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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099459
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216138
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大内 健次
(72)【発明者】
【氏名】武内 保生
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BC02
5F058BC04
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF29
5F058BH16
5F058BJ04
(57)【要約】
【課題】導電層又は半導体層の表面のコロージョンを抑制する。
【解決手段】処理容器内に導電層又は半導体層を有する基板を準備する工程と、前記処理容器内に水素及び窒素を含む第1ガスを供給し、該第1ガスから生成されたプラズマに前記基板をさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の表面を還元する工程と、水素化されたシリコン又はアルキル化されたアルミニウムを含む第2ガスを供給し、還元された前記導電層又は前記半導体層を前記第2ガスにさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の上にシリコン又はアルミニウムを吸着させて安定化層を形成する工程と、を含む、基板処理方法が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に導電層又は半導体層を有する基板を準備する工程と、
前記処理容器内に水素及び窒素を含む第1ガスを供給し、該第1ガスから生成されたプラズマに前記基板をさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の表面を還元する工程と、
水素化されたシリコン又はアルキル化されたアルミニウムを含む第2ガスを供給し、還元された前記導電層又は前記半導体層を前記第2ガスにさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の上にシリコン又はアルミニウムを吸着させて安定化層を形成する工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1ガスに含まれる水素原子と窒素原子の和に対する水素原子の割合は、0.75~1未満である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1ガスは、Hガス及びNガスの混合ガス、Hガス及びNHガスの混合ガスのうちの、いずれかである、
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1ガスに含まれる水素原子と窒素原子の和に対する水素原子の割合は、0.95~1未満である、
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1ガスは、Hガス及びNガスの混合ガスである、
請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2ガスは、SiH、Si、TMA(Al(CH)、又はTMAH(AlH(CH)のいずれかを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記還元する工程において、前記処理容器内の圧力は、20Pa~100Paである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記導電層は、Cu、Al、Ru、Ti、Mo、Co、W、Taのうちの、いずれかである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記半導体層は、Siである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記安定化層を形成する工程において、前記処理容器内の温度は、室温~350℃である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記安定化層を形成する工程において、前記処理容器内の温度は、室温~100℃である、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
処理容器と、
前記処理容器内にガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器内に高周波電力を供給する電源と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
処理容器内に導電層又は半導体層を有する基板を準備することと、
前記ガス供給部から前記処理容器内に水素及び窒素を含む第1ガスを供給し、該第1ガスから生成されたプラズマに前記基板をさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の表面を還元することと、
前記ガス供給部から水素化されたシリコン又はアルキル化されたアルミニウムを含む第2ガスを供給し、還元された前記導電層又は前記半導体層を前記第2ガスにさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の上にシリコン又はアルミニウムを吸着させて安定化層を形成することと、
