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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099264
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】予測システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/66 20060101AFI20250626BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20250626BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20250626BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20250626BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20250626BHJP
【FI】
G01N33/66 A
G01N33/92 A
G01N33/92 C
G01N33/72 A
G16H50/30
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215790
(22)【出願日】2023-12-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日:令和5年3月27日、掲載アドレス https://www.nature.com/articles/s41598-023-32279-z 掲載年月日:令和5年4月7日、掲載アドレス https://doi.org/10.1371/journal.pone.0284139
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】大石 充
(72)【発明者】
【氏名】窪薗 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】川添 晋
【テーマコード(参考)】
2G045
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA31
2G045DA48
2G045DA69
2G045DA70
2G045JA01
5L099AA04
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】将来的にどのような生活習慣病にかかりやすいのかを「見える化」することができる予測システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】予測システム1は、所定年数経過後の生活習慣病の発症の有無に関して有意差がある変数であって、採血検査から数値N1が得られた第1変数EV1と採血検査以外から数値N2が得られた第2変数EV2とを説明変数とし、5年経過後の生活習慣病の発症確率を目的変数としてロジスティック回帰分析を行うことにより得られた予測式PRを用いて、対象者の第1変数EV1及び第2変数EV2の数値N1、N2に基づいて、対象者の発症確率Pを算出する算出部12を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定年数経過後の生活習慣病の発症の有無に関して有意差がある変数であって、採血検査から数値が得られた第1変数と前記採血検査以外から数値が得られた第2変数とを説明変数とし、所定年数経過後の生活習慣病の発症確率を目的変数としてロジスティック回帰分析を行うことにより得られた予測式を用いて、対象者の前記第1変数及び前記第2変数の数値に基づいて、対象者の前記発症確率を算出する算出部を備える、
予測システム。
【請求項2】
前記生活習慣病が高血圧である場合、
前記第1変数には、糖尿病の有無及び高尿酸血症の有無が含まれ、
前記第2変数には、年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙の有無及び高血圧を患う家族の有無が含まれる、
請求項1に記載の予測システム。
【請求項3】
前記生活習慣病が慢性腎臓病である場合、
前記第1変数には、糖尿病の有無、高尿酸血症の有無、脂質異常症の有無及びeGFRが含まれ、
前記第2変数には、年齢、BMI及び高血圧の有無が含まれる、
請求項1に記載の予測システム。
【請求項4】
前記生活習慣病がメタボリックシンドロームである場合、
前記第1変数には、空腹時血糖値、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪が含まれ、
前記第2変数には、年齢、性別、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙の有無及び飲酒の有無が含まれる、
請求項1に記載の予測システム。
【請求項5】
前記生活習慣病が動脈硬化である場合、
前記第1変数には、前記対象者が男性の場合、血糖値及び中性脂肪が含まれる一方、前記対象者が女性の場合、血糖値が含まれ、
前記第2変数には、前記対象者が男性の場合、年齢、BMI、収縮期血圧及び拡張期血圧が含まれる一方、前記対象者が女性の場合、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧及び喫煙の有無が含まれる、
請求項1に記載の予測システム。
【請求項6】
前記生活習慣病が糖尿病である場合、
前記第1変数には、空腹時血糖値及びHbA1cが含まれ、
前記第2変数には、年齢、性別及びBMIが含まれる、
請求項1に記載の予測システム。
【請求項7】
前記生活習慣病が脂質異常症である場合、
前記第1変数には、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪が含まれ、
前記第2変数には、年齢、喫煙の有無が含まれる、
請求項1に記載の予測システム。
【請求項8】
年齢、性別、BMI、高血圧の有無、喫煙の有無、飲酒の有無を説明変数とし、所定年数経過後のメタボリックシンドロームの発症確率を目的変数として行われたロジスティック回帰分析を行うことにより得られる予測式を用いて、対象者の前記説明変数の数値に基づいて、対象者の所定年数経過後のメタボリックシンドロームの発症確率を算出する算出部を備える、
予測システム。
【請求項9】
年齢、性別、BMI、高血圧の有無、高血圧を患う家族の有無、脂質異常症の有無を説明変数とし、所定年数経過後の糖尿病の発症確率を目的変数とし、所定年数経過後の糖尿病の発症確率を目的変数として行われたロジスティック回帰分析より得られる予測式を用いて、対象者の前記説明変数の数値に基づいて、対象者の所定年数経過後の糖尿病の発症確率を算出する算出部を備える、
