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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009935
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20250109BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08G63/183
C08G63/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100099
(22)【出願日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2023109015
(32)【優先日】2023-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】町田 華菜子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 正孝
(72)【発明者】
【氏名】渡 一平
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB05
4J029AC01
4J029AD01
4J029AD02
4J029AD10
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029BA03
4J029CB06A
4J029HA01
4J029HB01
4J029JA091
4J029JA253
4J029JB131
4J029JB171
4J029JC091
4J029JC433
4J029JF021
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF321
4J029JF361
4J029JF471
4J029JF541
4J029JF571
4J029KB02
4J029KB05
4J029KB12
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE03
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】 エステル化触媒の添加をすることなくDEG量が少ないポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 主たる原料としてテレフタル酸とエチレングリコールを重縮合するポリエステルの製造方法であって、以下に記載する3つの工程を経ることにより解決される。
(1)エステル化反応槽[1]にテレフタル酸とエチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみを投入し、第四級アンモニウム化合物の濃度を0.10質量%以上0.80質量%以下とし、エステル化反応槽内の圧力を0.11MPa以上0.50MPa以下で、エステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(2)工程(1)の後、エステル化反応槽[1]に残存したエチレングリコールを留去した後に、テレフタル酸とエチレングリコールを投入し、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートの存在下で二段階目のエステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(3)エステル化反応槽[1]から、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを重縮合反応槽[2]へ移送し、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレートを製造する工程
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる成原料してテレフタル酸とエチレングリコールを重縮合するポリエステルの製造方法であって、以下に記載する3つの工程を経ることを特徴とするポリエステルの製造方法。
(1)エステル化反応槽[1]にテレフタル酸とエチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみを投入し、第四級アンモニウム化合物の濃度を0.10質量%以上0.80質量%以下とし、エステル化反応槽内の圧力を0.11MPa以上0.50MPa以下でエステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(2)工程(1)の後、エステル化反応槽[1]に残存したエチレングリコールを留去した後に、テレフタル酸とエチレングリコールを投入し、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートの存在下で二段階目のエステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(3)エステル化反応槽[1]からビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを重縮合反応槽[2]へ移送し、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレートを製造する工程
【請求項2】
工程(1)において、エステル化反応槽にエチレングリコールと第四級アンモニウム化合物を投入した後に、テレフタル酸またはテレフタル酸とエチレングリコールの混合スラリーを添加することを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
第四級アンモニウム化合物が第四級アンモニウム水酸化物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
工程(1)におけるエステル化反応時の反応温度が200℃以上250℃以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
第四級アンモニウム化合物の添加量が0.30質量%以上0.70質量%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項6】
工程(1)において、テレフタル酸とエチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物を投入した後の、下記式で算出されるテレフタル酸とエチレングリコールのモル比が1.4以上3.5以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
エステル化反応槽内モル比=(EG成分のモル量)/(テレフタル酸成分のモル量)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DEG含有量が少ないポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある。)は、優れた機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性等に優れることから、繊維、フイルム、ボトル等に成型され広く用いられている。一般にPETは、テレフタル酸などのジカルボン酸成分またはそのジエステル化合物とエチレングリコール(以下、EGと略記することがある。)から製造される。具体的には、まず、ジカルボン酸類またはそのジエステル化合物類とエチレングリコールとのエステル化反応によりPET低重合体を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこのPET低重合体を脱ジオール反応させて高分子量化している。なかでも、ジカルボン酸類を用いた場合は、ジカルボン酸が自触媒として反応に寄与するため、エステル化反応において触媒添加が不要となり、触媒起因の異物生成と色調悪化が抑制され好ましい。しかしながら、反応中に副反応が生じ、ジエチレングリコール(以下、DEGと略記することがある。)など種々の副生物が生成するという問題を有している。そのため、副生物の生成を抑制すべく、種々の製造方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、主たる成分としてテレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応において、チタン化合物とアルカリ化合物を添加するポリステルの製造方法について提案されている。そして、このポリエステルの製造方法によれば、色調が良好でDEG含有量が少なくかつ紡糸性が良好となる旨、記載されている。
