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特開2025-9944同時インライン電気化学的方法及び閉ループプロセス制御を利用した二次電池セルの仕上げ(形成/エージング/選別/グレーディング)の動的制御及び性能評価/最適化
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  • 特開-同時インライン電気化学的方法及び閉ループプロセス制御を利用した二次電池セルの仕上げ(形成/エージング/選別/グレーディング)の動的制御及び性能評価/最適化 図1
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  • 特開-同時インライン電気化学的方法及び閉ループプロセス制御を利用した二次電池セルの仕上げ(形成/エージング/選別/グレーディング)の動的制御及び性能評価/最適化 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009944
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】同時インライン電気化学的方法及び閉ループプロセス制御を利用した二次電池セルの仕上げ(形成/エージング/選別/グレーディング)の動的制御及び性能評価/最適化
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20250109BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024101261
(22)【出願日】2024-06-24
(31)【優先権主張番号】18/218,850
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ケビン ノイツラー
(72)【発明者】
【氏名】カール フレドリック ウェスターバーグ
(72)【発明者】
【氏名】アレック ジェイコブ ファルツォーネ
(72)【発明者】
【氏名】スリラマ ハリハラン
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028BB10
5H028BB11
5H028BB15
5H028BB17
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029CJ16
5H029CJ28
5H029CJ30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生産されるセルの品質、スループット、及び安全性を改善し、仕上げ(形成/エージング/選別/グレーディング)プロセスを容易にするための、二次電池セル仕上げプロセスの動的制御及び最適化のためのシステムを提供する。
【解決手段】システムは、電気化学インピーダンス分光法(EIS)、自己放電分析(SDA)、電流測定、又は電位差測定による電池測定のうちの少なくとも1つから導出されるリアルタイムインライン製造データを処理するように構成されている閉ループプロセス制御モジュールを含む。制御モジュールは、より良い/より悪い性能特性の確認、改良、訂正、及び/又は認識若しくは分離のために、先行する動作/材料にリアルタイムフィードバックを提供する。それはまた、基準からの性能偏差を示し得る認識された態様のフィードフォワード情報を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)、自己放電分析(SDA)、電流測定、又は電位差測定による電池測定のうちの少なくとも1つから導出されるリアルタイムインライン製造データを処理するように構成されている閉ループプロセス制御モジュールを備える二次電池セル仕上げプロセスの動的制御及び最適化のためのシステム。
【請求項2】
前記電池測定が、オーム抵抗RΩ、電荷移動抵抗Rct、漏れ電流Ileak、開回路電圧(OCV)、電圧降下(ΔV)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスパラメータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
二次電池セル仕上げプロセスのフィードバックアラート及び/又は制御のためのシステムであって、閉ループプロセス制御モジュールを備え、前記閉ループプロセス制御モジュールは、
(i)充電/放電機能、電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定、自己放電分析測定(SDA)、電流測定、及び/又は電位差測定からのリアルタイムインライン製造データを処理し、
