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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099219
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】リッド装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
B60K15/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215699
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康行
(72)【発明者】
【氏名】丸矢 航平
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晋
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA01
3D038CA03
3D038CB01
3D038CC16
3D038CD03
(57)【要約】
【課題】アームがボックスに当接する時の衝撃を吸収し、当接時の異音や振動の発生を抑制するリッド装置を提供する。
【解決手段】車両10の車体外面11に取付けられ、充電口13の充電ソケットに対応する開口部21が形成されたボックス20と、充電口13を開閉すると共に、車両10の下方向に開くリッド60と、リッド60とボックス20に連結され、リッド60を車両10の上下方向に、且つ車両10の車体外面11に沿うように移動可能に支持する第1支持アーム40、及び第1支持アーム40より車両10の下方向に位置する第2支持アーム44を備えるリッド装置1であって、ボックス20には、リッド60の全開時に、第2支持アーム44に当接し、ボックス20を構成する材料より硬度の低い軟質材料で構成される軟質部36が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体外面に取付けられ、車両へのエネルギー供給のための供給口に対応する開口部が形成されたボックスと、
前記供給口の車外側を開閉すると共に、前記車両の下方向に開くリッドと、
前記リッドと前記ボックスに連結され、前記リッドを前記車両の上下方向に、且つ前記車両の前記車体外面に沿うように移動可能に支持する第1支持アーム、及び前記第1支持アームより前記車両の下方向に位置する第2支持アームを備えるリッド装置であって、
前記ボックスには、前記リッドの全開時に、前記第2支持アームに当接し、前記ボックスを構成する材料より硬度の低い軟質材料で構成される軟質部が形成されていることを特徴とするリッド装置。
【請求項2】
前記第2支持アームは、湾曲部を備え、
前記湾曲部の第2支持アームボックス側連結部側には、内側に突出する補強部が形成され、
前記補強部は、前記軟質部に当接する請求項1に記載のリッド装置。
【請求項3】
前記補強部は、前記第2支持アームから部分的に突出するリブである請求項2に記載のリッド装置。
【請求項4】
前記ボックスの上端部分の周囲には、前記ボックスを前記車体外面に取付けるためのフランジ部が形成され、
前記軟質部は、前記フランジ部の車外側に連続して形成され、前記軟質部には、前記湾曲部の第2支持アームリッド側連結部側に当接可能な凸部が形成されている請求項2又は請求項3に記載のリッド装置。
【請求項5】
前記軟質部は、前記ボックスと前記リッドとの間をシールするシール部材に一体化される請求項4に記載のリッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両の車体に取付けられ、車体の給油口、充電口等を塞ぎ、開閉可能なリッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクにガソリン等の燃料や水素を給油又は充填する場合には、車体に設けられた給油口又は充填口を塞ぐ給油口蓋、充填口蓋を開き、燃料キャップを外して給油口から燃料を給油する、又は、充填ポートに充填プラグを差し込んで水素を充填する。又、電気モータにより走行する電気自動車や、電気モータとエンジンの併用により走行するプラグインハイブリッド車(PHV、PHEV)に搭載されたバッテリーに車外の充電施設(家庭用電源、充電専用施設の電源)から電気を充電する場合には、リッドを開き、充電ソケットである急速充電ソケット又は普通充電ソケットに充電プラグを差し込んで接続して充電する。
【0003】
