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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099307
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】保持具及び電力ケーブルの接続方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20250626BHJP
   H02G 15/18 20060101ALI20250626BHJP
   H01R 4/70 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G15/18 020
H01R4/70 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215868
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】丸一 真二
(72)【発明者】
【氏名】織田 博士
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕貴
【テーマコード(参考)】
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5G355AA03
5G355BA01
5G355BA15
5G355CA06
5G355CA09
5G375AA02
5G375CA02
5G375CA14
5G375CB07
5G375DB32
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】電力ケーブルの接続作業の負担低減を図る。
【解決手段】電力ケーブル90,90の導体接続部91に収縮状態で被覆装着される絶縁筒80の中心孔81に予め挿入され、当該中心孔81を拡径保持する拡径保持用筒体70の除去作業において、当該拡径保持用筒体70を保持する保持部材20を有する保持具10であって、保持部材20は、拡径保持用筒体70の軸方向の端部の軸方向の移動を抑える端部保持部22と、端部保持部22の軸方向の移動を抑制するために支える支承部40とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの導体接続部に収縮状態で被覆装着される絶縁筒の中心孔に予め挿入され、当該中心孔を拡径保持する拡径保持用筒体の除去作業において、当該拡径保持用筒体を保持する保持部材を有する保持具であって、
前記保持部材は、
前記拡径保持用筒体の軸方向の端部の軸方向の移動を抑える端部保持部と、
前記端部保持部の軸方向の移動を抑制するために支える支承部と、
を有することを特徴とする保持具。
【請求項2】
前記端部保持部は、前記拡径保持用筒体の軸方向の端部の周方向における半分以上の範囲を保持することを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記端部保持部は、前記拡径保持用筒体の軸方向の端部の周方向における半分以上の範囲が挿入可能な凹溝を有する構造であることを特徴とする請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記端部保持部は、前記拡径保持用筒体の軸方向の端部を前記拡径保持用筒体の径方向から挟持する構造であることを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項5】
前記絶縁筒を配置する受け台を有し、
前記保持部材は、前記受け台に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項6】
前記支承部は、前記保持部材を手で支える把手であることを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項7】
前記把手は、前記端部保持部から前記拡径保持用筒体の径方向外側に延出されていることを特徴とする請求項6に記載の保持具。
【請求項8】
一方の電力ケーブルの接続端部を前記絶縁筒の中心孔に挿入された前記拡径保持用筒体に通した状態で、もう一方の電力ケーブルの接続端部と接続して導体接続部を形成し、
請求項1に記載の保持具によって、前記拡径保持用筒体の軸方向の端部を当該軸方向の移動を抑えるために保持し、
前記拡径保持用筒体の除去作業を行うことを特徴とする電力ケーブルの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの導体接続部に被覆装着される絶縁筒の中心孔に挿入された拡径保持用筒体の保持具及び電力ケーブルの接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力ケーブル同士の接続の際には、それぞれの電力ケーブルの接続端部の絶縁層を除去して導体を露出させると共に、導体同士を突き合せた状態で電気的に接続し、導体接続部を中心孔に挿入した状態で絶縁材料からなる絶縁筒で被覆していた。
絶縁筒は、高い収縮性を有する常温収縮チューブが使用され、その収縮力によって中心孔の内側の導体接続部に隙間なく密着させることが可能であった。
【0003】
上記収縮式の絶縁筒は、電力ケーブルの導体同士を接続する前に、予め、一方の電力ケーブルを通しておき、導体同士の接続後、導体接続部を被覆可能な位置に移動させる必要があった。
