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特開2025-9937パッキン押圧部材、遠心ポンプ用軸封装置およびこれを備える遠心ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009937
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】パッキン押圧部材、遠心ポンプ用軸封装置およびこれを備える遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/62 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F04D29/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100333
(22)【出願日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2023106431
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 真一
(72)【発明者】
【氏名】枝元 貴博
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓弥
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA91F
3H130DA02Z
3H130DC03X
3H130EA04F
3H130ED02F
(57)【要約】
【課題】グランドパッキンを一様に押圧可能で且つグランドパッキンの交換を容易としてメンテナンス性に優れたパッキン押圧部材、遠心ポンプ用軸封装置およびこれを備える遠心ポンプを提供する。
【解決手段】パッキン押圧部材40は、二分割された上部分割体41と下部分割体42とを有し左右に締結部46が設けられている。各分割体41,42は、基部43から突設されてグランドパッキンを軸方向後方から押圧する押圧円筒部44と、押圧円筒部44の径方向に離隔して突設されたリブ45とを有する。押圧円筒部44とリブ45との間の部分がスタフィングボックスの後端と軸方向で干渉しないくりぬき部51になっている。基部43の上下中央はリブが無い開口部52,53とされ、上部開口部52が締め込み量を目視で確認可能な視認窓となり、下部開口部53が漏液を排出する排出窓として機能する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ポンプのインペラの後部に設けられる軸封装置に用いられ、該軸封装置のスタフィングボックス内のグランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材であって、
上下若しくは斜めに二分割された一方の分割体と他方の分割体とを組み合わせてなる二分割構造を有し、
前記スタフィングボックスの後端面に対向するベース面を有する基部と、
該基部のベース面から前記スタフィングボックス内に向けて軸方向に円筒状に張り出して前記グランドパッキンを軸方向後方から押圧する押圧円筒部と、
前記基部に前記押圧円筒部よりも径方向外側の左右の前記スタフィングボックスの後端面に螺合可能な位置に一対のボルトを締結可能に軸方向に沿って貫通形成された一対のボルト挿通孔と、
前記基部に前記一対のボルト挿通孔よりも径方向外側であって前記スタフィングボックスの外周面に干渉しない位置に前記スタフィングボックス側に向けて軸方向に張り出すリブと、
前記リブに設けられて前記一方の分割体と前記他方の分割体とを左右若しくは斜めの位置で相互に締結する締結部と、
が前記一方の分割体と他方の分割体とを相互に組み合わせた状態で構成されることを特徴とするパッキン押圧部材。
【請求項2】
遠心ポンプのインペラの後部に設けられる軸封装置に用いられ、該軸封装置のスタフィングボックス内のグランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材であって、
二分割された一方の分割体と他方の分割体とを組み合わせてなる二分割構造を有し、
前記スタフィングボックスの後端面に対向するベース面を有する基部と、
該基部のベース面から前記スタフィングボックス内に向けて軸方向に円筒状に張り出して前記グランドパッキンを軸方向後方から押圧する押圧円筒部と、
前記基部に前記押圧円筒部よりも径方向外側の左右の前記スタフィングボックスの後端面に螺合可能な位置に一対のボルトを締結可能に軸方向に沿って貫通形成された一対のボルト挿通孔と、
が前記一方の分割体と他方の分割体とを相互に径方向又は軸方向から組み合わせた状態で構成されることを特徴とするパッキン押圧部材。
【請求項3】
