(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099189
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20250626BHJP
G01R 31/08 20200101ALI20250626BHJP
H02H 3/00 20060101ALI20250626BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/08
H02H3/00 N
H02G3/04 081
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215640
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】松田 聡
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕孝
【テーマコード(参考)】
2G015
2G033
5G142
5G357
【Fターム(参考)】
2G015AA27
2G015BA02
2G015BA04
2G015CA01
2G015CA02
2G033AA05
2G033AB02
2G033AC05
2G033AD01
2G033AD18
2G033AD21
2G033AD24
2G033AE04
2G033AG13
5G142AB01
5G142AC01
5G142BB15
5G142BC01
5G142BD04
5G142HH05
5G357DB01
5G357DD05
5G357DE08
(57)【要約】
【課題】放電検出用導体に起因する電位分布の変化を生じないようにすることができる電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置を提供する。
【解決手段】電力伝送システムは、直流電力の正電圧が印加される第1導体と、直流電力の負電圧が印加される第2導体と、第1導体と第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサであって、第1導体と第2導体との中間部に放電検出用導体を含むものと、を備える電力伝送装置と、放電検出用導体に一端が接続された抵抗と、抵抗に流れる電流を検出する検出器とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力の正電圧が印加される第1導体と、
前記直流電力の負電圧が印加される第2導体と、
前記第1導体と前記第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサであって、前記第1導体と前記第2導体との中間部に放電検出用導体を含むものと、
を備える電力伝送装置と、
前記放電検出用導体に一端が接続された抵抗と、
前記抵抗に流れる電流を検出する検出器と
を備える電力伝送システム。
【請求項2】
前記第1導体は、平面を形成する第1部分を有し、
前記第2導体は、前記第1部分に対向する平面を形成する第2部分を有し、
前記第1スペーサは、前記第1部分と前記第2部分に対向する平面部を有する平板状の形状を有する
請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
前記抵抗の他端は前記直流電力の中性点に接続されている
請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記電力伝送装置は、中空部を有し、前記第1導体と前記第2導体と前記第1スペーサとを前記中空部に包蔵する絶縁体の第2スペーサをさらに備え、
前記中空部内に敷設された1または複数の光ファイバと、
前記1または複数の光ファイバが前記中空部内で受光したことを検出する第2検出器と
をさらに備える請求項3に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
前記光ファイバは複数であって、
前記複数の光ファイバの各受光部は、前記直流電力の伝送方向に対して互いに異なる位置に設けられている
請求項4に記載の電力伝送システム。
【請求項6】
少なくとも1つの前記光ファイバは前記直流電力の伝送方向に対して互いに異なる位置に複数の受光部を有し、
前記第2検出器は、前記光ファイバが受光した光の前記光ファイバの両端への到達時刻の時間差をさらに検出する
請求項4に記載の電力伝送システム。
【請求項7】
前記電力伝送装置は、
中空部を有し、前記第1導体と前記第2導体と前記第1スペーサとを前記中空部に包蔵する絶縁体の第2スペーサと、
前記第2スペーサを包蔵する導体の電線管と
をさらに備え、
前記電線管内に設置された1または複数のアンテナと、
前記1または複数のアンテナが前記電線管内で発生した電磁波を受信したことを検出する第3検出器と
をさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の電力伝送システム。
【請求項8】
直流電力の正電圧が印加される第1導体と、
前記直流電力の負電圧が印加される第2導体と、
前記第1導体と前記第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサであって、前記第1導体と前記第2導体との中間部に放電検出用導体を含むものと、
を備える電力伝送装置と、
前記放電検出用導体に一端が接続された抵抗と、
前記抵抗に流れる電流を検出する検出器と
を用いて、
前記電力伝送装置内で発生した部分放電を検出する
部分放電検出方法。
【請求項9】
直流電力の正電圧が印加される第1導体と、
前記直流電力の負電圧が印加される第2導体と、
前記第1導体と前記第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサであって、前記第1導体と前記第2導体との中間部に放電検出用導体を含むものと、
を備える電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、次のような電線保護装置が記載されている。すなわち、特許文献1に記載されている電線保護装置では、各群が同電位の複数の電源線群間に挿入された薄膜スペーサが含む樹脂絶縁皮膜で覆われた導体薄膜(金属薄膜)に流れる電流に基づいてアーク放電が発生したかどうかが検出される。ここで、複数の電源線群は例えば3相交流の各相の交流電源線群であり、各電線群は紐タイプのテープによって束ねられている。また、導体薄膜の電位はグランド電位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テープで束ねられた複数の電線群間を離隔する薄膜スペーサでは、導体薄膜を含まない場合、薄膜スペーサ内の電位は電線群間との距離に応じた様々なレベルとなる。一方、導体薄膜を含む場合、導体薄膜内では同電位となるため、薄膜スペーサ内の電位は導体薄膜を含む場合と含まない場合とでは異なることになる。つまり、薄膜スペーサに導体薄膜を設けた場合、電位分布に変化が発生し、場合によっては導体薄膜を設けたことに起因して部分放電が発生しやすくなるおそれがあるという課題がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、導体間のスペーサに放電検出用の導体を含ませる場合に、放電検出用導体に起因する電位分布の変化を生じないようにすることができる電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力伝送システムは、直流電力の正電圧が印加される第1導体と、前記直流電力の負電圧が印加される第2導体と、前記第1導体と前記第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサであって、前記第1導体と前記第2導体との中間部に放電検出用導体を含むものと、を備える電力伝送装置と、前記放電検出用導体に一端が接続された抵抗と、前記抵抗に流れる電流を検出する検出器とを備える。
【0007】
本開示に係る部分放電検出方法は、直流電力の正電圧が印加される第1導体と、前記直流電力の負電圧が印加される第2導体と、前記第1導体と前記第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサであって、前記第1導体と前記第2導体との中間部に放電検出用導体を含むものと、を備える電力伝送装置と、前記放電検出用導体に一端が接続された抵抗と、前記抵抗に流れる電流を検出する検出器とを用いて、前記電力伝送装置内で発生した部分放電を検出する。
【0008】
本開示に係る電力伝送装置は、直流電力の正電圧が印加される第1導体と、前記直流電力の負電圧が印加される第2導体と、前記第1導体と前記第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサであって、前記第1導体と前記第2導体との中間部に放電検出用導体を含むものと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置によれば、放電検出用導体に起因する電位分布の変化を生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る電力伝送装置の斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る導体およびスペーサの斜視図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る電力伝送装置の電位分布の例を示す図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る電力伝送装置の電位分布の比較例(放電検出用導体がない場合)を示す図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