(ii)電池性能の基準からの偏差を識別し、
(iii)その基準からの電池性能の偏差に潜在的に寄与する過去の電池製造動作条件を識別するように構成されている、システム。
【請求項4】
リチウムイオン電池セル仕上げプロセスのフィードフォワードアラート及び/又は制御のためのシステムであって、閉ループプロセス制御モジュールを備え、前記閉ループプロセス制御モジュールは、
(i)充電/放電機能、電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定、自己放電分析測定(SDA)、電流測定、及び/又は電位差測定からのリアルタイムインライン製造データを処理し、
(ii)電池性能の基準からの偏差を識別し、
(iii)実験室分析及び/又は隔離のための、その基準からの潜在的な寄与について、同様の属性の動作後材料を識別するように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気化学電池の製造に関し、より詳細には、仕上げプロセスにおけるリチウムイオンセルなどの二次電池の品質、スループット、及び安全性を改善するための制御、評価、及び最適化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンセルは、二次電池の一種であり、正極(カソード)、負極(アノード)、接触及び短絡を防止するために電極間に置かれるセパレータ、並びに電解質の4つの主要部分を含む。カソード活物質の例としては、混合金属酸化物、金属リン酸塩、又は関連材料を挙げることができるが、これらに限定されない。アノード材料の例としては、グラファイト、ケイ素、又はそれらの複合材料を挙げることができるが、これらに限定されない。電解質はイオンの輸送を提供し、液体、固体、又は液化ガスであってもよい。電池製造は、両面コーティングされたアノード銅基材及び両面コーティングされたカソードアルミニウム基材の大きなシートの製作から始まる。電極は、予め混合されたアノード又はカソード材料が、集電体として機能する金属基材のシート上にコーティングされる、連続ロールツーロールプロセスで製造される。電極シートは、適切なサイズの両面コーティングされた金属基材に切断される。
【0003】
個々のセルを構築するための2つの主要な方法がある。電極及びセパレータの「ゼリーロール」へのセル巻回が1つであり、別個の電極シートとセパレータフィルムとを、各電極間にz折り畳み又は積層で組み合わせることがもう1つである。円筒形セル及びいくつかのプリズムセルは、アノード電極及びカソード電極のロール並びにセパレータフィルムの2つのロールが供給される回転機械上に巻回かれる。パウチセル及びいくつかのプリズムセルは、ロボットアームを利用して、頭上からセパレータフィルムが展開してスタックを交錯させるように、アノード及びカソード積層を交互にして、これはセパレータフィルムの回転で完了する。
【0004】
リチウムイオンセルは、充電されていない状態で組み立てられる。セルの最初の充電又は形成は、予想されるサイクル寿命及びエネルギー容量にとって重要である。これは、アノード上に固体電解質界面(solid electrolyte interface、SEI)層と呼ばれる準安定不動態化層を形成するように、各ステップの速度及び持続時間及び電流/電圧限界が設計される複数の段階を含む。SEI層の形成は、セル内の利用可能なリチウムからリチウムの一部を消費し、電解質分解の生成物である。同様に、正極に均一な不動態化をもたらすカソード電解質界面(cathode electrolyte interface、CEI)も発達する。このCEI層は、正極粒子と電解質との間の望ましくない副反応を抑制しながら、イオン輸送経路を維持することを可能にする。しかしながら、アノードSEIについては、あまりにも薄いSEI層及び/又は不均一な層を形成することは、電解質イオンがアノード材料に流れることを可能にし、リチウムめっき及び/又はリチウム樹枝状成長のリスクを増加させ、セルの寿命サイクルを減少させる。適切なSEI層の厚さを生成することは、セル生産プロセス、より具体的には、セル仕上げ領域における重要なプロセスパラメータの1つである。セル仕上げ作業はまた、形成プロセスの結果である脱ガスと、許容できないレベルの自己放電を有するセルを選別するセルエージングとを含む。
【0005】
形成プロセス及び仕上げプロセスは、故障したセルが最初に充電されるときに火災が発生する可能性があり、その結果、「熱暴走」として知られる急速な破損が生じる可能性があるので、残りの生産プロセスから分離される。形成プロセス及びエージングプロセスを行うために長い期間(しばしば、3週間以上)が必要とされるため、このプロセスは、典型的には、工場において最大の面積を占め、在庫における重要な作業を表し、主要な工場プロジェクトのために必要とされる資本支出の約40%を消費する。現在、リチウムイオンセルの形成及びエージングは、リアルタイム観察に基づいていずれのプロセス中にも調整されない静的レシピに従って行われる。
