(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099454
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】スピーカシステム及び音響システム
(51)【国際特許分類】
H04S 1/00 20060101AFI20250626BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20250626BHJP
H04R 1/02 20060101ALN20250626BHJP
【FI】
H04S1/00 200
H04R3/00 310
H04R1/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216131
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 和志
【テーマコード(参考)】
5D017
5D162
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AE18
5D162AA06
5D162CC12
5D162CC16
5D220AA49
(57)【要約】
【課題】ユーザ頭部近傍にコンパクトな音場を構築することができるスピーカシステム及び音響システムを提供する。
【解決手段】本開示にかかるスピーカシステム1は、音響信号に基づく右耳用の音を放音する右スピーカ11と、音響信号に基づく左耳用の音を放音する左スピーカ12と、右スピーカ11及び左スピーカ12の間に配置され、これらの音響信号に基づく右耳用の音及び左耳用の音を放音する中央スピーカ13とを備える。ここで、中央スピーカ13は、その放音方向が、右スピーカ11及び左スピーカ12の放音方向とは逆方向に向くように配置される。また、本開示の音響システムは、スピーカシステム1に加えて、右耳用のステレオ音響信号と、左耳用のステレオ音響信号とをスピーカシステム1の右スピーカ11、左スピーカ12、及び中央スピーカ13にそれぞれ出力するアンプを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号に基づく右耳用の音を放音する右スピーカと、
前記音響信号に基づく左耳用の音を放音する左スピーカと、
前記右スピーカ及び前記左スピーカの間に配置され、前記音響信号に基づく前記右耳用の音及び前記左耳用の音を放音する中央スピーカと、
を備え、
前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカは、それぞれ、平面バッフルに取り付けられており、
前記中央スピーカは、その放音方向が、前記右スピーカ及び前記左スピーカの放音方向とは逆方向に向くように配置される、
スピーカシステム。
【請求項2】
前記中央スピーカの振動板は、前記右スピーカ及び前記左スピーカの放音方向に対して、前記右スピーカの振動板及び前記左スピーカの振動板からオフセットされる位置に配置される、
請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項3】
前記スピーカシステムは、座席又は椅子のヘッドレスト内に設けられ、
前記右スピーカの前記振動板は、その横幅方向の中央位置が前記スピーカシステムのユーザの右耳の後方近傍となり、前記左スピーカの前記振動板は、その横幅方向の中央位置が前記ユーザの左耳の後方近傍となるように配置される、
請求項2に記載のスピーカシステム。
【請求項4】
前記ヘッドレストと前記ユーザの頭部との接触を検知する接触センサと、
前記接触センサの検知結果に応じて、前記中央スピーカの位置を変更する位置変更機構と、
をさらに備える、請求項3に記載のスピーカシステム。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のスピーカシステムと、
右耳用のステレオ音響信号と、左耳用のステレオ音響信号とを出力するアンプと、
を備え、
前記スピーカシステムの前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカは、それぞれ、前記アンプから前記ステレオ音響信号が入力されるプラス端子及びマイナス端子を有し、
前記アンプは、前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカに対応して、前記右耳用のステレオ音響信号及び前記左耳用のステレオ音響信号の各々のためのプラス端子及びマイナス端子をそれぞれ有し、
前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカと、前記アンプとは、
前記アンプの前記右耳用のプラス端子が前記右スピーカのプラス端子に接続され、前記アンプの左耳用のプラス端子が前記左スピーカのプラス端子に接続され、前記アンプの前記右耳用のマイナス端子が前記中央スピーカのマイナス端子に接続され、
前記中央スピーカのプラス端子が、前記右スピーカのマイナス端子及び前記左スピーカのマイナス端子に接続される、
音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3つのスピーカを備えるスピーカシステム及び音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンやヘッドホンを用いることなく、ユーザの頭部近傍のみに音場を構築する音響システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の音響システムでは、所定の音源の音響信号に基づく音を放音するスピーカと、音響信号と逆位相の音響信号に基づく音を放音するスピーカとからなるスピーカペアが複数設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の音響システムでは、右耳用と左耳用を含むステレオ音響信号に基づく音楽等の音を聞く場合には、最低でも4つのスピーカ(2スピーカペア)が必要となる。そして、ユーザの頭部近傍に音場を構築するためには、例えば、この音響システムをヘッドレスト内に配置する(すなわち、4つのスピーカを同一平面内に配置する)第1案か、ユーザの頭部近傍の両側面又は後背面に配置する第2案のいずれかを採用することになる。