予測システム。
【請求項10】
検査結果報告書の画像を取得する画像取得部と、
前記画像から、前記説明変数の数値を抽出する抽出部と、を備え、
前記算出部は、
前記抽出部で抽出された前記説明変数の数値に基づいて、前記発症確率を算出する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の予測システム。
【請求項11】
コンピュータを、
所定年数経過後の生活習慣病の発症の有無に関して有意差がある変数であって、採血検査から数値が得られた第1変数と前記採血検査以外から数値が得られた第2変数とを説明変数とし、所定年数経過後の生活習慣病の発症確率を目的変数としてロジスティック回帰分析を行うことにより得られた予測式を用いて、対象者の前記第1変数及び前記第2変数の数値に基づいて、対象者の前記発症確率を算出する算出部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、健康診断の結果に基づいて病名の自動診断が可能な自動診断システム、自動診断プログラムおよび自動診断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-103760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2008年より開始された特定健診の受診率は53.4%(2020年)であるうえ、特定保健指導実施率は22.7%であり、決して十分な数字ではない。特定健診受診率、特定保健指導実施率及び医療機関受診率を向上させることは生活習慣病を予防する上で極めて重要であり、医療費を大幅に抑制し、健康長寿を実現する点で重要である。高齢化により生活習慣病から発症する脳・心血管病の医療費に占める割合が増大しており、2018年に循環器病対策基本法が制定されて予防の大切さがより強調されている。
【0005】
特定健診受診率、特定保健指導実施率及び医療機関受診率が向上しない理由の1つに、特定健診の検査結果の項目が専門的でわかりづらいため、将来的に自分がどのような生活習慣病にかかりやすいのかを把握しにくいという点がある。そこで、自分が将来的にどのような生活習慣病にかかりやすいのかを「見える化」することができるシステムの登場が望まれている。
【0006】
上記特許文献1に開示された自動診断システム、自動診断プログラム及び自動診断方法は、健康診断の結果に基づいて病名の自動診断が可能であるが、個人個人が将来的にどのような生活習慣病にかかりやすいのかを予測するものではない。
【0007】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、将来的にどのような生活習慣病にかかりやすいのかを「見える化」することができる予測システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る予測システムは、
所定年数経過後の生活習慣病の発症の有無に関して有意差がある変数であって、採血検査から数値が得られた第1変数と前記採血検査以外から数値が得られた第2変数とを説明変数とし、所定年数経過後の生活習慣病の発症確率を目的変数としてロジスティック回帰分析を行うことにより得られた予測式を用いて、対象者の前記第1変数及び前記第2変数の数値に基づいて、対象者の前記発症確率を算出する算出部を備える。
【0009】
前記生活習慣病が高血圧である場合、
前記第1変数には、糖尿病の有無及び高尿酸血症の有無が含まれ、
前記第2変数には、年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙の有無及び高血圧を患う家族の有無が含まれる、
こととしてもよい。
【0010】
前記生活習慣病が慢性腎臓病である場合、
前記第1変数には、糖尿病の有無、高尿酸血症の有無、脂質異常症の有無及びeGFRが含まれ、
前記第2変数には、年齢、BMI及び高血圧の有無が含まれる、
こととしてもよい。
【0011】
前記生活習慣病がメタボリックシンドロームである場合、
前記第1変数には、空腹時血糖値、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪が含まれ、
前記第2変数には、年齢、性別、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙の有無及び飲酒の有無が含まれる、
こととしてもよい。
【0012】
前記生活習慣病が動脈硬化である場合、
前記第1変数には、前記対象者が男性の場合、血糖値及び中性脂肪が含まれる一方、前記対象者が女性の場合、血糖値が含まれ、
前記第2変数には、前記対象者が男性の場合、年齢、BMI、収縮期血圧及び拡張期血圧が含まれる一方、前記対象者が女性の場合、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧及び喫煙の有無が含まれる、
こととしてもよい。
【0013】
前記生活習慣病が糖尿病である場合、
前記第1変数には、空腹時血糖値及びHbA1cが含まれ、
前記第2変数には、年齢、性別及びBMIが含まれる、
こととしてもよい。
【0014】
前記生活習慣病が脂質異常症である場合、
前記第1変数には、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪が含まれ、
前記第2変数には、年齢、喫煙の有無が含まれる、
こととしてもよい。
【0015】
本発明の第2の観点に係る予測システムは、
年齢、性別、BMI、高血圧の有無、喫煙の有無、飲酒の有無を説明変数とし、所定年数経過後のメタボリックシンドロームの発症確率を目的変数として行われたロジスティック回帰分析を行うことにより得られる予測式を用いて、対象者の前記説明変数の数値に基づいて、対象者の所定年数経過後のメタボリックシンドロームの発症確率を算出する算出部を備える。
【0016】
本発明の第3の観点に係る予測システムは、
年齢、性別、BMI、高血圧の有無、高血圧を患う家族の有無、脂質異常症の有無を説明変数とし、所定年数経過後の糖尿病の発症確率を目的変数とし、所定年数経過後の糖尿病の発症確率を目的変数として行われたロジスティック回帰分析より得られる予測式を用いて、対象者の前記説明変数の数値に基づいて、対象者の所定年数経過後の糖尿病の発症確率を算出する算出部を備える。
【0017】
検査結果報告書の画像を取得する画像取得部と、
前記画像から、前記説明変数の数値を抽出する抽出部と、を備え、
前記算出部は、
前記抽出部で抽出された前記説明変数の数値に基づいて、前記発症確率を算出する、
こととしてもよい。
【0018】
本発明の第4の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