【0006】
具体的には、仕上げは、アノード及びCEIカソードのための固体電極/電解質界面SEIを「形成」するための充電/放電のための形成の機能を包含する。これは、セル寿命の長さに大きく影響する長くて重要なプロセスである。それは、少なくとも24~48時間かかる可能性があり、ラッキング、パワーエレクトロニクス、エネルギー、及びプロセス内在庫においてかなりの空間を必要とする。電池セルをエージングするプロセスは、更に時間がかかり、2~3週間かかる。これはまた、セルをステージして保管するためにかなりの床面積を必要とする。ΔOCV又は電圧降下を決定することは、セル品質及び最終的なセルのグレーディングを決定するための一般的な試験である。このアプローチの主な欠点は、遅延により、修正するためのタイムリーな品質フィードバックがなく、標準以下の電池が有意な数で生産され得ることであり、これは、スクラップ及び/又は価値が低下した準最適な製品の蓄積をもたらす。明らかなように、この従来の方法論は、セルスループットを妨げ、Liイオンセル性能の最適化をインオペランドで妨げる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、部分的には、電池生産における形成、エージング、選別、及びグレーディングステップを包含する二次電池セル仕上げの動的性能評価及び制御のための方法の開発に基づく。本方法は、電池セル仕上げプロセスのために、リアルタイムデータ分析とともに、同時、インライン、多周波数高速応答電気化学インピーダンス分光法(EIS)、及び閉ループプロセス制御を利用する。この方法は、時間、資本支出、運用支出を削減し、電池セルのスループット及び品質を向上させる。加えて、本発明は、確認、改良、及び/又は訂正のための先行動作への高速性能フィードバックを可能にする。本発明は、形成/エージングプロセスを受ける任意の二次電池タイプに適用可能である。本発明はリチウムイオン電池セルの生産において説明されるが、本発明は、例えば、ナトリウムイオン電池及び固体電池にも適用可能であることが理解される。
【0008】
本発明は、大規模大量生産設備の高いスループット、優れた品質の要求に対処する。形成及び/又はエージングプロセスにおいてEISなどの電気化学技術を用いることは、Liイオン電池生産産業において新規である能力を提供する。この能力は、電池セルのオーム抵抗、表面膜(SEI/CEI)、電荷移動抵抗を確認して、最高品質の「寿命開始」レベルを保証する。動的閉ループ制御は、上流調整及び補正のための品質欠陥の高速認識を可能にして、ダウンタイム及びスクラップ廃棄物を最小限に抑える。例えば、「不良セル」は、エージングを未然に防ぐように、形成プロセス中に早期に認識することができる。高度な充電放電アルゴリズムが、形成プロセスにおいて電池を最適化し、スマートに充電/放電し、プラント及び人員の安全性を保証するために用いられる。
【0009】
本発明は、従来のシステムと比較して、形成/エージング床面積要件並びに設備及び資本及び運用費用を削減する。具体的には、本発明によれば、形成時間を劇的に短縮することができる。例えば、形成には現在の技術では数日かかるが24時間未満に短縮することができ、エージングは、現在の技術では2~3週間かかるが1時間未満に短縮することができる。
【0010】
一態様では、本発明は、リアルタイムインライン製造データを管理又は処理し、形成中にリチウムイオン電池の充電及び放電プロトコルを決定し、エージング中にリチウムイオン電池のセル性能分類を決定するように構成されている閉ループプロセス制御モジュールを含む二次電池セル仕上げプロセスの動的制御及び最適化のためのシステムを対象とする。インラインデータは、電気化学インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy、EIS)、自己放電分析(self-discharge analysis、SDA)、電流測定、及び/又は電位差測定から導出される。モジュールによって監視されるプロセスパラメータとしては、例えば、オーム抵抗RΩ、電荷移動抵抗Rct、漏れ電流Ileak、開回路電圧(open circuit voltage、OCV)、及び/又は電圧降下(ΔV)が挙げられる。
【0011】