【0005】
しかしながら、いずれの案であっても、音響システム全体のサイズが大きくなってしまい、ヘッドレスト内に収まらなかったり、ユーザの視界を妨げたりしてしまうという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、3つのスピーカで構成し、中央に配置するスピーカの放音方向(振動板の正面方向)を他の2つとは逆向きに配置することにより、スピーカ口径の大きさを確保しながらシステム全体の大きさを抑制することができるとともに、音質の安定したコンパクトな音場を実現することができるスピーカシステム及び音響システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかるスピーカシステムは、
音響信号に基づく右耳用の音を放音する右スピーカと、
前記音響信号に基づく左耳用の音を放音する左スピーカと、
前記右スピーカ及び前記左スピーカの間に配置され、前記音響信号に基づく前記右耳用の音及び前記左耳用の音を放音する中央スピーカと、
を備え、
前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカは、それぞれ、平面バッフルに取り付けられており、
前記中央スピーカは、その放音方向が、前記右スピーカ及び前記左スピーカの放音方向とは逆方向に向くように配置される、スピーカシステムである。
【0008】
本開示にかかる音響システムは、
上述のようなスピーカシステムと、
右耳用のステレオ音響信号と、左耳用のステレオ音響信号とを出力するアンプと、
を備え、
前記スピーカシステムの前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカは、それぞれ、前記アンプから前記ステレオ音響信号が入力されるプラス端子及びマイナス端子を有し、
前記アンプは、前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカに対応して、前記右耳用のステレオ音響信号及び前記左耳用のステレオ音響信号の各々のためのプラス端子及びマイナス端子をそれぞれ有し、
前記右スピーカ、前記左スピーカ、及び前記中央スピーカと、前記アンプとは、
前記アンプの前記右耳用のプラス端子が前記右スピーカのプラス端子に接続され、前記アンプの左耳用のプラス端子が前記左スピーカのプラス端子に接続され、前記アンプの前記右耳用のマイナス端子が前記中央スピーカのマイナス端子に接続され、
前記中央スピーカのプラス端子が、前記右スピーカのマイナス端子及び前記左スピーカのマイナス端子に接続される、音響システムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかるスピーカシステム及び音響システムによれば、3つのスピーカで構成し、中央に配置するスピーカの放音方向を他の2つとは逆向きに配置することにより、スピーカ口径の大きさを確保しながらシステム全体の大きさを抑制することができる。また、このような構成により、音質の安定したコンパクトな音場を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかるスピーカシステムの全体構成を示す正面図である。
【
図2】実施の形態1にかかるスピーカシステムの配置の一例を示す上面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる音響システムの配線構成の一例を示す概念図である。
【
図4】実施の形態1にかかるスピーカシステムを構成する各スピーカにより構築される音場のイメージを示す概念図である。
【
図5】実施例にかかるスピーカシステムの音場解析における配置を示す図である。
【
図6】実施例にかかるスピーカシステムの音場解析の結果を示す図である。
【
図7】比較例1にかかるスピーカシステムの音場解析における配置を示す図である。
【
図8】比較例1にかかるスピーカシステムの音場解析の結果を示す図である。
【
図9】比較例2にかかるスピーカシステムの音場解析における配置を示す図である。
【
図10】比較例2にかかるスピーカシステムの音場解析の結果を示す図である。
【
図11】実施の形態2にかかるスピーカシステムの全体構成を示す正面図である。
【
図12】実施の形態2にかかるスピーカシステムの配置の一例を示す上面図である。
【
図13】
図11に示すスピーカシステムにおけるスピーカ位置変更方法の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、本実施の形態で説明する構成のすべてが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<本開示に至った経緯>
上述のように、特許文献1に記載の音響システムでは、最低でも4つのスピーカ(2スピーカペア)が必要となる。そして、ユーザの頭部近傍に音場を構築するためには、音響システムをヘッドレスト内に配置する第1案か、ユーザの頭部近傍の両側面又は後背面に配置する第2案のいずれかを採用することになる。
【0013】
