる。この場合、光電変換装置1は、フロントガラスGの上部(サンバイザーの位置)に取り付けたケースK内に収容してある。光電変換セルC1~C7は、シート2のフロントガラスG側の面に配置してある。
【0016】
ケースK内には、芯部材3を一定の回転方向に付勢するばねや、芯部材3に係脱自在なラッチ等で構成された周知の巻取り装置が配置してある。これにより、光電変換装置1は、シート2を引き下げて任意の位置まで展開させると、ラッチの係合により展開状態が維持され、巻取る際には、シート2を僅かに引き下げることで、ラッチによる拘束を解除し、ばねにより芯部材3を回転させて同シート2を自動的に巻き上げる。なお、シート2の他端(下端)には、ケースKの開放部に当接するストッパや操作用の引手、フロントガラスGに固定するための吸盤等を設けることができる。
【0017】
上記の光電変換装置1は、シート2を展開させた状態にすると、遮光体として機能すると共に、シート2に配置した光電変換セルC1~C7により発電を行い、不使用時には、芯部材3にシート2を巻取る。つまり、光電変換装置1は、巻取りと展開が繰り返し行われ、とくに、シート2における巻取り軸の近傍部分に、曲率半径の小さい曲げ及び引張の負荷が繰り返し加わる。
【0018】
これに対して、上記の光電変換装置1は、芯部材3に隣接する光電変換セルC1の展開方向の長さL1を、他の光電変換セル2~C7の展開方向の長さLよりも相対的に小さくした構造であるから、芯部材3に隣接する光電変換セルC1が過度に曲げられるのを防止して応力を緩和する。このようにして、上記の光電変換装置1は、巻取りと展開が繰り返し行われるシート状の光電変換装置において、とくに、芯部材3に隣接する光電変換セルC1の応力による劣化を抑制し、良好な発電性能を維持することができる。
【0019】
また、上記の光電変換装置1は、光電変換セルC1~C7が、有機太陽電池であり且つペロブスカイト太陽電池であるから、光電変換セルC1~C7の耐久性の向上や、柔軟性の向上を実現することができ、光電変換セルC1~C7の劣化防止機能をより一層高めることができる。
【0020】
図3図6は、本発明に係わる光電変換装置の第2~第4の実施形態を説明する図である。以下の各実施形態では、第1実施形態と同一の構成部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。なお、各図面は、便宜上、各構成を模式的に示しており、各構成の正確な位置や大きさ等は図示の限りでない。
【0021】
<第2実施形態>
図3に示す光電変換装置1において、複数(図示例では5つ)の光電変換セルC1~C5は、展開方向の長さL1~L5が互いに異なると共に、展開方向において、その長さL1~L5が芯部材3に近い光電変換セルC1から小さい順に配置してある。
【0022】
つまり、各光電変換セルC1~C5は、互いの境界Bが芯部材3に対して平行であると共に、芯部材3に隣接する光電変換セルC1の展開方法の長さL1が最小であり、展開方向において、夫々の長さL2~L5が順次増加している。したがって、各光電変換セルC1~C5は、展開方向において面積が順次増加する構造であり、例えば、直列に接続してある。
【0023】
上記構成を備えた光電変換装置1は、第1実施形態と同様に、とくに、巻取り中心となる芯部材3の近傍部分の光電変換セルC1の劣化を抑制し、良好な発電性能を維持することができるうえに、有効発電面積を広く確保することができ、全体の発電量を高めることができる。
【0024】
<第3実施形態>
図4に示す光電変換装置1は、複数(図示例では6つ)の光電変換セルC1~C6のうち、全ての光電変換セルC1~C6又は芯部材3に隣接する光電変換セルC1以外の他の光電変換セルC2~C6が、芯部材3と平行に配置した複数の分割セルSCから成る。
【0025】
なお、図示例の光電変換装置1は、芯部材3から2番目以降の光電変換セルC2~C6が、複数の分割セルSCから成る構成であるが、芯部材3に隣接する光電変換セルC1を複数の分割セルSCで構成しても良い。
【0026】
そして、分割セルSCから成る光電変換セルC2~C6は、展開方向において分割セルSCの数が順次増加すると共に、分割セルSCの面積が互いに等しく、互いに直列接続されている。
【0027】
すなわち、芯部材3から2番目の光電変換セルC2は、芯部材3に隣接する光電変換セルC1と同じ面積の分割セルSCを2つ備えている。また、3番目の光電変換セルC3は、2番目の光電変換セルC2における分割セルSCと同面積の分割セルSCを3つ備えている。以下、展開方向において、同面積の分割セルSCの数が、光電変換セル毎に順次増加する構造である。
【0028】
これにより、上記の光電変換装置1は、第2実施形態(図3参照)と同様に、展開方向において、各光電変換セルC1~C6の総有効面積が順次増加する構造である。
【0029】
ところで、光電変換装置1では、図5(A)に示すように、互いに面積が異なる一方のセルCAと他方のセルCBを直列に接続すると、図5(B)(C)に示すように、夫々の最適動作点(最大出力時)の電圧値が異なるので、大面積である他方のセルCBの出力が低下する場合がある。この場合、図5(D)に示すように、他方のセルCBを、一方のセルCAと同面積を有する2つの分割セルSCで構成すると、図5(E)に示すように、同面積の3つのセルCa、Cb,Cc、すなわち最適な電流電圧が等しい3つのセルCa、Cb,Ccを直列に接続した構造になり、図5(F)に示す出力を3倍にした総出力が得られる。
【0030】
そこで、この実施形態の光電変換装置1は、図4に示す上述の構成を採用することにより、第1実施形態と同様に、とくに、巻取り中心となる芯部材3の近傍部分の光電変換セルC1の劣化を抑制し、良好な発電性能を維持することができるうえに、最適動作点の相違によって生じる出力低下を防止することができる。
【0031】
また、上記の光電変換装置1は、発電性能が向上するので、例えば、図2に示すように、車両Vのサンシェードに適用した場合、補機等の電力源だけでなく、駆動系の電力源の一部として用いることが可能である。
【0032】
<第4実施形態>
図6に示す光電変換装置1は、光電変換セル同士の境界Bが芯部材3と平行で、且つ芯部材3に隣接する光電変換セルC1の展開方向の長さL1が相対的に小さい基本構成を有すると共に、複数(図示例では7つ)の光電変換セルC1~C7が、単数又は並列接続された複数の前記光電変換セルから成る複数(図示例では3つ)のモジュールM1~M3に区画してある。
【0033】
そして、上記の光電変換装置1における各々のモジュールM1~M3は、光電変換セルの総面積が互いに等しいと共に、互いに直列接続してある。図示の光電変換装置1は、より具体的には、展開方向において、芯部材3から4番目までの4つの光電変換セルC1~C4を並列に接続して第1モジュールM1を構成している。また、光電変換装置1は、5番目と6番目の2つの光電変換セルC5,C6を並列に接続して第2モジュールM2を構成し、7番目の1つの光電変換セルC7で第3モジュールM3を構成して、各モジュールM1~M3を直列に接続している。
【0034】
上記構成を備えた光電変換装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができるうえに、弟3実施形態と同様に、最適動作点の相違によって生じる出力低下を防止することができると共に、発電性能のさらなる向上を実現し得る。
【0035】
本発明に係わる光電変換装置は、その構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、車両用サンシェードに限らず、建物の窓用ロールカーテンなどにも当然適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 光電変換装置
2 シート
3 芯部材
B セル同士の境界
C1~C7 光電変換セル
M1~M3 モジュール
SB 分割セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6