【0004】
特許文献2では、ナトリウム原子含有量が一定量以内のテレフタル酸を用いたポリエステルの製造方法について提案されており、DEG含有量が一定値以下で黄色味が少なく、溶融時の体積固有抵抗値が低いフイルムの高速製膜が可能なポリエステルが得られることが記載されている。
【0005】
特許文献3では、テレフタル酸ジアルキルエステルもしくはテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルとエチレングリコールを原料としたエステル交換反応においてチタン化合物を添加し、重縮合反応においてゲルマニウム化合物またはチタン化合物を添加するポリエステルの製造方法について提案されている。そして、このポリエステルの製造方法によれば、重縮合速度が速く色調が良好でDEG含有量が少なくなる旨、記載されている。
【0006】
特許文献4では、テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主とするジオール成分とのエステル化反応において、リン酸エステルと、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物、およびアンモニウム化合物又はアミン化合物を添加するポリエステルの製造方法について提案されており、染色性が良好なポリエステルが得られることが記載されている。
【0007】
特許文献5では、ビスエチレンテレフタレートモノマーとテレフタル酸とのエステル化反応および重合反応によるポリエステルの製造方法について提案されている。そして、この製造方法によれば、DEG含有量が一定値以下であり多分散指数を一定値以内に制御することができる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-231831号公報
【特許文献2】特開2016-132733号公報
【特許文献3】特開2011-26438号公報
【特許文献4】特開2010-59232号公報
【特許文献5】特開2020-66728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポリエステル製造時の副反応で生じるDEGは、系外に留出することなくポリマー中に取り込まれるため、DEGの生成量に伴い、ポリマー融点の低下、耐加水分解性、耐熱性および耐光性の低下、さらには染色性の低下が生じる。そのため、ポリエステル製造時のDEG生成を抑制することが求められる。
【0010】
また、ポリエステル製造においては、触媒や添加物によって異物が生成し最終製品の品質低下をもたらす場合があるため、原料のテレフタル酸成分とグリコール成分以外の添加物の種類および添加量を減らすことが重要である。
【0011】
しかし、特許文献1および3で提案された技術は、テレフタル酸とエチレングリコールの他にチタン化合物やアルカリ化合物を添加するポリエステルの製造方法であり、DEG量は低減できるものの添加物由来の異物が生成する懸念があり、DEG量と異物抑制の両立が十分に得られていない。
【0012】
また、特許文献2で提案された技術は、ナトリウム原子含有量が規定されたテレフタル酸とエチレングリコールの他に熱安定化助剤としてリン化合物を添加するポリエステルの製造方法であり、DEG量は低減できるものの添加物由来の異物が生成する懸念があり、DEG量と異物抑制の両立が十分に得られていない。また、テレフタル酸中のナトリウム原子含有量が規定値内となるようにテレフタル酸ナトリウム塩を事前調整する必要がある。このテレフタル酸ナトリウム塩は核形成剤となり、生成するポリエチレンテレフタレートの分子量低下を引き起こし、機械特性および熱特性に影響を与える懸念がある。
【0013】
また、特許文献4で提案された技術は、テレフタル酸とエチレングリコールをエステル化反応させて得たオリゴマーに、更にテレフタル酸とエチレングリコールの他にリン酸エステルと、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物およびアンモニウム化合物又はアミン化合物を添加するポリエステルの製造方法であり、異物生成は抑制できるもののオリゴマー製造時のDEG量が増加するという課題がある。
【0014】
さらに、特許文献5で提案された技術は、ビスエチレンテレフタレートモノマーとテレフタル酸とエチレングリコールによってポリエステルを製造する方法であり、DEG量は低減できるものの、ビスエチレンテレフタレートモノマーをポリエチレンテレフタレートからグリコールによるアルコール分解によって形成するか、テレフタル酸とエチレンオキサイドによる反応によって形成する工程を追加で実施する必要が生じるため好ましくない。
【0015】
そこで、本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであって、その目的は、テレフタル酸、エチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみでエステル化反応および重縮合反応を行う簡便なプロセスにて、DEG含有量が少ないポリエステルを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、エステル化反応槽にテレフタル酸、エチレングリコールおよび規定量の第四級アンモニウム化合物のみを投入し、加圧条件下でエステル化反応を行うことで、触媒等の添加をすることなくDEG量を低減することが可能であることを見出した。
【0017】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、以下の手段により達成される。
【0018】
[1]主たる原料としてテレフタル酸とエチレングリコールを重縮合するポリエステルの製造方法であって、以下に記載する3つの工程を経ることを特徴とするポリエステルの製造方法。
(1)エステル化反応槽[1]にテレフタル酸とエチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみを投入し、この時の第四級アンモニウム化合物の濃度を0.10質量%以上0.80質量%以下とし、エステル化反応槽内の圧力を0.11MPa以上0.50MPa以下で、エステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(2)工程(1)の後、エステル化反応槽[1]に残存したエチレングリコールを留去した後に、テレフタル酸とエチレングリコールを投入し、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートの存在下で二段階目のエステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(3)エステル化反応槽[1]から、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを重縮合反応槽[2]へ移送し、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレートを製造する工程
[2]工程1において、エステル化反応槽にエチレングリコールと第四級アンモニウム化合物を投入した後に、テレフタル酸またはテレフタル酸とエチレングリコールの混合スラリーを添加することを特徴とする、前記[1]に記載のポリエステルの製造方法。
【0019】
[3]第四級アンモニウム化合物が第四級アンモニウム水酸化物であることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載のポリエステルの製造方法。
【0020】
[4]工程1におけるエステル化反応時の反応温度が200℃以上250℃以下であることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリエステルの製造方法
[5]第四級アンモニウム化合物の添加量が0.30質量%以上0.70質量%以下であることを特徴とする、前記[1]~[4]のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【0021】
