(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099433
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】レーザー溶接方法および鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20250626BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20250626BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20250626BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20250626BHJP
【FI】
B23K26/21 F
B23K26/03
B23K26/00 N
B23K26/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216093
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 義典
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健吾
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA37
4E168BA56
4E168BA83
4E168CB23
4E168DA24
4E168KA04
(57)【要約】
【課題】溶接金属部の形状および硬度を共に調整することのできる、レーザー溶接方法について提案する。
【解決手段】複数の鋼帯を相互に突き合わせて突合せギャップを形成し、該突合せギャップにフィラーワイヤを送給しながらレーザー溶接する方法であって、前記レーザー溶接に先だち、前記突合せギャップおよび前記鋼帯の板厚をそれぞれ前記鋼帯の幅方向に測定し、これら測定値に基づいて前記レーザー溶接のトーチ速度および前記フィラーワイヤの送給速度を制御してレーザー溶接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼帯を相互に突き合わせて突き合せギャップを形成し、該突合せギャップにフィラーワイヤを送給しながらレーザー溶接するレーザー溶接方法であって、前記レーザー溶接に先だち、前記突合せギャップおよび前記鋼帯の板厚をそれぞれ前記鋼帯の幅方向に測定し、これら測定値に基づいて、前記レーザー溶接のレーザー出力および前記フィラーワイヤの送給速度を制御してレーザー溶接するレーザー溶接方法。
【請求項2】
複数の鋼帯を相互に突き合わせて突き合せギャップを形成し、該突合せギャップにフィラーワイヤを送給しながらレーザー溶接するレーザー溶接方法であって、前記レーザー溶接に先だち、前記突合せギャップおよび前記鋼帯の板厚をそれぞれ前記鋼帯の幅方向に測定し、これら測定値に基づいて、前記レーザー溶接のトーチ速度および前記フィラーワイヤの送給速度を制御してレーザー溶接するレーザー溶接方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザー溶接方法によって、複数の鋼帯を相互に突き合わせ接合し、次いで接合した鋼帯を連続して冷間圧延工程に供して冷間圧延を施す、鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鋼帯を相互に突き合わせ接合するためのレーザー溶接方法に関する。特に、鋼板の連続製造工程において、鋼帯を相互に接続してから冷延工程に供して連続的な冷間圧延を実現するのに寄与する、レーザー溶接部の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鋼板の生産性向上を目的として、冷間圧延工程において、先行する被圧延材の後端と後行する被圧延材の先端とを接合して圧延を連続して行っている。かような連続圧延ラインに適用される溶接方法には、フラッシュバット溶接(Flash butt welding)とレーザー溶接(Laser Beam welding)を用いることが一般的である。
【0003】
レーザー溶接は、エネルギー密度が高く入熱量が少ないため、フラッシュバット溶接に比べ優れた品質特性が得られる。但し、高炭素鋼板や電磁鋼板などの溶接では、溶接金属部に品質不良に起因する亀裂が発生することから、フィラーワイヤ(Filler wire)を使用し溶接金属部の炭素や合金含有量を低減させ品質の安定化を図っている。
【0004】
このフィラーワイヤを用いるレーザー溶接について、特許文献1には、フィラーワイヤの送給速度を、鋼板相互の突合わせ間隙(ギャップ)に基づき制御する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザー溶接によって接合した鋼帯を圧延機で連続圧延する場合、鋼帯の接合箇所であるレーザー溶接後の溶接金属部の品質が、連続圧延の実現には重要になる。この溶接金属部の品質においてとりわけ重要な点は、溶接金属部の形状および硬度の2点である。