【
図11】本開示の第3実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1~
図7を参照して、本開示の第1実施形態に係る電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置について説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
図2は、本開示の第1実施形態に係る電力伝送装置の斜視図である。
図3は、本開示の第1実施形態に係る導体およびスペーサの斜視図である。
図4は、本開示の第1実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
図5は、本開示の第1実施形態に係る電力伝送システムの構成図である。
図6は、本開示の第1実施形態に係る電力伝送装置の電位分布の例を示す図である。
図7は、本開示の第1実施形態に係る電力伝送装置の電位分布の比較例(放電検出用導体がない場合)を示す図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。また、本明細書で使用される「第1」、「第2」および「第3」という文言は、ある構成要素を別の構成要素と区別するために交換可能に使用される。
【0012】
図1に示すように、本開示の第1実施形態に係る電力伝送システム100は、電力伝送装置1と、抵抗101と、部分放電検出器102とを備える。電力伝送システム100は、直流電力を伝送する電力伝送装置1内で発生した部分放電を検出するためのシステムである。なお、
図1は、電力伝送装置1の断面形状を示す。
【0013】
図1~
図3に示すように、本開示の第1実施形態に係る電力伝送装置1は、第1導体11と、第2導体12と、第1スペーサ13と、第2スペーサ14と、電線管15と、第1スペーサ13内に設けられた(埋め込まれた)放電検出用導体17とを備える。
【0014】
第1導体11と第2導体とは、直流電力の電路の本線を構成する電線であり、第1導体11には直流電力の正電圧(正極)が印加され、第2導体12には直流電力の負電圧(負極)が印加される。なお、本実施形態において、導体とは、電気の伝導率が比較的大きな物質であり、例えば、銅、アルミニウム、その他の金属等で構成することができる。
【0015】
第1スペーサ13は、第1導体11と第2導体12とを離隔する絶縁体であり、第1導体11と第2導体12との中間部に放電検出用導体17を含む。放電検出用導体17は、例えば金属薄膜であって
図2に示すように直流電力の伝送方向に延在している。なお、本実施形態において、絶縁体とは、電気が極めて流れにくい物体である。また、中間部は、第1導体11と第2導体12から等距離(ほぼ等距離)にある領域を意味する。
【0016】
第2スペーサ14は、中空部141を有し、第1導体11と第2導体12と第1スペーサ13とを中空部141に包蔵する絶縁体である。第2スペーサ14は、第1導体11および第2導体12と電線管15とを離隔する。電線管15は、第2スペーサ14を包蔵する導体である。電線管15は、例えばアルミニウム等の金属で形成される。電線管15は、金属コンジット(conduit)等ともいうことができる。電線管15内には、大気圧の空気等の流体、加圧された気体、液体等の加圧流体等の流体16が導入されている。流体16は、絶縁層を形成するとともに、第1導体11、第2導体12等を空冷または水冷する冷却媒体として機能する。
【0017】
なお、第1導体11および第2導体12と第1スペーサ13間、第1導体11および第2導体12と第2スペーサ14間、第2スペーサ14と電線管15間は、接触または一定の間隙を許容した状態で組み合わされており、互いに固定されてはない。ただし、各構成間は適宜固定してもよい。例えば、第1導体11および第2導体12と第1スペーサ13間、第1導体11および第2導体12と第2スペーサ14間、第2スペーサ14と電線管15間の接触状態や間隙は、例えば温度状態や第1導体11および第2導体12間に電磁力によって働く斥力の大きさ等によって変化する。
【0018】
図3に示すように、第1導体11は、平面を形成する第1部分B11を有し、第2導体12は、第1部分B11に対向する平面を形成する第2部分B12を有する。また、第1スペーサ13は、第1部分B11と第2部分B12に対向する平面部131を有する平板状の形状を有する。また、第1導体11は、
図2に示すように、第1部分B11を基端部として第2スペーサ14方向へ伸長する1または複数の板状部B21を備える。また、第2導体12は、第2部分B12を基端部として第2スペーサ14方向へ伸長する1または複数の板状部B22を備える。この構成によれば、冷却効率の向上(表面積の増大、抵抗値の減少等)と軽量化とをバランスよく獲得することができる。