[6]工程(1)において、テレフタル酸とエチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物を投入した後の、下記式で算出されるテレフタル酸とエチレングリコールのモル比が1.4以上3.5以下であることを特徴とする、前記[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
エステル化反応槽内モル比=(EG成分のモル量)/(テレフタル酸成分のモル量)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エステル化触媒の添加をすることなくDEG量が少ないポリエステル樹脂を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、主たる成分としてテレフタル酸とエチレングリコールを重縮合するポリエステルの製造方法であって、以下の3つの工程を経ることを特徴とするものである。
(1)エステル化反応槽[1]にテレフタル酸とエチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみを投入し、第四級アンモニウム化合物の濃度を0.10質量%以上0.80質量%以下とし、エステル化反応槽内の圧力を0.11MPa以上0.50MPa以下で、エステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(2)工程(1)の後、エステル化反応槽[1]に残存したエチレングリコールを留去した後に、テレフタル酸とエチレングリコールを投入し、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートの存在下で二段階目のエステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程
(3)エステル化反応槽[1]から、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを重縮合反応槽[2]へ移送し、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレートを製造する工程。
【0024】
本発明の製造方法は、ポリエステルの連続製造法における一段階目及び二段階目のエステル化反応に関する製造方法であるが、以下に、その構成要素について詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではなく、そして、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0025】
[エステル化反応原料]
本発明のエステル化反応において、ジカルボン酸成分はテレフタル酸が用いられ、ジオール成分としてはEGが用いられる。
【0026】
ポリエステルの製造に用いることのできるジカルボン酸としては、テレフタル酸やイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウムに代表される芳香族ジカルボン酸化合物、アジピン酸やセバシン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸化合物、シクロヘキサンジカルボン酸に代表される脂環式ジカルボン酸化合物が挙げられ、これらのエステル形成性誘導体、特にジメチル体も原料として好適に用いることができる。特に、最終的に得られるポリエステルの機械的強度を向上させる目的で、テレフタル酸またはそのジメチル体とイソフタル酸またはそのジメチル体を用いることが好ましいことから、本発明では、テレフタル酸が用いられる。
【0027】
ポリエステルの製造に用いることのできるジオール成分としては、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコールのいずれか、またはそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。特に、得られるポリエステルの寸法安定性に優れる点において、エチレングリコールを主として用いることが最も好ましいことから、本発明ではエチレングリコールが用いられる。
【0028】
本発明においては第四級アンモニウム化合物を投入する。
【0029】
第四級アンモニウム化合物としては、第四級アンモニウムの水酸化物、塩化物、ヨウ化物等が挙げられ、特にEGへの溶解性、強塩基性を示す第四級アンモニウムの水酸化物が好ましい。第四級アンモニウムの水酸化物としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム(以下、EAHと略記することがある。)、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等を挙げることができ、特に水酸化テトラエチルアンモニウムが塩基性、異物生成抑制、入手の容易さから好ましい。
【0030】
[加圧下エステル化反応(工程(1))]
本発明における工程(1)は、エステル化反応槽[1]にテレフタル酸、エチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみを投入し、第四級アンモニウム化合物の濃度を0.10質量%以上0.80質量%以下とし、エステル化反応槽内の圧力を0.11MPa以上0.50MPa以下で加圧下エステル化反応をさせることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、BHETと略記することがある。)を製造する工程である。
【0031】
本発明におけるビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートは、単量体であるビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートモノマーだけでなく、未反応EG、各種重合度のオリゴマーを含んだ混合物であり、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートモノマーとは異なる。
【0032】
本発明においては、原料が投入されていないエステル化反応槽[1]にテレフタル酸、エチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみを投入し、一段階目のエステル化反応を加圧下で行い(加圧下エステル化反応)、BHETを製造する。テレフタル酸、エチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物の投入方法は、エチレングリコールと第四級アンモニウム化合物とを投入した後に、テレフタル酸またはテレフタル酸とエチレングリコールの混合スラリーを添加する方法が好ましい。
【0033】
第四級アンモニウム化合物は強塩基性であるため、テレフタル酸のカルボキシル基末端により酸性条件下となるエステル化反応槽内の酸性度を低減することができる。また、EG同士の反応によるDEGの生成は、酸性条件下で進行しやすくなるため、第四級アンモニウム化合物の添加によってDEGの生成を抑制することができる。そのため、第四級アンモニウム化合物の添加時期は加圧下エステル化反応前が好ましく、テレフタル酸投入前にEGとの同時添加が最も好ましい。一方で、加圧下エステル化反応後、重縮合反応前、重縮合反応後に第四級アンモニウム化合物を添加すると、エステル化反応時の酸性条件下でEG同士の反応が促進され、DEG生成量が多くなるため好ましくない。
【0034】
前記の第四級アンモニウム化合物の濃度は得られるポリエステルに対して、0.10質量%以上0.80質量%以下である。第四級アンモニウム化合物の濃度は、好ましくは0.30質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上とすることで、エステル化反応時の系内の酸性度を低減することができ、酸性条件下で進行が促進されるEG同士の反応によるDEGの生成を抑制するため、DEG量を低減できる。一方で、第四級アンモニウム化合物の濃度は、好ましくは0.70質量%以下、より好ましくは0.60質量%以下とすることで、エステル化反応時の反応性が向上し、熱分解によって生じるDEG量を低減できる。
【0035】
事前に投入したEGと第四級アンモニウム化合物にテレフタル酸またはテレフタル酸とEGの混合スラリーを添加する方法は、一括添加、連続添加が挙げられ、特に、貯留分のEGと均一に混合でき、系内の温度を低下させることなく加圧下エステル化反応が速やかに進行するため、連続添加が好ましい。
【0036】