前記一方の分割体と他方の分割体は、それぞれ、互いに嵌合する規制部と篏合部とを備え、
前記規制部と前記篏合部とを嵌合させた状態では、前記一方の分割体と前記他方の分割体との軸方向への移動が規制される請求項2に記載のパッキン押圧部材。
【請求項4】
前記一方の分割体と前記他方の分割体とは、同一の形状である請求項1または2に記載のパッキン押圧部材。
【請求項5】
前記一方の分割体と前記他方の分割体とは、同一の樹脂製である請求項1または2に記載のパッキン押圧部材。
【請求項6】
前記基部の上下は、前記リブが無い開口部になっている請求項1に記載のパッキン押圧部材。
【請求項7】
前記基部に前記一対のボルト挿通孔よりも径方向外側であって前記スタフィングボックスの外周面に干渉しない位置に前記スタフィングボックス側に向けて軸方向に張り出すリブが設けられ、
前記基部の周囲には、周方向に離隔して、前記リブが無い複数の開口部が形成されている請求項2に記載のパッキン押圧部材。
【請求項8】
遠心ポンプに用いられて圧送液を僅かに漏らしつつ潤滑する軸封装置であって、
前記遠心ポンプのインペラの後部に設けられるスタフィングボックスと、該スタフィングボックスの後端面に装着されて前記スタフィングボックス内に収容されるグランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材と、を備え、
前記パッキン押圧部材として、請求項1~3のいずれか一項に記載のパッキン押圧部材を有することを特徴とする遠心ポンプ用軸封装置。
【請求項9】
請求項8に記載の遠心ポンプ用軸封装置を備えることを特徴とする遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ポンプに係り、特に、遠心ポンプの軸封装置において、グランドパッキンを軸方向後方から押圧するグランドパッキンの押圧構造に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプは、ケーシングと、ケーシング内に突設する駆動軸の先端に支持されたインペラと、を備える。インペラの後部には、仕様によって、グランドパッキンを用いた軸封装置が設けられる(例えば特許文献1参照)。
この種の軸封装置は、ケーシングの後部に駆動軸と同軸に装着されるスタフィングボックスと、スタフィングボックス内に収容されるグランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材と、を備える。
【0003】
グランドパッキンの組み込み時に、パッキン押圧部材によりグランドパッキンを軸方向後方から押圧する。これにより、グランドパッキンによる駆動軸の表面を押し付ける力が発生し、その接触圧力でケーシング内部からケーシング後部に漏出する流体をシールする。
但し、この種の軸封装置は、グランドパッキンの冷却と潤滑のために、グランドパッキンの押圧量を調整して流体を僅かに漏らしつつ潤滑する必要がある。そのため、パッキン押圧部材でグランドパッキンの押圧量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-140875号公報(図2、段落0004-0005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のパッキン押圧部材としては、一体型や、U字型(馬蹄形)が用いられている。しかし、グランドパッキンの交換作業時に、パッキン押圧部材が一体型であると、駆動軸を分解しなければパッキン押圧部材を外すことができない。そのため、グランドパッキンの引き抜き作業が行い難いという問題がある。
【0006】
一方、図11に示すようなU字型のパッキン押圧部材であれば、駆動軸を分解せずにパッキン押圧部材を外すことができるものの、単なるU字型のパッキン押圧部材であると、U字型の凸部に限って軸方向に押圧するため、グランドパッキンを一様に(周方向の360°均等に)押圧できないという問題がある。そのため、流体の漏らし量を安定させる上で未だ解決すべき課題が残される。
【0007】
これに対し、図10に示すように、パッキン押圧部材を、駆動軸を囲繞する部分で上下に二分割する分割構造とすれば、駆動軸を分解せずにパッキン押圧部材を取り外し可能となり、また、押圧部も360°均等に配置されるので、グランドパッキンを一様に押圧可能となる。そのため、グランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧構造として好ましい。
