(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009931
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】トンネル支保工の連結構造とトンネル支保工の施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20250109BHJP
E21D 11/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E21D11/40 A
E21D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099901
(22)【出願日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2023109514
(32)【優先日】2023-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520185546
【氏名又は名称】ユニタイトシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝治
(72)【発明者】
【氏名】餅田 裕貴
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155CA01
2D155GB01
(57)【要約】
【課題】一対の分割支保工の連結を、簡易、効率的かつ高精度に行うことを可能にする、トンネル支保工の連結構造とトンネル支保工の施工方法を提供する。
【解決手段】トンネル支保工の連結構造100において、第2分割支保工20の第2継手板25に貫通孔27A,27Bが開設され、第1分割支保工10の第1継手板15に雄部材30の基部35が取り付けられて先端34が第2継手板から突設し、雄部材30は収容溝33と側面開口36を備え、収容溝33には一対の爪40が側面開口36を介して内外に出入り自在に配設され、一対の爪40の基部側の端部42が弾性材50によって付勢されて側面開口36を介して外側に張り出している際に、爪40の備える係合凹部45と側面開口36の壁面36aが面接触した状態で係合し、雄部材30が貫通孔27A,27Bに挿通され、第1継手板15と第2継手板25の広幅面同士が当接している。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板が連結されることにより形成される、トンネル支保工の連結構造であって、
前記第2継手板には貫通孔が開設され、
前記第1継手板には、前記貫通孔に挿通されて前記第2継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第2継手板から突設しており、
前記雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通しており、
前記収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈しており、
前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されており、
前記雄部材が前記貫通孔に挿通され、前記第1継手板と前記第2継手板の広幅面同士が当接し、前記一対の爪の基部側の端部が前記第2継手板の広幅面に係合もしくは対向していることを特徴とする、トンネル支保工の連結構造。
【請求項2】
前記一対の爪はその側方に係合凹部を備えており、
前記一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されて前記側面開口を介して外側に張り出している際に、前記係合凹部と該側面開口の壁面が面接触した状態で係合していることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項3】
前記貫通孔は、切羽側に位置する第1貫通孔と、坑口側に位置する第2貫通孔を含み、
前記雄部材は、第1貫通孔に挿通される第1雄部材と、前記第2貫通孔に挿通される第2雄部材を含み、
前記第2雄部材に比べて、前記第1雄部材の長さが長く設定されていることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項4】
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板が連結されることにより形成される、トンネル支保工の連結構造であって、
前記第2継手板と前記第1継手板にはそれぞれ、貫通孔に含まれる第1貫通孔と第2貫通孔が開設され、該第2貫通孔に比べて該第1貫通孔が切羽側に位置しており、
前記第1継手板には、前記第1貫通孔に挿通されて前記第2継手板に係合される、雄部材に含まれる第1雄部材の基部が取り付けられ、該第1雄部材の先端が該第2継手板から突設し、
前記第2継手板には、前記第2貫通孔に挿通されて前記第1継手板に係合される、雄部材に含まれる第2雄部材の基部が取り付けられ、該第2雄部材の先端が該第1継手板から突設しており、
前記雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通しており、
前記収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈しており、
前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されており、
前記雄部材が前記貫通孔に挿通され、前記第1継手板と前記第2継手板の広幅面同士が当接し、前記一対の爪の基部側の端部が前記第2継手板の広幅面に係合もしくは対向していることを特徴とする、トンネル支保工の連結構造。
【請求項5】
前記一対の爪はその側方に係合凹部を備えており、
前記一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されて前記側面開口を介して外側に張り出している際に、前記係合凹部と該側面開口の壁面が面接触した状態で係合していることを特徴とする、請求項4に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項6】
前記第2雄部材に比べて、前記第1雄部材の長さが長く設定されていることを特徴とする、請求項4に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項7】
前記弾性材は、第1片と、該第1片の両端から屈曲して延びる二つの第2片と、それぞれの該第2片から外側へ屈曲して延びる第3片を有する、側面視形状が略Ω状を呈しており、
前記一対の爪の基部側の端部が一対の前記第3片により付勢されていることを特徴とする、請求項1又は4に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項8】
前記弾性材は、中央バネと、該中央バネの両端に連続する一対の端部バネとを備えた圧縮コイルバネであり、
前記中央バネの外径が前記端部バネの外径よりも大きく、
前記一対の爪の基端側の端部が、前記一対の端部バネにより付勢されていることを特徴とする、請求項1又は4に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項9】
前記一対の爪の基部側の端部にはそれぞれ嵌合溝が設けられ、
前記嵌合溝に対して前記第2片の半分以上の長さ範囲が収容された状態で、前記第3片の先端が嵌まり込んでいることを特徴とする、請求項7に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項10】
前記一対の爪の基部側の端部にはそれぞれ嵌合溝が設けられ、
前記嵌合溝に対して前記端部バネの端部が嵌まり込んでいることを特徴とする、請求項8に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項11】