所定年数経過後の生活習慣病の発症の有無に関して有意差がある変数であって、採血検査から数値が得られた第1変数と前記採血検査以外から数値が得られた第2変数とを説明変数とし、所定年数経過後の生活習慣病の発症確率を目的変数としてロジスティック回帰分析を行うことにより得られた予測式を用いて、対象者の前記第1変数及び前記第2変数の数値に基づいて、対象者の前記発症確率を算出する算出部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、将来的にどのような生活習慣病にかかりやすいのかを「見える化」することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1に係る予測システムの構成を示すブロック図である。
図2】5年後の生活習慣病の発症の有無に対して有意差のある変数を示す表である。
図3】端末装置の入出力画面の一例を示す図である。
図4】端末装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図5】予測処理のフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態2に係る予測システムにおける端末装置の構成を示すブロック図である。
図7図6の端末装置の入出力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。なお、下記の実施の形態において、“有する”、“含む”又は“含有する”といった表現は、“からなる”又は“から構成される”という意味も包含する。
【0022】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る予測システム1は、端末装置10を備える。端末装置10は、所定年数経過後、例えば5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを予測する。本実施の形態では、生活習慣病として、例えば図2に示すように、高血圧、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、動脈硬化、糖尿病、脂質異常症を対象とする。しかし、予測対象となる生活習慣病は、これらには限定されない。
【0023】
[生活習慣病の判断基準]
高血圧を発症しているか否かの判断基準は、収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上であることである。
【0024】
また、慢性腎臓病を発症しているか否かの判断基準は、以下の(1)、(2)のいずれか、または両方が3か月以上持続することである。
(1)尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかであり、特に0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)がある。
(2)糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate;GFR)が60mL/min/1.73m未満である。
【0025】
また、メタボリックシンドロームを発症しているか否かの判断基準は、日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm、女性90cm以上で、かつ血圧、血糖、脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れることである。
【0026】
また、動脈硬化を発症しているか否かの判断基準は、動脈硬化指数の基準値が3.0未満であることである。
【0027】
また、糖尿病を発症しているか否かの判断基準は、血糖値の検査結果が、空腹時(朝食前)で126mg/dL以上、2時間食後で200mg/dL以上、またはヘモグロビンA1c(HbA1c)の検査結果が6.5%以上であること、又は糖尿病薬物治療をしていることである。なお、HbA1cの数値は、厳密には、HbA1c(NGSP)とする。
【0028】
また、脂質異常症を発症しているか否かの判断基準は、LDL(Low Density Lipoprotein)コレステロール:140mg/dL以上、又はトリグリセライド:空腹時150mg/dL以上、非空腹時175mg/dL以上、又はNon-HDL(High Density Lipoprotein)コレステロール(総コレステロール-HDLコレステロール):170mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満又は脂質薬物治療をしていることである。
【0029】
この予測システム1は、現時点での特定検診では、上述の判断基準に当てはまらなかった場合でも、その特定検診の検査結果等に基づいて、その特定検診から5年経過後に、上記判断基準にあてはまる可能性、すなわち、生活習慣病の発症確率Pを予測する。
【0030】
[データベース]
予測システム1は、データベース2を備える。図1に示すように、データベース2には、5年経過後の生活習慣病の発症確率Pの予測式PRを生成するための学習用データBDが蓄積されている。この学習用データBDは、生活習慣病に関わるリスク要因を表す変数のうち、特定検診における受診者の採血検査から得られた第1変数EV1の数値と、採血検査以外から得られた受診者に関する第2変数EV2の数値と、その特定検診が行われた時点から5年経過後、その受診者が、生活習慣病にかかったか否か、すなわち5年経過度生活習慣病の有無(結果)Rが対応付けられて蓄積されている。この学習用データBDの数は多ければ多いほどよい。
【0031】
第1変数EV1としては、特定検診の採血検査から直接得られるか、計算又は判定結果により数値が算出される項目であれば、あらゆるものを含めることができる。例えば、図2に示すように、第1変数EV1には、糖尿病の有無、HbA1c(mmol/mol)、高尿酸血症の有無、脂質異常症の有無、eGFR(mL/min/1.73m)、空腹時血糖値(mg/dl)、HDLコレステロール(mg/dl)、LDLコレステロール(mg/dl)、中性脂肪(mg/dl)がある。ここで、糖尿病の有無は、採血検査の数値から算出され、糖尿病の判断基準を満たしており、糖尿病であれば値は1となり、糖尿病でなければ値は0となる変数である。高尿酸血症の有無、脂質異常症の有無も同様である。第1変数EV1は、図2に示すものには限定されない。
【0032】
第2変数EV2としては、特定検診の採血検査以外から得られる受診者に関する情報であれば、あらゆるものを含めることができる。例えば、図2に示すように、第2変数には、年齢、性別、BMI(Body Mass Index)(kg/m)、高血圧の有無、収縮期血圧(mmHg)、拡張期血圧(mmHg)、高血圧を患う家族の有無(高血圧家族歴)、喫煙の有無、飲酒の有無がある。年齢は、そのままの値を変数の値とすることできる。性別は、男性を1とし女性を0としている。高血圧の有無は有が1となり、無が0となる。同様に、喫煙有が1となり、喫煙無が0となり、飲酒は、日常生活において、単位日数当たりのアルコール摂取量が所定量を超える場合に1となり、それ以外が0となる。第2変数EV2は、図2に示すものには限定されない。