このため、作業性の向上を図るために、電力ケーブルの外径よりも内径が大きなスパイラルコアを絶縁筒の中心孔に予め挿入して当該中心孔を拡径保持していた。スパイラルコアは、紐状体を螺旋に巻いて筒状に一体化した筒状体であり、導体接続部を被覆可能な位置に絶縁筒を配置してから、スパイラルコアの紐状体を一端部から解きながら除去することにより、絶縁筒を一端から収縮させていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-61416号公報
【特許文献2】特開2002-27627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、高圧の電力ケーブル同士の接続部にもスパイラルコアが挿入された常温収縮チューブからなる絶縁筒が利用されている。
高圧の電力ケーブルは、その外径が大きく、高い絶縁性を要求されることから、絶縁筒も外径が大きなものが使用される。
しかしながら、外径が大きな絶縁筒は、その収縮力が非常に大きくなることから、スパイラルコアを除去する作業において、その残り長さが短くなると、絶縁筒の端部から勢いよく飛び出してしまう場合があった。
このため、絶縁筒や電力ケーブル、スパイラルコアを、作業者が手でしっかり押さえて作業を行う必要があり、作業負担が大きくなっていた。
【0006】
本発明は、電力ケーブルの接続作業の負担低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明は、
電力ケーブルの導体接続部に収縮状態で被覆装着される絶縁筒の中心孔に予め挿入され、当該中心孔を拡径保持する拡径保持用筒体の除去作業において、当該拡径保持用筒体を保持する保持部材を有する保持具であって、
前記保持部材は、
前記拡径保持用筒体の軸方向の端部の軸方向の移動を抑える端部保持部と、
前記端部保持部の軸方向の移動を抑制するために支える支承部と、
を有することを特徴とする。
【0008】
上記の問題を解決するために、他の本発明は、電力ケーブルの接続方法であって、
一方の電力ケーブルの接続端部を前記絶縁筒の中心孔に挿入された前記拡径保持用筒体に通した状態で、もう一方の電力ケーブルの接続端部と接続して導体接続部を形成し、
上記記載の保持具によって、前記拡径保持用筒体の軸方向の端部を当該軸方向の移動を抑えるために保持し、
前記拡径保持用筒体の除去作業を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力ケーブルの接続作業の負担低減を図ることができ、絶縁筒の端部からのスパイラルコアの飛び出しを抑制して、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電力ケーブルの導体接続部を被覆するために絶縁筒を配置した状態を示した断面図である。
図2】保持具を使用しないで常温収縮チューブを電力ケーブルの導体接続部に取り付ける作業を順番に示した説明図であって、図2(A)は常温収縮チューブの位置を導体接続部に合わせた状態、図2(B)は拡径保持用筒体の解体を開始した状態、図2(C)は拡径保持用筒体の除去が完了した状態を示す。
図3】第1実施形態の保持具によって絶縁筒及びスパイラルコアが保持された状態を示す側面図である。
図4】受け台を軸方向の一方である保持部材側から見た正面図である。
図5図4におけるV-V線に沿った受け台の断面図である。
図6】保持部材の正面図である。
図7図6のW-W線に沿った保持部材の断面図である。
図8】保持具を使用した電力ケーブルの接続方法を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態の保持部材の正面図である。
図10】保持部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1図8に基づいて説明する。
本実施形態は、電力ケーブル90,90の導体92同士を接続した導体接続部91を絶縁被覆するための絶縁筒80の中心孔81に挿入されている拡径保持用筒体としてのスパイラルコア70を除去する作業において、スパイラルコア70を保持するための保持具10及びこれを使用した電力ケーブル90,90の接続方法に関するものである。
【0012】
[電力ケーブル]
図1は、電力ケーブル90,90の中間接続部を形成する過程で、導体92,92同士を接続した導体接続部91を被覆するために、導体接続部91に絶縁筒80を配置した状態を示している。
上記電力ケーブル90,90の端部は、ビニールシース94、絶縁層93を順次段剥ぎして導体92を露出させ、導体92,92同士を接続管で接続するなど周知の手法で導体接続部91を形成する。
【0013】
[絶縁筒]
絶縁筒80は、常温収縮チューブであって、図1に示すように、中心孔81が形成された筒状の絶縁層82と、絶縁層82の内周部であって長手方向中間位置及び両端部に形成された内部半導電層84と、絶縁層82の外周面全体を覆うように形成された外部半導電層83とを備えている。
上記絶縁層82は、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレン等の絶縁性材料から形成され、内部半導電層84及び外部半導電層83は上記絶縁性材料にカーボンを添加した半導電性ゴムから形成されている。さらに、絶縁層82、内部半導電層84及び外部半導電層83は、一体成型されている。
【0014】