例えば、スライド開閉式の車両用リッド開閉装置が知られている(例えば、特許文献1)。図5図6は、特許文献1に記載された技術であり、図5は、リッドの裏面を表した斜視図である。又、図6(a)は、リッドの全開時の断面図であり、図6(b)は、図6(a)のX領域の拡大図である。特許文献1の車両用リッド開閉装置100は、車体に取り付けられる基部200(基部は「ボックス」ともいう)と、車両へのエネルギー供給のための供給口を露出させる開口部210と、開口部210を塞ぐリッド600と、リッド600を所定閉位置と所定開位置との間で開閉動作させるリンク機構110と、を備えている。リンク機構110は、それぞれ一端部が基部200に回動可能に支持され、且つ他端部がリッド600に回動可能に支持された第1アーム400と第2アーム410を有する。第2アーム410は、第1アーム400の回動と同期して回動し、スラスト方向、すなわち、回転軸と同じ方向に見て第1アーム400の回動軌跡内に位置し得る。第1アーム400と第2アーム410はそれぞれ、リッド600が開いた位置で互いにスラスト方向に重なる重畳部と、互いに回動方向に接触してリッドの更なる開動作を規制するストッパ部と、を有する。又、特許文献1におけるリッド600の開閉は、電動アクチュエータの作動により行われる。
【0004】
リッド600の全開状態では、図6(b)に示すように、第2アーム410は、基部200と矢印Yの位置で当接することにより、リッド600が全開状態を超えて更に開動作することを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-68684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、基部200、第1アーム400、第2アーム410は、車体への固定及び開閉動作の関係で、硬度の高い材料で形成される。したがって、寸法バラツキにより、第2アーム410が基部200に強く当接する場合があり、その場合、当接時に異音や振動が発生する。
【0007】
又、車両の上下方向にスライド開閉式の場合、特に、リッド600を開く動作時や全開時において、リッド600の自重により車両下方に力が働き、さらに、例えば、電気自動車における充電に際し、充電プラグや充電者がリッド600の上方側に接触することにより、リッド600が車両の下方向や車内方向に強い力を受ける場合がある。リッド600の全開時には、第2アーム410は、基部200と矢印Yの位置で当接し、リッド600が全開状態を超えて更に開動作することを規制されているので、この充電プラグや充電者のリッド600の上方側への接触による力により、第2アーム410や基部200の破損や変形の可能性がある。そして、第2アーム410の変形や折損は、リッド600の正しい位置での開閉が困難になる原因となる。これは、ガソリン等の燃料や水素を供給する場合にも同様に発生し得る。
そこで、本発明は、アームが基部(ボックス)に当接する時の衝撃を吸収することにより、当接時の異音や振動の発生を抑制し、さらには、リッドが車両の車内方向や下方向に強い力を受けた時に、アームや基部(ボックス)の破損や変形を抑制するリッド装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、車両の車体外面に取付けられ、車両へのエネルギー供給のための供給口に対応する開口部が形成されたボックスと、供給口の車外側を開閉すると共に、車両の下方向に開くリッドと、リッドとボックスに連結され、リッドを車両の上下方向に、且つ車両の車体外面に沿うように移動可能に支持する第1支持アーム、及び第1支持アームより車両の下方向に位置する第2支持アームを備えるリッド装置であって、ボックスには、リッドの全開時に、第2支持アームに当接し、ボックスを構成する材料より硬度の低い軟質材料で構成される軟質部が形成されていることを特徴とするリッド装置である。
【0009】
請求項1の本発明では、ボックスには、リッドの全開時に、第2支持アームに当接し、ボックスを構成する材料より硬度の低い軟質材料で構成される軟質部が形成されているので、第2支持アームがボックスに当接する時の衝撃を吸収することができる。その結果、第2支持アームがボックスに当接する時の異音や振動の発生を抑制し、さらに、充電プラグや充電者によるリッドの上方側への接触に伴い、リッドが車両の下方や車内方向に強い力を受けた場合に、第2支持アームやボックスの破損や変形を抑制することができる。
【0010】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、第2支持アームは、湾曲部を備え、湾曲部の第2支持アームボックス側連結部側には、内側に突出する補強部が形成され、補強部は、軟質部に当接するリッド装置である。
【0011】
請求項2の本発明では、第2支持アームは、湾曲部を備えるので、湾曲部を備えていない場合に比較して、リッドを車両下方に大きく開くことができる。又、第2支持アームの第2支持アームボックス側連結部側には、内側に突出する補強部が形成され、補強部は、軟質部に当接するので、第2支持アームのボックスとの当接部分の機械的強度が増大し、第2支持アームの変形や折損を防止することができる。