ここで、特許文献1に記載の音響システムは、一方のスピーカ用の音響信号と逆位相の音響信号に基づく音を他方のスピーカで放音することにより、一方のスピーカの音場が広がらないという特性を利用している。しかしながら、このような特性は、音が回り込みをする周波数の低い音(低音)でより効果的に発揮されるものであり、周波数の高い音(高音)ではこのような相殺効果は発揮されにくい。
【0014】
上述のように、最低4つのスピーカを用いる場合には、第1案にあっては、座席や椅子(例えば、ゲーミングチェア)の横幅を超えてヘッドレストが大きくなるか、低音における効果が発揮されにくい、小さい口径のスピーカにより音響システムを構成することとなってしまう。低域の周波数を小さい口径のスピーカで再生するためには、スピーカの振動板を大きい振幅で振動させる必要があるが、このような構成は歪音の増加等の音質の劣化の原因になるため、実用的には好ましくない。
【0015】
一方、第2案にあっては、ユーザの頭部近傍の両側面に2つのスピーカをそれぞれ配置することとなり、ユーザの視界が損なわれてしまう。特に、自動車等の車両を運転する場合には、安全性の問題で、この第2案を採用することは難しい。
【0016】
さらに、音響システムの利用中、ユーザの頭の位置を固定することは困難である。正位相の音響信号に基づく音を出力するスピーカと、逆位相の音響信号に基づく音を出力するスピーカとをユーザの左右の耳に近接してそれぞれ配置することにより、右スピーカとユーザの右耳との距離と、左スピーカとユーザの左耳との距離とが左右で異なる状況が発生しやすくなり、左右の音圧のバランスが崩れやすい。左右の音圧差は音質以上に人間にとって過敏に感じられるため、なるべく同じ音量感となることが好ましい。このように、第1案、第2案ともに好ましいとは言えない。
【0017】
このような課題に対して、本出願の発明者は、3つのスピーカによりスピーカシステムを構築するとともに、このスピーカシステムとアンプとの配線を工夫することにより、既存のアンプにおいても構成可能な音響システムを構築することに思い至った。以下では、本開示にかかるスピーカシステム及び音響システムについて説明する。
【0018】
(実施の形態1)
<スピーカシステム>
まず、実施の形態1にかかるスピーカシステム1の構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかるスピーカシステム1の全体構成を示す正面図である。
図2は、実施の形態1にかかるスピーカシステム1の配置の一例を示す上面図である。
図2では、そのエンクロージャの上面部分を省略して示すとともに、スピーカシステム1のユーザとスピーカシステム1との位置関係が分かるように、ユーザの頭部Aを示している。
【0019】
図1及び
図2に示すように、実施の形態1にかかるスピーカシステム1は、右スピーカ11と、左スピーカ12と、中央スピーカ13とを備えている。本例では、これらのスピーカ11、12、13は、ヘッドレスト2内に設けられる。なお、ヘッドレスト2は、自動車等の車両の座席シートや、ソファ、あるいは、ゲーミングチェア等の椅子にユーザが座った際の頭部の後方に、これらいずれかと一体的に又は別部材として設置されるものである。
【0020】
右スピーカ11は、後述する音響システムのアンプから入力される音響信号に基づく右耳用の音を放音するように構成される。左スピーカ12は、音響システムのアンプから入力される音響信号に基づく左耳用の音を放音するように構成される。中央スピーカ13は、音響システムのアンプから入力される音響信号に基づく右耳用の音及び左耳用の音を放音するように構成される。また、中央スピーカ13は、
図2に示すように、その放音方向が右スピーカ11及び左スピーカ12の放音方向とは逆方向に向くように、右スピーカ11と左スピーカ12との間に配置される。なお、放音方向とは、各スピーカ11、12、13の正面が向く方向である。
【0021】
スピーカシステム1をこのように構成することにより、右スピーカ11の振動板111の前方及び左スピーカ12の振動板121の前方から右スピーカ11及び左スピーカ12の放音方向である+X方向に出力される音と、中央スピーカ13の振動板131の後方から+X方向に出力される音とは、互いに逆位相の音となる。言い換えると、右スピーカ11及び左スピーカ12から出力される音とは逆位相の音が、同じ+X方向に向けて中央スピーカ13から出力される。このため、+X方向で音の打ち消しあいが生じ、音がキャンセルされる。同様に、右スピーカ11の振動板111の後方及び左スピーカ12の振動板121の後方から放音方向とは逆の方向である-X方向に出力される音と、中央スピーカ13の振動板131の前方から-X方向に出力される音とは、互いに逆位相の音となる。このため、-X方向でも音の打ち消しあいが生じ、音がキャンセルされる。このような音の打ち消しあいによるコンパクトな音場を生成する効果は、後述する。
【0022】
右スピーカ11は、振動板111と、磁気回路部112と、平面バッフル113とを備える。左スピーカ12は、振動板121と、磁気回路部122と、平面バッフル123とを備える。中央スピーカ13は、振動板131と、磁気回路部132と、平面バッフル133とを備える。各スピーカ11、12、13は、振動板111、121、131及び磁気回路部112、122、132により、図示しないアンプからの音響信号(電気信号)を物理的な音(空気の振動)に変換する。また、平面バッフル113、123、133は、各スピーカ11、12、13の放音方向の後面側に放出された低音が前面側に回折するのを遮るものである。
【0023】