テレフタル酸とEGの混合スラリーを添加する場合のスラリーモル比は、1.05以上1.40以下が好ましい。スラリーモル比は好ましくは1.10以上、より好ましくは1.15以上とすることで、スラリー添加時の供給を安定させることができ、エステル化反応を効率的に実施することができる。一方で、スラリーモル比は好ましくは1.30以下、より好ましくは1.20以下とすることで、EG量を低減することができ、DEGの生成を抑制することができる。なお、スラリーモル比は以下の式(1)にて表される。
スラリーモル比=(EG成分のモル量)/(テレフタル酸成分のモル量) 式(1)
テレフタル酸とEGの混合スラリーを添加する場合は、エステル化反応槽内が所定圧力および/または所定温度に到達した後に添加することが好ましい。エステル化反応槽内が所定圧力および/または所定温度に到達した後に添加することで、スラリー添加後の加圧下エステル化反応が速やかに進行し、EG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。
【0037】
本発明において、原料を投入した後のエステル化反応槽内のEGとテレフタル酸のモル比は1.4以上3.5以下が好ましい。エステル化反応槽内のモル比は好ましくは3.0以下、より好ましくは2.1以下、さらに好ましくは1.8以下とすることで、EG量を低減することができ、EG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。一方で、エステル化反応槽内のモル比が1.4より低い場合は、テレフタル酸の溶解性が低下しエステル化反応の遅延または反応が進行しないため好ましくない。なお、EGとテレフタル酸のモル比は以下の式(2)にて表される。
エステル化反応槽内モル比=(EG成分のモル量)/(テレフタル酸成分のモル量) 式(2)
エステル化反応槽内のモル比を調整する方法は、貯留分のEG量の低減またはエステル化反応槽内にEGとテレフタル酸を一括添加する方法が挙げられ、特にEG量を低減できエステル化反応槽内のモル比を低減できるため、一括添加する方法が好ましい。さらに、EGとテレフタル酸を一括添加する方法の場合は、EGとEAHを添加した後に、テレフタル酸を添加することで、EGとテレフタル酸を均一に混合でき、加圧下エステル化反応が速やかに進行するため好ましい。
【0038】
本発明における加圧下エステル化反応時の圧力は、0.11MPa以上0.50MPa以下である。圧力は好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.20MPa以上とすることで、エステル化反応時の温度を高温化することができ、テレフタル酸とエチレングリコールの反応性を向上することができる。一方で、圧力は好ましくは0.40MPa以下、より好ましくは0.30MPa以下とすることで、EG同士の反応を抑制することができ、DEG量を低減することができる。
【0039】
本発明における加圧下エステル化反応時の圧力は、エステル化反応槽の昇温開始後10分以上100分以下で所定の圧力に到達させることが好ましい。所定圧力到達時間は好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上とすることで、エステル化反応槽内を徐々に加圧することができ、エチレングリコールの突沸を抑制することができる。一方で、所定圧力到達時間は好ましくは90分以下、より好ましくは80分以下とすることで、加圧条件下での貯留分のEG滞留時間を短縮でき、EG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。
【0040】
本発明における加圧下エステル化反応時の圧力コントロールは、エステル化反応槽内の温度が100℃以上で行うことが好ましい。好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上とすることで、エステル化反応槽内のEG蒸気によって一定値以上まで加圧することができ、外部からのガス充填量を最小限にとどめることができる。
【0041】
100℃より低い温度で圧力コントロールを行う場合には、EG蒸気が少ないため、外部からのガス充填することが好ましい。
【0042】
本発明における圧力コントロール時に外部から充填するガスは、窒素が好ましい。窒素を用いることで、テレフタル酸、EGおよびBHETの分解を抑制することができ、最終的に得られるポリエステルの色調悪化を抑制することができる。
【0043】
さらに、エステル化反応槽内の圧力制御は、外部からのガス充填および/または系内の圧力放出によって、「所定圧力-0.05MPa以上および所定圧力+0.05MPa以下」で制御することが好ましい。好ましくは「所定圧力-0.03MPa以上および所定圧力+0.03MPa以下」、より好ましくは「所定圧力-0.01MPa以上および所定圧力+0.01MPa以下」とすることで、エステル化反応槽内の圧力が安定し、過加圧によるEG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。
【0044】
本発明における加圧下エステル化反応時の温度は、200℃以上250℃以下が好ましい。反応温度は、好ましくは210℃以上、より好ましくは215℃以上とすることで、テレフタル酸とEGの反応を促進することができ、短時間でBHETを得ることができる。一方で、反応温度は好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下とすることで、EG同士の反応を抑制してDEG量を低減することができ、COOH基残存量も低減することができる。
【0045】
本発明における加圧下エステル化反応時のエステル化反応槽の昇温は60分以上200分以下で所定温度(反応温度)に到達させることが好ましい。昇温時間は好ましくは65分以上、より好ましくは70分以上とすることで、エステル化反応槽内の温度を設定値通り昇温することができ、過加熱による熱分解を抑制することでDEGの生成を抑制することができる。一方で、昇温は好ましくは185分以下、より好ましくは170分以下とすることで、昇温を効率的に実施することができ、所定温度到達までの貯留分のEG滞留時間を短縮でき、EG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。
【0046】
また、昇温は段階的に実施することが好ましく、200℃を境に昇温速度を変更することがより好ましい。EGの沸点はエステル化反応槽内の圧力によっても変化するが200℃程度であるため、200℃まではEGと第四級アンモニウム化合物のみが投入されたエステル化反応槽内の温度を設定値通り昇温することが可能となる。一方で、200℃以上は、EGの沸点以上となりBHETが生成することによって昇温可能となるため、系内の温度を徐々に昇温させ、加圧下エステル化反応を促すことが好ましい。
【0047】
[EG追出し反応とBHET存在下エステル化反応(工程(2))]
本発明における工程(2)は、エステル化反応槽[1]に残存した未反応のエチレングリコールを留去した後に、再びエステル化反応槽[1]にテレフタル酸とエチレングリコールを投入し、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートの存在下で二段階目のエステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程である。すなわち、工程(1)で製造したビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートの存在下で、更にエステル化反応を行う。
【0048】
[EG追出し反応]
本発明においては、工程(1)後のエステル化反応槽[1]に残存したエチレングリコールの留去はEG追い出し反応にて行うことが好ましい。EG追い出し反応は、エステル化反応槽[1]を加熱した状態で、一定圧力にてEGを除去する工程のことである。残存したEGを追出し反応で除去することで、EG追い出し反応後に行う二段階目のエステル化反応での反応性向上およびDEG生成を抑制することができる。
【0049】
EG追い出し反応時の温度は、240℃以上250℃以下が好ましい。反応温度は240℃未満ではEG留出が不十分となり、二段階目のエステル化反応時のEG量が多くなり、DEG生成量が増加する。一方で、反応温度が250℃より高いとEG同士が反応しEG留去前にDEGが生成し、BHET内に取り込まれやすくなるため好ましくない。
【0050】
EG追い出し反応時の圧力は、0.05MPa以上0.10MPa以下で実施することが好ましい。0.05MPa未満では、BHETの重合が促進されるため好ましくない。一方で、圧力が0.10MPaより高いとEGの沸点が高温化しEG留出が抑制されるため好ましくない。