【0033】
図1に示すように、予測システム1は、分析装置3を備える。分析装置3は、対象者の採血検査から数値が得られる第1変数EV1と、採血検査以外から数値が得られる第2変数EV2とを説明変数とし、5年経過後の対象者の生活習慣病の発症確率を目的変数として、ロジスティック回帰分析を行って予測式PRを生成する。予測式PRは、以下のように規定される。
P=100/(1+e-(a0+a1(X1)+a2(X2)+a3(X3)・・・))・・・(1)
ここで、P[%]は、生活習慣病の発症確率である。a0は切片であり、X1、X2、X3、・・・は、説明変数であり、a1、a2、a3、・・・は、回帰変数である。予測式PRを生成するとは、ロジスティック回帰分析により、切片a0、回帰変数a1、a2、a3、・・・を決定することに相当する。なお、切片a0、回帰変数a1、a2、a3、・・・は、生活習慣病毎、後述の各種条件毎に生成される。各種条件には、採血の有無又は性別があり、分析装置3は、生活習慣病毎に予測式PRを生成するとともに、採血有と採血無とで、又は性別毎にそれぞれ予測式PRを生成し、AUC(Area Under Curve)が最も高くなる予測式PRを、その条件における生活習慣病の予測式PRとして生成する。
【0034】
なお、第1変数EV1と第2変数EV2の中には、生活習慣病によっては有意差を有しないものもある。分析装置3は、生活習慣病の種別ごとに、第1変数EV1と第2変数EV2についてt検定等、生活習慣病と変数との間の相関性の有無を判定可能な統計処理を行って、有意差がある、すなわち5年経過後の生活習慣病の発症との間に相関性のある第1変数EV1と第2変数EV2を選択する。
【0035】
その選択結果を、例えば図2に示す。図2に示すように、例えば、5年経過後に高血圧を患った者と、そうでない者との間に有意差がある変数(リスク要因)は、特定検診時の受診者の年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、高血圧家族歴、喫煙の有無、糖尿病の有無及び高尿酸血症の有無である。したがって、生活習慣病が高血圧である場合、第1変数EV1には、糖尿病の有無及び高尿酸血症の有無が含まれ、第2変数EV2には、年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、高血圧家族歴、喫煙の有無及び飲酒の有無が含まれる。
【0036】
また、5年経過後に慢性腎臓病を患った者と、そうでない者との間に有意差があるリスク要因は、特定検診時の年齢、性別、高血圧の有無、糖尿病の有無、高尿酸血症の有無、脂質異常症の有無及びeGFRである。したがって、生活習慣病が慢性腎臓病である場合、第1変数EV1には、糖尿病の有無、高尿酸血症の有無、脂質異常症の有無及びeGFRが含まれ、第2変数EV2には、年齢、性別及び高血圧の有無が含まれる。
【0037】
また、5年経過後にメタボリックシンドロームを患った者と、そうでなかった者との間に有意差がある変数は、採血検査の結果が得られた場合では、年齢、性別、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖値、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪である。したがって、生活習慣病がメタボリックシンドロームであり、採血検査の結果が得られた場合、第1変数EV1には、空腹時血糖値、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪が含まれ、第2変数EV2には、年齢、BMI、収縮期血圧及び拡張期血圧が含まれる。
【0038】
また、5年経過後にメタボリックシンドロームを患った者と、そうでなかった者との間に有意差がある第1変数EV1及び第2変数EV2は、採血検査の結果が得られなかった場合では、健康診断時の年齢、性別、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙の有無及び飲酒の有無である。したがって、生活習慣病がメタボリックシンドロームであり、採血検査の結果が得られた場合、第1変数EV1には、年齢、性別、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙の有無及び飲酒の有無が含まれる。
【0039】
また、5年経過後に動脈硬化を患った者と、そうでなかった者との間に有意差がある第1変数EV1及び第2変数EV2は、男性の場合、健康診断時の年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖値及び中性脂肪であり、女性の場合、健康診断時の年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙及び血糖値である。したがって、生活習慣病が動脈硬化である場合、第1変数EV1には、受診者が男性の場合、空腹時血糖値及び中性脂肪が含まれる一方、受診者が女性の場合、血糖値が含まれる。第2変数EV2には、受診者が男性の場合、年齢、BMI、収縮期血圧及び拡張期血圧が含まれる一方、受診者が女性の場合、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧及び喫煙の有無が含まれる。
【0040】
また、5年経過後に糖尿病を患った者と、そうでなかった者との間に有意差がある第1変数EV1及び第2変数EV2は、採血検査の結果が得られた場合、年齢、性別、BMI、HbA1c、空腹時血糖値であり、採血検査の結果が得られない場合、年齢、性別、BMI、高血圧の有無及び脂質異常症の有無である。したがって、生活習慣病が糖尿病であり、採血検査の結果が得られた場合、第1変数EV1には、空腹時血糖値及びHbA1cが含まれ、第2変数EV2には、年齢、性別及びBMIが含まれる。一方、採血検査の結果が得られない場合、第2変数EV2には、年齢、性別、BMI及び高血圧の有無が含まれる。
【0041】
また、5年経過後に脂質異常症を患った者と、そうでなかった者との間に有意差がある第1変数EV1は、年齢及び喫煙の有無であり、第2変数EV2は、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪である。したがって、生活習慣病が脂質異常症である場合、第1変数EV1には、HDLコレステロール、LDLコレステロール及び中性脂肪が含まれ、第2変数EV2には、対象者の年齢、喫煙の有無が含まれる。
