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特開2025-9920マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009920
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/14 20060101AFI20250109BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20250109BHJP
   C11D 1/37 20060101ALI20250109BHJP
   B01J 13/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C11D1/14
D06M23/12
C11D1/37
B01J13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098245
(22)【出願日】2024-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2023106180
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏徳
(72)【発明者】
【氏名】古賀 義人
【テーマコード(参考)】
4G005
4H003
4L031
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005AB03
4G005AB25
4G005BA01
4G005BB12
4G005BB13
4G005DA05Z
4G005DB06Z
4G005DB16Z
4G005DD28Z
4G005DD34Z
4G005DD35Z
4G005DD37Z
4G005DD38Z
4G005DD39Z
4G005DD47Z
4G005DE04Z
4G005EA03
4G005EA05
4G005EA07
4G005EA10
4H003AB17
4H003AC08
4H003DA01
4H003DA02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB08
4H003EB14
4H003EB19
4H003EB38
4H003EB40
4H003EB42
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA26
4L031AB31
4L031BA31
(57)【要約】
【課題】組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が高いマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供する。更に、本発明によれば、繊維製品に対して、マイクロカプセルの吸着率が良好で、マイクロカプセルの凝集による白残りを抑制することができる、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法であって、
(A)成分:アニオン性界面活性剤
(B)成分:負電荷を帯びたマイクロカプセル
(C)成分:カチオン性ポリマー
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を、下記(I)又は(II)の方法で混合する、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
(I)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する
(II)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法であって、
(A)成分:アニオン性界面活性剤
(B)成分:負電荷を帯びたマイクロカプセル
(C)成分:カチオン性ポリマー
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を、下記(I)又は(II)の方法で混合する、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
(I)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する
(II)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する
【請求項2】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を、下記(II)の方法で混合する、請求項1に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
(II)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する
【請求項3】
(B)成分に対する(A)成分の配合比率(A/B)が、質量比で1以上100以下である、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
【請求項4】
(C)成分に対する(B)成分の配合比率(B/C)が、質量比で1以上150以下である、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
【請求項5】
(C)成分に対する(A)成分の配合比率(A/C)が、質量比で30以上1000以下である、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
【請求項6】
(B)成分の負電荷を帯びたマイクロカプセルのシェルが、シリカ、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、メラミングリオキサール樹脂、ゼラチン、及びアラビアゴムから選ばれる1種以上を含む材料から構成される、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
【請求項7】
(B)成分の負電荷を帯びたマイクロカプセルが内包する機能剤が、香料、香料前駆体、油剤、酸化防止剤、冷感剤、温感剤、抗菌剤、染料、色素、紫外線吸収剤、シリコーン、溶媒、及び油溶性ポリマーから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
【請求項8】
繊維製品の洗浄に用いる、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
香料、感覚剤、保湿剤、殺菌剤などの機能剤は、様々な用途の製品に配合されている。例えば、香料は、柔軟剤、衣料用洗剤、身体用洗剤などの製品において、製品自体や、衣料、身体などへの香り付けを目的として使用される。その際、製品中で香りが逸失してしまわないよう、香料を安定に保持できることが求められている。こうした機能剤の効果を持続させるために、機能剤をマイクロカプセルに封入し、製品中に配合する試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、a)油ベースのコア;b)アニオン性乳化剤の存在下での界面重合により形成されるポリマーシェル;およびc)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含むコーティングを有する少なくとも1種のマイクロカプセルを含む、コア-シェルマイクロカプセルスラリーが開示されている。また、特許文献1には、特定の電荷密度範囲に従ってアニオン性乳化剤およびカチオン性ポリマーの存在を組み合わせることで、リンスオフ用途における付着を最適化することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、下記工程(1)及び(2)を有し、更に工程(2)の前に下記工程(1-1)を有する、マイクロカプセルの製造方法が開示されている。
工程(1):コアと第一シェルとを有するカプセルを形成する工程
工程(2):第一シェルを包接する第二シェルを有するカプセルを形成する工程
工程(1-1):工程(1)で得られたカプセルを含有する水分散体にカチオン性高分子化合物を添加する工程
そして、特許文献2の実施例11では、液体洗剤のような界面活性剤存在下に、カチオン性高分子化合物を含むマイクロカプセル分散液を添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2021-502956号公報
【特許文献2】特開2015-128762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~2では、分散液中におけるマイクロカプセルの分散性をより高め、繊維製品に対する、マイクロカプセルの吸着率や、マイクロカプセルの凝集による白残りを抑制する観点については、改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が高いマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供することを課題とする。更に、本発明は、繊維製品に対して、マイクロカプセルの吸着率が良好で、マイクロカプセルの凝集による白残りを抑制することができる、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アニオン性界面活性剤を含有する分散液を攪拌しながら、負電荷を帯びたマイクロカプセルと、カチオン性ポリマーとを添加する順序を特定することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕を提供する。
〔1〕下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法であって、
(A)成分:アニオン性界面活性剤
(B)成分:負電荷を帯びたマイクロカプセル
(C)成分:カチオン性ポリマー