【0019】
図4に示すように、本実施形態の電力伝送システム100では、例えば、電力伝送装置1の第1導体11にコンバータ51が出力した直流電力の正電圧が印加され、第1導体11にコンバータ51が出力した直流電力の負電圧が印加される。また、電線管15はコンバータ51が出力した直流電力の中性点Nに接続される。コンバータ51は、例えば3相交流発電機等の発電機22の交流出力を入力し、直流電力に変換して出力する。また、
図4に示す例では、コンバータ51の正負の出力端子間に2個のコンデンサCを直列接続し、2個のコンデンサCの接続点を中性点Nとしてグランド電位としている。ただし、直流電力の中性点Nは、例えば発電機22の中性点としてもよい。電力伝送装置1の電線管15は中性点N(グランド電位)に接続されている。コンバータ51が出力した直流電力は、電力伝送装置1を通って、直流負荷23に供給される。
【0020】
抵抗101は、一端が放電検出用導体17に接続され、他端が中性点N(グランド電位)に接続されている。部分放電検出器102は、例えばクランプ型電流検出器1021と、検出回路1022とを備え、抵抗101に所定値以上の電流が流れたことを検出する。
【0021】
本実施形態の電力伝送システム100では、
図5に示すように、正負伝送線路を構成する第1導体11と第2導体12の間にある第1スペーサ13内部に放電検出用導体17を例えば導電膜として埋め込み、伝送線路間で発生した部分放電により導電膜に誘起される電荷を、放電電流として外部の部分放電検出器102で検出することで部分放電の発生を検出する。
図5は、部分放電の発生の可能性が比較的高い複数箇所を星印50(以下発生箇所50ともいう)で示す。放電検出用導体17は、それらのうち、破線で囲んだ領域DB内の部分放電を良好に検出することができる。
【0022】
なお、放電検出用導体17は、第1導体11と第2導体12との中間部に設けられているので、定常状態(直流電力を伝送している場合で部分放電が発生していない状態)では電力伝送装置1が伝送する直流電力の中性点電位(0V(ほぼ0Vを含む))が印加される。また、本実施形態では、第1スペーサ13は、第1導体11で平面を形成する第1部分B11と第2導体12で平面を形成する第2部分B12に対向する平板状の形状を有する。したがって、第1スペーサ13のほぼ全域で放電検出用導体17の電位を定常状態で0Vとすることができる。
【0023】
また、放電検出用導体17を配置すると電力伝送装置1内部の電気的外乱(導電膜に起因する部分放電発生など)が懸念されるが、
図6に示すように伝送線路の中間に挿入すれば、内部の電位分布は変化しない(
図7に示す放電検出用導体17が無い場合の電位分布と同等である)。したがって、本実施形態の電力伝送システム100によれば導電膜による電気的外乱を起こすことなく、部分放電の検出が可能である。
【0024】
以上のように、本実施形態の電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置によれば、放電検出用導体に起因する電位分布の変化を生じないようにすることができる。
【0025】
なお、以上では、第1スペーサ13が1個の放電検出用導体17を含む例を示したが、放電検出用導体17は複数であってもよい。あるいは、1個の電力伝送装置1は、1個または複数個の放電検出用導体17を含む第1スペーサ13を電力の伝送方向に対して複数個備えていてもよい。この場合、部分放電による電流を検出した放電検出用導体17の位置を特定することで、部分放電の発生位置を特定することができる。
【0026】
<第2実施形態>
次に、
図8~
図10を参照して、本開示の第2実施形態に係る電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置について説明する。本開示の第2実施形態に係る電力伝送システム100Aは、
図8に示す電力伝送装置1A、抵抗101および部分放電検出器102とを備えるとともに、
図9に示す部分放電検出器103または
図10に示す部分放電検出器104の少なくとも1つとを備える。
図8に示すように電力伝送装置1Aは1以上の光ファイバ30を中空部141内に備えている。各光ファイバ30は1または複数の受光部(あるいは受光面)31を有し、矢印で示す受光方向32で発生した部分放電による発生を受光部31で受光し、伝送する。受光部31は、例えば被覆された光ファイバの被覆をはがした部分としたり、さらにその部分に光ファイバ等の光学部品を結合させた部分としたりすることができる。部分放電の発生箇所50が受光部31の視野に収まるように受光方向32を定める。
【0027】
図9は、光ファイバ30と部分放電検出器103の構成例を示す。