ここで、「内側」とは、第2支持アームにおいて、湾曲部を挟んだ角度が180度未満となる側をいう。
【0012】
請求項3の本発明は、請求項2の発明において、補強部は、第2支持アームから部分的に突出するリブであるリッド装置である。ここで、「リブ」とは、樹脂製品の肉厚を厚くせずに剛性や強度を大きくしたり、反りやねじれなどの変形を防ぐことができる突起状の補強部材をいう。
【0013】
請求項3の本発明では、補強部は、第2支持アームから部分的に突出するリブであるので、第2支持アームのボックスとの当接部分の機械的強度を増大させることができる。又、第2アームを肉厚にする場合に発生する成形時のヒケを防止することができる。さらに、第2アームを肉厚にする場合に比較して第2アームを軽量化することができる。
【0014】
請求項4の本発明は、請求項2又は請求項3の発明において、ボックスの上端部分の周囲には、ボックスを車体外面に取付けるためのフランジ部が形成され、軟質部は、フランジ部の車外側に連続して形成され、軟質部には、湾曲部の第2支持アームリッド側連結部側に当接可能な凸部が形成されているリッド装置である。
【0015】
請求項4の本発明では、ボックスの上端部分の周囲には、ボックスを車体外面に取付けるためのフランジ部が形成され、軟質部は、フランジ部の車外側に連続して形成され、軟質部には、湾曲部の第2支持アームリッド側連結部側に当接可能な凸部が形成されているので、特に、リッドが、全開時に充電プラグや充電者によって車外側から車両の車内方向に力を受けた時に、凸部が、第2支持アームの湾曲部より第2支持アームリッド側連結部側に当接し、上記力を緩和することができる。その結果、第2支持アームの破損や変形を抑制することができる。
【0016】
なお、「湾曲部の第2支持アームリッド側連結部側に当接可能な凸部」には、リッドの全開時に、凸部が湾曲部の第2支持アームリッド側連結部側に当接している場合と、リッドの全開後に、リッドが車外側から力を受けた後に、凸部が第2支持アームリッド側連結部側に当接する場合の両方を含む。
【0017】
請求項5の本発明は、請求項4の発明において、軟質部は、ボックスとリッドとの間をシールするシール部材に一体化されるリッド装置である。
【0018】
請求項4の本発明では、軟質部は、ボックスとリッドとの間をシールするシール部材に一体化されるので、軟質部とシール部材を別々に形成する場合に比較して、軟質部とシール部材間の間隔を狭くすることができ、リッドを車両下方に大きく開くことができる。なお、シール部材と軟質部を一体化するに当たり、シール部材と軟質部を同一材料としてもよく、異なる材料としてもよい。軟質部とシール部材が同一材料の場合は、異なる材料とする場合に比較して、成形工程の効率化、リッド装置のコストダウンを行うことができる。
【0019】
又、軟質部とシール部材を、例えば、2色成形等によりボックスに成形によって形成するのではなく、軟質部とシール部材をボックスとは別に成形し、ボックスにそれぞれ取付ける場合に比較して、取付け工程を省略することができるので、取付け効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
車両の車体外面に取付けられ、車両へのエネルギー供給のための供給口に対応する開口部が形成されたボックスと、供給口の車外側を開閉すると共に、車両の下方向に開くリッドと、リッドとボックスに連結され、リッドを車両の上下方向に、且つ車両の車体外面に沿うように移動可能に支持する第1支持アーム及び第1支持アームより車両の下方向に位置する第2支持アームを備えるリッド装置であって、ボックスには、リッドの全開時に、第2支持アームに当接し、ボックスを構成する材料より硬度の低い軟質材料で構成される軟質部が形成されているので、第2支持アームがボックスに当接する時の衝撃を吸収することができる。その結果、第2支持アームがボックスに当接する時の異音や振動の発生を抑制し、さらに、充電プラグや充電者によるリッドの上方側への接触に伴い、リッドが車両の下方や車内方向に強い力を受けた場合に、第2支持アームやボックスの破損や変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】リッドが開いた状態のリッド装置の正面図である。
図2】本発明の実施形態であり、リッドが全閉の状態の図1のA-A断面である。
図3】(a)は、本発明の実施形態であり、リッドが全開の状態の図1のA-A断面であり、(b)は、(a)のZ領域の拡大図である
図4】本発明の実施形態であり、リッドが全開と全閉の中間にある時の第2支持アームの模式斜視図である。
図5】従来のリッド装置の裏面を表す斜視図である(特許文献1)。