を制御する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板上に形成された導電層に対して、絶縁膜を形成し、ハロゲンガスを含む第1のガスを用いて絶縁膜をドライエッチングして、導電層の表面を露出させ、露出した導電層に対して還元可能な第2のガスを用いて第1のプラズマ処理を行い、露出した導電層に対して、C元素及びO元素を含みハロゲン元素を含まない第3のガスを用いて第2のプラズマ処理を行うことが記載されている。また、第2のガスとして、H、N、NHを含むもの、例えばN/Hを用いてプラズマ処理が行われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-243680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、導電層又は半導体層の表面のコロージョンを抑制することができる基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、処理容器内に導電層又は半導体層を有する基板を準備する工程と、前記処理容器内に水素及び窒素を含む第1ガスを供給し、該第1ガスから生成されたプラズマに前記基板をさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の表面を還元する工程と、水素化されたシリコン又はアルキル化されたアルミニウムを含む第2ガスを供給し、還元された前記導電層又は前記半導体層を前記第2ガスにさらすことにより、前記導電層又は前記半導体層の上にシリコン又はアルミニウムを吸着させて安定化層を形成する工程と、を含む、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、導電層又は半導体層の表面のコロージョンを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基板処理方法の従来例を示すフローチャート。
図2】プラズマ処理装置の一例を示す図。
図3】一実施形態に係る基板処理方法の一例を示すフローチャート。
図4】工程ごとのウエハの断面模式図の一例。
図5】処理容器内の圧力とイオンエネルギーとの関係の一例を示すグラフ。
図6】HとN原子の和に対するH原子の割合と接触角の関係の一例を示すグラフ。
図7】HとN原子の和に対するH原子の割合と表面粗さの関係の一例を示すグラフ。
図8】安定化処理の有無とウエハの断面模式図の一例。
図9】XPS解析結果の一例を示すグラフ。
図10】XPS解析結果の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理方法の従来例]
金属膜(導電層)のエッチングやSiFガス等を用いた選択成膜等を行う際に、ハロゲン化合物を含むエッチャント又はプリカーサを用いることにより、金属膜のハロゲン化や酸化が生じる。例えば金属膜のハロゲン化では、金属膜の表面にハロゲン化合物の吸着が生じる。ハロゲン化や酸化した金属膜を大気に暴露すると、金属膜の表面が水と反応することでコロージョン(腐食)が発生し、金属パターンの形成に悪影響が生じたり、デバイスが破壊されたりする場合がある。そのため、コロージョンを抑制するための基板処理方法が重要になってくる。
【0010】
一般的なコロージョン対策として従来から行われている基板処理方法の一例を、図1を参照しながら説明する。図1では、ステップS1において成膜処理を実行する。例えば、金属膜のパターンが形成された下地層に対してSiFガスを用いて絶縁膜を成膜する場合、SiFガスに含まれるフッ素により金属膜のハロゲン化が生じる。
【0011】
ステップS2において、過剰なハロゲンの除去を目的にHガスからプラズマを生成し、ハロゲン化した金属膜をプラズマにさらしてトリートメントを行った後、ステップS3において、ウエハの表面に水を供給し、ウエハの表面に対して水洗浄を行う。この水洗浄により、過剰なハロゲンを取り除くことができる。
【0012】
しかし、この方法では、水洗浄を行うためにウエハを大気に暴露している時間(Q-Timeという。)の管理が必要となってくるため、プロセスが煩雑になる。そのため、水洗浄に代えてウエハを大気に暴露せずにコロージョンを抑制することが可能な処理、もしくは、Q-Timeを延ばすための処理が重要となる。
【0013】
そこで、本実施形態に係る基板処理方法では、導電層又は半導体層に対する表面処理によって導電層又は半導体層の表面のコロージョンを抑制する。以下、図2を参照しながら、一実施形態に係る基板処理方法を実行可能な一実施形態に係る基板処理装置の構成例について説明する。その後、図3を参照しながら、一実施形態に係る基板処理方法の一例について説明する。
【0014】
[基板処理装置]
図2は、プラズマ処理装置の一例を示す図である。図2には、ウエハWを一例とする基板に対する基板処理方法の種々の実施形態で利用可能なプラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。図2に示すように、プラズマ処理装置10は、誘導結合プラズマ処理装置である。プラズマ処理装置10は、基板処理装置の一例である。基板処理装置は、誘導結合プラズマ処理装置に限られず、容量結合プラズマ処理装置、マイクロ波プラズマ処理装置等のプラズマ処理装置を適用できる。ウエハWに成膜される絶縁膜は、少なくともシリコン(Si)、酸素(O)を含む膜であり、例えばSiO膜、SiOF膜であってもよい。
