(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099393
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】工作機械、ワークの加工方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B23B 3/16 20060101AFI20250626BHJP
B23B 15/00 20060101ALI20250626BHJP
B23B 23/00 20060101ALI20250626BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20250626BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
B23B3/16 A
B23B15/00 N
B23B23/00 Z
B23B1/00 N
B23B19/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216028
(22)【出願日】2023-12-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 龍彦
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045AA10
3C045BA03
3C045BA13
3C045BA23
3C045BA33
3C045EA01
3C045FA03
3C045FB01
3C045FE16
(57)【要約】
【課題】第1部分と、第2部分と、第1部分および第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物に対して、連結部の切断加工を円滑に行なうことが可能な工作機械、ワークの加工方法および制御プログラム、を提供する。
【解決手段】工作機械は、ワークを保持可能なホルダ36を有する刃物台31と、工具主軸41と、工作機械を制御する制御装置とを備える。制御装置は、ワークを加工することによって、第1部分160と、第2部分170と、第1部分160および第2部分170を連結する連結部180とを含む中間加工物W’を得るように、工具主軸41を制御し、ホルダ36により第1部分160を保持するように、刃物台31を制御し、ホルダ36により第1部分160を保持しながら連結部180を切断するように、工具主軸41を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
ワークを保持可能なホルダを有する刃物台と、
工具主軸と、
前記工作機械を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
ワークを加工することによって、第1部分と、第2部分と、前記第1部分および前記第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物を得るように、前記工具主軸を制御し、
前記ホルダにより前記第1部分を保持するように、前記刃物台を制御し、
前記ホルダにより前記第1部分を保持しながら前記連結部を切断するように、前記工具主軸を制御する、工作機械。
【請求項2】
ワーク主軸をさらに備え、
前記制御装置は、前記ワーク主軸によりワークを保持するように、前記ワーク主軸を制御し、
前記連結部の切断時、前記第2部分は、前記ワーク主軸により保持されている、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1部分は、製品部に対応し、
前記第2部分は、不要部に対応する、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
ワークを加工することによって、第1部分と、第2部分と、前記第1部分および前記第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物を得るステップと、
刃物台に装着されたホルダにより前記第1部分を保持するステップと、
前記ホルダにより前記第1部分を保持しながら、前記連結部を切断するステップとを備える、ワークの加工方法。
【請求項5】
刃物台を備える工作機械の制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、前記工作機械に、
ワークを加工することによって、第1部分と、第2部分と、前記第1部分および前記第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物を得るステップと、
前記刃物台に装着されたホルダにより前記第1部分を保持するステップと、