【0042】
分析装置3は、図2の表において、各生活習慣病に対して○が付与された第1変数EV1及び第2変数EV2を説明変数として、ロジスティック回帰分析を行い、式(1)における切片a0、回帰変数a1、a2、a3、・・・を求め、予測式PRを生成する。分析装置3において、生活習慣病毎、各種条件毎に生成された予測式PRは例えば以下のようになる。なお、説明変数X1、X2、X3、・・・は、予測式PRによって内容が異なる。わかりやすくするため、変数「~の有無」は、「~」としている。
【0043】
(1)5年経過後高血圧発症可能性(%)予測式(採血有)
P=100/(1+exp(-(-16.3122+0.0364×年齢+0.0592×BMI+0.0667×収縮期血圧+0.0435×拡張期血圧+0.2186×糖尿病+0.1592×高尿酸血症+0.3350×喫煙+0.3675×高血圧家族歴))) …(1-1)
【0044】
(2)5年経過後慢性腎臓病発症可能性(%)予測式(採血有)
P=100/(1+exp(-(9.4876+0.0311×年齢+0.2400×性別+0.3470×高血圧+0.0893×脂質異常症+0.3444×糖尿病+0.0832×高尿酸血症+(-0.1980)×eGFR))) …(2-1)
【0045】
(3)5年経過後メタボリックシンドローム発症可能性(%)予測式
採血有
P=100/(1+exp(-(14.7123+0.0111×年齢+0.014×空腹時血糖+0.3135×BMI+0.0167×拡張期血圧+(-0.0152)×HDLコレステロール+0.0040×LDLコレステロール+0.0083×収縮期血圧+0.0015×中性脂肪+0.2479×飲酒+1.1735×性別+0.2049×喫煙))) …(3-1)
採血無
P=1/(1+exp(-(-13.2623+0.0119×年齢+0.2847×BMI+0.0137×拡張期血圧+0.0088×収縮期血圧+0.0707×飲酒+1.2056×性別+0.4464×喫煙))) …(3-2)
【0046】
(4)5年経過後動脈硬化発症可能性(%)予測式
採血有(男性の場合)
P=100/(1+exp(-(-15.91172+0.06697×年齢-0.03948×BMI+0.02527×収縮期血圧+0.02231×拡張期血圧+1.59574×log(血糖値)+0.21281×log(中性脂肪)))) …(4-1)
採血有(女性の場合)
P=100/(1+exp(-(-16.34973+0.09834×年齢+0.02888×収縮期血圧+0.01876×拡張期血圧+1.31674×log(血糖値)+0.49505×喫煙))) …(4-2)
【0047】
(5)5年経過後糖尿病発症可能性(%)予測式
採血有
P=100/(1+exp(-(-30.3726+2.5471×HbA1c+0.1101×空腹時血糖値+0.0905×BMI-0.0184×年齢+0.2876×性別))) …(5-1)
採血無
P=100/(1+exp(-(-8.4968+0.1522×BMI+0.0200×年齢+0.5096×男性+0.4644×高血圧))) …(5-2)
【0048】
(6)5年経過後の脂質異常症発症可能性(%)予測式
P=1/(1+exp(-(-5.7225-0.0117×年齢+0.3204×喫煙+0.0369×LDLコレステロール-0.0047×HDLコレステロール+0.0161×中性脂肪))) ・・・(6-1)
ただし、この式において、「喫煙」の数値は、現在喫煙中である場合のみ1であるものとする。
【0049】
なお、上記式(1-1)~式(6-1)において、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線のAUCは、以下の通りである。
(1-1)高血圧:AUC=0.79
(2-1)慢性腎臓病(採血有):AUC=0.89
(3-1)メタボリックシンドローム(採血有):AUC=0.85
(3-2)メタボリックシンドローム(採血無):AUC=0.83
(4-1)動脈硬化(男性):AUC=0.71
(4-2)動脈硬化(女性):AUC=0.77
(5-1)糖尿病(採血有):AUC=0.89
(5-2)糖尿病(採血無):AUC=0.71
(6-1)脂質異常症(採血有):AUC=0.73
このように、同じ生活習慣病では、採血有の方、すなわち第1変数EV1を含む予測式PRの方が、AUCが大きくなっている。また、動脈硬化では、性別により予測式PRを分けた方が、AUCが大きくなっているため、予測式PRとして男性用と女性用とが生成される。
【0050】
図1に戻り、分析装置3は、上記(1-1)~(6-1)の予測式PRを生成する。生成された予測式PRのデータは、不図示の通信ネットワークを介して、端末装置10にダウンロードされる。
【0051】
[端末装置]
端末装置10は、例えばスマートフォン、携帯端末、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータである。基本的には、端末装置10は、ユーザの操作入力が可能で、表示画面を有するマンマシンインターフェイスを有する装置である。端末装置10は、入力部11と、算出部12と、出力部13と、を備える。
【0052】
[入力部]
入力部11は、対象者の第1変数EV1の数値N1と採血検査以外から得られた第2変数EV2の数値N2とを入力する。検査装置4は、体重計、血圧計などの特定検診に用いられる検査装置である。入力部11は、この検査装置4から、第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2を入力する。
【0053】
入力部11は、端末装置10の操作入力により、第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2を入力することも可能である。例えば、図3に示すように、端末装置10の表示画面には、第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2を入力する入力画像が表示される。この入力画像を見ながらの操作入力により、年齢、性別、身長、体重、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、飲酒の有無、喫煙の有無、高血圧家族歴等の第1変数EV1の数値N1を入力することができる。なお、入力部11への数値N1、N2の入力は、操作入力のみにより行われるものであってもよい。
【0054】
[算出部]
算出部12は、入力部11に入力された第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2に基づいて、上記式(1-1)~式(6-1)の予測式PRの少なくとも1つを用いて、予測対象となる5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを算出する。