しかしながら、パッキン押圧部材を分割構造とした場合、分割体相互を固定する締結部を要する。そのため、パッキン押圧部材の軸方向での占有空間が多くなれば、限られたメンテナンス空間が相対的に狭くなるという問題がある。よって、分割構造とした場合であっても、必要なメンテナンス作業のスペースをより広く確保すべくコンパクト化する上で未だ改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、グランドパッキンを一様に押圧可能で且つグランドパッキンの交換を容易としてメンテナンス性に優れたパッキン押圧部材、遠心ポンプ用軸封装置およびこれを備える遠心ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るパッキン押圧部材は、遠心ポンプのインペラの後部に設けられる軸封装置に用いられ、該軸封装置のスタフィングボックス内のグランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材であって、上下若しくは斜めに二分割された一方の分割体と他方の分割体とを組み合わせてなる二分割構造を有し、前記スタフィングボックスの後端面に対向するベース面を有する基部と、該基部のベース面から前記スタフィングボックス内に向けて軸方向に円筒状に張り出して前記グランドパッキンを軸方向後方から押圧する押圧円筒部と、前記基部に前記押圧円筒部よりも径方向外側の左右の前記スタフィングボックスの後端面に螺合可能な位置に一対のボルトを締結可能に軸方向に沿って貫通形成された一対のボルト挿通孔と、前記基部に前記一対のボルト挿通孔よりも径方向外側であって前記スタフィングボックスの外周面に干渉しない位置に前記スタフィングボックス側に向けて軸方向に張り出すリブと、前記リブに設けられて前記一方の分割体と前記他方の分割体とを左右若しくは斜めの位置で相互に締結する締結部と、が前記一方の分割体と他方の分割体とを相互に組み合わせた状態で構成される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の一態様に係るパッキン押圧部材は、遠心ポンプのインペラの後部に設けられる軸封装置に用いられ、該軸封装置のスタフィングボックス内のグランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材であって、二分割された一方の分割体と他方の分割体とを組み合わせてなる二分割構造を有し、前記スタフィングボックスの後端面に対向するベース面を有する基部と、該基部のベース面から前記スタフィングボックス内に向けて軸方向に円筒状に張り出して前記グランドパッキンを軸方向後方から押圧する押圧円筒部と、前記基部に前記押圧円筒部よりも径方向外側の左右の前記スタフィングボックスの後端面に螺合可能な位置に一対のボルトを締結可能に軸方向に沿って貫通形成された一対のボルト挿通孔と、が前記一方の分割体と他方の分割体とを相互に径方向又は軸方向から組み合わせた状態で構成される。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る遠心ポンプ用軸封装置は、遠心ポンプに用いられて圧送液を僅かに漏らしつつ潤滑する軸封装置であって、前記遠心ポンプのインペラの後部に設けられるスタフィングボックスと、該スタフィングボックスの後端面に装着されて前記スタフィングボックス内に収容されるグランドパッキンを軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材と、を備え、前記パッキン押圧部材として、本発明のいずれか一の態様に係るパッキン押圧部材を有する。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る遠心ポンプは、本発明の一態様に係るポンプ用軸封装置を備える。
【0013】
本発明の一態様に係るパッキン押圧部材であれば、二分割された分割部を組み合わせてなる二分割構造としているので、グランドパッキンの交換作業時に、駆動軸を分解せずにパッキン押圧部材を外すことができるため、メンテナンス性に優れる。
また、押圧円筒部は、スタフィングボックス内に向けて軸方向に円筒状に張り出してグランドパッキンを軸方向後方から押圧可能なので、押圧部も周方向360°均等に配置されるため、グランドパッキンを一様に押圧できる。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明によれば、グランドパッキンを一様に押圧可能で且つグランドパッキンの交換を容易としてメンテナンス性に優れたパッキン押圧部材、遠心ポンプ用軸封装置およびこれを備える遠心ポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一態様に係る遠心ポンプの一実施形態の説明図であり、同図では駆動軸の軸線に沿った断面を示している。
図2】本発明の一態様に係るパッキン押圧部材の第一実施形態の六面図((a)~(f))である。
図3】本発明の一態様に係るパッキン押圧部材の第二実施形態の六面図((a)~(f))である。