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を、下記(I)又は(II)の方法で混合する、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
(I)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する
(II)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が高いマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、繊維製品に対して、マイクロカプセルの吸着率が良好で、マイクロカプセルの凝集による白残りを抑制することができる、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図2】実施例2で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図3】実施例3で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図4】実施例4で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図5】実施例5で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図6】実施例6で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図7】実施例7で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図8】実施例8で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図9】比較例1で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図10】比較例2で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図11】実施例9で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図12】実施例10で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図13】実施例11で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図14】実施例12で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図15】実施例13で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図16】実施例14で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図17】実施例15で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図18】実施例16で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図19】実施例17で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図20】実施例18で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図21】実施例19で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図22】実施例20で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
図23】実施例21で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物(以下、単に「組成物」ともいう)の製造方法は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法であって、
(A)成分:アニオン性界面活性剤
(B)成分:負電荷を帯びたマイクロカプセル
(C)成分:カチオン性ポリマー
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を、下記(I)又は(II)の方法で混合する。
(I)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する
(II)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する
【0013】
本発明によれば、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が高いマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供することができる、という効果を奏する。更に、本発明によれば、繊維製品に対して、マイクロカプセルの吸着率が良好で、マイクロカプセルの凝集による白残りを抑制することができる、という効果を奏する。
この理由は必ずしも定かではないが、以下のように考えられる。
(C)成分は、ポリマーであることからも一定の粘着性を有していることから、単独では粘着性を有しない(B)成分に対して、吸着助剤として作用すると考えられる。また、(C)成分は、カチオン基を有し正に帯電していることから、カプセル表面が負電荷を帯びた(B)成分に対して、静電的に作用すると考えられる。
(A)成分を含有する分散液に、(B)成分と(C)成分との事前混合液を投入して製造される組成物によれば、(B)成分と(C)成分とが近傍に存在した状態で、(A)成分を含有する分散液に配合されると考えられる。このように製造された組成物中では、(B)成分と(C)成分との静電的相互作用が強すぎ、マイクロカプセルの分散性は低下し、このような組成物を用いて繊維製品の洗浄処理を行った場合、(C)成分が(B)成分に対して吸着助剤として良好に作用し、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率は良好となるが、マイクロカプセルの凝集体が形成され易くなり、この凝集体由来による白残りが発生し易くなると推測される。
これに対して、(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する、或いは、(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加して製造される組成物によれば、(B)成分と(C)成分とが、適度に離れて存在した状態で、(A)成分を含有する分散液に配合されると考えられる。このように製造された組成物中では、(B)成分と(C)成分との静電的相互作用が適度となり、マイクロカプセルの分散性は向上し、このような組成物を用いて繊維製品の洗浄処理を行った場合、(C)成分が(B)成分に対して吸着助剤として良好に作用し、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率は良好となりつつ、マイクロカプセルの凝集体が形成され難くなり、この凝集体由来による白残りが発生し難くなると推測される。このような作用効果は、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する形態の方が、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する形態よりも、得られ易いと推測される。
【0014】
[マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法]
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法であって、
(A)成分:アニオン性界面活性剤
(B)成分:負電荷を帯びたマイクロカプセル
(C)成分:カチオン性ポリマー
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を、下記(I)又は(II)の方法で混合する、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法。
(I)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する
(II)(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する
ここで、「(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する」とは、(B)成分全量を添加した後に(C)成分を添加する形態も、(B)成分全量を添加し終わる前に(C)成分を添加する形態も含む。なお、(B)成分、(C)成分の添加中又は添加後においても、攪拌を継続することが好ましい。
(B)成分全量を添加し終わる前に(C)成分を添加する形態では、(B)成分を、(B)成分全量の好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上添加した後に、(C)成分を添加する。
また、「(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する」とは、(C)成分全量を添加した後に(B)成分を添加する形態も、(C)成分全量を添加し終わる前に(B)成分を添加する形態も含む。
(C)成分全量を添加し終わる前に(B)成分を添加する形態では、(C)成分を、(C)成分全量の好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上添加した後に、(B)成分を添加する。
【0015】
(A)成分を含有する分散液の攪拌における周速は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、好ましくは0.1m/s以上、より好ましくは0.3m/s以上、更に好ましくは0.5m/s以上、より更に好ましくは0.7m/s以上であり、そして、操作安定性の観点から、好ましくは8m/s以下、より好ましくは5m/s以下、更に好ましくは3m/s以下、より更に好ましくは1.5m/s以下である。