前記収容溝の底部には座ぐり溝が設けられ、前記第1片が該座ぐり溝に収容されていることを特徴とする、請求項7に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項12】
前記収容溝の底部には座ぐり溝が設けられ、前記中央バネが該座ぐり溝に収容されていることを特徴とする、請求項8に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項13】
前記雄部材の先端形状が、切頭円錐形、切頭角錐形、円錐形、角錐形のいずれか一種であることを特徴とする、請求項1又は4に記載のトンネル支保工の連結構造。
【請求項14】
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板を連結することにより、トンネル支保工の連結構造を形成する、トンネル支保工の施工方法であって、
準備工程と、連結構造形成工程とを有し、
前記準備工程では、
前記第2継手板に、切羽側に位置する第1貫通孔と、坑口側に位置する第2貫通孔を開設し、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔にそれぞれ挿通されて前記第2継手板に係合される、雄部材に含まれる第1雄部材と第2雄部材を準備し、該雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通し、該収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈し、該収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢され、前記第2雄部材に比べて前記第1雄部材の長さが長く設定されており、
前記第1継手板に対して、前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ取り付け、
前記連結構造形成工程では、前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔に挿通させることを特徴とする、トンネル支保工の施工方法。
【請求項15】
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板を連結することにより、トンネル支保工の連結構造を形成する、トンネル支保工の施工方法であって、
準備工程と、連結構造形成工程とを有し、
前記準備工程では、
前記第2継手板に第1貫通孔を開設し、前記第1継手板に第2貫通孔を開設し、該第2貫通孔に比べて該第1貫通孔を切羽側に位置させ、
前記第1貫通孔に挿通されて前記第2継手板に係合される、雄部材に含まれる第1雄部材と、前記第2貫通孔に挿通されて前記第1継手板に係合される、雄部材に含まれる第2雄部材を準備し、該雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通し、該収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈し、前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されており、
前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ、前記第1継手板と前記第2継手板に取り付け、
前記連結構造形成工程では、前記連結構造形成工程では、前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔に同時に挿通させることを特徴とする、トンネル支保工の施工方法。
【請求項16】
前記準備工程では、前記第2雄部材に比べて前記第1雄部材の長さを長く設定し、
前記連結構造形成工程では、前記第1貫通孔に対して前記第1雄部材を挿通させた後に、前記第2貫通孔に対して該第2雄部材を挿通させることを特徴とする、請求項14又は15に記載のトンネル支保工の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル支保工の連結構造とトンネル支保工の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば山岳トンネルにおける鋼製支保工の建て込みにおいては、ベースマシンに左右二本のエレクタが装備された支保工建て込み装置を用いて、それぞれのエレクタにて左右に分割されて円弧状をなす一対の分割支保工を把持して支保工を形成し、孔壁に沿って建て込まれた支保工に対してコンクリートを吹付けて支保工を孔壁に固定する方法が適用される。ベースマシンには、分割支保工を把持する一対のエレクタの他、コンクリートの吹付けを行う吹付け機、作業員が搭乗できるバスケットブームなど、様々な機器が装備されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、弧状に分割された一対の分割支保工が上端部において相互に連結されているアーチ状の支保工を、切羽に建て込むトンネル支保工の建て込み方法が開示されている。このトンネル支保工の建て込み方法では、一対の分割支保工のうち、一方の上端部には、他方の上端部に形成された凸型連結部と係合可能な凹型連結部が設けられており、一対の分割支保工を着脱可能に把持する一対のハンドを有するエレクタ装置を切羽に配置し、一対の分割支保工を把持した状態の一対のハンドを相対移動させて凹型連結部に凸型連結部を係合させることにより、一対の分割支保工をアーチ状に連結する支保工連結工程を有する。凹型連結部は、円形孔である挿抜孔部と、挿抜孔部に連通して、挿抜孔部の直径よりも小さい幅を有する長孔である係止孔部とを有し、トンネル支保工の建て込みにおいては、エレクタ装置を制御して、凸型連結部を凹型連結部の挿抜孔部に挿通した後、凸型連結部を係止孔部へ移動させることにより、凸型連結部と凹型連結部の連結を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のトンネル支保工の建て込み方法によれば、トンネル支保工を建て込む際に、切羽における人手作業を回避し、安全性と作業性を向上できるとしている。しかしながら、エレクタ装置を制御して、凸型連結部を凹型連結部の挿抜孔部に挿通した後、凸型連結部を係止孔部へ移動させることによって凸型連結部と凹型連結部の連結を図ることから、エレクタ装置の制御は容易でなく、トンネル支保工の建て込みに際して装置の操作に関する高い技能を要する。
【0006】
本発明は、一対の分割支保工の連結を、簡易、効率的かつ高精度に行うことを可能にする、トンネル支保工の連結構造とトンネル支保工の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明によるトンネル支保工の連結構造の一態様は、
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板が連結されることにより形成される、トンネル支保工の連結構造であって、
前記第2継手板には貫通孔が開設され、
前記第1継手板には、前記貫通孔に挿通されて前記第2継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第2継手板から突設しており、
前記雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通しており、
前記収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈しており、
前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されており、