前記ホルダにより前記第1部分を保持しながら、前記連結部を切断するステップとを実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械、ワークの加工方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許第7033240号明細書(特許文献1)には、工具主軸と、ワークを保持する第1主軸および第2主軸と、被加工物(ワーク)を搬送するための多関節ロボットとを備える工作機械が開示されている。ワークに、最終部品となる必要部と、複数本の連結部を介して必要部が連結される枠状の不要部とを設けるように、ワークを加工する。さらにワークを多関節ロボットのハンドで把持しつつ、連結部を切断することによって、必要部を不要部から分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示される工作機械では、連結部の切断加工時、ワークが多関節ロボットのハンドで把持されている。しかしながら、多関節ロボットの剛性、または、ハンドによるワークの把持力が十分でない場合、連結部の切断加工において、工具によるワークの加工点がずれたり、ワークがハンドから脱落したりする可能性がある。
【0005】
この発明の目的は、第1部分と、第2部分と、第1部分および第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物に対して、連結部の切断加工を円滑に行なうことが可能な工作機械、ワークの加工方法および制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った工作機械は、ワークを保持可能なホルダを有する刃物台と、工具主軸と、工作機械を制御する制御装置とを備える。制御装置は、ワークを加工することによって、第1部分と、第2部分と、第1部分および第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物を得るように、工具主軸を制御し、ホルダにより第1部分を保持するように、刃物台を制御し、ホルダにより第1部分を保持しながら連結部を切断するように、工具主軸を制御する。
【0007】
この発明に従ったワークの加工方法は、ワークを加工することによって、第1部分と、第2部分と、第1部分および第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物を得るステップと、刃物台に装着されたホルダにより第1部分を保持するステップと、ホルダにより第1部分を保持しながら、連結部を切断するステップとを備える。
【0008】
この発明に従った制御プログラムは、刃物台を備える工作機械の制御プログラムである。制御プログラムは、工作機械に、ワークを加工することによって、第1部分と、第2部分と、第1部分および第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物を得るステップと、刃物台に装着されたホルダにより第1部分を保持するステップと、ホルダにより第1部分を保持しながら、連結部を切断するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に従えば、第1部分と、第2部分と、第1部分および第2部分を連結する連結部とを含む中間加工物に対して、連結部の切断加工を円滑に行なうことが可能な工作機械、ワークの加工方法および制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施の形態における工作機械を示す正面図である。
【
図2】
図1中の工作機械において、中間加工物における連結部の切断加工を示す斜視図である。
【
図3】
図1中の工作機械の制御系を示すブロック図である。
【
図4】
図1中の工作機械を用いたワーク加工の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図1中の工作機械を用いたワーク加工の第1工程を模式的に示す正面図である。
【
図6】
図1中の工作機械を用いたワーク加工の第2工程を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図1中の工作機械を用いたワーク加工の第3工程を模式的に示す正面図である。
【
図8】
図1中の工作機械を用いたワーク加工の第4工程を模式的に示す正面図である。
【
図9】
図1中の工作機械を用いたワーク加工の第5工程を模式的に示す正面図である。
【
図10】
図1中の工作機械を用いたワーク加工の第6工程を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態における工作機械を示す正面図である。
図1中には、工作機械の外観をなすカバー体を透視することにより、工作機械の内部が示されている。
【0013】
図1を参照して、工作機械100は、停止するワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうミーリング機能と、回転するワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋削機能との両方が備わった複合加工機である。
【0014】