【0051】
EG追出し反応は、常圧下で実施した後に減圧下で更に実施することが好ましい。常圧下EG追出し反応後に減圧下EG追出し反応を実施することで、残存したEGを更に留去することができ、EG追い出し反応後に行う二段階目のエステル化反応での反応性向上およびDEG生成を抑制することができる。
【0052】
常圧下EG追出し反応は10分以上90分以下が好ましく、圧力は0.10MPaで実施することが好ましい。反応時間が10分未満の場合は、EG追出し反応が不十分となり、二段階目のエステル化反応時のEG量が多くなり、DEG生成量が増加するため好ましくない。一方で、反応時間が90分より長い場合は、加熱条件下でのBHETの滞留時間が長く残存EG同士の反応によりDEGが生成するため好ましくない。
【0053】
常圧下EG追出し反応後の減圧下EG追出し反応は、10分以上90分以下が好ましく、圧力は0.05MPa以上0.10MPa未満で実施することが好ましい。反応時間が10分未満の場合は、EG追出し反応が不十分となり、二段階目のエステル化反応時のEG量が多くなり、DEG生成量が増加するため好ましくない。一方で、反応時間が90分より長い場合は、加熱条件下でのBHETの滞留時間が長く残存EG同士の反応によりDEGが生成するため好ましくない。また、圧力は0.05MPa未満では、BHETの重合が促進されるため好ましくない。一方で、0.10MPaでは、常圧条件下となりEGの留去が進行しないため好ましくない、
[BHET存在下エステル化反応]
本発明における工程(2)においては、エステル化反応槽[1]に残存したエチレングリコールを留去した後に、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートが存在するエステル化反応槽[1]にテレフタル酸とエチレングリコールを投入し、二段階目のエステル化反応させることによって、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する。
【0054】
本発明においては、工程(1)はエステル化反応槽[1]にテレフタル酸とエチレングリコールおよび第四級アンモニウム化合物のみを投入し、一段階目のエステル化反応を加圧下で行いBHETを製造する工程であるが、二段階目のエステル化反応ではBHETが存在するエステル化反応槽[1]にテレフタル酸またはテレフタル酸とEGの混合スラリーを添加し、エステル化反応(以下、BHET存在下エステル化反応と表記する)を行う。二段階目のエステル化反応であるBHET存在下エステル化反応では、BHETが存在するエステル化反応槽にテレフタル酸またはテレフタル酸とEGの混合スラリーを添加しており、空のエステル化反応槽[1]にテレフタル酸またはテレフタル酸とEGの混合スラリーを添加して行う一段階目のエステル化反応である加圧下エステル化反応とは、テレフタル酸またはテレフタル酸とEGの混合スラリーを添加する前のエステル化反応槽内の状態が異なる。なお、二段階目以降のエステル化反応において、第四級アンモニウム化合物は添加しないことが好ましい。
【0055】
二段階目のBHET存在下エステル化反応は一段階目の加圧下エステル化反応で得られたBHETが存在することにより、エステル化反応時の温度を高温化することができ、エステル化反応を効率的に実施することができる。また、二段階目のBHET存在下エステル化反応後に得られたBHETを一定量エステル化反応槽[1]に残存させておくことで、さらに連続的に(三段階目以降)BHET存在下エステル化反応を実施することができ、好ましい。
【0056】
一段階目の加圧下エステル化反応およびEG追い出し反応後に得られたBHETが存在するエステル化反応槽[1]にテレフタル酸またはテレフタル酸とEGの混合スラリーを添加する方法は、一括添加、連続添加が挙げられ、特に、BHETと均一に混合でき、系内の温度を低下させることなくエステル化反応が速やかに進行するため、連続添加が好ましい。
【0057】
テレフタル酸とEGの混合スラリーを添加する場合のスラリーモル比は、1.05以上1.40以下が好ましい。スラリーモル比は好ましくは1.10以上、より好ましくは1.15以上とすることで、スラリー添加時の供給を安定させることができ、エステル化反応を効率的に実施することができる。一方で、スラリーモル比は、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.20以下とすることで、EG量を低減することができ、DEGの生成を抑制することができる。なお、スラリーモル比は上述の式(1)で算出される値のことである。
【0058】
テレフタル酸とEGの混合スラリーを添加する場合は、エステル化反応槽[1]内が所定圧力および/または所定温度に到達した後に添加することが好ましい。エステル化反応槽内が所定圧力および/または所定温度に到達した後に添加することで、スラリー添加後のエステル化反応が速やかに進行し、EG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。
【0059】
BHET存在下エステル化反応時の温度は、240℃以上250℃以下が好ましい。反応温度は、240℃未満ではエステル化反応を効率的に実施することが難しく、その後の重縮合反応性悪化原因となる。また、反応温度が250℃より高いとDEGが副生しやすくなる。
【0060】
BHET存在下エステル化反応時の圧力は、0.10MPa以上0.50MPa以下で実施することが好ましい。0.10MPa未満では、テレフタル酸とEGのエステル化反応が阻害され、BHETの重合が促進されるため好ましくない。一方で、圧力が0.50MPaより高いとEG同士の反応が促進されDEGの生成量が増加するため好ましくない。
【0061】
BHET存在下エステル化反応時の圧力は10分以上100分以下で所定の圧力に到達させることが好ましい。所定圧力到達時間は好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上とすることで、エステル化反応槽[1]内を徐々に加圧することができ、エチレングリコールの突沸を抑制することができる。一方で、所定圧力到達時間は、好ましくは90分以下、より好ましくは80分以下とすることで、高温下でのEG滞留時間を短縮でき、EG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。
【0062】
BHET存在下エステル化反応時の圧力コントロールは、エステル化反応槽内の温度が240℃以上時点で行うことが好ましい。好ましくは245℃以上、とすることで、エステル化反応槽[1]内のEG蒸気によって一定値以上まで加圧することができ、外部からのガス充填量を最小限にとどめることができる。一方で、240℃未満で圧力コントロールを行う場合には、EG蒸気が少ないため、外部からのガス充填することが好ましい。
【0063】
圧力コントロール時に用いるガスは、窒素が好ましい。窒素を用いることで、テレフタル酸、EGおよびBHETの分解を抑制することができ、最終的に得られるポリエステルの色調悪化を抑制することができる。さらに、エステル化反応槽内の圧力が所定圧力制御は、外部からのガス充填および/または系内の圧力放出によって、「所定圧力-0.05MPa以上および所定圧力+0.05MPa以下」で制御することが好ましい。好ましくは「所定圧力-0.03MPa以上および所定圧力+0.03MPa以下、より好ましくは「所定圧力-0.01MPa以上および所定圧力+0.01MPa以下」とすることで、エステル化反応槽[1]内の圧力が安定し、エステル化反応が安定して進行し、過加圧によるEG同士の反応によるDEGの生成を抑制することができる。
【0064】
[重縮合反応(工程(3))]
本発明における工程(3)は、工程(2)のBHET存在下エステル化反応の後にエステル化反応槽[1]からBHETを重縮合反応槽[2]へ移送し、重縮合反応槽[2]において減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレートを製造する工程である。減圧下で重縮合反応させることで、所望の固有粘度(IV)を有するポリエチレンテレフタレートを得ることができる。
【0065】