【0015】
プラズマ処理装置10は、処理容器1を備える。処理容器1は、気密に設けられている。処理容器1は、導電性材料を含み、例えば、処理容器1の内壁面は、陽極酸化処理されたアルミニウム等の材料を含み得る。処理容器1は、分解可能に組み立てられており、接地線1aによって接地されている。処理容器1は、誘電体壁2によって、上下にアンテナ室3と処理室4とに区画されている。誘電体壁2は、処理室4の天井壁を構成している。誘電体壁2は、例えばAl等のセラミックス、石英等で構成されている。
【0016】
誘電体壁2の下側部分には、処理ガス供給用のシャワー筐体11が嵌め込まれている。シャワー筐体11は、十字状に設けられており、誘電体壁2を下から支持する。誘電体壁2を支持するシャワー筐体11は、複数本のサスペンダ(図示せず)によって、処理容器1の天井に吊されている。
【0017】
シャワー筐体11は、金属等の導電性材料を含み得る。シャワー筐体11の内面は、汚染物が発生しないように、例えば陽極酸化処理されたアルミニウム等を含み得る。シャワー筐体11には、誘電体壁2に沿って延びるガス流路12が形成されており、ガス流路12には、載置台22に向かって延びる複数のガス供給孔12aが連通している。誘電体壁2の上面中央には、ガス流路12に連通するようにガス供給管20aが設けられている。ガス供給管20aは、誘電体壁2から処理容器1の外側に延びており、処理ガス供給源およびバルブシステム等を含む処理ガス供給系20に接続されている。処理ガス供給源は、SiFガス供給源51a、Oガス供給源52a、Hガス供給源53a、Nガス供給源54a、SiHガス供給源55a及びArガス供給源56aを有する。
【0018】
SiFガス供給源51aは、ガス供給ライン51bを介してSiFガスを処理室4内に供給する。ガス供給ライン51bには、上流側から流量制御器51c及びバルブ51dが介設されている。ガス供給ライン51bのバルブ51dの下流側は、ガス供給ライン57を介してガス供給管20aに接続されている。SiFガス供給源51aから供給されるSiFガスの供給及び停止は、バルブ51dの開閉により行われる。
【0019】
ガス供給源52aは、ガス供給ライン52bを介してOガスを処理室4内に供給する。ガス供給ライン52bには、上流側から流量制御器52c及びバルブ52dが介設されている。ガス供給ライン52bのバルブ52dの下流側は、ガス供給ライン57を介してガス供給管20aに接続されている。Oガス供給源52aから供給されるOガスの供給及び停止は、バルブ52dの開閉により行われる。
【0020】
ガス供給源53aは、ガス供給ライン53bを介してHガスを処理室4内に供給する。ガス供給ライン53bには、上流側から流量制御器53c及びバルブ53dが介設されている。ガス供給ライン53bのバルブ53dの下流側は、ガス供給ライン57を介してガス供給管20aに接続されている。Hガス供給源53aから供給されるHガスの供給及び停止は、バルブ53dの開閉により行われる。
【0021】
ガス供給源54aは、ガス供給ライン54bを介してNガスを処理室4内に供給する。ガス供給ライン54bには、上流側から流量制御器54c及びバルブ54dが介設されている。ガス供給ライン54bのバルブ54dの下流側は、ガス供給ライン57を介してガス供給管20aに接続されている。Nガス供給源54aから供給されるNガスの供給及び停止は、バルブ54dの開閉により行われる。
【0022】
SiHガス供給源55aは、ガス供給ライン55bを介してSiHガスを処理室4内に供給する。ガス供給ライン55bには、上流側から流量制御器55c及びバルブ55dが介設されている。ガス供給ライン55bのバルブ55dの下流側は、ガス供給ライン57を介してガス供給管20aに接続されている。SiHガス供給源55aから供給されるSiHガスの供給及び停止は、バルブ55dの開閉により行われる。
【0023】
Arガス供給源56aは、ガス供給ライン56bを介してArガスを処理室4内に供給する。ガス供給ライン56bには、上流側から流量制御器56c及びバルブ56dが介設されている。ガス供給ライン56bのバルブ56dの下流側は、ガス供給ライン57を介してガス供給管20aに接続されている。Arガス供給源56aから供給されるArガスの供給及び停止は、バルブ56dの開閉により行われる。
【0024】
プラズマ処理においては、処理ガス供給系20から供給される処理ガスは、ガス供給管20aを介してシャワー筐体11内に供給され、シャワー筐体11の下面(処理室4に向いている面)のガス供給孔12aから処理室4内へ吐出される。
【0025】
処理容器1におけるアンテナ室3の側壁3aと処理室4の側壁4aとの間には内側に突出する支持棚5が設けられており、支持棚5の上に誘電体壁2が載置される。
【0026】
アンテナ室3内には誘電体壁2の上に誘電体壁2に面するように高周波アンテナ13が配設されている。高周波アンテナ13は、絶縁部材からなるスペーサ13aによって、誘電体壁2から例えば50[mm]以下の範囲で離間している。アンテナ室3の中央部付近には、誘電体壁2の上面に垂直な方向に(鉛直方向に)延びる4つの給電部材16が設けられており、4つの給電部材16には整合器14を介して高周波電源15が接続されている。給電部材16は、ガス供給管20aの周囲に配置されている。
【0027】