図2に示すように、中央スピーカ13の振動板131は、右スピーカ11及び左スピーカ12の放音方向である+X方向であるヘッドレスト2の奥行方向に対して、右スピーカ11の振動板111及び左スピーカ12の振動板121からオフセットされる位置、つまり同一平面上でない位置に配置される。このような配置により、すべての振動板111、121、131が同一平面に配置される場合に比べて、各振動板111、121、131同士が干渉しなくなるため、スピーカシステム1の大きさを抑制しながら、各スピーカ11、12、13のスピーカ口径を大きくすることができる。これにより、各振動板111、121、131の振動(振幅)をむやみに大きくすることなく、各スピーカ11、12、13が低音の音を出力することができ、スピーカシステム1としてのコンパクトさと、低音に向いた大口径のスピーカ振動板の採用とを両立させることができる。ここで、低音とは、本例においては、周波数が500Hz以下の音である。
【0024】
また、
図2に示すように、右スピーカ11の振動板111は、その横幅方向の中央位置がスピーカシステム1のユーザの右耳の後方近傍となり、左スピーカ12の振動板121は、その横幅方向の中央位置が該ユーザの左耳の後方近傍となるように配置される。これにより、右スピーカ11及び左スピーカ12から放音される正位相(正相)の音を近距離でユーザに届けることができる。また、逆位相の音を放音方向(+X方向)に向けて出力する中央スピーカ13がユーザの耳元から離れているため、逆位相の音がユーザには聞こえにくくなる。このように、ユーザの耳元では、右スピーカ11及び左スピーカ12と、中央スピーカ13とに距離差があるため、各スピーカ11、12、13から放音される音が打ち消されることがない。また、ユーザが聞く音の左右の音圧のバランスが崩れにくくなる。
【0025】
なお、ユーザの頭部Aは、
図2の+X方向に対して垂直方向(横方向)に動く可能性もあるため、ヘッドレスト2の大きさとして許容される範囲において、右スピーカ11と左スピーカ12の間隔を多少広げてもよい。
【0026】
ここで、
図2に示すように、ユーザの頭部Aの横幅Wは、例えば、日本人の平均的な顔の横幅(顔幅)で15~16cm程度である。したがって、特許文献1の音響システムのように、左右耳用の4個のスピーカがユーザの後頭部側の同一平面に配置され、正逆位相の音をそれぞれ放音する第1案では、最大でも8cm程度のスピーカ口径が限界となってしまう。
【0027】
また、特許文献1の音響システムのように、ユーザの頭部A近傍の両側面や斜め後方に配置する第2案では、ユーザの視界が損なわれてしまうという課題がある。特に、自動車等の車両を運転する場合には、このような音響システムでは、車両運転上の安全性の問題となってしまう。
【0028】
なお、特許文献1の音響システムにおいて、正逆位相を放音する2つの右耳用のスピーカと、正逆位相を放音する2つの左耳用のスピーカとをそれぞれ鉛直方向に並べて配置する方法も考えられる。しかしながら、ヘッドレスト2が、水平行だけではなく、鉛直方向にも大きくなることにより、音響システム全体が大きくなってしまうという問題がある。
【0029】
ところで、通常のスピーカである本例の各スピーカ11、12、13は、振動板111、121、131の口径D1が磁気回路部112、122、132の外径D2より大きいという特徴を有する。
【0030】
そのため、本実施の形態のスピーカシステム1では、
図2に示すように、+X方向に向くように、右スピーカ11及び左スピーカ12を配置するとともに、中央スピーカ13を右スピーカ11と左スピーカ12の間で-X方向に向くように配置している。このような配置により、スピーカシステム1全体をヘッドレスト2内にコンパクトに収納することができるとともに、各振動板111、121、131の口径D1を最大16cm程度まで大きくすることができる。これにより、特許文献1の音響システムに比べて、低音に向いた大口径のスピーカ振動板を採用しながら、スピーカシステム1全体のコンパクトさと、上述した音の打ち消しあいによるコンパクトな音場とを実現することができる。
【0031】
ヘッドレスト2内には、スピーカシステム1のユーザの頭部Aがヘッドレスト2にもたれかかっても、ユーザの後頭部が中央スピーカ13の磁気回路部132を押圧しないように、隙間(空間)が設けられる。また、ヘッドレスト2内において、+X方向前方には、ユーザの頭部Aとの接触圧力を緩和するためのクッション材40が設けられる。なお、ユーザの快適性(頭部への反発力等)を考慮した上で、クッション材40を省略することも可能である。
【0032】
<音響システム>
次に、実施の形態1にかかる音響システムについて説明する。
図3は、実施の形態1にかかる音響システム100の配線構成の一例を示す概念図である。
図3に示すように、音響システム100は、本実施の形態にかかるスピーカシステム1と、スピーカシステム1に音響信号を出力するアンプ3と、スピーカシステム1とアンプ3とを接続する複数の配線コード301~305とを備える。
【0033】
アンプ3は、スピーカシステム1の各スピーカ11、12、13に対して、右耳用のステレオ音響信号と、左耳用のステレオ音響信号とを出力するように構成される。すなわち、アンプ3は、スピーカシステム1の各スピーカ11、12、13と接続するために、4つのアンプ端子、すなわち、右耳用(R側)のプラス端子31及びマイナス端子32と、左耳用のプラス端子33及びマイナス端子34とを備える。
【0034】
一方、
図1及び
図2では図示していないが、右スピーカ11は、磁気回路部112の背面にプラス端子114及びマイナス端子115をさらに有し、左スピーカ12は、磁気回路部122の背面にプラス端子124及びマイナス端子125をさらに有し、中央スピーカ13は、磁気回路部122の背面にプラス端子134及びマイナス端子135をさらに有する。
【0035】