図6】(a)は、従来のリッド装置におけるリッドが全開の状態の断面図であり、(b)は、(a)のX領域の拡大図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図1から図4に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、電気自動車やプラグインハイブリッド車用として設計された、車両10の左側の前側フェンダー(車体外面11)に配設された充電口13のリッド装置1に関し説明するものであるが、充電口13が、右側の前側フェンダーやその他の部位に配設される場合にも適用することができる。又、図1において、紙面の上側が車両の上方、下側が車両の下方、左側が車両の前方、右側が車両の後方である。なお、本発明は、電気を充電する充電口のみならず、自動車用燃料タンクにガソリン等の燃料や水素を給油又は充填する他のエネルギーの供給口にも適用することができる。
【0023】
図1に示すように、充電口13のリッド装置1は、車両10の左側の前側フェンダー(車体外面11)に取付けられている。リッド装置1は、車体外面11の凹部12に取付けられるボックス20と、ボックス20の車外側空間を開閉するリッド60と、リッド60とボックス20に連結され、リッド60を移動可能に支持する第1支持アーム40及び第1支持アーム40より車両10の下方向に位置する第2支持アーム44を備えている。
【0024】
リッド60は、充電ソケットが充電ソケットに接続される充電設備側の充電プラグに対してアクセス可能である全開位置(図1図3)から全閉位置(図2)まで、車両10の上方向に、且つ車両10の車体外面11に沿うように移動させることができる。図2の全閉位置では、リッド60が充電ソケットを覆う。したがって、リッド60は、車両10の下方に開く形式である。
【0025】
又、図2図3(a)に示すように、第1支持アーム40と第1支持アーム40より車両10の下方向に位置する第2支持アーム44は、リッド60とボックス20に連結し、リッド60を車両10の上下方向に、且つ車両10の車体外面11に沿うように移動可能に支持する。図2図3(a)から明らかなように、リッド60は、開く過程で、車体外面11の車外側に持ち上がり、車体外面11に沿って下方向に移動する。
【0026】
図1から図3(a)に示すように、ボックス20の外周には、フランジ部22が形成されている。フランジ部22には、シール部材25が形成されている。シール部材25は、車体外面11の凹部12に取付けられた時に、フランジ部22の外周側と車内側の2箇所で車体外面11の凹部12に当接し、車体外面11とボックス20間をシールする。
【0027】
又、ボックス20は、フランジ部22から側壁部23によって連結され、フランジ部22の車内側に位置し、開口部21が形成される底面部24を有している。又、底面部24には、開口部21の前側と後側に位置し、底面部24より車内側に凹んだ前側ボックス凹部27と、後側ボックス凹部28が形成されている。前側ボックス凹部27と、後側ボックス凹部28を総称してボックス凹部26という。ボックス凹部26には、後述する第1支持アーム40と第2支持アーム44が取付けられる。
【0028】
ボックス20は、剛性、強度等の観点で優れているポリプロピレン(PP)にガラス繊維を混合した材料により形成した。又、シール部材25は、ポリプロピレン(PP)にEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を混合した材料により形成した。なお、ボックス20とシール部材25は、上記の材料には限定されない。
【0029】
図1に示すように、第1支持アーム40は、ボックス20の前側ボックス凹部27に形成された前側第1支持アームボックス側連結部31に連結する前側第1支持アーム41と、後側ボックス凹部28に形成された後側第1支持アームボックス側連結部32に連結する後側第1支持アーム42から構成されている。前側第1支持アームボックス側連結部31と後側第1支持アームボックス側連結部32を総称して第1支持アームボックス側連結部30という。
【0030】
又、第1支持アーム40のリッド60側は、前側第1支持アーム41の先端部分と後側第1支持アーム42の先端部分が第1支持アーム連結部43で連結され、第1支持アーム連結部43がリッド60に形成された前側第1支持アームリッド側連結部62と後側第1支持アームリッド側連結部63に連結されている。前側第1支持アームリッド側連結部62と後側第1支持アームリッド側連結部63を総称して、第1支持アームリッド側連結部61という。なお、前側第1支持アーム41と後側第1支持アーム42は、第1支持アーム連結部43で連結されていなくてもよく、個別にリッド60に連結されていてもよい。
【0031】