【0007】
上記したように、特許文献1に記載の「溶接部強度に優れたレーザー溶接方法」では、フィラーワイヤの送給速度を、溶接する鋼帯(被溶接材)相互間の間隙(ギャップ)に基づき制御している。しかしながら、このギャップに基づく制御だけでは、上記した溶接金属部の形状および硬度を共に調整することが難しく、この点に課題を残すものであった。
【0008】
そこで、本発明は、溶接金属部の形状および硬度を共に調整することのできる、レーザー溶接方法について提案することを目的とする。また、本発明は、レーザー溶接方法を用いて連続した冷間圧延を実現した鋼板の製造方法について提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、溶接金属部の品質に影響を与える因子として、溶接する鋼板相互間のギャップ以外に、鋼帯(被溶接材)の板厚偏差も無視できないことを新たに見出した。すなわち、鋼帯の板厚は、設定厚に対して10%前後で変動する場合がある。かように、板厚が設定値に対し変化する場合、溶接金属部の形状は、板厚方向に十分な溶接金属が存在していないアンダーフィルや、逆に溶接金属が盛り上がって余盛量が過大になったオーバーフィルとなる。また、溶接金属部硬度においては、所期した硬度と異なる硬度となることがある。いずれの場合も、結果として圧延機において溶接金属部での破断を招いてしまう。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためには、突合せ接合する鋼帯相互の突合せギャップを測定し、かつ先行鋼帯および後行鋼帯の各々について、幅方向に少なくとも1点、出来れば全幅にわたり板厚を測定することが重要であるとの知見を得た。そして、この測定結果に基づいて、鋼帯の板厚偏差を溶接条件に反映させることが、溶接金属部品質の向上に有効であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。
1.複数の鋼帯を相互に突き合わせて突き合せギャップを形成し、該突合せギャップにフィラーワイヤを送給しながらレーザー溶接するレーザー溶接方法であって、前記レーザー溶接に先だち、前記突合せギャップおよび前記鋼帯の板厚をそれぞれ前記鋼帯の幅方向に測定し、これら測定値に基づいて、前記レーザー溶接のレーザー出力および前記フィラーワイヤの送給速度を制御してレーザー溶接するレーザー溶接方法。
【0012】
2.複数の鋼帯を相互に突き合わせて突き合せギャップを形成し、該突合せギャップにフィラーワイヤを送給しながらレーザー溶接するレーザー溶接方法であって、前記レーザー溶接に先だち、前記突合せギャップおよび前記鋼帯の板厚をそれぞれ前記鋼帯の幅方向に測定し、これら測定値に基づいて、前記レーザー溶接のトーチ速度および前記フィラーワイヤの送給速度を制御してレーザー溶接するレーザー溶接方法。
【0013】
3.前記1または2に記載のレーザー溶接方法によって、複数の鋼帯を相互に突き合わせ接合し、次いで接合した鋼帯を連続して冷間圧延工程に供して冷間圧延を施す、鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従って、突合せ接合する際の鋼帯相互の突合せギャップの変動だけでなく鋼帯の板厚の変動を加味して、鋼帯幅方向でのフィラーワイヤ送給速度に加えて、レーザー出力またはトーチの移動速度を変化させながら溶接することにより、溶接金属部形状および溶接硬度が均一となるレーザー溶接を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】鋼帯の板厚変動に起因した溶接金属部の硬さ変動を示すグラフである。
【
図3】フィラーワイヤの投入率を説明する図である。
【
図4】溶接金属部のアンダーフィルとオーバーフィルを説明する図である。
【
図6】溶接金属部の余盛高さの変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のレーザー溶接方法について、詳しく説明する。
まず、
図1に、突合せ接合する先行鋼帯1と後行鋼帯2を溶接する際の模式図を示す。先行鋼帯1と後行鋼帯2を溶接する際には、両鋼帯を突き合せて溶接を行うが、突合せでは僅かながらギャップ(間隙)3を作り、このギャップ3の寸法によって被溶接材である鋼帯とフィラーワイヤ4との混合比率を調整する。
【0017】
上記に従って設定したギャップ3にフィラーワイヤ4を送給して両鋼帯1および2を溶接するに当たっては、フィラーワイヤ4をギャップ3の溶接個所に供給しつつ、トーチ5からのレーザー6を溶接個所に照射することにより鋼帯の溶接個所部分をフィラーワイヤ4とともに溶融して溶接を行う。
【0018】
[溶接金属部の硬度]
さて、鋼帯の被溶接部分およびフィラーワイヤ4をレーザー照射によって溶融するには、ギャップ3の溶接個所にレーザー照射による入熱が必要になる。実際に、鋼帯およびフィラーワイヤ4のレーザー照射による溶融が促進されるのは、
・レーザー出力(P)が高いこと(比例関係)
・トーチ5の移動速度(Y速)が遅いこと(反比例関係)
・板厚(t)が薄いこと(反比例関係)