プラズマ処理中において、高周波電源15からは、誘導電界形成用の例えば13.56[MHz]程度の周波数のプラズマ生成用高周波電力(RF)が高周波アンテナ13を介して処理室4内に供給される。このように高周波電源15からプラズマ生成用高周波電力が処理室4内に供給されることによって、処理室4内に誘導電界が形成され、この誘導電界によって、シャワー筐体11から処理室4内に供給される処理ガスのプラズマが生成される。なお、シャワー筐体11は、十字状に設けられており、高周波アンテナ13からの高周波の電力の処理室4内への供給は、シャワー筐体11が金属であっても妨げられない。
【0028】
処理室4内の下方(誘電体壁2の反対側)には、載置台22が設けられている。載置台22は、誘電体壁2を挟んで高周波アンテナ13と対向する。載置台22には、ウエハWが載置される。載置台22は、導電性材料を含み得る。載置台22の表面は、例えば陽極酸化処理、または、アルミナ溶射されたアルミニウムを含み得る。載置台22に載置されたウエハWは、静電チャック(図示せず)によって載置台22に吸着保持される。
【0029】
載置台22は、絶縁体枠24内に収納され、支柱25に支持される。支柱25は、中空の構造を備える。載置台22を収納する絶縁体枠24と処理容器1の底部(処理容器1のうち支柱25が設けられている側)との間には、支柱25を気密に包囲するベローズ26が配設されている。処理室4の側壁4aには、ウエハWを搬入出するための搬入出口27aと、搬入出口27aを開閉するゲートバルブ27とが設けられている。
【0030】
載置台22は、支柱25内に設けられた給電棒25aによって、整合器28を介して高周波電源29に接続されている。高周波電源29は、プラズマ処理中に、バイアス用高周波電力、例えば400[kHz]~6[MHz]程度の周波数のバイアス用高周波電力を載置台22に印加する。このバイアス用高周波電力によって、処理室4内に生成されたプラズマ中のイオンが効果的にウエハWに引き込まれ得る。
【0031】
載置台22内には、ウエハWの温度を制御することを目的として、セラミックヒータ21等の加熱手段および冷媒流路等を備える温度制御機構と、温度センサとが設けられている(いずれも図示せず)。当該温度制御機構、温度センサ、部材に対する配管および配線は、いずれも支柱25の内部を通して処理容器1外に導出される。
【0032】
処理室4の底部(処理室4のうち支柱25が設けられている側)には、排気管31を介して真空ポンプ等を含む排気装置30が接続される。排気装置30によって、処理室4が排気され、プラズマ処理中において、処理室4内が所定の真空雰囲気(例えば1.33[Pa]程度の気圧)に設定され、維持される。
【0033】
高周波アンテナ13は、四つの給電部(例えば、給電部41、給電部43等)を有する。四つの給電部は、給電部材16に接続される。四つの給電部は、高周波アンテナ13の中心の周囲において、例えば90度程度ずつ離間している。四つの給電部のそれぞれからは2本のアンテナ線が外側に延びており、それぞれのアンテナ線は、コンデンサ18を介して接地される。
【0034】
プラズマ処理装置10は、制御部Cntを備える。制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。制御部Cntがプラズマ処理装置10の外部に設けられている場合、制御部Cntは、有線又は無線等の通信手段によって、プラズマ処理装置10を制御できる。
【0035】
制御部Cntは、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。制御部Cntからの制御信号によって、処理ガス供給系20から供給されるガスの選択および流量と、排気装置30の排気と、高周波電源15および高周波電源29からの電力供給と、載置台22の温度と、を制御することが可能である。本明細書において開示される基板に対する処理の各工程(図1に示す工程S1~S2)は、制御部Cntによる制御によってプラズマ処理装置10の各部を動作させることによって、実行され得る。
【0036】
[基板処理方法]
図3及び図4を参照しながら、一実施形態に係る基板処理方法STの一例について説明する。図3は、一実施形態に係る基板処理方法STの一例を示すフローチャートである。図4は、工程ごとのウエハWの断面模式図の一例である。ここでは、プラズマ処理装置10を使用してウエハWに絶縁層としてSiOF膜を成膜し、その後、後述するトリートメント処理(還元処理、安定化処理)を行う例について説明する。
【0037】
ステップS11において、制御部Cntは、処理容器1内にウエハWを準備し、成膜処理を行う。具体的には、載置台22を搬送位置に下降させた状態でゲートバルブ27を開く。続いて、搬送アーム(図示せず)によりウエハWを、搬入出口27aを介して処理容器1内に搬入し、セラミックヒータ21により所定温度(例えば、室温~350℃)に加熱された載置台22上に載置する。続いて、載置台22を処理位置まで上昇させ、排気装置30により処理容器1内を所定の真空度まで減圧する。減圧後、制御部Cntは、バルブ56dを開き、流量制御器56cを制御してArガス供給源56aからArガスを供給する。これにより、処理容器1(処理室4)内は所定の圧力で安定する。
【0038】
処理容器1内に準備するウエハWは、図4(a)に示すように、絶縁層101と導電層102とを有する。ウエハWの表面は、ダマシン(damascene)の実施の後にCMP(Chemical-Mechanical-Polishing or Planarization)を実施することによって形成される。導電層102は、ダマシンの実施を介して形成される。導電層102は、ウエハWの表面において絶縁層101に埋め込まれており、ウエハWの表面側において導電層102の表面と絶縁層101の表面とは露出されている。導電層102の材料は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、タングステン(W)、タンタル(Ta)のうちのいずれかであり得る。