一実施形態では、制御モジュールの閉ループ機能は、インラインリアルタイムプロセスパラメータを、予め選択された値のセット及び/又はコンピュータ化された監視制御システムと比較することを可能にする。設定値からのインライン値の偏差に基づいて、制御モジュールは、EIS測定システム及び/又はSDA測定システムに、予め構成された充電/放電プロトコルのセットを実行して、測定値を選択された目標値に近づけるように指示する。フィードバックデータから導出された偏差に基づいて、制御モジュールは、交互の充電/放電手順を実行、終了、又は実施することができる。閉ループフィードバック制御のこの特徴は、従来のオフライン形成及びエージングステーションでは不可能であった形成及び/又はエージングプロセスに費やされる時間の最適化を可能にする。
【0012】
別の態様では、本発明は、充電/放電機能、EIS測定、SDA測定、電流測定システム、及び/又は電位差測定システムからのリアルタイムインライン製造データを管理又は処理して、基準からの性能偏差を識別及び定量化し、その標準からのそれらの潜在的な寄与に対する以前の動作偏差を識別するように構成されている閉ループプロセス制御モジュールを含む二次電池セル仕上げプロセスのフィードバックアラート及び/又は制御のためのシステムを対象とする。監視されるプロセスパラメータの代表的な例としては、例えば、電流(I)、電圧(V)、オーム抵抗RΩ、電荷移動抵抗Rct、漏れ電流Ileak、開回路電圧(OCV)、及び電圧降下(ΔV)などが挙げられる。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、充電/放電機能、EIS測定、SDA測定、電流測定システム、及び/又は電位差測定システムからのリアルタイムインライン製造データを管理又は処理して、標準又は基準からの性能偏差を識別及び定量化し、実験室分析又は隔離のためのその標準又は基準からの潜在的な寄与について、同様の属性の動作後電池材料を識別するように構成されている閉ループプロセス制御モジュールを含む二次電池セル仕上げプロセスのフィードフォワードアラート及び/又は制御のためのシステムを対象とする。
【0014】
通常の又は標準的な電池許容性能よりも良い又は悪いものとして特徴付けることができる性能偏差は、(i)プロセスパラメータの統計的分析、(ii)変化率比較、(iii)パラメータ限界の適用、(iv)データ抽出(dQ/dV)、(v)機械学習、(vi)人工知能などの様々な技術によって評価することができる。電池に使用される材料成分及び電池の製作に用いられるプロセスパラメータの履歴データを評価して、性能偏差に対するそれらの寄与を決定する。電池製造ラインにおける動作パラメータは、特に、形成、エージング、選別、及びグレーディングステップにおいて、絶えずアップグレードされる。
【0015】
閉ループプロセス制御モジュールは、材料及びプロセスパラメータを自動的に調整して、通常の電池性能を確立し、有害であり、次いで品質及び/又は安全性レビューの対象となる材料及びプロセスパラメータを識別するように構成され得る。制御モジュールはまた、電池性能を改善する有益な材料及びプロセスパラメータを識別するように構成され得る。最後に、制御モジュールは、警報を自動的にトリガし、かつ/又は追加の評価のために材料を隔離するように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】リチウムイオン電池を生産するための製造ライン及びコントローラを含むシステムを示す。
図2】形成プロセスのフローチャートである。
図3】エージングプロセスのフローチャートである。
図4】リチウムイオン電池仕上げを最適化するためのシステムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、電気化学セル及び電池を作製するための、製造ライン4及びコントローラ6を含むシステム2を示す。製造ライン4は、製作プロセスにおける作業を行うように構成されている。混合ステーション8において、個々のアノードスラリー及びカソードスラリーは、典型的にはバッチで調製される。アノードスラリーは、例えば、グラファイト、結合剤、及び導電剤を含む様々なアノード成分を溶媒中で混合することによって調製される。各バッチについての供給源、ロット、各成分の量、並びに温度及びタンク撹拌速度などの用いられる混合パラメータは、コントローラ6のメモリに記憶される。同様に、カソードスラリーは、例えば、酸化リチウム、結合剤、及び導電剤を含む様々なカソード成分を溶媒中で混合することによって調製される。酸化リチウムとしては、例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト(lithium nickel manganese cobalt、NMC)、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate、LFP)、コバルト酸リチウム(lithium cobalt oxide、LCO)、及びリチウムニッケルコバルトアルミナ(lithium nickel cobalt alumina、NCA)が挙げられる。各バッチについての供給源、ロット、成分の量、及び混合パラメータは、コントローラ6のメモリに記憶される。固体電解質を用いる場合には、混合プロセスにより電解質スラリーが調製され得る。各バッチについての材料開始履歴、系統、成分の量、及び混合パラメータは、コントローラ6のメモリに記憶される。