【0055】
高血圧に関して、算出部12は、第1変数EV1としての糖尿病の有無及び高尿酸血症の有無と、第2変数EV2としての年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙、飲酒の有無、高血圧の家族歴の数値とに基づいて、上記式(1-1)を用いて、5年経過後の高血圧の発症確率Pを算出する。
【0056】
慢性腎臓病に関して、算出部12は、第1変数EV1としての採血検査から判定される糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症の有無と、eGFRと、第2変数EV2としての対象者の年齢、BMI、高血圧の有無とに基づいて、上記式(2-1)を用いて、5年経過後の慢性腎臓病の発症確率Pを算出する。
【0057】
生活習慣病がメタボリックシンドロームであり、採血有りの場合、算出部12は、第1変数EV1としての対象者の空腹時血糖、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪と、第2変数EV2としての対象者の年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧とに基づいて、上記式(3-1)を用いて、5年経過後のメタボリックシンドロームの発症確率Pを算出する。さらに、生活習慣病がメタボリックシンドロームであり、採血無しの場合、算出部12は、第1変数EV1としての対象者の空腹時血糖、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪と、第2変数EV2としての対象者の年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧とに基づいて、上記式(3-2)を用いて、5年経過後のメタボリックシンドロームの発症確率Pを算出する。
【0058】
動脈硬化に関して、対象者が男性である場合、算出部12は、第1変数EV1としての血糖値、中性脂肪と、第2変数EV2としての年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧とに基づいて、上記式(4-1)を用いて、5年経過後の動脈硬化の発症確率Pを算出する。また、対象者が女性である場合、算出部12は、第1変数EV1としての年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙の有無と、第2変数EV2としての血糖値とに基づいて、上記式(4-2)を用いて、5年経過後の動脈硬化の発症確率Pを算出する。
【0059】
さらに、糖尿病に関して、採血有りの場合、算出部12は、第1変数EV1としての空腹時血糖値及びHbA1cと、第2変数EV2としての対象者の年齢、性別及びBMIとに基づいて、上記式(5-1)を用いて、5年経過後の糖尿病の発症確率Pを算出する。また、採血無しの場合、算出部12は、第2変数EV2としての対象者の年齢、性別、BMI及び高血圧の有無に基づいて、上記式(5-2)を用いて、5年経過後の糖尿病の発症確率Pを算出する。
【0060】
さらに、脂質異常症に関して、算出部12は、対象者の年齢、性別、BMI、血圧、高血圧の家族歴、脂質異常症の有無に基づいて、上記式(6-1)を用いて、5年経過後の脂質異常症の発症確率を算出する。
【0061】
算出部12が算出対象とする生活習慣病は、高血圧、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、動脈硬化、糖尿病、脂質異常症のいずれかであってもよいし、生活習慣病は、高血圧、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、動脈硬化、糖尿病、脂質異常症のうちの複数であってもよいし、これらの全てについて発症確率Pを算出するようにしてもよい。どの生活習慣病を予測対象とするかは、端末装置10を操作するユーザが選択することが可能である。ユーザは、生活習慣病を、予測対象として複数選択することができる。
【0062】
[出力部]
出力部13は、算出部12で算出された5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを出力する。出力部13は、5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを表示出力するようにしてもよいし、音声出力するようにしてもよい。例えば、端末装置10の表示画面に、図3に示す入出力画像が表示される場合、高血圧、メタボリックシンドロームの発症確率を表示することができる。
【0063】
[端末装置10のハードウエア構成]
図1に示す端末装置10は、例えば、図4に示すハードウエア構成を有するコンピュータがソフトウエアプログラムを実行することにより実現される。具体的には、端末装置10は、装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)31と、CPU31の作業領域等として動作するメインメモリ32と、CPU31の動作プログラム等を記憶する外部メモリ33と、マンマシンインターフェイス34と、通信インターフェイス35と、これらを接続する内部バス38と、を備える。
【0064】
CPU31は、後述のように、メインメモリ32に記憶されたプログラム39を実行することにより、端末装置10の各種機能を実現する。
【0065】
メインメモリ32は、RAM(Random Access Memory)等から構成されている。メインメモリ32には、CPU31によって実行されるプログラム39が外部メモリ33からロードされる。また、メインメモリ32は、CPU31の作業領域(データの一時記憶領域)としても用いられる。図1に示す入力部11、算出部12及び出力部13の機能は、CPU31のプログラムの実行により実現される。
【0066】
外部メモリ33は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリから構成される。外部メモリ33には、CPU31に実行させるためのプログラム39が予め記憶されている。
【0067】
マンマシンインターフェイス34は、キーボード及びマウス等のデバイスと、これらのデバイスを内部バス38に接続するインターフェイス装置を備える。また、マンマシンインターフェイス34は、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶モニタ等の表示用デバイスを備える。マンマシンインターフェイス34として、タッチパネルを採用することができる。マンマシンインターフェイス34により、罹患の有無の判定結果等が表示される。
【0068】
