(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009936
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】多層管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20250109BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20250109BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250109BHJP
F16L 9/133 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B32B1/08 Z
B32B5/32
B32B27/30 101
B32B1/08 A
F16L9/133
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100286
(22)【出願日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2023107865
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 毅博
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴
(72)【発明者】
【氏名】原田 高道
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 陸生
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111AA03
3H111BA15
3H111BA34
3H111CA53
3H111CB03
3H111CB04
3H111CB14
3H111DA13
3H111DA15
3H111DB05
3H111EA04
3H111EA14
4F100AK15A
4F100AK15B
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4F100AT00C
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4F100JA13B
4F100JA13E
4F100YY00A
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】本発明は、複数の発泡層を含む多層管及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の多層管10は、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第1層12と、前記第1層の外周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第2層14と、を含む多層管であって、前記第1層の平均発泡倍率は、前記第2層の平均発泡倍率よりも低い。前記第1層の平均発泡倍率は、1.00倍を越えて1.05倍以下とすることができる。また、前記第1層は、発泡倍率が前記第1層の平均発泡倍率よりも小さい第1スキン層を内周側に含むことができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第1層と、
前記第1層の外周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第2層と、
を含む多層管であって、
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第2層の平均発泡倍率よりも低い、
多層管。
【請求項2】
前記第1層の平均発泡倍率は、1.00倍を越えて1.05倍以下である、
請求項1に記載の多層管。
【請求項3】
前記第1層は、発泡倍率が前記第1層の平均発泡倍率よりも小さい第1スキン層を内周側に含む、
請求項2に記載の多層管。
【請求項4】
破壊水圧性能が8MPa以上である、
請求項3に記載の多層管。
【請求項5】
前記第2層は、発泡倍率が前記第2層の平均発泡倍率よりも小さい第2スキン層を外周側に含む、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の多層管。
【請求項6】
前記第2層の外周側に、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第3層を具え、
前記第3層の平均発泡倍率は、前記第2層の平均発泡倍率よりも低い、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の多層管。
【請求項7】
前記第3層の平均発泡倍率は、1.00倍を超えて1.05倍以下である、
請求項6に記載の多層管。
【請求項8】
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第3層の平均発泡倍率と同じである、
請求項7に記載の多層管。
【請求項9】
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第3層の平均発泡倍率よりも低い、
請求項7に記載の多層管。
【請求項10】
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第3層の平均発泡倍率よりも高い、
請求項7に記載の多層管。
【請求項11】
前記第3層は、発泡倍率が前記第3層の平均発泡倍率よりも小さい第3スキン層を外周側に含む、
請求項7に記載の多層管。
【請求項12】
塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第1層と、前記第1層の外周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第2層と、を含む多層管の製造方法であって、
前記第1層を形成する塩化ビニル系樹脂に発泡剤が添加された第1原材料と、前記第2層を形成する塩化ビニル系樹脂に前記第1原材料よりも平均発泡倍率が高くなる量の発泡剤が添加された第2原材料と、を準備し、
前記第1原材料と前記第2原材料を加圧下で加熱溶融し、前記第1原材料が内周側、前記第2原材料が外周側となるように管状に押し出して積層した積層体を形成し、
前記積層体を圧力解放しつつ拡径して管状に成形することで、前記発泡剤を発泡させ、
前記発泡剤が発泡した前記積層体を外周と内周をサイジングして冷却することで、内周側に前記第1層、外周側に前記第1層よりも平均発泡倍率の高い前記第2層を形成する、
多層管の製造方法。
【請求項13】
塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第1層と、前記第1層の外周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第2層と、前記第2層の外周側に塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第3層と、を含む多層管の製造方法であって、
前記第1層を形成する塩化ビニル系樹脂に発泡剤が添加された第1原材料と、前記第2層を形成する塩化ビニル系樹脂に前記第1原材料よりも平均発泡倍率が高くなる量の発泡剤が添加された第2原材料と、前記第3層を形成する塩化ビニル系樹脂に前記第2原材料よりも平均発泡倍率が低くなる量の発泡剤が添加された第3原材料と、を準備し、
前記第1原材料、前記第2原材料及び前記第3原材料を加圧下で加熱溶融し、前記第1原材料が内周側、前記第2原材料が中間、前記第3原材料が前記第2原材料の外周側となるように管状に押し出して積層した積層体を形成し、
前記積層体を圧力解放しつつ拡径して管状に成形することで、前記発泡剤を発泡させ、
前記発泡剤が発泡した前記積層体を外周と内周をサイジングして冷却することで、内周側に前記第1層、中間に前記第1層よりも平均発泡倍率の高い前記第2層、外周側に前記第2層よりも平均発泡倍率の低い前記第3層を形成する、
多層管の製造方法。
【請求項14】
前記第1原材料と前記第3原材料は、同じである、
請求項13に記載の多層管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発泡層を含む多層管及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水管や空調ドレン管など、流体を流通させる配管として塩化ビニル系樹脂製の多層管が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。多層管は、内側に位置する第1層の外周に第2層、さらにその外周に第3層を形成して構成される。第1層と第3層は発泡剤を含まない非発泡層であり、これらの間の中間の第2層は発泡層としている。発泡層を含むことで多層管の軽量化を図ることができ、また、発泡層が防音や断熱効果を発揮することで、内部を流通する流体の流音や放熱、結露などを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1層12と第3層16が非発泡層、第2層14が発泡層である多層管10について、切断機で切断したときに、第1層12又は第3層16に
図14の写真に示すうように、クラック90が発生することがある。図では、外層である第3層16にクラック90が発生している。
【0005】
発明者らは鋭意研究の結果、このクラック90の原因が、発泡層と非発泡層の接合性が低いことに起因することを見いだした。
【0006】
本発明の目的は、複数の発泡層を含む多層管及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多層管は、
塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第1層と、
前記第1層の外周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第2層と、
を含む多層管であって、
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第2層の平均発泡倍率よりも低い。
【0008】
前記第1層の平均発泡倍率は、1.00倍を越えて1.05倍以下とすることができる。
【0009】
前記第1層は、発泡倍率が前記第1層の平均発泡倍率よりも小さい第1スキン層を内周側に含むことができる。
【0010】
破壊水圧性能が8MPa以上であることが望ましい。
【0011】
前記第2層は、発泡倍率が前記第2層の平均発泡倍率よりも小さい第2スキン層を外周側に含むことができる。
【0012】
前記第2層の外周側に、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第3層を具え、
前記第3層の平均発泡倍率は、前記第2層の平均発泡倍率よりも低い。
【0013】
前記第3層の平均発泡倍率は、1.00倍を超えて1.05倍以下とすることができる。
【0014】
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第3層の平均発泡倍率と同じとすることができる。
【0015】
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第3層の平均発泡倍率よりも低くすることができる。
【0016】
前記第1層の平均発泡倍率は、前記第3層の平均発泡倍率よりも高くすることができる。
【0017】
前記第3層は、発泡倍率が前記第3層の平均発泡倍率よりも小さい第3スキン層を外周側に含むことができる。
【0018】
本発明の多層管の製造方法は、
塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第1層と、前記第1層の外周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第2層と、を含む多層管の製造方法であって、
前記第1層を形成する塩化ビニル系樹脂に発泡剤が添加された第1原材料と、前記第2層を形成する塩化ビニル系樹脂に前記第1原材料よりも平均発泡倍率が高くなる量の発泡剤が添加された第2原材料と、を準備し、
前記第1原材料と前記第2原材料を加圧下で加熱溶融し、前記第1原材料が内周側、前記第2原材料が外周側となるように管状に押し出して積層した積層体を形成し、
前記積層体を圧力解放しつつ拡径して管状に成形することで、前記発泡剤を発泡させ、
前記発泡剤が発泡した前記積層体を外周と内周をサイジングして冷却することで、内周側に前記第1層、外周側に前記第1層よりも平均発泡倍率の高い前記第2層を形成する。
【0019】
また、本発明の多層管の製造方法は、
塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第1層と、前記第1層の外周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第2層と、前記第2層の外周側に塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる第3層と、を含む多層管の製造方法であって、
前記第1層を形成する塩化ビニル系樹脂に発泡剤が添加された第1原材料と、前記第2層を形成する塩化ビニル系樹脂に前記第1原材料よりも平均発泡倍率が高くなる量の発泡剤が添加された第2原材料と、前記第3層を形成する塩化ビニル系樹脂に前記第2原材料よりも平均発泡倍率が低くなる量の発泡剤が添加された第3原材料と、を準備し、