工作機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Controlled)工作機械である。
【0015】
本明細書においては、工作機械100の構成を説明する便宜上、ワークの回転軸に平行で、水平方向に延びる軸を「Z軸」といい、Z軸に直交し、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、上下方向に延びる軸を「X軸」という。
【0016】
工作機械100は、ベッド16と、ワーク主軸21と、対向ワーク主軸26と、工具主軸41と、刃物台31と、カバー体12とを有する。ワーク主軸21、対向ワーク主軸26、工具主軸41および刃物台31は、工作エリア210に配置されている。工作エリア210は、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワーク加工に伴う切屑または切削油等の異物が工作エリア210の外側に漏出しないようにカバー体12により密閉されている。
【0017】
ベッド16は、ワーク主軸21、対向ワーク主軸26、工具主軸41および刃物台31等を支持するためのベース部材であり、工場などの床面に設置されている。ベッド16は、鋳物等の金属からなる。
【0018】
ワーク主軸21および対向ワーク主軸26は、ワークを保持可能である。ワーク主軸21は、モータにより、Z軸に平行な回転中心軸110を中心に回転駆動する。ワーク主軸21には、複数の爪部22を有し、ワークを着脱可能に保持するためのチャック機構が設けられている。各爪部22は、油圧等によって、回転中心軸110の半径方向にスライド駆動する。複数の爪部22は、回転中心軸110の半径方向内側にスライドすることによって、ワークの外周面を把持したり、回転中心軸110の半径方向外側にスライドすることによって、ワークの内周面を把持したりする。
【0019】
対向ワーク主軸26は、Z軸方向において、ワーク主軸21と対向して配置されている。対向ワーク主軸26は、モータにより、Z軸に平行で、かつ、回転中心軸110と一直線に延びる回転中心軸120を中心に回転駆動する。対向ワーク主軸26には、複数の爪部27を有し、ワークを着脱可能に保持するためのチャック機構が設けられている。複数の爪部27は、ワーク主軸21における複数の爪部22に対応している。
【0020】
ワーク主軸21は、ベッド16に対して固定されている。対向ワーク主軸26は、各種の送り機構、案内機構およびモータによって、Z軸方向に移動可能である。
【0021】
工具主軸41は、工具を保持可能である。工具主軸41は、モータにより、後述する基準姿勢においてX軸に平行な回転中心軸140を中心に回転駆動する。工具主軸41には、工具を着脱可能に保持するためのクランプ機構(不図示)が内蔵されている。
【0022】
工具主軸41は、さらに、Y軸に平行な旋回中心軸150を中心に旋回可能である(B軸旋回)。旋回中心軸150は、回転中心軸140と交差する。工具主軸41の旋回範囲は、たとえば、工具主軸41の主軸端面42が下方を向く基準姿勢(
図1中に示される工具主軸41の姿勢)を基準にして±120°の範囲である。
【0023】
工具主軸41は、各種の送り機構、案内機構およびモータによって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能である。なお、
図1中には示されていないが、ワーク主軸21の周辺には、工具主軸41に保持される工具を自動的に交換するための自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)と、交換用の工具を収容するための工具マガジンとが設けられている。
【0024】
刃物台31は、工具を保持可能である。刃物台31は、工具主軸41よりも下方に設けられている。工具主軸41は、ワーク主軸21の回転中心軸110および対向ワーク主軸26の回転中心軸120を挟んだ上側に配置され、刃物台31は、ワーク主軸21の回転中心軸110および対向ワーク主軸26の回転中心軸120を挟んだ下側に配置されている。刃物台31は、いわゆるタレット形であり、複数の工具が放射状に取り付けられ、旋回割り出しを行なう。
【0025】
刃物台31は、旋回部32と、複数の工具ホルダ(不図示)とを有する。旋回部32は、Z軸に平行な旋回中心軸130を中心に旋回可能である。旋回部32は、全体として、旋回中心軸130の軸方向が厚み方向となる円盤形状を有する。複数の工具ホルダ(不図示)は、工具を保持可能である。複数の工具ホルダは、旋回部32の外周面に取り付けられている。複数の工具ホルダは、旋回中心軸130の周方向に並んでいる。旋回部32が旋回中心軸130を中心に旋回することによって、工具ホルダに保持された工具が周方向に移動する。ワーク加工に用いられる工具が、旋回中心軸130の周方向における所定角度の位置に割り出される。
【0026】
工作機械100は、刃物台31に保持される工具を自動的に交換するための自動工具交換装置をさらに有してもよい。この場合に、工具ホルダに保持される工具の自動交換に伴って、工具を自動的にクランプしたりアンクランプしたりするためのクランプ機構が、刃物台31に内蔵されてもよい。また、工具ホルダに保持された工具を回転させるためのミーリング機能が、刃物台31に備わってもよい。