上記絶縁筒80の中心孔81の内径は、もともとは、電力ケーブル90及び導体接続部91の外径よりも小さく設定されている。この絶縁筒80は、導体接続部91に装着する前に、その内径が電力ケーブル90の外径よりも大きなスパイラルコア70が中心孔81に挿入装着されている。このスパイラルコア70の内側に予め、電力ケーブル90を挿入しておくことで、絶縁筒80に対する電力ケーブル90の挿入を容易にしている。
そして、電力ケーブル90,90の導体92,92同士が導体接続部91に接続されて、導体接続部91が形成された後に、導体接続部91に対する被覆可能な位置に絶縁筒80を配置してからスパイラルコア70を除去することで、絶縁筒80を収縮させて電力ケーブル90,90及び導体接続部91の外周面への密着を可能としている。この状態で、絶縁筒80は、一方の電力ケーブル90のビニールシース94及び絶縁層93の先端部から他方の電力ケーブル90のビニールシース94及び絶縁層93の先端部に渡って導体接続部91の周囲全体を被覆する。
【0015】
[スパイラルコア]
スパイラルコア70は、例えば、プラスチック製の紐状体71を螺旋状に巻回し、互いに隣接する紐状体71の側面同士を融着もしくは嵌合することで全体を円筒状に形成している。
スパイラルコア70の内径寸法は、電力ケーブル90の外径よりも大きく設定されており、スパイラルコア70を絶縁筒80の中心孔81に装着することで、電力ケーブル90の挿入を容易とし、また、電力ケーブル90に対して絶縁筒80を任意に移動させることができる。
このスパイラルコア70は、全体を構成する紐状体71の一端部をその中心線方向に沿って引っ張ることで紐状体71を紐状に分離させることができ、これにより、スパイラルコア70を一端部から順次解体して、絶縁筒80の内側から除去することが可能となっている。
なお、スパイラルコア70の除去作業において、スパイラルコア70の一端部(図1の右端)から分離した紐状体71は、スパイラルコア70の内側を通って他端部側(図1の左端)に引き出される。
【0016】
[絶縁筒の取り付け作業]
図2(A)~図2(C)は絶縁筒80を電力ケーブル90,90の導体接続部91に取り付ける作業を順番に示した説明図である。ここでは保持具10を使用しない基本的な取付作業を説明する。
まず、一方の電力ケーブル90を絶縁筒80の内側のスパイラルコア70に通した状態で、接続を行う電力ケーブル90,90の導体92,92を接続し、所定の処理を施して導体接続部91を形成する。
この後、図2(A)に示すように、導体接続部91が絶縁筒80の中心孔81内となるように絶縁筒80を配置し、スパイラルコア70の紐状体71の一端部を当該スパイラルコア70の内側から逆側の端部に引っ張り出して、スパイラルコア70を一端側から解体する。これにより、図2(B)に示すように、絶縁筒80は一端側から収縮し、その内周面が電力ケーブル90の段剥ぎ部分及び導体接続部91等の外周面に密着する。
そして、図2(C)に示すように、スパイラルコア70の解体除去が完了すると、絶縁筒80が完全に電力ケーブル90,90の段剥ぎ部分及び導体接続部91に密着し、これら全てを被覆して、その取り付けが完了する。
【0017】
[保持具の全体構成]
保持具10を利用しないでスパイラルコア70の除去作業が行われる場合、各電力ケーブル90、絶縁筒80及びスパイラルコア70は、作業者の手で支えられる。
この状態で、図2(B)のように、スパイラルコア70の残りが少なくなると、絶縁筒80の強力な収縮力により、スパイラルコア70が絶縁筒80から飛び出してしまうおそれがある。
これを回避するために、作業者は、各電力ケーブル90、絶縁筒80及びスパイラルコア70をより強固に押さえる、スパイラルコア70の紐状体71をより慎重に引っ張る等、作業負担が大きくなる。
保持具10は、このような作業負担を低減し、作業性の向上を図るものである。
【0018】
図3は保持具10によって絶縁筒80及びスパイラルコア70が保持された状態を示す側面図である。なお、これ以降、絶縁筒80の中心軸に沿った方向を軸方向、当該中心軸を中心とする円周に沿った方向を周方向、当該円周の半径に沿った方向を径方向という。また、軸方向を前後方向、軸方向の一方を「前」、他方を「後」という場合がある。さらに、水平であって前後方向に直交する方向を左右方向といい、前から見て左側を「左」、右側を「右」という場合がある。
図示のように、保持具10は、スパイラルコア70を保持する保持部材20と、絶縁筒80を配置する受け台30と、保持部材20を受け台30に連結する支承部としての連結部材40とを備えている。
【0019】
[受け台]
図4は受け台30を軸方向の一方である保持部材20側から見た正面図、図5図4におけるV-V線に沿った断面図である。
受け台30は、絶縁筒80を下から支える本体部31と、本体部31の下側内部に立設された前後一対の端面板35と、本体部31の下側であって一対の端面板35の間に設けられた補強板36と、受け台30を吊下するためのワイヤ、ロープ、チェーン等を連結するための連結環37とを有する。
上記本体部31、端面板35、補強板36は、全体が金属板から構成されている。但し、これらの部材の一部または全部については、強度が足りるのであれば、樹脂材料の板から構成してもよい。
【0020】
本体部31は、半周の周面状の受け板32と、受け板32の直径方向両端部に連結された天板部33,33と、各天板部33,33の外縁部に連結された側板部34,34とを有する。これら受け板32、天板部33,33及び側板部34,34は、一体的に形成されている。