【0018】
コーティング及び乾燥ステーション10において、混合ステーションで調製されたアノードスラリー及びカソードスラリーは、金属基材上にコーティングされて電極を形成する。アノードスラリー又はカソードスラリーは、スロットダイコーティングヘッド又は他のコーティング方法を使用して、集電体の両側にレーン状に連続的に又はパッチ状に断続的にコーティングされる。湿ったコーティングされた箔を長い乾燥オーブンに直接供給して溶媒を蒸発させる。電極コーティングに適用された厚さ及びコーティング重量は、光学、X線、及び/又はβ線吸収測定法によって測定され、このフィードバックを使用してコーティング機械を制御することができる。乾燥段階は、セル生産プロセスの最もエネルギー集約的なステップの1つである。乾燥プロセス自体はまた、溶媒の排出による細孔の均一な分布(多孔性)、硬い表面及び膨れの回避、並びに所望の乾燥を達成するためのちょうど正しい量のエネルギーの使用などのいくつかの重要な品質態様を電極に与える。コーティング後、コーティングされた箔は、ステップ12において回転する一対のローラによって圧縮されるカレンダー加工プロセスを受ける。このプロセスは、電極の最終的な物理的特性(厚さ、結合、導電性、密度、及び多孔性)を調整するのに役立つ。
【0019】
電極コーティング及びカレンダー加工プロセスの動作パラメータ、条件、品質態様は、様々なインラインセンサによって監視され、データはコントローラ6に記憶される。高品質のLiイオン電池を保証するために、アノードスラリー及びカソードスラリー中の活性材料が均一に混合されることが重要である。加えて、(i)同じコーティング重量が電極の両側にあるべきであり、(ii)上部及び底部コーティングが位置合わせされ、(iii)同じ厚さ及び密度が電極の両側にあり、これは多孔性及びその後の電解質充填中の「湿潤性」に影響を及ぼす。電極は、セルエネルギー貯蔵要件を満たすために、汚染又は欠陥(穴及びコーティングの欠落など)がなく、かつ必要な負荷(mAh/cm)があるべきである。特定の材料、プロセスパラメータ、偏差などは、コントローラ6に記憶される。
【0020】
カレンダー加工の後、完成した電極は洗浄され、スリッティング機械に供給されて細いストリップに切断され、スリッティングステーション12で「ドーターロール」に巻き取られる。視覚システムを使用して、適切な動作を保証し、かつ/又は非標準検出を検出することができ、適切な特定の材料、プロセスパラメータ、偏差などがコントローラ6に記憶される。
【0021】
コイルは次に乾燥ステーション14に送られ、そこで真空オーブンが残留水分及び溶媒を除去する。
【0022】
分離ステーション16において、セルセパレータ材料は、セルフォーマットプロセスに依存して、巻回のために準備されるか、又はセル積層のためにダイカットされるか、又はz折り畳み方法のために準備される。セパレータ材料はまた、連続移動シートプロセスにおいて、カレンダー加工されてセパレータフィルムを形成してもよく、又は、例えば基材上にスラリーキャストされて、ディスクリエイト(discreate)として硬化されてもよい。特定の材料及びプロセスパラメータは、コントローラ6に記憶される。
【0023】
積層/巻回ステーション18において、電池が構築される。積層は、パウチセルを形成するために使用され、巻回は、円筒形セル及びプリズムセルを形成するために使用される。特定の材料及びプロセスパラメータは、コントローラ6に記憶される。
【0024】
パッケージングステーション20において、電池は保護容器又はシェルに入れられる。特定の材料及びプロセスパラメータは、コントローラ6に記憶される。
【0025】
充填ステーション22において、液体電解質が電池に加えられる。電解質は、溶媒、添加剤、及び塩を含むリチウム溶液を含む。添加されたリチウム塩溶液の量、体積及び/又は重量、並びに成分の特定の割合、供給元、日付、バッチは、コントローラ6に記録される。
【0026】