【0027】
刃物台31は、各種の送り機構、案内機構およびモータによって、X軸方向およびZ軸方向に移動可能である。
【0028】
図2は、
図1中の工作機械において、中間加工物における連結部の切断加工を示す斜視図である。
図1および
図2を参照して、刃物台31は、ホルダ36をさらに有する。ホルダ36は、ワークを保持可能である。ホルダ36は、旋回部32の外周面に取り付けられている。ホルダ36は、複数の工具ホルダとともに、旋回中心軸130の周方向に並んでいる。
【0029】
ホルダ36は、ワークをクランプするクランプ状態と、ワークをアンクランプするアンクランプ状態との間で自動的に動作するクランプユニットからなる。
【0030】
ホルダ36の構造の一例について説明すると、ホルダ36は、ホルダベース37と、一対の把持爪38とを有する。一対の把持爪38は、ホルダベース37に取り付けられている。一対の把持爪38は、互いに間隔を開けて対向している。一対の把持爪38は、その対向方向においてスライド可能なように案内されている。ホルダベース37には、一対の把持爪38をスライド動作させるためのアクチュエータ(
図3中のアクチュエータ74に対応)が内蔵されている。アクチュエータの動力源は、特に限定されず、たとえば、モータであってもよいし、油圧シリンダであってもよい。
【0031】
ワークが一対の把持爪38の間に配置され、一対の把持爪38が互いに近接する方向にスライドすることによって、ワークが一対の把持爪38によって把持されるクランプ状態が得られる。一対の把持爪38が互いに遠ざかる方向にスライドすることによって、ワークが一対の把持爪38から解放されるアンクランプ状態が得られる。
【0032】
図1を参照して、工作機械100は、ワークストッカ91と、ワーク搬送機構80とをさらに有する。ワークストッカ91は、工作エリア210の外側の外部エリア220に設置されている。ワークストッカ91は、Z軸方向において、工作エリア210と隣り合っている。ワークストッカ91は、加工前後のワークWを格納可能である。
図1中では、ワークストッカ91として、ワークWを載置可能なテーブルが示されているが、ワークストッカ91の形態は、特に限定されない。
【0033】
ワーク搬送機構80は、ワークWを、工作エリア210および外部エリア220の間で搬送するための機構である。ワーク搬送機構80は、移動装置81と、ロボットアーム86とを有する。なお、
図1中には、ワークWを工作エリア210に搬入する移動装置81およびロボットアーム86と、ワークWを外部エリア220に搬入する移動装置81およびロボットアーム86とが示されている。
【0034】
移動装置81は、工作エリア210および外部エリア220の間で移動可能である。移動装置81は、ロボットアーム86を工作エリア210および外部エリア220の間で移動させる。移動装置81は、ロボットアーム86をZ軸方向にスライド移動させる。移動装置81は、たとえば、リニアガイド等の案内機構と、ラックピニオン等の送り機構と、モータ等の動力源とから構成されている。
【0035】
ロボットアーム86は、ワークWを保持可能である。ロボットアーム86には、エンドエフェクタとして、ワークWを把持するためのハンド87が取り付けられている。ロボットアーム86は、多関節ロボットであり、たとえば、六軸制御が可能な六軸多関節ロボットである。
【0036】
なお、ワーク搬送機構80は、上記の構成に限られず、たとえば、ワークを把持可能なハンドと、ハンドをX軸およびY軸にスライド移動させるための移動装置とかなるガントリーローダであってもよい。
【0037】
図3は、
図1中の工作機械の制御系を示すブロック図である。
図1および
図3を参照して、工作機械100は、制御装置51をさらに有する。制御装置51は、工作機械100を制御する。
【0038】
制御装置51の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コンピュータプロセッサなどの演算器、メモリまたはストレージといった記憶装置、ならびに、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアとによって実現されている。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、または、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。
【0039】
制御装置51は、プログラム記憶部52と、プログラム実行部53と、工具主軸制御部54と、刃物台制御部71と、ワーク主軸制御部55と、対向ワーク主軸制御部56とを有する。
【0040】
プログラム記憶部52には、工作機械100の作業者によって作成されたワーク加工のための実行プログラム(工作機械100の制御プログラム)が記憶されている。プログラム記憶部52は、一例として、フラッシュメモリである。