第1支持アーム40は、リッド60側において、前側第1支持アーム41と後側第1支持アーム42との間隔が狭まるように形成されている。これは、図1において、ボックス20のフランジ部22、側壁部23と底面部24が、上方に向かい狭まるように形成されているので、リッド60の開閉において、第1支持アーム40が側壁部23に干渉することを防止するためである。そのため、図2において、後側第1支持アーム42のリッド60側は、断面図に現れないので、破線で示した。なお、前側第1支持アーム41も同様である。
【0032】
第2支持アーム44は、ボックス20の前側ボックス凹部27に形成された前側第2支持アームボックス側連結部34に連結する前側第2支持アーム45と、後側ボックス凹部28に形成された後側第2支持アームボックス側連結部35に連結する後側第2支持アーム46から構成されている。前側第2支持アームボックス側連結部34と後側第2支持アームボックス側連結部35を総称して第2支持アームボックス側連結部33という。
【0033】
又、第2支持アーム44のリッド60側は、前側第2支持アーム45の先端部分と後側第2支持アーム46の先端部分が第2支持アーム連結部47で連結され、第2支持アーム連結部47がリッド60に形成された前側第2支持アームリッド側連結部65と後側第2支持アームリッド側連結部66に連結されている。前側第2支持アームリッド側連結部65と後側第2支持アームリッド側連結部66を総称して、第2支持アームリッド側連結部64という。なお、前側第2支持アーム45と後側第2支持アーム46は、第2支持アーム連結部47で連結されていなくてもよく、個別にリッド60に連結されていてもよい。
【0034】
第1支持アーム40と第2支持アーム44は、エンジニアプラスチックのナイロン(ポリアミド)、具体的には、ナイロン6により形成した。なお、第1支持アーム40と第2支持アーム44は、上記の材料には限定されない。
【0035】
第1支持アーム40の第1支持アームボックス側連結部30側と第2支持アーム44の第2支持アームボックス側連結部33側は、図示しないリッド開閉モータに接続されており、リッド開閉モータの駆動によって、第1支持アーム40が第1支持アームボックス側連結部30を中心に、第2支持アーム44が第2支持アームボックス側連結部33を中心に回転し、リッド60の開閉が行われる。
【0036】
図1において、側壁部23、底面部24、第1支持アーム40と第2支持アーム44は、前後方向に対称形であるので、以後の記載については、「前側」及び「後側」の区別を省いた総称名で記載する。したがって、図2図3は、後側に関するA-A断面図であるが、例えば、「後側第2支持アーム46」は、「第2支持アーム44」と記載して説明する。又、図4は、前側第2支持アーム45についての図であるが、上記と同様に「第2支持アーム44」と記載して説明する。
【0037】
図2図3(a)に示すように、第2支持アーム44は、車内側に凸状に湾曲する湾曲部48を有している。第2支持アーム44の一方の端部は、リッド60と第2支持アームリッド側連結部64に連結し、他方の端部は、ボックス凹部26の第2支持アームボックス側連結部33に連結している。
【0038】
図3(b)と図4に示すように、湾曲部48の第2支持アームボックス側連結部33側には、第2支持アーム44の表面から内側に突出する補強部49が形成されている。補強部49は、側面視で略三角形状であり、本実施形態では、直角三角形である。直角を挟む短辺部50と長辺部51が第2支持アーム44から突出して形成されており、直角三角形の斜辺部が第2支持アーム44の表面に一致している。又、長辺部51が、後述するボックス20に形成される軟質部36に当接する。なお、補強部49は、側面視で直角三角形には限定されない。
【0039】
図4に示すように、補強部49は、第2支持アーム44の表面から部分的に突出するリブ52であり、リブ52の本数は2である。又、2本のリブ52は、平行に形成されている。なお、リブ52の本数は2本には限定されない。又、リブ52間を第2支持アーム44の表面から突出して形成される、例えば、+(プラス)形状やX(クロス)形状の他のリブで連結してもよい。
【0040】
図2図3(b)に示すように、ボックス20の側壁部23には、第2支持アーム44に形成された補強部49の長辺部51に当接する軟質部36が、側壁部23の内面側に形成されている。軟質部36は、ボックス20を構成する材料より硬度の低い軟質材料で形成されている。又、軟質部36は、側壁部23上からフランジ部22上に延設され、シール部材25に連結され、一体化されている。
【0041】
又、軟質部36には、フランジ部22上であり、シール部材25の内側に、リッド60側に突出する断面が弧形状の凸部37が形成されている。リッド60が開いた状態では、シール部材25のリッド60側の先端部分は、凸部37より車外側に位置している。凸部37は、リッド60の全開時に、第2支持アーム44に当接、若しくは凸部37の先端部分が、第2支持アーム44に近接するように形成される。
【0042】