なお、(A)成分を含有する分散液に、(B)成分、(C)成分の添加中又は添加後においても、攪拌を継続することが好ましく、そのときの攪拌における周速は、(A)成分を含有する分散液の攪拌における周速と同じであることが好ましい。
周速とは、攪拌翼、攪拌子等の回転中の外周の速度を意味し、下記式により求めることができる。
周速(m/s)=π×直径(mm)×回転数(rpm)×1/1000(m/mm)×1/60(s/m)
本発明では、(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(B)成分を添加した後、(C)成分を添加する。(B)成分を添加した後、(C)成分を添加するまでの攪拌時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは45秒以上、更に好ましくは1分以上である。
或いは、本発明では、(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する。(C)成分を添加した後、(B)成分を添加するまでの攪拌時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは45秒以上、更に好ましくは1分以上である。
【0016】
<(A)成分:アニオン性界面活性剤>
(A)成分としては、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、下記の(A1)成分~(A5)成分から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
(A1)成分:炭素数14以上24以下の内部オレフィンスルホン酸塩
(A2)成分:下記一般式(A2)で表されるスルホン酸又はその塩
-B-SOM (A2)
〔式(A2)中、Rは炭素数3以上21以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、Bはベンゼン環を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。Bに結合するRに対して、スルホン酸基はオルト位、メタ位又はパラ位に結合している。〕
(A3)成分:炭素数8以上20以下の脂肪酸塩
(A4)成分:下記一般式(A4)で表される硫酸エステル又はその塩
-O-[(PO)/(EO)]-SOM (A4)
〔式(A4)中、Rは炭素数8以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、酸素原子と結合する炭素原子が第1級炭素原子であって、POはプロピレンオキシ基、EOはエチレンオキシ基を示し、EOとPOはブロック又はランダム結合であってもよく、/はPOとEOの結合順序を問わないことを示す記号であり、m及びnは平均付加モル数であって、mは0以上5以下、かつnは0以上16以下であり、そしてMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。〕
(A5)成分:下記一般式(A5)で表されるα-スルホ脂肪酸エステル又はその塩
-CH(SOM)COOR (A5)
〔式(A5)中、Rは炭素数6以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。〕
【0017】
(A)成分は、上記の中でも、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、(A1)成分:炭素数14以上24以下の内部オレフィンスルホン酸塩がより好ましい。
(A1)成分の内部オレフィンスルホン酸塩の炭素数は、好ましくは14以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは16以上、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(A1)成分には、内部オレフィンスルホン酸塩に加えて、合成時において生成するヒドロキシアルカンスルホン酸塩やα-オレフィンスルホン酸塩も含まれる。
【0018】
(A1)成分の塩としては、水素原子、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、及び有機アンモニウム塩(例えば、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等のアルカノールアンモニウム塩)から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアルカリ金属塩である。
【0019】
(A)成分の含有量は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。
【0020】
<(B)成分:負電荷を帯びたマイクロカプセル>
本発明の組成物の製造方法では、(B)成分として負電荷を帯びたマイクロカプセルを用いる。
マイクロカプセルの表面が帯びた電荷は、マイクロカプセルを水中に分散させてゼータ電位を測定することにより確認することができ、例えば国際公開第2020/195132号に記載の測定方法を参考にすることができる。
測定されたゼータ電位がマイナスの場合、マイクロカプセルの表面が帯びた電荷は、負電荷であると判断することができる。一方、測定されたゼータ電位がプラスの場合、マイクロカプセルの表面が帯びた電荷は、正電荷であると判断することができる。
マイクロカプセルのゼータ電位は、水中に分散した場合の値として、好ましくは-10~-80mV、より好ましくは-20~-70mV、更に好ましくは-30~-60mV、より更に好ましくは-35~-55mVである。
なお、具体的なゼータ電位の測定は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0021】
(B)成分の負電荷を帯びたマイクロカプセルとしては、例えば、シェルと、該シェルに内包され、1種以上の機能剤を含むコアとを有するものが挙げられる。
【0022】
(シェル)
(B)成分の負電荷を帯びたマイクロカプセルのシェルが、シリカ、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、メラミングリオキサール樹脂、ゼラチン、及びアラビアゴムから選ばれる1種以上を含む材料から構成されることが好ましい。
【0023】
シリカの原料としては、四塩化ケイ素、テトラアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、水ガラス、及び金属ケイ酸塩から選ばれる1種以上が好ましく、これらの中でも、テトラアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン、及びアルキルアルコキシシランから選ばれる1種以上がより好ましく、テトラアルコキシシランが更に好ましい。
【0024】
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトラプロポキシシランから選ばれる1種以上が好ましく、テトラメトキシシラン、及びテトラエトキシシランから選ばれる1種以上がより好ましく、テトラエトキシシランが更に好ましい。
アリールアルコキシシラン及びアルキルアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、及びトリエチルエトキシシラン等が挙げられる。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの縮合物等も使用することができる。
【0025】
シェルは、1種以上の機能剤を含むコアを内包する第一シェルのみを有していてもよく、1種以上の機能剤を含むコアを内包する第一シェルと、該第一シェルを包接する第二シェルとを有していてもよい。更に、シェルは、1種以上の機能剤を含むコアを内包する第一シェルと、該第一シェルを包接する第二シェルと、該第二シェルを包接する第三シェルとを有していてもよい。
【0026】
シェル(第一シェルと第二シェルを有する場合は第一シェル)の厚みは、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上、そして、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、更に好ましくは10nm以下である。また、シェル(第一シェル)は、内包する機能剤の長期保持のために、可能な限り細孔を有しない緻密な層であることが好ましい。
【0027】
(B)成分が、第二シェルを有する場合、第二シェルの厚みは、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは25nm以上、そして、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0028】
(コア)
(B)成分のコアは、1種以上の機能剤を含む。機能剤としては、香料、香料前駆体、油剤、酸化防止剤、冷感剤、温感剤、抗菌剤、染料、色素、紫外線吸収剤、シリコーン、溶媒、及び油溶性ポリマーから選ばれる1種以上が好ましい。機能剤として香料を用いた場合、(B)成分は、シェルの内部に当該香料を内包することで、シェルが破れたときに、香料が放出して発香する。
【0029】