前記雄部材が前記貫通孔に挿通され、前記第1継手板と前記第2継手板の広幅面同士が当接し、前記一対の爪の基部側の端部が前記第2継手板の広幅面に係合もしくは対向していることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、第2分割支保工の有する第2継手板の貫通孔に対して、第1分割支保工の有する第1継手板から突設する雄部材を挿通して双方を接続するに当たり、弾性材により付勢されている一対の爪が雄部材の側面開口から出入り自在に配設され、貫通孔に雄部材を挿通させた際に、側面開口から張り出している一対の爪が雄部材の収容溝に入り込み、一対の爪が貫通孔を通過した際に一対の爪が側面開口から張り出して、該爪の端部が第2継手板の広幅面に係合もしくは対向して、第1分割支保工と第2分割支保工を連結する。
すなわち、第2分割支保工の有する第2継手板の貫通孔に対して、第1分割支保工の有する第1継手板から突設する雄部材を挿通させるだけの操作により、第1分割支保工と第2分割支保工が連結されたトンネル支保工の連結構造が形成できる。
【0009】
ここで、「一対の爪の端部が第2継手板の広幅面に係合もしくは対向している」とは、爪の端部が第2継手板の広幅面に接触して係合していることと、爪の端部と第2継手板の広幅面の間にクリアランスがあり、双方が対向していることを意味している。後者の形態であっても、爪が第2継手板の広幅面に張り出していることから、第1継手板と第2継手板はクリアランスの範囲内で相対移動できるに過ぎず、連結構造は形成される。
例えば、弧長が同一もしくは略同一の第1分割支保工と第2分割支保工を適用し、双方の第1継手板と第2継手板の広幅面同士をトンネルの天端位置において当設させ、貫通孔に雄部材を挿通させて第2継手板に係合させることにより、トンネル支保工の連結構造が形成される。
【0010】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記一対の爪はその側方に係合凹部を備えており、
前記一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されて前記側面開口を介して外側に張り出している際に、前記係合凹部と該側面開口の壁面が面接触した状態で係合していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されて側面開口を介して外側に張り出している際に、一対の爪がその側方に備えている係合凹部と側面開口の壁面が面接触した状態で係合していることにより、爪が安定した状態で側面開口の壁面に係合することができる。例えば、爪が係合凹部を備えておらず、爪の側面が側面開口のエッジに点接触する場合は、第2継手板から爪に対して押込力が点接触箇所に対して集中荷重として作用し、さらには、点接触箇所を起点として爪に曲げモーメントが生じて爪が破損し易くなるが、これらの課題を解消することができる。
【0012】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記貫通孔は、切羽側に位置する第1貫通孔と、坑口側に位置する第2貫通孔を含み、
前記雄部材は、第1貫通孔に挿通される第1雄部材と、前記第2貫通孔に挿通される第2雄部材を含み、
前記第2雄部材に比べて、前記第1雄部材の長さが長く設定されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第2継手板に設けられている2つの貫通孔のうち、坑口側に位置する第2貫通孔に挿通される第2雄部材に比べて、切羽側に位置する第1貫通孔に挿通される第1雄部材の長さが長く設定されていることにより、第1分割支保工と第2分割支保工を連結しようとしている重機のオペレータキャビンにいるオペレータが、視認性の悪いトンネルの内部において2つの第1雄部材と第2雄部材の遠近を見分け易くなり(距離感を掴み易くなり)、トンネル内における複数の雄部材の視認性が良好になる。
従って、例えば、相対的に長さの長い切羽側にある第1雄部材を、オペレータから相対的に遠方に位置する第1貫通孔に先行して挿通させ、第1継手板と第2継手板を仮連結した後に、相対的に長さの短い坑口側の第2雄部材を、オペレータに対して相対的に近い位置にある第2貫通孔に挿通するシーケンシャルな施工を実現でき、連結施工の際の施工性(複数の雄部材を対応する貫通孔に位置合わせして挿通する際の施工性)が向上する。仮に、2本の雄部材の長さが同じ場合は、2本の雄部材を対応する貫通孔に同時に挿入する際に、オペレータから相対的に離れた位置にある切羽側の第2雄部材が見え難く、第2雄部材を第1貫通孔に位置合わせし難いことから、連結施工性が低下する。
【0014】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様は、
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板が連結されることにより形成される、トンネル支保工の連結構造であって、
前記第2継手板と前記第1継手板にはそれぞれ、貫通孔に含まれる第1貫通孔と第2貫通孔が開設され、該第2貫通孔に比べて該第1貫通孔が切羽側に位置しており、
前記第1継手板には、前記第1貫通孔に挿通されて前記第2継手板に係合される、雄部材に含まれる第1雄部材の基部が取り付けられ、該第1雄部材の先端が該第2継手板から突設し、
前記第2継手板には、前記第2貫通孔に挿通されて前記第1継手板に係合される、雄部材に含まれる第2雄部材の基部が取り付けられ、該第2雄部材の先端が該第1継手板から突設しており、
前記雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通しており、
前記収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈しており、
前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されており、
前記雄部材が前記貫通孔に挿通され、前記第1継手板と前記第2継手板の広幅面同士が当接し、前記一対の爪の基部側の端部が前記第2継手板の広幅面に係合もしくは対向していることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、第2分割支保工の有する第2継手板の第1貫通孔に対して、第1分割支保工の有する第1継手板から突設する第1雄部材を挿通し、第1分割支保工の有する第1継手板の第2貫通孔に対して、第2分割支保工の有する第2継手板から突設する第2雄部材を挿通させるだけの操作により、第1分割支保工と第2分割支保工が連結されたトンネル支保工の連結構造が形成できる。
【0016】
さらに、本態様では、異なる継手板から突設する雄部材が、異なる継手板における対応する貫通孔に挿通されることから、複数の雄部材を複数の貫通孔に挿通するに際して、間違った貫通孔に雄部材を挿通するといった施工ミスを防止できる。
【0017】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記一対の爪はその側方に係合凹部を備えており、
前記一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されて前記側面開口を介して外側に張り出している際に、前記係合凹部と該側面開口の壁面が面接触した状態で係合していることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されて側面開口を介して外側に張り出している際に、一対の爪がその側方に備えている係合凹部と側面開口の壁面が面接触した状態で係合していることにより、爪が安定した状態で側面開口の壁面に係合することができ、爪が集中荷重や曲げモーメントにて破損し易くなるといった課題は生じない。
【0019】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様は、
