(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099361
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】生産支援装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215972
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 浩平
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】深尾 和也
(72)【発明者】
【氏名】成河 卓也
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC04
5E353CC22
5E353DD02
5E353DD05
5E353EE23
5E353EE34
5E353EE53
5E353GG02
5E353HH01
5E353HH25
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353JJ52
5E353JJ54
5E353KK02
5E353KK11
5E353LL02
5E353LL07
5E353QQ01
5E353QQ23
(57)【要約】
【課題】部品装着ラインの段取り替え作業で移動させる部品保持具の移動許容範囲を変更可能に設定できるとともに、部品保持具の移動を許容するか否かを適正に判定することができる生産支援装置を提供する。
【解決手段】生産支援装置は、複数の装着モジュールを含んで構成された部品装着ラインにおいて、基板の基板種ごとに複数の装着モジュールの各々に割り当てられる部品の部品種と、装着モジュールとの対応関係を取得する取得部と、部品保持具を複数の装着モジュールの間で移動させるときの移動許容範囲を変更可能に設定する設定部と、続けて生産する基板の現基板種および次基板種における対応関係ならびに移動許容範囲に基づいて、現基板種から次基板種に切り替えるときの段取り替え作業で第一装着モジュールに装備されている第一部品保持具を第二装着モジュールに移動することを許容するか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板に装着する装着作業を行う複数の装着モジュールを含んで構成された部品装着ラインにおいて、前記基板の基板種ごとに複数の前記装着モジュールの各々に割り当てられる前記部品の部品種と、前記装着モジュールとの対応関係を取得する取得部と、
前記部品を保持して前記装着モジュールに装備される部品保持具を複数の前記装着モジュールの間で移動させるときの移動許容範囲を変更可能に設定する設定部と、
続けて生産する前記基板の現基板種および次基板種における前記対応関係、ならびに前記移動許容範囲に基づいて、前記現基板種から前記次基板種に切り替えるときの段取り替え作業で第一装着モジュールに装備されている第一部品保持具を第二装着モジュールに移動することを許容するか否かを判定する判定部と、
を備える生産支援装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記次基板種の前記基板の生産において前記第一部品保持具が前記第一装着モジュールで使用されずかつ前記第二装着モジュールで使用可能であり、さらに、前記第一装着モジュールから見て前記第二装着モジュールが前記移動許容範囲にある場合に、前記第一部品保持具を前記第二装着モジュールに移動することを許容する、請求項1に記載の生産支援装置。
【請求項3】
前記設定部は、複数の前記装着モジュールの各々をそれぞれ範囲とする狭域範囲、複数の前記装着モジュールを含む装着装置を範囲とする中域範囲、および前記部品装着ラインの全体を範囲とする広域範囲のいずれかを前記移動許容範囲に設定する、請求項1または2に記載の生産支援装置。
【請求項4】
前記設定部は、別の前記部品保持具の新規使用よりも使いかけの前記部品保持具の継続使用を優先する場合に、前記広域範囲または前記中域範囲を前記移動許容範囲に設定する、請求項3に記載の生産支援装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記段取り替え作業時の前記部品装着ラインの停止時間を短くして生産再開を優先する場合に、前記狭域範囲または前記中域範囲を前記移動許容範囲に設定する、請求項3に記載の生産支援装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記段取り替え作業時に複数の前記装着モジュールを一斉に停止させる場合に、前記狭域範囲または前記中域範囲を前記移動許容範囲に設定する、請求項3に記載の生産支援装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記段取り替え作業時に複数の前記装着モジュールを前記装着作業が終了した順序で停止させる場合に、前記広域範囲または前記中域範囲を前記移動許容範囲に設定する、請求項3に記載の生産支援装置。
【請求項8】
前記設定部は、前記次基板種の前記基板の生産に使用する新品の前記部品保持具の在庫が僅少または在庫がない場合に、前記広域範囲を前記移動許容範囲に設定する、請求項3に記載の生産支援装置。
【請求項9】
前記設定部は、複数の前記部品保持具の各々が保持する前記部品の部品種の相違に基づいて、複数の前記部品保持具の各々に相違する前記移動許容範囲を設定する、請求項3に記載の生産支援装置。
【請求項10】
前記設定部は、オペレータからの指示にしたがって前記移動許容範囲を設定する、請求項3に記載の生産支援装置。
【請求項11】
前記取得部が取得した前記対応関係および前記判定部の判定結果に基づいて、前記次基板種の前記基板を生産するために複数の前記装着モジュールの各々に割り当てる前記部品保持具を案内する案内部を備える、請求項1または2に記載の生産支援装置。
【請求項12】
前記案内部は、前記判定結果で前記第二装着モジュールへの移動が許容された前記第一部品保持具がセットされて前記第一装着モジュールに装備されている第一部品フィーダを前記第二装着モジュールに移動させるように案内する、請求項11に記載の生産支援装置。
【請求項13】
前記案内部は、複数の前記装着モジュールの間の前記部品保持具の移動によって対応できない前記部品の部品種を対象として、当該部品種の前記部品を保持した前記部品保持具を第二部品フィーダにセットして、前記第二部品フィーダを当該部品種が割り当てられた前記装着モジュールに装備するように案内する、請求項11に記載の生産支援装置。
【請求項14】
前記設定部は、前記段取り替え作業時の前記部品装着ラインの停止時間を短くして生産再開を優先する場合に、複数の前記装着モジュールの各々を範囲とする狭域範囲、または複数の前記装着モジュールを含む装着装置を範囲とする中域範囲を前記移動許容範囲に設定し、