香料としては、例えば、γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート(酢酸トリシクロデセニル)、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシロキシ)-2-ブタノール、シトロネリロキシアセトアルデヒド、インドール、4-メチル-3-デセン-5-オール、パラ-メンタン-8-チオール-3-オン、3-(パラ-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチルシンナメート、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、メチルアンスラニレート、ターピネオール、β-カリオフィレン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、テトラヒドロゲラニオール、2-イソブチル-4ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノール(フロローサ)、α-ダイナスコン、シスジャスモン、ビシクロ〔3.2.1〕オクタン-8-オン-1,5-ジメチル-オキシム、2,4-ジメチル-4,4α,5,9β-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、3-(パラ-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、エチル-2-tert-ブチルシクロヘキシル-カーボネート、安息香酸ヘキシル、4-アセトキシ-3-アミルテトラヒドロピラン、ドデシルアルデヒド、ジヒドロ-β-イオノン、メチルシクロオクチルカーボネート、メチルフェニルグリシド酸エチル、イソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、チモール、ネロリンブロメリア、5,6-ジメチル-8-イソプロペニル、ビシクロ「4.4.0]-1-デセン-3-オン、3-(4-イソプロピルフェニル)-プロパナール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、メチルアンスラニル酸メチル、ドデカンニトリル3-ドデセナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、リリアール、p-t-ブチルヒドロシンナミックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、酢酸ヘキシル、酢酸リナリル、酢酸ターピニル、カプロン酸アリル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、ジヒドロジャスモン酸メチル、シクラメンアルデヒド、リモネン、リナロール、テトラヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、メチルβ-ナフチルケトン、イソEスーパー、セドリルメチルエーテル、ジャバノール(ジボダン社製)、アンブロキサン、1,8-シネオール、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、11-オキサ-16-ヘキサデカノリド(ムスクR-1、ジボダン製)、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート、カシュメラン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、(12E)-オキサシクロヘキサデカ-12-エン-2-オン、ローズオキサイド、I-メントン、酪酸ヘキシル、酢酸イソボルニル、ユーカリ油、クマリン、ネロリドール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、カンファー、酢酸-1-オクテン-3-イル、p-サイメン、β-ナフチルエチルエーテル、クミンアルデヒド、(3R,5E)-3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、ネクタリル等が挙げられる。香料は、これらの複数の香料を含む香料組成物であってよい。
【0030】
香料前駆体としては、例えば、水に反応して香料成分を放出する化合物等が挙げられる。具体的には、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有するケイ酸エステル化合物、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有する脂肪酸エステル化合物、香料アルデヒド又は香料ケトン由来のカルボニル成分とアルコール化合物の反応で得られるアセタール化合物もしくはヘミアセタール化合物、香料アルデヒド又は香料ケトン由来のカルボニル成分と1級アミン化合物との反応で得られるシッフベース化合物、香料アルデヒド又は香料ケトン由来のカルボニル成分とヒドラジン化合物との反応で得られるヘミアミナール化合物もしくはヒドラゾン化合物が挙げられる。
【0031】
また、他の形態の香料前駆体としては、光に反応して香料成分を放出する化合物が挙げられる。例えば、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有する2-ニトロベンジルエーテル化合物、香料アルデヒドや香料ケトン由来のカルボニル成分を有するα-ケトエステル化合物、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有するクマリン酸エステル化合物が挙げられる。これらの香料前駆体は、例えばポリアクリル酸の一部のカルボキシ基と香料アルコールとの反応生成物等のポリマーとして用いてもよい。これらの中でも、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有するケイ酸エステル化合物が好ましい。上記したこれらの香料前駆体は1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
機能剤のClogP値は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.9以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。機能剤のClogP値が2以上であることにより、(B)成分内への機能剤のカプセル化率(以下、「初期内包率」ともいう)が向上する。ここで、機能剤が、複数の香料を含む香料組成物である場合も上記同様であり、香料組成物のClogP値が2以上であることによって、(B)成分内への香料組成物のカプセル化率(初期内包率)を向上させることができる。
ここで、ClogP値は、A. Leo in "ComprehensiveMedicinal Chemistry", Vol.4, (C. Hansch, P.G. Sammes, J.B. Taylor and C.A.Ramsden, Eds.), p.295, Pergamon Press, 1990に記載の方法で計算した「計算logP(ClogP)」であり、プログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値である。複数の香料を含む香料組成物である場合、その香料組成物のCLogP値は、各香料のCLogP値に香料組成物中の体積比を乗じ、それらの和とすることで求めることができる。
【0033】
(B)成分の体積平均粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上、より更に好ましくは1.5μm以上、そして、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、より更に好ましくは8μm以下、より更に好ましくは5μm以下である。
なお、(B)成分の体積平均粒径は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0034】
(B)成分が、1種以上の機能剤を含むコアを内包する第一シェルと、該第一シェルを包接する第二シェルとを有するものである場合、(B)成分は、例えば、下記工程(1)及び(2)を有する製造方法により得ることができる。
工程(1):界面活性剤(例えばカチオン性界面活性剤)を含む水相中に、1種以上の機能剤と原料シリカ(例えばテトラアルコキシシラン)とを含む有機相を混合して乳化した後、酸性条件下でゾル-ゲル反応を行ってシェルを形成し、前記の機能剤を内包するカプセルを形成する工程
工程(2):工程(1)で得られたカプセルを含む分散液に更に原料シリカ(例えばテトラアルコキシシラン)を添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するマイクロカプセルを形成する工程
【0035】
前記製造方法は、例えば、特開2015-128762号公報、特開2017-114802号公報などを参考に行うことができる。前記製造方法では、通常、(B)成分は、水中に分散した状態で得られる。用途によってはこの水分散液をそのまま使用することもできるが、場合によっては、(B)成分を分離して使用する。分離方法としては、ろ過、遠心分離等を採用することができる。
(B)成分が水中に分散した状態で得られる場合、(B)成分を含有する水分散液中の(B)成分の含有量は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0036】
(B)成分中、機能剤の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0037】
(B)成分の含有量は、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
【0038】
<(C)成分:カチオン性ポリマー>
(C)成分として、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、カチオン性ポリマーを用いる。カチオン性ポリマーとは、カチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基を有するポリマーを意味し、カチオン基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基が挙げられる。
【0039】
(C)成分のカチオン電荷密度は、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、好ましくは0.05meq/g以上、より好ましくは0.1meq/g以上、更に好ましくは0.2meq/g以上、より更に好ましくは0.3meq/g以上、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8.0meq/g以下、更に好ましくは6.5meq/g以下、より更に好ましくは6.0meq/g以下である。