前記第1原材料、前記第2原材料及び前記第3原材料を加圧下で加熱溶融し、前記第1原材料が内周側、前記第2原材料が中間、前記第3原材料が前記第2原材料の外周側となるように管状に押し出して積層した積層体を形成し、
前記積層体を圧力解放しつつ拡径して管状に成形することで、前記発泡剤を発泡させ、
前記発泡剤が発泡した前記積層体を外周と内周をサイジングして冷却することで、内周側に前記第1層、中間に前記第1層よりも平均発泡倍率の高い前記第2層、外周側に前記第2層よりも平均発泡倍率の低い前記第3層を形成する。
【0020】
前記第1原材料と前記第3原材料は、同じとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多層管は、2層管の場合、第1層及び第2層の両方、3層管の場合、第1層、第2層及び第3層を発泡層としたことで、各層は何れも塩化ビニル系樹脂と発泡剤を含む材質となり、両者の材質を近づけることができる。これにより、押出成形時に層どうしの接合性を高めることができる。本発明の多層管は、層どうしの接合性が高いから、多層管を切断したときに、何れかの層にクラックが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1実施形態の多層管の断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の多層管の切断面の拡大写真である。
【
図3】
図3は、連続気泡率測定装置を断面して示す説明図である。
【
図4】
図4は、スキン層を含む第1実施形態の多層管の断面図である。
【
図7】
図7は、多層管の製造装置を示す説明図である。
【
図9】
図9は、真空サイジング装置の説明図である。
【
図12】
図12は、スキン層を含む第2実施形態の多層管の断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の多層管(発明例3)の切断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る多層管10について説明する。本発明の多層管10は、流体を流通させる排水管や空調ドレン管などの配管として種々の用途に使用することができる。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明の多層管10の一実施形態を示す断面図である。また、
図2は切断面の写真であり、(a)は切断面の拡大写真、(b)は第1層12と第2層14の拡大写真、(c)は第2層14と第3層16の拡大写真である。第1実施形態は、3層構成の多層管10(3層管)について説明を行なう。なお、各図において、各層の厚さは誇張して示しているため、下記の数値に合致しない場合がある。
【0025】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の多層管10は、最も内周に設けられた筒状の第1層12と、その外周に形成された筒状の第2層14、さらにその外周に形成された筒状の第3層16を含む。本実施形態の場合、多層管10は、第1層12の内側を流体が通過する内層、第3層16が外殻となる外層、第2層14は中間層を構成する。なお、第1層12、第2層14及び第3層16は夫々図示では1層の形態であるが、夫々を複数層の形態としても構わない。
【0026】
[材質]
本発明の多層管10は、第1層12、第2層14及び第3層16を何れも塩化ビニル系樹脂の発泡層から構成しており、第1層12と第3層16の平均発泡倍率を第2層14の平均発泡倍率よりも低くしたことを特徴としている。平均発泡倍率は、各層を切り出し、JIS K 7112:1999により密度を測定して、算出することができる。
【0027】
具体的には、第1層12と第3層16の平均発泡倍率は、1.00倍を越えて、1.05倍以下、より好ましくは1.03倍以下、望ましくは1.025倍以下の微発泡である。第1層12と第3層16の平均発泡倍率は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1層12と第3層16の平均発泡倍率が異なるとは、第1層12の平均発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも低い、又は、第1層12の平均発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも高いことを意味する。
【0028】
第1層12は、内面側に流体が流通するから、第1層12の平均発泡倍率を第3層16の平均発泡倍率よりも低くすることで、多層管10の内面の凹凸を少なくすることができ、流水性能を上げることができる。
【0029】
第3層16の平均発泡倍率を第1層12の平均発泡倍率よりも高くすることで、高い防音効果や断熱効果を具備できる。逆に、第3層16の平均発泡倍率を第1層12の平均発泡倍率よりも低くすることで、多層管10の強度を高めることができる。
【0030】
一方、第2層14の平均発泡倍率は、第1層12、第3層16の平均発泡倍率よりも高くしている。具体的には、第2層14の平均発泡倍率は、1.50倍以上が好適であり、3.00倍以上が望ましく、4.00倍以上が特に望ましい。第2層14の平均発泡倍率は、10.0倍以下が好適であり、8.00倍以下が望ましく、6.00倍以下が特に望ましい。
【0031】
上記に使用される塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル単量体とエチレン等の共重合体などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。なお、各層の塩化ビニル系樹脂は下記平均重合度を含め、同じであってもよいし、異なった材料であってもよい。たとえば、微発泡層である第1層12と第3層16を同じ材料とし、微発泡層よりも平均発泡倍率の高い発泡層である第2層14のみを異なる材料とすることができる。
【0032】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400以上が好適であり、2000以下が望ましい。塩化ビニル系樹脂の平均重合度が400未満になると、熱安定性や疲労特性などが低下し易く、また、平均重合度が2000を超えると、一般的な成形温度での成形が困難になり、塩化ビニル系樹脂が分解してしまうためである。より望ましい塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、下限が600以上であり、上限が1500以下である。
【0033】