前記第2雄部材に比べて、前記第1雄部材の長さが長く設定されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、異なる継手板から突設する雄部材が、異なる継手板における対応する貫通孔に挿通されることに加えて、坑口側に位置する第2貫通孔に挿通される第2雄部材に比べて、切羽側に位置する第1貫通孔に挿通される第1雄部材の長さが長く設定されていることにより、施工ミスの防止と連結施工の際の施工性の向上の双方を実現できる。
【0021】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記弾性材は、第1片と、該第1片の両端から屈曲して延びる二つの第2片と、それぞれの該第2片から外側へ屈曲して延びる第3片を有する、側面視形状が略Ω状を呈しており、
前記一対の爪の基部側の端部が一対の前記第3片により付勢されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、弾性材が、第1片と、その両端から屈曲して延びる二つの第2片と、それぞれの第2片から外側へ屈曲して延びる第3片を有する側面視形状が略Ω状を呈し、一対の爪の基部側の端部が一対の第3片によって付勢されていることにより、一対の爪を側面開口から張り出すように付勢することができる。
【0023】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記弾性材は、中央バネと、該中央バネの両端に連続する一対の端部バネとを備えた圧縮コイルバネであり、
前記中央バネの外径が前記端部バネの外径よりも大きく、
前記一対の爪の基端側の端部が、前記一対の端部バネにより付勢されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、弾性材が中央バネとその両端に連続する一対の端部バネとを備えた圧縮コイルバネであり、中央バネの外径が端部バネの外径よりも大きく、一対の爪の基端側の端部が一対の端部バネによって付勢されていることにより、一対の爪を側面開口から張り出すように付勢することができ、この際の付勢力を高めることができる。さらに、全体が組み付けられた状態で雄部材が搬送等される際に、雄部材が他の部材等にぶつかった場合でも、収容溝に収容されている圧縮コイルバネが収容溝から脱落する可能性は極めて低くなる。
【0025】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記一対の爪の基部側の端部にはそれぞれ嵌合溝が設けられ、
前記嵌合溝に対して前記第2片の半分以上の長さ範囲が収容された状態で、前記第3片の先端が嵌まり込んでいることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、爪の基部側の端部にある嵌合溝に対して、弾性材の第2片の半分以上の長さ範囲が収容された状態でさらに第3片の先端が嵌まり込んでいることにより、爪の嵌合溝から弾性材が外れ難くなり、弾性材からの付勢力を爪に対して安定的に付与することができる。
ここで、「第2片の半分以上の長さ範囲が収容される」とは、例えば、第2片の長さの半分乃至全部が収容されることを意味している。
【0027】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記一対の爪の基部側の端部にはそれぞれ嵌合溝が設けられ、
前記嵌合溝に対して前記端部バネの端部が嵌まり込んでいることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、爪の基部側の端部にある嵌合溝に対して、端部バネの端部が嵌まり込んでいることにより、爪の嵌合溝から弾性材が外れ難くなり、弾性材からの付勢力を爪に対して安定的に付与することができる。
【0029】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記収容溝の底部には座ぐり溝が設けられ、前記第1片が該座ぐり溝に収容されていることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、収容溝の底部に設けられている座ぐり溝に第1片が収容されていることにより、収容溝における弾性材の位置ずれを防止でき、弾性材が座ぐり溝の壁面に反力を取って爪に対して安定的に付勢力を付与することができる。
【0031】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記収容溝の底部には座ぐり溝が設けられ、前記中央バネが該座ぐり溝に収容されていることを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、収容溝の底部に設けられている座ぐり溝に中央バネが収容されていることにより、収容溝における弾性材の位置ずれを防止でき、弾性材が座ぐり溝の壁面に反力を取って爪に対して安定的に付勢力を付与することができる。
【0033】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、
前記雄部材の先端形状が、切頭円錐形、切頭角錐形、円錐形、角錐形のいずれか一種であることを特徴とする。
【0034】
本態様によれば、雄部材の先端形状が、切頭円錐形、切頭角錐形、円錐形、角錐形のいずれか一種であることにより、貫通孔に対して雄部材の先端を挿通させ易くできる。
【0035】
また、本発明によるトンネル支保工の施工方法の一態様は、
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板を連結することにより、トンネル支保工の連結構造を形成する、トンネル支保工の施工方法であって、
準備工程と、連結構造形成工程とを有し、
前記準備工程では、
前記第2継手板に、切羽側に位置する第1貫通孔と、坑口側に位置する第2貫通孔を開設し、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔にそれぞれ挿通されて前記第2継手板に係合される、雄部材に含まれる第1雄部材と第2雄部材を準備し、該雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通し、該収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈し、該収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢され、前記第2雄部材に比べて前記第1雄部材の長さが長く設定されており、
前記第1継手板に対して、前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ取り付け、
前記連結構造形成工程では、前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔に挿通させることを特徴とする。
【0036】
本態様によれば、第2分割支保工の有する第2継手板の2つの貫通孔に対して、第1分割支保工の有する第1継手板から突設する2つの雄部材を挿通させるだけの施工により、一対の爪を側面開口を介して外側に張り出させて第2継手板の広幅面に係合もしくは対向させることができ、第1分割支保工と第2分割支保工が連結されたトンネル支保工を容易に施工することができる。
【0037】
ここで、第1分割支保工と第2分割支保工の連結に際しては、自走式のベースマシンと、2本で一組のブームを計二組備えているトンネル支保工建て込み装置を適用し、各組のブームにて第1分割支保工と第2分割支保工を把持し、第2分割支保工(の第2継手板)を建て込んで固定させた状態で、第1分割支保工(の2つの雄部材)を移動させ、第2継手板の2つの貫通孔に対して第1継手板から突設する2つの雄部材をそれぞれ挿通させて双方を連結する施工方法が適用できる。
この施工によれば、トンネル支保工建て込み装置の一方の組のブームを移動させ、複数の貫通孔に対して複数の雄部材を挿通させる操作のみでよいことから、第1分割支保工と第2分割支保工を連結することによるトンネル支保工の施工を、安全かつ効率的に行うことが可能になる。