エステル化反応槽[1]から重縮合反応槽[2]へ移送するBHET量は、エステル化反応槽[1]内のBHET量の30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。重縮合反応槽[2]への移送するBHET量はより好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上とすることで、重縮合反応によって得られるポリエチレンテレフタレート量を確保することができる。一方で、移送するBHET量はより好ましくは65重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下とすることで、エステル化反応槽[1]に残存するBHET量が増加し、連続的(三段階目以降)にBHET存在下エステル化反応を実施する場合に、BHET存在下エステル化反応時の温度を高温化することができ、エステル化反応を効率的に実施することができる。
【0066】
重縮合反応槽[2]における反応では、最終温度を285~290℃とすることが好ましい。重縮合反応の最終温度が285℃未満では、所望の固有粘度(IV)まで重縮合が進行しないため好ましくない。一方で最終温度が290℃より高いと、得られたポリエステルの熱分解が進行し、最終的に得られるポリエステルの色調が悪化するため好ましくない。
【0067】
本発明における重縮合反応の最終温度への昇温は、60分以上120分以下で昇温することが好ましい。重縮合反応時の最終温度への昇温時間は好ましくは70分以上、より好ましくは80分以上とすることで、EGを徐々に系外に留出することができ、重縮合反応時の突沸を抑制することできる。一方で、昇温時間は好ましくは110分以下、より好ましくは100分以下とすることで、重縮合反応時間が長時間化することなく、最終的に得られるポリエステルの色調悪化を抑制することができる。
【0068】
本発明における重縮合反応の最終圧力は300Pa以下が好ましい。最終圧力は好ましくは200Pa以下、より好ましくは100Pa以下とすることで、エステル化反応で得られたBHETの重縮合が促進され、所望の固有粘度(IV)を有するポリエステルを得ることができる。一方で、最終圧力が300Paよりも高いと、重縮合反応時間が長時間化し、最終的に得られるポリエステルの色調が悪化するため好ましくない。
【0069】
本発明における重縮合反応の最終圧力への減圧は、50分以上100分以下で行うことが好ましい。減圧時間は好ましくは60分以上とすることで、EGを徐々に系外に留出することができ、重縮合反応時の突沸を抑制することできる。一方で、減圧時間は好ましくは90分以下とすることで、重縮合反応時間が長時間化することなく、最終的に得られるポリエステルの色調悪化を抑制することができる。
【0070】
本発明における重縮合反応の際には触媒を添加する必要があり、リチウム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが用いられる。各種金属化合物としては、酢酸塩またはその水和物、酸化物等が挙げられる。特に良好な重縮合反応性をもたらす点から、三酸化アンチモンや二酸化ゲルマニウム、テトラ-n-ブチルチタネートを主として用い、補助的に酢酸リチウム、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法においては、安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。具体的にはリン酸、リン酸トリメチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等が好ましく、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(PEP-36:旭電化社製)や亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(IRGAFOS168:BASF社製)などの3価リン化合物が色調や耐熱性改善の面からより好ましい。リン化合物によるエステル化反応阻害を防ぐため、リン化合物はエステル化反応完了後から重縮合反応の開始までに添加されることが好ましく、エステル化反応槽での残存滞留を防ぐ点から重縮合反応槽に添加されること、すなわち工程(3)において添加されることがより好ましい。
【0072】
所望の固有粘度(IV)となったポリエチレンテレフタレートは重縮合反応槽[2]から抜き出す。そして、再びBHET(三段階目以降のBHET存在下エステル化反応によって得られたBHET)を重縮合反応槽[2]に移送、重縮合することで連続的にポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
【0073】
[ポリエステルの特性]
本発明の製造方法によるポリエスエルの固有粘度IVは0.65以上0.70以下とすることが好ましい。より好ましくは0.66以上0.69以下であることで、溶融紡糸挙動を安定化させ糸切れや繊度ムラを抑制することができる。
【0074】
なお、ポリエステルの固有粘度IVは、得られたポリエステルをo-クロロフェノール溶媒に溶解し、0.5g/dL、0.2g/dL、0.1g/dLの濃度の溶液を調整し、得られた濃度Cの溶液の25℃における相対粘度ηを、ウベローデ粘度計により測定し、(η -1)/CをCに対してプロットし、得られた結果を濃度0に外挿することにより求めることができる。
【0075】
本発明の製造方法によるポリエステル中のDEG量は、3.2質量%以下とすることができる。より好ましくは2.9質量%以下、さらに好ましくは2.4質量%以下とすることで、ポリエステルの融点低下を抑制でき、耐加水分解性、耐熱性および耐光性の低下抑制、さらには染色性の低下抑制ができる。
【0076】
なお、本発明において、ポリエステルのDEGは以下の方法によって測定、算出される値のことを指す。
(i)前処理として、一定量のポリエステルに2-アミノエタノールを溶媒とし、内部標準物質である1,6-ヘキサンジオールを加えて260℃で分解する。
(ii)冷却後、メタノールを加え、ポリエステル部を析出させてろ過する。
(iii)ろ液をガスクロマトグラフィ(GC、例えば、島津製作所社製、GC-2025など)を用い測定する。
(iv)前記(iii)で得られた実測値および検量線を用いて、DEG量を算出し、小数点以下3位で四捨五入する。
【0077】
本発明の製造方法によるポリエステルのCOOH末端基量は、24.0eq/t以下とすることができる。より好ましくは18.5eq/t以下、さらに好ましくは17.5eq/t以下とすることで、ポリエステル製造中の熱分解が少なく、ポリエステルの着色を少なくすることができ、機械物性の低下抑制ができる。
【0078】
なお、本発明において、ポリエステルのCOOH末端基量は以下の方法によって測定、算出される値のことを指す。
(i)得られたポリエステルペレットをo-クレゾール溶媒に溶解する。
(ii)水酸化カリウム水溶液を用いて中和滴定(例えば、平沼産業社製、自動滴定装置「COM-A195」)にて滴定する。
(iii)滴下量からCOOH末端基量を算出し、小数点以下第2位で四捨五入する。
【0079】
本発明の製造方法によるポリエステルの融点は、244℃以上とすることができる。より好ましくは246℃以上、さらに好ましくは248℃以上とすることで、ポリエステルの耐熱性が向上しポリマー強度が向上する。
【0080】
なお、本発明において、ポリエステルの融点は以下の方法によって測定、算出される値のことを指す。
(i)前処理として、ポリエステルを窒素気流下290℃で5分間溶融後50℃/分で室温まで急冷する。
(ii)示差走査熱量計(DSC、例えば、TA Instruments社製「Q-2000」など)を用い、以下の条件で融点を測定する。
・昇温速度:16℃/分
・測定温度:-20℃から300℃まで。
【0081】
本発明の製造方法によるポリエステルの色調(b値)は、6.5以下とすることができる。より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下とすることで、ポリマーの黄味が少なく、ポリエステル製造時の熱分解が少ない指標となり、糸やフイルムへ加工した際に着色がなく白色の糸やフイルムを得ることができる。
【0082】
なお、本発明において色調(b値)は以下の方法によって測定される値のことを指す。
(i)ポリエステルをチップ状に成型し、石英ガラス製の容器に充填する。
(ii)ハンター型色差計(例えば、スガ試験機株式会社製「SM-カラーコンピューター型式SM-3」など)を用い、測定する。
(iii)前記(ii)で得られたb値について、小数点以下第1位で四捨五入する。
【0083】