図4】本発明の一態様に係るパッキン押圧部材の第三実施形態の六面図((a)~(f))である。
図5】本発明の一態様に係るパッキン押圧部材の第四実施形態を構成する一方の分割体の説明図((a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図)である。
図6】本発明の一態様に係るパッキン押圧部材の第四実施形態を構成する他方の分割体の説明図((a)は正面図、(b)は側面図(c)は背面図、(d)は平面図)である。
図7】本発明の一態様に係るパッキン押圧部材の第五実施形態を構成する分割体の説明図((b)は正面図、(a)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図)である。
図8】第五実施形態のパッキン押圧部材を構成する二つの分割体相互を組み合わせる過程の説明図であり、同図(a)は組み合わせ前の状態を示し、(b)は組み合わせ後の状態を示している。
図9】第五実施形態のパッキン押圧部材を軸封装置に組み付ける過程を説明する図であり、同図(a)は二つの分割体相互を径方向から対向させた状態を示し、(b)は二つの分割体相互を径方向へ移動させて組み合わせた状態を示し、(c)は組み合わせた状態の二つの分割体を軸方向前方に移動させてスタフィングボックスの後端面に螺合可能な位置に移動させた状態を示している。
図10】従来の分割型のパッキン押圧部材の説明図((a)は正面図、(b)は側面図)である。
図11】従来のU字型のパッキン押圧部材の説明図((a)は正面図、(b)は側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の遠心ポンプ1は、フレーム10と、フレーム10の前部の端面に装着されたケーシング5と、を備える。本実施形態の遠心ポンプ1は、ケーシング5内には、駆動軸2の先端に片持ち支持されたインペラ3が突設されるとともに、インペラ3の後方にエキスペラ4が設けられている。
本実施形態のインペラ3は、自身の前面に複数枚の羽根3aが設けられるとともに、背面に複数枚の裏羽根3bが設けられている。ケーシング5は、前面が軸方向に沿って前方に張り出す吸込側5inとされ、上部中央が吐出側5outとされている。
【0018】
駆動軸2は、基端側がケーシング5の後方を貫通してフレーム10内に延びている。フレーム10内には、軸方向前後に離隔した二つの軸受61,62を有する軸支部60が設けられ、この軸支部60によって駆動軸2の基端側が水平に且つ回転自在に支持されている。軸受61の前側はシール部20によってシールされている。駆動軸2の後端部には、例えば駆動プーリが同軸に装着され、不図示のモータの出力が不図示の駆動ベルトを介して伝達可能に接続される。
【0019】
本実施形態の遠心ポンプは、ケーシング5の内周面の接液部を覆うように、耐摩耗に優れたゴム製のライナ70が装着される。本実施形態のライナ70は、駆動軸2と直交する面に沿って略中央で縦に二分割可能に構成され、軸方向前側のフロントライナ71と、軸方向後側のバックライナ72と、を含んで構成される。
【0020】
また、本実施形態のケーシング5は、駆動軸2と直交する面に沿って略中央で縦に二分割された分割型とされ、フロントライナ71を覆うフロントケーシング6と、バックライナ72を覆うバックケーシング7と、を含んで構成される。
フロントケーシング6は、フロントライナ71とバックライナ72とをバックケーシング7の前面との間に挟持するようにしてボルト・ナット90で相互に固定される。これにより、ライナ70の内部にインペラ3の収容空間が画成される。
【0021】
そして、エキスペラ4の後方には、グランドパッキン方式の軸封装置30が設けられる。
軸封装置30は、グランドパッキン32を内部に収容するスタフィングボックス31と、スタフィングボックス31の後端面に付設されて内部のグランドパッキン32を軸方向後方から押圧するパッキン押圧部材40と、を備える。特に、本実施形態のパッキン押圧部材40は、上下(若しくは斜め)に二分割された上部分割体(一方の分割体)41と下部分割体(他方の分割体)42とを組み合わせてなる二分割構造を有する。
【0022】
詳しくは、図2に六面図を示すように、第一実施形態のパッキン押圧部材40は、上部分割体41と下部分割体42とを相互に径方向から組み合わせた状態で構成される。上部分割体41および下部分割体42は、相互に径方向から組み合わせた協働状態で構成される、基部43と、押圧円筒部44と、をそれぞれ有する。本実施形態の上部分割体41と下部分割体42とは、同一の形状である。また、上部分割体41と下部分割体42とは、同一の樹脂製である。
【0023】
各分割体41、42の基部43は、スタフィングボックス31の後端面に対向するベース面43bを有する。また、各分割体41、42の押圧円筒部44は、基部43のベース面43bからスタフィングボックス31内に向けて軸方向に円筒状に張り出してグランドパッキン32を軸方向後方から全周に亘って押圧可能になっている。