【0038】
また、本発明によるトンネル支保工の施工方法の他の態様は、
鋼製で円弧状の第1分割支保工と第2分割支保工のそれぞれの一端にある第1継手板と第2継手板を連結することにより、トンネル支保工の連結構造を形成する、トンネル支保工の施工方法であって、
準備工程と、連結構造形成工程とを有し、
前記準備工程では、
前記第2継手板に第1貫通孔を開設し、前記第1継手板に第2貫通孔を開設し、該第2貫通孔に比べて該第1貫通孔を切羽側に位置させ、
前記第1貫通孔に挿通されて前記第2継手板に係合される、雄部材に含まれる第1雄部材と、前記第2貫通孔に挿通されて前記第1継手板に係合される、雄部材に含まれる第2雄部材を準備し、該雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通し、該収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈し、前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の基部側の端部が弾性材によって付勢されており、
前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ、前記第1継手板と前記第2継手板に取り付け、
前記連結構造形成工程では、前記連結構造形成工程では、前記第1雄部材と前記第2雄部材をそれぞれ、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔に同時に挿通させることを特徴とする。
【0039】
本態様によれば、第1分割支保工と第2分割支保工が連結されたトンネル支保工を容易に施工でき、爪を安定した状態で側面開口の壁面に係合させることができ、さらには、異なる継手板から突設する雄部材が、異なる継手板における対応する貫通孔に挿通されることから、複数の雄部材を複数の貫通孔に挿通するに際して、間違った貫通孔に雄部材を挿通するといった施工ミスを防止できる。
【0040】
また、本発明によるトンネル支保工の施工方法の他の態様において、
前記準備工程では、前記第2雄部材に比べて前記第1雄部材の長さを長く設定し、
前記連結構造形成工程では、前記第1貫通孔に対して前記第1雄部材を挿通させた後に、前記第2貫通孔に対して該第2雄部材を挿通させることを特徴とする。
【0041】
本態様によれば、相対的に長さの長い切羽側にある第1雄部材を、重機のオペレータから相対的に遠方に位置する第1貫通孔に先行して挿通させた後に、相対的に長さの短い坑口側の第2雄部材を、重機のオペレータに対して相対的に近い位置にある第2貫通孔に挿通させることにより、オペレータから遠くに位置する第1雄部材を見え易くして距離感が掴み易くなり、第1貫通孔に対する第1雄部材の挿通性を良好にできる。さらに、相対的に長さの長い第1雄部材を先行して第1貫通孔に挿通させた後に相対的に長さの短い第2雄部材を第2貫通孔に挿通させることで、第2貫通孔に対する第2雄部材の位置合わせと挿通に要する時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のトンネル支保工の連結構造とトンネル支保工の施工方法によれば、一対の分割支保工の連結を、簡易、効率的かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施形態に係るトンネル支保工の連結構造を構成する雄部材の一例を、その基部の後方から見た斜視図である。
【
図2】実施形態に係るトンネル支保工の連結構造を構成する雄部材の一例を、その本体の先端側から見た斜視図である。
【
図3A】雄部材の一例において、一対の爪が収容溝に入り込んでいる状態を示す縦断面図である。
【
図3B】雄部材の一例において、一対の爪が側面開口から張り出している状態を示す縦断面図である。
【
図4A】雄部材の一例の組立方法の一例の工程図である。
【
図4B】
図4Aに続いて、雄部材の一例の組立方法の一例の工程図である。
【
図4C】
図4Bに続いて、雄部材の一例の組立方法の一例の工程図である。
【
図5A】雄部材の他の例において、一対の爪が収容溝に入り込んでいる状態を示す縦断面図である。
【
図5B】雄部材の他の例において、一対の爪が側面開口から張り出している状態を示す縦断面図である。
【
図6】第1分割支保工の第1継手板の広幅面から2つの雄部材が突設している状態を、雄部材の先端側から見た斜視図である。
【
図7】第1分割支保工の第1継手板の広幅面から2つの雄部材が突設している状態を、雄部材の基部側から見た斜視図である。
【
図8】第2分割支保工を、第2継手板の前方の広幅面側から見た斜視図である。
【
図9A】第1実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図である。
【
図9B】
図9Aに続いて、第1実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第1実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【
図10A】第2実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図である。
【
図10B】
図10Aに続いて、第2実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第2実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【
図11A】第3実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図である。
【
図11B】
図11Aに続いて、第3実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第3実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【
図12A】第4実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図である。
【
図12B】
図12Aに続いて、第4実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第4実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、各実施形態に係るトンネル支保工の連結構造とトンネル支保工の施工方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0045】
[実施形態に係るトンネル支保工の連結構造を形成する雄部材]
はじめに、
図1乃至
図8を参照して、各実施形態に係るトンネル支保工の連結構造を形成する雄部材の一例と、雄部材が取り付けられている第1継手板を備えた第1分割支保工の一例、及び雄部材が挿通される第2継手板を備えた第2分割支保工の一例について説明する。
ここで、
図1及び
図2はそれぞれ、実施形態に係るトンネル支保工の連結構造を構成する雄部材の一例を、その基部の後方及びその本体の先端側から見た斜視図である。また、
図3Aと
図3Bはそれぞれ、雄部材の一例において、一対の爪が収容溝に入り込んでいる状態と一対の爪が側面開口から張り出している状態を示す縦断面図であり、
図4A乃至
図4Cは順に、雄部材の一例の組立方法の一例の工程図である。また、
図5Aと
図5Bはそれぞれ、雄部材の他の例において、一対の爪が収容溝に入り込んでいる状態と一対の爪が側面開口から張り出している状態を示す縦断面図である。さらに、
図6と
図7はそれぞれ、第1分割支保工の第1継手板の広幅面から2つの雄部材が突設している状態を、雄部材の先端側と基部側から見た斜視図であり、
図8は、第2分割支保工を、第2継手板の前方の広幅面側から見た斜視図である。
【0046】
図1乃至