図9に示す例では、複数の光ファイバ30の各受光部31は、直流電力の伝送方向に対して互いに異なる位置に設けられている。間隔L1は、例えば数十cm程度とすることができる。ただし、間隔L1はこの例に限定されない。部分放電検出器103は、各光ファイバ30が出力した光を電気に変換する光電変換部1031と、所定強度以上の光に対応する電気信号が発生したことを検出する部分放電検出器1032とを備える。部分放電検出器1032は、所定強度以上の光を受光した光ファイバ30を識別することで部分放電の発生位置を特定することができる。この構成によれば、部分放電検出器103の構成を簡単化することができる。
【0028】
図10は、光ファイバ30と部分放電検出器104の構成例を示す。
図10に示す例では、一本の光ファイバ30が複数の受光部31を有し、各受光部31は、直流電力の伝送方向に対して互いに異なる位置に設けられている。各受光部31間の間隔L1は、等間隔であってもよいし、不等間隔であってもよい。部分放電検出器104は、光ファイバ30が一方の端部から出力した光を電気に変換する光電変換部1041と、光ファイバ30が他方の端部から出力した光を電気に変換する光電変換部1042と、所定強度以上の光に対応する電気信号が発生したことを検出するとともに、光の到達時刻の時間差(光電変換部1041による検出時刻と光電変換部1042による検出時刻の時間差)を検出する時間差検出および部分放電検出器1043とを備える。時間差検出および部分放電検出器1043は、所定強度以上の光を受光した場合に光の到達時刻の時間差に基づいて部分放電の発生位置を特定することができる。この構成によれば、光ファイバ30の本数を減らすことができるので、電力伝送装置1A内の冷却空間を増やすことができる。
【0029】
なお、
図9に示す構成と
図10に示す構成とは適宜組み合わせることができる。
【0030】
本実施形態によれば、部分放電検出器102によって導体11と導体12間で発生する部分放電を感度良く検出することができるとともに、部分放電検出器103または部分放電検出器104によって導体11または導体12と電線管15との間で発生する部分放電を感度良く検出することができる。
【0031】
<第3実施形態>
次に、
図11を参照して、本開示の第3実施形態に係る電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置について説明する。本開示の第3実施形態に係る電力伝送システム100Bは、電力伝送装置1B、抵抗101および部分放電検出器102と、部分放電検出器105とを備える。
図11に示すように電力伝送装置1Bは1以上の電磁波アンテナ60を周方向に所定の間隔を有して電線管15の内壁に密着させて、あるいは内壁近傍に備えている。電磁波アンテナ60は部分放電の発生箇所50近傍に集中的に配置してもよい。電磁波アンテナ60としては電線管15内壁への密着性を考慮して、薄型でフレキシブルな構造が望ましい。電磁波アンテナ60としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)やPI(ポリイミド)等のフィルムにパッチアンテナを内蔵した構造が好適である。
【0032】
部分放電検出器105は、各電磁波アンテナ60が所定強度以上の電磁波を受信したことを検出する。また、部分放電検出器105は、所定強度以上の電磁波を受信した電磁波アンテナ60を識別することで部分放電の発生位置を特定することができる。
【0033】
本実施形態によれば、部分放電検出器102によって導体11と導体12間で発生する部分放電を感度良く検出することができるとともに、部分放電検出器105によって導体11または導体12と電線管15との間で発生する部分放電を感度良く検出することができる。
【0034】
(作用効果)
上記構成電力伝送システム、部分放電検出方法および電力伝送装置では、直流電力の正電圧が印加される第1導体11と、直流電力の負電圧が印加される第2導体12と、第1導体11と第2導体12とを離隔する絶縁体の第1スペーサ13であって、第1導体11と第2導体12との中間部に放電検出用導体17を含むものと、中空部141を有し、第1導体11と第2導体12と第1スペーサ13とを中空部141に包蔵する絶縁体の第2スペーサ14と、第2スペーサ14を包蔵する導体の電線管15とを備える電力伝送装置1とを用い、放電検出用導体17に一端が接続された抵抗101に流れる電流を検出することで部分放電を検出する。この構成によれば、もともと(放電検出用導体17が無い場合に)一定電位(0V;中性点電位)である第1導体11と第2導体12との中間部に放電検出用導体17が設けられるので、放電検出用導体17に起因する電位分布の変化は発生しない。また、放電検出用導体17を設けたことに起因して部分放電が発生しやすくなることもない。