【0041】
プログラム実行部53は、プログラム記憶部52に記憶された実行プログラムを実行する。プログラム実行部53は、実行プログラムの命令を読み取って、工具主軸制御部54、刃物台制御部71、ワーク主軸制御部55および対向ワーク主軸制御部56の各々に制御信号を出力する。
【0042】
工具主軸制御部54は、プログラム実行部53からの制御信号に従って、工具主軸41をB軸旋回させるための工具主軸旋回モータ61と、工具主軸41をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の各方向に移動させるための工具主軸送りモータ62と、工具主軸41を回転中心軸140を中心に回転させるための工具主軸回転モータ63とを制御する。
【0043】
刃物台制御部71は、プログラム実行部53からの制御信号に従って、刃物台31を旋回中心軸130を中心に旋回させるための刃物台旋回モータ72と、刃物台31をX軸方向およびZ軸方向の各方向に移動させるための刃物台送りモータ73と、ホルダ36を、クランプ状態またはアンクランプ状態に動作させるためのアクチュエータ74とを制御する。
【0044】
ワーク主軸制御部55は、プログラム実行部53からの制御信号に従って、ワーク主軸21を回転中心軸110を中心に回転させるためのワーク主軸回転モータ64を制御する。対向ワーク主軸制御部56は、プログラム実行部53からの制御信号に従って、対向ワーク主軸26を回転中心軸120を中心に回転させるための対向ワーク主軸回転モータ65と、対向ワーク主軸26をZ軸方向に移動させるための対向ワーク主軸送りモータ66とを制御する。
【0045】
図4は、
図1中の工作機械を用いたワーク加工の流れを示すフローチャートである。
図5から
図10は、
図1中の工作機械を用いたワーク加工の各工程を模式的に示す正面図である。
【0046】
図1から
図10を参照して、制御装置51は、ワークWを加工することによって、第1部分160と、第2部分170と、第1部分160および第2部分170を連結する連結部180とを含む中間加工物W’を得るように、工具主軸41を制御し、ホルダ36により第1部分160を保持するように、刃物台31を制御し、ホルダ36により第1部分160を保持しながら連結部180を切断するように、工具主軸41を制御する。
【0047】
また、本実施の形態におけるワークの加工方法は、ワークWを加工することによって、第1部分160と、第2部分170と、第1部分160および第2部分170を連結する連結部180とを含む中間加工物W’を得るステップ(S103,S105)と、刃物台31に装着されたホルダ36により第1部分160を保持するステップ(S107)と、ホルダ36により第1部分160を保持しながら、連結部180を切断するステップ(S108)とを備える。
【0048】
また、本実施の形態における制御プログラムは、刃物台31を備える工作機械100の制御プログラムである。制御プログラムは、工作機械100に、ワークWを加工することによって、第1部分160と、第2部分170と、第1部分160および第2部分170を連結する連結部180とを含む中間加工物W’を得るステップ(S103,S105)と、刃物台31に装着されたホルダ36により第1部分160を保持するステップ(S107)と、ホルダ36により第1部分160を保持しながら、連結部180を切断するステップ(S108)とを実行させる。
【0049】
図4および
図5に示されるように、まず、ワークWを工作エリア210に搬入する(S101)。本ステップでは、制御装置51が、ワークストッカ91に載置されたワークWをハンド87により把持されるように、ロボットアーム86を制御する。ワークWは、円柱形状を有する。制御装置51は、ロボットアーム86が外部エリア220から工作エリア210に移動するように、移動装置81を制御する。
【0050】
図4および
図6に示されるように、次に、ワーク主軸21によりワークWを保持する(S102)。本ステップでは、制御装置51が、ワークWが複数の爪部22の内側に配置されるように、ロボットアーム86を制御する。制御装置51は、ワークWが複数の爪部22により把持されるように、ワーク主軸21を制御する。ワークWは、複数の爪部22により把持される一方端部191を有する。制御装置51は、ハンド87によるワークWの把持が解消されるように、ロボットアーム86を制御する。
【0051】
次に、工具主軸41によりワークWを加工する(S103)。本ステップでは、制御装置51が、ワークWに、第1部分160と、第2部分170と、連結部180とを成形するように、工具主軸41を制御する。
【0052】
より具体的には、工具主軸41をX軸方向(上下方向)において、ワークWと対向して配置する。工具主軸41に保持されたフライスカッター等の工具Tを用いて、ワークWの外周面を平面状に加工する。ワーク主軸21を回転中心軸110を中心に180°回転させる。再び、工具主軸41に保持されたフライスカッター等の工具Tを用いて、ワークWの外周面を平面状に加工することによって、X軸方向が厚み方向となる平板形状を得る。工具主軸41に保持された各種の工具Tを用いて、ワークWの平板部分を加工することによって、ワークWに、一方端部191を残しつつ、第1部分160、第2部分170および連結部180を成形する。