図4に示すように、雄部材30は、収容溝33を内部に備えた円柱状の本体31を有し、収容溝33は本体31の側面の対向する位置にある側面開口36に連通している。また、本体31の先端34の形状は、切頭円錐形を呈しており、本体31の後端には本体31よりも大径の円柱フランジである基部35が設けられている。雄部材30は、全体として鋼材やアルミニウム等により製作されているピン部材である。
【0047】
ここで、図示例の他にも、先端は円錐形であってもよく、さらに、本体が角柱状を呈している場合に、先端は切頭角錐形や角錐形であってもよい。
【0048】
本体31の先端34が切頭円錐形を呈していることにより、本体31が継手板の貫通孔に挿通し易くなる。
【0049】
収容溝33は、本体31の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈しており、収容溝33の内部には、一対の爪40がそれぞれ、一対の側面開口36を介して収容溝33の内外に出入り自在に配設されている。
【0050】
図示例の爪40は、その先端側の端部41から基部側の端部42に向かって平面視における幅が広がる略台形状を呈し、基部側の端部42の内側には嵌合溝47が設けられている。
【0051】
図3Aと
図3Bに示すように、本体31の収容溝33の基部側には座ぐり溝33aが設けられ、座ぐり溝33aに、板バネにより形成される弾性材50の第1片51が収容されるようになっている。
【0052】
弾性材50は、第1片51と、第1片51の両端から屈曲して延びる二つの第2片52と、それぞれの第2片52から外側へ屈曲して延びる二つの第3片53とを有し、側面視形状が略Ω状を呈している。
【0053】
弾性材50の第2片52の半分以上の長さ範囲が嵌合溝47に収容された状態で、第3片53の先端が嵌合溝47の端部の隅角部に嵌まり込んでいる。
【0054】
このように、座ぐり溝33aに弾性材50の第1片51が収容され、弾性材50の第2片52の半分以上の長さ範囲が嵌合溝47に収容された状態でさらに第3片53の先端が嵌まり込んでいることにより、収容溝33における弾性材50の位置ずれが抑止され、嵌合溝47から弾性材50が外れ難くなり、座ぐり溝33aに反力を取りながら、弾性材50からの付勢力を爪40に対して安定的に付与することができる。
【0055】
図3Aに示すように、一対の爪40の基部側の端部42は、弾性材50から側方へ張り出すX1方向へ付勢されており、雄部材30の本体31が継手板の貫通孔に挿通される際は、貫通孔の壁面から爪40が押込力Pを受けることで爪40が収容溝33の内部に入り込む。
【0056】
一方、爪40が継手板の貫通孔を通過した際には、
図3Bに示すように、爪40が貫通孔の壁面からの押込力から解放され、弾性材50のX1方向への付勢によって側面開口36から側方へX2方向に張り出すことになる。
【0057】
図3Aと
図3Bに示すように、一対の爪40はいずれも、その側方に係合凹部45を備えており、
図3Bに示すように爪40が側面開口36を介して外側に張り出している際に、係合凹部45と側面開口36の壁面36aが面接触した状態で係合するようになっている。
【0058】
このように、爪40が弾性材50によって付勢されて本体31の側面開口36を介して外側に張り出している際に、爪40の側方にある係合凹部45と側面開口36の壁面36aが面接触した状態で係合することにより、爪40が安定した状態で側面開口36の壁面36aに係合することができる。
【0059】
例えば、爪が係合凹部を備えておらず、爪の側面が側面開口のエッジに点接触する場合は、継手板から爪に対して押込力が点接触箇所に対して集中荷重として作用し、点接触箇所を起点として爪に曲げモーメントが生じて爪が破損し易くなるが、図示例の爪40と側面開口36の係合構造により、このような問題は生じない。
【0060】
雄部材30の組立方法の一例を概説すると、まず、
図4Aに示すように、一方の側面開口36を介して収容溝33へY1方向に1つの爪40を差し込む。
【0061】
次に、
図4Bに示すように、他方の側面開口36を介して収容溝33へY2方向に弾性材50を収容し、弾性材50の第1片51を座ぐり溝33aに設置する。この際、弾性材50の一方の第2片52と第3片53を嵌合溝47に収容し、第3片53を嵌合溝47の一部に係合させる。
【0062】
次に、
図4Cに示すように、他方の側面開口36を介して収容溝33へY3方向に他の1つの爪40を差し込み、弾性材50の他方の第2片52と第3片53を嵌合溝47に収容し、第3片53を嵌合溝47の一部に係合させることにより、雄部材30が組立てられる。
【0063】
このように、雄部材30の組立ては簡単に行うことができ、一度組立てられた雄部材30は、部品同士が外れ難い構造を有する。
【0064】
ここで、
図3と
図4に示す弾性材50を備えている雄部材30に代わり、
図5Aと
図5Bに示す圧縮コイルバネからなる弾性材50Aを備えている雄部材30Dが適用されてもよい。
【0065】
弾性材50Aは、中央バネ55と、中央バネ55の両端に連続する一対の端部バネ56とを備えた圧縮コイルバネであり、中央バネ55の外径t1が端部バネ56の外径t2よりも大きくなっている。
【0066】
本体31の収容溝33の基部側にある座ぐり溝33aに、外径t1が相対的に大きな中央バネ55が収容され、端部バネ56の端部が嵌合溝47に嵌まり込んでいる。
【0067】
このように、座ぐり溝33aに弾性材50Aの中央バネ55が収容され、弾性材50Aの端部バネ56の端部が嵌合溝47に嵌まり込んでいることにより、収容溝33における弾性材50Aの位置ずれが抑止され、嵌合溝47から弾性材50Aが外れ難くなり、座ぐり溝33aに反力を取りながら、弾性材50Aからの付勢力を爪40に対して安定的に付与することができる。
【0068】
特に、相対的に大径の中央バネ55が座ぐり溝33aに収容されることにより、圧縮コイルバネからなる弾性材50Aの収容溝33における安定した収容姿勢を保持でき、座ぐり溝33aに対して反力を取り易くなる。また、外径t2の端部バネ56の端部が面的に嵌合溝47を押し込むことから、例えば点で押し込む形態に比べて安定した状態で爪40を押し出すことができる。
【0069】
さらに、
図5Bに示すように全体が組み付けられた状態で雄部材30Dが搬送等される際に、雄部材30Dが他の部材等にぶつかった場合でも、収容溝33に収容されている圧縮コイルバネ50Aが収容溝33から脱落する可能性は極めて低くなる。
【0070】
図5Aに示すように、一対の爪40の基部側の端部42は、弾性材50Aから側方へ張り出すX1方向へ付勢されており、雄部材30Dの本体31が継手板の貫通孔に挿通される際は、貫通孔の壁面から爪40が押込力Pを受けることで爪40が収容溝33の内部に入り込む。
【0071】
一方、爪40が継手板の貫通孔を通過した際には、
図5Bに示すように、爪40が貫通孔の壁面からの押込力から解放され、弾性材50AのX1方向への付勢によって側面開口36から側方へX2方向に張り出すことになる。
【0072】
図5Aと
図5Bに示すように、一対の爪40はいずれも、その側方に係合凹部45を備えており、
図5Bに示すように爪40が側面開口36を介して外側に張り出している際に、係合凹部45と側面開口36の壁面36aが面接触した状態で係合するようになっている。
【0073】
このように、爪40が弾性材50Aによって付勢されて本体31の側面開口36を介して外側に張り出している際に、爪40の側方にある係合凹部45と側面開口36の壁面36aが面接触した状態で係合することにより、爪40が安定した状態で側面開口36の壁面36aに係合することができる。
【0074】
図6と
図7に示すように、H形鋼により形成される円弧状の第1分割支保工10の一端11には、鋼製の第1継手板15が溶接にて接合されており、第1継手板15には、2つの貫通孔17A、17Bが例えば左右に離間して開設されている。ここで、坑口側の貫通孔17Bと切羽側の貫通孔17Aはいずれも雄部材30の取付用貫通孔である。尚、以下の説明では、弾性材50を備えている雄部材30やその変形例を適用するものとして説明するが、雄部材30に代わり、弾性材50Aを備えている雄部材30Dが適用されてもよい。