前記判定部および前記案内部は、前記現基板種の前記基板の生産が終了する以前に動作する、
請求項13に記載の生産支援装置。
【請求項15】
複数の前記装着モジュールの各々は、前記部品保持具がそれぞれ装備される複数の部品供給部を有し、
前記設定部は、前記部品保持具を複数の前記装着モジュールの複数の前記部品供給部の間で移動させるときの前記移動許容範囲を変更可能に設定する、
請求項1または2に記載の生産支援装置。
【請求項16】
前記設定部は、複数の前記装着モジュールの相互間で配置が共通する複数の前記部品供給部からなる範囲を前記移動許容範囲に設定する、
請求項15に記載の生産支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品を基板に装着する装着作業を行う部品装着ラインに関する支援を行う生産支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を行って基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業機の代表例として、部品を基板に装着する装着作業を行う部品装着機がある。多くの部品装着機は、リールから引き出されたキャリアテープを送って部品を供給するテープフィーダを備える。部品装着機の構成を標準化して装着モジュールとし、複数の装着モジュールを並べて配置することにより部品装着ラインを構成して、生産効率を高めることができる。この種の部品装着機に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、複数のテープフィーダが搭載された台車が装備される部品装着機において、生産する基板を現基板種から次基板種に切り替えるときの段取り替え作業で台車を交換する場合に、使用済みの台車からテープフィーダを取り外して使用予定の台車に再搭載する使い回しの運用が開示されている。この他に、部品装着機に装備された台車上でテープフィーダを入れ替える内段取り作業、および部品装着機の機外でテープフィーダを予め台車に搭載する外段取り作業が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術例では、段取り替え作業で部品装着機の台車を交換する場合に、テープフィーダを再搭載して使い回すことで継続使用が可能となる。一方、複数の装着モジュールからなる部品装着ラインでは、複数の装着モジュールの間でテープフィーダを移動させて使い回すことが可能である。しかしながら、従来の運用では、特許文献1に例示されるように、一つの装着モジュールの中での使い回しが一般的とされていた。このため、段取り替え作業におけるテープフィーダの移動許容範囲を拡げる運用が必要とされる。
【0006】
ここで、特許文献1に開示されたテープフィーダは、部品を保持するキャリアテープが巻回されたリール(部品保持具)を内部にセットするリール一体型に構成されている。一方、リール別置型のテープフィーダは、別体のリール保持装置にリールがセットされており、リールのみが移動されて使い回される。したがって、テープフィーダの移動許容範囲を拡げることに代えて、部品保持具の移動許容範囲を拡げてもよい。ただし、部品保持具の移動許容範囲を拡げることは、その時々の部品保持具の在庫状況や部品装着ラインの稼働状況などに依存して一長一短があり、かつ実施上の制約条件がある。したがって、部品保持具の移動許容範囲を弾力的に変更して運用できることが好ましい。
【0007】
それゆえ、本明細書では、複数の装着モジュールを含んで構成された部品装着ラインの段取り替え作業で移動させる部品保持具の移動許容範囲を変更可能に設定できるとともに、部品保持具の移動を許容するか否かを適正に判定することができる生産支援装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、部品を基板に装着する装着作業を行う複数の装着モジュールを含んで構成された部品装着ラインにおいて、前記基板の基板種ごとに複数の前記装着モジュールの各々に割り当てられる前記部品の部品種と、前記装着モジュールとの対応関係を取得する取得部と、前記部品を保持して前記装着モジュールに装備される部品保持具を複数の前記装着モジュールの間で移動させるときの移動許容範囲を変更可能に設定する設定部と、続けて生産する前記基板の現基板種および次基板種における前記対応関係、ならびに前記移動許容範囲に基づいて、前記現基板種から前記次基板種に切り替えるときの段取り替え作業で第一装着モジュールに装備されている第一部品保持具を第二装着モジュールに移動することを許容するか否かを判定する判定部と、を備える生産支援装置を開示する。
【0009】
なお、本明細書では、出願当初の請求項9において「請求項3に記載の生産支援装置」を「請求項3~8のいずれか一項に記載の生産支援装置」に変更した技術的思想、出願当初の請求項10において「請求項3に記載の生産支援装置」を「請求項3~9のいずれか一項に記載の生産支援装置」に変更した技術的思想、出願当初の請求項11において「請求項1または2に記載の生産支援装置」を「請求項1~10のいずれか一項に記載の生産支援装置」に変更した技術的思想、出願当初の請求項13において「請求項11に記載の生産支援装置」を「請求項11または12に記載の生産支援装置」に変更した技術的思想、および出願当初の請求項15において「請求項1または2に記載の生産支援装置」を「請求項1~14のいずれか一項に記載の生産支援装置」に変更した技術的思想を開示している。
【発明の効果】
【0010】
開示した生産支援装置において、設定部は、部品保持具を複数の装着モジュールの間で移動させるときの移動許容範囲を変更可能に設定することができる。また、判定部は、取得部が取得した対応関係に基づいて現基板種から次基板種への段取り替え作業で第一装着モジュールに装備されている第一部品保持具を第二装着モジュールに移動できる可能性を判定することができる。さらに、判定部は、設定された移動許容範囲に基づいて第一部品保持具の移動を許容するか否かを適正に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の生産支援装置の適用対象となる部品装着ラインの構成例を示す斜視図である。
【
図2】二つの装着モジュールを含む装着装置の構成例を示す斜視図である。
【
図3】実施形態の生産支援装置を含む機能ブロック図であり、移動許容範囲の説明図を兼ねている。
【
図4】狭域範囲の移動許容範囲を図式的に説明する図である。
【
図5】中域範囲の移動許容範囲を図式的に説明する図である。
【
図6】広域範囲の移動許容範囲を図式的に説明する図である。
【
図7】生産支援装置の動作を説明する動作フローの図である。
【
図8】生産支援装置の動作によって案内される段取り替え作業の作業内容を、三種類の移動許容範囲ごとに説明する一覧表の図である。
【
図9】狭域範囲が移動許容範囲に設定された場合の案内部の案内表示例を示す図である。
【
図10】中域範囲が移動許容範囲に設定された場合の案内部の案内表示例を示す図である。