(C)成分のカチオン電荷密度とは、カチオン性ポリマー1gあたりに含有されるカチオン性基のモル数×1000(meq/g)をいう。
【0040】
(C)成分の重量平均分子量は、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは50万以上、より更に好ましくは100万以上、より更に好ましくは150万以上、そして、好ましくは500万以下、より好ましくは400万以下、更に好ましくは300万以下、より更に好ましくは250万以下、より更に好ましくは200万以下である。
(C)成分の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出することができる。
【0041】
(C)成分としては、具体的には、カチオン化グアガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン性澱粉、カチオン化セルロース、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルカチオン化ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、第4級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体、ジアリル第4級化アンモニウム塩重合体、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩重合体、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム塩重合体、ビニルイミダゾリウムトリクロリド/ビニルピロリドン共重合体(ポリクオタニウム-16)、ビニルピロリドン/アルキルアミノ(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノ(メタ)アクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、アルキルアクリルアミド/(メタ)アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルカチオン化ヒドロキシアルキルセルロース、及びジアリル第4級化アンモニウム塩重合体から選ばれる1種以上が好ましい。
【0042】
上記のうち、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースとしては、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースとしては、例えば、塩化o-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)が挙げられる。
アルキルカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースとしては、アルキルカチオン化ヒドロキシエチルセルロース、アルキルカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
第4級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体としては、ビニルピロリドン/N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩共重合体(ポリクオタニウム-11)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-52)等が挙げられる。
ジアリル第4級化アンモニウム塩重合体としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体(ポリクオタニウム-6)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7)、アクリルアミド・アクリル酸/塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-39)等が挙げられる。
これらの中でも、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、アルキルカチオン化ヒドロキシエチルセルロース、及び塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0043】
(C)成分の含有量は、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0044】
((A)成分を含有する分散液の調製)
(A)成分を含有する分散液は、(A)成分を必須成分として調製される分散液であるが、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、下記の(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分を適宜混合して調製することが好ましい。
(D)成分:ノニオン性界面活性剤
(E)成分:水酸基を有する有機溶剤
(F)成分:pH調整剤
(G)成分:その他成分
【0045】
(A)成分、及び(D)成分等の混合順序は、特に限定されないが、(E)成分、(D)成分を順に投入し、次に、(A)成分を投入し、必要に応じてイオン交換水、(F)成分を順に投入し、分散液のpHが7付近であることを確認後、(G)成分を投入して、(A)成分を含有する分散液を調製する方法が挙げられる。
(A)成分を含有する分散液中の(A)成分の含有量は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。
なお、各成分の投入中又は投入後は、適宜、攪拌等の混合を行うことが好ましい。
【0046】
<(D)成分:ノニオン性界面活性剤>
(D)成分としては、炭素数8以上22以下のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物を挙げることができる。これらの中でも、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、炭素数8以上22以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0047】
(D)成分の含有量は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
【0048】
<(E)成分:水酸基を有する有機溶剤>
(E)成分としては、下記の(E1)~(E6)成分を挙げることができる。
(E1)エタノール、イソプロパノール等の炭素数2以上4以下の1価のアルコール
(E2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の炭素数2以上8以下の2価以上6価以下の多価アルコール
(E3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数4以上12以下のグリコールエーテル
(E4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-メチルグリセリルエーテル、2-メチルグリセリルエーテル、1,3-ジメチルグリセリルエーテル、1-エチルグリセリルエーテル、1,3-ジエチルグリセリルエーテル、1-ペンチルグリセリルエーテル、2-ペンチルグリセリルエーテル、1-オクチルグリセリルエーテル、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の2価以上4価以下の多価アルコールのアルキル(炭素数1以上10以下)エーテル
(E5)フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2-ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等のグリコールの芳香族エーテル
(E6)3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の前記(E1)~(E5)以外の有機溶剤
【0049】
(E)成分は、上記の中でも、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、好ましくはフェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはフェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコール、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上である、更に好ましくはジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上である。
【0050】
(E)成分の含有量は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高める観点から、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは8質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0051】
<(F)成分:pH調整剤>
(F)成分としては、下記の(F1)~(F2)成分を挙げることができる。
(F1)塩酸、硫酸等の無機酸、及びp-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸から選ばれる1種以上の酸剤
(F2)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、その誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムから選ばれる1種以上のアルカリ剤
【0052】