【0039】
処理容器1内に準備するウエハWは、図4(a)に示す導電層102の代わりに半導体層を有してもよい。この場合、半導体層は、ウエハWの表面において絶縁層101に埋め込まれており、ウエハWの表面側において半導体層の表面と絶縁層101の表面とは露出されている。半導体層の材料は、例えば、シリコン(Si)、酸化物半導体のIGZOであり得る。
【0040】
絶縁層101の材料は、Low-K膜、金属酸化物絶縁膜であり得る。また、絶縁層101の材料は、x、yを自然数として、SiO、SiN、SiC、SiOC、SiOCH、Al等の絶縁膜であり得る。
【0041】
ステップS11において、制御部Cntは、ウエハWに対して成膜処理を行う。成膜処理の一例としては、図4(b)に示すように、絶縁層101の表面上にSiOF膜103が選択的に成膜される。よって、導電層102の表面上にSiOF膜103は形成されていない。
【0042】
SiOF膜103の成膜処理では、制御部Cntは、Arガスの供給を維持しつつ、バルブ52dを開き、流量制御器52cを制御してOガス供給源52aからOガスを供給する。
【0043】
次に、制御部Cntは、高周波電源15により、高周波アンテナ13を介して処理室4にプラズマ生成用高周波電力(RF)を供給し、Oガスからプラズマを生成する。
【0044】
次に、制御部Cntは、バルブ51dを開き、流量制御器51cを制御してSiFガス供給源51aからSiFガス供給する。制御部Cntは、高周波電源15により、高周波アンテナ13を介して処理室4にプラズマ生成用高周波電力を供給し、SiFガスからプラズマを生成する。SiFガスのプラズマの生成は、Oガスのプラズマの生成と同時か、Oガスのプラズマ生成以降であればよい。
【0045】
ガスとSiFガスのプラズマによりウエハWにSiOF膜が成膜される。所定時間が経過すると、制御部Cntは、バルブ56d、52d、51dを閉じ、Arガス、Oガス、SiFガスの供給を停止し、処理室4からガスを排除する。
【0046】
この状態で後述する還元処理を実行しない場合、特に導電層102の表面が腐食し、コロージョンが発生する。この結果、図4(c)に示すように、導電層102の上にハロゲン化物104が形成される。このため、制御部Cntは、ステップS11において成膜処理を実行した後に、コロージョンを抑制するために還元処理を行う。
【0047】
ステップS13における還元効率を高めるために、ステップS12において、制御部Cntは、バルブ53dを開き、流量制御器53cを制御してHガス供給源53aからHガスを供給し、処理容器1の圧力を20Pa~100Paの範囲に制御する。制御部Cntは、Hガスの供給を維持しつつ、処理室4内をパージする。ここで、制御部Cntは、流量制御器53cによりHガス供給源53aからのHガスの流量を制御しつつ、排気装置30を制御して処理室4内の圧力を20Pa以上100Pa以下に制御する。
【0048】
図5は、処理室4内の圧力とイオンエネルギーとの関係の一例を示すグラフである。横軸のPressureは、処理室4内の圧力を示し、縦軸のion energyは、イオンエネルギーを示す。グラフでは、イオンエネルギーは、処理室4内の圧力が高いほど低くなっており、20Pa以上100Pa以下の範囲では、イオンエネルギーがわずかであるために、イオンによるダメージが小さくウエハW表面のラフネス(表面粗さ)が良くなる。
【0049】
ガスの流量及び処理室4内の圧力が調整されると、制御部Cntの処理はステップS13に進む。ステップS13において、制御部Cntは、Hガスの供給を維持しつつ、処理室4内に水素及び窒素を含む第1ガスを供給し、第1ガスから生成されたプラズマにウエハWをさらす。第1ガスは、Nガス、NHガスのうち、いずれかであってもよい。ここでは、一例として、Hガス及び第1ガスとしてNガスを供給する。
【0050】
制御部Cntは、バルブ53dを開いた状態で更にバルブ54dを開き、流量制御器53c、54cを制御してHガス供給源53a及びNガス供給源54aから処理室4内にHガスとNガスを供給する。制御部Cntは、高周波電源15により高周波アンテナ13を介して処理室4にプラズマ生成用高周波電力(RF)を供給し、処理室4にてHガス及びNガスからプラズマを生成する。生成されたプラズマにウエハWをさらすことにより、導電層102の表面を還元する。所定時間が経過すると、制御部Cntは、バルブ53d、54dを閉じ、HガスとNガス供給を停止し、処理室4からガスを排除する。
【0051】
還元処理において、第1ガスがHガスを含み、Nガスを含まない場合、導電層102の表面は還元され難く、ハロゲン化合物を除去することは難しい。これに対して、高周波電源29から載置台22にバイアス電力を印加し、イオンエネルギーを与えてハロゲン化合物を除去しようとすると、導電層102の表面のラフネスが悪くなる。
【0052】
導電層102の表面を還元し易くし、ハロゲン化合物の除去を促進しつつ、導電層102の表面のラフネスが良い状態にするために、第1ガスはHガスに微量のNガスを含む混合ガスとする。これにより、導電層102の表面をHとNのプラズマにより還元し易くする。この結果、図4(d)に示すように、導電層102の表面上からハロゲン化物104が除去される。ただし、導電層102の表面が不安定(活性)になり、導電層102の表面に変質層105が生じたり、多少のハロゲン化物104が残ったりする。