の各条件にある。そして、これら条件と上記の入熱量との関係は、次式(1)として示すことができる。上記したレーザー出力P(kW)、トーチ5の移動速度Y速(m/min)および板厚t(mm)は溶接開始時に定める設定値であるため、次式(1)にて示される入熱量Q(kW/mpm*mm)は固定値となる。なお、板厚tは、接合する先行鋼帯と後行鋼帯の板厚実測値の平均値とする。
【0019】
上記の入熱量Qは、被圧延材である鋼帯により変化するため、溶接する鋼帯毎に事前の検討が必要である。なぜなら、鋼帯の成分や組織が鋼帯毎に異なり鋼帯の硬度も鋼帯毎に異なることから、溶接金属部に求められる硬度も異なってくるためである。
【0020】
ここで、表1に示す諸条件に従って、同じ鋼帯に対して異なる入熱量Qの下でレーザー溶接を施したときの、溶接金属部および(溶接金属部を除く)溶接部周辺(母材)のビッカース硬度を測定した結果について、
図2に示す。なお、表1に示していない溶接条件は、全ての条件で共通させた。なお、
図2に示す通り、入熱量が増加すると鋼帯の金属部の溶け込みが増加するため、条件によって母材位置が異なっている。
【0021】
【0022】
図2に示す通り、レーザー溶接時の入熱量の変動により、溶接金属硬度が変化することがわかる。これは、溶接個所における母材の溶け込み量が変化したためと考えられる。よって、かような溶接金属部の硬度変動を抑制するには、母材の溶け込み量を均一に保つ必要がある。そして、母材の溶け込み量を均一に保つには、入熱量Qを一定とする必要がある。
【0023】
入熱量Qが変動する要因としては、上記した式(1)の右辺における、レーザー出力Pおよびトーチ5の移動速度Y速は設定値に従うことから、鋼帯の板厚tにあることになる。この板厚tが設定厚からずれる場合があることは、上述の通りである。従って、入熱量Qの変動を抑制するには、板厚tの変動、具体的には板厚偏差分を、レーザー出力Pまたはトーチの移動速度Y速にて補正する必要がある。
【0024】
すなわち、板厚変動の影響による溶接金属部の硬度変動を抑制するために、レーザー出力Pを調整する場合は、上式(1)を変形した次式(2)に従って、レーザー出力Pを決定すればよい。
【0025】
また、板厚変動の影響による溶接金属部の硬度変動を抑制するために、トーチの移動速度Y速を調整する場合は、上式(1)を変形した次式(3)に従って、トーチのY速を決定すればよい。
【0026】
なお、板厚の測定については、板厚計を溶接機内に設置し、先行鋼帯および後行鋼帯それぞれを測定するのが理想的だが、板厚計を2つ追加する必要があるため、溶接機前の板送り中に測定する方法が現実的である。
【0027】
[溶接金属部の形状]
次に、ギャップ3にフィラーワイヤ4を送給して両鋼帯1および2を溶接するに当たっては、フィラーワイヤ4を所定のFw投入率でギャップ3の溶接個所に供給する。ここで、Fw投入率は、
図3に示すように、ギャップ3および鋼帯の接合される端面にて区画される空間Rにフィラーワイヤ4が占める割合である。すなわち、間隙(空間R)体積に対する(空間Rへの)フィラーワイヤ投入量の比と定義することができ、以下の式(4)で表すことができる。次式(4)において、Fw速は空間Rへのフィラーワイヤ送り速度(mm/min)であり、GAPはギャップの鋼帯幅方向の平均値(mm)である。
【0028】
上記のFw投入率は1.0であることが理想的であるが、実際は余裕をもって1.5~2.0程度に設定されることが多い。この設定値に溶接の終始にわたって安定していることが必要であり、Fw投入率が不安定になると、
図4に示す不良の発生を招くことになる。すなわち、
図4(a)に示すように、Fw投入率が設定値より小さくなった場合は、板厚方向に十分な溶接金属が存在していないアンダーフィルが発生する。このアンダーフィルは、溶接部の厚みが不足して破断を招くことになる。逆にFw投入率が設定値より大きくなった場合は、溶接金属が盛り上がって余盛量が過大になるオーバーフィルが発生する。このオーバーフィルは、溶接部の厚みが過大になってせん断破断を招くことになる。
【0029】
また、溶接機のシャー刃の据付精度や摩耗により、鋼帯の幅方向においてギャップの変動が生じる。すなわち、
図5に、同じ条件下に溶接を5回繰り返した際のギャップの幅方向平均値を示すように、溶接毎にギャップの幅方向平均値が変動することがわかる。
【0030】
さらに、これら5回の溶接によって得られた溶接金属部の余盛高さについて調査した結果を
図6に示す。
図6には、5回の溶接の測定結果を全てプロットしている。
図6に示すように、余盛高さにおいても大きく変動していることがわかる。
【0031】
以上の通り、Fw投入率が変動する要因としては、上記した式(4)の右辺における、GAP(ギャップ)にある。従って、Fw投入率の変動を抑制するには、ギャップの変動、具体的にはギャップの偏差分を、Fw速にて補正する必要がある。
【0032】
すなわち、ギャップ変動の影響による溶接金属部の形状(余盛高さ)変動を抑制するために、Fw速を調整する場合は、上式(4)を変形した次式(5)に従って、Fw速を決定すればよい。
【0033】
【0034】
[溶接金属部の硬度および形状の調整]