本発明の製造方法において効率的に製造されたポリエステルは、DEG含有量が少なく、繊維およびそれからなる繊維構造体、フイルム、樹脂用途に好適に使用できる。
【実施例0084】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0085】
[測定方法]
実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0086】
<A.ポリエステルの固有粘度(IV)測定>
ポリエステルの固有粘度(IV)の測定には、ウベローデ粘度計を用いて、前記の方法により測定、算出した。
【0087】
<B.ポリエステルのDEG含有量>
ポリエステルのDEG含有量(質量%)の測定には、ガスクロマトグラフィ(GC)として、島津製作所社製、GC-14Bなど)を用いて、前記の方法により測定、算出した。得られたDEG量に従ってSS~Cの5段階で評価した。
SS:DEG量が2.00質量%以下であり、ポリエステルの融点、耐加水分解性、染色性への影響が全くなく、あらゆる用途に好適に採用できる。
S:DEG量が2.40質量%以下であり、ポリエステルの融点、耐加水分解性、染色性への影響がなく、あらゆる用途に好適に採用できる。
A:DEG量が2.90質量%以下であり、ポリエステルの融点、耐加水分解性、染色性へ影響を及ぼさない範囲であり、あらゆる用途に好適に採用できる。
B:DEG量が3.20質量%以下であり、ポリエステルの融点、耐加水分解性、染色性へやや影響するが、大きな影響はなく、あらゆる用途に採用できる。
C:DEG量が3.20質量%より高く、ポリエステルの融点、耐加水分解性、染色性へ影響する懸念があるため、用途においては採用が難しい。
【0088】
<C.ポリエステルのCOOH末端基量>
ポリエステルのCOOH末端基量(eq/t)の測定には、水酸化ナトリウムを用いた中和滴定により測定、算出した。得られたCOOH末端基量に従ってSS~Cの5段階で評価した。
SS:COOH末端基量が17.0以下であり、熱分解が少なく、色調および機械物性に影響がないため、あらゆる用途に好適に採用できる。
S:COOH末端基量が17.5以下であり、熱分解が少なく、色調および機械物性に影響がないため、あらゆる用途に好適に採用できる。
A:COOH末端基量が18.5以下であり、熱分解が少なく、色調および機械物性に影響を及ぼさない範囲であり、あらゆる用途に好適に採用できる。
B:COOH末端基量が24.0以下であり、熱分解は多少あるものの、色調および機械物性にやや影響するが、大きな影響はなくあらゆる用途に好適に採用できる。
C:COOH末端基量が24.0より多く、熱分解が生じ、色調および機械物性に影響する懸念があるため、用途においては採用が難しい。
【0089】
<D.ポリエステルの融点測定>
ポリエステルの融点(℃)の測定には、示差走査熱量計として、TA Instruments社製「Q-2000」を用いて、前記の方法により測定、算出した。得られた融点に従ってSS~Cの5段階で評価した。
SS:融点が250℃以上であり、ポリエステルの耐熱性に影響が全くなく、あらゆる用途に好適に採用できる。
S:融点が248℃以上であり、ポリエステルの耐熱性に影響がなく、あらゆる用途に好適に採用できる。
A:融点が246℃以上であり、ポリエステルの耐熱性に影響を及ぼさない範囲であり、あらゆる用途に好適に採用できる。
B:融点が244℃以上であり、ポリエステルの耐熱性にやや影響するが、大きな影響はなく、あらゆる用途に採用できる。
C:融点が244℃より低く、ポリエステルの耐熱性に影響する懸念があるため、用途においては採用が難しい。
【0090】
<E.ポリエステル組成物の色調(b値)>
ポリエステルの色調(b値)の測定には、ハンター型色差計として、スガ試験機株式会社製カラーメーター「SM-T」(三刺激値直読式、0°受光方式)を用いて、前記の方法により測定した。得られたb値の値に従ってS~Cの4段階で評価した。
S:b値が4.0以下であり、繊維への加工後に着色の影響がなく、あらゆる用途に好適に採用できる。
A:b値が5.0以下であり、繊維への加工後に着色の影響を及ぼさない範囲であり、あらゆる用途に好適に採用できる。
B:b値が6.5以下であり、繊維への加工後にやや着色するが、白色と大きな差が生じないため、あらゆる用途に採用できる。
C:b値が6.5より高く、繊維への加工後に着色懸念があるため、白色を求める用途にはやや不向きである。
【0091】
[実施例1]
(ポリエステル)
[工程(1):加圧下エステル化反応]
空のエステル化反応槽にエチレングリコール(EG)100Lを投入し、20%水酸化テトラエチレンアンモニウム(EAH)水溶液121g(ポリエステルに対して0.10質量%)をさらに投入し、エステル化反応槽の昇温を開始した。貯留分のEGおよびEAHが投入されたエステル化反応槽を30分かけて200℃に昇温し、さらに45分かけて215℃に昇温した。昇温時は圧力コントロールはせず、EGの蒸気により微加圧状態とし、エステル化反応槽内が215℃に到達後、エステル化反応槽内が0.2MPaとなるように加圧し、圧力が0.19MPa以上0.21MPa以下となるように圧力コントロールを開始した。そこへ、テレフタル酸130kg、EG52.4Lの混合スラリー(モル比:1.20)を220分かけて連続添加しつつ、発生した水を留去することで加圧下エステル化反応を行い、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を得た。
【0092】
[工程(2):EG追出し反応]
エスエル化反応槽内の圧力を20分かけて放圧し0.10MPa(常圧)とした後に、エステル化反応槽内を40分かけて215℃から245℃に昇温しながら、全留出条件下でEG追い出し反応を45分実施し、85LのEGを留去した。
【0093】
[工程(2):BHET存在下エステル化反応]
EG追出し反応後にエスエル化反応槽内に残存したBHETにテレフタル酸130kg、EG52.4Lの混合スラリー(モル比:1.20)を0.10MPa(常圧)、245℃の温度制御下で220分かけて連続添加しつつ、発生した水を留去することでBHET存在下エステル化反応を行い、BHETを得た。
【0094】
[工程(3):重縮合反応]
工程(2)のBHET存在下エステル化反応後に得られたBHETの55重量%を重縮合反応槽へ移送した。245℃への昇温完了後、安定剤として85%リン酸水溶液28g、重縮合触媒として三酸化アンチモン45gを加え、60分かけて50Paへ減圧し、90分かけて290℃まで昇温することで所望の溶融粘度となるまで重縮合反応を進行させた。
【0095】
重縮合槽を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却し、ペレット状にカッティングをしてポリエステルチップを得た。
【0096】
得られたポリエステルの固有粘度(IV) は0.68、DEG量は3.00質量%、COOH末端基量が18.7eq/t、融点が246℃、色調b値は5.1であった。
【0097】
[実施例2~6]
20%水酸化テトラエチルアンモニウム(EAH)水溶液投入量を表1に記載の通り変化させた以外は実施例1と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表1に示す。
【0098】
EAH濃度を0.10質量%(実施例1)から0.50質量%(実施例3)に増量することで、DEG量は3.00質量%(実施例1)から2.06質量%(実施例3)へと低下する傾向にあった。一方で、EAH量を0.80質量%(実施例6)まで増量すると、DEG量は3.20質量%(実施例6)まで増加する傾向にあった。また、DEG量増量に伴い、COOH末端器量増加、融点低下、b値増加する傾向にあった。
【0099】
[実施例7~11]
加圧下エステル化反応時の圧力を表1に記載の通り変化させた以外は実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表1に示す。
【0100】
圧力を0.20MPa(実施例3)から0.11MPa(実施例7)に低下させると、反応時間が310分(実施例3)から430分(実施例7)に長時間化し、DEG量は2.06質量%(実施例3)から3.20質量%(実施例7)へと増加する傾向であった。一方で、エステル化反応時の圧力を0.20MPa(実施例3)から0.50MPa(実施例11)に向上させると、反応時間は310分(実施例3)から270分(実施例11)へと短時間化するが、DEG量は2.06質量%(実施例3)から3.10質量%(実施例11)へと増加する傾向であった。