このように、アンプ3は、左右2つのスピーカ11、12へステレオ音響信号を出力するための4つの端子31~34を有するのに対し、スピーカシステム1は、全スピーカ11、12、13で合計6つの端子114、115、124、125、134、135を有することとなる。そのため、アンプ3とスピーカシステム1とを接続するためには、特別な配線が必要となる。本実施の形態にかかる音響システム100では、3つのスピーカ11、12、13とアンプ3との間で
図3に示すような配線がなされる。このような配線は、マトリックス配線と呼ばれ、特に、
図3の配線をセミマトリックス方式と呼ぶ。このような配線にすることにより、既存のアンプ3を有効利用することができるとともに、スピーカシステム1により作り出される音場は独特のサラウンド感を有するものとなる。
【0036】
具体的には、
図3に示すように、アンプ3の右耳用のプラス端子31は、配線コード301を介して、右スピーカ11のプラス端子114に接続され、アンプ3の左耳用のプラス端子33は、配線コード302を介して、左スピーカ12のプラス端子124に接続される。また、アンプ3の右耳用のマイナス端子32は、配線コード303を介して、中央スピーカ13のマイナス端子135に接続されるが、アンプ3の左耳用のマイナス端子34は、いずれの端子にも接続されない。
【0037】
そして、スピーカシステム1内では、中央スピーカ13のプラス端子134は、配線コード304を介して、右スピーカ11のマイナス端子115に接続されるとともに、配線コード305を介して、左スピーカ12のマイナス端子125に接続される。
【0038】
上述したアンプ3からの配線態様は、本実施の形態にかかる音響システム100の実施例の一例である。その代わりに、本実施の形態にかかる音響システム100は、アンプ3が4つの端子31~34に加えて、2つの端子をさらに有するように構成されてもよい。この場合、アンプ3から左右スピーカ11、12へステレオ音響信号を出力するための4つの端子31~34を左右スピーカ11、12の4つの端子114、115、124、125にそれぞれ接続し、アンプ3から中央スピーカ13へステレオ音響信号を出力するための追加の2つの端子(図示せず)を中央スピーカ13の2つの端子134、135にそれぞれ接続すればよい。また、中央スピーカ13へステレオ音響信号を出力するための2つの端子は、アンプ3からの出力を合成するための図示しない音響機器に備えられてもよい。
【0039】
<音場>
次に、各スピーカ11、12、13により構築される音場について説明する。
図4は、実施の形態1にかかるスピーカシステム1を構成する各スピーカ11、12、13により構築される音場のイメージを示す概念図である。ここでは、右スピーカ11及び左スピーカ12は、音響信号に基づく音を+X方向に向けて放音し、同じ音響信号に基づく音の逆位相の音を-X方向に向けて放音するように構成される。また、中央スピーカ13は、右スピーカ11及び左スピーカ12と逆方向を向いて設置されることにより、同じ音響信号に基づく音を-X方向に向けて放音し、同じ音響信号に基づく音の逆位相の音を+X方向に向けて放音するように構成される。
【0040】
図4(a)に示すように、例えば、右スピーカ11の前方から放音される正位相の音による音場S1と、右スピーカ11の後方から放音される逆位相の音による音場S2とは、そのスピーカを中心として前方及び後方にそれぞれ広がっていく。そして、スピーカ横方向には、前方に向けて広がった正位相の音と、後方に向けて広がった逆位相の音とが打ち消しあってキャンセルされるため、音場が広がらない。また、各音場S1、S2の中心から離れるにつれて、その音圧が下がっていく。
【0041】
次に、
図4(b)に示すように、例えば、右スピーカ11と左スピーカ12を並べた場合には、両スピーカ11、12の前方及び後方で音圧がそれぞれ強め合うため、
図4(a)に示す場合より大きな音場S11(正位相)、S12(逆位相)が構築される。なお、比較のために、各スピーカ11、12が単体の場合に構築する各音場S1、S2を点線により示す。
【0042】
最後に、
図4(c)に示すように、右スピーカ11と左スピーカ12の間に中央スピーカ13を逆向きに配置した場合には、中央スピーカ13が
図4(b)に示すように大きくなった音場に対する打ち消し効果をもたらすため、
図4(b)に示す場合より小さな音場S21(正位相)、S22(逆位相)が構築される。このように、スピーカシステム1の配置によれば、ユーザの頭部A近傍を中心としたコンパクトな音場を構築することができる。
【0043】
以下では、実施例と比較例とにより、スピーカの配置に基づく音場がどのようなものであるかを説明する。
【0044】
(実施例)
まず、本実施の形態にかかるスピーカシステム1により構築される音場について説明する。
図5は、実施例にかかるスピーカシステムの音場解析における配置を示す図である。
図6は、実施例にかかるスピーカシステムの音場解析の結果を示す図である。なお、本実施例では、スピーカシステム1は、各スピーカが平面バッフルに取り付けられた開放スピーカとして構成される。
【0045】
図5(b)に示すように、本実施例のスピーカシステム1は、右スピーカ11と、左スピーカ12と、中央スピーカ13とを備える。上記で説明したように、右スピーカ11及び左スピーカ12は、ユーザの頭部Aに向かう+X方向に向くように配置され、中央スピーカ13は、その逆の-X方向に向くように配置される。
【0046】
このとき、音圧観測面SPは、
図5(a)に示すように、各スピーカ11、12、13を中心として碁盤の目状に配置される。本実施の形態の音場の構築において説明したように、右スピーカ11と中央スピーカ13から同距離となる位置では、右スピーカ11の前方から+X方向に向けて出力された音と、中央スピーカ13の後方から+X方向に向けて出力された音とが互いに逆位相であるため、音の振動が干渉しあって打ち消され、音がキャンセルされる。また、右スピーカ11の後方から-X方向に向けて出力された音と、中央スピーカ13の前方から-X方向に向けて出力された音でも同様に、音の打ち消しあいが発生し、音がキャンセルされる。