(F)成分は、所望のpHになるように適宜使用すればよいが、(F)成分の使用量は、例えば、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.8質量%以下である。
【0053】
<(G)成分:その他成分>
(G)成分としては、下記の(G1)~(G8)成分を挙げることができる。
(G1)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロースなどの再汚染防止剤及び分散剤
(G2)過酸化水素、過炭酸ナトリウム、及び過硼酸ナトリウム等から選ばれる1種以上の漂白剤
(G3)テトラアセチルエチレンジアミン、及び特開平6-316700号公報の一般式(I-2)~(I-7)で表される漂白活性化剤等から選ばれる1種以上の漂白活性化剤
(G4)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、及びリパーゼから選ばれる1種以上の酵素
(G5)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(G6)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウム等から選ばれる1種以上の酸化防止剤
(G7)色素、香料、ダイクロサン等の抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
(G8)硬化ひまし油、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等の増粘剤
【0054】
(G)成分は目的に応じて適宜選択できるが、例えば、(G8)成分を用いた場合、(G8)の含有量は、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは0.08質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。
【0055】
<水>
本発明のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の残部は水である。
水は一般に液体洗浄剤に使用されている水を用いるが、脱イオン水(イオン交換水)や次亜塩素酸ソーダをイオン交換水に対して1mg/kg以上5mg/kg以下、添加した水を使用することができる。また、蒸留水、水道水も使用できる。
【0056】
水の含有量は、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0057】
(成分の配合比率)
(B)成分に対する(A)成分の配合比率(A/B)は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高め、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、質量比で、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは55以下である。
【0058】
(C)成分に対する(A)成分の配合比率(A/C)は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高め、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、質量比で、好ましくは30以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは80以上、より更に好ましくは100以上、より更に好ましくは130以上、より更に好ましくは150以上であり、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは900以下、更に好ましくは850以下である。
【0059】
(C)成分に対する(B)成分の配合比率(B/C)は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高め、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、質量比で、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下である。
【0060】
(D)成分に対する(A)成分の配合比率(A/D)は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性を高め、繊維製品に対するマイクロカプセルの吸着率を良好にする観点から、質量比で、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.5以下である。
【0061】
本発明のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物は、繊維製品の洗浄に好適に用いることができる。
本発明のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物で洗浄する繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。
疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコーンカーバイト繊維、岩石繊維(ロックファイバー)、鉱滓繊維(スラッグファイバー)、金属繊維(金糸、銀糸、スチール繊維)等が例示される。
親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(綿、もめん、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
【0062】
繊維製品としては、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品が挙げられる。
【実施例0063】
次に、実施例及び比較例を示し、本発明のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
実施例及び比較例における各種測定は、以下の方法により行った。
(1)体積平均粒径
乳化滴及びマイクロカプセルの体積平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、分散質の屈折率は1.45-0iに設定した。
後述する(B)成分の製造において、工程1で得られた乳化液又は工程2で得られたシリカカプセルを含有する水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準で平均粒径を求めた。
【0065】
(2)ゼータ電位
(B)成分であるシリカカプセルを含有する水分散体を、和歌山市水にて1000倍希釈したものを、動的光散乱測定装置「ゼータサイザーウルトラ」(商品名、MALVERN)を用いてゼータ電位測定を行った。測定はDTS1070セルを使用した。なお、シリカカプセルのゼータ電位は-40~-50mVであった。
【0066】
<モデル香料>
マイクロカプセルに内包する有機化合物として、表1に示す組成を有するモデル香料A(体積平均cLogP:4.14、比重:0.92)を用いた。
なお、モデル香料の体積平均cLogP値は、モデル香料に含まれる香料成分の全成分のcLogP値にそれぞれモデル香料中における体積比率を乗じ、それらの和として算出した。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例及び比較例で用いた各成分は、以下に示す通りである。
<(A)成分:アニオン性界面活性剤>
・a-1:炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩(C18IOS(Octadecene, reaction products with sulfur trioxide, hydrolyzed, potassium salts))、当該C18IOS中のオレフィン体(オレフィンスルホン酸カリウム)/ヒドロキシ体(ヒドロキシアルカンスルホン酸カリウム)の質量比は16/84である。当該C18IOS中のHAS体のスルホン酸基の位置分布の質量比は以下の通りである。1位/2位/3位/4位/5位/6~9位=1.5/22.1/17.2/21.8/13.5/23.9。また、(IO-1S)/(IO-2S)=1.6(質量比)である。
なお、当該C18IOS中に含まれるHAS体のスルホン酸基の位置分布は、液体クロマトグラフ質量分析計(以下、LC-MSと省略)により測定した。なお、二重結合が6位以上に存在する内部オレフィンスルホン酸塩は、ピークが重なり明確に分画出来なかった。測定に使用した装置及び分析条件は次の通りである。
〔測定機器〕
LC装置:「LC-20ASXR」((株)島津製作所製)
LC-MS装置:「LCMS-2020」((株)島津製作所製)
カラム:ODS Hypersil(長さ:250mm、内径:4.6mm、粒子径:3μm、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)検出器:ESI(-)、m/z=349.15(C18)、321.10(C16)、293.05(C14)
〔溶媒〕
溶媒A:10mM酢酸アンモニウム水溶液
溶媒B:10mMの酢酸アンモニウムを添加した、アセトニトリル/水=95/5溶液
〔溶出条件〕
グラジエント:溶媒A60%溶媒B40%(0~15分)→溶媒A30%溶媒B70%(15.1~20分)→溶媒A60%溶媒B40%(20.1~30分)
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
インジェクション量:5μL
【0069】
<(B)成分:負電荷を帯びたマイクロカプセル>
・b-1:下記方法により製造された香料内包シリカカプセル(1)
(b-1の製造)
工程1