【0053】
そこで、ステップS14において、制御部Cntは、導電層102を第2ガスにさらすことにより、導電層102上にシリコン又はアルミニウムを吸着させて安定化層を形成する。
【0054】
この安定化処理では、バルブ56dを開き、流量制御器56cを制御してArガス供給源56aから処理室4内にArガスを供給しつつ、処理室4内に、水素化されたシリコン又はアルキル化されたアルミニウムを含む第2ガスを供給する。第2ガスは、SiH、Si、TMA(Al(CH)、又はTMAH(AlH(CH)のいずれかを含む。ここでは、第2ガスの一例として、SiHガスを供給する。
【0055】
制御部Cntは、バルブ55dを開き、流量制御器55cを制御してSiHガス供給源55aから処理室4内にSiHガスを供給する。SiHガスにウエハWをさらすことにより、導電層102の表面にシリコンを吸着させ、安定化させる。
【0056】
この結果、図4(e)に示すように、導電層102の表面に安定化層106が形成され、導電層102の表面の変質を防止又は抑制することができ、コロージョンを抑制することができる。
【0057】
ステップS14では、制御部Cntは、載置台22の温度を、室温以上であってセラミックヒータ21により温度制御が可能な350℃以下に制御してもよい。これにより、表面が還元された導電層102上に、第2ガスに含まれるシリコン又はアルミニウムが吸着し、安定化層106を形成することができる。ただし、安定化層106の形成をより確実に実施するためには、載置台22の温度を、室温以上であって100℃以下に制御することが好ましい。
【0058】
ステップS14では、第2ガスからプラズマは生成しない。プラズマを用いると導電層102上にシリコン膜が形成されてしまい、第2ガスに含まれるシリコン又はアルミニウムを導電層102上に吸着させ、安定化層106を形成することができないためである。なお、安定化層106は層状でなくてもよく、導電層102の表面が安定した状態であればよい。ステップS14の実行後、制御部Cntは、基板処理方法STを終了する。
【0059】
還元処理及び安定化処理では、真空雰囲気が好ましく、雰囲気制御された処理であってもよい。なお、雰囲気制御される場合、雰囲気ガスは、活性表面と反応しない若しくは反応しにくいガスを用いることができる。
【0060】
基板処理方法STによれば、還元処理において、第1ガスのプラズマに導電層102の表面をさらして導電層102の表面の清浄化を行う。次に、安定化処理において、還元処理により不安定(活性)になった導電層102の表面をSiHガス、TMA等の第2ガスで処理して、導電層102の表面を安定化させる。これにより、導電層102の表面のコロージョン(腐食)及び変質層105の生成を抑制することができる。
【0061】
また、還元処理において、処理容器1内の圧力を、20Pa~100Paの範囲に制御することにより、イオンエネルギーを低減することができる。これにより、イオンによるダメージが少なく、導電層102の表面のラフネス(表面粗さ)を良好にすることができる。これにより、導電層102の表面におけるコロージョンの抑制とラフネスの良さを両立することができる。
【0062】
[実験結果]
還元処理において、第1ガスに含まれる水素原子と窒素原子の和に対する水素原子の割合(以下、H/H+Nで示す。)は、0.75~1未満(0.99)であってよい。第1ガスの水素原子と窒素原子の和に対する水素原子の割合(H/H+N)は、0.95~1未満(0.99)であってよい。以下、図6及び図7を参照しながら、H/H+Nの数値についての実験結果について説明する。
【0063】
図6は、HとN原子の和に対するH原子の割合(H/H+N)と接触角θeの関係の一例を示すグラフである。図6の横軸はH/H+Nを示し、縦軸は水の接触角θeを示す。図7は、HとN原子の和に対するH原子の割合(H/H+N)と表面粗さの関係の一例を示すグラフである。図7の横軸はH/H+Nを示し、縦軸はラフネス(RMS)を示す。図6及び図7の実験では、導電層102にはメッキで成膜したCu膜を使用した。
【0064】
図6及び図7の●(黒丸)は、第1ガスがHガスとNガスとの混合ガスのとき、HガスとNガスの和に対するHガスの割合(H/H+N)をH/H+Nに換算して接触角θe及びラフネスとの関係を示したものである。図6及び図7の△(三角)は、第1ガスがHガスとNHガスとの混合ガスのとき、HガスとNHガスの和に対するHガスの割合(H/H+NH)をH/H+Nに換算して接触角θe及びラフネスとの関係を示したものである。図6及び図7の〇(白丸)は、第1ガスがNガスとNHガスとの混合ガスのとき、NHに対するNガスの割合(N/NH)を、NH中のHとNをH:N=3:1としてH/H+Nに換算して接触角θe及びラフネスとの関係に示したものである。
【0065】
図6のグラフでは、上記3種類の混合ガスからそれぞれ生成されたプラズマに銅メッキで形成されたCu膜の導電層102の表面をさらした結果を示す。グラフは、縦軸の水の接触角θeにおいて導電層102の表面の親水性の挙動を示す。
【0066】
これによれば、導電層102の表面が還元処理により清浄化し、親水性になると接触角θeの角度が上がる方に変化した。接触角θeが40度~45度であれば、導電層102の表面が清浄化していると判断できる。また、接触角θeが40度~45度以上でほぼ一定であれば、導電層102の表面が清浄化された状態で変化していないと判断できる。