【0101】
【表1】
【0102】
[実施例12~17]
加圧下エステル化反応時の温度を表2に記載の通り変化させた以外は実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表2に示す。
【0103】
反応温度を215℃(実施例3)から200℃(実施例12)に低下させると、反応時間が310分(実施例3)から430分(実施例12)に長時間化し、DEG量は2.06質量%(実施例3)から3.20質量%(実施例12)へと増加する傾向であった。一方で、エステル化反応時の温度を215℃(実施例3)から250℃(実施例17)に高温化させると、反応時間は310分(実施例3)から265分(実施例17)へと短時間化したが、高温条件下でのEG二量化反応が進行し、DEG量は2.06質量%(実施例3)から3.18質量%(実施例17)へと増加する傾向であった。
【0104】
[実施例18、19]
第四級アンモニウム化合物種を表2に記載の通り、水酸化テトラメチルアンモニウム(実施例18)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(実施例19)に変更した以外は実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表2に示す。
【0105】
第四級アンモニウム化合物をEAH(実施例3)から水酸化テトラメチルアンモニウム(実施例18)に変化させることで、エステル化反応、重縮合反応状況に変化はなかったが、第四級アンモニウム化合物種の変更によって、加圧下エステル化反応初期の塩基性が低下したため、EG二量化反応が進行し、DEG量は2.47質量%(実施例18)に増加した。一方で、第四級アンモニウム化合物をEAH(実施例3)から水酸化テトラプロピルアンモニウム(実施例19)に変化させることで、エステル化反応、重縮合反応状況に変化はなかったが、第四級アンモニウム化合物種の変更によって、重合度の低いBHETの生成量が増加したため、熱分解が進行し、DEG量は2.50質量%(実施例19)に増加した。
【0106】
【表2】
【0107】
[実施例20]
工程(2)において常圧下でのEG追出し反応をした後に、245℃、0.06MPa(減圧)の条件下でEG追い出し反応を45分実施し、14LのEGを留去した以外は実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表3に示す。
【0108】
減圧下でのEG追出し反応を実施することで、エステル化反応、重縮合反応状況に変化はなかったが、EG留去量が増加したことでエステル化反応時の余剰EG量が低減し、EG二量化反応が抑制され、DEG量は1.96質量%に低減した。
【0109】
[実施例21]
空のエステル化反応槽に添加するエチレングリコール(EG)の量を80Lに変更した以外は実施例20と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表3に示す。
【0110】
貯留EG量を低減することで、加圧下エステル化反応、エステル化反応、重縮合反応状況に変化はなかったが、加圧下エステル化反応時のモル比が低減したことで、加圧下エステル化反応時の余剰EG量が低減し、EG二量化反応が抑制され、DEG量は1.89質量%に低減した。
【0111】
[実施例22~24]
工程(1)において空のエステル化反応槽内にエチレングリコール(EG)および20%水酸化テトラエチレンアンモニウム(EAH)を投入後、テレフタル酸を一括添加し、エステル化反応槽内のモル比を表3に記載の通り、2.1(実施例22)、1.8(実施例23)、1.4(実施例24)に変更し、加圧下エステル化反応時の温度を230℃とし、反応時間を330分に変更した以外は実施例20と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表3に示す。
【0112】
エステル化反応槽内のモル比を低減することで、加圧化エステル化反応時の温度および反応時間に変化は生じたが、反応は問題なく進行し、エステル化反応、重縮合反応状況に変化はなかった。加圧下エステル化反応時のモル比が低減したことで、加圧下エステル化反応時の余剰EG量が低減し、EG二量化反応が抑制され、DEG量は1.96質量%(実施例20)から1.35質量%(実施例29)に低減した。
【0113】
【表3】
【0114】
[比較例1、2]
EAHを添加しない(比較例1)、EAH投入量を1.00質量%(比較例2)に変更した以外は実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表4に示す。
【0115】
比較例1で得られるポリエステルは、第四級アンモニウム化合物を添加していないため、得られたポリエステルはEG二量化反応が進行したことでDEG量が高くなり、COOH末端基量、色調、融点にも劣るものであった。
【0116】
比較例2で得られるポリエステルは、第四級アンモニウム化合物濃度が高く、系内の塩基性が強くなったため、テレフタル酸とEGの反応が抑制され、重合度の低いBHETの生成量が増加し、熱分解によって生じるDEG量が増加したため、ポリエステル中のDEG量が高くなり、COOH末端基量、色調、融点にも劣るものであった。
【0117】
[比較例3、4]
一段階目のエステル化反応時を0.10MPa(常圧下)(比較例3)、または0.60MPa(比較例4)に変更した以外は実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表4に示す。
【0118】
比較例3では、エステル化反応を常圧下で実施したため反応温度が高温化できず、反応時間が長時間化し、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0119】
比較例4では、エステル化反応時の圧力が高く、EG二量化が進行しやすくなり、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0120】
[比較例5、6]
加圧下エステル化反応時の温度を190℃(比較例5)、260℃(比較例6)とした以外は実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表4に示す。
【0121】
比較例5では、反応温度が低すぎて、テレフタル酸とEGの反応が進行せず、ポリエステルが得られなかった。
【0122】
比較例6では、反応温度が高く、EG二量化が進行しやすくなり、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0123】
[比較例7、8、9]
EAHの添加タイミングを、エステル化反応直後(比較例7)、重縮合反応前(比較例8)、重縮合反応後(比較例9)に変更した以外は、実施例3と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表4に示す。
【0124】
比較例7では、加圧下エステル化反応直後に第四級アンモニウム化合物としてEAHを添加した。エステル化反応によって生成したBHETにEAHを添加しており、テレフタル酸とEG反応時のDEG生成を抑制できないため、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0125】
比較例8では、BHETを重縮合反応槽移行後にEAHを添加しており、エステル化反応時のDEG生成を抑制できないため、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0126】
比較例9では、重縮合反応後にEAHを添加しており、DEG生成を抑制できないため、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0127】
[比較例10、11]
エステル化反応槽内のモル比を、3.7(比較例10)、13(比較例11)に変更した以外は、実施例20または実施例22と同様に実施し、ポリエステルを得た。結果を表4にします。
【0128】
比較例10では、エステル化反応槽内のモル比が増加しすぎて、EG二量化反応が進行しやすくなり、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0129】
比較例11では、エステル化反応槽内のモル比が低すぎて、エステル化反応時間が遅延したことで、EG二量化反応が進行し、得られたポリエステルのDEG量、COOH末端基量、色調、融点に劣るものであった。
【0130】
【表4】