【
図11】広域範囲が移動許容範囲に設定された場合の案内部の案内表示例を示す図である。
【
図12】応用形態において、複数の部品供給部を有する装着モジュールからなる部品装着ラインを対象とする移動許容範囲の設定例を図式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.部品装着ライン1の構成例
まず、実施形態の生産支援装置8の適用対象となる部品装着ライン1の構成例について、
図1および
図2を参考にして説明する。部品装着ライン1は、四つの装着装置11が並べられて構成される。四つの装着装置11の各々は、共通ベース12の上側に二つの装着モジュール13が配置されて構成される。したがって、部品装着ライン1は、合計で八つの装着モジュール13が並べられて構成される。なお、部品装着ライン1は、上記以外の構成でもよく、例えば装着装置11が二つ、三つ、および五つ以上のいずれかでもよく、装着装置11の各々が三つ以上の装着モジュール13を含んでもよい。
【0013】
図1の左奥側から右手前側に向かう方向が基板を搬送するX軸方向であり、水平面内でX軸方向に直交する方向がY軸方向となる。部品装着ライン1の上流側に、図略のはんだ印刷機、および印刷検査機が並んで配置される。部品装着ライン1の下流側に、図略の基板外観検査機およびリフロー機が並んで配置される。これらの対基板作業機の種類、機能、および台数などは、適宜変形可能とされる。四つの装着装置11は、互いに同一の構成を有し、八つの装着モジュール13は、標準化および定型化されて互いに同一の形状を有する。
【0014】
ここでは、一つの装着モジュール13の構成を対象として、
図2を参考にして詳述する。図示されるように、装着モジュール13は、基板搬送部3、部品供給部4、部品移載部5、部品カメラ6、および図略の制御部などが基台2に組み付けられて構成される。基台2の上方には、安全性の確保および塵埃の侵入防止のために、開閉可能な安全カバー21が設けられる。
【0015】
基板搬送部3は、基台2の上面のY軸方向の中央付近に配置される。基板搬送部3は、第1搬送装置31および第2搬送装置32が並設された、いわゆるダブルコンベアタイプに形成されている。第1搬送装置31および第2搬送装置32の搬送路の略中央に、作業位置が設定される。作業位置の下側に、搬送された基板を基台2側から押し上げて位置決めするクランプ装置(符号省略)が設けられる。なお、基板搬送部3は、シングルコンベアタイプに形成されていてもよい。
【0016】
部品供給部4は、基台2のY軸方向の前側(
図2の左前側)に配置される。部品供給部4は、複数のリール一体型のテープフィーダ7がX軸方向に並ぶように装備されて構成される。テープフィーダ7は、フィーダ本体71と、フィーダ本体71の前部に形成されるリール保持部72と、フィーダ本体71の後部寄りの上面に設定される部品供給位置73とを有する。リール保持部72は、セットされたリール74を回転自在かつ交換可能に保持する。リール74は、複数のキャビティの各々に部品を保持したキャリアテープ(図示省略)が巻回されている。このキャリアテープが部品供給位置73まで引き出されて、部品が供給される。リール74は、部品を保持して装着モジュール13に装備される部品保持具の一形態である。また、テープフィーダ7は、部品保持具がセットされて装着モジュール13に装備される部品フィーダの一形態である。
【0017】
部品移載部5は、基台2の長手方向の後部から部品供給部4の上方にかけて配置される。部品移載部5は、X軸方向およびY軸方向に移動可能な、いわゆるXYロボットタイプに形成されている。部品移載部5は、ヘッド駆動機構51および装着ヘッド52などで構成される。ヘッド駆動機構51は、装着ヘッド52をX軸方向およびY軸方向に駆動する。装着ヘッド52の下部に、ロータリツール53が設けられる。ロータリツール53は、一つまたは複数の吸着ノズル54を回転可能かつ昇降可能に保持する。吸着ノズル54は、部品供給部4から部品を吸着して作業位置まで移動し、基板上の装着位置にその部品を装着する。装着ヘッド52は、第1搬送装置31の前側に設けられたノズルステーション55に移動して、吸着ノズル54を自動で交換する。
【0018】
部品カメラ6は、部品供給部4と第1搬送装置31との間の基台2上に配置されて、ノズルステーション55の隣に位置する。部品カメラ6は、部品移載部5の吸着ノズル54が吸着した部品を下方から撮像して、画像データを取得する。この画像データが画像処理されて、部品の良否が判定されるとともに、部品の吸着状態が認識される。画像処置の結果は、吸着ノズル54の装着動作に反映される。
【0019】
図略の制御部は、基板搬送部3、部品供給部4、部品移載部5、部品カメラ6、および操作表示部22に通信接続されている。制御部は、基板の基板種ごとに作成された作業データに基づいて、部品の装着作業を制御する。作業データは、基板および部品の種類や形状に関するデータ、使用する吸着ノズル54およびテープフィーダ7に関するデータ、ならびに部品の装着位置および装着順序に関するデータなどを含む。操作表示部22は、安全カバー21の前側の上部に配置される。操作表示部22は、オペレータと制御部の間で情報を授受する役割を果たす。
【0020】
部品装着ライン1で生産する基板を現基板種から次基板種に変更するときに、オペレータは、装着モジュール13の各々を停止して段取り替え作業を行う。オペレータは、段取り替え作業において、必要に応じてリール74を複数の装着モジュール13の間で移動させる。オペレータは、移動作業でリール74だけを移動させるのでなく、リール一体型のテープフィーダ7を移動元の装着モジュール13から取り外して、移動先の装着モジュール13に取り付ける(以降、移動作業と称する)。
【0021】
また、オペレータは、段取り替え作業において、必要に応じてリール74をテープフィーダ7にセットするリール段取り作業を行い、さらに、リール段取り作業が済んだテープフィーダ7を装着モジュール13に取り付ける装備作業を行う。リール段取り作業は、テープフィーダ7の使用準備を整える付帯作業を含み、例えばキャリアテープをリール74から引き出してテープ搬送路に装填する作業を含むものとする。以降では、リール段取り作業および装備作業を合わせて新設作業と称する。
【0022】
移動作業および新設作業には一長一短がある。詳述すると、移動作業では、移動元の装着モジュール13が停止した後でないとテープフィーダ7を取り外すことができない。さらに、テープフィーダ7の取り外しにはキャリアテープの切断や巻き戻しなどの付帯作業が伴うため、相当の作業時間が必要となる。このため、複数のテープフィーダ7の移動作業の作業時間の足し合わせにより、部品装着ライン1の停止時間が長引いて、次基板種の生産再開が遅延するおそれが生じる(短所)。一方、使いかけのリール74を継続して使用することができるので、新たに用意するリール74の数量を減少させることができる(長所)。