形成ステーション24において、電池は、アノード及びカソード上にそれぞれ固体電解質界面(SEI)及びカソード電解質界面(CEI)保護層を構築するために、一連の充電及び放電サイクルを受ける。本発明では、EISを用いて、SEI及び/又はCEI特性の電気化学的状態を確認する。これは、iインサイチュでの電池セルの性能に直接関係し、動的インライン閉ループプロセス制御を提供する。EIS測定に加えて、又はその代わりに、電流測定、電位差測定、及び/又は自己放電分析(SDA)測定を、動的応答のパラメータ分析のために利用することができる。監視される代表的なプロセスパラメータとしては、例えば、オーム抵抗RΩ、電荷移動抵抗Rct、漏れ電流Ileak、開回路電圧(OCV)、及び電圧降下(ΔV)などが挙げられる。これらの方法は、電池セルのスループット、寿命、品質、及び安全性を最適化するために利用される。
【0027】
電気化学測定から収集されたデータは、ナイキストプロット、ボードプロット、又は他の従来の技術によって解釈される。データ解釈は、最速スループットのための形成プロセスの閉ループ最適化を提供する。追加的に、不良な性能のセル及び仕様外のセル、又は更に高い性能のセルを識別するために、傾向を確立することができる。これはまた、グレーディング/選別を確立することができる。解釈は、混合、電極生産(乾燥、カレンダー加工など)、セル作成(巻回、積層、溶接、電解質充填)などの先行するプロセスからのトレーサビリティを提供し、可能性のある欠陥の根本原因としてフィードバック方式で識別される。
【0028】
加えて、基準からの性能の偏差の識別、及び材料のアラート及び/又は制御のためにフィードフォワードで利用され得る潜在的な寄与について、同様の属性の動作後材料を識別する。
【0029】
測定からフィードバック/フィードフォワードへの高速応答は、上流調整/補正のための品質欠陥の認識を可能にして、ダウンタイム及びスクラップを低減し、それによって、形成/エージングの床面積及び機器を低減する。全体的な結果は、統合された包括的な製造ソリューションである。
【0030】
脱ガス及びシーリングステーション26において、形成反応は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素(メタン、プロパンなど)、及びヒドロフルオロカーボン(HFC)の種々の混合物を発生させ、これらは電池から除去され、次いでシールされる。
【0031】
エージングステーション28において、シールされた電池は、調整された加熱管理を受ける。本発明では、自己放電分析を用いて、インラインプロセス制御のために好ましくはマイクロアンペア単位で「漏れ電流」を測定する。特定のプロセスパラメータは、コントローラ6に記憶される。
【0032】
選別ステーション30において、電池はグレーディングされる。特定の電池のグレーディング、材料、性能、及びパラメータは、コントローラ6に記憶される。
【0033】
形成ステーション24、脱ガス及びシーリングステーション26、エージングステーション28、並びに選別ステーション30の間での電池及びセルの移動を容易にするために、製造ライン4(図1)は、自動保管及び取り出しシステム(automated storage and retrieval system、AS/RS)及び/又は自律移動ロボット(autonomous mobile robot、AMR)又は他の自動材料移動方法を含むことができる。このようにして、製造ラインは、最小限の人員で大量の電池を収容することができる。
【0034】
図2は、電極がステップ100で生産され、電気化学セルがステップ102で電池に組み立てられる、例示的な形成プロセスを示す。形成プロセスは、アルゴリズム118によって制御される。複数の電池が形成ステーションに位置決めされ、電池は、複数の電池に接続するように構成された充電回路に接続され、複数の電池は直流抵抗測定104を受ける。不合格のものは、品質調査106のために除去される。合格したものは形成(108)を受け、ここで電池はアルゴリズム118からのプロトコルごとに充電され(110)、休止させられ(112)、EISによって試験される(114)。(EISは充電機能を用いてインサイチュで実行することができるので、休止ステップ112は任意選択であることに留意されたい。)EIS及びサイクルデータ分析116が適用される。不合格の電池は拒絶され、合格したものは、形成及び最適化アルゴリズム手順118に従って形成プロセスを継続する。電池が充電されていない場合、ステップ110に進み、電池が充電される。
【0035】