【0047】
一方、右スピーカ11や中央スピーカ13に比較的に近いユーザの頭部A近傍では、右スピーカ11と中央スピーカ13からの距離の差が大きいため、上述した音の打ち消しあいが発生せず、音がキャンセルされない。このため、本実施例のスピーカシステム1では、ユーザの頭部A近傍では音場が構築されるが、それ以外の場所では音場が構築されないようなコンパクトな音場を構築することができる。また、左スピーカ12と中央スピーカ13の関係でも、同様に、コンパクトな音場を構築することができる。
【0048】
結果として、本実施例にかかるスピーカシステム1により構築される音場は、
図6に示すように、スピーカ11、12、13からの距離が近い範囲では十分な音圧が確保されており、スピーカ11、12、13からの距離が遠くなるにつれて音圧の利得が急速に下がっていくようなコンパクトな音場となる。ここで、利得G1が示す範囲は、0dB以上の利得の音圧の範囲である。また、利得G2が示す範囲は、-9~0dBの利得の音圧の範囲であり、利得G3が示す範囲は、-18~-9dBの利得の音圧の範囲である。―18dB未満の利得G4の範囲は、各スピーカ11、12、13から放音される音がほとんど又は全く聞き取れない範囲となる。
【0049】
図6に示す音場解析の結果から分かるように、本実施例のスピーカシステム1によれば、スピーカ口径の大きさを確保しながらスピーカシステム1全体の大きさを抑制することができるとともに、スピーカシステム1の近傍にコンパクトな音場を実現することができる。特に、ユーザの左右耳近傍には、最も利得の高い利得G1の音圧(音)が届くこととなるため、スピーカシステム1のユーザは、音質の安定した音を聞くことができる。一方、音場がコンパクトであるため、同じ部屋等の近くにいる他のユーザは、漏れ聞こえる音により不快と感じることもない。
【0050】
(比較例1)
次に、比較例1にかかるスピーカシステムにより構築される音場について説明する。
図7は、比較例1にかかるスピーカシステムの音場解析における配置を示す図である。
図8は、比較例1にかかるスピーカシステムの音場解析の結果を示す図である。なお、比較例1では、スピーカシステムは、密閉スピーカとして構成される。
【0051】
図7(b)に示すように、比較例1のスピーカシステムは、右スピーカ11と、左スピーカ12とを備える。この比較例1では、右スピーカ11及び左スピーカ12は、ユーザの頭部Aに向かう+X方向に正位相の音を放音するように配置される。すなわち、比較例1では、+X方向に逆位相の音を放音するスピーカが配置されていない。
【0052】
このとき、音圧観測面SPは、
図7(a)に示すように、各スピーカ11、12を中心として碁盤の目状に配置される。比較例1においても、上記実施例と同様に、各スピーカ11、12から離れるにつれて、音圧の利得は下がっていくこととなる。
【0053】
結果として、比較例1にかかるスピーカシステムにより構築される音場は、
図8に示すように、実施例に比べて、かなり広範囲に広がっていく。なお、利得G1~G4については、上記実施例と同様である。
【0054】
図8に示す音場解析の結果から分かるように、比較例1のスピーカシステムによれば、実施例と同様に、ユーザの左右耳近傍には、最も利得の高い利得G1の音圧(音)が届くこととなる。しかしながら、利得G2の音圧や利得G3の音圧は、音が打ち消しあうこともなく、概ね同心円状に広範囲に広がってしまう。このように、比較例1のスピーカシステムでは、同じ部屋等の近くにいる他のユーザは、漏れ聞こえる音により不快と感じることも考えられる。
【0055】
(比較例2)
最後に、比較例2にかかるスピーカシステムにより構築される音場について説明する。
図9は、比較例2にかかるスピーカシステムの音場解析における配置を示す図である。
図10は、比較例2にかかるスピーカシステムの音場解析の結果を示す図である。なお、比較例2では、スピーカシステムは、開放スピーカとして構成される。
【0056】
図9(b)に示すように、比較例2のスピーカシステムは、正位相の音を放音する第1右スピーカ11と、逆位相の音を放音する第2右スピーカ14と、正位相の音を放音する第1左スピーカ12と、逆位相の音を放音する第2左スピーカ15とを備える。この構成は、特許文献1に記載の音響システムに対する第2案に対応する。すなわち、第1右スピーカ11及び第2右スピーカ14は、ユーザの頭部Aにおける右耳に向かう+Y方向に放音するように配置され、第1左スピーカ12及び第2左スピーカ15は、その逆の-Y方向に放音するように配置される。
【0057】
このとき、音圧観測面SPは、
図9(a)に示すように、各スピーカ11、12、14、15を中心として碁盤の目状に配置される。実施例と同様に、各スピーカ11、12、14、15から離れるにつれて、音圧の利得は下がっていき、第1右スピーカ11と第2右スピーカ14から同距離となる位置や、第1左スピーカ12と第2左スピーカ15から同距離となる位置では、音が打ち消し合い、音圧の利得は計測できない程小さくなる。
【0058】
結果として、比較例2にかかるスピーカシステムにより構築される音場は、
図10に示すように、スピーカ11、12、14、15からの距離につれて音圧の利得が下がっていく。なお、利得G1~G4については、上記実施例と同様である。
【0059】