【0024】
各分割体41、42の基部43には、相互の合わせ面48の左右の位置に、軸方向に沿って貫通形成された一対のボルト挿通孔47が設けられている。一対のボルト挿通孔47は、押圧円筒部44よりも径方向外側の左右であってスタフィングボックス31の後端面31rに螺合可能な位置に一対のボルト・ナット54を締結可能に形成されている。なお、基部43には、パッキン押圧部材40(分割体41,42)のうち、ボルト54で押圧する箇所となる押圧部43gを形成している。
また、各分割体41、42の基部43の縁部には、スタフィングボックス31側に向けて軸方向に張り出すリブ45が設けられている。基部43の上下は、リブ45が無い開口部52、53になっている。リブ45は、基部43に対して一対のボルト挿通孔47よりも径方向外側であってスタフィングボックス31の外周面に干渉しない位置に設けられている。
リブ45の外面よりも左右側方には、締結部46が設けられている。締結部46は、左右側方に張り出して、上部分割体41と下部分割体42とを左右(若しくは斜め)の位置で相互に締結可能になっている。
【0025】
次に、本実施形態のパッキン押圧部材40、遠心ポンプ用軸封装置30およびこれを備える遠心ポンプ1の作用効果について説明する。
本実施形態のパッキン押圧部材40では、上述したように、上下(若しくは斜め)に二分割された上部分割体41と下部分割体42とを径方向から組み合わせてなる二分割構造としているので、グランドパッキン32の交換作業時に、駆動軸2を分解せずにパッキン押圧部材40を外すことができる。
また、押圧円筒部44は、スタフィングボックス31内に向けて軸方向に円筒状に張り出してグランドパッキン32を軸方向後方から全周に亘って押圧可能なので、押圧面44mも周方向360°均等に配置されるため、グランドパッキン32を一様に押圧できる。
【0026】
また、グランドパッキン32は液を僅かに漏らしつつ潤滑するので、パッキン押圧部材40の下側にはねじを配置したくないところ、本実施形態のパッキン押圧部材40によれば、上下(若しくは斜め)に二分割された二分割構造とし、締結部46により上部分割体41と下部分割体42とを左右(若しくは斜め)の位置で相互に締結するので、パッキン押圧部材40の下側に締結用ねじが配置されず漏出した液による締結用ねじの汚染が防止される。
【0027】
そして、本実施形態のパッキン押圧部材40によれば、上下に二分割された二分割構造の左右(若しくは斜め)の位置での締結作業となるため、工具が左右若しくは斜めの位置で挿抜され、目視での締結作業が容易となりメンテナンス性に優れる。
【0028】
特に、本実施形態のパッキン押圧部材40によれば、基部43のベース面43bには、スタフィングボックス31の外周面に干渉しない位置にリブ45が設けられ、押圧円筒部44とリブ45との間に空隙が形成されることで、くりぬき部51が画成されて、軸方向にてスタフィングボックス31の後端面31rと重なる位置まで配置可能となる。
【0029】
これにより、従来の二分割された構成と比較して、くりぬき部51があることで軸方向の寸法をコンパクトにできる。そのため、作業スペース(メンテナンス空間)をより広く確保でき、ボルト・ナット54のねじを締めこむ際に作業スペースに工具が入り易くなるため、接液部の分解・組立性が一層向上する[発明1、発明8、9]。
【0030】
ここで、本実施形態のパッキン押圧部材40において、上部分割体41と下部分割体42とが同一の形状であれば、パッキン押圧部材40の構成部品としては同じ分割体を二個用いるだけで済み、一仕様の部品を在庫すれば良いので低コスト化する上で好適である[発明4]。
【0031】
また、本実施形態のパッキン押圧部材40において、上部分割体41と下部分割体42とが、同一の樹脂製であれば、耐食性が向上し、特に、3Dプリンタで製造可能とする上で好適である[発明5]。
【0032】
また、本実施形態のパッキン押圧部材40において、ベース面43bの上下にはリブ45が無いようにすれば、接液部の分解・組立性をより向上させる上で好適である。また、下側開口部53を漏出する流体のドレン路としても好適である[発明6]。
【0033】
つまり、本実施形態のパッキン押圧部材40では、基部43の周囲には、押圧円筒部44の径方向に離隔してリブ45を入れて補強しているところ、ベース面43bの上下に限ってリブ45を設けない開口部52,53にすれば、上側開口部52が「確認窓」として機能し、グランドパッキン32の潰し代の調整作業や、押し込み程度の確認作業が押圧円筒部44の目視によってより容易になる。そして、下側開口部53が漏出液の「ドレン窓(穴)」として機能する。
【0034】