6.0gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を1494gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、400gの表1に示す配合割合のモデル香料Aと100gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数11,500rpmにて混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴の体積平均粒径は1.1μmであった。
得られた乳化液のpHを、1%硫酸水溶液を用いて3.6に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、200rpmで24時間撹拌し、モデル香料Aからなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するシリカカプセルを含有する水分散体を得た。
【0070】
工程2
工程1で得られた水分散体を液温30℃で撹拌しながら、60gのTEOSを420分かけて滴下した。滴下後、更に17時間撹拌を続けた後に冷却することにより、第一シェルを包接する第二シェルを形成し、モデル香料Aが非晶質シリカで内包された香料内包シリカカプセル(1)を含有する水分散体(モデル香料A(機能剤)の含有量がシリカカプセル(1)中89.7質量%)を得た。この時の香料内包シリカカプセル(1)の体積平均粒径は2.2μmであり、第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。また、水分散体中の香料内包シリカカプセル(1)の含有量は21.7質量%であった。さらに、水分散体中の香料の含有量は、19.4質量%であった。
【0071】
・b-2:下記方法により製造された香料内包シリカカプセル(2)
(b-2の製造)
b-1の製造において、工程2を行わなかった以外はb-1の製造と同様にして、モデル香料Aからなるコアとシリカからなる第一シェルとを有する香料内包シリカカプセル(2)を含有する水分散体(モデル香料A(機能剤)の含有量がシリカカプセル(2)中93.3質量%)を得た。この時の香料内包シリカカプセル(2)の体積平均粒径は2.2μmであり、第一シェルの厚さは約5nmであった。また、水分散体中の香料内包シリカカプセル(2)の含有量は21.4質量%であった。さらに、水分散体中の香料の含有量は、20.0質量%であった。
【0072】
<(C)成分:カチオン性ポリマー>
・c-1:塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体(Dimethyldiallyl ammonium chloride/acrylamide copolymer)=50/50(質量比)、マーコート550、Lubrizol Advanced Materials,Inc.製、重量平均分子量160万、カチオン電荷密度5.2meq/g
・c-2:カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(HydroxyethylCellulose Hydroxypropyl Trimethylammonium Chloride Ether)、ポイズC-150L、花王(株)製、重量平均分子量150万、カチオン電荷密度1.1meq/g
・c-3:アルキルカチオン化ヒドロキシエチルセルロース(Cellulose, 3-(dodecyloxy)-2-hydroxypropyl 2-hydroxyethyl 2-hydroxy-3-(trimethylammonio)propyl ether, chloride)、特開2021-088703号公報に記載のAC-HECの合成例により製造、重量平均分子量15万、カチオン電荷密度0.3meq/g
【0073】
<(D)成分:ノニオン性界面活性剤>
・d-1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Polyoxyethylene(10) alkyl(C12-14) ethers)、エマルゲン110L、花王(株)製
・d-2:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(Polyoxyethylene(16.5) polyoxypropylene(3.7) lauryl-myristyl ether)、エマルゲンMB120.2L、花王(株)製
【0074】
<(E)成分:溶剤>
・e-1:プロピレングリコール、試薬、富士フィルム和光純薬(株)製
・e-2:ジエチレングリコールモノブチルエーテル、試薬、富士フィルム和光純薬(株)製
【0075】
<(F)成分:pH調整剤>
・f-1:クエン酸、試薬、富士フィルム和光純薬(株)製
・f-2:モノエタノールアミン、試薬、富士フィルム和光純薬(株)製
【0076】
<(G)成分:その他成分>
・g-1:硬化ヒマシ油、よう素価1.5g-I/100g、カオーワックス85P、花王(株)製
【0077】
<洗濯処理に用いた水>
和歌山市水に塩化カルシウムと塩化マグネシウムを質量比で8:2の割合で投入し、硬度を4°dHに調製した水
【0078】
[実施例1~10]
上記成分を用いて、表2に示す成分配合量に従って以下の手順で、(A)成分を含有する分散液を調製し、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物を製造した。
((A)成分を含有する分散液の調製)
200mL容量のガラス製スクリュー管瓶に長さ5cmのテフロン(登録商標)製オクタゴン撹拌子を投入し質量を測定した。該スクリュー管瓶に、(E)成分、(D)成分を順に投入し、室温で5分攪拌をした。但し、(D)成分については50℃に加温したものを投入した。次に、(A)成分を投入し、室温で5分攪拌をした。その後、バランス分のイオン交換水、(F)成分を順に投入して、室温で組成物を十分攪拌をした。スクリュー管瓶内の該組成物の温度が25℃になった時点でpHが7であることを確認後、(G)成分を投入して30分間撹拌し、(A)成分を含有する分散液((A)成分の含有量:7.1質量%)を得た。
【0079】
(マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造)
(B)成分は、イオン交換水にて4倍希釈して調製した。
30mL容量のガラス製スクリュー管瓶に長さ20mmのテフロン(登録商標)製オクタゴン撹拌子を投入し質量を測定した。該スクリュー管瓶に、上記で得た(A)成分を含有する分散液7.0gを投入し、マグネティックスターラー(ASONE、REXIM RS-6RD)を用いてオクタゴン撹拌子を回転数850rpm(周速0.89m/s)で撹拌しながら、(B)成分を投入し、1分間撹拌を継続した。続いて撹拌を継続した状態で(C)成分を投入して1分間撹拌し、バランス分のイオン交換水を投入して2分間撹拌を行うことでマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物を得た。
【0080】
[実施例11~21]
上記成分を用いて、表3に示す配合量に従って上記と同様の手順で(A)成分を含有する分散液を調製し、表3に示す配合量に従って以下の手順で、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物を製造した。
(マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造)
(B)成分は、イオン交換水にて4倍希釈して調製した。
30mL容量のガラス製スクリュー管瓶に長さ20mmのテフロン(登録商標)製オクタゴン撹拌子を投入し質量を測定した。該スクリュー管瓶に、上記で得た(A)成分を含有する分散液7.0gを投入し、マグネティックスターラー(ASONE、REXIM RS-6RD)を用いてオクタゴン撹拌子を回転数850rpm(周速0.89m/s)で撹拌しながら、(C)成分を投入し、1分間撹拌を継続した。続いて撹拌を継続した状態で(B)成分を投入して1分間撹拌し、バランス分のイオン交換水を投入して2分間撹拌を行うことでマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物を得た。
【0081】
[比較例1]
(B)成分は、イオン交換水にて2倍希釈して調製した。(C)成分は、イオン交換水にて0.2質量%に希釈し、0.2質量%カチオン性ポリマー水溶液とした。
100mL容量のガラス製ビーカーに長さ20mmのテフロン(登録商標)製オクタゴン撹拌子を投入し、マグネティックスターラー(ASONE、REXIM RS-6RD)を用いてオクタゴン撹拌子を回転数600rpm(周速0.63m/s)で撹拌しながら、(B)成分、(C)成分を投入し、(B)成分と(C)成分との事前混合液を得た。
30mL容量のガラス製スクリュー管瓶に長さ20mmのテフロン(登録商標)製オクタゴン撹拌子を投入し質量を測定した。該スクリュー管瓶に、実施例1で得た(A)成分を含有する分散液7.0gを投入し、マグネティックスターラー(ASONE、REXIM RS-6RD)を用いてオクタゴン撹拌子を850rpm(周速0.89m/s)で撹拌しながら、上記で得た(B)成分と(C)成分との事前混合液を投入し、1分間撹拌を継続した。続いて撹拌を継続した状態でバランス分のイオン交換水を投入して2分間撹拌を行うことでマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物を得た。
【0082】
[比較例2]
(B)成分は、イオン交換水にて4倍希釈して調製した。
30mL容量のガラス製スクリュー管瓶に長さ20mmのテフロン(登録商標)製オクタゴン撹拌子を投入し質量を測定した。該スクリュー管瓶に、実施例1で得た(A)成分を含有する分散液7.0gを投入し、攪拌を行わず、(B)成分、(C)成分、バランス分のイオン交換水を順に投入した後、マグネティックスターラー(ASONE、REXIM RS-6RD)を用いてオクタゴン撹拌子を回転数850rpm(周速0.89m/s)で2分間撹拌を行うことでマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物を得た。
【0083】
[評価]