【0053】
本実施の形態では、第1部分160が、製品部である。第1部分160は、ワークWの加工が完了した後に最終製品に対応する形状を有する。第2部分170は、不要部である。第2部分170は、最終製品に対応しない形状を有する。
【0054】
第2部分170は、第1部分160と間隔を開けて配置されている。第2部分170は、Z軸方向において、第1部分160と間隔を開けて並んでいる。第2部分170は、対向ワーク主軸26における複数の爪部27により把持可能な形状を有する。第2部分170は、平板形状を有する。第2部分170の体積は、第1部分160の体積よりも小さい。第2部分170は、第1部分160の縁部を取り囲むフレーム形状を有してもよい。
【0055】
連結部180は、第1部分160および第2部分170の間で延びている。連結部180は、第1部分160の縁部から延出し、第2部分170の縁部に接続されている。連結部180は、Z軸方向において、第1部分160および第2部分170の間に配置されている。Z軸方向における連結部180の一方端部が、第1部分160に接続され、Z軸方向における他方端部が、第2部分170に接続されている。連結部180がZ軸方向に直交する平面により切断された場合の断面積は、第1部分160が、連結部180が第1部分160に接続される位置で、Z軸方向に直交する平面により切断された場合の断面積以下である。連結部180がZ軸方向に直交する平面により切断された場合の断面積は、第2部分170が、連結部180が第2部分170に接続される位置で、Z軸方向に直交する平面により切断された場合の断面積以下である。
【0056】
第1部分160および第2部分170が、複数の連結部180により連結される構成であってもよい。ワークWに、第1部分160、第2部分170および連結部180を成形するための加工には、工具主軸41に保持された工具Tに加えて、刃物台31に保持された各種の工具が用いられてもよい。
【0057】
図4および
図7に示されるように、次に、対向ワーク主軸26によりワークWを保持する(S104)。本ステップでは、制御装置51が、ワークWの第2部分170が複数の爪部27の内側に配置されるとともに、複数の爪部22により把持されるように、対向ワーク主軸26を制御する。
【0058】
次に、工具主軸41によりワークWの切断工程を実行する(S105)。本ステップでは、制御装置51が、ワークWの一方端部191に対する第1部分160の根元部が切断されるように、工具主軸41を制御する。ワーク主軸21の複数の爪部22により把持される一方端部191が、第1部分160から切り離される。これにより、第1部分160、第2部分170および連結部180を含む中間加工物W’が得られる。
【0059】
図4および
図8に示されるように、次に、刃物台31を旋回動作させるとともに、Z軸方向およびX軸方向に移動させる(S106)。次に、ホルダ36により第1部分160を保持する(S107)。
【0060】
S106のステップでは、制御装置51が、旋回部32が旋回中心軸130を中心に旋回し、ホルダ36が所定位置に割り出されるように、刃物台31を制御する。制御装置51は、刃物台31がZ軸方向およびX軸方向に移動し、ホルダ36の一対の把持爪38の間に第1部分160が配置されるように、刃物台31を制御する。S107のステップでは、制御装置51が、一対の把持爪38によって第1部分160が把持されるように、刃物台31を制御する。
【0061】
図4、
図9および
図10に示されるように、次に、工具主軸41により、連結部180の切断工程を実行する(S108)。本ステップでは、制御装置51が、連結部180が切断されるように、工具主軸41を制御する。連結部180が切断されることによって、第1部分160が第2部分170から切り離される。このとき、第1部分160は、ホルダ36により保持されている。第2部分170は、対向ワーク主軸26により保持されている。
【0062】
図4に示されるように、製品部である第1部分160と、不要部である第2部分170とを回収する(S109)。
【0063】
本ステップでは、制御装置51が、ハンド87により第1部分160が把持されるように、ロボットアーム86を制御し、続いて、一対の把持爪38による第1部分160の把持が解消されるように、刃物台31を制御する。制御装置51は、ロボットアーム86が工作エリア210から外部エリア220に移動するように、移動装置81を制御する。制御装置51は、ハンド87により把持された第1部分160がワークストッカ91に載置されるように、ロボットアーム86を制御する。
【0064】