上述のように、本実施形態のパッキン押圧部材40によれば、グランドパッキン32を一様に押圧可能で且つグランドパッキン32の交換を容易としてメンテナンス性に優れたパッキン押圧部材40、遠心ポンプ用軸封装置30およびこれを備える遠心ポンプ1を提供できる。
なお、本発明に係るパッキン押圧部材、遠心ポンプ用軸封装置およびこれを備える遠心ポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0035】
例えば、上記第一実施形態では、合わせ面48を中心軸に水平な面に沿って設定した例を示したが、これに限定されず、第二実施形態を図3に示すように、合わせ面48を複数の面の組み合わせから構成してもよいし、また、第三実施形態を図4に示すように、合わせ面48を中心軸に対して斜めの面に沿って設定してもよい。
【0036】
また、例えば、上記実施形態では、締結部46を左右側方に張り出して設けた例を示したが、これに限らず、例えば、上部分割体41及び下部分割体42を締結可能であれば、締結部46を張り出し構造としない他の適当な位置に形成できる。
【0037】
但し、締結部46を上記実施形態のような張り出し構造とすることにより、工具が取り回し易く、また、視認性が良くなり、作業性が向上する。さらに、締結部46を張り出し構造としない場合に、例えば、上部分割体41及び下部分割体42のリブ45を外側に移動させた構造とすれば、パッキン押圧部材40自体が大型化することにもなる。よって、締結部46を張り出し構造とすることによって、結果的にパッキン押圧部材40自体を小型化でき、上部分割体41及び下部分割体42による二分割構造とも相俟って、遠心ポンプ1に組付ける際の作業性の向上に寄与するといえる。
【0038】
また、締結部46を張り出し構造としない場合に、駆動軸2が大径になると、締結部46は、駆動軸2の径以上の距離で二分割構造を挟む位置で抑える必要があるため、締結作業時のパッキン押圧部材40の保持が行い難くなる。一方、締結部46を張り出し構造とすれば、駆動軸2の径によらずに締結部46を張り出し位置で保持できるため、二分割構造の上部分割体41及び下部分割体42の保持を行い易くなる。
【0039】
また、グランドパッキン32は、冷却と潤滑のために、スタフィングボックス31の内部から大気側に向かって漏水させつつ運用するところ、そのための漏水部は、貫通穴50とスタフィングボックス31との嵌合面である押圧円筒部44となる。
よって、締結部46を張り出し構造としない場合には、締結部46の締結ボルトの位置が漏水部に接近する。そのため、締結部46の締結ボルトに漏水した液が掛かると腐食の原因となるおそれがある。これに対し、締結部46を張り出し構造とすることにより、漏水部から適当な離隔距離を確保して腐食リスクを軽減できる。
【0040】
また、上述した、第一実施形態から第三実施形態では、いずれの例も、上部分割体41と下部分割体42とを相互に径方向からに限って組み合わせた状態でパッキン押圧部材40が構成される例を示したが、これに限定されず、二つの分割体41,42相互を、径方向又は軸方向の組み合わせによってパッキン押圧部材40を構成できる。
【0041】
具体的な例として、パッキン押圧部材の第四実施形態を図5および図6に示す。第四実施形態は、二つの分割体41,42相互が、径方向から又は軸方向から組み合わされて一のパッキン押圧部材40を構成する例である。
【0042】
図5に示すように、第四実施形態では、一方の分割体41には、押圧円筒部44の一部が下方に開口する略U字状をなす凸円弧部44aから形成される。他方、図6に示すように、第四実施形態では、他方の分割体42には、押圧円筒部44の残りの構成部分が上方に開口する略円弧状をなす凸円弧部44bによって形成される。
【0043】
図5および図6に示すように、基部43に対応する部分は、互いに径方向から嵌め合わされたときに、軸方向にも嵌合可能なように、一方の分割体41には、基部43に対し軸方向で後退した位置に軸方向後ろ向きである面となる段部43cが形成されている(図5(b)参照)。これに対し、他方の分割体42には、基部43に対し軸方向で後退した位置に軸方向前向きである面となる段部43dが形成され(図6(b)参照)、これにより、段部43cと段部43dとは合わせ面となり、径方向から又は軸方向から組み合わされて一のパッキン押圧部材40を構成可能になっている。
【0044】
第四実施形態のパッキン押圧部材40であれば、一方の分割体41と他方の分割体42とを径方向から又は軸方向から組み合わせて円筒状の押圧円筒部44を構成できる。そのため、第四実施形態のパッキン押圧部材40であっても、径方向又は軸方向から組み合わせてなる二分割構造としているので、グランドパッキン32の交換作業時に、駆動軸2を分解せずにパッキン押圧部材40を外すことができる。また、グランドパッキン32を軸方向後方から全周に亘って押圧できる[発明2]。