【0067】
グラフから、第1ガスがHガスとNガスとの混合ガスのとき(●)及び第1ガスがHガスとNHガスとの混合ガスのとき(△)、H/H+Nが0.75~1未満の範囲で接触角θeが概ね45度以上になり、導電層102の表面の親水性が高かった。つまり、導電層102の表面が清浄化された。特に、第1ガスがHガスとNガスとの混合ガスのとき(●)、H/H+Nが0.95~1未満の範囲で接触角θeが45度よりも高く、導電層102の表面の親水性が更に高かった。つまり、導電層102の表面が更に清浄化された。また、グラフから、第1ガスがNガスとNHガスとの混合ガスのとき(〇)、H/H+Nが約0.5~約0.7の範囲において、接触角θeが40度~45度以上でほぼ一定になり、導電層102の表面が清浄化された。
【0068】
図7のグラフでは、ラフネスが1nm台程度又はそれ以下になると、導電層102の表面のラフネスが良い状態を示す。すなわち、導電層102の表面に凹凸がなく、平坦な状態を示す。
【0069】
グラフから、第1ガスがHガスとNガスとの混合ガスのとき(●)及び第1ガスがHガスとNHガスとの混合ガスのとき(△)、ラフネスが概ね1nm台になり、導電層102の表面が平坦で良い状態となった。一方、第1ガスがNガスとNHとの混合ガスのとき(〇)、ラフネスが1nm台の約2倍程度になり、導電層102の表面が平坦されていない悪い状態となった。
【0070】
以上から、第1ガスがHガスとNガスとの混合ガス、及び、NガスとNHガスとの混合ガスのとき、導電層102の表面の清浄化と、導電層102の表面のラフネスと、の両方が好ましい結果となった。つまり、還元処理に使用する第1ガスは、HガスとNガスとの混合ガス、NガスとNHガスとの混合ガスのうちの、いずれかを使用できることがわかった。
【0071】
図8は、安定化処理の有無とウエハWの断面模式図の一例である。図8の実験では、導電層102にはメッキで成膜したCu膜を使用した。また、安定化工程において、真空雰囲気に雰囲気制御し、第2ガスには、HガスとNガスとの混合ガスを使用した。この条件にて、還元処理を実行した後、安定化処理を実行していないときの導電層102上のTEM画像を図8(a)に示す。図8(a)では、Cu膜の導電層102の表面に不安定な変質層105が形成された。このとき、ウエハWを大気に暴露していない。その後、2時間、ウエハWを大気に暴露した。2時間、ウエハWを大気に暴露した後の導電層102上のTEM画像を図8(b)に示す。
【0072】
図8(b)では、導電層102の表面の不安定な変質層105が厚くなった。ハロゲン化した導電層102を有するウエハWを大気に暴露したことにより、導電層102の表面が水と反応することでコロージョン(腐食)が発生し、変質層105が厚くなったと考えられる。
【0073】
図8(a)及び(b)では、還元処理を実行した後に安定化処理を実行しなかった。これに対して、還元処理を実行した後に、大気に暴露せずに安定化処理を実行した後の導電層102上のTEM画像を図8(c)に示す。
【0074】
図8(c)では、導電層102の表面上の変質層105は大幅に改善された。図8(c)の状態から2時間大気に暴露した後の導電層102上のTEM画像を図8(d)に示す。図8(d)では、導電層102の表面の変質層105は、図8(c)の大幅に改善された状態から変化はなく、導電層102の表面の安定化層により、コロージョンが抑制された。
【0075】
図9及び図10は、基板に形成されたCu膜のXPS解析結果の一例を示すグラフである。ここでは、導電層102を模擬して、実験上においてメッキによってCu膜を成膜したウエハについてXPS解析を行った。
【0076】
図9(a)~(d)の一点鎖線で示す「Initial」は、Cu膜が形成されたウエハに還元処理を行う前のCu膜表面のXPS解析結果を示す。破線で示す「H2 Vessel」は、Cu膜が形成されたウエハについて、Hプラズマを用いてCu膜を還元処理した後のCu膜表面のXPS解析結果を示す。実線で示す「H2/N2 Vessel」は、Cu膜が形成されたウエハについて、HガスにNガスを微量添加したプラズマを用いてCu膜を還元処理した後のCu膜表面のXPS解析結果を示す。この実験では、H/H+Nを0.95とした。横軸は結合エネルギーを示し、縦軸は単位時間当たりの検出数を示す。
【0077】
図9(a)は、C1sのXPS解析結果を示す。図9(b)は、O1sのXPS解析結果を示す。図9(c)は、Cu 2pのXPS解析結果を示す。図9(d)は、Cu LMMのXPS解析結果を示す。
【0078】
図9(a)(b)の結果から、「Initial」と「H2 Vessel」とを比較すると、Hプラズマを用いてCu膜を還元処理することにより、Cu膜の表面に取り込まれていた酸素が減り、Cu膜の表面の酸化状態が改善された。
【0079】
また、HガスにNガスを微量添加したプラズマを用いてCu膜を還元処理することにより、「H2/N2 Vessel」に示すように、イオンエネルギーが低い状態でCu膜の表面から効率よく酸素が除去された。
【0080】
一方、図9(c)(d)の結果から、還元処理後にCuの状態が多い不安定な状態のCu膜の表面に変質した。図8(a)(b)に示す変質層が形成されたことと一致する。
【0081】
図10は、安定化処理の有無とXPS解析結果の一例を示すグラフである。図10(a)は、図9(d)と同一グラフであり、還元処理後のCu表面は、Cuが再酸化されることで変質層が形成された。これに対して、図10(b)は、還元処理後のCu表面にSiHガスを供給し、安定化処理を行った後のCu膜の表面を示す。