制御装置51は、ハンド87により第2部分170が把持されるように、ロボットアーム86を制御し、続いて、複数の爪部27による第2部分170の把持が解消されるように、対向ワーク主軸26を制御する。制御装置51は、ロボットアーム86が工作エリア210から外部エリア220に移動するように、移動装置81を制御する。制御装置51は、ハンド87により把持された第2部分170がワークストッカ91に載置されるように、ロボットアーム86を制御する。
【0065】
本実施の形態では、連結部180の切断工程(S108)において、第1部分160が刃物台31に装着されるホルダ36により保持されるため、中間加工物W’をより強固に保持することができる。これにより、中間加工物W’が脱落したり、工具主軸41に保持された工具による中間加工物W’の加工点がずれたりすることを防ぎ、連結部180の切断工程を円滑に進めることができる。
【0066】
また、連結部180の切断工程において、第2部分170が対向ワーク主軸26により保持されるため、中間加工物W’をさらに強固に保持することができる。また、連結部180の切断工程の後には、第1部分160が刃物台31により保持され、第2部分170が対向ワーク主軸26により保持されるため、第1部分160および第2部分170を別々に回収することができる。
【0067】
また、工具主軸41は、対向ワーク主軸26の回転中心軸120を挟んだ上側に配置され、刃物台31は、対向ワーク主軸26の回転中心軸120を挟んだ下側に配置されている。これにより、連結部180の切断工程時、工具主軸41が、中間加工物W’を保持する刃物台31と干渉し難くなるため、工具主軸41の移動範囲の制約を抑制することができる。
【0068】
また、連結部180の切断工程において、刃物台31により保持される第1部分160は、製品部であり、対向ワーク主軸26により保持される第2部分170が、不要部である。このような構成によれば、ホルダ36における一対の把持爪38の形状または動作形態は、対向ワーク主軸26における複数の爪部27の形状または動作形態と比べて、設計上の自由度が高いため、第1部分160に成形された製品形状に合わせたホルダ36による第1部分160の保持が行ない易くなる。
【0069】
また、連結部180の切断工程において、不要部である第2部分170は、対向ワーク主軸26により保持されている。これにより、対向ワーク主軸26により第2部分170を保持しつつ、第1部分160に製品形状を成形するための加工を行なったあと、第1部分160および第2部分170をそれぞれ刃物台31および対向ワーク主軸26により保持しつつ、連結部180を切断する工程に円滑に移ることができる。
【0070】
なお、
図2に示される連結部180の切断工程において、第2部分170は、ワーク主軸21により保持されてもよい。また、
図2に示される連結部180の切断工程において、第1部分160に加えて第2部分170が刃物台31により保持されてもよい。
【0071】
また、刃物台31のホルダ36により中間加工物W’を保持する際、中間加工物W’において最も幅の小さい方向(厚み方向)に中間加工物W’が把持されるように、把持爪38を構成してもよい。たとえば、
図2において、把持爪38を、把持爪38が上下方向を向く第1部分160の面板部と接触するように構成してもよい。このような構成によれば、第2部分170が第1部分160の縁部を取り囲むフレーム形状をなし、連結部180が第1部分160の縁部から第2部分170に向けて枝状に延びる中間加工物W’においても、把持爪38に上記の特許文献1における多関節ロボットのハンドと同様の構造を用いることによって、第1部分160および第2部分170の双方を保持することが可能となる。さらに、第2部分170がフレーム形状をなす場合に、刃物台31のホルダ36で中間加工物W’を保持しながら連結部180を切り離す手段として、工具主軸41に着脱可能に取り付けられ、工具主軸41の回転軸方向(X軸方向)に対して直交する方向(Y軸方向)を回転軸として工具を回転させることが可能な工具アタッチメントも有効に利用される。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
12 カバー体、16 ベッド、21 ワーク主軸、22,27 爪部、26 対向ワーク主軸、31 刃物台、32 旋回部、36 ホルダ、37 ホルダベース、38 一対の把持爪、41 工具主軸、42 主軸端面、51 制御装置、52 プログラム記憶部、53 プログラム実行部、54 工具主軸制御部、55 ワーク主軸制御部、56 対向ワーク主軸制御部、61 工具主軸旋回モータ、62 工具主軸送りモータ、63 工具主軸回転モータ、64 ワーク主軸回転モータ、65 対向ワーク主軸回転モータ、66 対向ワーク主軸送りモータ、71 刃物台制御部、72 刃物台旋回モータ、73 刃物台送りモータ、74 アクチュエータ、80 ワーク搬送機構、81 移動装置、86 ロボットアーム、87 ハンド、91 ワークストッカ、100 工作機械、110,120,140 回転中心軸、130,150 旋回中心軸、160 第1部分、170 第2部分、180 連結部、191 端部、210 工作エリア、220 外部エリア、T 工具、W’ 中間加工物、W ワーク。