【0045】
さらに、二つの分割体41,42相互を、径方向の組み合わせによってパッキン押圧部材40を構成した例として、パッキン押圧部材の第五実施形態を図7図9に示す。第五実施形態は、二つの分割体41,42相互が、径方向から組み合わされて一のパッキン押圧部材40を構成する例である。また、第五実施形態は、二つの分割体41,42が同一形状を有する例である。
【0046】
詳しくは、図7に示すように、第五実施形態の分割体41(42)は、押圧円筒部44の二分の一を構成して略U字状に開口する凸円弧部44cを有する。凸円弧部44cの基部43が周方向に張り出しており、左右にボルト挿通孔47が軸方向に貫通形成されている。基部43の周囲には、周方向に離隔して、リブ45a,45b,45cが形成されている。すなわち、基部43の周囲には、周方向に離隔して、リブ45a,45b,45cが無い複数の開口部(外周側開口部55)が形成されている。これにより、接液部の分解・組立性をより向上させる上で好適である。また、外周側開口部55を漏出する流体のドレン路としても好適である[発明7]。
ここで、第五実施形態の分割体41(42)は、相互を径方向から組み合わせ可能なように、前面当接部43e、後面当接部43fおよび規制部43mが基部43の前後および周方向に形成されている。
これに加え、第五実施形態の分割体41(42)は、押圧部43gと、篏合部43hが形成されている。
押圧部43gは、パッキン押圧部材40(分割体41,42)のうち、ボルト54で押圧する箇所を形成している。
篏合部43hは、押圧部43gの先端箇所に形成されており、規制部43mと篏合する。
【0047】
上記構成をもつ第五実施形態の分割体41は、図8(a)に示すように、同一の分割体41を二つ用い、一方の分割体41に対して周方向に180回転させた姿勢を他方の分割体42(41)として組み合わせる。
【0048】
相互を組み合わせる際は、同図(a)の状態から、軸直方向の同一面上で相互を径方向から対向させた状態で、相互に径方向へ移動させることで規制部43mに篏合部43hを嵌合させて組み合わせる。
これにより、同図(b)に示すように、パッキン押圧部材40として、基部43のベース面からスタフィングボックス内に向けて軸方向に円筒状に張り出してグランドパッキンを軸方向後方から押圧する押圧円筒部44が構成される。同時に、基部43に押圧円筒部44よりも径方向外側の左右のスタフィングボックスの後端面に螺合可能な位置に一対のボルトを締結可能に軸方向に沿って貫通形成された一対のボルト挿通孔47が構成される。
さらに、規制部43mと篏合部43hとを嵌合させた状態では、一方の分割体41と他方の分割体42との、軸方向への移動が規制される。
【0049】
第五実施形態のパッキン押圧部材40であれば、図9(a)に示すように、軸封装置30に対し、一方の分割体41と、同一形状で180回転させた他方の分割体42とを、軸直方向の同一面上で相互を径方向から対向させる。
次いで、同図(b)に示すように、規制部43mに篏合部43hが嵌合するように径方向へ移動させて組み合わせることができる。次いで、同図(c)に示すように、組み合わせた状態のパッキン押圧部材40を軸方向前方に移動させて、ボルト・ナット54で固定し、グランドパッキン32を軸方向後方から全周に亘って押圧できる。
【0050】
このように、第五実施形態のパッキン押圧部材40であっても、径方向からの組み合わせでなる二分割構造としているので、グランドパッキン32の交換作業時に、駆動軸2を分解せずにパッキン押圧部材40を外すことができる。また、グランドパッキン32を軸方向後方から全周に亘って押圧できる[発明3]。
【符号の説明】
【0051】
1 遠心ポンプ
2 駆動軸
3 インペラ
3a 羽根
3b 裏羽根
4 エキスペラ
5 ケーシング
5in 吸込側
5out 吐出側
6 フロントケーシング
7 バックケーシング
10 フレーム
20 シール部
30 軸封装置
31 スタフィングボックス
32 グランドパッキン
40 パッキン押圧部材
41 上部分割体(一方の分割体)
42 下部分割体(他方の分割体)
43 基部
43b ベース面
43e 前面当接部
43f 後面当接部
43g 押圧部
43h 篏合部
43m 規制部
44 押圧円筒部
44m 押圧面
45 リブ
46 締結部
47 ボルト挿通孔
48 合わせ面
50 貫通穴
51 「くりぬき部」
52 上側開口部「確認窓」
53 下側開口部「ドレン窓(穴)」
54 ボルト・ナット
55 外周側開口部
60 軸支部
61,62 軸受
70 ライナ
71 フロントライナ
72 バックライナ
90 ボルト・ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11