図10に示す音場解析の結果から分かるように、比較例2のスピーカシステムによれば、実施例と同様に、音質の安定したさらにコンパクトな音場を実現することができる。しかしながら、ユーザの頭部Aの両側面に2つずつのスピーカを設置しなければならず、上記第2案でも説明したように、ユーザの視界が損なわれてしまうとともに、その設置方法にも問題がある。音場がコンパクトであるため、同じ部屋等の近くにいる他のユーザは、漏れ聞こえる音により不快と感じることはないが、自動車等の車両を運転する場合には、安全性の問題が生じてしまう。また、結果として、同方向に放音させるように2つのスピーカペア11と14、12と15を並べて配置する必要があるため、3つのスピーカで構成される実施例のスピーカシステム1に比べて、スピーカシステム全体として大きくなってしまうという問題もある。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態にかかるスピーカシステム1は、音響信号に基づく右耳用の音を放音する右スピーカ11と、音響信号に基づく左耳用の音を放音する左スピーカ12と、右スピーカ11及び左スピーカ12の間に配置され、これらの音響信号に基づく右耳用の音及び左耳用の音を放音する中央スピーカ13とを備えるように構成される。そして、右スピーカ11、左スピーカ12、及び中央スピーカ13は、それぞれ、平面バッフル113、123、133に取り付けられており、中央スピーカ13は、その放音方向が、右スピーカ11及び左スピーカ12の放音方向とは逆方向に向くように配置されるように構成される。通常、各スピーカ11、12、13では、振動板111、121、131の口径D1が磁気回路部112、122、132の外径D2より大きい。そのため、各スピーカ11、12、13を放音方向が互い違いになるように配置することにより、スピーカシステム1全体の大きさを抑制することができるとともに、各スピーカ11、12、13のスピーカ口径を大きくすることができる。これにより、低音の音の広がりを抑制して、音質の安定したコンパクトな音場を実現することができる。
【0061】
また、本実施の形態にかかるスピーカシステム1では、右スピーカ11の振動板111は、その横幅方向の中央位置がスピーカシステム1のユーザの右耳の後方近傍となり、左スピーカ12の振動板121は、その横幅方向の中央位置がユーザの左耳の後方近傍となるように配置される。このように構成されることにより、スピーカシステム1のユーザの左右耳近傍には、最も利得の高い利得G1の音圧(音)が届くこととなるため、スピーカシステム1のユーザは、音質の安定した音を聞くことができる。一方、音場がコンパクトであるため、同じ部屋等の近くにいる他のユーザは、漏れ聞こえる音により不快と感じることもない。
【0062】
また、本実施の形態にかかる音響システム100は、上述のようなスピーカシステム1と、右耳用のステレオ音響信号と、左耳用のステレオ音響信号とを出力するアンプ3と、を備えるように構成される。そして、スピーカシステム1の右スピーカ11、左スピーカ12、及び中央スピーカ13は、それぞれ、アンプ3からステレオ音響信号が入力されるプラス端子114、124、134及びマイナス端子115、125、135を有する。また、アンプ3は、右スピーカ11、左スピーカ12、及び中央スピーカ13に対応して、右耳用のステレオ音響信号及び左耳用のステレオ音響信号の各々のためのプラス端子31、33及びマイナス端子32、34をそれぞれ有する。さらに、右スピーカ11、左スピーカ12、及び中央スピーカ13と、アンプ3とは、アンプ3の右耳用のプラス端子31が右スピーカ11のプラス端子114に接続され、アンプ3の左耳用のプラス端子33が左スピーカ12のプラス端子124に接続され、アンプ3の右耳用のマイナス端子32が中央スピーカ13のマイナス端子135に接続され、中央スピーカ13のプラス端子134が、右スピーカ11のマイナス端子115及び左スピーカ12のマイナス端子125に接続されるように構成される。音響システム100をこのように構成することにより、上述したスピーカシステム1の効果を最大限に発揮することができる。また、スピーカシステム1とアンプ3とをこのように接続することにより、既存のアンプ3を有効利用することができるとともに、スピーカシステム1により作り出される音場は独特のサラウンド感を有するものとなる。
【0063】
(実施の形態2)
以下、
図11~
図13を参照して、実施の形態2にかかるスピーカシステムを説明する。なお、
図11と
図12は、実施の形態1の
図1と
図2に対して、後述するように、接触センサ50と、位置変更機構60とを追加したものである。そのため、実施の形態2にかかるスピーカシステム1Aにおいて重複する構成要素については、その説明を省略する。
【0064】
<スピーカシステム>
まず、実施の形態2にかかるスピーカシステム1Aの構成について説明する。
図11は、実施の形態2にかかるスピーカシステム1Aの全体構成を示す正面図である。
図12は、実施の形態2にかかるスピーカシステム1の配置の一例を示す上面図である。
図13は、
図11に示すスピーカシステム1Aにおけるスピーカ位置変更方法の一例を示すブロック図である。なお、スピーカシステム1Aの各部において、実施の形態1のスピーカシステム1と同一又は類似の構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0065】
図11~
図13に示すように、スピーカシステム1Aは、実施の形態1のスピーカシステム1に対して、接触センサ50と、位置変更機構60と、制御部70とをさらに備えている。なお、図示しないが、制御部70は、ヘッドレスト2内に設けられる。しかしながら、制御部70は、図示しない無線通信部を介して通信を行うことができる場合には、別の場所に設けられてもよい。また、スピーカシステム1Aが車両のヘッドレスト2内に配置されている場合には、制御部70は、車両のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)により代用されてもよい。