【0023】
また、新設作業では、部品装着ライン1で現基板種の基板を生産している時間帯に、部品装着ライン1から離れた外段取りエリアでリール段取り作業を行うことができる。これにより、移動作業でテープフィーダ7の取り外しに要する作業時間を省略可能として、部品装着ライン1の停止時間を短縮することができる(長所)。反面、新たに用意するリール74の数量が増加するとともに、一つの部品種に対して使いかけのリール74が多数となるケースが生じ得る(短所)。
【0024】
移動作業および新設作業のどちらが好ましいかは、リール74の在庫状況、次基板種の基板の生産の緊急度、および部品装着ライン1の停止手順などに依存して変化する。また、段取り替え作業におけるテープフィーダ7の移動許容範囲(詳細後述)を広く設定した場合には、移動作業を優先して新設作業を減らすことができる。逆に、テープフィーダ7の移動許容範囲を狭く設定した場合には、移動作業を減らして新設作業を優先することになる。移動許容範囲を変更可能とし、段取り替え作業時のテープフィーダ7の移動の可否を適正に判定して移動作業および新設作業を適正化し、さらには作業内容をオペレータに案内する目的で、実施形態の生産支援装置8が適用される。
【0025】
2.実施形態の生産支援装置8の機能構成
実施形態の生産支援装置8の説明に移る。
図3に示されるように、部品装着ライン1の八つの装着モジュール13の各々の制御部は、ライン管理装置14に通信接続される。ライン管理装置14は、コンピュータを用いて構成されており、八つの装着モジュール13の稼動状況を管理する。ライン管理装置14は、さらに、部品装着ライン1の上流側および下流側の対基板作業機に通信接続されており、これらの対基板作業機の稼動状況を管理する。ライン管理装置14は、上位の生産管理装置15に通信接続される。
【0026】
生産管理装置15は、コンピュータを用いて構成される。生産管理装置15は、メモリ16等を用いて、生産する基板(基板製品)の基板種、数量、生産順序、および生産時期などを管理する。生産管理装置15は、複数の基板種の各々に関して対基板作業機ごと(装着モジュール13ごとを含む)に作成された作業データをメモリ16に記憶している。生産管理装置15は、対基板作業機(装着モジュール13を含む)の各々に作業データを送信して、対基板作業を指示する。
【0027】
生産管理装置15は、入力部17および表示部18が設けられている。入力部17は、オペレータが入力する指令やデータなどを受け付ける。表示部18は、対基板作業機の稼働状況、オペレータが入力したデータ、およびオペレータに向けた各種案内などを表示する。生産管理装置15は、さらに、倉庫制御部19に通信接続される。倉庫制御部19は、器材倉庫1Aに保管される吸着ノズル54およびテープフィーダ7などの器具の種類および保管数量などを管理する。また、倉庫制御部19は、器材倉庫1Aに保管されるリール74などの部品保持具の部品種および在庫数量などを管理する。生産管理装置15は、倉庫制御部19に照会して器具の保管状況および部品保持具の在庫状況などを取得することができる。
【0028】
実施形態の生産支援装置8は、主にソフトウェアを用いて構成され、生産管理装置15の内部に設けられる。生産支援装置8は、四つの機能部、すなわち取得部81、設定部82、判定部83、および案内部84を備える。なお、生産支援装置8は、ライン管理装置14の内部に設けられてもよい。あるいは、生産支援装置8は、部品装着ライン1および倉庫制御部19に直接的にまたは間接的に通信接続された他のコンピュータ装置に設けられてもよい。
【0029】
取得部81は、部品装着ライン1において、基板の基板種ごとに複数の装着モジュール13の各々に割り当てられる部品の部品種と、装着モジュール13との対応関係を取得する。取得部81は、基板種の各々に関して装着モジュール13ごとに定められた作業データ(前記)から、この対応関係を取得することができる。装着モジュール13に部品種が割り当てられても、使用するリール74の個体および使用するテープフィーダ7の個体は特定されない。
【0030】
設定部82は、リール74を複数の装着モジュール13の間で移動させるときの移動許容範囲を変更可能に設定する。前記したように移動作業ではテープフィーダ7の全体を移動させるので、「移動許容範囲」は、リール74がセットされたテープフィーダ7の移動許容範囲を指し示すことになる。設定部82は、狭域範囲NR、中域範囲MR、および広域範囲WRのいずれかを移動許容範囲に設定する。
図3に示されるように、狭域範囲NRは、複数の装着モジュール13の各々をそれぞれ範囲とする。中域範囲MRは、二つの装着モジュール13を含む装着装置11を範囲とする。広域範囲WRは、部品装着ライン1の全体を範囲とする。設定部82は、以下に示す要領にしたがい、その時々の状況に応じて移動許容範囲を変更することができる。
【0031】
設定部82は、別のリール74の新規使用よりも使いかけのリール74の継続使用を優先する場合に、広域範囲WRまたは中域範囲MRを移動許容範囲に設定し、好ましくは広域範囲WRを移動許容範囲に設定する。これにより、移動作業による使いかけのリール74の継続使用の機会を増加させて、新設作業で新たに用意するリール74の数量を減少させることができる。一方、設定部82は、段取り替え作業時の部品装着ライン1の停止時間を短くして生産再開を優先する場合に、狭域範囲NRまたは中域範囲MRを移動許容範囲に設定し、好ましくは狭域範囲NRを移動許容範囲に設定する。これにより、新設作業の機会を増加させるとともに移動作業を減少させ、部品装着ライン1の停止時間を短縮して次基板種の生産再開を早めることができる。オペレータは、入力部17を用いて前記のどちらを優先するかを設定部82に指示することができる。
【0032】
また、設定部82は、段取り替え作業時に部品装着ライン1の複数の装着モジュール13を一斉に停止させる場合に、狭域範囲NRまたは中域範囲MRを移動許容範囲に設定し、好ましくは狭域範囲NRを移動許容範囲に設定する。一方、設定部82は、段取り替え作業時に複数の装着モジュール13を装着作業が終了した順序で停止させる場合に、広域範囲WRまたは中域範囲MRを移動許容範囲に設定し、好ましくは広域範囲WRを移動許容範囲に設定する。
【0033】
つまり、複数の装着モジュール13を一斉に停止させる場合には、全部の装着モジュール13でテープフィーダ7の取り外しの開始時期が制約されるので、移動許容範囲を狭く設定して、移動させるテープフィーダ7の数量を減少させることが有利となる。一方、複数の装着モジュール13を装着作業が終了した順序で停止させる場合には、停止した装着モジュール13から順次テープフィーダ7の取り外しを開始することができるので、移動許容範囲を広く設定して、移動させるテープフィーダ7の数量を増加させることが有利となる。設定部82は、予め定められた部品装着ライン1の停止手順を取得して、自律的に移動許容範囲を決定することができる。
【0034】