実施例及び比較例で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物における評価は、以下の方法により行い、結果を表2、3に示した。
【0084】
(1)分散性
表2、3に記載のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物をスライドガラス上に1滴滴下し、その上にカバーガラスを設置し、以下に示す測定機器を用い顕微鏡写真を得て、以下に示す方法で画像解析を行い、以下に示す基準で分散性を評価した。なお、分散性評価に用いた実施例1~21及び比較例1~2で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の顕微鏡写真を図1~23に示した。
【0085】
(測定機器)
VHX-5000デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製)
レンズ:VH-ZSTスイングヘッドズームレンズ
【0086】
(画像解析法)
・事前処理
得られた顕微鏡写真に対し、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて画像処理を以下のとおり行った。
得られた顕微鏡写真を各実施例及び比較例ごとにランダムに3枚ずつ選択し、各画像を8ビットグレースケール画素深度に変換する。次に背景処理を行うために画像を複製する。複製した画像にてimageタブ中のLookupTablesの中からcoolを選択する。続いてProcessタブからSubtract backgroundを選択し、rolling ball radius 200pixelsとし、Light background、及びCreate backgroundにチェックを入れる。Editタブから画像反転を行っておく。複製前の元の画像も同様に反転処理を行い、ProcessタブからImage calculatorを選択し、Operation項目をSabtractに変更、Image1を複製前、Image2を複製後の画像指定とする。処理を行うと新しい画像が生成されるため、画像反転前の状態に戻した。
・画像解析
新しく生成した画像に対して閾値設定を行い二値化画像に変換する。二値化された画像に対し、AnalyzeタブからAnalyze particlesを選択し、5μm以上の粒子を検出するように設定し、各凝集体の面積を算出した。
【0087】
(評価基準)
表2、3に記載の実施例1~21及び比較例1~2のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の分散性を以下に示す基準で評価し、その結果を表2、3に示した。分散度が高いほど、組成物の分散性が高いことを意味する。
分散度4:視野内に凝集体が存在しないか、又は視野内に平均値25μm未満の凝集体が存在するもの
分散度3:視野内に平均値25μm以上100μm未満の凝集体が存在するもの
分散度2:視野内に平均値100μm以上400μm未満の凝集体が存在するもの
分散度1:視野内に平均値400μm以上の凝集体が存在するもの
【0088】
(2)マイクロカプセルの吸着率
マイクロカプセルの吸着率は、実施例を代表して実施例1、及び比較例1~2について行った。
(吸着率評価用の繊維製品の調製)
木綿布1.7kg(木綿2003(谷頭商店製))を、全自動洗濯機(Panasonic製 NA-F702P)の標準コースで2回累積洗濯(洗浄時にエマルゲン108(花王(株)製)4.7g、水量47L、洗い9分・濯ぎ2回・脱水3分)後、水のみで3回累積洗濯(水量47L、洗い9分・濯ぎ2回・脱水3分)を行い、23℃、45%RHの環境下で24時間乾燥させた。その後、木綿布を6cm×6cmの大きさに裁断し、多数の評価用の繊維製品を調製した。
(洗濯処理)
洗濯処理はターゴトメーター((株)上島製作所製)を用いた。1リットルのステンレスビーカーに0.6Lの水を入れ、表2に記載の実施例1、比較例1、又は比較例2のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物3gを添加した。その後、調製した評価用の繊維製品を30g投入し、水温を20℃に保ちながら85rpm、10分間の条件にて評価用の繊維製品を洗浄処理した。洗浄後、処理した繊維製品を(株)日立製作所製二層式洗濯機(型番「PS-H35L」)にて1分間の脱水処理を行った。脱水後、改めて1リットルのステンレスビーカーに0.6Lの水を入れ、脱水処理を行った繊維製品を投入した。水温を20℃に保ちながら85rpm、3分間の条件にて濯ぎ処理をした。濯ぎ後、処理した繊維製品を改めて二層式洗濯機にて2分間の脱水処理を行った。脱水後の繊維製品のうち、10枚のサンプリング(以下、「濯ぎ後サンプル」という)を行った。
(抽出処理)
濯ぎ後サンプル10枚をNo.8スクリュー管(マルエム)に入れたのち、内部標準としてドデカンを10μg/mLで含むメタノール(HPLC用、富士フィルム和光純薬(株)製)50mLを加えた。このスクリュー管を超音波洗浄機(BRANSON 2800、氷浴使用)による抽出作業を1時間、その後振盪機(Yamato製 Shaker SA-300、スピード:Max)による抽出作業を15分間、さらに改めて前述の超音波洗浄機(同条件)による抽出作業を1時間実施し、布に残留している香料成分をメタノール中に抽出した。
(繊維製品に残留した香料の定量)
前述のメタノール抽出液に含まれる香料の量を、以下の測定機器、測定条件のガスクロマトグラフィーにより定量し、メタノール抽出液中に含まれていた全香料の中から濯ぎ後サンプルにおける繊維製品上に残留した香料の吸着量を定量し、マイクロカプセルの吸着率を算出した。実施例1の吸着率は35%、及び比較例1~2の吸着率は39%、24%であった。
(測定機器)
GC装置:「Agilent Technologies8890B」(Agilent社製)
MS装置:「Agilent Technologies5977B」(Agilent社製)
カラム:HP-5MS(長さ:30m、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、Agilent社製)
注入口温度:280℃
注入法:スプリットレス
注入量:1μL
温度:60℃→8℃/minで昇温→200℃→10℃/minで昇温→280℃→(15min保持)
キャリアガス:ヘリウム 平均線速度 47.525cm/sec
MS温度:イオン源230℃ 四重極温度150℃
イオン化方式:EI
取り込みモード:SIM
【0089】
(3)白残り
白残りの評価は、実施例を代表して実施例1、11及び比較例1について行った。
試験用の黒色木綿布(クルーネックTシャツ(ユニクロ製)を6cm×6cmに裁断したもの)に、表2に記載の実施例1、比較例1、又は表3に記載の実施例11のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物1g塗布し、1晩乾燥させた試験布を、台布(木綿平織 約40cm×40cm)に安全ピンで固定した。洗濯ネットに試験布を入れて全自動洗濯機(Panasonic社製 NA-F70PB15)にて洗濯処理を行った(20℃和歌山市水42L、衣類2.8kg 洗い10分、脱水8分)。その際濃度が1g/1Lとなるように表2に記載の実施例1、比較例1、又は表3に記載の実施例11のマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物を添加した。洗浄後、試験布を乾燥(温度湿度成り行きにて1晩自然乾燥)させ、目視にて評価を行った。実施例1、11では白残りが確認されなかったが、比較例1では白残りが確認された。
【0090】
【表2】

【0091】
【表3】
【0092】
表2、3に示される結果から、以下のことが確認された。
実施例1~21で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が高いことが確認された。更に、実施例1では、繊維製品に対して、マイクロカプセルの吸着率が良好で、マイクロカプセルの凝集による白残りが生じないことも確認された。また、実施例11では、繊維製品に対して、マイクロカプセルの凝集による白残りが生じないことも確認された。
実施例5と17、実施例9と20、実施例10と21とを比較すると、(A)成分を含有する分散液を攪拌しながら、(C)成分を添加した後、(B)成分を添加する方が、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が向上することも確認された。
実施例3~5,10を比較すると、配合比率(A/C)が一定の条件下で、(B)成分の含有量が多くなるほど、配合比率(A/B)が小さくなるほど、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が低下することも確認された。実施例15~17,21を比較すると、同様の傾向にあることが確認された。
一方、比較例1~2で得られたマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物は、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が低いことが確認された。更に、(A)成分を含有する分散液に、(B)成分と(C)成分との事前混合液を投入して製造された比較例1では、繊維製品に対して、マイクロカプセルの凝集による白残りが生じることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、組成物中におけるマイクロカプセルの分散性が高いマイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、繊維製品に対して、マイクロカプセルの吸着率が良好で、マイクロカプセルの凝集による白残りを抑制することができる、マイクロカプセル含有アニオン性界面活性剤組成物の製造方法を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
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