塩化ビニル系樹脂は、第1層12と第3層16の平均重合度を、中間層となる第2層14の平均重合度よりも大きくすることが好適である。内層となる第1層12は、流体と直接接触するから強度を具備して破損を抑え、また、破壊水圧性能を高めるためである。また、第3層16は、外殻として外的強度を受け持つためである。一方で、第2層14は、発泡を促進させるために、低重合度の塩化ビニル樹脂が望ましいからである。第1層12、第3層16の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、800~1500であることが好適であり、第2層14の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400~800とすることが好適である。第1層12と第3層16の平均重合度は、第2層14の平均重合度よりも100以上大きいことがより望ましい。
【0034】
各層の塩化ビニル系樹脂には、発泡を行なうために、発泡剤が添加される。発泡剤は、揮発性のもの、分解型のもの、或いは、熱膨張性マイクロカプセルを使用できる。揮発性を有する発泡剤として、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素の他、エーテルやケトンなどを例示できるが、これに限定されるものではない。分解型の発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどを例示できるが、これに限定されるものではない。なお、発泡剤は、1種のみ或いは複数種類を混合して使用してもよい。また、発泡剤は、炭酸ガスや空気、窒素ガスなどのガスであってもよい。
【0035】
本発明では、第2層14の平均発泡倍率を、第1層12と第3層16の平均発泡倍率よりも高くするために、第2層14の塩化ビニル系樹脂に添加される発泡剤を、第1層12と第3層16に添加される発泡剤よりも多くする。または、平均発泡倍率の高いものを使用する。
【0036】
具体的には、第1層12と第3層16の発泡剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0質量部を超えて、0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、望ましくは0.2質量部以下である。第1層12と第3層16の発泡剤の添加量は、同じであってもよく、異なっていてもよい。たとえば、第1層12の発泡剤の添加量と第3層16の発泡剤の添加量を同じにすることで、第1層12の平均発泡倍率と第3層16の平均発泡倍率を同じにすることができる。第1層12の発泡剤の添加量を第3層16の発泡剤の添加量よりも少なくすることで、第1層12の平均発泡倍率を第3層16の平均発泡倍率よりも低くすることができる。また、第1層12の発泡剤の添加量を第3層16の発泡剤の添加量よりも多くすることで、第1層12の平均発泡倍率を第3層16の平均発泡倍率よりも高くすることができる。
【0037】
一方、第2層14の発泡剤の添加量は、第1層12、第3層16の発泡剤の添加量よりも多くしている。具体的には、第2層14の発泡剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上が好適であり、4.0質量部以上が望ましく、6.0質量部以上が特に望ましい。第2層14の発泡剤の添加量は、18.0質量部以下が好適であり、14.0質量部以下が望ましく、10.0質量部以下が特に望ましい。
【0038】
なお、塩化ビニル系樹脂には、成形性や製品特性を改善するために安定剤を含有することが望ましい。安定剤として、Ca-Zn系、Ba-Zn系、Sn系、Pb系のものを例示できる。また、外層となる第3層16には、顔料を含めることができる。顔料を含めることで、多層管10の外観を良好とし、或いは、ユーザーのニーズに沿った着色とすることができる。
【0039】
[形状]
多層管10は、
図1に示すように円環状の形態とすることができる。第1層12、第2層14及び第3層16を合わせた多層管10の内径、外径、厚さは適宜選択することができる。たとえば、多層管10の内径は20mm以上が好ましく、65mm以下が好ましい。多層管10の外径は、32mm以上(呼び径20)が好ましく、89mm以下(呼び径65)が好ましい。また、多層管の厚さは、6.0mm以上が好ましく、11.0mm以下が好ましい。
【0040】
各層の厚さ(平均:以下同じ)については、第1層12は、第2層14の35%以上の厚さとすることが好ましく、望ましくは40%以上の厚さ、より望ましくは45%以上の厚さとする。平均発泡倍率の低い微発泡の第1層12は、平均発泡倍率の高い第2層14よりも剛性が高いため、第1層12の厚さを上記のように規定することで、多層管10の内周に高い剛性を具備でき、変形や、内部を流通する流体との接触による傷付き等を防止できる。
【0041】
一方で、微発泡層である第1層12は、平均発泡倍率の高い第2層14よりも比重が大きいため、第1層12が厚くなると多層管10の重量化を招く。また、第2層14は、平均発泡倍率が高い多孔質状であるが故に、高い防音効果や断熱効果を具備するが、第2層14が薄くなるとそれらの効果も低減する。従って、第1層12は、第2層14の厚さの85%以下の厚さとすることが好ましく、望ましくは80%以下の厚さ、より望ましくは75%以下の厚さとする。
【0042】
また、第3層16は、第2層14の30%超の厚さとすることが好ましく、望ましくは、35%以上の厚さ、より望ましくは40%以上の厚さとする。微発泡層である第3層16は、発泡層である第2層14よりも剛性が高いため、第3層16の厚さを上記のように規定することで、多層管10の外周に高い剛性を具備でき、変形の防止や傷付きの防止を達成できる。
【0043】
一方で、微発泡層である第3層16は、平均発泡倍率の高い第2層14よりも比重が大きいため、第3層16が厚くなると多層管10の重量化を招く。また、第2層14は、平均発泡倍率が高い多孔質状であるが故に、高い防音効果や断熱効果を具備するが、第2層14が薄くなるとそれらの効果も低減する。従って、第3層16は、第2層14の厚さの55%以下の厚さとすることが好ましく、望ましくは50%以下の厚さ、より望ましくは45%以下の厚さとする。
【0044】
なお、第1層12と第3層16の厚さを比べた場合には、第3層16の方を厚くすることで、流体と接する第1層12では流体の温度の影響を吸収しつつ、管全体の強度を保有することができる。具体的には、第3層16は、第1層12の1.0倍超が好ましく、望ましくは1.2倍以上、より望ましくは1.4倍以上である。
【0045】
逆に、第1層12の方を厚くすることで、流体と接する第1層12(流体経路)の変形を抑制しつつ、管全体のたわみをある程度許容することができる。具体的には、第1層12は、第3層16の1.0倍超が好ましく、望ましくは1.2倍以上、より望ましくは1.4倍以上である。
【0046】
第2層14は、層中に含まれる気泡どうしが繋がった連続気泡率が50%以上であることが好適であり、70%以上が望ましい。また、その上限は、90%以下が好適であり、85%以下が望ましい。連続気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定することができる。逆に、独立気泡率は15%以下であることが好適であり、10%以下が望ましい。