また、設定部82は、次基板種の基板の生産に使用する新品のリール74の在庫が僅少または在庫がない場合に、広域範囲WRを移動許容範囲に設定する。設定部82は、倉庫制御部19に照会して新品のリール74の在庫状況を取得し、または、オペレータが入力部17に入力した新品のリール74の在庫状況を取得する。これによれば、移動許容範囲を広く設定して、テープフィーダ7の使い回しの機会を増加させることができ、在庫の不足を補うことができる。したがって、次基板種の基板の生産の遅滞を無くし、または在庫不足の影響を小さくすることができる。
【0035】
また、設定部82は、複数のリール74の各々が保持する部品の部品種の相違に基づいて、複数のリール74の各々に相違する移動許容範囲を設定してもよい。例えば、汎用の抵抗部品やコンデンサ部品を保持するリール74に関しては、広域範囲WRを移動許容範囲に設定して使い回しを推奨し、特殊部品を保持するリール74に関しては、狭域範囲NRを移動許容範囲に設定して、使い回しを抑制することができる。なお、設定部82は、オペレータからの指示にしたがって移動許容範囲を設定してもよいし、自律的に移動許容範囲を設定してもよいし、オペレータと共同で移動許容範囲を設定してもよい。
【0036】
判定部83は、続けて生産する基板を現基板種から次基板種に切り替えるときの段取り替え作業に関する判定を行う。判定部83は、取得部81により取得された対応関係、および設定部82が設定した移動許容範囲を受け取り、これらに基づいて判定を行う。すなわち、判定部83は、第一の装着モジュール13に装備されている第一のリール74およびテープフィーダ7を第二の装着モジュール13に移動することを許容するか否かを判定する。なお、装着モジュール13に付した「第一」および「第二」は、相違する二つの装着モジュール13を明示するための用語であり、特定の二つの装着モジュール13を限定する用語ではない。
【0037】
具体的には、判定部83は、次基板種の基板の生産において第一のリール74およびテープフィーダ7が第一の装着モジュール13で使用されずかつ第二の装着モジュール13で使用可能である使い回し可能条件を判定する。使い回し可能条件が成立している場合、判定部83は、さらに、第一の装着モジュール13から見て第二の装着モジュール13が移動許容範囲にある移動許容条件を判定する。移動許容条件が成立している場合、判定部83は、第一のリール74およびテープフィーダ7を第二の装着モジュール13に移動することを許容する。
【0038】
案内部84は、取得部81が取得した対応関係および判定部83の判定結果に基づいて、次基板種の基板を生産するために複数の装着モジュール13の各々に割り当てるリール74を案内する。前記したように、生産管理装置15が記憶する作業データに基づいて複数の装着モジュール13の各々に部品種が割り当てられるが、リール74は特定されない。案内部84は、割り当てるリール74を特定して案内することにより、オペレータの段取り替え作業を支援する。案内部84は、表示部18を用いた案内を行うことができ、他にオペレータが携行する携帯端末への無線通信などによる案内を行うことができる。
【0039】
案内部84は、移動作業の作業内容を案内する。換言すると、案内部84は、判定部83の判定結果で第二の装着モジュール13への移動が許容された第一のリール74およびテープフィーダ7を第二の装着モジュール13に移動させるように案内する。これによれば、案内部84は、第二の装着モジュール13に割り当てる第一のリール74を特定して案内したことになる。
【0040】
ここで、複数の装着モジュール13の間でリール74およびテープフィーダ7を移動させる移動作業を行っても、次基板種に必要とされる全ての部品種を準備できるケースは稀である。そこで、案内部84は、リール74およびテープフィーダ7の移動によって対応できない部品の部品種を対象として、新設作業の作業内容を案内する。換言すると、案内部84は、当該部品種の部品を保持したリール74を第二のテープフィーダ7にセットするリール段取り作業、および、リール段取り作業が済んだ第二のテープフィーダ7を当該部品種が割り当てられた装着モジュール13に取り付けて装備する装備作業を案内する。
【0041】
取得部81は、現基板種の基板の生産が開始される以前に動作してもよい。また、取得部81は、三つ以上の基板種を対象として前記した対応関係を取得してもよい。この場合、連続して生産する二つの基板種を現基板種および次基板種として取り扱うことができる。設定部82は、任意の時期に移動許容範囲を変更設定することができる。判定部83および案内部84は、現基板種の基板の生産が終了する以前に動作することが好ましい。特に、段取り替え作業時の部品装着ライン1の停止時間を短くして生産再開を優先する場合、判定部83および案内部84は、現基板種の基板の生産が終了する以前に動作することが必須となる。これによれば、現基板種の基板の生産が終了する以前に、リール段取り作業を開始することができるので、部品装着ライン1の停止時間を短縮する効果が顕著となる。
【0042】
3.移動許容範囲の図式的な説明
次に、移動許容範囲について、
図4~
図6を参考にして図式的に説明する。以降では、簡略化された部品装着ライン1Zを例示して、説明を簡明化する。部品装着ライン1Zは、二つの装着装置11に相当する第1装着装置D1および第2装着装置D2からなる。第1装着装置D1は、二つの装着モジュール13に相当する第11装着モジュールM11および第12装着モジュールM12を含む。第2装着装置D2は、第21装着モジュールM21および第22装着モジュールM22を含む。第11装着モジュールM11、第12装着モジュールM12、第21装着モジュールM21、および第22装着モジュールM22の各々は、部品供給部4に三つのテープフィーダ7が装備されて構成されるものとする。
【0043】
図4~
図6において、テープフィーダ7の許容される移動が白抜きの矢印で示され、許容されない移動が破線の矢印および×印で示されている。
図4は、狭域範囲NRが移動許容範囲に設定された場合を示している。この場合、第11装着モジュールM11に装備されたテープフィーダ7は、第11装着モジュールM11の内部での移動が許容される。また、このテープフィーダ7は、第1装着装置D1内の第12装着モジュールM12への移動が許容されず、他の第2装着装置D2の第21装着モジュールM21および第22装着モジュールM22への移動が許容されない。
【0044】
図5は、中域範囲MRが移動許容範囲に設定された場合を示している。この場合、第11装着モジュールM11に装備されたテープフィーダ7は、第11装着モジュールM11の内部での移動、および第1装着装置D1内の第12装着モジュールM12への移動が許容される。また、このテープフィーダ7は、他の第2装着装置D2の第21装着モジュールM21および第22装着モジュールM22への移動が許容されない。
【0045】