【0035】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。なお、上記実施形態では、放電検出用導体17として金属薄膜を例として挙げたが、形状に限定はなく、例えば、一本の電線あるいは複数の電線を配列させたものとしたり、複数の電線を網目状に配列させたものとしたりしてもよい。また、第2実施形態と第3実施形態の構成を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
なお、部分放電検出器102は本開示に係る「検出器」の一例であり、部分放電検出器103および104は本開示に係る「第2検出器」の一例であり、部分放電検出器105は本開示に係る「第3検出器」の一例である。
【0037】
<付記>
各実施形態に記載の電力伝送システム100、100Aまたは100Bは、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)第1の態様に係る電力伝送システム100、100Aおよび100Bは、直流電力の正電圧が印加される第1導体11と、前記直流電力の負電圧が印加される第2導体12と、前記第1導体と前記第2導体とを離隔する絶縁体の第1スペーサ13であって、前記第1導体と前記第2導体との中間部に放電検出用導体17を含むものと、を備える電力伝送装置1、1Aまたは1Bと、前記放電検出用導体に一端が接続された抵抗101と、前記抵抗に流れる電流を検出する検出器(部分放電検出器102)とを備える。本態様および以下の各態様によれば、放電検出用導体に起因する電位分布の変化を生じないようにすることができる。
【0039】
(2)第2の態様に係る電力伝送システム100、100Aおよび100Bは、(1)の電力伝送システムであって、前記第1導体は、平面を形成する第1部分B11を有し、前記第2導体は、前記第1部分に対向する平面を形成する第2部分B12を有し、前記第1スペーサは、前記第1部分と前記第2部分に対向する平面部131を有する平板状の形状を有する。本態様によれば、例えば全域等の比較的広い領域の電位を一定とすることができ、例えば放電検出用導体の面積を広げることができる。
【0040】
(3)第3の態様に係る電力伝送システム100、100Aおよび100Bは、(1)の電力伝送システムであって、前記抵抗101の他端は前記直流電力の中性点に接続されている。本態様によれば、本態様によれば、放電検出用導体の電位を直流電力の中性点電位(0V)に安定させることができる。
【0041】
(4)第4の態様に係る電力伝送システム100Aは、(1)~(3)の電力伝送システムであって、前記電力伝送装置1Aは、中空部141を有し、前記第1導体と前記第2導体と前記第1スペーサとを前記中空部に包蔵する絶縁体の第2スペーサ14をさらに備え、前記中空部141内に敷設された1または複数の光ファイバ30と、前記1または複数の光ファイバが前記中空部内で受光したことを検出する第2検出器(部分放電検出器103および104)とをさらに備える。本態様によれば、検出器(部分放電検出器102)で検出感度が低下するような箇所で発生する部分放電を、本構成を持たない場合と比較して、感度良く検出することができる。
【0042】
(5)第5の態様に係る電力伝送システム100Aは、(4)の電力伝送システムであって、前記光ファイバは複数であって、前記複数の光ファイバの各受光部31は、前記直流電力の伝送方向に対して互いに異なる位置に設けられている。本態様によれば、部分放電の発生箇所を特定することができる。
【0043】
(6)第6の態様に係る電力伝送システム100Aは、(4)または(5)の電力伝送システムであって、少なくとも1つの前記光ファイバは前記直流電力の伝送方向に対して互いに異なる位置に複数の受光部31を有し、前記第2検出器(部分放電検出器104)は、前記光ファイバが受光した光の前記光ファイバの両端への到達時刻の時間差をさらに検出する。本態様によれば、少ない本数の光ファイバで部分放電の発生箇所を特定することができる。
【0044】
(7)第7の態様に係る電力伝送システム100Bは、(1)~(6)の電力伝送システムであって、前記電力伝送装置1Bは、中空部141を有し、前記第1導体と前記第2導体と前記第1スペーサとを前記中空部に包蔵する絶縁体の第2スペーサ14と、前記第2スペーサを包蔵する導体の電線管15とをさらに備え、前記電線管内に設置された1または複数のアンテナ60と、前記1または複数のアンテナが前記電線管内で発生した電磁波を受信したことを検出する第3検出器(部分放電検出器105)とをさらに備える。本態様によれば、検出器(部分放電検出器102)で検出感度が低下するような箇所で発生する部分放電を、本構成を持たない場合と比較して、感度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…電力伝送装置
100、100A、100B…電力伝送システム
11…第1導体
12…第2導体
13…第1スペーサ
14…第2スペーサ
15…電線管
16…流体
17…放電検出用導体
101…抵抗
102~105…部分放電検出器
141…中空部
N…中性点