【0021】
受け板32は、円筒を半割した形状であり、その内周面を上に向けた状態で使用される。受け板32は、その内側に絶縁筒80の下半部を嵌合させた状態で、絶縁筒80を下から支える。従って、受け板32の内径は、絶縁筒80の最大外径に略一致又はこれより幾分大きい。
【0022】
天板部33,33は、矩形の平板状であり、受け板32の左右の外縁部に個別に連結されている。天板部33,33と受け板32の前後方向の長さは等しい。
天板部33,33は、その平面が略水平な状態で使用される。
また、受け板32の内周面と天板部33,33の上面とには、各々の面全体を覆うように、シート状のゴム等の弾性材料からなるクッション層321,331,331が形成されている。
【0023】
各天板部33,33の左右方向外側となる外縁部には、側板部34,34が個別に連結されている。各側板部34,34は、前後方向及び上下方向沿った矩形の平板状である。各側板部34,34と各天板部33,33の前後方向の長さは等しい。また、各側板部34,34の上下方向の高さの寸法は、受け板32の半径よりも大きい。
各側板部34,34の上部であって軸方向の一端部と他端部とには、連結環37を取り付ける取付孔341,341が穿設されている。
【0024】
連結環37は、各取付孔341に対して図示しないボルト等の締結部材によって固定することができる環状部材である。連結環37は、環状なので、ワイヤやロープを挿通し、又は、チェーンを連結することができる。
連結環37は、上述した各取付孔341の配置に従って、受け台30の平面視における四隅に取り付けられている。このため、受け台30を四方から安定的に吊下することができる。
【0025】
各端面板35は、前後方向に垂直な平板からなる立板部351と、立板部351の下端部に連結された水平な平板からなる底板部352とを有する。これら立板部351と底板部352とは、一体的に形成されている。前側の端面板35は、底板部352が前方に延出され、後側の端面板35は、底板部352が後方に延出されている。
そして、各端面板35の立板部351は、本体部31の下側領域(内側領域)の正面視形状に一致しており、本体部31の下側に嵌合状態で接合されている。このため、受け台30は、左右方向の荷重に対して高い強度を有している。
また、底板部352の底面は、端面板35が本体部31の下側に接合された状態で、本体部31の各側板部34,34の下縁部と高さが一致している。
【0026】
補強板36は、鉛直に立設された前後方向に長尺な平板である。補強板36の上端部は、本体部31の受け板32の底部に接合されている。また、補強板36の前端部と後端部は、それぞれ前後の端面板35の立板部351に接合されている。これにより、補強板36は、本体部31に対する各端面板35の撓みを抑制することができる。
また、補強板36の、受け板32の底部と前側の立板部351との間の角部と受け板32の底部と後側の立板部351との間の角部とが切除されている。このため、各端面板35,35と受け板32の間での撓みに対して、補強板36は高い接合強度を維持することができる。
【0027】
受け台30は、スパイラルコア70の除去作業において、絶縁筒80の中心軸が略水平となる状態で下から支える機能を有する。さらに、受け台30は、スパイラルコア70の除去作業において、保持部材20を受け台30に対して、前方に所定の間隔に保持する機能をも有する。
【0028】
前者の機能の実現のために、受け台30は、四隅に設けられた連結環37にワイヤ、ロープ又はチェーンの下端部を連結して吊下される。ワイヤ、ロープ又はチェーンの上端部は、電力ケーブル90,90の鉛直上方に電力ケーブル90,90の延線方向に沿って設けられたレール部材Rに取り付けられた二つのフックFに掛止されている。各フックFは、レール部材Rに沿って位置調節可能に取り付けられている。
レール部材Rは、例えば、電力ケーブル90,90の導体接続作業の施工現場に設置された足場等の構造物Sや施工現場の壁面に仮設状態で設置されている。なお、レール部材Rは、恒久的に設置されたものでもよい。
また、電力ケーブル90,90の導体接続作業の施工現場の床面が水平な平坦面であって、電力ケーブル90,90の下側にスペースが十分に確保可能であれば、受け台30は、吊下ではなく、床面に載置してもよい。その場合、高さ調節が必要であれば、高さ調節用の板材やブロックを介在させてもよい。
【0029】
また、受け台30に対して保持部材20を前方に所定の間隔に保持する機能の実現のために、図1に示すように、前側の端面板35の立板部351の上側の左右の端部及び下側の概ね左右方向中間部(幾分左寄り)の三か所に連結部材40の取付孔353が貫通形成されている。
三本の連結部材40は、保持部材20の軸方向の移動を抑制するために支える支承部である。各連結部材40は、両端部に雄ネジが形成された丸棒であり、その後端部が各取付孔353に個別に挿入され、一対のナット41及び一対のワッシャー42によって立板部351を挟持して固定される。
これにより、各連結部材40は、前後方向に平行な状態を維持しつつ、他端部が前方に延出される。
三本の連結部材40の前端部は、やはり、一対のナット41及び一対のワッシャー42の挟持によって保持部材20が支持されている。各連結部材40は、前端部側も雄ネジが形成されているので、受け台30に対する保持部材20の前後方向における距離を調節し固定的に保持することができる。
【0030】