【0082】
図10(b)の一点鎖線で示す「Initial」は、Cu膜が形成されたウエハに安定化処理を行う前のCu膜表面のXPS解析結果を示す。二点鎖線で示す「H2+SiH4 Flow atm」は、Cu膜が形成されたウエハについて、Hプラズマを用いてCu膜を還元処理した後にSiHガスにCu膜表面をさらして安定化処理を行った後のCu膜表面のXPS解析結果を示す。破線で示す「H2/N2+SiH4 Flow atm」は、Cu膜が形成されたウエハについて、HガスにNガスを微量添加したプラズマを用いてCu膜を還元処理した後にSiHガスにCu膜表面をさらして安定化処理を行った後のCu膜表面のXPS解析結果を示す。点線で示す「H2/NH3+SiH4 Flow atm」は、Cu膜が形成されたウエハについて、HガスにNHガスを微量添加したプラズマを用いてCu膜を還元処理した後にSiHガスにCu膜表面をさらして安定化処理を行った後のCu膜表面のXPS解析結果を示す。この実験では、H/H+N=0.95とした。横軸は結合エネルギーを示し、縦軸は単位時間当たりの検出数を示す。
【0083】
これによれば、Cu膜が形成されたウエハに安定化処理を行った後は、安定化処理を行う前よりもCu表面が安定化し、変質層が大幅に改善された。図8(c)に示す変質層が大幅に改善され、Cu表面が安定化したことと一致する。
【0084】
以上の実験のプロセス条件の一例を示す。
(還元処理)
・Hプラズマ
ガス :500sccm
圧力 :20Pa
温度 :100℃
RF電力 :2000W(上部電極)/50W(下部電極)
・H/Nプラズマ
ガス :475sccm
ガス :25sccm
圧力 :20Pa
温度 :100℃
RF電力 :1000W(上部電極)
【0085】
(安定化処理)
・SiHフロー
SiHガス :36sccm
圧力 : 15Pa
温度 :100℃
【0086】
[その他]
本実施形態に係る基板処理方法STによれば、ハロゲン含有ガスのプリカーサを使用して成膜した導電層又は半導体層の表面のコロージョンを抑制することができる。ただし、これに限らず、ハロゲン含有ガスでエッチングした等、ハロゲン含有ガスを使用してプロセスを行ったときの下地層の導電層に対して好適に適用することができる。例えば、図3のステップS11(成膜処理)に示す処理は、ハロゲン含有ガスを使用したエッチング等、成膜処理以外のプロセスであってもよい。
【0087】
図3のステップS11からステップS14に示す処理は、真空雰囲気が好ましく、雰囲気制御された処理であってもよい。また、ステップS11からステップS14に示す処理は、同一の基板処理装置で行われる構成であってもよい。また、ステップS11に示す処理を施す基板処理装置と、ステップS12,S13に示す処理を施す基板処理装置と、ステップS14に示す処理を施す基板処理装置と、を真空搬送室または雰囲気制御された搬送室で接続する構成であってもよい。これにより、ステップS13に示す還元工程の後、ステップS14に示す安定化工程の前に、ウエハWを大気に暴露することがないため、導電層102の表面に不安定な変質層が形成されることを抑制することができる。
【0088】
基板処理装置は、ウエハを1枚ずつ処理するCVD(Chemical Vapor Deposition)、ALD等の枚葉式の処理装置に限定されない。例えば、基板処理装置は、複数のウエハをウェハボートに保持して処理容器内に搬入し、複数のウエハに対して一度に処理を行うバッチ式の処理装置であってもよい。また、例えば基板処理装置は、処理容器内の回転テーブルの上に配置した複数のウエハを回転テーブルにより公転させ、一のガスが供給される領域と他のガスが供給される領域とを順番に通過させてウエハに対して処理を行うセミバッチ式の装置であってもよい。また、例えば成膜装置は1つの処理容器内に複数の載置台を備えた複数枚葉成膜装置であってもよい。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態の基板処理方法及び基板処理装置によれば、導電層又は半導体層の表面のコロージョンを抑制することができる。
【0090】
今回開示された実施形態に係る基板処理方法及び基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
1…処理容器、1a…接地線、2…誘電体壁、3…アンテナ室、3a…側壁、4…処理室、4a…側壁、5…支持棚、10…プラズマ処理装置、11…シャワー筐体、12…ガス流路、12a…ガス供給孔、13…高周波アンテナ、13a…スペーサ、14…整合器、15…高周波電源、16…給電部材、18…コンデンサ、20…処理ガス供給系、20a…ガス供給管、21…セラミックヒータ、22…載置台、24…絶縁体枠、25…支柱、25a…給電棒、26…ベローズ、27…ゲートバルブ、27a…搬入出口、28…整合器、29…高周波電源、30…排気装置、31…排気管、41…給電部、43…給電部、51a…SiFガス供給源、52a…Oガス供給源、53a…Hガス供給源、54a…Nガス供給源、55a…SiHガス供給源、56a…Arガス供給源、101…絶縁層、102…導電層、103…SiOF膜、Cnt…制御部、W…ウエハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
絶縁層101の材料は、Low-K膜、金属酸化物絶縁膜であり得る。また、絶縁層101の材料は、x、yを自然数として、SiO、Si 、SiC、SiOC、SiOCH、Al等の絶縁膜であり得る。