図6は、広域範囲WRが移動許容範囲に設定された場合を示している。この場合、第11装着モジュールM11に装備されたテープフィーダ7は、第11装着モジュールM11の内部での移動、第1装着装置D1内の第12装着モジュールM12への移動が許容される。さらに、このテープフィーダ7は、他の第2装着装置D2の第21装着モジュールM21および第22装着モジュールM22への移動が許容される。
【0046】
4.生産支援装置8の動作
次に、生産支援装置8の動作について、
図7~
図11を参考にして説明する。
図7に示される動作フローのステップS1からステップS6は、現基板種の基板の生産中、またはそれ以前に実施される。
図8に示される一覧表は、部品装着ライン1Zの複数の装着モジュール13に割り当てられた部品種と装着モジュール13との対応関係の事例、および、この事例に基づく段取り替え作業の内容を表している。
図9~
図11に示される案内表示例は、案内部が表示部18に表示して案内する段取り替え作業の内容を表している。図中において、リール74を特定する符号にR1~R6を用い、テープフィーダ7を特定する符号にF1~F9を用いる。また、図中の実線の矢印は、テープフィーダ7の取り外しおよび取り付けを含む移動作業、ならびにテープフィーダ7の取り付けを意味する装備作業を示している。図中の白抜きの矢印は、リール74をテープフィーダ7にセットするリール段取り作業を示している。
【0047】
図7のステップS1で、設定部82は、狭域範囲NR、中域範囲MR、および広域範囲WRのいずれかを移動許容範囲に設定する。設定部82は、この後のステップS5までの任意の時期に移動許容範囲を変更することができる。次のステップS2で、取得部81は、現基板種および次基板種において複数の装着モジュール13の各々に割り当てられる部品の部品種と、装着モジュール13との対応関係を取得する。取得部81は、例えば、
図8の「部品種の割り当て」の欄に示される基板種A(現部品種に相当)および基板種B(次基板種に相当)における対応関係を取得する。
【0048】
図8に示される対応関係の事例について詳細に説明する。基板種Aにおいて、第1装着装置D1の第11装着モジュールM11に第1部品種P1、第2部品種P2、および第3部品種P3が割り当てられている。また、第12装着モジュールM12に第3部品種P3、第4部品種P4、および第5部品種P5が割り当てられている。さらに、第2装着装置D2の第21装着モジュールM21に第6部品種P6、第7部品種P7、および第8部品種P8が割り当てられ、第22装着モジュールM22に第9部品種P9および第10部品種P10が割り当てられている。第3部品種P3は、基板種Aの基板一枚当たりの装着点数が他の部品種と比較して多いので、第11装着モジュールM11および第12装着モジュールM12(二箇所)に割り当てられている。また、第22装着モジュールM22では、一つのテープフィーダ7が休止、または未装備とされる。
【0049】
次に、基板種Bにおいて、第1装着装置D1の第11装着モジュールM11に第1部品種P1、第2部品種P2、および第11部品種P11が割り当てられ、第12装着モジュールM12に第2部品種P2および二つの第3部品種P3が割り当てられている。さらに、第2装着装置D2の第21装着モジュールM21に第5部品種P5、第6部品種P6、および第9部品種P9が割り当てられ、第22装着モジュールM22に第12部品種P12および第10部品種P10が割り当てられている。第2部品種P2は、基板種Bの基板一枚当たりの装着点数が他の部品種と比較して多いので、第11装着モジュールM11および第12装着モジュールM12(二箇所)に割り当てられている。また、第3部品種P3は、基板種Bの基板一枚当たりの装着点数が他の部品種と比較して多いので、第12装着モジュールM12の二箇所に割り当てられている。さらに、第22装着モジュールM22では、一つのテープフィーダ7が休止、または未装備とされる。
【0050】
次のステップS3で、判定部83は、基板種A(現基板種)から基板種B(次基板種)に切り替えるときの段取り替え作業に関する判定を行う。判定部83は、まず、基板種Aにおいて使用される部品種の使い回し可能条件を判定する。判定部83は、基板種Aにおいて第11装着モジュールM11で使用される第1部品種P1が基板種Bでも使用されることから、使い回し不能と判定する。つまり、判定部83は、同じ装着モジュール13で継続して使用される部品種を使い回し不能と判定する。同様の判定理由により、判定部83は、第11装着モジュールM11で使用される第2部品種P2、第12装着モジュールM12で使用される第3部品種P3、第21装着モジュールM21で使用される第6部品種P6、および第22装着モジュールM22で使用される第10部品種P10を使い回し不能と判定する。
【0051】
また、判定部83は、基板種Aにおいて第12装着モジュールM12で使用される第4部品種P4が基板種Bで使用されないことから、使い回し不能と判定する。同様の判定理由により、判定部83は、第21装着モジュールM21で使用される第7部品種P7および第8部品種P8を使い回し不能と判定する。
【0052】
さらに、判定部83は、基板種Aにおいて第11装着モジュールM11で使用される第3部品種P3が、基板種Bにおいて第11装着モジュールM11で使用されず、かつ第12装着モジュールM12で二つ目の第3部品種P3として使用可能であるので、使い回し可能と判定する。同様に、判定部83は、基板種Aにおいて第12装着モジュールM12で使用される第5部品種P5が、基板種Bにおいて第12装着モジュールM12で使用されず、かつ第21装着モジュールM21で使用可能であるので、使い回し可能と判定する。さらに同様に、判定部83は、基板種Aにおいて第22装着モジュールM22で使用される第9部品種P9が、基板種Bにおいて第22装着モジュールM22で使用されず、かつ第21装着モジュールM21で使用可能であるので、使い回し可能と判定する。
【0053】
次のステップS4で、判定部83は、使い回し可能条件が成立している第3部品種P3、第5部品種P5、および第9部品種P9を対象として移動許容条件を判定する。判定部83は、ステップS1で設定されている移動許容範囲に基づいて判定を行う。判定部83の判定結果は、
図8の「段取り替え作業の内容」の「移動」の欄に示されている。狭域範囲NRが移動許容範囲に設定されている場合、判定部83は、複数の装着モジュール13の間のリール74の移動を許容しない。つまり、判定部83は、第3部品種P3、第5部品種P5、および第9部品種P9の移動を許容しない。
【0054】
また、中域範囲MRが移動許容範囲に設定されている場合、判定部83は、装着装置11内の二つの装着モジュール13の間のリール74の移動を許容し、二つの装着装置11の間のリール74の移動を許容しない。つまり、判定部83は、第3部品種P3および第9部品種P9の移動を許容し、第5部品種P5の移動を許容しない。さらに、広域範囲WRが移動許容範囲に設定されている場合、判定部83は、部品装着ライン(1、1Z)の全体でリール74の移動を許容する。つまり、判定部83は、第3部品種P3、第5部品種P5、および第9部品種P9の移動を許容する。