なお、連結部材40は、三本に限定されず、一本以上であればよい。また、連結部材40は、丸棒状でなくともよく、板状等の他の形態でもよい。さらに、受け台30の前端部をより前方まで延出させて、受け台30の前端部で保持部材20を支持してもよい。
【0031】
[保持部材]
図6は保持部材20の正面図、図7図6のW-W線に沿った断面図である。
保持部材20は、平板状の本体部21と、スパイラルコア70の前端部を保持する端部保持部22と、補強板23とを有する。
【0032】
本体部21は、左右方向に幅広の矩形の平板からなり、下側の左右の角部が切除された形状を呈する。
本体部21の上側の左右の端部及び下側の概ね左右方向中間部(幾分左寄り)の三か所に連結部材40の取付孔211が貫通形成されている。各連結部材40は、その前端部が各取付孔211に個別に挿入され、一対のナット41及び一対のワッシャー42によって本体部21を挟持して、保持部材20を支持する。
各取付孔211は、上下方向に沿った長孔からなり、保持部材20の支持位置を上下に調整することができる。
【0033】
各連結部材40により、本体部21の平板面は、上下方向及び左右方向に略平行な状態で連結部材40に支持される。
本体部21の上縁部における左右方向の中央部には、下方に凹となる半円状の切り欠き212が形成され、当該切り欠き212に端部保持部22が接合されている。
【0034】
端部保持部22は、同心であって外径が異なる外側周壁部221及び内側周壁部222と、外側周壁部221及び内側周壁部222の軸方向の一端部を閉塞する内底部223を有する。
外側周壁部221は、半周分の範囲で周面に沿った曲面板からなり、内側周壁部222は、半周分の範囲で外側周壁部221よりも小径の周面に沿った曲面板からなる。
外側周壁部221の内径は、スパイラルコア70の外径よりも幾分大きく、内側周壁部222の外径は、スパイラルコア70の内径よりも幾分小さい。
端部保持部22は、外側周壁部221と内側周壁部222と内底部223とが一体的に接合されて、後方に向かって開口した半円状の凹溝224を形成している。
【0035】
外側周壁部221と内側周壁部222及び本体部21の半円状の切り欠き212は、保持部材20が各連結部材40を介して受け台30に支持された状態で、受け台30の本体部31の受け板32と同心となるように配置されている。
なお、「同心となる」とは、長孔状の各取付孔211に沿って保持部材20を各連結部材40に対して上下に位置調整した場合に、その調節範囲内で、同心にすることができることを示す。
【0036】
補強板23は、端部保持部22の下側で、本体部21の前面側において、本体部21に対して垂直に立設された平板である。補強板23の上端部は、外側周壁部221の外周面に接合され、補強板23の後縁部は、本体部21の前面に接合されている。
これにより、補強板23は、本体部21に対する端部保持部22の撓みを抑制することができる。
【0037】
[電力ケーブルの接続方法]
保持具10を使用した電力ケーブル90,90の接続方向について図8のフローチャートに基づいて説明する。
まず、双方の電力ケーブル90,90のビニールシース94、絶縁層93を順次段剥ぎして導体92を露出させた状態とする(ステップS1:段剥ぎ工程)。
【0038】
次いで、一方の電力ケーブル90の接続端部を絶縁筒80の内側のスパイラルコア70に挿入して、挿入側の端部の逆側の端部から突出する位置まで挿通させる(ステップS3:絶縁筒挿通工程)。この時、絶縁筒80は、受け台30によって下から支持した状態で電力ケーブル90の挿通作業を行ってもよい。また、挿通作業は、絶縁筒80を支持する受け台30をレール部材Rに沿って移動させながら行ってもよい。
【0039】
次いで、電力ケーブル90,90の導体92,92同士を接続管で接続するなど周知の手法で接続し、導体接続部91を形成する(ステップS5:導体接続工程)。
そして、絶縁筒80を電力ケーブル90,90に沿って移動させて、導体接続部91を被覆可能な位置に合わせる(ステップS7:絶縁筒位置合わせ工程)。この場合も、位置合わせ作業は、絶縁筒80を支持する受け台30をレール部材Rに沿って移動させながら行ってもよい。
【0040】
なお、受け台30は、受け板32の中心軸が水平となる姿勢を維持しつつ、当該中心軸が各電力ケーブル90,90の中心軸と略同心となるように吊り上げ高さが調整されている。
このとき、絶縁筒80が自重により受け板32の内側で安定している場合には、作業者は、絶縁筒80を押さえて作業を行ってもよいし、押さえずに作業を行ってもよい。
【0041】
次いで、スパイラルコア70の端部(紐状体71の引き抜き側の端部)を保持部材20の半円状の凹溝224の奥の内底部223に当接又は近接するまで挿入して、紐状体71の引き抜き作業時にスパイラルコア70が絶縁筒80から抜けないように保持する(ステップS9:スパイラルコア保持工程)。
なお、この工程は、絶縁筒80を受け台30に載せる際に並行して行ってもよい(例えば、ステップS3)。
【0042】
次いで、スパイラルコア70における紐状体71をほどき始める端部とは逆側の端部(紐状体71の引き抜き側の端部)から紐状体71の引き抜きを開始する(ステップS11)。
これにより、絶縁筒80は一端側から収縮し、その内周面が電力ケーブル90の段剥ぎ部分及び導体接続部91等の外周面に密着する。
【0043】
紐状体71の引き抜き作業における当初の段階では、絶縁筒80に対してスパイラルコア70の移動(飛び出し)は生じないが、スパイラルコア70が短くなるにつれて、絶縁筒80によるスパイラルコア70の保持力が低減し、相対的に紐状体71の引き抜き側の端部にスパイラルコア70を押しだす力が増加する。