【0066】
接触センサ50は、ヘッドレスト2とユーザの頭部Aとの接触を検知するように構成される。接触センサ50は、スイッチタイプの触覚スイッチであってもよく、接触圧力を検知する圧力センサであってもよい。接触センサ50は、ユーザの頭部Aの接触を検知すると、接触検知を示す検知結果(検知情報)を制御部70に出力する。
【0067】
制御部70は、スピーカシステム1Aの全体を制御するものであり、プロセッサやCPU(Central Processing Unit)により構成される。制御部70は、接触センサ50の検知情報を受けると、中央スピーカ13のX方向における位置を変更するように、位置変更機構60を制御する。
【0068】
位置変更機構60は、制御部70からの指示に応じて、中央スピーカ13を-X方向に所定距離だけ移動させるように構成される。位置変更機構60は、例えば、電動アクチュエータで構成される。ここで、所定距離は、右スピーカ11及び左スピーカ12から+X方向に向けて放音した正位相の音と、中央スピーカ13から+X方向に放音した逆位相の音により、ユーザの耳元付近で音の打ち消しあいが発生しない距離である。ヘッドレスト2とユーザの頭部Aとの接触が検知された場合、右スピーカ11及び左スピーカ12からユーザの耳元までの距離と、中央スピーカ13からユーザの耳元までの距離との差が相対的に大きくなるため、右スピーカ11及び左スピーカ12に対し、中央スピーカ13を離れて配置することが好ましい。このため中央スピーカ13を、位置変更機構60によって-X方向に移動させる。
【0069】
ここで、接触センサ50が圧力センサから構成される場合には、制御部70の制御に応じて、位置変更機構60は、中央スピーカ13の位置を段階的に移動させてもよい。例えば、圧力センサの閾値として、P1、P2(P1<P2)が制御部70に設定されているものとする。この場合、接触センサ50から受けた検知結果がP1以上P2未満である場合には、制御部70は、中央スピーカ13を-X方向に所定距離の半分だけ移動させるように、位置変更機構60を制御する。また、接触センサ50から受けた検知結果がP2以上である場合には、制御部70は、中央スピーカ13を-X方向に所定距離だけ移動させるように、位置変更機構60を制御する。
【0070】
なお、接触センサ50の代わりに、図示しない測距センサを設けてもよい。そして、制御部70は、測距センサの検知結果であるヘッドレスト2とユーザの頭部Aとの距離に基づいて、位置変更機構60による中央スピーカ13の移動を制御するようにしてもよい。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態にかかるスピーカシステム1Aは、実施の形態1にかかるスピーカシステム1が備える各部に加えて、ヘッドレスト2とユーザの頭部Aとの接触を検知する接触センサ50と、制御部70からの指示に応じて、中央スピーカ13を-X方向に所定距離だけ移動させる位置変更機構60と、スピーカシステム1Aの全体を制御する制御部70とをさらに備えている。制御部70は、接触センサ50の検知情報を受けると、中央スピーカ13のX方向における位置を変更するように、位置変更機構60を制御する。位置変更機構60は、制御部70からの指示に応じて、中央スピーカ13を-X方向に所定距離だけ移動させる。スピーカシステム1Aをこのように構成することにより、ユーザがヘッドレスト2に頭部Aを付けている状態か、頭部Aが離れている状態かによって、中央スピーカ13のX方向での位置を調整することができる。これにより、実施の形態1のスピーカシステム1による効果に加えて、中央スピーカ13から放音される逆位相の音を遠ざけつつ、右スピーカ11及び左スピーカ12から放音される正位相(正相)の音を近距離でユーザに届けることができる。すなわち、逆位相を再生する中央スピーカ13がユーザの耳元に置かれていないので、逆位相の音がユーザには聞こえにくくなり、結果として、ユーザが聞く音の音質が良くなるという効果を奏する。
【0072】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。そして、各実施の形態は、適宜他の実施の形態と組み合わせることができる。
【0073】
各図面は、1又はそれ以上の実施形態を説明するための単なる例示である。各図面は、1つの特定の実施形態のみに関連付けられるのではなく、1又はそれ以上の他の実施形態に関連付けられてもよい。当業者であれば理解できるように、いずれか1つの図面を参照して説明される様々な特徴又はステップは、例えば明示的に図示又は説明されていない実施形態を作り出すために、1又はそれ以上の他の図に示された特徴又はステップと組み合わせることができる。例示的な実施形態を説明するためにいずれか1つの図に示された特徴又はステップのすべてが必ずしも必須ではなく、一部の特徴又はステップが省略されてもよい。いずれかの図に記載されたステップの順序は、適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1、1A スピーカシステム
11 右スピーカ
12 左スピーカ
13 中央スピーカ
111、121、131 振動板
112、122、132 磁気回路部
113、123、133 平面バッフル
114、124、134 スピーカ端子(+側)
115、125、135 スピーカ端子(-側)
2 ヘッドレスト
30 フレーム
40 クッション材
50 接触センサ
60 位置変更機構
70 制御部
100 音響システム
3 アンプ
31~34 アンプ端子
301~305 配線コード
D1 スピーカ口径
D2 磁気回路部の外径
A ユーザの頭部
W 頭部の横幅
S1、S2、S11、S12、S21、S22 音場
SP 音圧観測面