【0055】
次のステップS5で、設定部82は、既に移動許容範囲を変更したか、およびその時点の状況に応じて移動許容範囲を変更するか否かを判定する。設定部82が移動許容範囲を変更した場合、動作フローがステップS4に戻され、変更された移動許容範囲に基づいて移動許容条件の判定が再度実行される。設定部82が移動許容範囲を変更しない場合、動作フローがステップS6に進められる。ステップS6からステップS8については、まず、狭域範囲NRが移動許容範囲に設定されている場合を対象として説明する。
【0056】
ステップS6で、案内部84は、基板種B(次基板種)の基板を生産するために複数の装着モジュール13の各々に割り当てるリール74を案内する。案内部84は、狭域範囲NRの設定では許容されない移動作業を案内せず、
図9の「新設作業」の欄の作業内容を案内する。ただし、ステップS6で、案内部84は、新設作業のうちのリール段取り作業を案内すればよい。案内部84は、同じ装着モジュール13で継続して使用される第1部品種P1、第2部品種P2、第12装着モジュールM12の第3部品種P3、第6部品種P6、および第10部品種P10を除いた六つの部品種のリール段取り作業(
図9に白抜きの矢印で示される)を案内する。詳細には、案内部84は、次の(1)~(6)を案内する。
【0057】
(1)第11部品種P11の部品を保持した第1リールR1を第1テープフィーダF1にセットするリール段取り作業。
(2)第2部品種P2の部品を保持した第2リールR2を第2テープフィーダF2にセットするリール段取り作業。
(3)第3部品種P3の部品を保持した第3リールR3を第3テープフィーダF3にセットするリール段取り作業。
(4)第5部品種P5の部品を保持した第4リールR4を第4テープフィーダF4にセットするリール段取り作業。
(5)第9部品種P9の部品を保持した第5リールR5を第5テープフィーダF5にセットするリール段取り作業。
(6)第12部品種P12の部品を保持した第6リールR6を第6テープフィーダF6にセットするリール段取り作業。
【0058】
案内部84は、リール74の在庫状況およびテープフィーダ7の保管状況を倉庫制御部19に照会して、第1リールR1~第6リールR6および第1テープフィーダF1~第6テープフィーダF6を特定し、オペレータに案内することができる。オペレータは、案内にしたがって、第1リールR1~第6リールR6および第1テープフィーダF1~第6テープフィーダF6を器材倉庫1Aから出庫する。さらに、オペレータは、案内を参照することにより、リール段取り作業を効率的にかつ間違いなく実施することができる。なお、案内部84は、特定した第1リールR1~第6リールR6および第1テープフィーダF1~第6テープフィーダF6を出庫する指令を倉庫制御部19に送信して自動出庫を行わせ、オペレータの出庫作業を支援してもよい。
【0059】
次のステップS7で、現基板種の基板の生産が終了する。この時点で、リール段取り作業が終了していれば直ぐに装備作業が可能となる。次のステップS8で、案内部84は、六つの装備作業(
図9に実線の矢印で示される)を案内する。詳細には、案内部84は、次の(7)~(12)を案内する。
【0060】
(7)第1テープフィーダF1を第11装着モジュールM11に取り付ける装備作業。
(8)第2テープフィーダF2を第12装着モジュールM12に取り付ける装備作業。
(9)第3テープフィーダF3を第12装着モジュールM12に取り付ける装備作業。
(10)第4テープフィーダF4を第21装着モジュールM21に取り付ける装備作業。
(11)第5テープフィーダF5を第21装着モジュールM21に取り付ける装備作業。
(12)第6テープフィーダF6を第22装着モジュールM22に取り付ける装備作業。
オペレータは、案内を参照することにより、装備作業を効率的にかつ間違いなく実施することができる。狭域範囲NRの設定では、移動作業を行わないことにより、段取り替え作業時の部品装着ライン1Zの停止時間を短縮することができる。
【0061】
次に、中域範囲MRが移動許容範囲に設定されている場合のステップS6で、案内部84は、限られた部品種に関するリール段取り作業を案内する。具体的には、案内部84は、同じ装着モジュール13で継続して使用される五つの部品種を除き、中域範囲MRの設定で移動が許容される第3部品種P3および第9部品種P9を除き、最終的に第11部品種P11、第2部品種P2、第5部品種P5、および第12部品種P12を対象とする。つまり、案内部84は、
図10の「新設作業」の欄に示されるように、前記した(1)、(2)、(4)、および(6)のリール段取り作業を案内し、(3)および(5)を案内しない。
【0062】
また、中域範囲MRが移動許容範囲に設定されている場合のステップS8で、案内部84は、新設作業のうちの装備作業を案内する。詳細には、案内部84は、前記した(7)、(8)、(10)、および(12)の装備作業を案内し、(9)および(11)を案内しない。
【0063】
さらに、案内部84は、
図10の「移動作業」の欄の作業内容を案内する。詳細には、案内部84は、次の(13)~(14)を案内する。
(13)第3部品種P3の部品を供給する第7テープフィーダF7を第11装着モジュールM11から取り外して、第12装着モジュールM12に取り付ける移動作業。
(14)第9部品種P9の部品を供給する第8テープフィーダF8を第22装着モジュールM22から取り外して、第21装着モジュールM21に取り付ける移動作業。
これにより、狭域範囲NRの設定では新たに六つのリール74を用意する必要があったが、中域範囲MRの設定では新たに四つのリール74を用意すればよいことになる。つまり、新たに用意するリール74を二つ減少させることができる。
【0064】
次に、広域範囲WRが移動許容範囲に設定されている場合のステップS6で、案内部84は、限られた部品種に関するリール段取り作業を案内する。具体的には、案内部84は、同じ装着モジュール13で継続して使用される五つの部品種を除き、広域範囲WRの設定で移動が許容される第3部品種P3、第5部品種P5、および第9部品種P9を除き、最終的に第11部品種P11、第2部品種P2、および第12部品種P12を対象とする。つまり、案内部84は、
図11の「新設作業」の欄に示されるように、前記した(1)、(2)、および(6)のリール段取り作業を案内し、(3)、(4)、および(5)を案内しない。
【0065】
また、広域範囲WRが移動許容範囲に設定されている場合のステップS8で、案内部84は、新設作業のうちの装備作業を案内する。詳細には、案内部84は、前記した(7)、(8)、および(12)の装備作業を案内し、(9)、(10)、および(11)を案内しない。
【0066】
さらに、案内部84は、
図11の「移動作業」の欄の作業内容を案内する。詳細には、案内部84は、前記した(13)および(14)に加えて、次の(15)を案内する。