分析ステップ116で合格し、充電された電池は、次いで、ステップ120において、アルゴリズム118からのプロトコルに従って放電され、ステップ122において、EISパルス124が印加される前に、時間nの長さにわたって休止される。(EISは放電機能を用いてインサイチュで実行することができるので、休止ステップ122は任意選択であることに留意されたい。)別の分析プロトコル126は、不合格の欠陥電池を除去する。この段階で最初に合格した電池は、追加の形成のためにステップ118に戻される。第2の時間に合格したいくつかの電池は、ステップ128で必要に応じて追加の充電/放電サイクルを受けることができる。電池が許容可能な状態にある場合、電池はステップ130に進み、ここで電池は最終的に100%の充電状態まで充電されて、形成132を完了し、セルエージング134ステップに進む。
【0036】
図3は、形成200を完了した電池のエージングプロセスを示す。充電された電池は、電池が1つ以上の試験、例えば、EIS、SDA、電流測定、及び電位差測定分析などを受ける初期セル測定を受ける。不合格の電池は、品質欠陥204について検査される。合格したものは、形成ステップ206に続き、ステップ210において、規定された温度で指定された長さの時間にわたって保管される。その後、電池は、第2のセル測定212を受け、データ216の分析により、(i)調査204される欠陥電池、(ii)ある品質仕様を満たすが、追加のエージングを必要とする電池(条件付き合格)、及び(iii)合格した電池を識別し、合格した電池はグレーディング218に進む。グレーディングの後、完成した電池220は在庫222に輸送される。条件付き合格の電池は、形成/最適化アルゴリズム214を受け、そこで試験されて、別のエージングステップ210を継続するか、又は再び開始(再形成)するかが決定される(208)。
【0037】
図4は、製造ライン4(図1)の機能を調整する制御モジュール300を示す。本明細書で使用される場合、用語「モジュール」は、本明細書で説明されるように、製造ラインの要素間の通信及び/又は相互作用を容易にし、製造ラインの動作をサポートするための追加のプロセス、タスク、及び/又は機能を実行するための任意の手段を指す。様々な実施形態では、制御モジュール300は、任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、電子制御構成要素、処理ロジック、及び/又はプロセッサデバイスであってもよく、個々に又は任意の組み合わせであってもよい。実施形態に応じて、制御モジュール300は、本明細書で説明する機能を実行するように設計された、汎用プロセッサ(共有、専用、又はグループ)コントローラ、マイクロプロセッサ、若しくはマイクロコントローラ、及び1つ以上のソフトウェア若しくはファームウェアプログラムを実行するメモリ;連想メモリ;デジタル信号プロセッサ;特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA);任意の好適なプログラマブルロジックデバイス;ディスクリートゲート若しくはトランジスタ論理を含む組み合わせ論理回路;別個のハードウェア構成要素及びメモリデバイス;並びに/又はそれらの任意の組み合わせを用いて実装又は実現され得る。
【0038】
制御モジュールは、処理ユニット302、メモリ304、リムーバブルストレージ312、及び非リムーバブルストレージ314を含むコンピュータシステムを備え得る。例示的なコンピューティングデバイスがコンピュータシステムとして例示され、説明されているが、コンピューティングデバイスは、異なる実施形態において異なる形態であってもよい。例えば、コンピューティングデバイスは、代わりに、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、又は他のコンピューティングデバイスであってもよい。スマートフォン、タブレット、及びスマートウォッチなどのデバイスは、一般に、モバイルデバイスと総称される。更に、様々なデータストレージ素子が制御モジュール300の一部として例示されているが、ストレージはまた、又は代替的に、インターネットなどのネットワークを介してアクセス可能なクラウドベースのストレージを含んでもよい。
【0039】
メモリ304は、揮発性メモリ308と、不揮発性メモリ310と、を含んでもよい。コンピュータシステムは、揮発性メモリ308及び不揮発性メモリ310、リムーバブルストレージ312及び非リムーバブルストレージ3144などの様々なコンピュータ可読媒体を含むか、又はそれらを含むコンピューティング環境へのアクセスを有することができる。コンピュータストレージは、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、リードオンリーメモリ(read only memory、ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(erasable programmable read-only memory、EPROM)及び電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(compact disc read-only memory、CD ROM)、デジタル多用途ディスク(Digital Versatile Disk、DVD)又は他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、又は本明細書で説明される機能を実行するためのコンピュータ可読命令を記憶することが可能な他の磁気ストレージデバイスを含む。