しかしながら、スパイラルコア70は、保持部材20によって紐状体71の引き抜き側への移動が規制されているので、スパイラルコア70の飛び出しは抑制される。
なお、端部保持部22から露出したスパイラルコア70の前端部の上側部分は、作業者が押さえて作業を行ってもよいし、押さえないで作業を行ってもよい。
【0044】
そして、スパイラルコア70の残り長さが、絶縁筒80の前端部から前方に突出した範囲に達すると、絶縁筒80は、全長に渡って収縮し、各電力ケーブル90の段剥ぎ部分及び導体接続部91を全て被覆した状態で密着する。これにより、電力ケーブル90,90の中間接続部が形成される(ステップS13)。
一方、スパイラルコア70は、紐状体71を引っ張って残りの全てを解体し、接続された電力ケーブル90,90から除去し、作業を終了する。
【0045】
[第1実施形態における技術的効果]
上記保持具10は、保持部材20の端部保持部22がスパイラルコア70の前端部の前方への移動を抑制する。
このため、スパイラルコア70の除去作業において、その残り長さが短くなった場合に生じる絶縁筒80の前端部からの飛び出しが効果的に抑制される。
従って、作業者がスパイラルコア70の飛び出しに注意しながらスパイラルコア70を保持する必要性が低減し、電力ケーブルの接続作業の負担低減を図り、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0046】
また、保持部材20の端部保持部22は、スパイラルコア70の前端部の周方向における半分の範囲を保持するので、端部保持部22に対するスパイラルコア70の前端部の設置を容易に行うことができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
また、少なくともスパイラルコア70の前端部の周方向における半分の範囲を保持するため、スパイラルコア70の飛び出しを十分効果的に抑制することができる。
【0047】
特に、端部保持部は、スパイラルコア70の前端部を挿入可能な凹溝224を有するので、端部保持部22に対するスパイラルコア70の前端部を挿入するだけで設置可能となり、作業性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0048】
また、保持具10は、絶縁筒80を配置する受け台30を有し、保持部材20は、受け台30に連結されている。
このため、受け台30に絶縁筒80を配置すれば、スパイラルコア70の前方への飛び出しを抑制又は阻止することができ、電力ケーブルの接続作業の負担をさらに効果的に低減することが可能となる。
【0049】
なお、端部保持部22の凹溝224は、スパイラルコア70の前端部の周方向の半分を保持する構造だが、周方向のより多くの範囲、さらには、全周を保持する構造としてもよい。
また、端部保持部22は、少なくとも、スパイラルコア70の前端部に迫る対向面を有する構成であればよく、例えば、凹溝ではなく、スパイラルコア70の前端部の全体が格納される凹部でもよい。また、スパイラルコア70の前端部における周方向の所定範囲全体に対向しなくともよく、例えば、スパイラルコア70の前端部における周方向の所定範囲内に点在する複数個所に対向する対向部(例えば、爪状、鉤状等)を有する構成としてもよい。
また、スパイラルコア70の前端部における周方向の所定範囲は、周方向の半分以上とすることが好ましいが、半分に満たない範囲であってもよい。スパイラルコア70の前端部の飛び出しを抑える際の安定性は低下するが、最小で、スパイラルコア70の前端部における周方向の一点を保持する構成としてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
図9は第2実施形態である保持具10Aの正面図、図10は保持具10Aの側面図である。なお、保持具10Aが適用される電力ケーブル、絶縁筒及びスパイラルコアは、前述した電力ケーブル90、絶縁筒80及びスパイラルコア70と同一である。
なお、本実施形態の保持具10Aは、前述した受け台30に相当する構成を有さず、保持部材20Aと複数の支承部としての把手40Aとを有する構成である。
保持部材20Aと複数の把手40Aは、金属材料から形成されているが、強度が十分である場合には、一部又は全部の構成を樹脂から形成してもよい。
【0051】
保持部材20Aは、スパイラルコア70に保持される本体部21Aと、スパイラルコア70の前端部を保持する端部保持部22Aとを有する。
【0052】
本体部21Aは、スパイラルコア70の中心軸を挟んで対称となる二つの本体ユニット210Aからなる。
本体部21Aは、スパイラルコア70の前端部の内側に挿入可能な円筒部と、円筒部の前端部から径方向外側に張り出されたフランジ部とを有する。
本体部21Aを構成する二つの本体ユニット210Aは、本体部21Aを中心線方向に沿って半割した構造からなる。即ち、本体ユニット210Aは、本体部21Aの円筒部を半割した半割円筒部212Aと、本体部21Aのフランジ部を半割した半割フランジ部211Aとからなる。
半割フランジ部211Aは、半割円筒部212Aの前端部から径方向外側に張り出されて略半円状を呈する。
【0053】
半割フランジ部211Aは、その直径方向両側に向かって延出された連結腕部213A,213Aを有する。各連結腕部213A,213Aは、締結部材である連結ボルト214Aを挿通する挿通孔が形成されている。