軟質部36は、シール部材25と同じポリプロピレン(PP)にEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を混合した材料により形成した。なお、軟質部36は、シール部材25と異なる材料で形成してもよい。
【0043】
軟質部36とシール部材25は、ボックス20を成形する時に、同時に成形され一体化されている。なお、軟質部36とシール部材25をボックス20とは別に成形し、ボックス20に取付けてもよい。
【0044】
図2に示すように、リッド60が閉じた状態では、シール部材25のリッド60側の先端部分がリッド60の車内側の面に当接して、リッド60とボックス20との間をシールし、水等の液体や塵、埃等がボックス20内に浸入することを防止する。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)リッド60が開くと、湾曲部48の第2支持アームボックス側連結部33側に形成された補強部49の長辺部51が、ボックス20に形成されている軟質部36に当接する。軟質部36は、ボックス20より硬度の低い材料で構成されているので、ボックス20との当接時に歪むことにより、ボックス20と第2支持アーム44との間の寸法バラツキを吸収すると共に、リッド60が全開状態を超えて更に開動作することを規制することができる。
【0046】
又、第2支持アーム44がボックス20に強く当接する場合にも、当接時にその衝撃を吸収し、異音や振動が発生することを抑制することができる。さらに、充電プラグや充電者がリッド60の上方側に接触することにより、第2支持アーム44に車両10の車内方向や下方向に強い力を受けた場合にもその衝撃を緩和することができるので、第2支持アーム44の変形や破損を防止することができる。
【0047】
(2)第2支持アーム44は、湾曲部48を備えるので、湾曲部48を備えていない場合に比較して、リッド60を車両下方に大きく開くことができる。又、第2支持アーム44の第2支持アームボックス側連結部33側には、内側に突出する補強部49が形成され、補強部49は、軟質部36に当接するので、第2支持アーム44のボックス20との軟質部分の機械的強度が増大し、第2支持アーム44の変形や折損を防止することができる。
【0048】
(3)第2支持アーム44の補強部49は、第2支持アーム44から部分的に突出するリブ52であるので、第2支持アーム44のボックス20との当接部分の機械的強度を増大させることができる。又、第2支持アーム44を肉厚にして補強部49を形成する場合に発生する成形時のヒケを防止することができる。又、第2支持アーム44を肉厚にする場合に比較して第2支持アーム44を軽量化することができる。
【0049】
(4)ボックス20の上端部分の周囲には、ボックス20を車体外面11に取付けるためのフランジ部22が形成され、軟質部36は、フランジ部22の車外側に連続して形成され、軟質部36には、湾曲部48の第2支持アームリッド側連結部64側に当接可能な凸部37が形成されているので、特に、リッド60の全開時に、リッド60が車外側から車両10の車内方向に力を受けた時に、凸部37が第2支持アーム44の湾曲部48の第2支持アームリッド側連結部64側に当接し、上記力を緩和することができる。その結果、第2支持アーム44の破損や変形を抑制することができる。
【0050】
(5)軟質部36は、ボックス20とリッド60との間をシールするシール部材25に一体化されるので、軟質部36とシール部材25を別々に形成する場合に比較して、軟質部36とシール部材間の間隔を狭くすることができ、リッド60を車両下方に大きく開くことができる。又、軟質部36とシール部材25を同一材料で形成したので、異なる材料とする場合に比較して、成形工程の効率化、リッド装置1のコストダウンを行うことができる。
【0051】
特に、軟質部36とシール部材25をボックス20とは別に成形し、ボックス20にそれぞれ取付ける場合に比較して、取付け工程を省略することができるので、取付け効率を向上させることができる。
【0052】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0053】
上記の実施形態では、第2支持アーム44に補強部49を形成すること、軟質部36において、凸部37を形成すること、軟質部36とシール部材25を一体に形成することを同時に行ったが、上記の内の1つ、又は複数を選択して実施してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 リッド装置
10 車両
20 ボックス
22 フランジ
36 軟質部
37 凸部
40 第1支持アーム
44 第2支持アーム
48 湾曲部
49 補強部
51 長辺部
52 リブ
60 リッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6