【0047】
連続気泡率が高くなり、独立気泡率が低くなる程、平均発泡倍率が高くなり、第2層14が軽量化、かつ断熱性能が向上するため、連続気泡率の下限と独立気泡率の上限は上記のとおり設定することが望まれる。一方、連続気泡率が高くなると、第2層14の強度や遮水性能が低下するため、上限は上記のとおり設定することが望まれる。
【0048】
また、連続気泡率は、たとえば、
図3に示す連続気泡率測定装置80を用いて測定できる。連続気泡率測定装置80は、上下一対のキャップ81,82と下側のキャップ82に接続されたポンプ83を含んだ構成である。多層管10は、長さ400mmに切断され、第1層12の内側の流路19をエアーパッカー84によって気密に塞いでいる。当該多層管10の両端には、第3層16とキャップ81,82の内面との間にシールリング85を装着し、第3層16の端面から1mmの隙間を残して、キャップ81,82を装着する。そして、ポンプ83から10kPaの圧力で水を送り込み、15分間放置する。そして、15分後に多層管10を縦に切断し、平均発泡倍率の最も高い第2層14の断面を観察して、第2層14のどの高さまで水が浸入したかによって連続気泡の割合を数値化する方法を例示できる。
【0049】
第1層12の内周側には、
図4に示すように、平均発泡倍率が第1層12の平均発泡倍率よりも小さい第1スキン層13を内周側表層に含むことができる。第1スキン層13は、気泡が殆んどないか(発泡倍率1.00倍)、第1層12の平均発泡倍率よりも小さい層である。第1スキン層13は、第1層12の一部であり、たとえば、下記に示す製造方法(
図7~
図9)により多層管10を製造する際に、第1層12の内周側が真空サイジング装置24内の空間に接触することで冷却され、発泡剤が十分に或いは全く発泡することなく成形された層であり、第1層12と第1スキン層13の原材料は同じである。
図5は、第1スキン層13の内表面の拡大写真であって、発泡剤18としてマイクロカプセルを使用した実施形態である。図を参照すると、第1スキン層13は、発泡剤18が発泡せずにマイクロカプセルのまま残留していることがわかる。発泡剤が発泡していない第1スキン層13が、第1層12の内周側に形成されることで、多層管10の内部を流通する流体が第1層12に染み入ることを防止でき、また、発泡倍率が低いことから、第1層12の内周側の強度、ひいては、多層管10の強度を高める役割をなす。
【0050】
第1スキン層13の厚さの下限は、第1層12の5%、望ましくは7%である。第1スキン層13の厚さの上限は、第1層12の55%、望ましくは50%、特に望ましくは45%である。第1スキン層13が上記よりも薄いと第1スキン層13の効果を十分に発揮できず、第1スキン層13が上記よりも厚いと、発泡層である第1層12が重量化してしまうためである。
【0051】
第3層16の外周側には、
図4に示すように、平均発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも小さい第3スキン層17を外周側表層に含むことができる。第3スキン層17は、気泡が殆んどないか(発泡倍率1.00倍)、第3層16の平均発泡倍率よりも小さい層である。第3スキン層17は、第3層16の一部であり、たとえば、下記に示す製造方法(
図7~
図9)により多層管10を製造する際に、第3層16の外周がサイジングスリーブ64と接触することで、発泡剤が十分に或いは全く発泡することなく成形された層であり、第3層16と第3スキン層17の原材料は同じである。
図6は、第3スキン層17の外表面の拡大写真であって、発泡剤18としてマイクロカプセルを使用した実施形態である。図を参照すると、第3スキン層17は、発泡剤18が発泡せずにマイクロカプセルのまま残留していることがわかる。発泡剤が発泡していない第3スキン層17が、第3層16の外周側に形成されることで、第3層16の外周の強度、ひいては、多層管10の強度を高めたり、外的衝撃から第2層14を保護する役割をなす。
【0052】
第3スキン層17の厚さの下限は、第3層16の2%、望ましくは11%である。第3スキン層17の厚さの上限は、第3層16の75%、望ましくは70%である。第3スキン層17が上記よりも薄いと第3スキン層17の効果を十分に発揮できず、第3スキン層17が上記よりも厚いと、発泡層である第3層16が重量化してしまうためである。
【0053】
[多層管10の製造方法]
多層管10は、たとえば
図7に示すような製造装置20を用いて製造することができる。製造装置20は、第1層12と第3層16を押出成形する第1押出成形機21、第2層14を押出成形する第2押出成形機22、真空サイジング装置24、引取機26及び切断機28等を含む構成である。本実施形態の製造装置20は、第1層12と第3層16を同じ原材料(第1原材料)から成形するため、1基の押出成形機21を使用しているが、押出成形機を2基に分けて、第1層12と第3層16を異なる原材料(第1原材料と第3原材料)から成形してもよい。
【0054】
第1押出成形機21及び第2押出成形機22は、ホッパー30,32から供給された原材料を加熱溶融して押し出す第1押出機34と第2押出機36を含み、第1押出機34及び第2押出機36の出口には金型38が取り付けられる。第1押出成形機21のホッパー30には、多層管10の第1層12と第3層16を構成する第1原材料が供給され、第2押出成形機22のホッパー32には、第2層14を構成する第2原材料が供給される。
【0055】
第1原材料は、塩化ビニル系樹脂に所定量の発泡剤等を含む。また、第2原材料も、塩化ビニル系樹脂に所定量の発泡剤を含む。第1原材料の発泡剤の含有量は、第2原材料よりも平均発泡倍率が低くなる量とする。第2原材料の発泡剤の含有量は、第1原材料よりも平均発泡倍率が高くなる量とする。第3層16に第1原材料とは異なる第3原材料を使用する場合、第3原材料は、第2原材料よりも平均発泡倍率が低くなる量の発泡剤を含有すればよい。
【0056】
第1原材料は、加圧下、第1押出機34内で溶融されて溶融樹脂44となる。また、第2原材料も、加圧下、第2押出機36内で溶融されて溶融樹脂46となる。なお、発泡剤が混入されても溶融樹脂44,46は高圧下の第1押出機34、第2押出機36内では発泡はしない。
【0057】
金型38は、
図8に示すように、多層(3層)押出用金型であり、合流部40及び成形部42を含む。合流部40において、第1押出機34及び第2押出機36から導入された溶融樹脂44と46が合流され、その出口近傍で積層されて積層体を構成する。積層された溶融樹脂44と46を含む積層体は、成形部42において、積層されたままで管状に成形される。すなわち、溶融樹脂44が後に第1層12と第3層16となり、溶融樹脂46が第2層14となる。このとき、溶融樹脂44,46は、圧力開放されて、発泡剤が発泡する。なお、溶融樹脂44と46の供給圧、或いは、その流路面積を調整することで、第1層12、第2層14、第3層16の厚さを適宜調整できる。