以上を総合すると、本発明では、突合せギャップおよび鋼帯の板厚をそれぞれ鋼帯の幅方向に測定し、これら測定値に基づいて、レーザー溶接による溶接金属部の形状並びに硬度を調整することを、次の2つの形態に従って実現する。
(実施形態1)
突合せギャップおよび鋼帯の板厚をそれぞれ鋼帯の幅方向に測定した測定値に基づいて、レーザー溶接(P)のレーザー出力およびフィラーワイヤの送給速度(Fw速)を制御する。具体的には、次式(2)および(4)に従って調整を行う。
(実施形態2)
突合せギャップおよび鋼帯の板厚をそれぞれ鋼帯の幅方向に測定した測定値に基づいて、トーチ移動速度(Y速)およびフィラーワイヤの送給速度(Fw速)を制御する。具体的には、次式(3)および(5)に従って調整を行う。なお、次式(5)は、上式(4)に次式(3)を代入したものであり、式の技術的意義は上式(4)と同じである。
【実施例0035】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例の記載に限られるものではなく、本発明の範囲内で適宜の変更が可能である。
キャリッジに板厚計およびGAP計を備えたレーザー溶接機を用いて、鋼帯の板厚とギャップ(GAP)を測定しながら溶接を行った。すなわち、設定板厚が2.0mmの鋼帯を設定ギャップ0.30mmで突き合わせてから、表2に設定値として示す、Fw速およびFw投入率に従って、フィラーワイヤをギャップに送給し、同表2に設定値として示す、レーザー出力Pおよびトーチ移動速度Y速に従ってレーザー照射を行って溶接個所に、同表2に設定値として示す、入熱量Qを与えてレーザー溶接を実施した。なお、レーザーには、YAG固体レーザーを用いた。また、フィラーワイヤには、インコネルを用いた。
【0036】
上記の表2に従う突合せレーザー溶接の各溶接の施工前には、突合せギャップおよび突合せ部の板厚をそれぞれ幅方向へ測定し、幅方向の平均値を求めて、ギャップおよび板厚の変動を検知した。そして、ギャップおよび板厚のいずれかの変動を検知したならば、本発明区分では本発明に従う制御を実行した。一方、比較例区分では何ら制御を行わなかった。すなわち、本発明区分の内、本発明1はレーザー出力(P)を制御したパターンであり、本発明2はトーチ移動速度(Y速)を制御したパターンである。
【0037】
なお、表2には、その左側には設定値および右側には実績値を記載し、これらの中間位置には変動の有無について記載する。ちなみに、比較例では設定値=実績値となっている。
【0038】
いずれの事例においても、溶接後の溶接金属部について、その硬度および形状について次のように評価した。
[溶接金属部の硬度]
溶接金属部の硬度について、被溶接材(母材)と溶接金属部のビッカース硬さをそれぞれ測定し、溶接金属部の硬さと母材との硬さの差をもって評価した。評価結果は、溶接金属部の硬さが母板の硬さに対して±20%の範囲にあれば「良好」、この範囲を超える場合を「アップ」、この範囲を下回る場合を「ダウン」として、表2に示す。
【0039】
[溶接金属部の形状]
溶接金属部の形状について、母材の表面からの溶接金属部の盛り上がり高さを評価した。すなわち、母材の表面から溶接金属部の表面の母材厚み方向の最大距離が、母材の板厚に対して0~10%の範囲である場合を良好、10%を超える場合をオーバーフィル、0%未満の場合をアンダーフィルとして評価した結果を、表2に示す。
【0040】
表2から、本発明1および2では、板厚変動およびギャップ変動の有無に応じて、上記した数式より算出されるFw速と、レーザー出力P又はY速とに従って、これらを制御することによって、溶接金属部の硬度及び溶接金属部の形状を良好とすることができている。なお、本発明1区分の試験No.1~8の夫々は、本発明2区分の試験No.9~16の夫々、並びに、比較例区分の試験No.17~24の夫々と、対応している。これら区分間での対比により、板厚変動やギャップ変動がある場合、本発明を適用することによって溶接金属部の硬度および形状を良好にできることがわかる。
【0041】
試験No.1、2および試験No.9、10については、ギャップの変動があるので本発明の制御が無い場合は試験No.17、18のようにアンダーフィルやオーバーフィルになってしまう。一方、試験No.1、2、9、10は、本発明に従ってFw速を制御することにより、溶接金属部形状が良好な溶接部を得られる。
【0042】
試験No.3、4、11、12、19、20については、ギャップの変動はないものの板厚変動がある。試験No.19、20のように本発明の制御が無い場合は、アンダーフィルかつ溶接硬度低下やオーバーフィルかつ溶接硬度上昇となってしまう。一方、試験No.3、4、11、12は、本発明に従うFw速制御と入熱量制御により溶接金属部形状が良好でかつ硬度も狙い通りの溶接部を得られる。
【0043】
試験No.5~8、13~16、21~24については、ギャップ変動と板厚変動が複合する事例である。制御のない試験No.21~24は、溶接金属部形状不良および硬度不良を回避することができない。一方、試験No.5~8、13~16では、制御を行うことによって、溶接金属部形状不良および硬度不良を回避することができる。
【0044】