通信インターフェイス35は、データ通信のインターフェイスである。通信インターフェイス35を介して、外部機器とのデータ通信が可能となる。この通信インターフェイス35を介して、分析装置3又は検査装置4とのデータ通信が行われる。
【0069】
端末装置10の機能は、1以上のプロセッサ及び一時的でない記憶媒体を含む1以上の記憶装置を含む1以上のコンピュータからなる計算機システムに実装することができる。複数のコンピュータは、相互に接続された通信ネットワークを介して通信を行いつつ、端末装置10の機能を実現する。例えば、端末装置10の複数の機能の一部が1つのコンピュータに実装され、他の一部が他のコンピュータに実装されてもよい。
【0070】
なお、データベース2及び分析装置3についても、図4に示すハードウエア構成を有するコンピュータがソフトウエアプログラムを実行することにより実現される。
【0071】
次に、本実施の形態に係る端末装置10によって実行される予測処理について説明する。なお、この予測処理では、算出対象となる生活習慣病は、予め設定されているものとする。
【0072】
図5に示すように、予測処理のアプリケーションを起動すると、例えば図3に示すような入出力画像が表示される(ステップS1)。続いて、入力部11は、予測式PRを用いた算出指令が入力されるまで待つ(ステップS2;No)。この段階では、まだ、生活習慣病の発症確率P[%]は表示されていない。ユーザは、マンマシンインターフェイス34を介した操作入力により、第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2の入力が可能となる。
【0073】
ここで、例えば、図3に示す入出力画像を参照して、年齢、性別、身長、体重、飲酒、喫煙、高血圧家族歴等の操作入力が行われる。この段階で、入力部11は、検査装置4から送られるデータを入力しており、検査装置4の検査結果、例えば、収縮期血圧、拡張期血圧などが表示されているものとする。検査装置4と端末装置10とが、通信可能に接続されていない場合、検査装置4の検査結果は、操作入力により行われる。
【0074】
算出指令が入力されると(ステップS2;Yes)、入力部11は、必要な第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2がすべて入力済みであるか否かを判定する(ステップS3)。まだ、入力されていない数値N1、N2がある場合(ステップS3;No)、出力部13は、「~が入力されていません」といった、ユーザに入力を促すような表示出力を行って(ステップS4)、ステップS2に戻る。以降、入力部11は、再び、算出指令の入力待ちとなる(ステップS2;No)。
【0075】
一方、算出指令が入力され(ステップS2;Yes)、すべての数値N1、N2が入力されていた場合(ステップS3;Yes)、算出部12は、入力部11で入力された第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2に基づいて、予測対象となっている生活習慣病に対応する上記式(1-1)~式(6-1)を用いて、5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを算出する(ステップS5)。続いて、出力部13は、算出部12で算出された発症確率Pを出力する(ステップS6)。これにより、予測対象である生活習慣病、例えば図3に示すように、高血圧、メタボリックシンドロームの発症確率P%が表示される。
【0076】
続いて、入力部11は、予測処理のアプリケーションの終了指令の操作入力がなされたか否かを判定する(ステップS7)。終了指令が入力されていなければ(ステップS7;No)、入力部11は、ステップS2に戻る。
【0077】
ここで、端末装置10は、再び、算出指令の入力待ちとなる(ステップS2;No)。この時点で、ユーザは、操作入力により、第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2を変更することが可能である。そして、数値N1、N2を変更し、算出指令を入力すると(ステップS2;Yes)、ステップS3の判定を経て、算出部12は、変更された数値N1、N2に基づいて、予測式PRを用いて生活習慣病の発症確率Pを算出し(ステップS5)、出力部13は、更新された発症確率Pを出力する(ステップS6)。
【0078】
このように、随時、第1変数EV1の数値N1、第2変数EV2の数値N2を変更し、発症確率Pを更新することが可能である。これにより、例えば、体重を数kg減らした場合に、生活習慣病の発症確率Pがどの程度変化するかを確認することができる。さらには、喫煙を有から無に変更したり、飲酒を有から無に変更したりした場合に、生活習慣病の発症確率Pがどの程度変化するかを確認することができる。
【0079】
終了指令が入力された場合(ステップS7;No)、端末装置10は、予測処理を終了する。なお、算出対象となる生活習慣病は、適宜変更が可能である。また、予測式PRが生成されたすべての生活習慣病を算出対象としてもよい。この場合、発症確率Pが閾値以上である生活習慣病については、その発症確率Pを、他の生活習慣病のそれと識別し易くするように強調表示するようにしてもよい。
【0080】
実施の形態2
本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る予測システム1は、生活習慣病毎、必要に応じて対象者の条件毎に容易された予測式PR(上記式(1-1)~(6-1))を用いて、5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを算出する点では、上記実施の形態1に係る予測システム1と同じである。
【0081】
図6に示すように、本実施の形態に係る予測システム1は、入力部11に代えて、画像取得部20と、抽出部21と、を備える点が、上記実施の形態1に係る予測システム1と異なる。
【0082】
画像取得部20は、端末装置10が内蔵するカメラ等を用いて撮像された検査結果報告書TRの画像を取得する。画像取得部20は、端末装置10以外のカメラで撮像された検査結果報告書TRの画像を不図示の通信ネットワークを介して入力するようにしてもよい。
【0083】
抽出部21は、画像取得部20で取得された画像から、第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2を抽出する。
【0084】
算出部12は、抽出部21で抽出された第1変数EV1及び第2変数EV2の数値N1、N2に基づいて、5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを算出する。出力部13は、算出された発症確率Pを出力する。
【0085】