【0058】
そして、積層体中の溶融樹脂44と46は、成形部42の先端部に設けられたダイリング48とマンドレル50によって、外周及び内周はある程度適切なサイズに規制され、内周側が第1層12、中間が第2層14、外周側が第3層16の多層からなる連続管52として押し出される。符号49,51は、ダイリング48の外周とマンドレル50の内周に配置されたヒーターである。第1層12と第2層14、第2層14と第3層16は、互いに材料系が近く、塩化ビニル系樹脂に共に発泡剤(量は異なる)を含んでいることから、発泡剤の膨張しようとする圧力によって、樹脂の圧力が高くなる。この結果、金型内で合流する樹脂各層の密着性が上がって、接合性が高くなる。
【0059】
また、第1層12がダイリング48と接触しながら押し出されたときに、第1層12の内周側表層に発泡倍率が第1層12の平均発泡倍率よりも低い或いは略ゼロの第1スキン層13を形成することができる。
【0060】
また、第3層16がマンドレル50と接触しながら押し出されたときに、第3層16の外周側表層に発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも低い或いは略ゼロの第3スキン層17が形成される。
【0061】
ダイリング48とマンドレル50間を通過した連続管52は、真空サイジング装置24に送られる。真空サイジング装置24は、金型38の下流に配置され、金型38から押し出された連続管52の外面をサイジングするとともにこれを冷却するためのものであり、
図9に示すように、連続管52の押出方向に延びる本体54を含む。本体54の長手方向の一方端部及び他方端部には管の入口56及び出口58が形成される。本体54内の入口56側には真空ポンプ60が接続された真空室62が設けられ、真空室62内にはサイジングスリーブ64が配置され、サイジングスリーブ64の一端が入口56に接続される。また、真空室62と出口58との間に冷却室66が設けられ、真空室62及び冷却室66に散水パイプ68が配置される。
【0062】
連続管52が真空サイジング装置24に与えられると、真空ポンプ60の負圧により連続管52が膨張され、その外面がサイジングスリーブ64の内面に密着されることによりサイジングされる。また、サイジングされた連続管52は、散水パイプ68から撒かれる冷却水により冷却されて硬化される。
【0063】
引取機26は、連続管52を一定の速さで引き取るためのものであり、連続管52の下部及び上部に押圧される引取ローラー70を含む。引取ローラー70の少なくとも一つには図示しないモーターが接続され、モーターの回転数を制御することによって連続管52の引き取り速さが調整される。
【0064】
切断機28は、連続管52を所定長さに切断するためのものであり、連続管52の先端位置を検出するセンサ71と、センサ71に連動して駆動される鋸歯72とを含む。連続管52の先端がセンサ71を押すと、鋸歯72が駆動されて連続管52が切断され、
図1や
図2、
図4に示す第1層12、第2層14及び第3層16を含む多層管10が得られる。
【0065】
なお、上記製造方法は、一例であり、他の方法により多層管10を作製することはもちろん可能である。例えば、第1層12と第3層16で平均発泡倍率を変える場合には、第1層12に寄与するヒーター51と第3層16に寄与するヒーター49の温度に差をつけて、発泡倍率を上げたい側のヒーターの温度を高くし、発泡倍率を下げたい側のヒーターの温度を低く設定すればよい。また、第1押出成形機21のホッパー30と溶融樹脂44の供給ルートを第1層12と第3層16で分け、第1層12と第3層16を異なる原材料(第1原材料と第3原材料)とし、第1層12を押出成形したのちに、第1層12に第2層14、第3層16を別工程で成形することで、多層管10を得ることもできる。
【0066】
図1は、第1層12、第2層14及び第3層16の3層構成の多層管10の断面図、
図2は切断面の拡大写真である。図示の多層管10は、第1層12の内周側に第1スキン層13がない、或いは、第1スキン層13が非常に薄く形成された形態であり、第3層16についても外周側に第3スキン層17がない、或いは、第3スキン層17が非常に薄く形成された形態である。
図2を参照すると、中間層である第2層14は、斑ら模様であり目視でも確認できる程度に発泡していることがわかる。また、第1層12と第3層16は、微細な斑点状の模様があり、この斑点部分が発泡した箇所である。
【0067】
特に
図2(b)、(c)を参照すると、多層管10は、第1層12と第2層14が強固に接合され、第2層14と第3層16も強固に接合されていることがわかる。これは、各層が何れも塩化ビニル系樹脂に発泡剤を含む近似した材質であるため、好適に接合できたことによる。この結果、実施例に示すように、多層管10を切断機で切断したときに、第1層12及び/又は第3層16にクラックが発生することを防止できる。
【0068】
図4は、第1層12の内周側に第1スキン層13を含み、第3層16の外周側に第3スキン層17を含む多層管10の断面図である。成形された多層管10は、内周に第1スキン層13を含むことから、多層管10の内部を流通する流体の染み出しを防止でき、また、第1スキン層13、第3スキン層17によって多層管10の強度を高めることができる。
【0069】
<第2実施形態>
図10は、本発明の多層管10の一実施形態を示す断面図である。図に示すように、多層管10は、最も内周に設けられた筒状の第1層12と、その外周に形成された筒状の第2層14を含むものであり、第1実施形態の第3層16を省略した2層管である。第1実施形態と共通する構成、効果等については適宜説明を省略する。
【0070】
本発明の多層管10は、第1層12と第2層14を塩化ビニル系樹脂の発泡層から構成しており、第1層12の平均発泡倍率は、第2層14の平均発泡倍率よりも低いことを特徴としている。具体的には、第1層12の平均発泡倍率は、1.00倍を超えて、1.05倍以下、より好ましくは1.03倍以下、望ましくは1.025倍以下の微発泡とする。第2層14の平均発泡倍率は、第1層12の平均発泡倍率よりも高くし、1.50倍以上が好適であり、3.00倍以上が望ましく、4.00倍以上が特に望ましい。第2層14の平均発泡倍率は、10.0倍以下が好適であり、8.00倍以下が望ましく、6.00倍以下が特に望ましい。平均発泡倍率は、各層を切り出し、JIS K 7112:1999により密度を測定して、算出することができる。
【0071】
塩化ビニル系樹脂の種類、平均重合度、添加される発泡剤の種類、量は第1実施形態と同じである。また、添加される安定剤、顔料等も第1実施形態と同じである。
【0072】
[形状]
多層管10は、