(15)第5部品種P5の部品を供給する第9テープフィーダF9を第1装着装置D1の第12装着モジュールM12から取り外して、第2装着装置D2の第21装着モジュールM21に取り付ける移動作業。
これにより、狭域範囲NRの設定では新たに六つのリール74を用意する必要があったが、広域範囲WRの設定では新たに三つのリール74を用意すればよいことになる。つまり、新たに用意するリール74を三つ減少させることができる。
【0067】
以上説明したように、判定部83は、移動許容範囲の設定に基づいて、リール74およびテープフィーダ7の移動による使い回しを許容するか否かを適正に判定することができる。また、案内部84は、移動許容範囲の設定に応じて変化する段取り替え作業(移動作業および新設作業)の作業内容をオペレータに向けて案内する。したがって、オペレータは、案内を参照することにより、移動作業および新設作業を効率的にかつ間違いなく実施することができる。
【0068】
実施形態の生産支援装置8において、設定部82は、リール74を複数の装着モジュール13の間で移動させるときの移動許容範囲を変更可能に設定することができる。また、判定部83は、取得部81が取得した対応関係に基づいて現基板種から次基板種への段取り替え作業で第一の装着モジュール13に装備されている第一のリール74およびテープフィーダ7を第二の装着モジュール13に移動できる可能性を判定することができる。さらに、判定部83は、設定された移動許容範囲に基づいて第一のリール74およびテープフィーダ7の移動を許容するか否かを適正に判定することができる。
【0069】
5.応用形態
次に、装着モジュールの形態が相違する応用形態について、
図12を参考にして説明する。図示されるように、応用形態の部品装着ライン1Yは、第3装着装置D3および第4装着装置D4からなる。第3装着装置D3は、第31装着モジュールM31および第32装着モジュールM32を含む。第4装着装置D4は、第41装着モジュールM41および第42装着モジュールM42を含む。第31装着モジュールM31、第32装着モジュールM32、第41装着モジュールM41、および第42装着モジュールM42の各々は、前側部品供給部4Fおよび後側部品供給部4Rを備える。前側部品供給部4Fおよび後側部品供給部4Rは、実施形態で説明した部品供給部4と同様の構成を有する。
【0070】
応用形態において、生産支援装置8の設定部82は、リール74およびテープフィーダ7を複数の装着モジュールの間で移動させるだけでなく、前側部品供給部4Fと後側部品供給部4Rの間で移動させることも考慮して、移動許容範囲を変更可能に設定する。設定部82は、例えば、複数の装着モジュールの相互間で共通して前側に配置される複数の前側部品供給部4Fからなる範囲を移動許容範囲に設定することができる。また、設定部82は、共通して後側に配置される複数の後側部品供給部4Rからなる範囲を移動許容範囲に設定することができる。さらに、設定部82は、ライン長さ方向において実施形態と同様に、狭域範囲NR、中域範囲MR、および広域範囲WRのいずれかを移動許容範囲に設定することができる。
【0071】
図12に示される設定例において、複数の前側部品供給部4Fからなり、かつライン長さ方向において広域範囲WRの移動許容範囲が設定されている。この場合、第31装着モジュールM31の前側部品供給部4Fに装備されたテープフィーダ7は、部品装着ライン1Y内の他の装着モジュールの前側部品供給部4Fへの移動が許容される。一方、前側部品供給部4Fに装備されたテープフィーダ7は、同一モジュール内の後側部品供給部4Rへの移動が許容されない。
【0072】
応用形態によれば、リール74およびテープフィーダ7を部品装着ライン1Yの前側部品供給部4Fと後側部品供給部4Rの間で移動させる前後方向の使い回しが行われない。これによれば、段取り替え作業や次基板種での部品補給作業の作業効率が低下しない。仮に、前後方向の使い回しを行う場合を想定すると、オペレータは、段取り替え作業や部品補給作業の際に部品装着ライン1Yの前側と後側の間を遠回りして移動する必要があり、移動距離が増加して作業効率が低下する。他に、部品装着ライン1Yの前側および後側を別々のオペレータが担当する場合があり、前後方向に使い回すリール74およびテープフィーダ7の引継ぎ業務が発生して非効率かつ煩雑となる。
【0073】
6.実施形態の応用および変形
なお、実施形態では、リール一体型のテープフィーダ7を複数の装着モジュール13の間で移動させるが、リール別置型のテープフィーダではリール74のみを移動させることが一般的である。したがって、生産支援装置8は、リール別置型のテープフィーダを対象とする場合に、リール74のみの移動に関する移動許容範囲の設定、移動可否の判定、ならびに移動作業の案内などを行うことができる。また、実施形態では、キャリアテープが巻回されたリールが部品保持具の一形態とされ、テープフィーダ7が部品フィーダの一形態とされている。部品保持具の別形態には、二次元格子状に収容区画が形成されたトレーや、角筒形状のスティックなどがあり、それぞれ別形態の部品フィーダに交換可能にセットされる。生産支援装置8は、別形態の部品保持具および部品フィーダに応用することができる。
【0074】
さらに、部品装着ライン(1、1Z、1Y)では、シミュレーション技術の適用などにより、装着モジュール13の各々における複数のテープフィーダ7の配列位置が最適化される場合が多い。この場合、案内部84は、作業対象となる装着モジュール13を案内するだけでなく、テープフィーダ7の配列位置を併せて案内することができる。また、モジュール型でない複数の部品装着機が並ぶ部品装着ラインでは、移動許容範囲として、複数の部品装着機の各々を範囲とする狭域範囲、および部品装着ラインの全体を範囲とする広域範囲を用い、中域範囲を省略することができる。実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1:部品装着ライン 11:装着装置 12:共通ベース 13:装着モジュール 14:ライン管理装置 15:生産管理装置 19:倉庫制御部 1A:器材倉庫 4:部品供給部 7:テープフィーダ 74:リール 8:生産支援装置 81:取得部 82:設定部 83:判定部 84:案内部 1Z:部品装着ライン D1:第1装着装置 D2:第2装着装置 M11:第11装着モジュール M12:第12装着モジュール M21:第21装着モジュール M22:第22装着モジュール P1~P12:第1部品種~第12部品種 F1~F9:第1テープフィーダ~第9テープフィーダ R1~R6:第1リール~第6リール 1Y:部品装着ライン D3:第3装着装置 D4:第4装着装置 M31:第31装着モジュール M32:第32装着モジュール M41:第41装着モジュール M42:第42装着モジュール 4F:前側部品供給部 4R:後側部品供給部 NR:狭域範囲 MR:中域範囲 WR:広域範囲