【0075】
第1取付用貫通孔17A、第2取付用貫通孔17Bともに、それらの径は、雄部材3の本体31の径と同じか若干大きく、雄部材30の基部35の径よりも小さく設定されている。
【0076】
雄部材30の基部35は、第1継手板15の背面側の広幅面に係合する。第1分割支保工10を構成するウェブから第1継手板15の背面に亘り屈曲する鋼製の固定アングル60の一片により、基部35の後端面を押さえつけた状態で、固定アングル60の他片をボルト61を介してウェブに固定することにより、雄部材30が第1継手板15に対して移動不可に固定される。尚、固定アングル60の他に、第1継手板15の背面と基部35を溶接にて直接接合してもよい。
【0077】
図6に示すように、第1継手板15の前方の広幅面16から雄部材30が突設した状態において、側方に張り出している爪40と広幅面16の間には、所定長さの隙間Gが設けられている。この隙間Gには、以下で説明するように第2継手板25が配設されることになる。
【0078】
一方、
図8に示すように、H形鋼により形成される円弧状の第2分割支保工20の一端21には、鋼製の第2継手板25が溶接にて接合されており、第2継手板25の広幅面26には、切羽側の第1貫通孔27Aと坑口側の第2貫通孔27Bが例えば左右に離間して開設されている。
【0079】
第1分割支保工10と第2分割支保工20はともに、断面寸法が同一であり、弧長が同一(もしくは略同一)のH形鋼により形成され、第1継手板15と第2継手板25も同寸法の鋼板により形成されている。さらに、第2継手板25の第1貫通孔27Aと第2貫通孔27Bの位置はそれぞれ、第1継手板15の広幅面16と第2継手板25の広幅面26が当接した際に、第1継手板15から突設している第1雄部材30Aと第2雄部材30Bと対応する位置である。
【0080】
第1分割支保工10と第2分割支保工20を連結してトンネル支保工の連結構造を形成するに当たり、不図示の支保工建て込み装置の有する2つの枝ブームのチャックにて第1分割支保工10と第2分割支保工20のそれぞれを把持する。
【0081】
不図示の支保工建て込み装置は、例えば、自走式のベースマシンと、2本で一組のブームを計二組備えている装置であり、各組のブームにて第1分割支保工10と第2分割支保工20を把持し、第2分割支保工20の第2継手板25を建て込んで固定させた状態で、第1分割支保工10の第1継手板15を移動させ、第2継手板25の2つの第1貫通孔27Aと第2貫通孔27Bに対して、第1継手板15から突設する2つの第1雄部材30Aと第2雄部材30Bをそれぞれ挿通させて双方を連結する。
【0082】
この際、ベースマシンのオペレータキャビンにいるオペレータは、切羽側にあって相対的にオペレータから遠くに位置する第1貫通孔27Aと、坑口側にあって相対的にオペレータの近くにある第2貫通孔27Bを視認しながら、それぞれに対して第1雄部材30Aと第2雄部材30Bを位置合わせし、挿通させるマシン操作を行う。
【0083】
以下、複数の実施形態に係るトンネル支保工の施工方法と、各施工方法によって形成されるトンネル支保工の連結構造を説明する。
【0084】
[第1実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造]
次に、
図9Aと
図9Bを参照して、第1実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造の一例について説明する。ここで、
図9Aは、第1実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であり、
図9Bは、
図9Aに続いて、第1実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第1実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【0085】
ここで、各図ともに、不図示のベースマシンのオペレータキャビンにいるオペレータは、坑口側からZ1方向に、第1分割支保工10の第1継手板15と第2分割支保工20の第2継手板25を視認しており、このことは、以下の
図10乃至
図12においても同様である。
【0086】
図9Aに示すように、鋼製で円弧状の第1分割支保工10と第2分割支保工20のそれぞれの一端には、第1継手板15と第2継手板25が固定されている。
【0087】
第2継手板25には、切羽側に位置する第1貫通孔27Aと、坑口側に位置する第2貫通孔27Bが開設されている。
【0088】
一方、第1継手板15の切羽側に位置する第1取付用貫通孔17Aには第1雄部材30Aが取り付けられ、坑口側に位置する第2取付用貫通孔17Bには第2雄部材30Bが取り付けられている。ここで、第1雄部材30Aと第2雄部材30Bは、同形状及び同寸法の部材である(以上、準備工程)。
【0089】
次に、
図9Aに示すように、第2分割支保工20の第2継手板25を建て込んで固定させた状態で、第1分割支保工10の第1継手板15を移動させ、第2継手板25の2つの第1貫通孔27Aと第2貫通孔27Bに対して、第1継手板15から突設する2つの第1雄部材30Aと第2雄部材30Bをそれぞれ位置合わせし、Z2方向に挿通させる。
【0090】
この挿通の過程で、第1雄部材30Aと第2雄部材30Bはいずれも、
図3Aに示すように一対の爪40が収容溝33に押し込まれた姿勢となり、一対の爪40が第1貫通孔27Aと第2貫通孔27Bを通過した際に、
図3Bに示すように一対の爪40が側面開口36から側方へ張り出した状態となる。
【0091】
各雄部材30A,30Bの一対の爪40が側面開口36から側方へ張り出した状態において、
図9Bに示すように、第1継手板15と第2継手板25の広幅面16,26同士が当接し、それぞれの一対の爪40の基部側の端部42が第2継手板25の広幅面26にクリアランスCを有した状態で対向することにより、トンネル支保工の連結構造100が形成される(以上、連結構造形成工程)。
【0092】
図示するトンネル支保工の施工方法によれば、第2分割支保工20の有する第2継手板25の第1貫通孔27Aと第2貫通孔27Bに対してそれぞれ、第1分割支保工10の有する第1継手板15から突設する第1雄部材30Aと第2雄部材30Bを挿通させるだけの操作により、第1分割支保工10と第2分割支保工20が連結されたトンネル支保工の連結構造100を、簡易、効率的かつ高精度に施工することができる。
【0093】
また、第1雄部材30Aと第2雄部材30Bの先端34が切頭円錐形を呈していることにより、本体31を継手板の貫通孔に挿通し易くなり、このことによっても施工性が向上する。
【0094】
さらに、形成されたトンネル支保工の連結構造100は、一対の爪40が弾性材50によって付勢されて本体31の側面開口36を介して外側に張り出している際に、爪40の側方にある係合凹部45と側面開口36の壁面36aが面接触した状態で係合していることにより、爪40が安定した状態で側面開口36の壁面36aに係合することができる。このことにより、一対の爪40が第2継手板25から押込力を受けた場合でも、爪40に集中荷重が作用したり曲げモーメントが発生することが防止され、爪40の破損が抑制されることから、高強度かつ高耐久な連結構造100を形成することができる。
【0095】
[第2実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造]
次に、
図10Aと
図10Bを参照して、第2実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造の一例について説明する。ここで、
図10Aは、第2実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であり、