【0040】
コンピュータシステムは、入力318と、出力320と、通信インターフェース316とを含むコンピューティング環境を含むか、又はコンピューティング環境にアクセスすることができる。出力320は、入力デバイスとしても機能し得るタッチスクリーンなどのディスプレイデバイスを含み得る。入力318は、タッチスクリーン、タッチパッド、マウス、キーボード、カメラ、1つ以上のデバイス固有ボタン、制御モジュール300内に統合された、又は有線若しくは無線データ接続を介して結合された1つ以上のセンサ、及び他の入力デバイス318のうちの1つ以上を含むことができる。コンピュータシステムは、クラウドベースのサーバ及びストレージを含むデータベースサーバなどの1つ以上のリモートコンピュータに接続するために通信接続を使用してネットワーク化された環境で動作することができる。リモートコンピュータは、パーソナルコンピュータ(personal computer、PC)と、サーバと、ルータと、ネットワークPCと、ピアデバイス又は他の共通ネットワークノードなどと、を含むことができる。通信接続は、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network、LAN)、広域ネットワーク(Wide Area Network、WAN)、セルラー、WiFi、Bluetooth(登録商標)、又は他のネットワークを含んでもよい。
【0041】
コンピュータ可読ストレージデバイスに記憶されたコンピュータ可読命令は、処理ユニット302によって実行可能である。ハードドライブ。CD-ROM及びRAMは、ストレージデバイスなどの非一時的コンピュータ可読媒体を含む物品のいくつかの例である。コンピュータ可読媒体及びストレージデバイスという用語は、搬送波を含まない。例えば、コンピュータプログラム306を使用して、処理ユニット302に、本明細書の1つ以上の方法を実行させることができる。
【0042】
単一の制御モジュールが製造ライン4(図1)全体を制御することができるが、製造ラインの個々のステーションは、特定のステーションに関連付けられたデバイスを具体的に監視及び調整するための制御モジュールを備えることができることが理解される。例えば、データ分析モジュール322は、分析及び視覚化のためにインラインデータを受信及び処理するために用いられる。通信モジュール324は、遠隔サーバ内に位置し得る製造実行システム(manufacturing execution system、MES)326又は分散制御システム(distributed control system、DCS)328に性能評価メトリックを送信し、プロセスパラメータを調整するために用いられる。次に、MES又はDCSは、自動保管及び取り出しシステム並びに/又は自律移動ロボットに、形成ステーション、エージングステーション、及び選別ステーション内で電池を操作するように指示することができる。MES又はDCSは、「集中操作コンソール」若しくは「統合操作センター」、又は同等物などのコンピュータシステムに組み込まれることができ、データは、ヒューマンマシンインターフェース(human-machine interface、HMI)に表示されることができる。通信モジュール324は、形成ステーション及びエージングステーションから取得されたインラインプロセス情報を、早期電池破損検出機構である安全制御システム330に送信することができる。例えば、早期の煙又は電池からのガス及び/若しくは熱の検出、熱撮像、電解質蒸気検出、並びに熱暴走を防止する関連安全対策を提供することができる。
【0043】
上記は、本発明の原理、好ましい実施形態、及び動作モードを説明してきた。しかしながら、本発明は、考察される特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。その代わりに、上述の実施形態は、限定的ではなく例示的なものとしてみなされるべきであり、以下の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によってそれらの実施形態において変形が行われ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】