図10に示すように円環状の形態とすることができる。第1層12と第2層14を合わせた多層管10の内径、外径、厚さは適宜選択することができる。たとえば、多層管10の内径は20mm以上が好ましく、65mm以下が好ましい。多層管10の外径は、32mm以上(呼び径20)が好ましく、89mm以下(呼び径65)が好ましい。また、多層管の厚さは、6.0mm以上が好ましく、11.0mm以下が好ましい。
【0073】
第1層12と第2層14の厚さは、第1層12は、第2層14の40%以上の厚さとすることが好ましく、望ましくは45%以上の厚さ、より望ましくは50%以上の厚さとする。平均発泡倍率の低い第1層12は、第2層14よりも剛性が高いため、第1層12の厚さを上記のように規定することで、多層管10に高い剛性を具備でき、変形の防止や内部を流通する流体との接触による傷付きの防止を達成できる。
【0074】
一方で、平均発泡倍率の高い第2層14を厚くすることで、多層管10の軽量化を図ることができる。また、第2層14は、平均発泡倍率が高いため、高い防音効果や断熱効果を具備できる。
【0075】
平均発泡倍率の高い第2層14は、気泡どうしが繋がった連続気泡率が50%以上であることが好適であり、70%以上が望ましい。また、その上限は、90%以下が好適であり、85%以下が望ましい。連続気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定することができる。逆に、独立気泡率は15%以下であることが好適であり、10%以下が望ましい。
【0076】
第1層12、第2層14の平均発泡倍率、連続気泡率は第1実施形態と同じである。
【0077】
また、第1層12の内周側には、第1実施形態で説明した第1スキン層13を内周側に含むことができる。
【0078】
第2層14の外周側には、平均発泡倍率が第2層14の平均発泡倍率よりも小さい第2スキン層15を内周側に含むことができる。第2スキン層15は、気泡が殆んどないか(発泡倍率1.00倍)、第2層14の平均発泡倍率よりも小さい層である。第2スキン層15は、第2層14の一部であり、多層管10を製造する際に、第2層14の外周が、サイジングスリーブ64と接触することで、発泡剤が十分に或いは全く発泡することなく成形された層である。すなわち、第2層14と第2スキン層15の原材料は同じである。第2スキン層15が、第2層14の外周側に形成されることで、第2層14の外周の強度、ひいては、多層管10の強度を高める役割をなす。
【0079】
第2スキン層15の厚さの下限は、第2層14の4.0%、望ましくは4.5%である。第2スキン層15の厚さの上限は、第2層14の35%、望ましくは30%である。第2スキン層15が上記よりも薄いと第2スキン層15の効果を十分に発揮できず、第2スキン層15が上記よりも厚いと、発泡層である第2層14が重量化してしまうためである。
【0080】
[多層管10の製造方法]
第1層12と第2層14からなる多層管10(2層管)は、第1実施形態の製造装置20において、金型38内で、
図11に示すように、第3層16へ分岐する溶融樹脂44のルートをなくした2層管押出用金型38aを用いて製造できる。2層管押出用金型38aと
図8の3層管押出用金型38との違いは、溶融樹脂44が第2層14の溶融樹脂46の内層側にのみ押し出される点にある。その他の構成及び製造要領は、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。なお、第1層12を押出成形したのちに、第1層12に第2層14を別工程で成形することで、多層管10を得ることもできる。
【0081】
図11は、多層管10の断面図である。図に示すように、成形された多層管10は、内周側に第1層12、外周側に第2層14が形成される。多層管10は、第1層12と第2層14が強固に接合されている。これは、両層が何れも塩化ビニル系樹脂に発泡剤を含む近似した材質であるため、好適に接合できたことによる。この結果、実施例に示すように、多層管10を切断機で切断したときに、第1層12にクラックが発生することを防止できる。
【0082】
図12は、第1層12の内周側に第1スキン層13を含み、第2層14の外周側に第2スキン層15を含む多層管10の断面図である。成形された多層管10は、内周に第1スキン層13を含むことから、多層管10の内部を流通する流体の染み出しを防止でき、また、第1スキン層13、第2スキン層15によって多層管10の強度を高めることができる。
【実施例0083】
下記要領にて多層管10を作製し、各種試験を行なった。作製した多層管10は、発明例1~9と比較例であり、発明例1~8と比較例は3層管、発明例9は2層管である。より詳細には、発明例1~6は、第1層12と第3層16の平均発泡倍率が同じ発明例、発明例7は、第1層12の平均発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも低い発明例、発明例8は、第1層の平均発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも高い発明例である。
【0084】
第1層12、第2層14、第3層16の原材料は下記のとおりである。なお、発明例9は第1層12と第2層14の2層構成であるため、第1層12と第2層14の原材料を使用した。
【0085】
第1層12:ポリ塩化ビニル(重合度1000、大洋塩ビ株式会社製、商品名:TH-1000)、発泡剤熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFシリーズ、アクリル系シェルタイプ)
第2層14:ポリ塩化ビニル(重合度700、大洋塩ビ株式会社製、商品名:TH-700)、発泡剤:熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFシリーズ、アクリル系シェルタイプ)
第3層16:第2層14と同じ
【0086】
第1層12(第3層16も同じ)のポリ塩化ビニル100質量部とPb系安定剤(水澤化学工業株式会社製、三塩基性硫酸鉛とステアリン酸鉛)計2.0質量部と、表1に示す質量部(phr)の発泡剤と、を混合して原材料とした。同じく、第2層14のポリ塩化ビニル100重量部と、Pb系安定剤(上記と同じ)1.6重量部と、発泡剤8.0重量部とを混合し、原材料を調整した。
【0087】
【0088】
一方、比較例は、原材料から発泡剤を除いて第1層12と第3層16の原材料とした。比較例の第2層14は、発明例と同じ発泡剤入りである。なお、説明のために、比較例の多層管及び第1層~第3層も発明例と同じ符号を付しているが、比較例の第1層12と第3層16は非発泡層である。
【0089】
これら原材料を、発明例1~6、比較例については
図7乃至
図9に示す製造装置20のホッパー30,32に供給し、呼び径30の多層管10の押出成形を行なって、供試例となる多層管10を得た。第1押出機34と第2押出機36における樹脂原材料の加熱溶融温度は180℃、金型38内の圧力は10~20MPaである。発明例7、8については、ヒーター51とヒーター49の温度に差をつけて、第1層12と第3層16の平均発泡倍率が異なるように調整した。また、発明例9は