そして、二つの本体ユニット210A,210Aについて、互いの割断面を合致させるように向かい合わせ、対向する連結腕部213A,213Aの挿通孔に連結ボルト214Aを挿通し、被締結部材としての蝶ナット215Aで両側の連結腕部213A,213A同士を連結する。
これにより、一対の本体ユニット210A,210Aを連結して、円筒部とフランジ部とを有する本体部21Aを形成することができる。
【0054】
なお、連結ボルト214Aと蝶ナット215Aは、通常のボルトとナットで構成してもよいし、連結ボルト214Aを蝶ボルト、蝶ナット215Aを通常のナットで構成してもよい。
【0055】
端部保持部22Aは、本体部21Aのフランジ部に対して周方向に均一間隔で設けられた四つの端部保持ユニット220Aからなる。なお、端部保持ユニット220Aは、二つ以上であればよく、四つに限定されない。ただし、二つの半割フランジ部211Aのそれぞれに設けられていることが好ましい。
【0056】
各端部保持ユニット220Aは、各半割フランジ部211Aの後面側に装備される支持ブロック221Aと、支持ブロック221Aを本体部21Aの半割フランジ部211Aに固定する二つの締結部材としての取付ボルト222Aと、各半割円筒部212Aとの協働によりスパイラルコア70の前端部を把持する把持部材224Aと、把持部材224Aを半割円筒部212A側に押し付けて把持圧を付与する締結部材としての蝶ボルト223Aとを有する。
【0057】
支持ブロック221Aは、直方体からなり、互いに平行となる一対の平面を半割円筒部212Aの径方向に直交する向きで半割フランジ部211Aの後面側に固定されている。
支持ブロック221Aには、取付ボルト222Aの挿通孔が軸方向に沿って二つ形成されている。半割フランジ部211Aにも、取付ボルト222Aの二つの挿通孔が形成されている。そして、支持ブロック221Aの挿通孔と半割フランジ部211Aの挿通孔とに取付ボルト222Aが挿通されて、半割フランジ部211Aの前面側で被締結部材としてのナット225Aが締結されている。なお、取付ボルト222Aは、半割フランジ部211Aの前面側において、把手40Aの基端部にも挿通され、支持ブロック221Aと把手40Aとを同時に締結固定している。
【0058】
また、支持ブロック221Aには、前述した互いに平行となる一対の平面を径方向に貫通するネジ穴も形成されている。このネジ穴には、径方向外側から蝶ボルト223Aが螺入されている。
蝶ボルト223Aの先端部は、把持部材224Aの径方向外側となる面(背面とする)に当接し、蝶ボルト223Aの締め付けによって把持部材224Aを径方向内側に押圧する。
【0059】
把持部材224Aは、スパイラルコア70の外周面に沿った周面板からなる。把持部材224Aの背面側は、蝶ボルト223Aの先端部がはまる凹部を形成してもよい。
把持部材224Aの径方向内側の面(把持面とする)は、蝶ボルト223Aによって径方向内側に押し付けられ、把持部材224Aと半割円筒部212Aとによってスパイラルコア70を把持することができる。
このため、把持部材224Aの把持面側には、スパイラルコア70の外周面を噛んで保持する凹凸構造が形成されている。
端部保持ユニット220Aは、周方向に均一間隔で四つ設けられているので、スパイラルコア70の前端部を周方向の四か所で把持することができる。
【0060】
四つの把手40Aは、周方向について各端部保持ユニット220Aと一致する配置で、半割フランジ部211Aの前面側に取り付けられている。
把手40Aは、半割円筒部212Aの径方向外側に延出された棒状体であり、基端部は延出端部よりも幅の広い板状を呈する。把手40Aの基端部は、前述した端部保持ユニット220Aの二つの取付ボルト222Aを挿通する挿通孔が形成されており、端部保持ユニット220Aの支持ブロック221Aと共に半割フランジ部211Aに固定されている。
四つの把手40Aは、その延出部を作業者が手で押さえることで、スパイラルコア70を押さえることができる。
【0061】
[電力ケーブルの接続方法]
保持具10Aを使用した電力ケーブル90,90の接続方向について説明する。この場合も前述した図8のフローチャートを参照する。
まず、双方の電力ケーブル90,90の各層を段剥ぎして導体92を露出させる(ステップS1:段剥ぎ工程)。
そして、一方の電力ケーブル90の接続端部を絶縁筒80に挿通させてから(ステップS3:絶縁筒挿通工程)、電力ケーブル90,90の導体92,92同士を周知の手法で接続して導体接続部91を形成する(ステップS5:導体接続工程)。
さらに、絶縁筒80を、導体接続部91を被覆可能な位置に移動させる(ステップS7:絶縁筒位置合わせ工程)。
なお、ステップS3以降、絶縁筒80は、各電力ケーブル90,90と共に中心軸が適正な高さで水平となるように作業者に支えられる。なお、絶縁筒80は、適正な高さで施工現場に設置された足場等の構造物や施工現場の天井面等からロープやチェーン等で吊り下げてもよい。また、絶縁筒80は、その下側にクッション材等を敷いて高さを調節して床面や地面に載置してもよい。
【0062】
そして、スパイラルコア70よりも前側で電力ケーブル90が内側に挿通された状態となるように、半割された二つの本体ユニット210Aを連結ボルト214A及び蝶ナット215Aによって連結する。このとき、本体部21Aの各半割円筒部212Aは、後方に向けられる。