例えば、図7に示すように、端末装置10の表示画面の検診データエリアには、検査結果報告書TRの画像から取得された第1変数EV1及び第2変数EV2の数値N1、N2が表示され、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、メタボリックシンドロームの5年経過後の発症確率Pがそれぞれ表示される。すべての生活習慣病の発症確率Pに基づく総合判定を行い、表示させることも可能である。総合判定の基準については、例えば、50%以上となる生活習慣病の数等に基づいて決定することができる。
【0086】
検診データエリアに表示された数値N1、N2は、上記実施の形態1と同様に変更が可能である。数値N1、N2が変更されると、その都度、予測式PRを用いた再計算が行われ、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、メタボリックシンドロームの5年経過後の発症確率Pが更新される。
【0087】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る予測システム1によれば、ロジスティック回帰分析により生成された予測式PRを用いて、第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2に基づいて、5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを算出し、提示することができるので、将来的にどのような生活習慣病にかかりやすいのかを「見える化」することができる。
【0088】
また、予測システム1によれば、第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2を変更することにより、生活習慣病の発症確率Pがどの程度変化するのかを「見える化」することも可能である。これにより、本人又は生活指導を行う者が、どのような項目を改善すれば、生活習慣病の発症確率Pを減らすことができるのかを把握し易くなる。
【0089】
なお、上記実施の形態では、第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2を変更することにより、5年経過後の生活習慣病の発症確率Pを随時更新している。しかし、元の数値N1、N2での発症確率Pと変更後の数値N1、N2での発症確率Pとを比較可能に両方表示するようにしてもよい。さらには、第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2の変更と、発症確率Pの変化との関係をグラフ表示するようにしてもよい。このようにすれば、第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2と、発症確率Pとの相関関係をより把握し易くなる。
【0090】
また、上記実施の形態2に係る予測システム1によれば、採血検査の検査結果を含む特定検診の検査結果報告書TRの画像を取得し、特定健診の検査結果報告書TRの画像から第1変数EV1の数値N1及び第2変数EV2の数値N2を読み取って予測式PRへの入力とすることが可能である。特定健診の検査結果報告書TRは、全国統一のフォーマットであり、健診項目は決まっているため、その画像からの数値の読み取りを容易に行うことができる。これにより、予測式PRの算出を困難にするデータ欠損の発生を防ぐことができるので、それぞれの生活習慣病の発症確率Pの予測を確実に行うことができる。
【0091】
また、予測システム1では、採血検査の結果から得られる第1変数EV1の数値N1を説明変数としない予測式PRを用いて、メタボリックシンドローム、糖尿病の発症確率Pを算出することが可能である。このようにすれば、採血検査を行わずに、対象者自らが、この予測処理のアプリケーションを用いて、将来の生活習慣病の発症確率Pを確認しながら、健康管理を行うことが可能となる。
【0092】
また、同じ生活習慣病で、採血有と採血無とでそれぞれ予測された発症確率Pを比較可能に表示するようにしてもよい。
【0093】
なお、上記実施の形態では、端末装置10が算出部12を備える。しかしながら、これには限られない。端末装置10が入力部11及び出力部13を備え、算出部12は、端末装置10に通信可能に接続するサーバコンピュータが備えるものとしてもよい。入力部11、算出部12、出力部13、画像取得部20、抽出部21がいずれの装置に組み込まれるかについては、柔軟に設計することが可能である。
【0094】
上記実施の形態では、5年経過後の生活習慣病の発症確率を予測しているが、これには限定されない。年数は、1年~4年、6年以上であってもよいし、数ヶ月後であってもよい。
【0095】
その他、端末装置10のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0096】
CPU31、メインメモリ32、外部メモリ33、マンマシンインターフェイス34、通信インターフェイス35及び内部バス38などから構成される端末装置10の処理を行う中心となる部分は、上述のように、専用のシステムとして構築されるようにしてもよいし、通常のコンピュータシステムを用いて実現されるようにしてもよい。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な一時的でない記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する端末装置10を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで端末装置10を構成してもよい。
【0097】
コンピュータの機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0098】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0099】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、対象者の所定年数経過後の生活習慣病の予測に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 予測システム、2 データベース、3 分析装置、4 検査装置、10 端末装置、11 入力部、12 算出部、13 出力部、20 画像取得部、21 抽出部、31 CPU、32 メインメモリ、33 外部メモリ、34 マンマシンインターフェイス、35 通信インターフェイス、38 内部バス、39 プログラム、BD 学習用データ、EV1 第1変数、EV2 第2変数、N1、N2 数値、PR 予測式、P 発症確率、R 5年経過後生活習慣病の有無(結果)、TR 検査結果報告書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7