図8の3層管押出用金型38に代えて、
図11に示す2層管押出用金型38aを用いた。
【0090】
供試例の各層の平均発泡倍率を表1に示している。表1を参照すると、発泡剤の添加量の違いから、発明例1~8は、第1層12と第3層16の平均発泡倍率が、第2層14の平均発泡倍率よりも低い。なお、発明例1~6は、第1層12と第3層16の平均発泡倍率は同じであるが、発明例7は、第1層12の平均発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも低く、発明例8は、第1層12の平均発泡倍率が第3層16の平均発泡倍率よりも高くなっている。また、発明例9は、第1層12の平均発泡倍率が、第2層14の平均発泡倍率よりも低くなっていることがわかる。一方、比較例は、第1層12と第3層16が何れも非発泡であることがわかる。
【0091】
また、供試例の多層管10の全体厚さと各層の厚さ(何れも平均)、第2層14に対する第1層12の厚さの比率(第1層比率)、第2層14に対する第3層16の厚さの比率(第3層比率)、また、第2層14に対する第1層12と第3層16の合計厚さの比率(第1層+第3層比率)を測定し、表1に示した。第1層比率は56%~85%、第3層比率は35~54%、第1層+第3層比率は90%~138%であった。
【0092】
これら供試例のうち、発明例1~3、6、9と比較例について、第1層12の引張降伏強さ、多層管10の耐圧性、第1層12の表面粗さRaを測定した。また、供試例の各多層管10を切断したときに切断面に発生するクラックの有無を目視により確認した。
【0093】
第1層12の引張降伏強さ(MPa)は、JIS K 6741:2016の引張試験方法のHIVPに準拠して測定した。第1層12の引張降伏強さのJIS規格値は、40MPa以上である。そこで、40MPa未満を評価「C」、40MPa以上42MPa未満を評価「B」、42MPa以上を評価「A」とした。結果を表2の「第1層引張降伏強さ(MPa)」に示す。
【0094】
【0095】
表2を参照すると、発明例、比較例は何れも評価「B」以上であり、上記JIS規格値を満たしていた。とくに、発明例6を除く発明例と比較例は評価「A」であった。第1層12の引張降伏強さは、第1層12の平均発泡倍率に大きく影響を受ける。すなわち、発泡倍率が大きくなるほど、防音性能、断熱性能、防露性能は向上するが、強度(引張降伏強さ)は低下するからである。発明例6は、平均発泡倍率が1.05倍を越えていたため、他の発明例等よりも引張降伏強さに劣る結果となった。従って、第1層12の平均発泡倍率は1.05倍以下とすることが好適であることがわかる。
【0096】
次に、各供試例の耐圧性を測定した。耐圧性は、JIS K 6739:2016に準拠して測定した。耐圧性は、多層管10から流体(結露水)が漏れ出すことがないように、長期耐圧性能が0.35MPa以上となることが好ましい。長期耐圧性については何れの供試例もこの規格値を満たしていた。一方、ポンプなどを用いて、流体の搬送距離を長く採りたい場合には、第1層12の厚さが製造上ばらついてしまうことを考慮して、多層管10の短期耐圧性能(破壊水圧性能)が8MPa以上となることが望まれる。そこで、8MPa未満を評価「C」、8MPa以上8.5MPa未満を評価「B」、8.5MPa以上を評価「A」とした。結果を表2の「短期耐圧性能(MPa)」に示す。
【0097】
表2を参照すると、発明例、比較例は何れも評価「B」以上であり、短期耐圧性能の基準値を満たしていた。発明例と比較例を比べると、発明例は何れも評価「A」であり、比較例の評価「B」よりもすぐれていた。
【0098】
短期耐圧性能(破壊水圧性能)に影響するのは、最も内周側に位置する第1層12である。このため、第1層12が微発泡層である発明例よりも、非発泡層の比較例の方が短期耐圧性能(破壊水圧性能)にすぐれることが予想される。しかしながら、上記のとおり、発明例の方が、短期耐圧性能(破壊水圧性能)にすぐれる結果となった。これは、第1層12を微発泡層として、発泡層である第2層14との材質を近似させたことで、第1層12と第2層14の接合性が高まった、すなわち、一体性が助長されたためと考えられる。従って、第2層14に発泡層を採用する場合、内周側となる第1層12も発泡層とすることが望ましいことがわかる。なお、これは、第2層14と第3層16にも当てはまる。
【0099】
第1層12の表面粗さRa(内面の算術平均粗さ)は、JIS B 0601:2013に準拠して測定した。第1層12は、流体と直接接触するため、流体の流れを阻害しないように表面粗さを小さくすることが望まれる。しかしながら、流水性能を高めると、生産性(コスト等)が低下する。そこで、泥の付着量評価を参考にして、表面粗さRaが2μm超を評価「C」、1.8μm超2μm以下を評価「B」、1.8μm以下を評価「A」とした。結果を表2の「第1層表面粗さRa(μm)」に示す。
【0100】
表2を参照すると、発明例1、2、9及び比較例は何れも評価「A」であり、発明例3は評価「B」、発明例6は評価「C」であった。発明例3、発明例6の評価が低い理由は、第1層12に含まれる発泡剤の量が多く、これら発泡剤が粒状に内面に露出したためと考えられる。従って、第1層12の平均発泡倍率は1.05倍以下が好ましく、1.025倍以下が望ましいことがわかる。
【0101】
供試例の各多層管10を切断したときに切断面に発生するクラックの有無を目視により確認した。第1層12又は第3層16にクラックの発生がない場合にはクラック「なし」、クラックが発生した場合にはクラック「あり」とした。結果を表2のクラックに示す。
【0102】
表2を参照すると、発明例は何れもクラックなし、比較例はクラックありであった。発明例3の切断面の写真を
図13に示す。また、比較例の切断面の写真を
図14に示す。発明例3はクラックがないが、比較例は第3層16にクラック90が発生していた。発明例について、切断面にクラックが発生しなかったのは、各層に発泡剤を含んだことにより、第1層12と第2層14、また、第2層14と第3層16の材質を近似させたことにより、層どうしを好適に接合できたことによる。一方、比較例は、第2層14は発泡剤を含むが、第1層12と第3層16は発泡剤を含まない材質の違いにより、層どうしの接合強度が低下し、第2層14に比べて管の厚さ全体で衝撃を受け止める力が弱くなり、硬い層(
図14では第3層16)に応力が集中してクラック90になったものと考えられる。
【0103】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0104】
たとえば、発泡剤を含む塩化ビニル系樹脂と、発泡剤を含まない塩化ビニル系樹脂を比較すると、発泡剤を含む塩化ビニル系樹脂により各層を形成することで色差を近づけることができ、切断面に層の存在が明確に見える違和感を低減できる。