そして、二つの半割円筒部212Aからなる円筒部をスパイラルコア70の前端部に挿入する。このとき、スパイラルコア70の前端部が半割フランジ部211Aの後面に当接又は近接する位置まで円筒部を挿入する。
そして、各端部保持ユニット220Aの蝶ボルト223Aを締結して各把持部材224Aによってスパイラルコア70の前端部を把持する。
これにより、保持部材20Aをスパイラルコア70の前端部に固定して、紐状体71の引き抜き作業時にスパイラルコア70が絶縁筒80から抜けないように保持することが可能な状態とする(ステップS9:スパイラルコア保持工程)。
なお、この工程は、ステップS3以降でより早い段階で行ってもよい。
【0063】
そして、作業者は保持具10Aの各把手40Aを手で押さえながら、スパイラルコア70における紐状体71をほどき始める端部とは逆側の端部(保持部材20Aが取り付けられた端部)から紐状体71の引き抜きを開始する(ステップS11)。
これにより、絶縁筒80は一端側から収縮し、その内周面が電力ケーブル90の段剥ぎ部分及び導体接続部91等の外周面に密着する。
【0064】
紐状体71の引き抜き作業における当初の段階では、絶縁筒80に対してスパイラルコア70の移動(飛び出し)は生じないが、スパイラルコア70が短くなるにつれて、絶縁筒80がスパイラルコア70の保持力が低減し、相対的に紐状体71の引き抜き側の端部にスパイラルコア70を押しだす力が増加する。
しかしながら、スパイラルコア70の前端部は、保持具10Aの把手40Aを通じで作業者に支えられているので、短くなったスパイラルコア70が絶縁筒80の中心孔81から飛び出さないように保持される。
【0065】
そして、スパイラルコア70の残り長さが、絶縁筒80の前端部から前方に突出した範囲に達すると、絶縁筒80は、全長に渡って収縮し、各電力ケーブル90の段剥ぎ部分及び導体接続部91を全て被覆した状態で密着する。これにより、電力ケーブル90,90の中間接続部が形成される(ステップS13)。
一方、保持具10Aは、各蝶ボルト223Aを緩めてスパイラルコア70の把持状態を解除すると共に、蝶ナット215Aを連結ボルト214Aから外して、二つの本体ユニット210Aを分離し、電力ケーブル90,90の中間接続部から保持具10Aを除去する。
また、スパイラルコア70は、紐状体71を引っ張って残りの全てを解体し、接続された電力ケーブル90,90から除去し、作業を終了する。
【0066】
[第2実施形態における技術的効果]
上記保持具10Aは、スパイラルコア70の端部を保持する保持部材20Aに設けられた各把手40Aを作業者が持ってスパイラルコア70を支えることができるため、スパイラルコア70の前端部の前方への飛び出しを容易に抑制することができる。
従って、作業者の電力ケーブルの接続作業の負担低減を図り、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0067】
特に、各把手40Aは、保持部材20Aから半径方向の外側に延出された構造のため、スパイラルコア70の中心線が電力ケーブル90に沿った姿勢を維持するように支える作業を少ない労力で行うことができ、作業者の電力ケーブルの接続作業のさらなる負担低減を図ることが可能となる。
また、スパイラルコア70を把手40Aによって支える構造のため、保持具10Aの構成全体が小型化し、設置の作業負担を低減することが可能となる。
【0068】
また、端部保持部22Aの各端部保持ユニット220Aは、スパイラルコア70の前端部を径方向から把持する構造であるため、スパイラルコア70に対する保持具10Aの取り付け及びスパイラルコア70の保持を容易かつ効果的に行うことが可能となる。これにより、作業者の電力ケーブルの接続作業のさらなる負担低減を図ることが可能となる。
【0069】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0070】
例えば、保持具10Aは、受け台30を備える構成としてもよい。その場合、その場合、把手40Aに替えて、保持部材20Aの本体部21Aの各半割フランジ部211Aに取付孔を設け、複数の連結部材40で保持部材20Aと受け台30とを連結すればよい。
【符号の説明】
【0071】
10,10A 保持具
20 保持部材
21 本体部
211 取付孔
212 切り欠き
22 端部保持部
221 外側周壁部
222 内側周壁部
223 内底部
224 凹溝
20A 保持部材
21A 本体部
210A 本体ユニット
211A 半割フランジ部
212A 半割円筒部
213A 連結腕部
214A 連結ボルト
215A 蝶ナット
22A 端部保持部
220A 端部保持ユニット
221A 支持ブロック
222A 取付ボルト
223A 蝶ボルト
224A 把持部材
225A ナット
30 受け台
31 本体部
32 受け板
321 クッション層
33 天板部
331,331 クッション層
34 側板部
341 取付孔
35 端面板
351 立板部
352 底板部
353 取付孔
36 補強板
37 連結環
40 連結部材(支承部)
40A 把手(支承部)
41 ナット
42 ワッシャー
70 スパイラルコア(拡径保持用筒体)
71 紐状体
80 絶縁筒
81 中心孔
82 絶縁層
90 電力ケーブル
91 導体接続部
92導体
93 絶縁層
94 ビニールシース
F フック
R レール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10