図10Bは、
図10Aに続いて、第2実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第2実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【0096】
図示例の施工方法と連結構造100Aは、坑口側の第2雄部材30Bに比べて、切羽側の第1雄部材30Cの長さが長く設定されている点において、
図9A及び
図9Bに示す施工方法及び連結構造100と相違する。
【0097】
図10Aに示すように、第2雄部材30Bに比べて、第1雄部材30Cは先端34Aの長さが長く、その結果として第1継手板15の広幅面16からの突出長が相対的に長くなっている。すなわち、準備工程では、第2雄部材30Bを坑口側に位置する第2取付用貫通孔17Bを介して第1継手板15に取り付け、第2雄部材30Bに比べて長さの長い第1雄部材30Cを、切羽側に位置する第1取付用貫通孔17Aを介して第1継手板15に取り付ける。
【0098】
連結構造形成工程では、第2継手板25の第1貫通孔27Aに対して長さが相対的に長い第1雄部材30Cを先行してZ3方向に挿通させた後に、第2貫通孔27Bに対して第2雄部材30Bを挿通させることにより、
図10Bに示す連結構造100Aが形成される。
【0099】
図示するトンネル支保工の施工方法によれば、相対的に長さの長い切羽側にある第1雄部材30Cを、重機のオペレータから相対的に遠方に位置する第1貫通孔27Aに先行して挿通させた後に、相対的に長さの短い坑口側の第2雄部材30Bを、重機のオペレータに対して相対的に近い位置にある第2貫通孔27Bに挿通させることにより、オペレータから遠くに位置する第1雄部材30Cを見え易くして距離感が掴み易くなり、第1貫通孔27Aに対する第1雄部材30Cの挿通性を良好にできる。
【0100】
さらに、相対的に長さの長い第1雄部材30Cを先行して第1貫通孔27Aに挿通させた後に相対的に長さの短い第2雄部材30Bを第2貫通孔27Bに挿通させることで、第2貫通孔27Bに対する第2雄部材30Bの位置合わせと挿通に要する時間を短縮できる。
【0101】
[第3実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造]
次に、
図11Aと
図11Bを参照して、第3実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造の一例について説明する。ここで、
図11Aは、第3実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であり、
図11Bは、
図11Aに続いて、第3実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第3実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【0102】
図示例の施工方法と連結構造100Bは、第1継手板15の切羽側の第1取付用貫通孔17Aに第1雄部材30Aが取り付けられ、第2継手板25の坑口側の取付用貫通孔27に第2雄部材30Bが取り付けられ、それぞれが、第2継手板25の第1貫通孔27Aと第1継手板15の第2貫通孔17Cに挿通される点、すなわち、2つの継手板15,25にそれぞれ1つの雄部材30を取り付けておいて他方の継手板25,15の貫通孔27A,17Cに挿通させる点において、
図9A及び
図9Bに示す施工方法及び連結構造100と相違する。
【0103】
図11Aに示すように、準備工程では、第1継手板15の切羽側に位置する第1取付用貫通孔17Aに第1雄部材30Aを取り付け、第2継手板25の坑口側に位置する取付用貫通孔27Cに第2雄部材30Bを取り付ける。
【0104】
連結構造形成工程では、第1雄部材30Aと第2雄部材30Bをそれぞれ、第2継手板25の第1貫通孔27Aと第1継手板15の第2貫通孔17Cに対してZ4方向に同時に挿通させることにより、
図11Bに示す連結構造100Bが形成される。
【0105】
図示するトンネル支保工の施工方法によれば、異なる継手板15,25から突設する雄部材30が、異なる継手板25,15における対応する貫通孔27A,17Cに挿通されることから、複数の雄部材を複数の貫通孔に挿通するに際して、間違った貫通孔に雄部材を挿通するといった施工ミスを防止できる。
【0106】
[第4実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造]
次に、
図12Aと
図12Bを参照して、第4実施形態に係るトンネル支保工の施工方法とトンネル支保工の連結構造の一例について説明する。ここで、
図12Aは、第4実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であり、
図12Bは、
図12Aに続いて、第4実施形態に係るトンネル支保工の施工方法の一例を説明する工程図であって、第4実施形態に係るトンネル支保工の連結構造の一例をともに示す図である。
【0107】
図示例の施工方法と連結構造100Cは、第2継手板25に取り付けられている第2雄部材30Bに比べて、第1継手板15に取り付けられている第1雄部材30Cの長さが長く設定されている点において、
図11A及び
図11Bに示す施工方法及び連結構造100Bと相違する。
【0108】
図12Aに示すように、準備工程では、第1継手板15の切羽側に位置する第1取付用貫通孔17Aに第1雄部材30Cを取り付け、第2継手板25の坑口側に位置する取付用貫通孔27Cに第2雄部材30Bを取り付ける。
【0109】
連結構造形成工程では、第2継手板25の第1貫通孔27Aに対して長さが相対的に長い第1雄部材30Cを先行してZ5方向に挿通させた後に、第2貫通孔17Cに対して第2雄部材30Bを挿通させることにより、
図12Bに示す連結構造100Cが形成される。
【0110】
図示するトンネル支保工の施工方法によれば、オペレータから遠くに位置する第1雄部材30Cを見え易くして距離感が掴み易くなり、第1貫通孔27Aに対する第1雄部材30Cの挿通性を良好にできる。
【0111】
また、相対的に長さの長い第1雄部材30Cを先行して第1貫通孔27Aに挿通させた後に相対的に長さの短い第2雄部材30Bを第2貫通孔17Cに挿通させることで、第2貫通孔17Cに対する第2雄部材30Bの位置合わせと挿通に要する時間を短縮できる。
【0112】
さらに、異なる継手板15,25から突設する雄部材30が、異なる継手板25,15における対応する貫通孔27A,17Cに挿通されることから、複数の雄部材を複数の貫通孔に挿通するに際して、間違った貫通孔に雄部材を挿通するといった施工ミスを防止できる。
【0113】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0114】
10:第1分割支保工
11:一端
12:ウェブ
13:フランジ
15:第1継手板(継手板)
16:広幅面
17A:第1取付用貫通孔(貫通孔)
17B:第2取付用貫通孔(貫通孔)
17C:第2貫通孔(貫通孔)
20:第2分割支保工
21:一端
22:ウェブ
23:フランジ
25:第2継手板(継手板)
26:広幅面
27A:第1貫通孔(貫通孔)
27B:第2貫通孔(貫通孔)
27C:取付用貫通孔
30:雄部材
30A,30C:第1雄部材(雄部材)
30B:第2雄部材(雄部材)
30D:雄部材
31:本体
33:収容溝
33a:座ぐり溝
34,34A:先端
35:基部
36:側面開口
36a:壁面
40:爪
41:先端側の端部
42:基部側の端部
45:係合凹部
47:嵌合溝
50:弾性材
50A:弾性材(圧縮コイルバネ)
51:第1片
52:第2片
53:第3片
55:中央バネ
56:端部バネ
60:固定アングル
61:ボルト
100,100A,100B,100C:トンネル支保工の連結構造(連結構造)
G:隙間
C:クリアランス